エイブ・ア・ゴーゴー

【えいぶ・あ・ごーごー】

ジャンル アクション
対応機種 プレイステーション
発売元 ゲームバンク
GT Interactive Software
開発元 Oddworld Inhabitants
発売日 1997年12月11日
定価 5,500円
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
※ゲームアーカイブス版で付与されたレーティングを記載
配信 ゲームアーカイブス:2013年11月13日/600円
判定 スルメゲー
ポイント 洋ゲー色全開の死に覚えアクション
敵AIを読んで仲間を助ける絶妙な謎解き要素
当時としては非常に高精細なグラフィック
シビアな要素が多い
テレビCMが広告詐欺で知られる

概要

アメリカのOddworld Inhabitantsに開発された海外ゲーム。原題は『Oddworld:Abe's Oddysee』。

日本ではソフトバンクの子会社・ゲームバンクによりローカライズされ、ストーリーや演出の一部に修正が加えられている。

ストーリー

惑星オッドワールドを征服したグラッコン族の建てた栄養食品工場ラプチャーファームにて働くマドカン族の主人公エイブ。
無知で楽天家でお人好しの彼は自分の扱いに特に不満をもっていなかった。
そんなある日、一週間の休暇も開け元気に工場を掃除する彼は、偶然重役であるグラッコン達の会議を聞いてしまう。なんと作られてる食品には自分たちの元気エキスが使われており、今後は生産量向上のため人命無視で多くのエキスを吸い取るというのだ。
身の危険を感じたエイブは仲間たちと共に逃げることを決意したのであった。

特徴

  • プレイヤーは主人公「エイブ」を操り、「仲間」を助け、工場を脱出するのが目的。『プリンス オブ ペルシャ』のように、箱庭の中で段差を乗り越えトラップを乗り越えていくゲームとなっている。
    • マップを行き来し、仲間に指示を与えながら助け出す要素は、後の『嘘つき姫と盲目王子』にも近い。
  • ゲームとしては難易度はかなり高く、とても工場や遺跡とは思えない地形とトラップまみれな場所を右往左往することになる。残機の概念はなく所謂「死んで覚えろ」なゲームである。
    • エイブはゲームの主人公としては貧弱な部類に入り、ほぼ全てのダメージ=即死となっている。銃やパチンコで撃たれて死に、高い場所から落ちて死に、栄養食品の材料(猛獣)に一撃で殺される。
      • 死亡パターンの一つには肉片となって飛び散るといったグロ描写もある。
  • そして初期状態では攻撃能力が一切無い。追加される攻撃手段も、非常に数が限られており、エイブは敵に鉢合わせた際に勝てるような攻撃手段がない。
    • なお、本当にプレイヤーの操作に従って動いているためか、ゲームの動きにない操作をするとカメラ目線で「分かんない」と言ってくる。
  • そんな無力なエイブが即死要素だらけの工場を突破する鍵は「会話」と特殊能力「チャント(お祈り)」。
    • 「会話」は文字通り会話であるが、敵を説得することはできない。仲間と会話することで、仲間の誘導を行うことが主な目的。
      • ほとんどの仲間は指示をしないと脱出場所に向かわせることが出来ないが、その途中にもエイブも仲間も死ぬトラップがある場合があるため、指示から行動までのレスポンスを意識しながら、細かな指示をして脱出へ導くことが必要となる。
    • 「チャント」は一定時間その場で祈ることで、不思議な力を発揮できるエイブの能力。
      • その中でもメインとなるのが「敵への憑依」。工場内には銃を持っているエイブたちの監視役である「スリッグ」が多く配置されているが、チャントをすることで彼らの体を乗っ取ることが可能、以後乗っ取ったスリッグの死亡まで操作キャラが変更される。
      • もちろん持っている銃もそのままなので、エイブが移動しても安全なように銃で他の敵を始末する、スリッグに従順な犬のような敵「スロッグ」と会話して誘導するなど、エイブに出来ない様々な行動ができる。
      • ただし、同画面内にスリッグがいる状態でチャントをしないと乗っ取れない(別画面に移動して乗っ取りを回避する個体もあり)、ジャンプなど、エイブができてスリッグが出来ない行動がある、一度乗っ取った後はスリッグの死亡以外に乗っ取りは解除できないなど、万能ではない。
    • それ以外にも、「鳥の輪」から移動用、仲間の救出用ゲートを開く、鐘を鳴らすなど、様々な効果がある。

