KAIDO -峠の伝説-
【かいどう とうげのでんせつ】
ジャンル
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レースゲーム
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売・開発元
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元気
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発売日
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2005年7月28日
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定価
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7,140円(税込)
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プレイ人数
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1人~2人
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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判定
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なし
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ポイント
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シリーズ最高のボリューム 蛇足なシステムで全てが台無し 無駄に頻出する工事現場
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首都高バトルシリーズ
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概要
前作『街道バトル2 CHAIN REACTION』から大幅にグレードアップした「街道バトル」三部作の最終作。
未だに傑作と呼ばれる作品が現れない「峠」を題材にしたレースゲームにおいて、
「実際の公道を再現したコースを含む19種類の峠」「豊富な車種」「約400人ものライバル」「美麗になったグラフィック」…などと十分過ぎるポテンシャルを持ちながらも、
蛇足なシステムの為に金字塔に成り得なかった惜しすぎる峠レースゲーの佳作。
評価点
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実際のレイアウトを再現した峠の数々。豊富な収録車種。
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第一いろは坂が削除されたものの、今作ではレーザー測定をもとに実寸で再現した「広島」「裏六甲」「志賀草津」「北海道」のロングコースが追加。さらに距離こそ短いが「箱根七曲」「妙義」「雪の大谷」「霧ケ峰」「碓氷峠」「八方ヶ原」「大垂水」「横浜」のショートコースが追加され、前作の8コースを大きく上回る全国津々浦々の峠を収録。
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中小サード製であることを考慮すれば、実際の峠を再現したこともありグラフィックは間違いなく美麗な分類。収録コース数も峠を題材にしたゲームとしては文句無しでトップ。いわゆる「有名どころ」だけでなく、ゲームや漫画などで取り上げられる事すら珍しい峠も収録されている。
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登場車種は豊富で、各メーカーのスポーツカーを中心に軽、コンパクトは勿論の事、旧車も充実。さらには外車も少数ながら収録されており、その総数は260にも及ぶ。特に人気のある車種は前期と後期のモデルで分けられている。但し、これに関する問題もあり、それについては後述する。
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峠最速を目指す「コンクエストモード」に、約400人ものライバルが登場。
勝利すると稀にライバルが仲間になる事があり、仲間になるとマシンを借りることもできる。勿論それはSLASHERや十三鬼将などの特殊なライバルたちにも可能性がある。
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ライバルの中には『頭文字D』を中心としたパロディキャラや『首都高バトル』からの参戦など、飽きさせないようにする意欲が感じられる。他にも『オーバーレブ!』や『レーシングラグーン』などの比較的マイナーな部類から、自動車とは無関係の『マリア様が見てる』『ガンダム』といった作品のパロディまである。
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チューニング・ドレスアップ要素の強化。
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遂にボルトオンターボのチューニングが可能になった。改造の幅が広がったことは勿論、ターボ化することで非力な車種にも活躍の場が与えられ、車種は増えても「使えない車」を、スペック面で減らすことに成功した。
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またドレスアップも、アートファクトリー社によるカッティングシート方式を採用し、デザイン面でより個性的な一台を作ることができる。
『首都高バトル01』や『レーシングバトル』のようにペンツールで自由にデザインを描くことはできないが、バリエーションはそれなりに豊富。
勿論ゲームオリジナルのものも用意されており、最大5レイヤーまで貼り付けることができる。
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更に、前作までは一部の日本車・外国車全般はエアロパーツが用意されていなかったが、本作ではノーマルカーであれば国籍問わず全ての車にエアロパーツが装着可能となった。
賛否両論点
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相変わらずリアル「志向なだけ」の挙動。
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前作から指摘されている点だが、一言で切ってしまえば「中途半端な挙動」は改善されておらず。
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いわゆる『グランツーリスモ』の様なドライビングシミュレーター程シビアなものではないが、一方で単純な操作で自在に振り回せるほど爽快感重視でもない、鈍重な挙動。
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この挙動を気に入る事ができれば、ある程度の練習で嘘臭さを感じずに走り屋の気分を味わうことができる、絶妙のバランスとも言えるが、
逆に言えば初心者にとっては正直取っつきにくく、さりとて車に詳しいプレイヤーからは違和感満載といったところ。結果、中途半端という評価に落ち着いてしまっている。
