本項ではPS2版『ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアック・ジョブ・システム』(IZJS)と、
それをベースにしたHDリマスター版のPS4/Win/Switch/One版『ファイナルファンタジーXII ザ・ゾディアック・エイジ』(TZA)を紹介しています。
IZJS版は 判定なし 、TZA版は 良作 判定となっています。

※オリジナル版『ファイナルファンタジーXII』の記事はこちら



ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアック・ジョブ・システム

【ふぁいなるふぁんたじーとぅえるぶ いんたーなしょなる ぞでぃあっくじょぶしすてむ】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション2
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2007年8月9日
定価 6,800円
レーティング CERO:B(12才以上対象)
廉価版 アルティメットヒッツ:2009年5月11日/2,940円
判定 なし
ポイント インターナショナルだが日本限定のシステム改変版
オリジナル版の難解な作りを抜本的に改める
遊びやすさ重視のコンセプト
倍速機能の快適さ、アッパー調整の爽快感
好みが分かれやすい調整
ファイナルファンタジーシリーズ

概要

ファイナルファンタジーXII』のインターナショナル版。『FFXII IZJS』と略される。
オリジナル版(無印)とは違った遊びかたを目指したため、従来に比べて無印からの変更点が非常に多い。
また無印は難度やシステムなど遊びにくい部分が多いため、本作は「無印のイージータイプ」として遊びやすさが重視されている。 なお、海外で発売されていた『FFXII』は本作『IZJS』ではなく、無印準拠のシステム。


特徴

  • 本作『IZJS』は、タイトルこそ『インターナショナル』となっているが、英語音声以外は「国内限定の内容」である。
    • 本来の海外版ではイベントが少し追加された程度でほぼ日本版無印と同様のゲーム内容だった。
    • 元々は『FFXII アネックス』という名前で発売予定だったが、大人の都合により『インターナショナル』名義に変更されたという。
    • 海外ではこの『IZJS』に準拠したものは以降も発売されず、そのタイトルに反して長らく日本限定のゲームとなってしまっていた。

