ゼノサーガ エピソードIII [ツァラトゥストラはかく語りき]

【ぜのさーが えぴそーどすりー つぁらとぅすとらはかくかたりき】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション2
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 モノリスソフト
発売日 2006年7月6日
定価 7,329円
判定 なし
ポイント 戦闘テンポや音楽は改善
シンプルなコマンドバトル
シナリオは微妙なまま
ゼノシリーズ


概要

ゼノサーガシリーズの完結編。あまりの酷評から一気に評価を地に落とした前作、ゆえに高橋哲哉ら『エピソードI』のスタッフの復帰を望む声もあったが、今作もエピソードIIと同じスタッフが手がけている。


評価点

戦闘テンポ

  • エピソードI、II共に問題とされていた戦闘のテンポは大幅に改善されている。
    • 戦闘に入るまではほぼロード無し。敵シンボルに接触したら即戦闘開始と言っても過言ではない。
    • 演出は全体的にスピーディーになり、Iの必殺技の復活により派手な演出から爽快感も得られるようになった。
    • またES戦闘(ロボット戦闘)も「アニマ覚醒」システムによる必殺技の爽快感が非常に高く、シリーズ内でも評価が高い。

デザイン

  • 前作のようなリアルなキャラデザインではなく、田中久仁彦氏のデザインを尊重しつつアニメ版に近いデザインになったことで評価は持ち直した。
    • また機体のデザインも悪い評価はあまり見られない。

音楽

  • 前作から梶浦由記氏が続投し、イベント以外に通常戦闘などすべての作曲を手がけた。
    • 前作のようなサイバーチックな音楽から、エピソードIに近いクラシック調の音楽へ方向性が回帰した。
    • 「the battle of your soul」「godsibb」「promised pain」など非常に壮大な雰囲気の楽曲がそろっており「完結作に相応しい完成度」と高く評価された。

シナリオ面

  • 個々のエピソード(ジンとマーグリスの対決、ジギーの過去など)は見所もあり、完結のさせ方も熱くなれる。
    • ゼノギアス』に登場したキャラクターに酷似した人物、酷似した機体が多数登場し、プレイした人ならにやりとできる部分も多い。
      • ある重要なキャラクターは(設定は異なるが)ゼノギアスに登場した人物と全く同じキャラクターデザインと名前である
      • また、ある機体はゼノギアスの主人公機に見た目が似てるばかりか、構えや技、果ては真の姿までもが酷似しており、ファンなら歓喜ものである。

その他

  • ショップに装備品と言った、前作で廃止されていたRPGの基本的要素が復活。搭乗機のチューンナップも再び可能となった。
  • アレンやカナンなど旧作において、ただ同行するだけだった人物も一時的に戦闘に参加するようになっている。これまで描かれなかった彼らの勇姿を拝めるのも本作ならではである。
  • 前作で廃止されていた用語集が復活した。旧作の復習が容易に出来る事も大きい。
    • 但し、前日談FLASHの解説や一部設定の種明かしを用語集に任せ、メインストーリー上では省いていると言う問題も。詳しくは後述。
  • イベントリプレイ機能が搭載された。既に観たムービーや会話シーンを好きなだけ見返す事が可能になった。

賛否両論点

バトル面

  • 上記の通り、テンポは格段に改善された反面、そのテンポの為に従来の要素を幾つか犠牲にしてしまっている。
    • ゼノギアスからの伝統であった「ボタンの組み合わせ」が無くなり、必殺技にしても新要素のアーツにしても、「コマンド選択」になってしまいかなり味気ない。
    • スピーディーにはなったものの、一部の演出は簡素化している。
      • 特にエーテル発動時の演出も非常にシンプルなものになっている。ただ手を上げて淡々と「エーテルドライブ」と発声するだけで、発光や勢いのある掛け声、個性的なポーズと言った演出も無くなった。
      • 前作までは「エーテルサーキット・オープン!」「我、力の一端を解放せり」など一人一人専用の台詞が用意されていたのだが、今回は全員同じ「エーテルドライブ」の一言である。
    • 前作のバトルは多数の問題点を抱えながらも、その戦略性は評価されていた。しかし今回はそれも薄れており、あまり深く考えなくともそれなりに強化していればサクサク進むバランスである。
      • 早くストーリーを進めたい人には丁度良いだろうが、じっくり戦略を練って戦いたい人には物足りない。