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一部バトル形式の変更
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難しくイライラしがちなCAバトルにタイム制限が復活し、難易度が更にアップしている。ただし、これは前作でもスポンサーテストでは採用されていた要素であり、タイム制限がないとそれはそれで妙なポイントの稼ぎ方ができてしまうため、一概に改悪と断定する事はできない。
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大袈裟かつゲームテーマにそぐわないSLASHER登場ムービー
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峠のボスであるSLASHERの登場前には必ずムービーが流れるのだが、前作までと打って変わってその土地の観光名所などを絡めた壮大なものとなっている。それ自体の出来は申し分ないのだが、峠でのバトルを題材としたこのゲームに於いては浮いた存在であることもまた事実である。長さもものによっては3~4分と長く、テンポや緊張感を削がれるという声もある。
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但し強制ではなく、スキップも可能なのでそれほど大きな問題とはされていない。また、バトルの合間の一服の清涼剤として良い、という声もある。
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ちなみにあるステージのSLASHER登場ムービーは峠の走り屋を題材とした人気作品をあからさまに意識したものであり、これまた賛否両論となっている。
問題点
挙動の好みは分かれるが、他の要素はこれまでの峠レースゲーとしては最高のレベルを誇る。だが、その高いポテンシャルも後述する要素のために、完全な宝の持ち腐れとなっている。
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半端かつ問題点しかないラリー要素
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発売当時(2005年)、世界ラリー選手権(WRC)の一ラウンドである「ラリージャパン」が開催されていたこともあってか、半ば無理矢理ねじ込まれたラリー要素が本作の魅力を全てぶち壊している。
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本作のメイン中のメインといえる「コンクエストモード」の夜フェイズにおいては、「工事中」という設定で、日ごとランダムにコースの一部がグラベル路面になる。
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コーナーやストレートの1つぐらいの場合もあるが、多くの場合はコースの2割ほどが丸々グラベル化してしまう。路面状態に敏感な挙動もあり、後輪駆動車やレーシングタイヤ装着時では直進することすらままならない。
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白熱したバトルの最中、突如出現したグラベルでスピンして敗北などの糞展開はお約束で、盛り上がるどころかストレスにしかならない。
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事前にコースマップでグラベルの場所を確認する方法もあるため、適切な車種やパーツ選びをしていればレースに勝つこと自体は可能。しかし、前述の理由からコンクエストモードでレーシングタイヤや後輪駆動車を使うことは地雷要素となる。そのためグラベルの存在そのものが、「自分の気に入っている車種を好きなように改造してゲームをクリアする」という、この手のレースゲームでは魅力となることも多い部分を潰してしまった点は否定できない。
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更に本作の最終ステージはよりにもよって全面グラベルの「北海道」。「峠の伝説」なのにラストはストリートではなく完全なラリー。「ラリーの伝説」になったとでも言えばいいのか。
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ラリー要素を組み込むにしても、「北海道」のような全面ダートコースや、常に同じエリアが舗装されているミックスサーフェースのコースを少数用意した上で、
サブイベントの様な扱いにするなど、峠とラリーを両立させる手段はいくらでもあったはずである。舗装された峠道でのレースを楽しむというこのゲームのコンセプトを潰すような形で、ラリーの要素を無理矢理捻じ込んでしまったのが本作最大の汚点である。
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一言でいえば、このラリー要素だけで良作から凡作へと引き摺り下ろされたといっても過言ではないレベルと言えば、車に詳しくない方にもわかりやすいだろうか。決して操作が楽ではない本作において、この要素は致命的なのである。
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ショートコースの扱い
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ショートコースと銘打っている以上、コース距離が短いのは仕方ないが、実際の全長が10kmを超える「碓氷峠」はたったの1.08kmしか収録されていない。
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また、「横浜」はそもそも峠ではない。公式ガイドブックにも書かれている。
北海道ほど批判は無いものの、おまけ的な存在ではなくストーリーの進行にもしっかり関わっているため、「峠」を売りにしている本作としてはどうなのか…
ちなみにコースは外国人墓地周辺を走るルートで、あの『レーシングラグーン』に登場したものとほぼ同一。登場するライバルもそれのオマージュである。ただし時間帯は夜でなく昼であり、車種も一部は全く異なっている。
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不親切なゲームデザイン
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上記のラリー要素により、安心して使えるのは「スポーツタイヤ装着の4WD車・FF車」のみになってしまう。せっかく多彩な車種を揃え、性能面での救済措置まで用意しておきながら、その長所をラリーという要素だけでぶち壊している。
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おまけに天候を変更する手段は存在するにもかかわらず、グラベルを消す手段は存在しないため、余計に嫌味が増している。
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例によって「コンクエストモード」の終盤ではパワーインフレが進み、特に「蔵王」や「北海道」では『パワーの無い車がテクでぶち抜く』といった峠特有の魅力は消え去る。結果、500馬力オーバーのハイパワーマシンでラリーもどきをする別ゲーと化してしまう。
