コープスパーティー Book of Shadows

【こーぷすぱーてぃー ぶっくおぶしゃどうず】

ジャンル 廃校監禁ホラーアドベンチャー
対応機種 プレイステーション・ポータブル
Windows(Steam)
開発元 5pb.(MAGES.)
発売元 【PSP】5pb.(MAGES.)
【Win】XSEED Games, Marvelous USA, Inc.
発売日 【PSP】2011年9月1日
【Win】2018年10月30日
定価 通常版:6,090円
限定版:9,240円(税込)
Steam版:1,520円(税込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)
判定 なし
ポイント やはり誰も救われることのないIFストーリー
コープスパーティーシリーズ


ストーリー

誰もが思う、“たら”、“れば”の話……あのときこうしていたら、ああしていれば……
もし、本当にやり直せるとして、必ず幸せな結果が待っているのでしょうか?
やり直したことで、回避していたはずのより大きな不幸に出会うかもしれないのに……
やり直す機会があるとして、あなたは本当にやり直すことを望みますか?
すでに“最善の選択”をしているのかもしれないのに……(本作ティザーサイト及びファミ.comに掲載されたメッセージより)

概要

PSP屈指の鬱ゲー『コープスパーティー ブラッドカバー リピーティッドフィアー』のサテライトエピソード集。
『BR』と同じくエピソード毎に主人公が違い、基本システム等は変更されテキストを読み進めるタイプのアドベンチャーゲームとなっている。

限定版には直美と世以子のデフォルメフィギュア2体とサウンドトラックCDが封入された。
本作がテキストアドベンチャー形式になった理由としては、「続編ということでなるべく前作から時間を空けずに発売したかった。
だが、『BR』のような探索形式のゲームはどうしてもスクリプトを組む作業に時間がかかる*1為、発売元の5pb.が以前に出したゲームのノウハウを活かせるテキストアドベンチャー形式に変更になった」と語られている。


特徴

異次元に存在する、かつて悲惨な経緯によって廃校へと追い込まれ取り壊されたはずの小学校「天神小学校」
強大な呪詛の力により、そこは迷い込んだ人間を無残な死に追いやる魔の校舎と化した。
本作で語られるのは、その「天神小学校」の呪いに触れてしまうこととなった人々の、前作では語られなかった物語である。

  • 第一章・刻印
    • 主人公は中嶋直美。
      『BR』Chapter5にあったWrong End(バッドエンド)の1つである、Loop ENDから繋がる物語。前作Chapter1をなぞるように進むが…。
  • 第二章・夭逝
    • 主人公は鈴本繭。
      第一章と同じく、Loop ENDから繋がる物語。終わり方の猟奇さは本作でも屈指のもの。
  • 第三章・邂逅
    • 主人公は宍戸結衣。
      過去の回想話になっており、如月学園の生徒であった結衣が、高校3年生のとある秋の雨の日に、夜の校舎で体験した恐怖の物語。唯一探索パートが存在しない。
  • 第四章・煉獄
    • 主人公は本作で初登場となる大上さやか。
      『BR』の前日談であり、冴之木七星が天神小学校へ向かうまでの日常と、七星と一緒に天神小学校へ飛ばされたさやかの運命を描く。
    • 先行して発売された小説版『Book of Shadows』はこのシナリオの前日談となっている。
  • 第五章・理想郷
    • 主人公は森繁朔太郎。
      第一章と同じく、Loop ENDから繋がる物語。彼が徐々に狂気に堕ちていく様が描かれる。
  • 第六章・泥濘
    • 主人公は持田由香。
      第一章と同じく、Loop ENDから繋がる物語(エンディングで「THE World after Loop END」と表示される)。
      ただし、内容的には『BR』Chapter5の別のWrong Endの内容を由香の視点から描くものとなっている。
  • 第七章・歯
    • 主人公は霧崎凍孤。
      『BR』の前日談。白檀高等学校の生徒が天神小学校へ飛ばされる直前、飛ばされた直後の様子と、刻命裕也が暴走を始めるきっかけとなった出来事を描く。
    • ちなみに、本章は『BR』の移植元であるPC版『BloodCovered(BC)』にて、EXTRA Chapterの1つ『tooth』として配信されている。
      ストーリーの流れ自体は同じだが、『tooth』の方は『BC』及び『BR』と同じ見下ろし型の探索形式となっている。
  • 第八章・BLOOD DRIVE
    • 隠しシナリオ。
      オープニングイベントと同様に、前作のTrue Endの後日談にあたるストーリー。あまりにも衝撃的なエンディングは是非自分の目で確かめて欲しい。

