ドラえもん 迷宮大作戦

【どらえもん めいきゅうだいさくせん】

ジャンル アクション
対応機種 PCエンジン
メディア 2MbitHuカード
発売元 ハドソン
発売日 1989年10月31日
定価 4,900円
判定 なし
ポイント ガワ換えによる奇妙な世界観
ゲームの出来自体は平凡
ドラえもんシリーズ


概要

PCエンジン初のドラえもんゲーム。穴を掘って敵を落とす『平安京エイリアン』をベースに、ドラ焼きを集めるドットイート要素・ひみつ道具を活かした攻撃アイテム・池やドアなどの地形フィーチャーを加えて大幅アレンジした内容になっている。

厳密にいえば、本作以前に日本物産からリリースされていた平安京エイリアンの類似作品『キッドのホレホレ大作戦』がベースになっており、基本システムはもちろん敵キャラやマップチップに至るまでそちらからの流用という、いわゆるキャラ替え移植にあたる。*1
移植に当たってBGMと一部のグラフィックをドラえもん関連のものに差し替え、ゲームバランスや操作性の調整が施されている。

ツチダマに攫われた4人を救うべく現代・江戸時代・戦時中・未来・原始時代を転々としつつ、ツチダマ・ギガゾンビ *2 を倒すのが目的。


主なルール

  • 一人プレイ専用、難易度三段階(やさしい、ふつう、むずかしい)、全60ステージ。
    • やさしいモードでは穴に落ちなくなったり一部の敵が出現しなくなったりなど大幅に楽になっている。
    • むずかしいモードでは敵のスピードやボス敵の攻撃頻度が上昇している。
  • 画面内に存在するドラ焼き16個を全部回収するとカギ(秘密道具のゴマロック)が出現する。そして、カギを取った状態でどこでもドアに入るとそのステージはクリアとなる。
    • 何故ドラ焼きを回収してカギが現れるのか、そもそもどこでもドアがカギで開閉できるアイテムなのか、という突っ込みは気にしてはいけない。
  • 「制限時間が0になる」「プレイヤーキャラのドラえもんが敵、及びその攻撃に触れてしまう」「池や川に落ちる」「穴に落ちる(下記)」のいずれかで1ミス、残機数がなくなるとゲームオーバー。
    • 残機数は、20,000点、70,000点、以後50,000点毎に増えるほか、敵を100匹埋めると出現するドラミを取る事でも増やせる。
  • 主な敵の倒し方は「地面に穴を掘って敵を埋める」「ときおり出現するひみつ道具で攻撃」の二種類。
    • 手袋や長靴を手に入れることで一度に掘れる穴の数や移動速度を強化できる。能力は取るごとに倍々ゲームで際限なく上がっていくのでノーミスで進めれば道の端から端まで一気に穴を掘ることも可能。(後述の理由でミスもしやすくなるが)
    • 穴を掘り敵を落として埋めると、その地形は墓が建てられ二度と埋められなくなる。難易度が「やさしい」以外だとドラえもん自身も掘った穴に入ると埋まってミスになってしまう。
      • 元祖『平安京エイリアン』と違い、穴に落ちた敵を他の敵が救出することはない上にその頭上を通過できるので、敢えて埋めずに放置する作戦もある。
    • ほとんどのひみつ道具は制限時間があるが、その間はいくらでも特殊攻撃が可能。
+ ひみつ道具

最初からマップに配置されている秘密道具(32秒間の持続時間中は穴を掘れない)

  • シャボン玉ピストル
    • 敵をシャボン玉に包んで倒すことができる。倒すまでに若干のタイムラグあり。
  • カチンカチンライト
    • 原作のそれとは異なり、敵を氷漬けにする光線を放てる。氷漬けになった敵は壁や他の氷にぶつけて破壊することができる。
  • ヨーヨー
    • どこがひみつ道具なのかというツッコミはさておき、ヨーヨーで攻撃できる。使用中は延々攻撃判定が出続ける上、壁があっても貫通する。

敵を倒すと出現することがある*3秘密道具(32秒間の持続時間中にも穴を掘れる)

  • ヒラリマント
    • 敵およびその攻撃・穴・水などあらゆる障害に対して無敵化する。他のゲームにおける無敵アイテム。
  • タンマウォッチ
    • 敵の動きを停止させる。魚など倒せない敵は停止しないが、ツチダマやギガゾンビ*4の攻撃は停止する。
  • スロー
    • 原作5巻収録「のろのろ、じたばた」にも登場したひみつ道具。倒せる敵全てのスピードが鈍化する。体当たりされるとミスなので注意。
  • アイスクリスタル
    • 画面上全ての倒せる敵が氷漬けになる。しかも持続時間中は復活した敵も即座に氷漬けになる。作中でもトップクラスで強力なオリジナルのひみつ道具。
  • 花火花
    • 一定時間後に四方に爆発する花火玉を仕掛けられる。タイムラグがあるが攻撃範囲はそこそこ広い。