評価点

  • これらの要素や、様々なマップギミックを駆使して、基本的には敵やトラップから逃げつつ避けつつ、環境が揃ったときには攻めることのできる、面白いバランスに仕立て上げられている。
    • 敵の動きは細かな法則性が定められており、如何にAIの穴を突いていくかがカギとなる。クリアのためには細部まで理解するのが必要となり、謎解きの完成度は非常に高い。
      • 例えば仲間が敵の近くにいるときは、「敵が画面外に出た隙をついて連れ出す」「チャントで敵を操れる状況に持ち込む」「別の敵を操って同士討ちさせる」など様々な救出手段が考えられる。しかし周囲の状況はそれを簡単に許してはくれず*1、どれが正解でどういった方法を試せば実現できるのか、色々と推理する楽しみがある。
    • 敵の監視を掻い潜るスリルも満点で、『メタルギア』シリーズのようなステルス要素も魅力である。
  • 残機が撤廃されたスムーズなゲーム性
    • 難易度が高く繰り返し死ぬ代わりに、何度でもやり直しがきく親切設計になっている。これにより謎解きを失敗覚悟で試行錯誤しやすく、難所を乗り越える快感を存分に味わう事ができる。
      • 別作品で例えると、魅力の方向は『I wanna be the guy』*2に近い。死にまくっては乗り越えるタイプのゲームが好きな人にとって、本作はうってつけのゲームと言えるだろう。
  • 自由度の高さ
    • 攻略に使えるアクションや戦略は多く、時にはわざと仲間を射殺したりミキサーですりつぶすといった外道プレイも行うこともできる。やりすぎると後味の悪いエンディングとエイブからのダメ出しが待っているが。
      • なおこれが可能なのは序盤だけで、後半になると高難易度のためとてもじゃないがそんな余裕などない。
  • 濃厚な世界観
    • 脇を固める要素でありながら綿密に作り込まれており、本作の魅力の一つとして受け入れられている。
    • 文明社会に侵食される精霊信仰の世界観は細やかで印象的。機械の世界とスピリチュアルのギャップは、思わず引き込まれてしまう。
      • おそらく開拓時代のアメリカをモチーフとしており、それをサイバーパンクな世界観に落とし込んだのは斬新かつ唯一無二である。
    • 世界観を彩るCGは当時としてはかなりクオリティが高い。
      • 工場のディテールの作りこみは『ファイナルファンタジーVII』の魔晄炉を彷彿とさせる。ムービーとゲーム画面がシームレスに移行する演出も巧み。
    • ストーリー展開も魅力の一つ。
      • エイブは何も持たずに孤軍奮闘し、仲間を救えなかった絶望や厳しい試練を乗り越え、大きく成長していく。シリアスな世界観に対し結末へのカタルシスは大きく、一本の映画のような満足感が得られる。
    • 先述のバッドエンドが後味悪い分、グッドエンドは短いながら感動できる物になっている。