変更点

  • ゾディアックジョブシステム
    • ライセンスボードを12種類のジョブ(ライセンス)から選べる。ただし一度選んだらジョブを変更することはできない。
    • 「モンク」「白魔道士」といった定番から、「ウーラン」*1「シカリ」*2などのよくわからない新顔まで、12の星座に当てはめられたジョブが揃っている。
      • ジョブ毎に特性がハッキリしているので育成の方針を迷わずにすむ。ただジョブ選択で迷いやすくなっている。
      • 各ジョブには「飛び石」と呼ばれる離れた位置にあるライセンスが存在する。
      • これを習得するには召喚獣ライセンスを習得して掛け橋にする必要があるが、召喚獣ライセンスは無印と同じく1匹につき1人しか習得できない。
+ 本作のジョブ
  • 白羊宮(牡羊座)・白魔道士…武器はロッド、白魔法を使用できる、魔装備可能。回復と味方の補助に特化した後衛職。召喚ライセンス経由で両手剣を装備でき、火力の低さをカバー可能。
  • 金牛宮(牡牛座)・ウーラン…武器は槍、重装備可能。前衛でのたたかうに特化したスタンダードなアタッカー。
  • 双子宮(双子座)・機工士…武器は銃・計算尺、軽装備可能。相手の防御力を無視して攻撃できる後衛職。弱くてニューゲームでの必須ジョブ。
  • 巨蟹宮(蟹座)・赤魔戦士…武器はメイス、一部の白黒時空魔法と専用の裏魔法を使用できる、魔装備可能。様々な種類の魔法を使用でき、メイス+盾により接近戦も対応できる万能中衛職。
  • 獅子宮(獅子座)・ナイト…武器は剣・騎士剣、重装備可能。前衛職として攻撃力・防御力ともに高いが、行動時間は遅めで飛行タイプへの対抗手段に乏しい。
  • 処女宮(乙女座)・モンク…武器は棒、軽装備可能。全ジョブで最もHPが高く耐久力が高い前衛職。高ランク召喚ライセンスを多数使えば高ランク帯の白魔法も取得可能。
  • 天秤宮(天秤座)・時空魔戦士…武器はボウガン、時空魔法を使用できる、重装備可能。主には高威力のボウガンで後衛を担当し、副として時空魔法で味方を補助するジョブ。
  • 天蝎宮(蠍座)・ブレイカー…武器は斧・ハンマー・ハンディボム、重装備可能。ダメージが不安定になるが、前衛・後衛ともに対応可能な万能ジョブ。ブレイカーの名の通り、唯一各種破壊*3を全て使用可能なのも強み。
  • 人馬宮(射手座)・弓使い…武器は弓、軽装備可能。スタンダードな遠隔攻撃の他、アイテムなどによる補助にも長けている後衛職。
  • 磨羯宮(山羊座)・黒魔道士…武器は杖、黒魔法を使用できる、魔装備可能。攻撃と敵への妨害弱化に特化した後衛職。
  • 宝瓶宮(水瓶座)・もののふ…武器は刀、魔装備可能。前衛として刀の連撃による高攻撃力が売り。魔装備ジョブながら魔法の類は一切使えないが、わざ「無作為魔」*4を最も活かすことができるジョブである。
  • 双魚宮(魚座)・シカリ…武器はダガー・忍刀、軽装備可能。ナイトと似た攻防ともに高水準の前衛職だが、攻撃力に欠けている分行動時間の早さやアイテム強化でカバーするという特徴。専用武器「シカリのナガサF」は高確率で即死させる効果を持つ。
  • ガンビット
    • 初期からほとんどのものを購入可能になり、入手手段が緩和。これにより設定力の差が出にくくなった。
  • ミストナック
    • 専用のミストナックゲージが設けられ、これを消費して使用する。
      • MPは最初から無印のミストナック3つ習得した状態と同じになっている。
  • ハイスピードモード搭載
    • ワンボタンでゲームスピードを4倍速にできる。
      • 大変テンポが良くなり、ガンビットシステムとの相性もいい。ただし慣れないとあっという間にピンチになる事も。
  • ダメージ上限撤廃
    • 敵味方のダメージ・回復量の限界が無くなっている。
      • ちなみに理論上最高は後述の透明武器を使用して一撃 160万超ダメージ
  • ゲストキャラクターの仕様
    • ゲストキャラクターを操作できるようになった。
      • リーダーにできたり、レベルが上がったり、ガンビットの調整ができたり等、ほぼプレイヤーキャラと同じ感覚で使える。
      • アイテムはこちらのストック分から使うため、ゲストの回復アイテム無限使用はなくなっている。
      • ただし、強力な魔法・技が使用できるようになっていて、無印よりも頼れる。
  • 召喚獣の仕様
    • ゲストキャラクター同様、自由に操作できるようになった。
      • 無印だと条件を満たさないと発動してくれなかった高威力の召喚技が、コマンド入力でいつでも出せるようなった。
  • 音声
    • 従来のインターナショナル版のように英語音声だが、北米版ベースではない。
    • 英語圏での社会階層による語彙・発音の違い、方言、外国語訛りなどを、作中のキャラ設定に応じて使い分けた高品質な吹き替えとなっている。例えばヴァンやパンネロは米国英語の若い世代の語彙で話し、ヴェインは英国の上流階級が用いる発音で話す。さらにバンガ族は(「トカゲ語」感は吹き替えでも強いが)やや荒っぽいテキサス風の訛りやスラヴ訛りの米国英語、帝国の名無し兵士は英国の下町英語といった具合。
    • 通常版では俳優が担当していたヴァンとパンネロのCVも専業声優の担当になり、拙さはなくなった。
    • 主要キャラはおおむね日本語版声優と似た雰囲気の声優が演じ、演技のトーンも似ているが、フランは割と大きく雰囲気が変わっている。キャラ本来の低いトーンは保ちつつも、若さ、幼さの感じられる演技になっており、顔にはより似つかわしくなっているかも知れない。
    • ムービーでの英語のセリフとのリップシンクもほとんど違和感のないレベル。意訳を交えて尺を合わせており、総じて質が高い。
  • その他
    • 一部のアイテム名が変更されている(例:気付け薬 ⇒ ン・カイの砂)。