最初からマップに配置されているパワーアップ型秘密道具(ミスするまで効果は継続する)

  • 快速シューズ
    • ドラえもんの移動速度が上がり、以後重ね取りするとさらに上がる。
    • 特定の場所を掘ると出現する隠しアイテムの赤い快速シューズは一気に最高速まで上がる。
  • モグラ手袋
    • 一度に2個連続で穴を掘れるようになり、以後重ね取りするごとに倍になる。
    • 特定の場所を掘ると出現する隠しアイテムの赤いモグラ手袋は、1つで最高の16個連続*5で掘れるようになる。
  • 敵は何度でも復活するので、倒せば必ずしも楽になるわけではない。ただし、同じ敵を連続で埋めると高得点となり、3匹連続でひみつ道具出現条件を成立できる。
  • ステージを進んでいくとボス戦ステージが二回発生(30面:ツチダマ、60面:ギガゾンビ)。最後のボスであるギガゾンビを倒すとゲームクリアとなる。
    • ボスもドラ焼き16個を全て回収することで倒すことができるが、ひみつ道具による攻撃は(ヒラリマント・タンマウォッチは有効であるものの)通用しない。

評価点

  • 移植元の『キッドのホレホレ大作戦』よりゲームバランスと操作性が大幅に改善されている。
    • 穴掘りや方向転換、角を曲がる時の挙動が大幅に改善。出会い頭にとっさに敵を埋めることもやりやすくなった。
  • ステージ数が多く、長くプレイできる。
    • 各ステージは大きく分けて5つの時代があり、それぞれに仕掛けや敵の種類が変化を持つ。
      • 現代・戦争時代は建物や川が多い。江戸時代は池が比較的多い。未来・原始時代は川や池こそないが倒せない敵の障害が多い。といった特徴がある。
  • 難易度が3種類あり、かんたんなら誰でもクリア出来るくらい難易度が低く、敵の数も少ない。中ボスのツチダマやラスボスのギガゾンビは何もしてこなくなる。
  • 当時のPCエンジンソフトとしては珍しく、バックアップが対応している他、パスワードコンティニューも可能となっている。
    • パスワードに使用されているのはドラえもん・ドラミの顔でそれぞれ向きが4種類あり、これを4つ並べるというわかりやすいもの。
    • パターンが少ないので顔や向きの法則性を組んで適当にパスワードを入力すればある程度のステージから始められる容易さもある。
  • オープニング、エンディングのイベントは結構アニメ版の雰囲気が出ている。
    • ステージを一定区間クリアすると仲間救出イベントが発生するというお楽しみがある。
  • パワーアップした際一気に穴を掘ったり埋めたり出来るのはなかなか爽快。
    • ふつう以上の難易度では自滅のリスクがあるがかんたんなら気楽に遊べるのも嬉しい。
  • BGM
    • ハドソンの初期コンシューマソフトを支えた竹間淳氏による「ドラえもんのうた」をアレンジしたBGMの評価が高く、オリジナルとほぼかわらない編曲から各時代の雰囲気に合ったアレンジ、さらにはラスボス戦にふさわしい戦闘BGMへの大胆なアレンジまで、ほぼ全編に渡ってアニメでお馴染みの曲を様々なスタイルで楽しめる。
  • 難易度の「ふつう」から通路をふさぐ扉の存在。
    • ドラえもんだけ開閉が可能な扉でこの点を生かして通せんぼしたり、敵の追跡から守るシェルター代わりにすることもできれば扉の反動を利用して敵を弾き飛ばすことが出来る。川や池の近くに扉があることで敵を溺れさせることも可能になる。
      • 逆に扉の反動でドラえもんが溺れ死ぬような配置や開閉で道を切り開かねばならない扉もあり、パズル要素が介在している。