賛否両論点

  • 難易度の高さ
    • 非常にシビアなタイミングで入力を何度も成功させないとクリアできない場面が数多くあり、人によっては「またこんなのか・・」と思われるような場面も。
    • その分やりごたえは十分であり、乗り越えた時の快感も大きい。操作性の悪さをどれだけ許容できるかどうかで面白さが変わる部分もある。
  • 日本受けしにくいキャラクターデザインは人を選ぶ。
    • 主人公のエイブ達「マドカン族」からして、人型で緑色の肌、鼻が無く目が大きい弁髪と、異世界の存在であることはわかるがキャッチーとは言えない。何より口が縫われており、画面上に出るポップなアイコンにも反映されているため、初見ではギョッとするだろう。
      • それ以外の生物には二足歩行の人型はおらず、上記の「スリッグ」も腕はあるが足が無いため義足ありきの存在であるなど、大体クリーチャー寄りのデザインになっており、特殊な世界であることが強調されている。
      • 例外は坊主のおっさんにしか見えない敵の重役である「グラッコン」(人型に見えるが実は腕は無い)と、二足歩行のラクダ型騎乗生物の「エラム」くらい。
    • 肉片となる死亡描写や、猛獣に食い殺されないように逃げるなど、エグい表現も多い。
      • 今でこそCERO:Cから残虐表現を把握できるが、当時はレーティング機構はおろか「グロテスクなシーンが含まれます」マーク*3すら無く、ポップなCMやパッケージに釣られて購入してしまったプレイヤーも多いと思われる。
  • 会話の一つに「おなら」が含まれている。
    • ジョーク要素のためだけではなく、ゲーム進行に必須の会話の一つでありクリアのためには使わざるを得ない。異文化感は出ており、音も強烈すぎはしないが、不快感、不潔感が全く無いわけでもない。
      • ちなみに続編の『エイブ99』では「特殊なおならをした後、チャントで操ることが攻撃手段」という、よくわからない方向にまで発展している。

問題点

  • 取り返しの付かない要素が多い
    • 仲間は銃に撃たれたり穴に落ちたりする事で死亡し、二度と復活しない。
    • その上ゲーム進行は基本的に一方通行であり、一度クリアしたステージに入り直す事はできない*4。助け損ねた仲間がいる状態でステージをクリアすると、その仲間は二度と救出できなくなってしまう。
      • うっかりセーブポイントを通過すると、死亡時はそこからの再開になってしまうので潰しがきかなくなる。
    • 仲間の救出数はゲーム内でも頻繁に見せられる収集要素なのだが、あまりにもシビアかつ理不尽な仕様となっている。
    • またゲーム序盤はノーヒントの隠し部屋に多数の仲間がおり、チュートリアルが行われていないテクニックを要求されるなど、明らかに1周目のコンプリートを前提としていない仕様となっている。
      • 幸い隠し部屋の存在自体は説明書をよく読めば容易に推測できるのが救いである。
    • 本作を完全クリアするならば、何周も遊ぶ覚悟をした方が良い。遊ぶのに必要なブロック数は1だが、可能であれば容量の空いたメモリーカードをフル活用して細かくセーブし、後から取りこぼしを確認できるようにしておく事を推奨する。
  • 仲間の救出には手間を要するものも多い。
    • 会話は一度に一人としか行えないのに一定人数同画面で救出しないと突破できないギミックや、敵の操り方を少し間違えるだけで救出失敗する場面など、後半では根気を要する場面が増えてくる。
      • 同時会話に関しては続編の『エイブ99』では、「多人数に同時に呼びかける」が可能になり改善されている。
  • セーブ時に上書き保存が出来ない。
    • セーブの際は既存データを消してから新規保存するしか無く、テンポが悪い。
    • セーブ画面ではメモリーカードのデータ全てが表示される。単に進行を記録するだけでセーブデータを消さなければならないので、間違って大事なデータを消してしまうリスクもある。
  • ゲーム中で「負傷者」というカウントが表示されるが、内容からして「死傷者」の誤訳の可能性が高い。*5
    • ただし設定的にはエイブの命を狙い、上記のような所業を行う「敵側が公表しているカウント」であるため、「死傷者を負傷者と偽って、事の重大さを隠蔽している」という可能性もある。

総評

大々的な宣伝の元で発売された本作だが、そのゲーム性は癖が強く、広く受け入れたとは言い難い。シビアな操作や仲間救出のハードさが足を引っ張り、手放しで勧められない部分も散見される。

反面、自由度の高い選択肢から切り込んでいく謎解きの完成度は高く、慣れてくるとその奥深さを存分に味わう事ができる。綿密な世界観に魅入られたユーザーも多く、傑作と評するプレイヤーは日本でも決して少なくない。
アクションや謎解きに自信のあるプレイヤーは、一度挑戦してみてはいかがだろうか。