追加要素

  • ガンビット
    • 新しいガンビットが追加。より細かい指示が与えられるようになった。
  • トライアルモード
    • 本編のデータを使って次々敵と戦っていくモード。全100面。
      • 出現する敵は雑魚、ボス、モブ、レアモンスター、さらには本編には登場しないものまで網羅している。
      • 10ステージクリアするごとにアイテムを幾つか入手し、セーブができる。
      • 全ステージクリアすると、初期レベルから一切レベルが上がらない「弱くてニューゲーム」がプレイできる。
  • 強くてニューゲーム
    • 初期レベル90からスタート。本編をクリアするとプレイできる。
  • 装備品・アイテム
    • 装備品はそれぞれの種類に1、2つずつ追加されている。ごく一部新規グラフィックの武器なども用意されている。
      • 特筆すべきは廃人向けアイテム「透明武具」。入手率は異常に低いものの凄まじいバランスブレイカーである。裏技で量産法も確立されている。
  • ストーリー
    • 無印ではカットされた、パンネロの監禁シーンが追加されている。
  • その他
    • 画面比率は従来の4:3に加え、新たに16:9にも対応している。

評価点

  • 上記の仕様で遊びやすい調整がふんだんに成されている。
    • 三重苦が解消され、ジリ貧の総力戦になりにくくなったので、稼ぎ量も少なくすむ。
  • 新モードの追加により、やり込みプレイヤーにも嬉しい調整となっている。ここから様々なやり込みも活発に行われた。
  • 遊びやすいゲームバランス
    • 後述のようにゲームバランスの変化に対する賛否はあるが、「遊びやすさ」という観点から見れば、ゲームバランス的には(「ゾディアックジョブ」というシステム的な話を別にすれば)『IZJS』のほうが遥かに取っ付きやすい。
      • 戦術性の話もあくまで無印と比べれば低下したと言われるだけでRPG全体で見れば高水準なので、インター版の愛好者も依然多い。

賛否両論点

ゲームバランス

  • 「どのジョブを選んでもクリアできるバランスにした」との事だが、大味であることは否めないため、賛否両論である。
  • 「ゾディアックジョブシステム」は、育成の方向性が極端なのに制約が大きい。
    • 能力アップのライセンスが倍以上に増え、装備の性能も万能化した。
      • 特に火力の高さが問題点として挙がりやすい。ダメージ上限撤廃も拍車をかけている。
    • リバースの強化とその魔片、攻撃破壊の強化、透明武具など、個々の要素で狂っている物もある。
  • 総力戦になるほどのジリ貧展開が減ったのはいい事ではあるが、ゴリ押ししやすいという点では問題点である。
    • 例えば状態異常が有効な場面があっても「使えるジョブが居ない」という場合も発生するため、ゴリ押しするしか手がないことがよくある。
      • パーティ内で敵対心管理をしようにも、使える魔法や技が限られるので難しい。
  • 戦術性の低下
    • 当初はゲームバランスや戦術性が無印から改善されたと言われていたが、研究が進むにつれ、無印の方がバランスの取れていた面が見えてくるようになった。
      • 例えば盾役が敵の攻撃を引きつける上で重要な「デコイ*5」という魔法が、無印ではゲームが半分過ぎる頃にようやく店売りされる。これが本作では最初から店売りされているため、組織的な戦術が序盤から組めると好評だった。
      • しかし本作では回復魔法の「ケアル」が範囲魔法になったため、敵の攻撃対象など気にせずに適当に散らしてダメージを分散させるほうが回復効率が良く、そもそも盾役を用意する必要性が無印ほどには無くなっている。
      • ついでに敵の範囲技を受けてもケアル1回で済むため、位置取りにピリピリする必要が薄くなっており、団子になって戦っても問題ない。しかもキャラクターのMP量が多いため魔法も使いやすくなり、後出しのケアルで何とかなる場面が増えている。
      • つまり被ダメージと回復の効率を考えなければMP切れ&金欠になりやすい無印と違い、比較的雑な立ち回りでも良くなっており、組織的な戦術を組むことに、無印版ほどの意味がなくなっている。
    • 一方の無印は、その後「デコイ」なしでも敵の攻撃対象を操作できる「ヘイトコントロール」というテクニックが確立、より自由度の高い戦略が組めるようになると評価が一転。
      • 厳しい状況を戦術やテクニックで対応する緻密さや柔軟さに奥深さを見出すディープなユーザーが増え始め、その点においては、難易度が下がった事で緻密さが欠け、ジョブによる制限が入った事で柔軟さに欠けるインター版は逆に劣っているという見解が生まれている。
    • 中盤以降ややり込みではこういった粗が次々と出てくるが、逆に言えばそこまでこだわって初めてという粗でもあり、戦術性が下がったとは言っても決して楽に攻略できるゲームではない。そのあたりの微妙な具合も意見の分かれやすい部分である。