問題点

シナリオ面

  • 全体的な完成度は高いとはいえない。
    • まず後半(特にDISC2)の展開がかなり駆け足で、描写が足りない部分が見受けられる。また上記のように個人個人のエピソード自体は完結しているが、それを優先したために組織間の思惑などはほとんど描写されない。
      • DISC2からはひたすらダンジョンが続く。一つのダンジョンをクリアしたらまたすぐに次のダンジョンが出現、もしくは次のダンジョンと繋がっている。と言う形のままラストバトルまでほぼノンストップで進む。ダンジョンの合間に濃いエピソードがある訳でもない。
      • 因縁の敵との決着や真実の解明などはされるが、それも殆どダンジョンの通り道での出来事であり、ゼノギアスのようにじっくりストーリーを描いて行う訳ではないので、やはり駆け足感は否めない。
    • また台詞回しも一作目のような深い台詞回しが見られないと残念に思うファンもいる。
  • 今作で主人公に復帰した「シオン」だが、前作で不評だったヒステリックで自己中心的キャラクター性がそのまま受け継がれている。
    • 尚且つ中盤で自暴自棄に陥ってしまう事件が起きた後も、碌な休息時間もなしに次々と先を急がねばならない事件が連続して発生する駆け足な展開もあいまって彼女に対する心理描写が足りておらず、しかもイベント時にほとんど会話に絡まないので「一人で悩んでパーティーメンバーに暴言を吐いているようにしか見えない」と見られても仕方ないような構成になっている。
      • 仲間も自分の船を襲われたり宇宙の危機が立て続けに起きるので余裕が一切無い。
    • その上、そんなゲーム進行なのにシオンが乱心するに至る根本的な原因についての解決策が最終決戦時においても仲間内からは一切提示されない。
      • 唯一解決策を提示していた敵方の人物の方法も、その後の展開で根本的な解決になっていない事が明らかになる。
    • ラストバトル直前で仲間の必死の説得で改心するまでそんな調子なので、仲間が最終決戦に向けて各々が各自の過去に決着をつけるという盛り上がる終盤戦で主人公が殆ど口を利かないほぼノーリアクションと言う、通常のRPGではとても考えられない作りになってしまっている。主人公が喋らないタイプの作品じゃあるまいし…。
    • ゲーム本編がそんな調子なので、ファミ通の攻略本の巻末にある設定解説コーナーで、わざわざシオンの心情を解説、フォローをするページまで作られる。
      • が、「自己中心的で場当たり的」「行動が本能的で筋がない」等、事実ではあるが、かなり毒っ気の多い前置き文が散見される。
  • また完結作品と名乗ってはいるが、実際は完結とはいえない
    • はっきりと描写されず終わってしまった設定(メインメンバー「ケイオス」に関連した設定など)も多い。
      + ネタバレ
    • 簡単に今作のストーリーを説明すると、ゼノサーガの世界の宇宙は近いうちに滅びが待っており、あるキャラクターが「ツァラトゥストラ」とよばれるシステムで永劫回帰を行い、滅びる前の世界を再構築するというループ世界が築かれていたが、主人公らはそれを拒絶し「ツァラトゥストラ」を破壊する。というものである。
    • ただ「崩壊をどのように止めるのか」ということは一切不明で、とにかくツァラトゥストラを破壊し「宇宙を救う手がかりを探しに行こう!」というところで終了する。
    • 攻略本では「崩壊に始まり未来の選択で終わる」と言われているが「完結というより打ち切り」と揶揄されることもある。
    • シオンが乱心した原因の超常的存在の干渉による生死についても本編ではどうなるか未知数のまま終了し、攻略本等で、相互理解によって死なずに済むのではないか、と書かれている。本編中に描写してやれ。
    • ゲームをクリアしたデータをロードすると、データベースが更新され、ネタバレを含む各キャラの説明や設定が明かされたりするが、そこで初めて目にする設定や心理描写もあり、クリアした後にデータベースを見ないユーザーには永遠の謎になってしまうものもある。後述のように攻略本の設定解説にクリア後までを含めた解説が収録されるが…
  • エピソードIではメインストーリーの全てがムービーで描かれていたが、シリーズが進むにつれムービーの割合が減り、本作では大半のイベントが「スーパーロボット大戦」シリーズのような上下2つの会話ウインドウで描かれている。そのため前2作に比べ画面に動きが無い。
    • 無論、動きの激しいムービーも従来通り収録されているが、会話のみのイベントなどは殆どこの形式である。
    • フルボイスで声優が読み上げてくれるので、ただ読むだけとはならない。詰め込める情報量も多くなった為かシナリオ自体は前二作より大分長くなっている。
      • しかし動きが無いためイベントの面白味も減少してしまっているのもまた事実。
  • 当時公式サイトに掲載されていた前日談のフラッシュ動画『ゼノサーガ エピソードII to III a missing year』を観ていなければ冒頭の展開が意味不明。
    • 前日談というよりは、エピソードIII本編の一部と言える内容であり、本編でやらないのが不思議な程。前日談未視聴でプレイ開始すると、アニメを数話飛ばして観せられたような状況に陥る。
      • シオンは前日談フラッシュで描かれる事件によって、それまで味方だったものと敵対、生活環境も一変し、本編の冒頭に至るのだが、ゲーム中はその経緯が一切説明されない。
      • シリーズを通して登場してきた"謎の少女「ネピリム」の正体と、彼女にまつわるエピソードも前日談フラッシュで描かれ、ゲーム本編では開始時から既に正体を知っている前提で物語が進む。フォローはキャラクター図鑑に僅かな説明があるのみ。
    • しかもこの前日談はソフト発売前後の期間限定配信である。後に攻略本に収録された(後述)とは言え、これだけ重要度の高いものを限定的な形で提供する手法には首を傾げざるを得ない。
  • ちなみに語られなかった設定は今作の公式攻略本に併記された設定資料集で補完という形になっている。
    • また上記の前日談も小説という形でこの攻略本に収録されている。
      • この前日談の小説版を執筆したのは、『ゼノサーガI・II』の脚本を執筆した竹田祐一郎氏である。そのためか、内容もややDS版よりの描写になっている。
  • 「PS2版のエピソードII」の続編であり、DSで発売された『ゼノサーガI・II』の設定と照らし合わせると矛盾する点が非常に多い
    • DS版ではシオンはメガネをかけたままだが、今作はかけていない。EPIIから突然メインキャラクターとなった「ハカセ」「スコットクン」がDSでは最後までサブキャラクター扱いで物語に絡まない。など。
      • これはDS版がPS2版と異なり高橋哲哉氏の原案脚本に忠実になぞらえた結果である。
    • ファンの中には、DS版エピソードIIの設定を引き継いだ本作を見たいとの声もある。