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前作での反省からか、壁への当たり判定が弱くなった。これ自体は悪くないのだが、減速ペナルティ自体も緩和されている為、FL・LFバトル等では「ハイパワー車でミニ四駆のようにぶつかりながら走った方が速い」ということとなる。
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実際、車をチューニングする際に、パワー系をレベル最大にすると曲がりやすいはずのFR等でも、どのようにセッティングを施しても旋回力が不足していく。
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このゲームの所有車種は走行距離を重ねたり、バトル中の衝突で「ヤレ」が生じ、性能ダウンを招くという設定が存在する。これ自体は、車を大切に乗ろうという現実に通じるメッセージとして理解できなくもない。
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問題点は、ヤレが進んだ車を修繕する手段がないことである。上記のような走りを行ってヤレが酷くなった時点で、車を消耗品として乗り換えるしかないのだ。
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また、一部ライバルやチームは登場条件が厳しい点もそのまま。これは元気作品の定番となってしまっているが、本作では曜日、天気、週数、プライズ、FAN数等の複数条件を全てを要求してくるライバルも登場するため、殊更難しくなっている。
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仲間になる条件が詳しく書かれていない。
一応「自車の馬力が相手の車よりも高いと仲間になる確率が上がる」ということだけは判明しているのだが…
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前述した特殊なライバルの場合、そのライバル専用に特別な改造が施されたマシンに搭乗しているが、吸気形式と駆動方式だけが判別できるのみで、肝心の最高出力や車重などといった情報は伏せられており、どれくらいの差があるのかが全くわからない。
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登場車種260台以上とバリエーションがあるにもかかわらず、ガレージに納められるのはたった50台。ロクにコレクションもできない。
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とは言え前作『2』ではガレージ自体の拡張が必要な上に、キャパシティ最大まで増やすとなると軽く億単位のお金が必要だったにもかかわらず、最大でもたった25台と本作の半分までしか納めることができなかったので、改善されてはいるのだが…
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一部の車種は新車ディーラーに出現せず、中古車ディーラーの最後に新古車扱いで出現する。しかし、どの車種が出るのかは完全にランダムで、取り扱いも一度に1台のみ。変更直前の日付でセーブし、目的の車種が出てくるまでロードを繰り返すという手間を強いられる。
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ドレスアップ関係での不具合
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本作ではカタログカラーに一色でもツートンカラーがある場合、カスタムペイントで車体色が変更できるのは上半分だけで、下半分は変更不可。たとえツートンカラーで無い色を選んでいても、である。
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また、下半分の色はその車種の一番目のボディカラーが反映されるので、モノによってはどの色を選択してもダサく見えてしまうという問題もある。カッティングシートを貼るなどして上手い事工夫すればカッコよくはなるのだが…
ちなみに『首都高バトル01』『レーシングバトル』では両方とも変更できた。どうしてこうなった。
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また、そのカッティングシートも貼り付けられるサイズ・位置は完全に固定されており、車によってははみ出してしまう。両者とも調整は一切できない。
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しかし唯一の例外として、マジョーラカラーにするとツートンはキャンセルされる。そのため、カスタムペイントに限ってツートンを強制されるのは合点がいかない。
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大幅に削られた外車
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前作まで登場していた海外メーカーのうち、「ロータス」「フォード」「デ・トマソ」「ミニ」はメーカーごと削除された。デ・トマソ「パンテーラ」のように、主要なライバルが搭乗していた車種も今作では続投していないため、やや物足りなさが残る。
その他、前作から改善できていない問題点も残っている。
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スペシャルカーは改造不可能で、性能アップもできない。
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前作ではノーマルカー扱いだった「メルセデス・ベンツ・190E 2.5-16V エボリューションI」及び「II」は、何故か両者ともスペシャルカー扱いとなってしまった。
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エアロパーツは相変わらず一種類のみ。しかもフルエアロのみで、パーツの取捨すらできない。ハードが変わっていない以上、コースの増加も含めて容量もいっぱいいっぱいな点は考慮すべきだが…。その割にはライバルカー専用デザインのエアロが存在するのも嫌味を増している。
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AIのロジックも何も変わらず。どうにも元気は真っ当な走らせ方で難易度を調節する事ができないらしい。前作のノーブレーキミサイルのような理不尽な抜かされ方への対策なのか、
本作では何もない直線でチンタラ挑発するかのごとく流すようになった。難易度…というか、理不尽な「負け方」という意味では確かに対策ではあるが、やっていることはまんまDQNプレイであり、仮にアーケードやオンライン作品で同じことをすればトラブルに発展するようなやり口である。
総評
まさに画竜点睛を欠くという言葉がピッタリな作品。本シリーズも三作目となり、余計な物がなければ良作たり得ただけに、ラリーへの欲目が悔やまれる。
姉妹作の『首都高バトル』はXbox 360で続編が出ているが、そちらもボリュームに欠ける出来となっており、以降、コンシューマーでの続編はない。
この種のゲームに対する風当たりが増している昨今では復活も厳しいだろうが、峠を題材にしたゲームは近年珍しいだけに、何とか頑張ってほしい所である。
最終更新:2023年02月19日 10:14