ジョブの名称

  • 例えば旧作で「赤魔道士」「時魔道士」という名称であったジョブが「赤魔戦士」や「時空魔戦士」という呼び名に変わっていたり、槍使いには「竜騎士」が、刀使いには「魔剣士」「侍」が、斧使いには「バーサーカー」「バイキング」が旧作には存在したが、本作ではそれぞれ「ウーラン」「もののふ」「ブレイカー」となっている。
    • 短刀や忍刀使いの「シカリ」も「シーフ」や「忍者」に出来ただろう。すべて旧作からネタを持ってくる必要性はないが違和感を感じるという旧作ファンもいる。
  • 開発スタッフ曰く「~魔戦士」は「たたかう」の物理攻撃もこなせるという面を強調したかったという理由があるとのこと。また「ウーラン」を「竜騎士」にしなかったのもモーション製作スタッフがすでに他の作品開発に移っていたため、竜騎士の代名詞である「ジャンプ」のモーションを作成できなかったから、というような背景があるようだ。
    • 「シカリ」はネット等で調べた時にマタギの文化(シカリ=マタギの長)を知ってもらいたかったからという理由が述べられている。そのためシーフや忍者のイメージを無くす為に盗むのライセンスが存在しない。

トレジャーの中身や敵からの盗品、ドロップ品の改変

  • かなり変更されているため無印で得た知識を使うことが出来ない場面が多い。逆にフレッシュな気持ちでプレイできるとも言えるが…。
  • 特に無印でも問題になっていた通称「ナブ矛」も無くなっているため「苦労して取りに行ったけど入ってなかった」と絶望したプレイヤーも多かった。

問題点

無印から継続している問題点については割愛。

  • 仲間になるキャラクターが6人に対してジョブは12種類。一度選択したジョブは途中で変えられないため、装備や魔法を入手しても使えない状況が発生する。
    • この点は後述のTZA版で解消されている(ジョブの選び方にもよるが)。
  • 新たに無印の武器にアルファベット一文字を追加した「アルファベット武器(「蠍のしっぽF」「マサムネI」など)*6」が追加されたが、性能はともかく基本的にそのネーミングは不評。
    • 武器のグラフィックも元の武器そのままである。
    • これの追加によって元武器の入手方法が変わってしまって*7いたり、元武器がただの下位互換になってしまっていたりすることもある。

総評

当初の評判は上々だったが、研究が進むと上記の問題点も指摘される様になった。
オリジナルは自由度と完成度、対するインターナショナルは快適さと爽快感が重視されており、FFXIIファンでもオリジナル派とインターナショナル派で二分されている。
どちらもそれぞれの良さがあるので、これからプレイしようという人にとっては、どちらを選ぶか悩ましい問題になっている。
重要なのはゲームをプレイする上で何を一番重視するかである。
自由度の高さを好んでいた海外プレイヤーからは、制約の多さで無印ほどの評価を得られなかった。


余談

  • 作曲家である錦織健氏はインターナショナル版(と『FFT獅子戦争』)をやり込んでいた。

ファイナルファンタジーXII ザ・ゾディアック・エイジ

【ふぁいなるふぁんたじーとぅえるぶ ざぞでぃあっくえいじ】

ジャンル RPG

対応機種 プレイステーション4
Windows 7~10(Steam)
Nintendo Switch
Xbox One
Windows 10(MS Store)
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 Virtuos
発売日 【PS4】2017年7月13日
【Steam】2018年2月2日
【Switch/One】2019年4月25日
【MS Store】2021年2月11日
定価 【PS4】7,480円
【Win】5,280円
【Switch/One】6,380円
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 良作
ポイント 『IZJS』をベースにさらなるシステム調整
移植作品ながらオートセーブなど各種便利機能も追加
目玉はジョブの組み合わせ
システム・グラフィック・サウンド以外は変更点無し
ファイナルファンタジーシリーズ