余談

  • その後の展開
    • 本作は反響を得てシリーズ化し、海外を中心にさまざまな続編が発売されている。
    • 日本でも2作目『Oddworld:Abe's Exoddus』が『エイブ99』という名前で発売されたが、あまり出回らず今ではプレミアがついている。
    • 3作目『Munch's Oddysee』がXbox向けに出ているが、こちらは日本未発売である。
    • 4作目『Oddworld:Stranger's Wrath』はXboxで、リマスター版である『Oddworld:Stranger's Wrath HD』はWindows、PS3、PS Vita、Mac OS X、iOS、Androidといったマルチプラットフォームでリリースされている。だが、どちらも日本未発売*6
  • 本作は2014年に『Oddworld: New 'n' Tasty』というタイトルでリメイクされている。プラットフォームもPS4を皮切りに、PS3/PSVita/XboxOne/Windows/OS X/Linux/Wii U/Android/iOSと実に多くのプラットフォームでDL配信専用ソフトとして発売された。一部を除き日本の各配信ストアで入手可能。
    • 吹き替え無し。字幕は本体設定と連動して言語が変わる仕様。*7
    • 操作性、マップデザインともにオリジナル版とほぼ同じ。グラフィックを置き換えただけの堅実なリメイク。
    • 日本語環境でのプレイには問題が多い。字幕の質が機械翻訳のほうがマシに思えるほど低く、日本語設定でプレイするとある地点で必ず進行不能になるバグまである。更にホーム画面でのタイトルが「シンプルシューティングゲーム」になっている。
  • 2018年には海外版『プレイステーション クラシック』に移植された(日本版には未収録)。
  • エイブの吹き替えは山寺宏一氏が担当している。
    • 大胆に加工されているため、言われても気付きにくいものになっている。
  • エイブを始めとするマドカン族は、日本語版においては指が3本だが、原語版では4本である。
    • 日本のアニメやゲームでは込み入った事情により4本指の表現が避けられている。大抵の場合は5本指に修正されるのだが、3本にされるパターンは珍しい。
      • むしろ、4本はアウトなのに3本はOKというのもなかなか興味深い。
  • 原語版冒頭にはマドカン族の生首を模した食品の広告が出てくるが、日本語版では棒アイスのようなデザインに差し替えられている。これは同年に発生した「酒鬼薔薇聖斗事件」の影響。
  • 日本では「AKB48」「湯川専務」などで知られる秋元康氏がプロモーションを行った。
    • しかし、肝心のCM内容は女子高生達が教室でエイブと踊り明かすという、ゲームの作風とかすりもしない内容である。
      + 動画
    • CMを見ても一体どういうゲームなのか全く伝わらず、その評判はよろしくない。
      • 秋元氏は商業プロデュースで数多くの成功を収める反面、奇をてらいすぎて大コケする例もたまにあり*8、本作のCMはその名だたる例と言える。
    • またイメージソングとして本作のために独自に結成した女性アイドルグループを起用しているのだが、これも本作の陰惨な雰囲気に即しておらず、浮いてしまっている。
      • このBGMはゲーム内でもOPやEDとして使われているが、インスト版しか使われていないこともあり、幸いそこまで雰囲気を壊してはいない。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2021年04月30日 03:53

*1 ステージに配置されたチャント妨害用の装置に阻まれたり、敵を操れる場所に行くと銃で反撃されたり、操られそうになって動揺した敵が機雷を踏んで味方に誘爆しまう配置になっていたり……など。

*2 PC用フリーゲーム。理不尽な即死トラップをふんだんに盛り込んだ作品ながら、そのテンポの良さも相まって世界中で人気を博した。

*3 CERO設立以前のPS向けゲームのパッケージに使用されていたマーク。

*4 メニュー画面で隠しコマンドを入力することで、ニューゲームに限り好きなステージから始めることは可能である。ただしそれ以前のステージにいる仲間は救出できなかった扱いとなるので、仲間の場所を決め打ちで探す用途にしか使えない。

*5 原語版は"casualties"。確かに負傷者という意味もあるが、このカウントに属する仲間たちはどう見ても殺されている。

*6 『Oddworld:Stranger's Wrath HD』の方はSteam/GOGで配信されているWindows/Mac OS X版なら日本からでも容易に入手は可能。

*7 Windows/OSX/Linux版はSteamクライアントの言語設定と連動。

*8 特に有名なのは、飲食店に「うんこや」と名付けた事だろうか。