システム

  • 上記のとおり、テキストアドベンチャー形式に変更された。また、移動した場所を探索するためのモードも存在する。
    • 結果としてイベントスチルの枚数が大幅に増え、ビジュアル的に猟奇度が増した。
  • 新要素として「精神汚染度」が追加された。
    これは操作キャラクターがどれだけ正気を失っているかを示す指数で、100になると完全に精神を破壊され黒化*2しゲームオーバーとなる。
    • 一定値を越えると、BGMにノイズが混じったり画面に恐ろしげなエフェクトがかかるようになり、プレイヤーの恐怖感を煽ってくる。
    • 探索を行うと上昇するため、無駄にあちこち調べるとすぐに汚染度が上がってしまう。
      そのため、総当たりによる攻略は難しくなっており、難易度は少し高めとなっている。
      • ただし、精神汚染度が一定以上ないと進まないイベントや、見られないサブイベントもある。
        例えばある場所では、汚染度が低いままだと操作キャラクターが嫌悪感を示すだけだが高くなると「ころす」「にへる」という選択が出てくる。
        「ころす」を選ぶと見えない何かを相手に暴れ、「にへる」はよく分からないまま笑みを浮かべてシーンが切り替わると言う不気味なもの。
      • 更に、特定のイベント通過後に精神汚染度を100にすることで見られるWrong Endも存在する。

連動要素

  • 前作のセーブデータを読み込むことで、前作にあるビジュアルシーンを全て閲覧できるようになる。
    • メモリースティックへ出力できるので、PSPの壁紙としても使用可能。グロテスクだったり猟奇要素が強かったりするものばかりなので実用性があるかは疑問だが。
  • また、隠しシナリオ「BLOOD DRIVE」へ進むための条件が緩和される。
    • 通常は7つのシナリオの全エンディングを制覇しなければならないのだが、前作のデータを読み込むことで7つめのシナリオをTrue Endで終わらせるだけで見られるようになる。

評価点

  • インターフェイスの快適化。
    • 基本システムが弱かった前作とは打って変って、セーブ・ロード時間の改善、デモシーンのスキップ機能やバックログの確認が可能になった。
    • セーブシステムが変更されたことに伴い、セーブ可能なスロット数は1つのChapterにつき5つだった前作から無制限となり、セーブ自体もいつでも可能になったため、快適さが格段に向上した。
      プログラマー陣のPSPに対するノウハウの蓄積が顕著に感じられる。
      • ただし、選択ルートによってはWrong End確定になることもあるので、安易な上書きセーブによる詰みには注意が必要。
      • 『BR』でセーブポイントとして使われていた蝋燭にも、『バイオハザード』シリーズに登場するタイプライターのような独特の趣があったため、完全廃止を惜しむ声も皆無ではない。
  • サウンド・演出の強化。
    • 前作同様バイノーラル録音を使用しており、サウンドへの力の入れようが半端ない。今回もヘッドホンによるプレイを推奨。
    • テーマ曲は前作と同じく、オープニングテーマ「花の咲く場所」を今井麻美氏、エンディングテーマ「パンドラの夜」を今井氏と喜多村英梨氏によるユニット・ARTERY VEINが担当しており、両曲とも本作のイメージに合っていると好評。
      • 喜多村氏によれば、登場人物の思いを代弁する形で歌っているとのこと。
    • サテライトエピソード集という性質上、『BR』では出番の少なかった刻命以外の白檀高等学校の生徒たちや、EXTRA Chapterのみの出番だった武蔵川女子中学校の面々にもスポットライトが当てられている。
      • 刻命や七星の内面や天神小学校監禁前の行動など、『BR』ではあまり掘り下げられなかった部分に踏み込む描写も多く、シナリオに深みを出している。
    • テキストアドベンチャー形式への変更ということで発売前には不安の声も上がったが、今作でも『コープス』シリーズ特有の恐怖演出は健在である。
      • 特に「精神汚染度」によってキャラクターの行動やメッセージが常軌を逸していく演出は、出口なき廃校で追い詰められていくという恐怖感を一層強めている。
      • 犠牲者の遺したメモや残留思念を辿っていくと、彼(彼女)らがどういう経緯を辿り非業の死を遂げたのかを窺い知ることができる。
        あちこちに散らばった死体を調べていくことで断片的な情報を繋げて自分なりに解釈していくという楽しみがあり、「精神汚染度」の上昇というデメリットを理解しつつもついつい死体を調べたくなってしまう。
      • 今作で新たに用意された背景画像も、前作のドット絵で描かれた「天神小学校」の雰囲気を残しつつ細かな部分まで描き込まれており、細かく見えるからこその新たな恐怖感を生んでいる。
  • 条件を満たすことで解禁される特典要素が充実している。
    • 「心霊写真館」:いわゆるCGギャラリー。前述のように、『BR』のセーブデータがあれはそちらのイベントスチルも閲覧することができる。
    • 「電動演奏機」:いわゆるサウンドギャラリー。BGMを聴くことができる。
    • 「心霊音声劇場」:バイノーラル録音された音声を聞くことができる。
    • 「言霊集」:CVキャストのコメントを聴くことができる。主要キャラクターから脇役まで、実に19人分のコメントが収録されており、かなりのボリューム。
    • 「ネームタグ」:手に入れた犠牲者の名札を確認することができる。『BR』同様、死因などの細かい情報が設定されている。