概要(TZA)

『ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアック・ジョブ・システム』のHDリマスター版。略称は『TZA』など。
オリジナル版(無印)ではなく上記のインターナショナル版をベースとしており、そこからさらにシステムの調整が行われ、『IZJS』ともまた違う感覚でプレイできる作品となっている。
また、新たにトロフィーシステムに対応。これにより「空賊の隠れ家」は一旦廃止されていたが、後に世界累計出荷・DL販売100万突破記念でパッチにより復活した。

オリジナル版とは異なりリマスター版は海外でもリリースされた為、ようやく『IZJS』準拠の作品が海外でも遊べるようになった。
それに併せ、2018年2月2日にSteamでWindows版も配信。こちらは音声は日本語・英語両対応、テキストも各種言語対応となっている。
さらに翌年にはOne/Switch版も発売され、その後にこの2種に準拠したWin10版がMicrosoft Storeで発売された。
機種によって特徴が異なる箇所があるため、独自の部分については後述。同じWin版でもSteam版とMS Store版は仕様が異なるため注意。


特徴・評価点(TZA)

ただのHDリマスター移植に留まらない、進化した『ファイナルファンタジーXII』

  • ただHDリマスターしただけでなく、開発時点での最新のグラフィック表現技術も取り入れられており、グラフィック面は大きな進化を果たした。
    • PS4 Pro ENHANCEDにも対応している。
  • BGMを全編新録を行っている。最大7.1chのサラウンドにもネイティブ対応している。
  • 音声は日本語と英語を収録。音声は流用だが、一部であるが新録が行われた箇所も存在する。
  • シーンやモブハントの追加は無し。上記の新録はIZJSでの追加シーンのみ。
  • 移植で失敗しがちなバグ・不具合の増加や、BGMアレンジの不評などもなく、純粋にグラフィックやBGMのクオリティアップを果たしている。
    • 新録BGMが合わない人を想定したかのように、最初から「無印(PS2音源)」「新録版(フルオーケストラ)」「サウンドトラック版(PS2音源へ落とし込む前の音源。PS4版のみアップデートが必要)」の3種類の音源を選択できるようになっている。

2種のジョブ選択

  • 2個目のジョブを選択する事が可能になった。これにより、1度の周回プレイで全12種類のジョブを使うことができる。
    • 『IZJS』での「ジョブごとの制約の多さ」や、「せっかく手に入れた魔法や装備品が使えない事態」「それによる戦略性の狭さ」といった問題を大幅に解消する事が出来る。
    • もちろん仲間内での同ジョブ被りも可能なので、プレイスタイルによってはその限りではない。一長一短はあれど選択肢としては被りも十分アリである。
    • 習得したライセンスは同時に効果を発揮するため、「エクスカリバー+白のローブ」「計算尺+盾」などのインターナショナル版では不可能になった組み合わせも可能になった。
      • 2つのジョブを組み合わせる事で、IZJSでは組み合わせる事が無理だったライセンスや装備品のシナジー効果も期待でき、組み合わせ次第では役割や立ち回りがガラッと変わるため、選択肢は非常に豊富。
    • 堅実に攻略できるキャラを作ったり、ロマン火力重視のキャラを作ったりと、キャラ育成の遊びの自由度はかなり増強されている。
    • 1キャラ毎に出来る事が増えたおかげで、ヘイト集めの盾役やサポーター・アタッカーなど、役割分担が作りやすくなっているため、組織的な戦略を考える楽しみもIZJSと比べ復活してきている。
    • パーティ内での装備品やジョブのやりくりに悩んだりする、ゲーム全体を通しての戦略を考える楽しみも生まれている。
    • このシステムを楽しむことが出来るユーザーであれば、ジョブの組み合わせによるシナジーを予想し、実際のプレイで実験するなどの遊び方も出来、周回のモチベーションになりやすい。

