落シ刑事 ~刑事さん、私がやりました~
【おとしでか けいじさん わたしがやりました】
ジャンル
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取調べアドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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512MbitDSカード
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発売元
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サクセス
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開発元
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ビヨンドインタラクティブ
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発売日
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2008年9月18日
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価格
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3,990円
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セーブデータ
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3個
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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なし
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ポイント
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捜査に行かない新人刑事 あまり「落シ」た感じはしない シナリオ・キャラクターは良質 EDテーマは舘ひろしの書き下ろし
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概要
河島淳はウラハマ署捜査一係に配属されたばかりの新人刑事。
ウラハマの悪党を震え上がらせる「野獣デカ」と呼ばれることを夢見ていたが、赴任早々ボスに「アロハ」というあだ名を付けられ、取り調べ専門のデカとして内勤を命じられてしまう。
アロハは疑問を持ちながらもこれも修行と思い、署内回りを続けるのだが…。
題名の通り「落とし」(取り調べで相手に白状させることを意味する警察の隠語)を題材にしたアドベンチャーゲーム。
ベルトスクロールアクションの『野獣刑事 東京同時多発テロを鎮圧せよ!』とともに、サクセスの「刑事(デカ)プロジェクト」の1つとして発売されたタイトルである。
特徴
捜査に行かない新人刑事
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普通の刑事ものなら事件発生の報を受けるや否や現場に飛び出していくところだが、取り調べ専門のデカであるアロハは、情報収集から証拠固めまでをすべて署内で行う。
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操作は普通のアドベンチャーゲームと同じで、署内のあちこちを回り、同僚の刑事や関係者、鑑識などと話をしながら情報を集めていく。
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事件に進展が見えてきたら証拠固めをしていく。
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まずはいったん自分の机に戻り、証拠を整理する。複数の証拠を調べることで新たな証拠に変化することもあるので、必ずすべての証拠に目を通す必要がある。
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準備ができたら持ち出す証拠を選んでボスの机に向かう。
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すべて正しければ「取り調べ命令」が発動、「取り調べパート」に進むことができる。
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もし間違えてもどれが正しくてどれが間違っているのかはボスがきちんと教えてくれるし、詰まったときは「ボスに相談する」を選ぶと、大まかだがヒントがもらえる。
取り調べパート
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このパートでは制限時間内に相手のゲージを0にすることで真実を述べさせることが目的となる。
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まずは提示された選択肢の中から適切なものを選び、必要なら証拠も合わせて突きつける。仲間が同行したときは彼らの話を聞いてみる必要もある。
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相手の話を聞くときには適切な態度を取ることが重要である。
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態度には「中庸」「怒気」「積極」「冷淡」「同調」の5つがあり、これまでの会話や署内行動から相手の性格を考慮して態度と会話を選ぶ必要がある。
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ここでの選択を間違えると制限時間のゲージを大きく削られてしまい、ゲージが0になるとゲームオーバーとなる。
評価点
あふれる刑事ドラマテイスト
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互いにあだ名で呼び合う刑事に、渋い顔でブラインドの隙間から街をのぞくボスと、全体的な作りは『太陽にほえろ!』に代表される1970年代~80年代の刑事ドラマを意識している。
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各話の冒頭で流れるオープニング映像や行きつけのバーでママに相談するゲームオーバー画面、グラフィックにあらわれるフィルムのゴミ、中断すると表示されるカラーバー(深夜放送終了時に流れるアレ)といった、刑事ドラマ(の再放送)らしさを再現した演出も徹底している。
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また、本作のEDテーマには昭和の刑事ドラマ(といっても『西部警察』や『あぶない刑事』のようなハードアクション系のものばかりだが)を代表する俳優・舘ひろしの書き下ろし曲「甘い生活」が使われている。
なぜ舘ひろしなのかは謎だが
良質なシナリオとキャラクター
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シナリオは取り調べを終えるたびに状況が二転三転していく。派手などんでん返しはないが、地道に捜査を進めることで真相を明らかにしていく刑事ドラマらしさを感じさせてくれる。
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犯人に罪を認めさせることだけが取り調べではない(むしろそういう取り調べの方が少ない)。時には相手の心を開かせ、時にはかばっている相手が犯人でないことを証明することも必要になる。物語の中でアロハ自身が言っているように、取り調べを通じて「人間を知る」ことが大きなテーマになっている。
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主人公のアロハを初めとする登場人物にもしっかりした個性があり、物語と直接関係のない場面でも掛け合いを見せてくれることがある。登場人物が少ないぶん、1人1人の会話の内容は充実している。
問題点
全体的に地味さ、単調さが拭えない
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基本的にはどの話も署内回り→取り調べを繰り返すだけであり、プレイヤーができることは証拠を集めて取り調べに使えそうなものを選び出すという地道なものである。
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刑事ドラマらしいといえばらしいのだが、アドベンチャーゲームとしては地味で単調な作業ばかりが続くため、飽きやすい。
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また、登場人物のほとんどが外で捜査にあたっているため、進み具合によっては刑事部屋に誰もいないことがある。この状態で次の情報の見当がつけられないと、ヒントをもらう相手すら見つけられずに詰んでしまいやすい。
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この地味さ・単調さが最も顕著になるのが、ウリであるはずの取り調べパートである。
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取り調べパートも基本的には会話をするor証拠を出す→話をするの繰り返しで、某弁護士のように証拠や発言をめぐって丁々発止のやり取りをすることはない。
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場面によって適切な態度を選ぶというのも、ここぞという場面以外では「中庸」にし続けるのが正解であることが多く、選ばせることの意味が薄い。
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このように、本作は全体的に進行が淡々としており、特に取り調べパートではどんな態度を取っても相手の反応が薄い(台詞もほとんど変わらない)こともあって、相手を「落とした」という達成感があまりわかない。これでは看板に偽りありだろう。
登場人物のグラフィックのクオリティが低い
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絵柄はまだ好みが分かれるレベルと言えるのだが、解像度が低いのか拡大すると画像がものすごく粗くなり、フィルムのゴミの演出と合わさって画面を汚く感じさせてしまっている。
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これを故障や異常と勘違いしてメーカーに問い合わせたユーザーも多かったらしく、本作の公式HPには注意書きが載っている。
ストーリーに関わる欠点
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1つ1つのストーリーが短く、全体でもチュートリアル代わりのプロローグ+3話で終わってしまう。ボリューム不足でもあるし、ひと続きのストーリーとしても中途半端なところで打ち切られてしまっている。
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ストーリーがひと続きであるためか、セーブデータが全話共通のものになっており、特定の話を選んで遊ぶことができない。シナリオが良いだけにこの機能はぜひ欲しかった。
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主人公の両親の話など、ストーリー上は関係ないが明らかにされていない設定がいくつかある。次回(?)以降の伏線なのかもしれないが。
総評
刑事ドラマらしい雰囲気づくりやシナリオ・キャラクターは秀逸なのだが、地味で単調なゲーム内容がそれをマイナスに作用させてしまっている。相手と一対一で向き合う「取り調べ」という題材は、推理要素の他にも『逆転裁判シリーズ』のような対決・駆け引きの要素も入れられるおいしいものであっただけに、料理しだいで名作・良作になったかもしれない、惜しい作品である。
あと、本作のシナリオの雰囲気は元ネタの『太陽にほえろ!』よりも『はぐれ刑事純情派』の方が近い気がするのだが。
最終更新:2021年06月20日 18:53