問題点

  • ステージを進んでもフィールドが広くなるだけで変化に乏しく、クリアに時間が伸びるだけになるのでステージのマンネリ化が激しい。
    • 先に進んでも敵の顔ぶれがほとんど変わらない上に、どの敵も動きは同じ(こちら狙いで体当たりを仕掛けてくる。ただし敵によってアルゴリズムに若干の違いがあるようで、兵隊ジョーなどの各時代固有の敵よりガンガンなどの全時代共通の敵のほうが執拗に追ってくる)であり、その辺がマンネリ感を増幅させる要因となっている。
    • また、ステージ数が原作の倍になったと言えば聞こえはいいが、ゲーム性の根本自体が単調さをはらんだものであるため、ステージ数の拡充自体がマンネリ感を増す要因にもなってしまっている。
  • ボス戦がしょぼい。
    • ドラえもんに向けて弾を放つだけで動き回っていれば簡単にかわせる上、難易度も簡単で余裕で倒せてしまう。はっきりいって道中戦の方が遥かにクリアが困難といえる程。
    • 後半の道中面はやたら広い上に扉・ジャンプ台・ワープホールの使い方をよく考えないとタイムアップや事故死を招きやすいので相当難しい。
  • ミスすると一切のパワーアップが初期化されての復活となり、立て直しが困難になりやすい。
    • 特に敵の動きが早くなり数も多い後半ステージは顕著。
  • ステージクリア後にスコア清算画面となるのだが、これが飛ばせない上に結構表示時間が長い。
    • これにより若干ではあるがテンポが阻害されてしまっている。
  • システム流用による原作の雰囲気との乖離
    • 『キッドのホレホレ大作戦』から要素と演出をそのまま流用しているため、ドラえもんの世界観にそぐわない表現が目に付いてしまう。
      • 基本攻撃が穴に敵を落として埋める、すなわち生き埋めであり、ご丁寧もに敵が埋められた場所に墓が建てられ、その上にドクロマークが浮かびあがる演出がそのまま。更に扉がある難易度における敵を水に落として溺死させる(溺れもがいた後にドクロマークと共に消える)という攻撃方法までもがそのままである。
      • 他のひみつ道具においても「ヨーヨーで殺る、敵を凍らせて粉砕、泡に閉じ込めて破裂」といった多種多彩な攻撃方法を駆使して敵をジェノサイドしていく。
      • しかもゲーム中のドラえもんはミス時とドアに弾かれた時以外一切無表情で、あまり愛嬌が感じられない。無表情のままロボットのように(ロボットだけど)淡々と敵を埋めて葬っていくドラえもんがやたらこわい。
      • ステージクリア後は原作と同様に建てた墓の数をカウントして1つ1000点のボーナス点が入る精算画面となり、そのときのBGMはドラえもんのうたをジャジーでおしゃれなアレンジをしたもの。おしゃれなBGMで敵を生き埋めにした墓を数えてボーナス点が入るという状況は、冷静に考えるとちょっとした狂気かもしれない。
  • せっかくドラえもんを使っているのだからせめてもう少し、ドラえもんらしさあるマイルドな表現にして欲しかったところ。

総評

分かりやすくて面白いゲーム性と、ドラえもんならではのユニークな演出の数々が素敵な一作。ステージ開始時のドラえもん・ドラミ・敵キャラによるスラップスティック的なフィールド表示は必見。ドラえもんのテーマを職人芸的にアレンジさせたBGMの完成度も高く、一聴の価値あり。
しかし、あまりにもステージのマンネリ化が激しく、その結果プレイしていく内に「楽しい」から段々と「だるい」になってくる苦痛さが残念なところである。


余談

  • 海外版である『Cratermaze』はゲーム中のグラフィックとBGMが『キッドのホレホレ大作戦』のものに再び戻されている。
    • しかし、「ドラえもん」と「ホレホレ」が交錯しているという奇妙な世界観となっている部分はそのまま。ストーリーデモ画面が描き換えきれておらず、さらわれ役が「ホレホレ」の主人公と色違いの同じ服を着たのび太・しずか・スネ夫・ジャイアンそのものであったり、タイムマシンが駆け抜ける時空空間がまんまだったり、さらい役に至っては完全にツチダマそのまんまだったりする。ジャイアンもどきの服がオレンジ色なのも何か確信犯的なものを感じる。
    • ゲーム中も、ドアだけは「ホレホレ」の絵に戻されておらず、どこでもドアのまんまになっている。
    • エンディングに至っては、ジャイアンもどきがのび太もどきをボコボコにする描写がそのまんま残っており、元がドラえもんであることを全くもって隠せていない。
+ タグ編集
  • タグ:
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  • ドラえもん
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最終更新:2023年08月16日 13:23

*1 『ホレホレ大作戦』の企画は当時、日本物産からハドソンに移籍した藤原茂樹氏が担当している。また、本人によれば平安京エイリアンとの類似はあくまでも偶然だったらしい。

*2 1989年公開の映画ドラえもん『のび太の日本誕生』に登場した悪役

*3 同じ敵を連続で3匹埋めた場合は確実に出現する

*4 原作ではタンマウォッチに相当するタイムロックを無効化させている

*5 「キッドのホレホレ大作戦」では8個が上限だった。