オートセーブ機能

  • オートセーブ機能が追加。一度リセットしたりゲームオーバーになった場合でも、同じ状況でリスタートする事が容易になった。
    • エリアを切り替えるごとに自動でセーブされるようになった。このおかげでアイテム収集のためのマラソンなどもしやすくなっている。

ハイスピードモードの段階分け

  • 4倍に加えて2倍のハイスピードモードを追加。使い分ける事でゲームテンポをより早めることができる。
  • 元々4倍速では早すぎるという声もあり、2倍速モードの追加は好評。

「順番待ち」の改善

  • メモリ上の制限として存在していた「順番待ち」が改善。エフェクトの激しい上級魔法が使いやすくなった。
    • リアルタイムバトルが売りのFF12だが、旧来のバージョンではエフェクトの派手な技を使うと画面処理が落ち着くまで行動の順番待ちをするという仕様が存在した。今回のリマスターで修正されようやくあるべき姿になったと言える。
      • 厳密には「撤廃」ではなく同時動作可能許容量が増加しただけで、順番待ち自体は残っている。しかし演出付き大技以外では殆ど発生しないため、事実上撤廃されたと考えても良い。
    • ただし戦略の根幹部分に関わる仕様でもあったためゲーム性はやや変化した。
      • 原作のバランスを重視するプレイヤーも存在するがあくまで好みの問題であるため、改良点である事に違いはない。

トライアルモードの仕様変更

  • 『IZJS』ではただの腕試し+「弱くてニューゲーム」の開始のみだったが、ここで得たアイテムの本編持ち込みが可能*8になったことで、ゲーム攻略のためにも挑戦する価値が生まれている。
    • しかも希少品が豊富に入手できるため、個数限定品を複数のキャラに装備させたり、「本来終盤に手に入るため活躍の場があまり無かった装備品」を早いうちから活躍させられるなども出来、本編で採れる戦略の自由度が大幅に増加している。

その他

  • ゲーム画面中に透過マップを表示できるようになった。

アップデートで対応(Switch/One/MS Store版は初期から対応)

  • ジョブのリセットが実装された
    • ジョブの選び直しができるようになった。特定のキャラ(モンブラン)に話しかけることで取得ライセンスをリセットしてジョブを選ぶことができる。
    • しかも消費したLPはリセット時にすべて戻ってくるという大盤振る舞いであり、長らく抱えていたゾディアックジョブシステム関連の問題点は大部分が解消されたといえる。
      • 発売当初のPS4/Steam版は、一度選んだジョブはその周回中ずっと固定というIZJS仕様のままで、各ジョブを最後まで育てるにはかなり終盤までやり込む必要があったため、組み合わせを気軽に試してやり直せない事について不満が上がっていたが、この機能が追加されたことにより事実上解決した。
    • もちろんNPCに話しかけることが条件であるため従来のジョブシステムのような「いつでもどこでも」というわけにはいかないし、ストーリー進行上ラバナスタに戻れない時期には当然リセットもできなくなる。
  • ガンビットのセットを3つ保存できるようになった。これにより「道中用」「一般ボス用」「状況に応じて編集する用」と言った使い分けが可能になり、利便性が増した。

Steam版のみの追加要素

  • 「強くてニューゲーム」「弱くてニューゲーム」が最初から選択可能。他機種では解禁条件が必要。
  • ギルやライセンスポイントをすぐにMAXにできる「ブースト機能」(いわゆる公式チート)が追加。

Switch/One/MS Store版のみの追加要素

  • 「強くてニューゲーム」の仕様が従来から大きく変更。
    • 他機種のように単に高レベルでスタートするわけではなく、アイテム、装備品(武器・防具・アクセサリ)、ギル、魔法、ガンビット、ライセンスポイントを持ち越しに変更された。
    • LPも引き継がれるため、クリア前の状態の一部を周回プレイ直後から再現でき、序盤では敵わなかった強敵を蹴散らせるといった爽快感を楽しめるようになった。
    • 周回を重ねれば個数限定品を何個も収集することなども可能。
    • プレイ時間、歩数、マップ情報、だいじなもの、おたからはリセットされる。そのため、予めおたからは売り払っておくといい。