賛否両論点

  • さらにさらに上昇した鬱&猟奇度。
    • 「もし、本当にやり直せるとして、必ず幸せな結果が待っているのでしょうか?やり直したことで、回避していたはずのより大きな不幸に出会うかもしれないのに……」というメッセージに偽りは一切なく、今度こそ救えると思ったプレイヤーの心を徹底的に叩き潰してくれる演出の数々。
      • 全体を通して足掻けば足掻くほど泥沼に嵌まっていくような救いのなさが徹底されており、プレイ後の読後感の悪さは特筆物。
        前作をプレイ済みの人でもある程度の覚悟が必要と思われるほどであり、人によってはトラウマになりかねない。
    • イベントスチルも、コンシューマで出せたのが不思議なほどに猟奇的な物がいくつもある。
      • 一応、本作では猟奇要素のないパンチラといったサービスシーン的なイベントスチルもあるのだが、その他の部分の鬱展開と猟奇要素が強烈すぎて印象が薄まっている。

問題点

  • マップが細かく区分けされており、移動時は例え数マス先を指定したとしても1マスずつ進んでいく描写が挟まれるため、目的地までの移動に時間がかかる*3
    また廊下にアイテムが落ちている場合もあるので、1マスずつ調べていくのは結構面倒。
    • 更に意地の悪いことに、小刻みに移動していると児童霊に捕まってしまう箇所もある。
    • 移動先に指定できるのは現在地と同じ階のマスのみ。他の階に移動するには踊り場を経由する必要がある。
      • 全体マップのような機能はなく、移動先指定の画面で現在地とその階のマップを見ることはできるもの、違う階のマップを確認することはできない。
        1階と2階を繋ぐ踊り場は2ヶ所あるのだが、この仕様のため、「選択した方の踊り場から目的地へ向かう途中の廊下が、その章では通行不可だった」ということも起こり得る。
        そうなると目的地を目指すには一旦戻ってもう1つの踊り場に向かうしかなく、前述のように移動速度は速くないため大幅に時間をロスしてしまう。
        また、2階と3階を繋ぐ踊り場も2ヶ所あり、こちらの場合3階の東側と西側が完全に分断されている。
        教室などの配置は『BR』とほぼ同じであるため『BR』をプレイ済みなら問題ないだろうが、こちらもうっかり間違えてしまうと戻る羽目になる。
    • また、ネームタグの蒐集もかなり面倒になっている。
      • 前作では、名札リストで獲得済みの名札を確認した際、隅の枠の中に小さく死体のドット絵*4が表示される仕様だったため、リストを確認する手間はかかるものの「どの死体が確認済みなのか分からない」ということはなかった。
        しかし、今作ではビジュアルがドット絵ではなくなったため小さい画面に表示すると見にくくなるという判断からか、リストに画像は表示されず、後から姿と名前を一致させるのはほぼ不可能。
        そのため、攻略情報に頼らずコンプリートしようとすると虱潰しに探していくしかない。
  • シナリオごとのボリュームの差が大きい。
    • エンディングリストを見るとよく分かるが、ほぼ一本道のシナリオがある一方で非常に複雑なシナリオもある。
      「後半になるほど難易度が上がり、ボリューム・収集要素が増える」というありがちなパターンとも違い、前半のシナリオにもかなり複雑な分岐条件が設定されていたりする。
  • 前作と同じく、エンディング制覇がかなり厳しい。
    • シナリオ難度が高すぎるという問題ではなく、Wrong Endの条件にかなりややこしいものがある一方でヒントが乏しいため、「どうすれば未見のエンディングに到達できるのか」が分かりにくい。
      リストの真ん中あたりがぽっかり開いていたりすると、そのためだけに何度も同じシナリオをプレイすることに。

総評

インターフェイスについては、多少の不親切さはあるものの前作の時点で指摘されていた問題点はほとんど解消され、かなり快適にプレイできるようになった。

ストーリー面は前作との繋がりや、前作以上にグロい描写に救いがない展開なため、さらに上を求める前作ファン向けとなっている。
体験版で最初の第一章を丸々遊べるので、前作プレイ済みかつ、ある程度の猟奇耐性があると自覚している人はまずは体験版をやってみるといいだろう。


その後の展開

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最終更新:2023年11月26日 13:13

*1 実際に、『BR』の移植元であるPC版の『BloodCovered』は(同人ゲームということで本作とは開発環境の違いがあるにせよ)、開発期間も含めれば全てのCHAPTERが発表され完結するまで4年以上の月日を要した。

*2 本シリーズにおける呪いの最終段階で、呪いに肉体や魂を侵食され、消し炭のようになってしまうこと。とはいっても、天神小学校の過酷な環境ではそこまで呪いの侵食が進む前に餓死や事故死したり、さもなくば悪霊に惨殺されてしまうケースがほとんどなのだが。

*3 Rボタンで加速化できるが、劇的に速くなるわけでもない。

*4 きちんとゲーム上のグラフィックを切り取っており、ドット絵が使い回されている死体でも付近のオブジェクトや床の穴の位置からどの場所にあった死体なのかを判別しやすくなっている。