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*世界樹の迷宮X 【せかいじゅのめいきゅうくろす】 |ジャンル|3DダンジョンRPG|&amazon(B07C1VBF76)| |対応機種|ニンテンドー3DS|~| |発売・開発元|アトラス|~| |発売日|2018年8月2日|~| |定価|6,998円|~| |プレイ人数|1人|~| |レーティング|CERO:B(12才以上対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント| シリーズのほぼ全てがクロスオーバーするお祭り作品&br;歴代最大のボリューム&br;ボリュームと表裏一体の飽きやすさ&br;歴代シリーズと異なる方向性の作風|~| |>|>|CENTER:''[[世界樹の迷宮シリーズリンク>世界樹の迷宮シリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 『世界樹の迷宮』シリーズにおけるナンバリング5作、新シリーズ2作、不思議のダンジョンシリーズ2作に次ぐ、10作目のゲームとしてXの名前を与えられた作品。%%『S』((ソーシャルゲーム『世界樹の迷宮S 悠久の覇者』のこと。現在はサービス終了しており、本作のPVでも紹介されていない。))など無かった。%%~ 「シリーズのすべてがクロスオーバーする3DS最後の完全新作」という謳い文句の通り、各作品が持つ様々な要素を取り入れた作品であり、『V』までの歴史を振り返るお祭りゲームでもある。 世界観は『I』~『IV』と同じで、作中の時系列としては『I』~『IV』の通常エンディングから少し後という扱いであり、各作品から登場しているNPCは作中のストーリーを踏まえた会話をする事もある。『I』と『II』に関しては、ナンバリングシリーズと『新』シリーズのどちらから繋がっているのかは不明。シリーズ別で生死が異なるクロガネJr.の父親についても詳しく触れられない。 本作の舞台は一本の世界樹を中心にして四つの島と数多の迷宮が存在する絶海の孤島「レムリア」で、そこに眠る秘宝を探し求める飛行都市「マギニア」の招集に応じ、空路でレムリアに乗り込んだ一介の冒険者の物語が繰り広げられる。 ---- **特徴 -作品毎に職業や戦闘、育成システム等が色々と変わる世界樹シリーズであるが、本作では過去作で用いられた様々なシステムを取り入れる形式をとっている。 -全19種類の職業 --本作からの新職業は、自身の行動を繰り返す残像と攻守共に優れた多彩な攻撃を使いこなす「ヒーロー」一種のみ。代わりにこれまでの作品から18種類もの職業が登場するため、パーティ編成の幅は非常に広い。~ 職業一覧 |[[I>世界樹の迷宮]]((職業イラストは『II』準拠。))|パラディン/メディック/レンジャー/ブシドー| |[[II>世界樹の迷宮II 諸王の聖杯]]|ガンナー/ドクトルマグス| |[[III>世界樹の迷宮III 星海の来訪者]]|プリンセス/シノビ/ゾディアック/ファーマー/ショーグン| |[[IV>世界樹の迷宮IV 伝承の巨神]]|ソードマン/ナイトシーカー/ミスティック/インペリアル| |[[V>世界樹の迷宮V 長き神話の果て]]|リーパー/セスタス| |[[新>新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女]][[(2)>新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士]]((初出は『新1』だが、職業イラストは『新2』準拠。))|ハイランダー| |X|ヒーロー| -探索関連 --本作には『IV』のように少ない階数の迷宮が複数個登場し、それらを順に攻略していく事となる。 ---『IV』同様にワンフロアのみで構成される小迷宮も多数存在するが、本作ではストーリーに全く絡まない鍛錬の場と化している。 --探索開始時にはまずワールドマップへ出向き、そこから目的地へ移動して迷宮に入るという『IV』に近い形式となっている。 ---ワールドマップはやや簡素な形状であり、目的地のマスを選べば即座に移動可能。『III』や『IV』のような通常の迷宮探索とは一味異なる探索を期待していると肩透かしを喰らう。 ---ワールドマップ上には街以外の探索拠点や採集ポイントといった、迷宮の入り口以外のマスも存在。滞在中のNPCと会話したり、迷宮に入る事無く採集アイテムや貴重な魔物の素材を手に入れる事も可能。また、採集ポイントにはFOEが沸いて荒らす事もあり、討伐しなければ採集ポイントが自然回復しにくくなる。 --メニュー画面や地図作成のUIは直近の作品である『V』と同じ。メニューに関しては選択していない選択肢の説明がアイコン表示だけのままなので、使い込むまでどのアイコンがどの選択に繋がっているのか分かりにくい。 --本作に登場する迷宮の多くは『I』~『IV』に登場した迷宮をモチーフとしており、探索・戦闘BGMもそれに準じた物を使用している。 --探索時に発生するサブイベントは『V』同様にアドベンチャーエピソード(AE)として区別。イベント終了時にはパーティメンバーが経験値を取得出来るので、積極的な参加を促される。 --探索成果を拠点に報告するシステムも『V』から続投。 ---迷宮内で作成した地図を拠点で報告する事により、迷宮内でこれまでに到達した好きな階層の入り口までワープして探索を始める事が出来る。また、一つの迷宮の地図を全て完成させれば、報酬を受け取る事も出来る。 -戦闘システム --世界樹シリーズでは毎作登場する、戦闘時に蓄積されるゲージを用いたシステムは、『新2』において採用された「フォースブースト・フォースブレイク」を使用する。フォースブーストは発動してから3ターンの間、使用者に対して所属職業(メインクラス)に応じた性能強化が施される。ブースト発動中、またはブースト発動可能時に使用出来るフォースブレイクは、フォースゲージを破壊して拠点で回復するまでブーストを使用不能とする代わりにメインクラス毎に決められた技を発動する一発逆転の大技。歴代のゲージシステムの中で最も職業毎の個性を強調した物である。 --難易度選択は『新』にて採用されている「ピクニック・ベーシック・エキスパート」の三段階形式をより発展させた物を使用。ピクニックを選択した場合は以降の難易度変更が行えなくなる。また、エキスパートよりさらに上の難易度として「ヒロイック」が追加された。 -育成システム --スキル関連の育成には『IV』で採用されたレベル制限付スキルツリーシステムを採用。習得可能なスキルには『ノービス(初期開放)・ベテラン(レベル20)・マスター(レベル40)』の三段階に分かれて習得レベルに制限がかかっているため、選択肢の少ない序盤はキャラクターの育成方針を簡単に決定、変更出来、中盤以降は育成の幅が広がる代わりに育成方針をしっかりと定める必要が生じる。 --ゲームをある程度進めると、『III』・『IV』にて登場した「サブクラス」を習得出来るようになる。サブクラスを用いるとプレイヤーキャラクター1人につき1つ、メインクラスとは異なる職業を選択して与える事が出来、サブクラスで与えた職業のスキルを限定的に習得可能となる。本作のサブクラスは、スキルレベルの強化上限がメインクラス時の半分までという『IV』の形式を採っている。 ---また、サブクラスを習得した後は『V』で登場した「二つ名」のように、職業の名前をプレイヤーが自由に変更可能となる。数は少ないものの、編集した職業名がテキスト上に表示されるイベントも存在。 -その他 --武器の鍛冶システムは『V』にて使用された段階式改造。武器の生成に必要な素材かインゴットなるアイテムを消費して武器の性能を5段階まで強化でき、武器の買い替えをせずともワンランク上の性能を持った武器を入手できる。 --キャラクターメイキングは『V』に登場した形式を採っており、髪や目の色のRGB値を好きに編集出来る他、肌色を変更したり全60種類のパターンからなるボイスを付ける事も出来る。カラーエディットが生まれた『V』以前の職業イラストも、エディットに対応出来るよう修正されている他、『II』の職業イラストには当時存在しなかったアナザーカラーも追加されている。 --『III』以降続いている、すれちがい通信によるギルドカードの交換は今回も続投。ギルドカードの所持上限は歴代最多の255枚となっている。おまけ要素に近いが、ギルドカードの交換やそれに関する操作をしなければ発生しないイベント、入手出来ないアイテムも存在する。 ---- **評価点 -歴代の迷宮が再登場 --本作に登場する迷宮の大半は過去作に登場した迷宮をモデルとしており、そういった迷宮は3DSに移行してからは一度も登場していない『III』の物を除き、全て旧作の地形モデルを使用している。 ---『I』と『II』の迷宮には『新』シリーズの物を使用。そのため、一番古いモデルは『IV』に登場した物となる。その『IV』は既に6年も前の作品となっているため、一種の懐かしさを感じる事もあるだろう。 --『III』の物に関しては、他の迷宮と合わせるために新規造形のモデルが用意されているため、かえって新鮮に感じられる。 --探索BGMも当時の曲を再使用。また、戦闘BGMは作品別で「雑魚敵・FOE・ボス」の三種類全てをしっかり区分しており、雑魚敵戦の戦闘曲も『III』と『V』を除き物語前半・後半の両方をカバーしているため、次の迷宮へ進む度に異なる雰囲気の戦闘を味わえる。『III』の物に関しては、やはりこちらもアレンジされて登場。 ---ボス敵のBGMも個体別に設定されているため、中ボスや裏ボス、ストーリーモードの追加ボスといった様々な相手の曲を耳にする事となる。 ---そういった事から本作に収録された戦闘BGMの数は非常に多く、新規曲も合わせれば総数20種類以上にも昇る。 --ただし、サブイベントの多くはX独自の物へと差し替えられており、さらに内容も全体的に旧作の殺伐とした世界観にはそぐわない。中盤以降に登場する迷宮では道中で発生するイベントがその迷宮とおよそ関係の無いストーリー関連のイベントしか捻じ込まれていない場合も多いため、きちんとかつての雰囲気を再現出来ている訳ではない。 -数多のファンサービス要素 --本作に登場する迷宮の多くは上記の通り、かつて登場した迷宮を模した物となっている。 --後述のシリーズユーザーが引っかかりやすいイベントも、一種のファンサービスと言える。 --NPCの中には旧作に登場したキャラクターも存在し、様々な形でプレイヤーの冒険に協力してくれる。 ---商店担当は『III』のネイピア商店店主。正式名称がネイピアになった事とCVがついた以外は概ね以前のままであり、がめつさ全開でありながら時に空回りし、時にそれとなくプレイヤーを気遣ってくれるどこか憎めない性格で、本作NPCの中でも人気のキャラである。 --小ネタも充実しており、『II』の採集やリスを再現したイベント、『III』の大航海クエストに登場してから8年越しに性別が判明するNPC、『新2』のゲテモノ料理等、時折話の隅に現れてはシリーズのファンをニヤリとさせてくれる。 //ネイピアについては分かれ台詞の問題くらいで十分評価点でしょ。別れ台詞がない問題は問題点にまとまってるのでこっちでは省略。 -意外な存在感を見せる小迷宮 --本作における小迷宮の立ち位置は鍛錬・腕試しの場となっており、シリーズ全体で見ればエキスパートでも難易度は多少低めの通常迷宮では物足りないプレイヤーに向けたエクストラダンジョンという側面も持っている。 --小迷宮にはモチーフとなった通常迷宮が存在し、大半の雑魚敵もその迷宮に準ずるものの、いずれの小迷宮にも独自の手強い雑魚敵やFOEが生息しており、気が抜けない。 ---中でも高威力の全体複数回攻撃を多用するビッグモスや、二重の再生能力を持つ渾然たる雷電獣(ライデンジュウ)は多くの冒険者に強烈なインパクトとトラウマを残す。 --小迷宮の深部に居座る主と呼ばれるFOEは、その殆どが旧作に登場したボスモンスター。小迷宮が開放された時点で攻略中の通常迷宮どころかその次に登場する通常迷宮をクリアする程の実力を付けてなお苦戦する可能性のある強敵揃いであり、倒し甲斐がある。 ---反面、二つ目の小迷宮に登場する主の強さに畏縮したプレイヤーの多くは攻略が必須でない事から時期尚早と判断して多くの小迷宮の攻略を後回しにしてしまい、思い出した頃に主を討伐しに向かうとあっさり倒せてしまうケースが多発。それなりの歯応えを求めるプレイヤーからは、推奨レベル等がある程度分かるような強さの指標が欲しかったという声もあがっている。 --通常迷宮のギミックをより複雑にして再利用するパズル要素の大きい小迷宮も多く、あっさりとしたギミックの多い通常迷宮に拍子抜けしたユーザーでもここで頭を抱える事となる。元々パズル要素が強い通常迷宮をモチーフとしている桜花天空楼は特に難しく、パズルの解除が苦手なユーザーは悲鳴をあげる程。 --小迷宮内には一切のAEが存在しないものの、多くの小迷宮はストーリー中に出会ったNPCからの依頼で出向く事となり、彼らと共に攻略する事もある。道中での会話もそれなりにあるため、NPCの掘り下げにも活用されている。 -幅広い魔物との戦闘 --迷宮が切り替わる頻度が高いため、それに伴い出現する魔物の顔ぶれもかなりのペースで全く別の物となる。旧作の迷宮は出典が異なるため、X初出の魔物を除けば既に戦った事のある魔物のバリエーションが登場する事も稀。 --迷宮内の戦闘で安定する戦い方が定期的に変わってくるため、戦闘に関しては中々飽きが来ない仕様となっている。 --ナンバリングのように少しずつ敵の顔ぶれが入れ替わり、徐々に味方の動かし方も変えて対応する必要のある迷宮も霊堂としてきちんと存在する。 -前作『Ⅴ』から改善された鍛冶システム --武器固有のスキルを強化出来る鍛冶システムとキャラクターに装備出来る武器の制限を解除出来るサブクラスシステムとの相性はそこそこ良く、パーティ次第では武器を重視しないキャラクターにも武器のスキルという少し変わった観点から役割やサブクラスを与えられるようになっている。 --本作では最強武器は鍛冶不能となっているので、最強レベルのキャラクターを作る際にインゴット不足に悩まされるという事が無くなった。 --その一方で、『III』や『IV』のそれと比べると使いやすい一方で味気ないという意見もある。 -自由度の高いパーティ編成 --単純に職業の数が多く、それだけでもパーティ編成の幅は広い。 ---『V』に登場した、戦闘で獲得した経験値を控えメンバーにも与えるアクセサリ「追憶の音貝」もゲーム開始後早々に貰えるので、常に装備を心掛けていれば控えメンバーも装備を整えさえすれば最前線で辛うじて戦えるレベルまで強化可能。普段使わない職業でもある程度育てられるため、最初にギルドへ登録しておけば気になった時に即戦力として使う事が出来る。 --隠し要素ではあるが装備キャラクターのフォースブーストとブレイクの性質を変化させるアクセサリが登場したため、一味違うキャラクターを組み込む事も可能。 --キャラクターに与えるイラストの制限が無くなり、転職を挟むことなくキャラクター登録の時点で他の職業や種族のイラストを選択する事が可能となった。 --キャラクターに付けられるボイスパターンは『V』の40種類の1.5倍となる60種類であり、要望の多かった渋い男声も多数収録している。 ---一方で最低限の掛け声しか無い文字通りの「無個性」パターンが10個も存在、さらにそれに近い台詞ばかりのパターン(「女性・セクシー」等)や台詞が似通っているパターン(「青年・元気」と「少女・乱暴者」等)もある等、水増しが目立つ。それを抜きにしても全体的に見れば無難、没個性なパターンが多めであり、特徴的な物が多かった『V』のボイスを恋しがる声もある。 --職業別に与えられたイラストとは別に、DLCという形で『I』~『V』に登場した全職業の外見イラストをキャラクターメイクで使用する事が出来る。『V』のイラスト以外はカラーエディットに対応していないものの、疑似的にではあるが自分がこれまでに作ったキャラクターの再現も可能であり、さらに発売されてから約二か月間は無償で入手出来たため、多くのユーザーを喜ばせた。 ---DLCで使えるようになるイラストの種類は多く、ゲーム内で使えた通常の立ち絵の他に各種パッケージイラストや販促イラストで使われていたイラストも使用できる。ただし、こちらもカラーエディットは対応していない。 ---一方で『新』シリーズのストーリーモードのメンバーや『[[セカダン>世界樹と不思議のダンジョン]]』シリーズのイラストは配信されていない。特に『セカダン』は今作とかぶっている職業が多く、フーライやケンカクといった独自職業も存在するため、使用できないことを残念がる人は少なくない。 -シリーズに慣れ親しんだプレイヤー程驚く序盤の展開 --これまでに登場した迷宮をほぼそのまま再利用している以上、先が読みやすいのではないかと考えるプレイヤーも購入前は多かった。ところが実際には、展開を大きく変えはしないものの、絶妙なタイミングで意表を突くイベントが発生するのである。 #region(序盤のイベントの数々(ネタバレ注意)) -第2迷宮は『IV』に登場する碧照の樹海の再現エリア。中ボスとして登場する魔物も原作通り「赤い体毛を持つ熊」という特徴が事前に伝えられるのだが、今回の相手は前作の中ボス「血の裂断者」ではなく、本来迷宮ボスとして控えている筈の獣王ベルゼルゲルが登場し、さらに回避不能の奇襲を狭い道でいきなり仕掛けてくるという驚愕の展開が待ち構えている。 -同じく第2迷宮。中ボスとして登場するベルゼルゲルは初めからHPが半減している状態で戦闘するため、戦闘した時点で後々全力を出したベルゼルゲルとの戦いが後に控えているという予想が出来、実際に第2迷宮のボスとしてもう一体ベルゼルゲルが登場する。しかし2体目のベルゼルゲルを倒した後、何の前触れも無く『I』のボスであるケルヌンノスが急襲、連戦となる。 -続く第3迷宮は『(新)1』に登場する原始ノ大密林の再現エリア。本来のボスであるケルヌンノスは直前に倒しており、他に序盤のボスとして目ぼしい敵も原作にいないので不思議に思うプレイヤーも多い。探索を進めると原作同様に飛竜の存在が仄めかされ、その巣の探索も行う事となる。そして飛竜の巣に侵入すると飛竜ことワイバーンが登場し、一つ下の階に存在する巣へと突き落とされる。その際に探索帰還アイテムであるアリアドネの糸を全て落とすため、拠点へ帰還する事無く一つ分のフロアを探索し、徒歩で迷宮の入り口まで帰るサバイバル生活を強要される。原作ではワイバーンの目を盗んで探索するだけのイベントだったため、この過酷なイベントに繋がる事が想像出来たプレイヤーは少ない。 その後、無事に拠点へ帰還するとワイバーンの討伐指令が下される。ケルヌンノスに代わる迷宮のボスはワイバーンなのである。 --原作では三竜に次ぐ手強い裏ボスも兼ねていたワイバーンには異常なまでの弱体化が生じているので撃破する事は可能だが、原作で無謀に突撃して返り討ちにあったプレイヤーほどその実力や、あまりに早い交戦に拍子抜けすることだろう。 -第4迷宮は『III』に登場した垂水ノ樹海の再現エリア。上記に綴った物程の大掛かりなイベントはないが、迷宮ボスと思わしき敵の名前が魔魚シルルスという見慣れない物。どのような敵が現れるのかと期待を胸に最深部へ進むと、そこにいるのは原作のボス、魔魚ナルメルと瓜二つのモンスターである。戦闘途中の逃走イベントはオミット、さらに潜航攻撃における仕様がシルルス側に有利となるよう大きく変わっているため、ナルメルより数段手強いボスとなっている。また、原作に存在していた他ギルドとの共闘も、非常に分かりやすい形で表現される。 -また、第4迷宮で起こるイベントは二人のNPCの物語が中心となっており、相手が若い男女の二人組、垂水ノ樹海由来の迷宮という要素から旧作に登場したギルド「ムロツミ」を連想しやすい。片方が迷宮の危険性を説く事や会話時の選択が多い事もあり、会話で選択が発生する度にムロツミの如く彼らの行末を左右するのではないかと考え、緊張させられる。結果的にはどんな選択肢を選んでも、たとえ相手を一度見殺しにしようと結末は同じなのだが。 -これらの変更点を引き立てる要素として、「本作初の再現エリアとなる第2迷宮の1階は再現元の迷宮の1階を敵や依頼、イベント等も含めてほぼそのまま再現していると言っても過言ではない」事に代表されるように、各迷宮は程良く原作の雰囲気を再現している。 #endregion --中盤以降はそういった物が少なくなり、内容も序盤程ではないものの、それでも意外な要素が組み込まれている。 ---裏を返せば変化が少なく、序盤程良い意味で期待や想像を裏切られる事もあまりないという事であり、肩透かしを喰らいやすいとも言える。 #region(中盤以降の展開(ネタバレ注意)) -第7迷宮は『(新)2』に登場する第一階層、古跡ノ樹海をモチーフとするエリア。ひっかきモグラや針ネズミなどの序盤に戦闘していた雑魚敵が登場するのだが、登場時期が遅いだけあってやたらとステータスは高く、普通に強い。さらに直前の迷宮が同じく『(新)2』の第四階層、桜ノ立橋をモデルとしているため、本来なら終盤に登場していた筈の魔物よりも高いダメージを与えてくる序盤の雑魚敵になおのこと驚かされる。 --ただし、攻撃技は据え置きなので序盤の雑魚敵らしい単調な攻撃スキルが多く、慣れてくるとさして脅威を感じなくなる。 -第11迷宮は『(新)1』に登場した枯レ森の再現エリアにして、本作最後のモチーフを持つ迷宮。本来ならば中盤頃で迷宮内に出現するFOEの一体が中ボスとして登場するのだが、本作では全く異なる相手がB1Fで早速出現。気になる相手は『新2』の追加ストーリーボス、バジリスクである。ここに来るまで『I』~『IV』といったナンバリングシリーズの迷宮を巡り懐かしい思い出が蘇る一方、ストーリーモード関連の要素に乏しい『新』シリーズの記憶は埋もれてしまっているため、唐突なギンヌンガ遺跡からの刺客にハッとさせられる。 --出現前には石化を操る魔物の存在を匂わすサブイベントが見られるのだが、『新1』の枯レ森にはメデューサツリーやらピクシーやらといった石化を使う魔物がおり、前者は本作でも中ボス戦前に出てくるので普通は気付かない。 -ストーリークリア後、特定の条件を満たすとワールドマップ上に最強のFOE「ディノゲーター」が出現する。これまでの作品ではFOEとしてはそこまで強くない敵に位置付けされていたディノゲーターだが、本作では初登場の『II』ばりに凶悪な敵として立ちはだかる。甘噛みの威力は控えめとなっており、『新2』のように耐える事も辛うじて可能と言ったレベルだが、同じく『新2』にて習得したぐずるを多用するようになっており、その超火力から繰り出される連撃は難易度ピクニックでもパーティを全滅させかねない程の猛威と化す。他の敵とは別次元の強さを持つため、『II』のディノゲーターを知らないプレイヤーは唖然とし、既知の冒険者でも強敵の再来に閉口する事となる。 --一応は行動ルーチンがある程度決まっているため、トライアンドエラーを繰り返してパターン化すればぐずるをまともに喰らう事無く処理出来、一気に攻めたてることでも運良くぐずるを使わせずに勝てる可能性はある。ちなみに、ディノゲーターのステータスを見る分には『II』で編み出された全裸カウンターに近い芸当が正攻法として想定されている物だと思われる。 -シリーズ恒例の裏ボスは本作にも当然存在するが、今回はなんと2体存在する。片方は搦め手を多用するトリッキーな相手であり、もう片方は純粋な火力と耐久力で勝負する正統派。正反対の戦法で攻めてくるため、どちらか一方を楽に攻略出来るパーティでももう片方には苦労しやすいというバランスになっている。 --エキスパートで撃破した場合に称号が得られるボスは片方のみだが、もう片方も撃破しないとモンスター図鑑がコンプリート出来ず称号が得られない事とヒロイックの存在により実質的にはどちらにも高難易度撃破への称号が存在している。 #endregion ---- **賛否両論点 -シリーズ最長の大ボリューム --本作は通常の迷宮、小迷宮共に10個以上存在し、全迷宮のフロア数を合計すれば『III』のフロア数の倍以上になるという大ボリュームの長編。ストーリーをクリアするまでに100時間以上かかったという報告も見られる。それをガッツリ遊び倒した人と、長すぎて疲れた人で意見が分かれる結果となった。 ---普通にプレイしていれば、ストーリークリアするまでにプレイヤーキャラのレベルは往来の初期上限である70を軽々と超える。それに合わせてレベルキャップも最初から99まで開放されており、裏ボスを倒す事で最大130までレベルを上げられるようになる。 --序盤と中盤以降のサブイベント類への注力の差や後述の霊堂の多用等から、全体の出来が安定しているとは言い難いと感じられる場合もある。 --大ボリュームの弊害として、中盤で行われるサブクラスの解禁もタイミングがかなり遅く感じられてしまう。 ---実際、中盤の終わり頃に解禁されるため、第3階層中盤に解禁される歴代最遅の『IV』と比べても遅めではある。しかし解禁された後も迷宮が片手で数えきれない程残っているので、実戦で使える機会が少ないという事は決して無い。また、レベル的にはプレイヤーキャラがマスタースキルをある程度習得し、育成方針を本格的に決められるようになる時期であるので妥当という意見もある。 -「クロス」という作風 --過去作の冒険者と迷宮がクロスするのが本作だが、クロス要素多めで新規要素が少なめな点は既存プレイヤーでも少々意見が分かれている。 ---職業のクロスはまだしも、迷宮やモンスターも過去作を元にしたものが多く、それ自体は好評の要素でもあるが、「過去作の冒険者と共に新規ダンジョンに潜りたかった」という意見も聞かれた。どこまでクロスする事を求めていたかで意見の分かれる部分である。 -地図報告の判定の甘さ --今回の地図作成を完了したと見なされるラインはかなり甘く、マップ次第では見た目上2,3割程空きのある地図でも報告出来てしまう。 --階層ジャンプの条件になっている事を考えると、「ある程度の範囲まで探索した」という事で緩めなのは便利は便利なのだが、プレイヤー本人が明らかに未完成だと感じる地図でも受理されてしまう光景には違和感を感じる人もいる。 -『V』要素の少なさ --『V』はそれ以前の作品と異なる世界を舞台とする作品であるためか、『V』に登場した迷宮の再現エリアは一つも存在しない。迷宮自体が登場しない事に関しての説明もストーリー中にて間接的に語られるものの、同じく『V』出身の職業やモンスターは普通に登場しているため、違和感が残る。設定の齟齬が生じないように最低限の配慮がなされているのか、それとも中途半端なファンサービスに留まってしまっているのか。どう受け取るかは人によるだろう。 ---リーパーとセスタスは人間とほぼ同じ容姿を持つアースラン族の職業であるため、非常によく似た技を扱う、別世界の人間の職業と考えれば納得出来なくもない。モンスターに関しても、旧作時点でスキュレーやイワォロペネレプといった設定的に複数体存在しない筈の魔物が後作に出てきた例があるので深く考えない方が良いのだろう。 --再現エリアが存在しないため、『V』にて使用された戦闘BGMも聞ける機会が殆ど無いのかと言えばそうでもなく、『V』由来のボス敵は2体登場する他、とある迷宮では通常・FOE戦共に『V』のBGMが使用される。しかし迷宮のBGMについては、特にFOE戦の選曲があまり合っていない。 -同行NPCについて --本作に登場する、固有グラフィックを用意されたNPCの数は20人を上回る歴代最多の頭数。その半分程のNPCは迷宮内にてプレイヤーと行動を共にする機会がある。NPCが同行している間は探索・戦闘時に台詞を喋るようになり、キャラクター別に所持するスキルで探索をサポートしてくれる。