賛否両論点(TZA)

難易度の低下

  • ジョブを2つ選べるようになったこと自体は好評だが、一方で『IZJS』の時点で既に無印よりも難易度が低下していたのに、そこからさらにプレイヤー側にできる事が増えた事でますます難易度が下がったという指摘もある。
    • 今回も『IZJS』と基本的な敵の強さは変わっておらず、どれだけシナジー効果の無いジョブを組み合わせようが攻略できる程度の難易度になっている。
    • 『IZJS』では能力アップのライセンスが増えたことが難度低下の要因の1つだったが、今回はそれらを2ジョブ分も取得できるので素のステータスをさらに高くできる。
      • 例えば、HPライセンスの多いジョブと魔力ライセンスの多いジョブを組み合わせると、HPも魔力も高いキャラを作れる。
      • 同一ライセンスの取得状況はジョブ間で共有されるため、同じものを2つ取れるわけではない。例えば、HP+270を持つジョブ同士を組み合わせても二重取りはできず、一方で取れば他方でも取得済みになる。
    • またトライアルモードのデータを本編に持ち越せるようになり、それによりレアアイテムの量産も可能となったことによって「本来手に入るはずのタイミングや入手個数」を無視できるようになっているために、やはりヌルゲー化しているという意見もある。
    • 『FFXII』には「強敵相手に組み上げた装備やガンビットのセットが完璧に動作するのを眺める」という楽しみ方があるが、本作でそれをやろうとすると、準備の過程でステータスに余裕ができ、創意工夫が輝くまでもなく敵が逝くような事態も起きやすい。
  • 本作で発生している評価の多くはこれらの「出来る事が増えた事による自由度の向上と難易度の低下」に集中している。
    • が、ヌルくなったのではないかと言いつつも、割り切って本作の特色を満喫しているユーザーも多く見られ、どちらかと言えば好評寄りと言える。
    • また、難易度が低下したとは言え、隠しボスなどは準備を怠れば易々とこちらを全滅させてくるような敵も多く、あくまで「以前と比べて」である。
      • 本作で増えた要素に関しては封印も容易であるため、IZJSと同じ感覚で遊びたければ自力での調整も可能。
      • 自由度自体は『IZJS』から向上しており、インターナショナル版から引き継がれた「弱くてニューゲーム」の存在もあるため、プレイスタイル・難易度に関してはある程度各々の好みで選ぶ事はできるようになっている。
      • 『FFXII』シリーズで最もプレイヤーが有利な本作において、レベルアップのない「弱くてニューゲーム」は遊び甲斐のあるモードとして一定の評価を受けている。「敵が長持ちする」「消耗品が減ってくれる」などという喜びの声もある。

問題点(TZA)

無印や『IZJS』から継続している問題点については割愛。

  • 先行して発売されていたPS4/Steam版には後発のOne/Switch/MS Store版で実装された追加要素が存在しなかったが、2020年のアップデートにより一部実装された(後述)。
    • ただしそれでも完全ではなく、強くてニューゲームでのアイテム引き継ぎ要素については未だ実装されないままであるため、この点は残念である。
    • 一方、前述のようにSteam版のみの追加要素も存在する。後述の非公式MOD等も考慮すると、相対的に見て最初期に発売されたPS4版が一番不憫になってしまっている。
  • 先述の通りジョブのリセットが実装されたが、ライセンス取得時に一つずつ確認が入る挙動はそのままのため、最終盤にリセットすると再取得の操作だけでかなりの時間を取られる*9。もともと無かった要素のため仕方のない部分もあるが、もうひと工夫あれば快適であったろうに惜しい点。
  • ベースとなったFF12IZJSが30fps動作を前提とした設計になっている故か、一部プラットフォームでサポートされている60fps描画モードを利用すると、描画がおかしくなる事がある。
    • 特に召喚獣ゾディアークの召喚技「終のエクリプス」が顕著で、マシンスペックに余裕があっても演出の途中でカクツキが発生したり、音ズレが発生するといった現象が起こる事がある。
+ アップデート前の問題点
  • 先発のPS4/Steam版には後発のSwitch/One/MS Store版で実装された追加要素が無かったため、結果的に機種間に明確なゲーム性の差が生まれてしまい、アプデを希望しているPS4/Steamユーザーは多かった。
    • その後、One/Switch版の発売から1年後の2020年4月24日にPS4/Steam版を対象としたアップデートパッチが配信。ジョブリセット機能とガンビットセット強化に対応した。
  • 当初は「空賊の隠れ家」が廃止されていた。
    • 先述したようにトロフィーに置き換わったため、発売当初は実装されていなかった。
      • しかし元々あった要素がなくなっているのは寂しいという意見が多かったためか、その後、世界累計出荷・ダウンロード販売本数が100万本突破したことを記念して、パッチ配信により復活した。