その他

  • 一部SEがおかしい。特に足音。BGMより明らかに大きな音でコツコツと鳴り続けるため、悪い意味で耳に残り、良質なBGMの邪魔になっている。

総評

前作から大幅に修正され、システム面に関してはしっかりと改善がなされ、前作のように非常にひどい部分も見当たらなくなり、シナリオも許せる人は許せる程度になっているため、普通に遊べる出来までには回復している。
ただ、前作の悪評もあってか売上は18万本と前々作から半分以下にまで落ち込むというなんとも切ない最後を迎えてしまった。


余談

  • 体験版の内部データ流出事件。
    • 本作にはデータベースというものがあり、物語の進行に合わせてストーリーや用語集を読むことができるようになっている。体験版も同様であり、収録された序盤までのでデータを読むことができるようになっていたのだが、内部データとして本編のクリア後にアンロックされる部分まで入れてしまっていたため、解析により内容が流出してしまった。
    • 悪意ある解析者によりキャラクターの設定・生死や、物語の結末までほぼ完全にばらされてしまったため、ストーリーを楽しみにしていたゼノシリーズファンにとどめを刺してしまった。
      • エピソードIIIでそれなりに物語が動くということがわかったため、IIでの物語の動かなさに不満だった人に対するプロモーションになったという擁護意見もある。もっとも売り上げ的には前作より減ってしまっており、大部分のプレイヤーが戻ってきていないことから、負の面の方が大きかったことにかわりはないのだが。
      • 無論、一番悪いのは解析してそれを流出させた人間である。しかし、そもそも内部データとして仕込まなければこんな事にはならなかった訳で、それをストーリー重視のゼノサーガの、それも完結編でやらかしてしまった分、余計にタチが悪い。
  • 本シリーズはまだモノリスソフト設立後間もなく始まったシリーズであり、組織作りをしながらの開発だった事と、経験の無い新人スタッフが多かった事などから、製作には大分難儀したとの事。高橋哲哉氏も当時は「自分たちの理想のゲームをつくるには、まだ難しいかもしれない。」と考えていたとか。
    • その結果、このような形で終わった事は氏を始めとするスタッフ一同にとっても相当悔しかったらしく、その悔しさをバネに後の大作『ゼノブレイド』を開発したと言う。
  • 余談だが、本作のサウンドトラックは未収録曲が非常に多い。
    • 収録曲数は40曲程度に対して未収録曲数は50曲以上と、未収録曲の方が多い。しかもサウンドトラックでは定番に近い通常戦闘曲も収録されていないなど、ファンからはかなり惜しまれている。

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最終更新:2022年02月10日 17:10