同行NPCはスキルによるサポートがメイン。扱い的には『新1』の探索準備に近く、居ても損は無い。一時的にパーティに加入するゲストメンバーとして戦闘に参加するキャラクターは過去最低の一人のみ。 ---戦闘に参加する一人に関しても、パーティ編成の邪魔になる点がなくはない((ヒーローの残像やシノビの分身の邪魔になる。))が、ボス戦では同行させない事も可能としっかり配慮されている。 ---旧作と異なりNPCの同行を断れる機会は少なく、大抵は強引に協力させられる。サポートに関してもあくまで「損は無い」程度のメリットしか持たないNPCもそれなりに存在し、NPCが好きになれないと冒険への没入感を削がれる事とのトレードオフにはならないと感じられる事も多い。スキル内容も探索中の自然回復や採集関連の物が多く戦闘関連のスキルは少数。戦闘にはほぼ介入しない割にいずれのNPCもヤジだけは飛ばしてくるため、同行拒否出来ない事への不満が一層募る。 --シナリオの賑やかしになっている他、別ダンジョンでも同行はせずとも出会う事もあるため、別の冒険者グループも同時に探索している描写となっている。 ---プレイヤーの先回りをして待ち構えているNPCが全編通して非常に多く、終盤になってもプレイヤーが最前線で冒険しているという気分になれない点は批判されている。冒険者という設定のNPCならまだしも、街の衛兵がラストダンジョンで大量に出没する光景は、第六階層においてごく短期間で数百人規模の冒険者や衛兵が死んだとされる『II』と同じ世界観だとはとても思えない。 //--終盤の3迷宮で有無を言わさずに常時同行するエンリーカは他のNPCよりも遥かに長い期間共に行動する事となるのだが、道中のプレイヤーとの会話やAEへの介入といった同行NPCとしてのイベントがほぼ存在しないうえに目立ったサポートも迷宮のボスを弱体化させるためのヒントを「逃走不能のボス戦に移行する直前の会話で投げてくる」という微妙な物程度であるため、細かい部分が気になるプレイヤーからすれば他のNPC以上に同行意義が薄く感じられる。 --同行NPCが全く登場せずにクリア出来る迷宮の数は全体の半分程度。ひっきりなしに喋るNPCの存在感はかなり強いため、彼らとの同行を楽しめる人は良いが、自分が作ったパーティだけで迷宮を攻略したいというプレイヤーからは不評。 -親切すぎるNPC --モンスターの弱点や危険スキル、レアアイテムの取り方などをズバリとしゃべってしまうNPCが多すぎる。自力で発見する要素を明らかにそいでいる。 ---図鑑で取り方をほのめかしもしない初期作よりはマシとの声もある。 --迷宮内においても、常にプレイヤーたちに先回りして、その先に登場するギミックのヒントを教えるNPCがひっきりなしに登場し、前人未踏のダンジョンを探索しているという冒険への没入感・高揚感が崩れてしまう。 -選抜された職業 --流石に全職業参加は出来ず、各作品から抜粋での参加となっているが、カットされた中には他にない特徴的なスキルを持った職業もあり、DLCでもいいから追加してくれという声は多い。言い出してしまえば『II』のペットや『III』のアンドロとビーストキング、『V』の召喚職業などキリが無いうえに、『V』のアースラン族以外の職業を出してしまうと世界観的に見てもかなりややこしくなるのだが。 --参戦職業に関しても、鈍足だが火力は一品のガンナーとインペリアル、アタッカーとして活躍する分には武器の選択肢が刀一種のみとなるブシドーとショーグンといった風に役割やイメージが被っている組み合わせがあるなど疑問視される部分がある。 -あくまでやり込み要素に留まるヒロイックの位置付け --本作で追加された難易度「ヒロイック」はエキスパートより上という扱いではあるが、基本的にはエキスパートと同じである。エキスパートとの差異は「他の難易度からヒロイックに難易度変更は出来ない((難易度を下げることは可能となっている。))」「周回プレイ時に選択する事が出来ないため、事実上ニューゲーム時にしか選べない。引継ぎも当然不能」「難易度ヒロイックでプレイしている間はギルドカードにヒロイックの表示が出る」といった程度であるため、選択するメリットは一切難易度を落とさずにエキスパートをプレイしている事を手軽に証明出来る事と上記すれちがい通信要素の解放条件が緩和されるぐらいである。『新』以降は難易度に関する称号が「エキスパートで裏ボスを撃破((裏ボスさえ倒せれば道中をイージーやピクニックで済ませても獲得可能。))」しかなかったため、やり込み派のプレイヤーに対するトロフィーとして機能する他、ヒロイックで遊ばないプレイヤーにも殆どデメリットが無い。 --ただし、たとえヒロイックでクリアしたデータであってもニューゲームで引継ぎする際にヒロイックを選択出来ない点は問題視されている。 --エキスパートの差が殆ど無い事に評価点がある一方で、歯応えのある戦闘を期待していたプレイヤーからは本作の少し易しめな難易度もあってか不満に感じられる事も。同シリーズでは『[[ペルソナQ>ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス]]』のように敵の強化に加えて戦闘にも制約を設けた例があるため、そういった方向での難易度上昇を望む声もある。雑魚戦でのフォースブレイク発動禁止や脱出アイテムの大幅な使用制限、エンカウント率の上方調整、FOEからの逃走不可、地図報告判定の強化などといった仕様をヒロイック限定で導入できなかったものか。 -大味なシステム --本作の売りである旧作から再利用したシステムだが、どうにも調整不足に感じられる点も目立つ。 --職業ごとの個性が際立つフォースシステムだが、職業構成により道中での難易度の差が強く出てしまう。 ---フォースブースト・ブレイクはミスティックやファーマーのように癖の強い性能を持つ物も多く、FOEやボスとの長期戦ではどのタイミングで使用し、ゲージを回収するかの駆け引きが楽しめる。一方で雑魚敵相手には『新2』同様に全体攻撃系のブレイクを一度使うだけで大抵殲滅出来てしまうので、ゲージを温存して探索すると今一つ緊張感に欠ける。おまけにフォースブレイクは殆どの場合ターン開始直後に発動・拠点に帰還すればたちまちゲージ全回復という仕様。 --文字通り『サブ』にとどまり、メインそっちのけの大胆な運用が難しく、職業間での優劣が目立つサブクラス ---サブクラスで運用する場合にはレベル上限が半分になるという制約から今一つ機能しにくい物も多く、初期レベルでも強力なスキル程使いやすい傾向にある。 ---メインクラスと相性が良く早熟なスキルを持つ職業をサブクラスに選んで、メインの補助に使うという文字通り「サブ」としての採用が無難。旧作のような大胆な運用が困難となってしまっている。 ---- **問題点 -「霊堂」ダンジョンの多さ --定期的に登場する「霊堂」と名の付いた迷宮は地形やBGM、迷宮特有のギミックといった雰囲気を醸し出す要素の多くを共有しているにもかかわらず全4種類も存在し、さらに同じ系統のギミックを用いる迷宮も他に二つ存在する。霊堂の一つを除きいずれの迷宮もB5Fまで完備の長丁場となるのも辛い点。 ---もっとも、各迷宮の階数が削減されたⅣではシリーズファンから「本迷宮のボリュームが物足りない」という不満が少なからずあったので、一概には言えないところでもある。 ---最初の内は他の色々なダンジョンの合間合間に挟まる程度なのでそこまで気にならないのだが、終盤は霊堂に次ぐ霊堂となり、ゲーム全体のボリュームの多さで疲れてくる頃に少し雰囲気を変えただけの霊堂ばかりという展開にはウンザリさせられる。 ---シナリオ上は意味がある(「霊堂」は同じ物を複数立てた物で、旧作ダンジョンの方が本来は異物)のだが、終盤に立て続けにしたダンジョン構成は失敗だろう。 ---迷宮のギミックに関しては、新たな迷宮へ入る度に、少しずつ別のギミックも追加され、前のギミックと併用して攻略するという形を取っているので完全に使い回しと言う訳ではない。 --モデルが存在しない『X』オリジナルの迷宮はこの霊堂系ダンジョンのみであるため、シリーズのファンが途中で飽きやすい原因の一端を担ってしまっている。 --雑魚敵やFOEは様々な旧作の敵と新モンスターが入り乱れて現れるため、戦闘面に関しては他の迷宮と異なり予想の付かない展開が続くので程良い刺激となり得る。 -職業格差 --19種類もの職業が登場する以上、ある程度の差が生まれるのは仕方がない事だが、それを踏まえた上でも他と比べて頭一つ抜けている職業も存在し、特定職を意図的に優遇している印象が拭えない点が見受けられる。 --本作初出のヒーローは全体的にハイスペックなオールラウンダーであり、本作屈指の強職。 ---攻撃面だけでも、遠隔攻撃・範囲・多段・物理耐性持ち特攻・三属性完備と隙が無い。防御・補助についても、専門タンク職ですら防げない敵の最速攻撃にも対処可能な防御スキル、パーティ全体の被ダメージを軽減しつつ攻撃する攻防一体のスキルや、攻撃時にパーティ全体を回復する・他の味方への攻撃を確率でかばうなど優秀なパッシブスキルを取り揃える。さらに脅威なのはヒーロー最大の特徴である「残像」。使用した攻撃スキルを次ターン以降に使う分身を確率で発生させるスキルで、これにより攻撃(防御)の手数が単純に倍近く増える。中盤から習得できる残像強化スキルも相まって非常に強力である。更に全体攻撃のフォーススキルで、雑魚なら1人で終わらせてしまう。 ---そんな強力な職業であるため、ヒーロー1人パーティに入れるだけで道中は段違いに安定し、スキルが揃ってくる中盤頃からはややバランスブレイカー気味となる。 ---性能とは異なる問題だが、世界樹の迷宮シリーズの冒険者は幾らでも替えの利くモブ同然の立ち位置から始まり、樹海の最奥まで開拓した英雄まで成り上がるのが基本であるため、最初から「英雄」の肩書を持つ職業が登場した事には難色を示すファンもいる。 --『II』より登場しているガンナーは、打たれ弱く鈍足な反面豊富な攻撃のレパートリーと高い火力を兼ね備えており、他の職業に補助させる事で高い性能を発揮するアタッカー。 ---遠隔攻撃ゆえの安定した火力に、単体強攻撃や範囲攻撃・三属性攻撃・必中の封じ付き攻撃と場面を選ばない万能型。特に属性攻撃や封じ攻撃は万能職とは思えないほど高性能で、他の専門職が完全に割を食っている状態。 ---フォースブレイクスキルはそれひとつで裏ボス含むほぼ全ての敵単体を1ターン確定で無力化する強力無比なもので、これを用いてボスを封殺する戦法も存在する。 ---当然ながらガンナー複数人の編成にすると多数の雑魚敵と戦う道中では事故率が高くなり、奇襲を受けようものなら打たれ弱さのせいで高確率で全滅するのであくまで対ボス戦用の編成に過ぎない((一人いるだけなら至高の魔弾は緊急時の回避手段として非常に役立つが。))。また、ガンナー専用の最強装備もストーリークリア後まで購入不能という遅い時期であるため、強力な銃が手に入らない時点ではおいそれと手出し出来ない戦法でもある。 --『III』より登場しているプリン(セ)スは、元から打たれ強い優秀なバッファーであった。 ---しかし今作では『I』および『II』のバード、『IV』のダンサー、『V』のシャーマンといった歴代のバフ職が軒並み不参戦であるため、純粋なバッファーは彼らしか存在しない。そのため敵の攻撃が熾烈な高難度ではヒーローと並んでほぼ必須職と化している。 ---後述のバグもあって中盤からはバランスブレイカーになりがち。とは言ってもヒーローほど一人で何でもできるわけではないが。 --反対に諸々の問題から弱くなりやすいのが『V』出身のセスタス。 ---敵に封じやバステを付与しつつ連撃を決めるアタッカーとデバッファーの兼用職業であるが、セスタス単体ではアタッカーとしてもバステ付与役としても他の各専門職業に劣っている。レベルカンストというやり込みの域にまで成長させ、他のパーティメンバーの補助を受けることでようやく真価を発揮できるくらいに扱いが難しい。そこまでお膳立てしてもなお、その威力は他アタッカーが単独で簡単に出せる程度のものという始末であり、手間やリスク、運要素に対してリターンが全く釣り合っていない。 #region(セスタスの問題点) ---『V』では封じ役としても十分な性能で、かつ序盤から終盤まで使えるお手軽火力スキル「雷神拳」が強力すぎた反動か、今作では簡単に火力が出せないように各方面の数値に下方修正がかかっている。が、その下方修正の度が過ぎている。 ---育成が進めば、相手に封じが付いている程高い火力を出せるパッシブスキルを習得できるのだが、セスタスの封じスキルの性能が他職と比べて低く、任意のタイミングで与えられる物ではないので火力にムラが出る。 ---さらにはスキルの威力や武器攻撃力が著しく低く、封じが付いてない相手にはまともな火力を出せない。そのため、アタッカーとしての役割を期待していると安定したダメージを出せる他職と比べて弱く見えやすい。 ---最強装備を見ても、「セスタスの最強武器は各種最強武器の中でワースト2の物理攻撃力」「前衛職で物理耐性高めの軽鎧が装備可能にもかかわらず最強防具は後衛職向けで物理防御力が低めの服」と言った点から冷遇気味。最強防具が服なのは『V』でも同様だが、単純な防御力だけであれば職業制限の無い最高性能の軽鎧に勝っていた。しかし本作では最強防具を上回る物理防御力を持つ軽鎧があるため、一概にこちらを取っておけば安定するとも言えない。 ---HPの伸びは良いのだが、高HPキャラへの攻撃優先度が高くなる敵の行動ルーチンが災いして攻撃が集中しやすい。上述の通り物理防御力に不安を抱えているため、何らかの対策をとっていないとあっさりと落とされることも多い。 ---クリンチやファイナルブローといった三点同時縛りを狙えるスキルはセスタス特有の物であり、瞑想やダブルパンチといった封じの成功率を上げるスキルを備え、成功率に影響するLUCの数値も伸びが良い。サブクラスのスキルでの封じ付与を主とし、攻撃もそこそこ出来る職業として見れば活躍が期待出来る。 #endregion //職業格差は内容からして賛否両論よりも問題点として挙げられるべきなので移動しました。 -拠点NPCの問題 --本作の拠点に存在する施設を担当するNPCは癖が強く好みが分かれやすい。 ---特に批判的な意見が多いのは、暴力、下ネタ、パロディ等エキセントリックな要素を詰め込んだおちゃらけキャラにして酒場担当のクワシル。これまでのNPCとの明確な差別化は出来ているが、如何せん癖が強過ぎる。依頼を受ける度に説明がてら色々な話を聞かせてくれるのだが、ブラックユーモアを盛り込んだぶっ飛んだ内容が目につくことが多く、そういった話を許容または聞き流せる人でないと眉をひそめたくなる。このNPCが許せない人は依頼を受ける度に会話スキップをする羽目になる((依頼の達成条件自体は会話を聞かずともメニュー画面から確認できる。))。 ---依頼内容のスキップについては、裏を返せば、メニュー画面の数行の文章で確認出来る程度の簡素な依頼ばかりという本作の問題点の怪我の功名でもあるのだが。 ---頻繁に顔を合わせるNPCである以上、好き嫌いの分かれるキャラクターはそれだけでも悪い点として目についてしまう。全編通して施設に通い詰めるうえに会話量がトップクラスに多い酒場担当のNPCをこのような問題児にしてしまった事はかなり痛い。 --クワシル程ではないが、常に気怠げに振舞い職務に対して不誠実な宿屋担当のヴィヴィアンも少々苦手な人がいる。 --ギルド担当のミュラーとミッション担当のペルセフォネは立場相応の責任感を持ったまともなキャラクターなのだが、ストーリーの展開に合わせて不在となる機会がある。ペルセフォネはストーリーをクリアするまでの期間のうち半分程は不在となるため、印象が薄くなりやすい。 --『II』以降御馴染みとなっている、裏ボス撃破前後で発生するプレイヤーとの別れに対する会話台詞は用意されておらず、図鑑コンプリート時の会話があるペルセフォネ以外のNPCとの別れはかなり中途半端な物となってしまう。 -単調なアドベンチャーエピソード --迷宮内のサブイベント要素はこれまでのシリーズ作品と比べて数はかなり増えたものの、それに釣り合わないほどに質が大きく下がっている。 --『V』に登場したアドベンチャーエピソード(AE)は、クリア後の第六階層にて一切存在しないという欠点があったが、本作では小迷宮を除く全迷宮に多数のAEが配置されている。 --しかしこれまでの作品で発生していたサブイベントと比較すると、ダンジョンの特徴や背景と無関係な、取って付けたような変化のない内容ばかり。やたらと休憩したり遊び始める等プレイヤーキャラクターが気を抜き過ぎている物が多く、AEが初めて登場した『V』や、『IV』以前のシビアな迷宮を知るプレイヤーほど雑なテキストに不満を感じやすい。特に全編通して飲み水関連のAEがやたらと多く、魔物が跋扈する迷宮の地面の水溜まりを掬って飲む、前人未踏の迷宮で明らかに怪しい水筒の中身を疑わずに飲んで中る、など常識外れな内容のAEがラストダンジョンで発生する。 --AE中には選択肢が設けられているものの、イベントに関わろうとする選択肢を選ばなければ進行せずAE達成とはならないため、選択の自由はない。怪しい物を見つけても調べない事には話が進まず、『II』のように無視しようとすれば逆に危機に陥るようなイベントも無いため、選択肢を設けている意味は全くと言っていいほど無い。「君は○○しても良いし、しなくても良い」という言い回しに代表される世界樹のコンセプトと対立してしまっている。 --後半に発生するAEで関わらない選択肢を選ぶと、すべて「今は先を急ぐべきだ。君たちはこの場を立ち去ることにする。」の一文で終わる。途中から息切れし、テキストの水増しで数だけ増やそうと手抜きをしているのが窺える。 --NPCのリアクションに関しても、中盤以降はNPCが反応するAEがラストダンジョンを除きほぼ存在しないので、NPC同行中は一つたりとも見落とすまいと探す楽しみも徐々に無くなってくる。 -シリーズに馴染みあるほど違和感を覚えるメインストーリー、シナリオ構成 --全体的にNPC主体の話の割合が高く、ナンバリングとは毛色が異なり、典型的な正義の味方の振る舞いを強要される。 ---プレイヤーキャラクターもヒロイックな台詞や対応でNPCに干渉する事が多く、終盤ではNPCからもストーリー上でそんな性格を持つ人間として扱われるため、キャラクター像が勝手に大きく固定される。往来のシリーズの特徴として、基本的に台詞を発さずNPCへの干渉も控えめでプレイヤーごとの想像の余地を含むキャラクター像があったために、シリーズ過去作に馴染みのあるプレイヤーであるほど違和感を覚える。 ---シリーズ恒例の「君は○○しても良いし、しなくても良い」という言い回しのように、プレイヤー側の思考・想像による補完に委ねるスタイルだった筈の世界樹のナレーションが、限定的な状況描写を勝手にヒロイックに語りだすのはシリーズ集大成として致命的。 ---この点はボス撃破時に顕著であり、過去作ではボスを撃破した描写の一、二文で短く済ませていた所を、ボスを倒すまでの過程を的外れに細々と描写した冗長なナレーションが流れ、かえって白けてしまう。 #region(ボス撃破時のヒロイックなナレーション例) 「人の背を軽く超える体躯を持つ赤熊を相手に君たちは死闘を繰り広げる…。剣が、槍が、矢が、術式が、君たちが持つあらゆる攻撃が叩き込まれても、赤熊は動きを止めずにいた。不死身かと思われた赤熊だが、&bold(){最後に○○(PTメンバー名からランダム選出)が振るった一撃}がついにその生命体をこの世から断ち切った。」~ 「鋭い牙と大きなかぎ爪が、何度も何度も君たちに向けて振り下ろされる。一撃で敵を屠るであろうその爪牙も注意深く戦う君たちの身体には致命傷を与えることができない。逆に、君たちの持つ剣が、槍が、弓が、恐るべき飛竜に深手を与えていく。」~ パーティーメンバーの装備や攻撃は一切関係ない上に、戦闘不能になっているメンバーがボスにとどめを刺すなどの描写がされる場合もある。この他にもプレイヤーの想像で補うには苦しい内容が目立ち、あまりにも押しつけがましくくどいものが多い。 #endregion --中盤以降、ストーリー上で発生するイベントは人間(国家)同士の争いが主軸となるのだが、『III』のようにどちらに味方するかといった展開もなく、中庸を貫いたまま(所属は初期のまま)終了となる。 --中盤以降のダンジョン探索の理由も「前人未踏の迷宮でお宝を探し求める」から「先のダンジョンに行ってしまった人物を追う」という方向にシフトしており、未知の樹海を踏破するという冒険者としての目的が薄くなってしまっている。 -一部の設定ミス・バグ --残念ながら本作にも諸々のバグや不具合が存在し、中でも有名かつ仕様と勘違いしやすい不具合が不屈の号令に関する物。中確率で食いしばり効果が発動するはずが、確定で発動するようになっている。 #region(不屈の号令バグ) プリン(セ)スが覚える味方一列へのバフスキル「不屈の号令」は、掛かっているキャラクターがダメージを受けてHP0となった時に一定確率で喰いしばり、ある程度HPを回復した状態となって戦闘不能を回避する物。しかし不具合によりスキルレベルに関係無く発動確率100%となってしまっているので、同じ対象に複数回ダメージが入ったり相手が速度補正を極端に変えてくる機会が訪れない限り延々と攻撃を耐える事が出来てしまい、中々凶悪なスキルになってしまっている。これ一つで完封出来る訳では無いが、本作の最終ボスに対するダメージ対策もこのスキルだけで大体行えてしまう程。~ スキルレベルに応じて行動速度補正が極端に変化するという性質も、スキルレベルを調整すれば大体の敵の行動パターンに合わせられるという利点になってしまう。さらに間の悪いことに、本作には味方一人の速度補正を極度に強化するレンジャーの「アザーズステップ」やら不屈の号令やアザーズステップを誰でも習得出来るサブクラスシステムやらが存在するため、安定して運用する事もそう難しくはなかったりする。 #endregion --その他にも有名な不具合として、確率で複数の味方を蘇生させるスキル群が、蘇生成功率の設定不具合により罠スキルと化してしまっている。 #region(確率蘇生スキルのバグ) 問題のスキルとは、リーパーの「魂転移」、ショーグンの「切腹」、ミスティックの「破陣:再起活性」。~ 「魂転移」を例に挙げると、攻略本及び解析情報ではレベル1で50%、最高まで上げれば75%で成功するとなっており、実際その成功率だったらレベルを上げれば実用範囲になっていた。が、実際にはその成功率を2乗した数値((レベル1で50%×50%の25%、レベル10で75%×75%で56%))になってしまっており、レベル1ではまず成功しない、最高までレベルを上げてもこのスキルを使いたい複数人戦闘不能時には頼りにならない。デメリット有でこの確率のため、習得が罠になってしまっている。 #endregion --本作ではバグ修正用のパッチが殆ど配信されておらず、これらのバグも19年5月現在放置されたままである。 -依頼の単調さ --本作に用意されている依頼は素材の納品が非常に多く、特殊なギミックや謎を解くような物は少なめ。終盤に向かう程納品依頼の割合が増えてくるため、単調に感じやすい。 --早い段階でクリアした迷宮に再度足を踏み入れ、当時は調べられなかった範囲や謎の痕跡を再度調べ直すような依頼も非常に少ない。そのため、本作では一度踏破した迷宮に素材集めや地図・図鑑埋め以外の目的で足を踏み入れる機会はほぼ皆無。 --連続したストーリーが繰り広げられる依頼もあるにはあるが、不眠症のNPCを眠らせるための薬の素材集めやプレイヤーの仕事ぶりを気に入った仕立屋のオーダー通りに素材を集める等話に捻りが無く、どうにも面白いとは感じにくい。小迷宮の主や裏ボスとの戦闘に関する依頼も大抵は『I』並にあっさりしており、護衛や魔物狩りと言った名目で淡々と交戦する事になる。 ---とはいえ、多少なりともストーリ―がある分、腕試し以外にこれといった理由も無く倒される小迷宮の主よりはマシかもしれない。 -露骨なパロディ --パロディ自体は『I』からクエスト名やNPCの容姿などでそれなりに存在したのだが、本作のパロディは世界樹シリーズと関係無いにもかかわらずあまりに露骨だったり、ミスマッチな物も多い。中には迷宮内で強制発生AEとして見せつけてくるイベントまである。 --パロディを担当させられる役割のNPCは決められているのでその被害に遭うキャラクターの数は少ないが、序盤からの付き合いであるNPCがここぞという見せ場でパロネタを披露する様や、元を辿れば成人誌の下ネタ台詞を堂々と叫ぶ光景は失笑物である。 ---- **総評 過去作の冒険者、迷宮、モンスターが入り乱れたまさに「クロス」と言える世界樹。~ 歴代で圧倒的なボリュームを持っており、旧作から再利用する事でシリーズ一の幅広い職業層の生成、膨大な数の収録曲や様々な雰囲気を持つ迷宮の中で多種多様な敵との戦闘を繰り広げさせる事にも成功している。~ しかしいろいろ詰め込んだ結果の大ボリュームは疲れやすさ、単調さにも繋がっており、その疲れやすい終盤に霊堂ダンジョンが続く点等には批判も多い。~ NPC重視のストーリーや押しつけがましい作風、歪な職業バランス、作り込みの甘いサブイベント要素も少々意見の分かれる所。~ とはいえ、気になる所は多々あれど、総合的に見れば十分まとまった出来になっている。~ ---- **余談 -『III』から参戦している職業が他作よりも多い5種類、拠点BGMや特定ボスのBGMなどが『III』の物のアレンジ、本作が初出の迷宮と敵を除けば新規造形で作成されている敵や迷宮は『III』の物のみ((『III』のみ3DS媒体で登場、リメイクしていないので当たり前ではあるが。))等といった要素から、「新・世界樹の迷宮3」が製作途中で企画倒れとなり、その際に残った素材を流用しているのではないかという噂がたっている。 --また、2023年3月をもって3DSのニンテンドーe-Shopが終了することが発表され、それを受けてか2022年8月には「アトラス ニンテンドー3DSファイナルセール」が行われたため、元々望み薄であった3DS版「新3」の可能性は完全に断ち切られた形になる。 --しかし、2018年8月に公開された「SQ、胎動。」という30秒ほどのPVから実に4年半の時を経た2023年2月9日に『世界樹の迷宮 I・II・III HD REMASTER』が発表、ついに最新機種で『III』が遊べるようになった。 ---ちなみに懸念されていた手書き地図の有無だが、携帯モードでのタッチによる描画、コントローラー操作での描画、Win版はマウスによる描画がサポートされていることが確定した。 -本作の売り上げは非常に良かったらしく、発売されてから間もなく品切れとなる店舗が続出し、『セカダン』の如く品薄に関するお詫びの告知が公式HPに掲載された。それに伴い、当初は1カ月を予定していた過去作の職業イラストの無料配信期間が2か月へと延長された。 -早期購入特典として、各種イラストレーターが特別に描き下ろしたイラストを立ち絵としてダウンロードできるコードが付属していた。 --今作もファミ通の購入特典としてダウンロードできるイラストも存在する。コードの期限が切れているため、現在はDL不可能。 --Amazon限定だった「ヒーロー♀(ビキニアーマー)」のイラストは、後に有償配信された。 -本作のオリジナルダンジョンとなる「霊堂」で共通して使用されているダンジョンBGMは、''なんと初代『[[世界樹の迷宮]]』な時代に制作されていた幻の没BGMのリメイクである。'' --この曲は同作の初回購入特典として付属していたミニサントラに収録されていたもので、その後一度たりとも再録されていなかった非常にレアな曲であり、まさかの選曲に無印からの古参ファンの間で驚きの声が上がった。