総評(TZA)

『IZJS』をベースにしており、無印とはシステムに差異があるため元の遊び方は完全に再現はできない。
しかし『IZJS』からは順当かつ大きく進化しており、ただのHDリマスターに留まらない優れた仕上がりとなっている。
『IZJS』と比べて単純に出来ることだけ増えており*10、今から『FFXII』をプレイしてみたいという場合は十二分にオススメできる作品である。


余談(TZA)

  • 本作が「無印と同等の作品もしくは上位互換」というわけではない点は注意。
    • 一方で、快適性の面ではさすがにオートセーブや倍速機能を持つ本作のほうが遊びやすいため、購入の際はそのあたりも含めて考えたい。
  • 上述の通り、ただのHDリマスターに留まらない進化を果たした本作であるが、それ故かPC版の要求スペックが発売当時のPC事情基準で見て、それなりに高いモノであった。
    • フルHD60fpsですらハードルが高いのに、公式サポート対象外となるが、4K解像度でプレイしたい場合は本気で高いマシンパワーが必要になる。
    • PCで本作をプレイしたい場合は「たかがHDリマスター作品でしょ?」と侮らないほうが良い。幸い、スペックが辛い場合は画質等を落として調整できる。
      • 流石に2023年以降の主流となっているCPU(4コアのCPUなら十分)、GPU(GTX1650、RTX3060など)なら十分に遊べる性能を持っているので、これからPC版をプレイしたい人は、その時の現行スペックのCPU、GPUを搭載したPCを組むか、購入すれば特別気にする必要はない。
  • One/Switch/MS Store版は独自の追加要素があったが、Steam版ではユーザーの手により非公式のMODでそれを再現したものも登場していた。もちろん公式のものではないので導入は自己責任である。
    • アップデート以降も、強くてニューゲームでの引き継ぎについては現状これを導入することでしか実現できない。
  • パンネロ役の小澤真里奈氏によるYouTubeチャンネル「くるみらTV」の2022年9月配信の回にてヴァン役の武田航平氏を招いて本作が実況プレイされており、『例のシーンで本当に「オイヨイヨ」と呼んでいるのか?』と検証がされた。
    • 結果、 「飛びオイヨ」と聞こえるという新たな事実が発覚。さらに武田氏による生アフレコまで披露されWiki更新案件とまで言われていた。 確かに当時と現在の演技の比較ではあるので貴重かもしれないが…。
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最終更新:2024年03月14日 01:37

*1 ウーラン=ポーランドの槍騎兵

*2 シカリ=日本のマタギの頭領

*3 わざ「~破壊」のこと。成功すると敵の能力を低下させるわざで、攻撃・防御・魔攻・魔防の四種類がある。

*4 ランダムで黒魔法のどれかを発動するわざ。無印では発動する魔法が下位に偏っていたため使いづらかったが、IZJSでは全ての黒魔法が等確率で発動するようになったため強力な魔法を期待しやすくなっている。

*5 文字通り囮になる魔法。この状態になったユニットが敵からのターゲットを一身に引き付ける。

*6 武器攻撃力の高い順にその武器のアルファベットを並べていくと「FINAL FANTASY」になるというもの。

*7 このアルファベット武器に置き換わっている場合が多い。

*8 ただし、そのエリアの敵を倒して次のステージに移らなければならない。

*9 6人全員の全ライセンスを取得しようとすると、それだけで1時間以上かかる。

*10 厳密に言えば「順番待ち」のみ狙えなくなっている。『IZJS』ではあまり狙う意味も無かったが。