*世界樹の迷宮X 【せかいじゅのめいきゅうくろす】 |ジャンル|3DダンジョンRPG|&amazon(B07C1VBF76)| |対応機種|ニンテンドー3DS|~| |発売・開発元|アトラス|~| |発売日|2018年8月2日|~| |定価|6,998円|~| |プレイ人数|1人|~| |レーティング|CERO:B(12才以上対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント| シリーズのほぼ全てがクロスオーバーするお祭り作品&br;歴代最大のボリューム&br;ボリュームと表裏一体の飽きやすさ&br;歴代シリーズと異なる方向性の作風|~| |>|>|CENTER:''[[世界樹の迷宮シリーズリンク>世界樹の迷宮シリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 『世界樹の迷宮』シリーズにおけるナンバリング5作、新シリーズ2作、不思議のダンジョンシリーズ2作に次ぐ、10作目のゲームとしてXの名前を与えられた作品。%%『S』((ソーシャルゲーム『世界樹の迷宮S 悠久の覇者』のこと。現在はサービス終了しており、本作のPVでも紹介されていない。))など無かった。%%~ 「シリーズのすべてがクロスオーバーする3DS最後の完全新作」という謳い文句の通り、各作品が持つ様々な要素を取り入れた作品であり、『V』までの歴史を振り返るお祭りゲームでもある。 世界観は『I』~『IV』と同じで、作中の時系列としては『I』~『IV』の通常エンディングから少し後という扱いであり、各作品から登場しているNPCは作中のストーリーを踏まえた会話をする事もある。『I』と『II』に関しては、ナンバリングシリーズと『新』シリーズのどちらから繋がっているのかは不明。シリーズ別で生死が異なるクロガネJr.の父親についても詳しく触れられない。 本作の舞台は一本の世界樹を中心にして四つの島と数多の迷宮が存在する絶海の孤島「レムリア」で、そこに眠る秘宝を探し求める飛行都市「マギニア」の招集に応じ、空路でレムリアに乗り込んだ一介の冒険者の物語が繰り広げられる。 ---- **特徴 -作品毎に職業や戦闘、育成システム等が色々と変わる世界樹シリーズであるが、本作では過去作で用いられた様々なシステムを取り入れる形式をとっている。 -全19種類の職業 --本作からの新職業は、自身の行動を繰り返す残像と攻守共に優れた多彩な攻撃を使いこなす「ヒーロー」一種のみ。代わりにこれまでの作品から18種類もの職業が登場するため、パーティ編成の幅は非常に広い。~ 職業一覧 |[[I>世界樹の迷宮]]((職業イラストは『II』準拠。))|パラディン/メディック/レンジャー/ブシドー| |[[II>世界樹の迷宮II 諸王の聖杯]]|ガンナー/ドクトルマグス| |[[III>世界樹の迷宮III 星海の来訪者]]|プリンセス/シノビ/ゾディアック/ファーマー/ショーグン| |[[IV>世界樹の迷宮IV 伝承の巨神]]|ソードマン/ナイトシーカー/ミスティック/インペリアル| |[[V>世界樹の迷宮V 長き神話の果て]]|リーパー/セスタス| |[[新>新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女]][[(2)>新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士]]((初出は『新1』だが、職業イラストは『新2』準拠。))|ハイランダー| |X|ヒーロー| -探索関連 --本作には『IV』のように少ない階数の迷宮が複数個登場し、それらを順に攻略していく事となる。 ---『IV』同様にワンフロアのみで構成される小迷宮も多数存在するが、本作ではストーリーに全く絡まない鍛錬の場と化している。 --探索開始時にはまずワールドマップへ出向き、そこから目的地へ移動して迷宮に入るという『IV』に近い形式となっている。 ---ワールドマップはやや簡素な形状であり、目的地のマスを選べば即座に移動可能。『III』や『IV』のような通常の迷宮探索とは一味異なる探索を期待していると肩透かしを喰らう。 ---ワールドマップ上には街以外の探索拠点や採集ポイントといった、迷宮の入り口以外のマスも存在。滞在中のNPCと会話したり、迷宮に入る事無く採集アイテムや貴重な魔物の素材を手に入れる事も可能。また、採集ポイントにはFOEが沸いて荒らす事もあり、討伐しなければ採集ポイントが自然回復しにくくなる。 --メニュー画面や地図作成のUIは直近の作品である『V』と同じ。メニューに関しては選択していない選択肢の説明がアイコン表示だけのままなので、使い込むまでどのアイコンがどの選択に繋がっているのか分かりにくい。 --本作に登場する迷宮の多くは『I』~『IV』に登場した迷宮をモチーフとしており、探索・戦闘BGMもそれに準じた物を使用している。 --探索時に発生するサブイベントは『V』同様にアドベンチャーエピソード(AE)として区別。イベント終了時にはパーティメンバーが経験値を取得出来るので、積極的な参加を促される。 --探索成果を拠点に報告するシステムも『V』から続投。 ---迷宮内で作成した地図を拠点で報告する事により、迷宮内でこれまでに到達した好きな階層の入り口までワープして探索を始める事が出来る。また、一つの迷宮の地図を全て完成させれば、報酬を受け取る事も出来る。 -戦闘システム --世界樹シリーズでは毎作登場する、戦闘時に蓄積されるゲージを用いたシステムは、『新2』において採用された「フォースブースト・フォースブレイク」を使用する。フォースブーストは発動してから3ターンの間、使用者に対して所属職業(メインクラス)に応じた性能強化が施される。ブースト発動中、またはブースト発動可能時に使用出来るフォースブレイクは、フォースゲージを破壊して拠点で回復するまでブーストを使用不能とする代わりにメインクラス毎に決められた技を発動する一発逆転の大技。歴代のゲージシステムの中で最も職業毎の個性を強調した物である。 --難易度選択は『新』にて採用されている「ピクニック・ベーシック・エキスパート」の三段階形式をより発展させた物を使用。ピクニックを選択した場合は以降の難易度変更が行えなくなる。また、エキスパートよりさらに上の難易度として「ヒロイック」が追加された。 -育成システム --スキル関連の育成には『IV』で採用されたレベル制限付スキルツリーシステムを採用。習得可能なスキルには『ノービス(初期開放)・ベテラン(レベル20)・マスター(レベル40)』の三段階に分かれて習得レベルに制限がかかっているため、選択肢の少ない序盤はキャラクターの育成方針を簡単に決定、変更出来、中盤以降は育成の幅が広がる代わりに育成方針をしっかりと定める必要が生じる。 --ゲームをある程度進めると、『III』・『IV』にて登場した「サブクラス」を習得出来るようになる。サブクラスを用いるとプレイヤーキャラクター1人につき1つ、メインクラスとは異なる職業を選択して与える事が出来、サブクラスで与えた職業のスキルを限定的に習得可能となる。本作のサブクラスは、スキルレベルの強化上限がメインクラス時の半分までという『IV』の形式を採っている。 ---また、サブクラスを習得した後は『V』で登場した「二つ名」のように、職業の名前をプレイヤーが自由に変更可能となる。数は少ないものの、編集した職業名がテキスト上に表示されるイベントも存在。 -その他 --武器の鍛冶システムは『V』にて使用された段階式改造。武器の生成に必要な素材かインゴットなるアイテムを消費して武器の性能を5段階まで強化でき、武器の買い替えをせずともワンランク上の性能を持った武器を入手できる。 --キャラクターメイキングは『V』に登場した形式を採っており、髪や目の色のRGB値を好きに編集出来る他、肌色を変更したり全60種類のパターンからなるボイスを付ける事も出来る。カラーエディットが生まれた『V』以前の職業イラストも、エディットに対応出来るよう修正されている他、『II』の職業イラストには当時存在しなかったアナザーカラーも追加されている。 --『III』以降続いている、すれちがい通信によるギルドカードの交換は今回も続投。ギルドカードの所持上限は歴代最多の255枚となっている。おまけ要素に近いが、ギルドカードの交換やそれに関する操作をしなければ発生しないイベント、入手出来ないアイテムも存在する。 ---- **評価点 -歴代の迷宮が再登場 --本作に登場する迷宮の大半は過去作に登場した迷宮をモデルとしており、そういった迷宮は3DSに移行してからは一度も登場していない『III』の物を除き、全て旧作の地形モデルを使用している。 ---『I』と『II』の迷宮には『新』シリーズの物を使用。そのため、一番古いモデルは『IV』に登場した物となる。その『IV』は既に6年も前の作品となっているため、一種の懐かしさを感じる事もあるだろう。 --『III』の物に関しては、他の迷宮と合わせるために新規造形のモデルが用意されているため、かえって新鮮に感じられる。 --探索BGMも当時の曲を再使用。また、戦闘BGMは作品別で「雑魚敵・FOE・ボス」の三種類全てをしっかり区分しており、雑魚敵戦の戦闘曲も『III』と『V』を除き物語前半・後半の両方をカバーしているため、次の迷宮へ進む度に異なる雰囲気の戦闘を味わえる。『III』の物に関しては、やはりこちらもアレンジされて登場。 ---ボス敵のBGMも個体別に設定されているため、中ボスや裏ボス、ストーリーモードの追加ボスといった様々な相手の曲を耳にする事となる。 ---そういった事から本作に収録された戦闘BGMの数は非常に多く、新規曲も合わせれば総数20種類以上にも昇る。 --ただし、サブイベントの多くはX独自の物へと差し替えられており、さらに内容も全体的に旧作の殺伐とした世界観にはそぐわない。中盤以降に登場する迷宮では道中で発生するイベントがその迷宮とおよそ関係の無いストーリー関連のイベントしか捻じ込まれていない場合も多いため、きちんとかつての雰囲気を再現出来ている訳ではない。 -数多のファンサービス要素 --本作に登場する迷宮の多くは上記の通り、かつて登場した迷宮を模した物となっている。 --後述のシリーズユーザーが引っかかりやすいイベントも、一種のファンサービスと言える。 --NPCの中には旧作に登場したキャラクターも存在し、様々な形でプレイヤーの冒険に協力してくれる。 ---商店担当は『III』のネイピア商店店主。正式名称がネイピアになった事とCVがついた以外は概ね以前のままであり、がめつさ全開でありながら時に空回りし、時にそれとなくプレイヤーを気遣ってくれるどこか憎めない性格で、本作NPCの中でも人気のキャラである。 --小ネタも充実しており、『II』の採集やリスを再現したイベント、『III』の大航海クエストに登場してから8年越しに性別が判明するNPC、『新2』のゲテモノ料理等、時折話の隅に現れてはシリーズのファンをニヤリとさせてくれる。 //ネイピアについては分かれ台詞の問題くらいで十分評価点でしょ。別れ台詞がない問題は問題点にまとまってるのでこっちでは省略。 -意外な存在感を見せる小迷宮 --本作における小迷宮の立ち位置は鍛錬・腕試しの場となっており、シリーズ全体で見ればエキスパートでも難易度は多少低めの通常迷宮では物足りないプレイヤーに向けたエクストラダンジョンという側面も持っている。 --小迷宮にはモチーフとなった通常迷宮が存在し、大半の雑魚敵もその迷宮に準ずるものの、いずれの小迷宮にも独自の手強い雑魚敵やFOEが生息しており、気が抜けない。 ---中でも高威力の全体複数回攻撃を多用するビッグモスや、二重の再生能力を持つ渾然たる雷電獣(ライデンジュウ)は多くの冒険者に強烈なインパクトとトラウマを残す。 --小迷宮の深部に居座る主と呼ばれるFOEは、その殆どが旧作に登場したボスモンスター。小迷宮が開放された時点で攻略中の通常迷宮どころかその次に登場する通常迷宮をクリアする程の実力を付けてなお苦戦する可能性のある強敵揃いであり、倒し甲斐がある。 ---反面、二つ目の小迷宮に登場する主の強さに畏縮したプレイヤーの多くは攻略が必須でない事から時期尚早と判断して多くの小迷宮の攻略を後回しにしてしまい、思い出した頃に主を討伐しに向かうとあっさり倒せてしまうケースが多発。それなりの歯応えを求めるプレイヤーからは、推奨レベル等がある程度分かるような強さの指標が欲しかったという声もあがっている。 --通常迷宮のギミックをより複雑にして再利用するパズル要素の大きい小迷宮も多く、あっさりとしたギミックの多い通常迷宮に拍子抜けしたユーザーでもここで頭を抱える事となる。元々パズル要素が強い通常迷宮をモチーフとしている桜花天空楼は特に難しく、パズルの解除が苦手なユーザーは悲鳴をあげる程。 --小迷宮内には一切のAEが存在しないものの、多くの小迷宮はストーリー中に出会ったNPCからの依頼で出向く事となり、彼らと共に攻略する事もある。道中での会話もそれなりにあるため、NPCの掘り下げにも活用されている。 -幅広い魔物との戦闘 --迷宮が切り替わる頻度が高いため、それに伴い出現する魔物の顔ぶれもかなりのペースで全く別の物となる。旧作の迷宮は出典が異なるため、X初出の魔物を除けば既に戦った事のある魔物のバリエーションが登場する事も稀。 --迷宮内の戦闘で安定する戦い方が定期的に変わってくるため、戦闘に関しては中々飽きが来ない仕様となっている。 --ナンバリングのように少しずつ敵の顔ぶれが入れ替わり、徐々に味方の動かし方も変えて対応する必要のある迷宮も霊堂としてきちんと存在する。 -前作『Ⅴ』から改善された鍛冶システム --武器固有のスキルを強化出来る鍛冶システムとキャラクターに装備出来る武器の制限を解除出来るサブクラスシステムとの相性はそこそこ良く、パーティ次第では武器を重視しないキャラクターにも武器のスキルという少し変わった観点から役割やサブクラスを与えられるようになっている。 --本作では最強武器は鍛冶不能となっているので、最強レベルのキャラクターを作る際にインゴット不足に悩まされるという事が無くなった。 --その一方で、『III』や『IV』のそれと比べると使いやすい一方で味気ないという意見もある。 -自由度の高いパーティ編成 --単純に職業の数が多く、それだけでもパーティ編成の幅は広い。 ---『V』に登場した、戦闘で獲得した経験値を控えメンバーにも与えるアクセサリ「追憶の音貝」もゲーム開始後早々に貰えるので、常に装備を心掛けていれば控えメンバーも装備を整えさえすれば最前線で辛うじて戦えるレベルまで強化可能。普段使わない職業でもある程度育てられるため、最初にギルドへ登録しておけば気になった時に即戦力として使う事が出来る。 --隠し要素ではあるが装備キャラクターのフォースブーストとブレイクの性質を変化させるアクセサリが登場したため、一味違うキャラクターを組み込む事も可能。 --キャラクターに与えるイラストの制限が無くなり、転職を挟むことなくキャラクター登録の時点で他の職業や種族のイラストを選択する事が可能となった。 --キャラクターに付けられるボイスパターンは『V』の40種類の1.5倍となる60種類であり、要望の多かった渋い男声も多数収録している。 ---一方で最低限の掛け声しか無い文字通りの「無個性」パターンが10個も存在、さらにそれに近い台詞ばかりのパターン(「女性・セクシー」等)や台詞が似通っているパターン(「青年・元気」と「少女・乱暴者」等)もある等、水増しが目立つ。それを抜きにしても全体的に見れば無難、没個性なパターンが多めであり、特徴的な物が多かった『V』のボイスを恋しがる声もある。 --職業別に与えられたイラストとは別に、DLCという形で『I』~『V』に登場した全職業の外見イラストをキャラクターメイクで使用する事が出来る。『V』のイラスト以外はカラーエディットに対応していないものの、疑似的にではあるが自分がこれまでに作ったキャラクターの再現も可能であり、さらに発売されてから約二か月間は無償で入手出来たため、多くのユーザーを喜ばせた。 ---DLCで使えるようになるイラストの種類は多く、ゲーム内で使えた通常の立ち絵の他に各種パッケージイラストや販促イラストで使われていたイラストも使用できる。ただし、こちらもカラーエディットは対応していない。 ---一方で『新』シリーズのストーリーモードのメンバーや『[[セカダン>世界樹と不思議のダンジョン]]』シリーズのイラストは配信されていない。特に『セカダン』は今作とかぶっている職業が多く、フーライやケンカクといった独自職業も存在するため、使用できないことを残念がる人は少なくない。 -シリーズに慣れ親しんだプレイヤー程驚く序盤の展開 --これまでに登場した迷宮をほぼそのまま再利用している以上、先が読みやすいのではないかと考えるプレイヤーも購入前は多かった。ところが実際には、展開を大きく変えはしないものの、絶妙なタイミングで意表を突くイベントが発生するのである。 #region(序盤のイベントの数々(ネタバレ注意)) -第2迷宮は『IV』に登場する碧照の樹海の再現エリア。中ボスとして登場する魔物も原作通り「赤い体毛を持つ熊」という特徴が事前に伝えられるのだが、今回の相手は前作の中ボス「血の裂断者」ではなく、本来迷宮ボスとして控えている筈の獣王ベルゼルゲルが登場し、さらに回避不能の奇襲を狭い道でいきなり仕掛けてくるという驚愕の展開が待ち構えている。 -同じく第2迷宮。中ボスとして登場するベルゼルゲルは初めからHPが半減している状態で戦闘するため、戦闘した時点で後々全力を出したベルゼルゲルとの戦いが後に控えているという予想が出来、実際に第2迷宮のボスとしてもう一体ベルゼルゲルが登場する。しかし2体目のベルゼルゲルを倒した後、何の前触れも無く『I』のボスであるケルヌンノスが急襲、連戦となる。 -続く第3迷宮は『(新)1』に登場する原始ノ大密林の再現エリア。本来のボスであるケルヌンノスは直前に倒しており、他に序盤のボスとして目ぼしい敵も原作にいないので不思議に思うプレイヤーも多い。探索を進めると原作同様に飛竜の存在が仄めかされ、その巣の探索も行う事となる。そして飛竜の巣に侵入すると飛竜ことワイバーンが登場し、一つ下の階に存在する巣へと突き落とされる。その際に探索帰還アイテムであるアリアドネの糸を全て落とすため、拠点へ帰還する事無く一つ分のフロアを探索し、徒歩で迷宮の入り口まで帰るサバイバル生活を強要される。原作ではワイバーンの目を盗んで探索するだけのイベントだったため、この過酷なイベントに繋がる事が想像出来たプレイヤーは少ない。 その後、無事に拠点へ帰還するとワイバーンの討伐指令が下される。ケルヌンノスに代わる迷宮のボスはワイバーンなのである。 --原作では三竜に次ぐ手強い裏ボスも兼ねていたワイバーンには異常なまでの弱体化が生じているので撃破する事は可能だが、原作で無謀に突撃して返り討ちにあったプレイヤーほどその実力や、あまりに早い交戦に拍子抜けすることだろう。 -第4迷宮は『III』に登場した垂水ノ樹海の再現エリア。上記に綴った物程の大掛かりなイベントはないが、迷宮ボスと思わしき敵の名前が魔魚シルルスという見慣れない物。どのような敵が現れるのかと期待を胸に最深部へ進むと、そこにいるのは原作のボス、魔魚ナルメルと瓜二つのモンスターである。戦闘途中の逃走イベントはオミット、さらに潜航攻撃における仕様がシルルス側に有利となるよう大きく変わっているため、ナルメルより数段手強いボスとなっている。また、原作に存在していた他ギルドとの共闘も、非常に分かりやすい形で表現される。 -また、第4迷宮で起こるイベントは二人のNPCの物語が中心となっており、相手が若い男女の二人組、垂水ノ樹海由来の迷宮という要素から旧作に登場したギルド「ムロツミ」を連想しやすい。片方が迷宮の危険性を説く事や会話時の選択が多い事もあり、会話で選択が発生する度にムロツミの如く彼らの行末を左右するのではないかと考え、緊張させられる。結果的にはどんな選択肢を選んでも、たとえ相手を一度見殺しにしようと結末は同じなのだが。 -これらの変更点を引き立てる要素として、「本作初の再現エリアとなる第2迷宮の1階は再現元の迷宮の1階を敵や依頼、イベント等も含めてほぼそのまま再現していると言っても過言ではない」事に代表されるように、各迷宮は程良く原作の雰囲気を再現している。 #endregion --中盤以降はそういった物が少なくなり、内容も序盤程ではないものの、それでも意外な要素が組み込まれている。 ---裏を返せば変化が少なく、序盤程良い意味で期待や想像を裏切られる事もあまりないという事であり、肩透かしを喰らいやすいとも言える。 #region(中盤以降の展開(ネタバレ注意)) -第7迷宮は『(新)2』に登場する第一階層、古跡ノ樹海をモチーフとするエリア。ひっかきモグラや針ネズミなどの序盤に戦闘していた雑魚敵が登場するのだが、登場時期が遅いだけあってやたらとステータスは高く、普通に強い。さらに直前の迷宮が同じく『(新)2』の第四階層、桜ノ立橋をモデルとしているため、本来なら終盤に登場していた筈の魔物よりも高いダメージを与えてくる序盤の雑魚敵になおのこと驚かされる。 --ただし、攻撃技は据え置きなので序盤の雑魚敵らしい単調な攻撃スキルが多く、慣れてくるとさして脅威を感じなくなる。 -第11迷宮は『(新)1』に登場した枯レ森の再現エリアにして、本作最後のモチーフを持つ迷宮。本来ならば中盤頃で迷宮内に出現するFOEの一体が中ボスとして登場するのだが、本作では全く異なる相手がB1Fで早速出現。気になる相手は『新2』の追加ストーリーボス、バジリスクである。ここに来るまで『I』~『IV』といったナンバリングシリーズの迷宮を巡り懐かしい思い出が蘇る一方、ストーリーモード関連の要素に乏しい『新』シリーズの記憶は埋もれてしまっているため、唐突なギンヌンガ遺跡からの刺客にハッとさせられる。 --出現前には石化を操る魔物の存在を匂わすサブイベントが見られるのだが、『新1』の枯レ森にはメデューサツリーやらピクシーやらといった石化を使う魔物がおり、前者は本作でも中ボス戦前に出てくるので普通は気付かない。 -ストーリークリア後、特定の条件を満たすとワールドマップ上に最強のFOE「ディノゲーター」が出現する。これまでの作品ではFOEとしてはそこまで強くない敵に位置付けされていたディノゲーターだが、本作では初登場の『II』ばりに凶悪な敵として立ちはだかる。甘噛みの威力は控えめとなっており、『新2』のように耐える事も辛うじて可能と言ったレベルだが、同じく『新2』にて習得したぐずるを多用するようになっており、その超火力から繰り出される連撃は難易度ピクニックでもパーティを全滅させかねない程の猛威と化す。他の敵とは別次元の強さを持つため、『II』のディノゲーターを知らないプレイヤーは唖然とし、既知の冒険者でも強敵の再来に閉口する事となる。 --一応は行動ルーチンがある程度決まっているため、トライアンドエラーを繰り返してパターン化すればぐずるをまともに喰らう事無く処理出来、一気に攻めたてることでも運良くぐずるを使わせずに勝てる可能性はある。ちなみに、ディノゲーターのステータスを見る分には『II』で編み出された全裸カウンターに近い芸当が正攻法として想定されている物だと思われる。 -シリーズ恒例の裏ボスは本作にも当然存在するが、今回はなんと2体存在する。片方は搦め手を多用するトリッキーな相手であり、もう片方は純粋な火力と耐久力で勝負する正統派。正反対の戦法で攻めてくるため、どちらか一方を楽に攻略出来るパーティでももう片方には苦労しやすいというバランスになっている。 --エキスパートで撃破した場合に称号が得られるボスは片方のみだが、もう片方も撃破しないとモンスター図鑑がコンプリート出来ず称号が得られない事とヒロイックの存在により実質的にはどちらにも高難易度撃破への称号が存在している。 #endregion ---- **賛否両論点 -シリーズ最長の大ボリューム --本作は通常の迷宮、小迷宮共に10個以上存在し、全迷宮のフロア数を合計すれば『III』のフロア数の倍以上になるという大ボリュームの長編。ストーリーをクリアするまでに100時間以上かかったという報告も見られる。それをガッツリ遊び倒した人と、長すぎて疲れた人で意見が分かれる結果となった。 ---普通にプレイしていれば、ストーリークリアするまでにプレイヤーキャラのレベルは往来の初期上限である70を軽々と超える。それに合わせてレベルキャップも最初から99まで開放されており、裏ボスを倒す事で最大130までレベルを上げられるようになる。 --序盤と中盤以降のサブイベント類への注力の差や後述の霊堂の多用等から、全体の出来が安定しているとは言い難いと感じられる場合もある。 --大ボリュームの弊害として、中盤で行われるサブクラスの解禁もタイミングがかなり遅く感じられてしまう。 ---実際、中盤の終わり頃に解禁されるため、第3階層中盤に解禁される歴代最遅の『IV』と比べても遅めではある。しかし解禁された後も迷宮が片手で数えきれない程残っているので、実戦で使える機会が少ないという事は決して無い。また、レベル的にはプレイヤーキャラがマスタースキルをある程度習得し、育成方針を本格的に決められるようになる時期であるので妥当という意見もある。 -「クロス」という作風 --過去作の冒険者と迷宮がクロスするのが本作だが、クロス要素多めで新規要素が少なめな点は既存プレイヤーでも少々意見が分かれている。 ---職業のクロスはまだしも、迷宮やモンスターも過去作を元にしたものが多く、それ自体は好評の要素でもあるが、「過去作の冒険者と共に新規ダンジョンに潜りたかった」という意見も聞かれた。どこまでクロスする事を求めていたかで意見の分かれる部分である。 -地図報告の判定の甘さ --今回の地図作成を完了したと見なされるラインはかなり甘く、マップ次第では見た目上2,3割程空きのある地図でも報告出来てしまう。 --階層ジャンプの条件になっている事を考えると、「ある程度の範囲まで探索した」という事で緩めなのは便利は便利なのだが、プレイヤー本人が明らかに未完成だと感じる地図でも受理されてしまう光景には違和感を感じる人もいる。 -『V』要素の少なさ --『V』はそれ以前の作品と異なる世界を舞台とする作品であるためか、『V』に登場した迷宮の再現エリアは一つも存在しない。迷宮自体が登場しない事に関しての説明もストーリー中にて間接的に語られるものの、同じく『V』出身の職業やモンスターは普通に登場しているため、違和感が残る。設定の齟齬が生じないように最低限の配慮がなされているのか、それとも中途半端なファンサービスに留まってしまっているのか。どう受け取るかは人によるだろう。 ---リーパーとセスタスは人間とほぼ同じ容姿を持つアースラン族の職業であるため、非常によく似た技を扱う、別世界の人間の職業と考えれば納得出来なくもない。モンスターに関しても、旧作時点でスキュレーやイワォロペネレプといった設定的に複数体存在しない筈の魔物が後作に出てきた例があるので深く考えない方が良いのだろう。 --再現エリアが存在しないため、『V』にて使用された戦闘BGMも聞ける機会が殆ど無いのかと言えばそうでもなく、『V』由来のボス敵は2体登場する他、とある迷宮では通常・FOE戦共に『V』のBGMが使用される。しかし迷宮のBGMについては、特にFOE戦の選曲があまり合っていない。 -同行NPCについて --本作に登場する、固有グラフィックを用意されたNPCの数は20人を上回る歴代最多の頭数。その半分程のNPCは迷宮内にてプレイヤーと行動を共にする機会がある。NPCが同行している間は探索・戦闘時に台詞を喋るようになり、キャラクター別に所持するスキルで探索をサポートしてくれる。同行NPCはスキルによるサポートがメイン。扱い的には『新1』の探索準備に近く、居ても損は無い。一時的にパーティに加入するゲストメンバーとして戦闘に参加するキャラクターは過去最低の一人のみ。 ---戦闘に参加する一人に関しても、パーティ編成の邪魔になる点がなくはない((ヒーローの残像やシノビの分身の邪魔になる。))が、ボス戦では同行させない事も可能としっかり配慮されている。 ---旧作と異なりNPCの同行を断れる機会は少なく、大抵は強引に協力させられる。サポートに関してもあくまで「損は無い」程度のメリットしか持たないNPCもそれなりに存在し、NPCが好きになれないと冒険への没入感を削がれる事とのトレードオフにはならないと感じられる事も多い。スキル内容も探索中の自然回復や採集関連の物が多く戦闘関連のスキルは少数。戦闘にはほぼ介入しない割にいずれのNPCもヤジだけは飛ばしてくるため、同行拒否出来ない事への不満が一層募る。 --シナリオの賑やかしになっている他、別ダンジョンでも同行はせずとも出会う事もあるため、別の冒険者グループも同時に探索している描写となっている。 ---プレイヤーの先回りをして待ち構えているNPCが全編通して非常に多く、終盤になってもプレイヤーが最前線で冒険しているという気分になれない点は批判されている。冒険者という設定のNPCならまだしも、街の衛兵がラストダンジョンで大量に出没する光景は、第六階層においてごく短期間で数百人規模の冒険者や衛兵が死んだとされる『II』と同じ世界観だとはとても思えない。 //--終盤の3迷宮で有無を言わさずに常時同行するエンリーカは他のNPCよりも遥かに長い期間共に行動する事となるのだが、道中のプレイヤーとの会話やAEへの介入といった同行NPCとしてのイベントがほぼ存在しないうえに目立ったサポートも迷宮のボスを弱体化させるためのヒントを「逃走不能のボス戦に移行する直前の会話で投げてくる」という微妙な物程度であるため、細かい部分が気になるプレイヤーからすれば他のNPC以上に同行意義が薄く感じられる。 --同行NPCが全く登場せずにクリア出来る迷宮の数は全体の半分程度。ひっきりなしに喋るNPCの存在感はかなり強いため、彼らとの同行を楽しめる人は良いが、自分が作ったパーティだけで迷宮を攻略したいというプレイヤーからは不評。 -親切すぎるNPC --モンスターの弱点や危険スキル、レアアイテムの取り方などをズバリとしゃべってしまうNPCが多すぎる。自力で発見する要素を明らかにそいでいる。 ---図鑑で取り方をほのめかしもしない初期作よりはマシとの声もある。 --迷宮内においても、常にプレイヤーたちに先回りして、その先に登場するギミックのヒントを教えるNPCがひっきりなしに登場し、前人未踏のダンジョンを探索しているという冒険への没入感・高揚感が崩れてしまう。 -選抜された職業 --流石に全職業参加は出来ず、各作品から抜粋での参加となっているが、カットされた中には他にない特徴的なスキルを持った職業もあり、DLCでもいいから追加してくれという声は多い。言い出してしまえば『II』のペットや『III』のアンドロとビーストキング、『V』の召喚職業などキリが無いうえに、『V』のアースラン族以外の職業を出してしまうと世界観的に見てもかなりややこしくなるのだが。 --参戦職業に関しても、鈍足だが火力は一品のガンナーとインペリアル、アタッカーとして活躍する分には武器の選択肢が刀一種のみとなるブシドーとショーグンといった風に役割やイメージが被っている組み合わせがあるなど疑問視される部分がある。 -あくまでやり込み要素に留まるヒロイックの位置付け --本作で追加された難易度「ヒロイック」はエキスパートより上という扱いではあるが、基本的にはエキスパートと同じである。エキスパートとの差異は「他の難易度からヒロイックに難易度変更は出来ない((難易度を下げることは可能となっている。))」「周回プレイ時に選択する事が出来ないため、事実上ニューゲーム時にしか選べない。引継ぎも当然不能」「難易度ヒロイックでプレイしている間はギルドカードにヒロイックの表示が出る」といった程度であるため、選択するメリットは一切難易度を落とさずにエキスパートをプレイしている事を手軽に証明出来る事と上記すれちがい通信要素の解放条件が緩和されるぐらいである。『新』以降は難易度に関する称号が「エキスパートで裏ボスを撃破((裏ボスさえ倒せれば道中をイージーやピクニックで済ませても獲得可能。))」しかなかったため、やり込み派のプレイヤーに対するトロフィーとして機能する他、ヒロイックで遊ばないプレイヤーにも殆どデメリットが無い。 --ただし、たとえヒロイックでクリアしたデータであってもニューゲームで引継ぎする際にヒロイックを選択出来ない点は問題視されている。 --エキスパートの差が殆ど無い事に評価点がある一方で、歯応えのある戦闘を期待していたプレイヤーからは本作の少し易しめな難易度もあってか不満に感じられる事も。同シリーズでは『[[ペルソナQ>ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス]]』のように敵の強化に加えて戦闘にも制約を設けた例があるため、そういった方向での難易度上昇を望む声もある。雑魚戦でのフォースブレイク発動禁止や脱出アイテムの大幅な使用制限、エンカウント率の上方調整、FOEからの逃走不可、地図報告判定の強化などといった仕様をヒロイック限定で導入できなかったものか。 -大味なシステム --本作の売りである旧作から再利用したシステムだが、どうにも調整不足に感じられる点も目立つ。 --職業ごとの個性が際立つフォースシステムだが、職業構成により道中での難易度の差が強く出てしまう。 ---フォースブースト・ブレイクはミスティックやファーマーのように癖の強い性能を持つ物も多く、FOEやボスとの長期戦ではどのタイミングで使用し、ゲージを回収するかの駆け引きが楽しめる。一方で雑魚敵相手には『新2』同様に全体攻撃系のブレイクを一度使うだけで大抵殲滅出来てしまうので、ゲージを温存して探索すると今一つ緊張感に欠ける。おまけにフォースブレイクは殆どの場合ターン開始直後に発動・拠点に帰還すればたちまちゲージ全回復という仕様。 --文字通り『サブ』にとどまり、メインそっちのけの大胆な運用が難しく、職業間での優劣が目立つサブクラス ---サブクラスで運用する場合にはレベル上限が半分になるという制約から今一つ機能しにくい物も多く、初期レベルでも強力なスキル程使いやすい傾向にある。 ---メインクラスと相性が良く早熟なスキルを持つ職業をサブクラスに選んで、メインの補助に使うという文字通り「サブ」としての採用が無難。旧作のような大胆な運用が困難となってしまっている。 ---- **問題点 -「霊堂」ダンジョンの多さ --定期的に登場する「霊堂」と名の付いた迷宮は地形やBGM、迷宮特有のギミックといった雰囲気を醸し出す要素の多くを共有しているにもかかわらず全4種類も存在し、さらに同じ系統のギミックを用いる迷宮も他に二つ存在する。霊堂の一つを除きいずれの迷宮もB5Fまで完備の長丁場となるのも辛い点。 ---もっとも、各迷宮の階数が削減されたⅣではシリーズファンから「本迷宮のボリュームが物足りない」という不満が少なからずあったので、一概には言えないところでもある。 ---最初の内は他の色々なダンジョンの合間合間に挟まる程度なのでそこまで気にならないのだが、終盤は霊堂に次ぐ霊堂となり、ゲーム全体のボリュームの多さで疲れてくる頃に少し雰囲気を変えただけの霊堂ばかりという展開にはウンザリさせられる。 ---シナリオ上は意味がある(「霊堂」は同じ物を複数立てた物で、旧作ダンジョンの方が本来は異物)のだが、終盤に立て続けにしたダンジョン構成は失敗だろう。 ---迷宮のギミックに関しては、新たな迷宮へ入る度に、少しずつ別のギミックも追加され、前のギミックと併用して攻略するという形を取っているので完全に使い回しと言う訳ではない。 --モデルが存在しない『X』オリジナルの迷宮はこの霊堂系ダンジョンのみであるため、シリーズのファンが途中で飽きやすい原因の一端を担ってしまっている。 --雑魚敵やFOEは様々な旧作の敵と新モンスターが入り乱れて現れるため、戦闘面に関しては他の迷宮と異なり予想の付かない展開が続くので程良い刺激となり得る。 -職業格差 --19種類もの職業が登場する以上、ある程度の差が生まれるのは仕方がない事だが、それを踏まえた上でも他と比べて頭一つ抜けている職業も存在し、特定職を意図的に優遇している印象が拭えない点が見受けられる。 --本作初出のヒーローは全体的にハイスペックなオールラウンダーであり、本作屈指の強職。 ---攻撃面だけでも、遠隔攻撃・範囲・多段・物理耐性持ち特攻・三属性完備と隙が無い。防御・補助についても、専門タンク職ですら防げない敵の最速攻撃にも対処可能な防御スキル、パーティ全体の被ダメージを軽減しつつ攻撃する攻防一体のスキルや、攻撃時にパーティ全体を回復する・他の味方への攻撃を確率でかばうなど優秀なパッシブスキルを取り揃える。さらに脅威なのはヒーロー最大の特徴である「残像」。使用した攻撃スキルを次ターン以降に使う分身を確率で発生させるスキルで、これにより攻撃(防御)の手数が単純に倍近く増える。中盤から習得できる残像強化スキルも相まって非常に強力である。更に全体攻撃のフォーススキルで、雑魚なら1人で終わらせてしまう。 ---そんな強力な職業であるため、ヒーロー1人パーティに入れるだけで道中は段違いに安定し、スキルが揃ってくる中盤頃からはややバランスブレイカー気味となる。 ---性能とは異なる問題だが、世界樹の迷宮シリーズの冒険者は幾らでも替えの利くモブ同然の立ち位置から始まり、樹海の最奥まで開拓した英雄まで成り上がるのが基本であるため、最初から「英雄」の肩書を持つ職業が登場した事には難色を示すファンもいる。 --『II』より登場しているガンナーは、打たれ弱く鈍足な反面豊富な攻撃のレパートリーと高い火力を兼ね備えており、他の職業に補助させる事で高い性能を発揮するアタッカー。 ---遠隔攻撃ゆえの安定した火力に、単体強攻撃や範囲攻撃・三属性攻撃・必中の封じ付き攻撃と場面を選ばない万能型。特に属性攻撃や封じ攻撃は万能職とは思えないほど高性能で、他の専門職が完全に割を食っている状態。 ---フォースブレイクスキルはそれひとつで裏ボス含むほぼ全ての敵単体を1ターン確定で無力化する強力無比なもので、これを用いてボスを封殺する戦法も存在する。 ---当然ながらガンナー複数人の編成にすると多数の雑魚敵と戦う道中では事故率が高くなり、奇襲を受けようものなら打たれ弱さのせいで高確率で全滅するのであくまで対ボス戦用の編成に過ぎない((一人いるだけなら至高の魔弾は緊急時の回避手段として非常に役立つが。))。また、ガンナー専用の最強装備もストーリークリア後まで購入不能という遅い時期であるため、強力な銃が手に入らない時点ではおいそれと手出し出来ない戦法でもある。 --『III』より登場しているプリン(セ)スは、元から打たれ強い優秀なバッファーであった。 ---しかし今作では『I』および『II』のバード、『IV』のダンサー、『V』のシャーマンといった歴代のバフ職が軒並み不参戦であるため、純粋なバッファーは彼らしか存在しない。そのため敵の攻撃が熾烈な高難度ではヒーローと並んでほぼ必須職と化している。 ---後述のバグもあって中盤からはバランスブレイカーになりがち。とは言ってもヒーローほど一人で何でもできるわけではないが。 --反対に諸々の問題から弱くなりやすいのが『V』出身のセスタス。 ---敵に封じやバステを付与しつつ連撃を決めるアタッカーとデバッファーの兼用職業であるが、セスタス単体ではアタッカーとしてもバステ付与役としても他の各専門職業に劣っている。レベルカンストというやり込みの域にまで成長させ、他のパーティメンバーの補助を受けることでようやく真価を発揮できるくらいに扱いが難しい。そこまでお膳立てしてもなお、その威力は他アタッカーが単独で簡単に出せる程度のものという始末であり、手間やリスク、運要素に対してリターンが全く釣り合っていない。 #region(セスタスの問題点) ---『V』では封じ役としても十分な性能で、かつ序盤から終盤まで使えるお手軽火力スキル「雷神拳」が強力すぎた反動か、今作では簡単に火力が出せないように各方面の数値に下方修正がかかっている。が、その下方修正の度が過ぎている。 ---育成が進めば、相手に封じが付いている程高い火力を出せるパッシブスキルを習得できるのだが、セスタスの封じスキルの性能が他職と比べて低く、任意のタイミングで与えられる物ではないので火力にムラが出る。 ---さらにはスキルの威力や武器攻撃力が著しく低く、封じが付いてない相手にはまともな火力を出せない。そのため、アタッカーとしての役割を期待していると安定したダメージを出せる他職と比べて弱く見えやすい。 ---最強装備を見ても、「セスタスの最強武器は各種最強武器の中でワースト2の物理攻撃力」「前衛職で物理耐性高めの軽鎧が装備可能にもかかわらず最強防具は後衛職向けで物理防御力が低めの服」と言った点から冷遇気味。最強防具が服なのは『V』でも同様だが、単純な防御力だけであれば職業制限の無い最高性能の軽鎧に勝っていた。しかし本作では最強防具を上回る物理防御力を持つ軽鎧があるため、一概にこちらを取っておけば安定するとも言えない。 ---HPの伸びは良いのだが、高HPキャラへの攻撃優先度が高くなる敵の行動ルーチンが災いして攻撃が集中しやすい。上述の通り物理防御力に不安を抱えているため、何らかの対策をとっていないとあっさりと落とされることも多い。 ---クリンチやファイナルブローといった三点同時縛りを狙えるスキルはセスタス特有の物であり、瞑想やダブルパンチといった封じの成功率を上げるスキルを備え、成功率に影響するLUCの数値も伸びが良い。サブクラスのスキルでの封じ付与を主とし、攻撃もそこそこ出来る職業として見れば活躍が期待出来る。 #endregion //職業格差は内容からして賛否両論よりも問題点として挙げられるべきなので移動しました。 -拠点NPCの問題 --本作の拠点に存在する施設を担当するNPCは癖が強く好みが分かれやすい。 ---特に批判的な意見が多いのは、暴力、下ネタ、パロディ等エキセントリックな要素を詰め込んだおちゃらけキャラにして酒場担当のクワシル。これまでのNPCとの明確な差別化は出来ているが、如何せん癖が強過ぎる。依頼を受ける度に説明がてら色々な話を聞かせてくれるのだが、ブラックユーモアを盛り込んだぶっ飛んだ内容が目につくことが多く、そういった話を許容または聞き流せる人でないと眉をひそめたくなる。このNPCが許せない人は依頼を受ける度に会話スキップをする羽目になる((依頼の達成条件自体は会話を聞かずともメニュー画面から確認できる。))。 ---依頼内容のスキップについては、裏を返せば、メニュー画面の数行の文章で確認出来る程度の簡素な依頼ばかりという本作の問題点の怪我の功名でもあるのだが。 ---頻繁に顔を合わせるNPCである以上、好き嫌いの分かれるキャラクターはそれだけでも悪い点として目についてしまう。全編通して施設に通い詰めるうえに会話量がトップクラスに多い酒場担当のNPCをこのような問題児にしてしまった事はかなり痛い。 --クワシル程ではないが、常に気怠げに振舞い職務に対して不誠実な宿屋担当のヴィヴィアンも少々苦手な人がいる。 --ギルド担当のミュラーとミッション担当のペルセフォネは立場相応の責任感を持ったまともなキャラクターなのだが、ストーリーの展開に合わせて不在となる機会がある。ペルセフォネはストーリーをクリアするまでの期間のうち半分程は不在となるため、印象が薄くなりやすい。 --『II』以降御馴染みとなっている、裏ボス撃破前後で発生するプレイヤーとの別れに対する会話台詞は用意されておらず、図鑑コンプリート時の会話があるペルセフォネ以外のNPCとの別れはかなり中途半端な物となってしまう。 -単調なアドベンチャーエピソード --迷宮内のサブイベント要素はこれまでのシリーズ作品と比べて数はかなり増えたものの、それに釣り合わないほどに質が大きく下がっている。 --『V』に登場したアドベンチャーエピソード(AE)は、クリア後の第六階層にて一切存在しないという欠点があったが、本作では小迷宮を除く全迷宮に多数のAEが配置されている。 --しかしこれまでの作品で発生していたサブイベントと比較すると、ダンジョンの特徴や背景と無関係な、取って付けたような変化のない内容ばかり。やたらと休憩したり遊び始める等プレイヤーキャラクターが気を抜き過ぎている物が多く、AEが初めて登場した『V』や、『IV』以前のシビアな迷宮を知るプレイヤーほど雑なテキストに不満を感じやすい。特に全編通して飲み水関連のAEがやたらと多く、魔物が跋扈する迷宮の地面の水溜まりを掬って飲む、前人未踏の迷宮で明らかに怪しい水筒の中身を疑わずに飲んで中る、など常識外れな内容のAEがラストダンジョンで発生する。 --AE中には選択肢が設けられているものの、イベントに関わろうとする選択肢を選ばなければ進行せずAE達成とはならないため、選択の自由はない。怪しい物を見つけても調べない事には話が進まず、『II』のように無視しようとすれば逆に危機に陥るようなイベントも無いため、選択肢を設けている意味は全くと言っていいほど無い。「君は○○しても良いし、しなくても良い」という言い回しに代表される世界樹のコンセプトと対立してしまっている。 --後半に発生するAEで関わらない選択肢を選ぶと、すべて「今は先を急ぐべきだ。君たちはこの場を立ち去ることにする。」の一文で終わる。途中から息切れし、テキストの水増しで数だけ増やそうと手抜きをしているのが窺える。 --NPCのリアクションに関しても、中盤以降はNPCが反応するAEがラストダンジョンを除きほぼ存在しないので、NPC同行中は一つたりとも見落とすまいと探す楽しみも徐々に無くなってくる。 -シリーズに馴染みあるほど違和感を覚えるメインストーリー、シナリオ構成 --全体的にNPC主体の話の割合が高く、ナンバリングとは毛色が異なり、典型的な正義の味方の振る舞いを強要される。 ---プレイヤーキャラクターもヒロイックな台詞や対応でNPCに干渉する事が多く、終盤ではNPCからもストーリー上でそんな性格を持つ人間として扱われるため、キャラクター像が勝手に大きく固定される。往来のシリーズの特徴として、基本的に台詞を発さずNPCへの干渉も控えめでプレイヤーごとの想像の余地を含むキャラクター像があったために、シリーズ過去作に馴染みのあるプレイヤーであるほど違和感を覚える。 ---シリーズ恒例の「君は○○しても良いし、しなくても良い」という言い回しのように、プレイヤー側の思考・想像による補完に委ねるスタイルだった筈の世界樹のナレーションが、限定的な状況描写を勝手にヒロイックに語りだすのはシリーズ集大成として致命的。 ---この点はボス撃破時に顕著であり、過去作ではボスを撃破した描写の一、二文で短く済ませていた所を、ボスを倒すまでの過程を的外れに細々と描写した冗長なナレーションが流れ、かえって白けてしまう。 #region(ボス撃破時のヒロイックなナレーション例) 「人の背を軽く超える体躯を持つ赤熊を相手に君たちは死闘を繰り広げる…。剣が、槍が、矢が、術式が、君たちが持つあらゆる攻撃が叩き込まれても、赤熊は動きを止めずにいた。不死身かと思われた赤熊だが、&bold(){最後に○○(PTメンバー名からランダム選出)が振るった一撃}がついにその生命体をこの世から断ち切った。」~ 「鋭い牙と大きなかぎ爪が、何度も何度も君たちに向けて振り下ろされる。一撃で敵を屠るであろうその爪牙も注意深く戦う君たちの身体には致命傷を与えることができない。逆に、君たちの持つ剣が、槍が、弓が、恐るべき飛竜に深手を与えていく。」~ パーティーメンバーの装備や攻撃は一切関係ない上に、戦闘不能になっているメンバーがボスにとどめを刺すなどの描写がされる場合もある。この他にもプレイヤーの想像で補うには苦しい内容が目立ち、あまりにも押しつけがましくくどいものが多い。 #endregion --中盤以降、ストーリー上で発生するイベントは人間(国家)同士の争いが主軸となるのだが、『III』のようにどちらに味方するかといった展開もなく、中庸を貫いたまま(所属は初期のまま)終了となる。もっとも『III』は『III』で大分問題のある展開だったので、この点はむしろ改善点ではあるか。 --中盤以降のダンジョン探索の理由も「前人未踏の迷宮でお宝を探し求める」から「先のダンジョンに行ってしまった人物を追う」という方向にシフトしており、未知の樹海を踏破するという冒険者としての目的が薄くなってしまっている。 -一部の設定ミス・バグ --残念ながら本作にも諸々のバグや不具合が存在し、中でも有名かつ仕様と勘違いしやすい不具合が不屈の号令に関する物。中確率で食いしばり効果が発動するはずが、確定で発動するようになっている。 #region(不屈の号令バグ) プリン(セ)スが覚える味方一列へのバフスキル「不屈の号令」は、掛かっているキャラクターがダメージを受けてHP0となった時に一定確率で喰いしばり、ある程度HPを回復した状態となって戦闘不能を回避する物。しかし不具合によりスキルレベルに関係無く発動確率100%となってしまっているので、同じ対象に複数回ダメージが入ったり相手が速度補正を極端に変えてくる機会が訪れない限り延々と攻撃を耐える事が出来てしまい、中々凶悪なスキルになってしまっている。これ一つで完封出来る訳では無いが、本作の最終ボスに対するダメージ対策もこのスキルだけで大体行えてしまう程。~ スキルレベルに応じて行動速度補正が極端に変化するという性質も、スキルレベルを調整すれば大体の敵の行動パターンに合わせられるという利点になってしまう。さらに間の悪いことに、本作には味方一人の速度補正を極度に強化するレンジャーの「アザーズステップ」やら不屈の号令やアザーズステップを誰でも習得出来るサブクラスシステムやらが存在するため、安定して運用する事もそう難しくはなかったりする。 #endregion --その他にも有名な不具合として、確率で複数の味方を蘇生させるスキル群が、蘇生成功率の設定不具合により罠スキルと化してしまっている。 #region(確率蘇生スキルのバグ) 問題のスキルとは、リーパーの「魂転移」、ショーグンの「切腹」、ミスティックの「破陣:再起活性」。~ 「魂転移」を例に挙げると、攻略本及び解析情報ではレベル1で50%、最高まで上げれば75%で成功するとなっており、実際その成功率だったらレベルを上げれば実用範囲になっていた。が、実際にはその成功率を2乗した数値((レベル1で50%×50%の25%、レベル10で75%×75%で56%))になってしまっており、レベル1ではまず成功しない、最高までレベルを上げてもこのスキルを使いたい複数人戦闘不能時には頼りにならない。デメリット有でこの確率のため、習得が罠になってしまっている。 #endregion --本作ではバグ修正用のパッチが殆ど配信されておらず、これらのバグも19年5月現在放置されたままである。 -依頼の単調さ --本作に用意されている依頼は素材の納品が非常に多く、特殊なギミックや謎を解くような物は少なめ。終盤に向かう程納品依頼の割合が増えてくるため、単調に感じやすい。 --早い段階でクリアした迷宮に再度足を踏み入れ、当時は調べられなかった範囲や謎の痕跡を再度調べ直すような依頼も非常に少ない。そのため、本作では一度踏破した迷宮に素材集めや地図・図鑑埋め以外の目的で足を踏み入れる機会はほぼ皆無。 --連続したストーリーが繰り広げられる依頼もあるにはあるが、不眠症のNPCを眠らせるための薬の素材集めやプレイヤーの仕事ぶりを気に入った仕立屋のオーダー通りに素材を集める等話に捻りが無く、どうにも面白いとは感じにくい。小迷宮の主や裏ボスとの戦闘に関する依頼も大抵は『I』並にあっさりしており、護衛や魔物狩りと言った名目で淡々と交戦する事になる。 ---とはいえ、多少なりともストーリ―がある分、腕試し以外にこれといった理由も無く倒される小迷宮の主よりはマシかもしれない。 -露骨なパロディ --パロディ自体は『I』からクエスト名やNPCの容姿などでそれなりに存在したのだが、本作のパロディは世界樹シリーズと関係無いにもかかわらずあまりに露骨だったり、ミスマッチな物も多い。中には迷宮内で強制発生AEとして見せつけてくるイベントまである。 --パロディを担当させられる役割のNPCは決められているのでその被害に遭うキャラクターの数は少ないが、序盤からの付き合いであるNPCがここぞという見せ場でパロネタを披露する様や、元を辿れば成人誌の下ネタ台詞を堂々と叫ぶ光景は失笑物である。 ---- **総評 過去作の冒険者、迷宮、モンスターが入り乱れたまさに「クロス」と言える世界樹。~ 歴代で圧倒的なボリュームを持っており、旧作から再利用する事でシリーズ一の幅広い職業層の生成、膨大な数の収録曲や様々な雰囲気を持つ迷宮の中で多種多様な敵との戦闘を繰り広げさせる事にも成功している。~ しかしいろいろ詰め込んだ結果の大ボリュームは疲れやすさ、単調さにも繋がっており、その疲れやすい終盤に霊堂ダンジョンが続く点等には批判も多い。~ NPC重視のストーリーや押しつけがましい作風、歪な職業バランス、作り込みの甘いサブイベント要素も少々意見の分かれる所。~ とはいえ、気になる所は多々あれど、総合的に見れば十分まとまった出来になっている。~ ---- **余談 -『III』から参戦している職業が他作よりも多い5種類、拠点BGMや特定ボスのBGMなどが『III』の物のアレンジ、本作が初出の迷宮と敵を除けば新規造形で作成されている敵や迷宮は『III』の物のみ((『III』のみ3DS媒体で登場、リメイクしていないので当たり前ではあるが。))等といった要素から、「新・世界樹の迷宮3」が製作途中で企画倒れとなり、その際に残った素材を流用しているのではないかという噂がたっている。 --また、2023年3月をもって3DSのニンテンドーe-Shopが終了することが発表され、それを受けてか2022年8月には「アトラス ニンテンドー3DSファイナルセール」が行われたため、元々望み薄であった3DS版「新3」の可能性は完全に断ち切られた形になる。 --しかし、2018年8月に公開された「SQ、胎動。」という30秒ほどのPVから実に4年半の時を経た2023年2月9日に『世界樹の迷宮 I・II・III HD REMASTER』が発表、ついに最新機種で『III』が遊べるようになった。 ---ちなみに懸念されていた手書き地図の有無だが、携帯モードでのタッチによる描画、コントローラー操作での描画、Win版はマウスによる描画がサポートされていることが確定した。 -本作の売り上げは非常に良かったらしく、発売されてから間もなく品切れとなる店舗が続出し、『セカダン』の如く品薄に関するお詫びの告知が公式HPに掲載された。それに伴い、当初は1カ月を予定していた過去作の職業イラストの無料配信期間が2か月へと延長された。 -早期購入特典として、各種イラストレーターが特別に描き下ろしたイラストを立ち絵としてダウンロードできるコードが付属していた。 --今作もファミ通の購入特典としてダウンロードできるイラストも存在する。コードの期限が切れているため、現在はDL不可能。 --Amazon限定だった「ヒーロー♀(ビキニアーマー)」のイラストは、後に有償配信された。 -本作のオリジナルダンジョンとなる「霊堂」で共通して使用されているダンジョンBGMは、''なんと初代『[[世界樹の迷宮]]』な時代に制作されていた幻の没BGMのリメイクである。'' --この曲は同作の初回購入特典として付属していたミニサントラに収録されていたもので、その後一度たりとも再録されていなかった非常にレアな曲であり、まさかの選曲に無印からの古参ファンの間で驚きの声が上がった。

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