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*RPGツクールXP 【あーるぴーじーつくーる えっくすぴー】 |ジャンル|RPG制作ツール|&amazon(B0002CCN38)&amazon(B001P9CZCQ)| |対応機種|Windows 98~XP|~| |開発元|エンターブレイン|~| |発売元|【パッケージ版】エンターブレイン&br()【Steam】Degica|~| |発売日|2004年7月22日|~| |定価|【パッケージ版】9,800円&br()【Steam】2,480円|~| |廉価版|VALUE!:2009年2月26日/5,040円(税込)&br()VALUE!+:2012年9月27日/3,990円(税込)|~| |備考|バージョンアップでVista、7、8(32/64bitOS)にも対応|~| |判定|なし|~| |ポイント|手軽に作れなくなった上級者向けツクール&br()発売当時はアクティベーション必須&br()『RGSS』の評価は高い&br()アップデートと続編『VX』にて欠点はある程度解消|~| |>|>|CENTER:''[[ツクールシリーズリンク>ツクールシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 PC版『[[RPGツクールシリーズ>ツクールシリーズ#781f7e0c]]』の一作。 これまでのツクールシリーズと異なり、スクリプトが導入され、拡張性が大きく増した。 **特徴 ''スクリプト「RGSS」の導入'' -スクリプトが導入されたことで、プログラミングの知識こそ必要となるが、自身でオリジナルシステムを作成することが可能となった。 --本作で導入されているRGSS(Ruby Game Scripting System)はRubyを元にしたスクリプト言語である。 -旧作まではシステムで用意されていないシステムを導入しようとするとイベントコマンド等を駆使して実行するしかなかったが、RGSSを書き換えるまたは追記することによってイベントコマンド等を駆使せず、或いは駆使しても実現出来なかったシステムの導入が可能である。 --一例として『[[2000>RPGツクール2000]]』ではできなかったタイトルやメニュー画面の変更、運などのパラメータの追加、HPを9999よりも大きくするといったことができる。 ''戦闘画面で味方の立ち絵(バトラー)を表示可能になった'' -戦闘画面は『[[2003>RPGツクール2003]]』のサイドビューから『2000』のフロントビュースタイルに戻った。 --一方で、戦闘画面で味方キャラの立ち絵が表示されるようになった。~ 後の作品で顔グラフィックが表示されるものがあるが、デフォルトで立ち絵が表示されるPC版ツクールは本作が唯一である。 ''ゲームデータの暗号化が可能になった'' -ゲームデータを暗号化することで、他人にゲームデータの中身を見られる心配が無くなった。 **評価点 ''スクリプトの導入で作成の幅が大きく広がった'' -RGSSが搭載されたことによって、専門的な知識は必要となるものの、オリジナルシステムなど、用意されたシステムでは実現不可能な内容についても実現出来るようになった。 --できることは文字通り無限大といってよく、従来ならばツールの仕様上諦めざるを得なかったシステムについても''理論上は''実現可能となる。 ---そこまでできる人ならわざわざRPGツクールを使わなくても良いという突っ込みをなしにするならば、アクションゲームやシューティングゲームなど畑違いのジャンルのゲームを作成することも可能。 -ただし、スクリプトそのものが上級者向けの機能であり、初心者が''簡単にオリジナルシステムを導入できるというわけではない''。 --スクリプトはオブジェクト指向言語であるRubyを元にしているため、Rubyを修得することが大前提となる。 -現在ではRGSSの素材も有志によって配布されているため、導入するだけならば知識が無くとも可能である。 --もっとも、RGSSのカスタマイズなどをしようとするとRGSS素材そのものを書き換える必要があるため、最低限の知識はあるに超したことはない。 ''グラフィック面が秀逸'' -本作の歩行グラフィックは3頭身であり、マップチップの縮尺も大きくなっており、複雑な建物も表現出来るようになっている。 --サンプル素材量もかなり充実しており、十分ゲーム作成に耐えうる。 --戦闘時に立ち絵が表示されるようになったため、キャラ毎に歩行グラフィックや立ち絵がちゃんと用意されているため、シンボルエンカウントのゲームなども素材のみで十分作れる。 ---町民や動物は立ち絵がないが、そもそも戦闘向きのキャラではないので妥当だろう。 -素材の式数制限も大幅に緩和されている。 -これらのグラフィック面については次作である『[[VX>RPGツクールVX]]』に引けを取らないといっていい。 --『VX』以降は歩行グラフィックが2頭身グラフィックとなったため、本作のグラフィックの方が好みという人も少なくない。 -インターフェース面が改善された。 --イベント作成画面においてイベントの種類で色分けされるようになっておりより見易く、使い易くなっている。 -戦闘画面で立ち絵がデフォルト表示されるというのも本作ならではの要素であり、『VX』以降では標準機能ではなくなっている。 --立ち絵に相当する素材も本作ならではの特徴といえる。 ''利用可能なボタンが増えた'' -『2003』までは方向キー+3ボタンしか利用できなかったが、方向キー+8ボタンまで利用できるようになり、アクション要素が高いゲームについても作成可能となった。 --キーコンフィグもデフォルトで搭載されている。 -マップのレイヤー数が上層、下層の2つから下層1つ、上層2つの計3つに増加。 ''BGMのクオリティも評判が高い'' -その質の高さは「(良い意味で)サンプルのクオリティではない」という声も上がるほど。ちなみに、いずれのBGMもオーケストラ風の曲調で統一されている。 -エディターの多重起動が出来るようになり、プロジェクト間のイベントやデータベースのコピーペーストが行いやすくなった。 -ゲームデータの暗号化で、ソースの盗用も防げるようになった。 **賛否両論点 ''解像度が640×480ピクセルになった'' -繊細な表現が可能になったのはもちろん好ましいのだが、『2000』『2003』(『2000』系列)向けの素材をそのまま流用することが難しい。 --『2000』が人気を博し、『2000』向けの素材が多数作られている環境下において、多数作られた素材が利用できないのは痛手である。 -『[[RPGツクール95]]』も同様の640*480ピクセルであったが、当時は『2000』からPC向けツクールに触れたユーザーが多く、素材サイトも2000系列向けが圧倒的多数であった。 ''MIDIファイルがPC搭載のものではなく、本作独自の音源で演奏される'' -独自音源自体は質も高く、環境によってはチープな音になりがちだったMIDI音源が安定した音で再生されるようになったというメリットがある。 -反面、RTP以外のMIDIデータを扱う際に意図しない音で鳴ってしまうという問題点が。リバーブが強めにかかる点も好みが分かれる。 **問題点 ''『2000』まででできたことがデフォルトでできなくなった -イベントコマンドについて『2000』や『2003』でできたことが『XP』で何故かできなくなってしまったものがある。 --できなくなった機能の中には「顔グラフィックの表示」など重要な機能も存在する。 -削除されたイベントコマンドで可能な処理はスクリプトを書けば実現できる……のだが、そもそも『2000』だとそのままできたことなのにわざわざ上級者向けのスクリプト機能を利用しなければ実現できないようにする必要性は感じられない。 --多くの機能はもちろんそのままイベントコマンドで実行できるため、簡単なRPGであればスクリプトに頼る必要は無い。しかしながら、旧作で普通にできていた事ができなくなった点は擁護しがたい。 --そもそも、本シリーズは専門的なプログラム知識が不要でゲームが作れることがコンセプトとなっており、困ったことがあればスクリプトを書けば良いというプログラマー向けにリリースされている製品ではない。~ 本作で上級者向けのスクリプト機能を追加した意義は大きいが、初心者を置いてけぼりにするのは本末転倒といわれても仕方ない。 -この点は評価点記載の通り、有志作成のRGSS素材を利用することで多少マシになっているが、多少の知識がないといざというとき対処できないことに変わりはない。 ''要求されるスペックが高い'' -発売当時は必要スペックが高かった。また、処理落ちもよく発生する。 --フレームレートも『2000』が60FPSだったのに対して、通常モードで20、滑らかモードでも40とかなり低くなっており、目に見えて動作がぎこちない。折角使用可能なボタン数が増えたにもかかわらずこれでは快適なアクションゲームを作るのは難しい。 ---RGSSでフレームレートを変更できるが当時の環境では通常モードでも重かったため、変更したところで60FPSで動かせるマシンは限られていた。また、RGSSで変更してしまうと戦闘アニメなどがエディタ上での再生と実際のゲーム上での動作速度にズレが生じてしまう。 --エディター画面で放置しているとフリーズを起こしてしまうことも。 ''わかりにくいダメージ計算式'' -本作は物理攻撃のダメージ計算の際に従来の「攻撃力」と「防御力」だけでなく、新登場の「腕力」というパラメータが用いられるが、これがダメージ計算をかなり分かりづらいものにしている。 --具体的にいうと、本作では攻撃力と防御力によって基本的なダメージを算出(攻撃力-防御力/2で計算)し、そのダメージに''腕力を基準とした倍率で乗算''し、最終的なダメージが決定される。 ---腕力が1増えるとダメージは5%ずつ増えていく仕組み。攻撃力と腕力を加算して攻撃時のダメージを決定するといった単純なものになっていない。 --魔法使いなど非力なキャラで腕力が低く、更に攻撃力も低いといった設定にすると二重にダメージが減少する仕様であるため、物理攻撃のダメージ計算を良い塩梅に整えるのは結構難しい。 ---例えば攻撃力50、腕力40のキャラが防御力50の相手を攻撃すればダメージは75となる。これが攻撃力30、腕力20のキャラだと10と急激に減少する。 --防御力が高い相手の場合、基本ダメージが減少するため、腕力が高くてもダメージの増加が少なくなってしまう。~ 逆に防御力が低いと腕力が少し変わるだけで急激にダメージが増えてしまうため、旧作以上にパラメータを緻密に計算しないと「少し防具が弱いだけで即死クラスのダメージを食らう」「この武器を装備しているかどうかで戦闘難易度が急激に変わる」といった事態が起きがち。 --本作の仕様だとキャラクターのパラメータとして攻撃力は設定できないため、格闘家など「素手だけど攻撃力が高い」といったキャラは作れない。 ---むしろ、上記の仕様のとおり、攻撃力がないと腕力がいくら高くともダメージが与えられないため素手のキャラクターが物理攻撃を行うこと事態が不可能となってしまっている。 --このように使い勝手が難しい腕力だが、後の作品にあるようなダメージ計算式を編集する機能はデフォルトで用意されておらず、腕力を利用しない設定も存在しないため、基本的に利用しないという選択肢はない。 ---もちろん、「スクリプトをいじってダメージ計算式を書き換える」「そもそも腕力を固定値として攻撃力のみで調整する」といったやり方はあるが、結局不親切というのは否めない。 -このような腕力と攻撃力が別個に設定されているツクールは本作のみであり、『2003』までや『VX』以降に同様のシステムが採用されているケースはない。 ***ユーザー認証問題 -本作で違法ソフト対策としてネット接続によるアクティベーション(認証)をする必要がある。 --初回のみではなく、定期的にアクティベーションが行われるため、その際にはインターネットに接続する必要がある。 --時代的にはネットもある程度普及していた段階であり、ネットを使って作品を公開等しているプレイヤーも増えてきた頃であるものの、現代ほどにネットが利用されていた時代ではないため、完全オフラインで自分や内輪のみで本作を楽しむプレイヤーにとっては不満の声も聞かれた。 --PCのパーツ構成が変わると別のPCであるとみなされアクティベーションに失敗するケースも発生した。 ---定期的にアクティベーションされるため、途中でPCのパーツ構成が変わるとそれ以降の認証で弾かれることも。 ---ユーザー登録さえ行っていれば再発行可能だが、郵送で再発行されるスタイルなのでやりとりに数日かかる。 -アクティベーションはネットで行うが、ユーザー登録は同梱のハガキを送るというアナログスタイルである。 --ネットでのユーザー登録はできないため、サービスを受けるためには必須である。~ なお、次作『VX』以降はユーザー登録がネットで行えるようになった。 -現在は『XP』をはじめとしたツクールがサポート終了となっており、ユーザー登録は不要になった。 --アクティベーションについても初回の認証のみでよくなっているが、購入時に同封されているプロダクトコードが必須である点は変更されていない。サポート終了に伴い再発行もできないため注意が必要。 **総評 正当進化を遂げたPC版ツクール。RGSSの導入でこれまでには無いシステムを生み出すことが可能となり、PC版RPGツクールの汎用性を高め、以後の作品においてもRGSS(『[[VX Ace>RPGツクールVX Ace]]』まで)やJavaScript(『[[MV>RPGツクールMV]]』以降)を上級者向けの機能としてツクールに搭載する契機となった作品である。~ もっとも、スクリプトをはじめとしたXPでの操作に慣れずに2000に戻ったユーザーも生み出してしまったというのは残念なところである。 本作においてはスクリプトを導入した結果、スクリプトを使えば出来るという理由からか旧作で標準搭載された機能が削除された箇所が少なからずある。この点についてはこれまでのRPGツクールが持ち合わせていた「プログラムができなくても簡単にRPGが作れる」というコンセプトに反してしまっていると評さざるを得ない。~ そのためか、以後のツクールにおいては、上級者向けの機能としてスクリプトやプラグインを搭載しつつも初心者にも使いやすい機能の追加に重きが置かれるようになっていった。 **余談 -現状での販売価格は『2000』と同価格 --作りやすさとライトっぽさの『2000』とRGSSによる作成の幅広さとデフォルメが薄い本格派の『XP』といった様に住み分けが出来るようになった。 -Steamで配信されているものの日本語には非対応。 -2020年8月20日『[[RPGツクールMZ]]』が発売された際に、本作の技術的サポートが2021年1月24日をもって終了されることが発表され、予告通りサポート終了された。 --同時に[[VX>RPGツクールVX]]、VX Aceもサポート終了が発表されたため、RGSSを導入したツクールは全てサポートが終了されたことになる。 -2024年2月15日のツクールの日に合わせて2024年2月13日~2月20日までの間Steam版の本作(RPG Maker XP)が無料で入手可能となった(期間内に入手した場合、期間後も利用可能)。 --なお、Steam版の本作は上述の通り日本語非対応なので注意。
*RPGツクールXP 【あーるぴーじーつくーる えっくすぴー】 |ジャンル|RPG制作ツール|&amazon(B0002CCN38)&amazon(B001P9CZCQ)| |対応機種|Windows 98~XP|~| |開発元|エンターブレイン|~| |発売元|【パッケージ版】エンターブレイン&br()【Steam】Degica|~| |発売日|2004年7月22日|~| |定価|【パッケージ版】9,800円&br()【Steam】2,480円|~| |廉価版|VALUE!:2009年2月26日/5,040円(税込)&br()VALUE!+:2012年9月27日/3,990円(税込)|~| |備考|バージョンアップでVista、7、8(32/64bitOS)にも対応|~| |判定|なし|~| |ポイント|手軽に作れなくなった上級者向けツクール&br()発売当時はアクティベーション必須&br()『RGSS』の評価は高い&br()アップデートと続編『VX』にて欠点はある程度解消|~| |>|>|CENTER:''[[ツクールシリーズリンク>ツクールシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 PC版『[[RPGツクールシリーズ>ツクールシリーズ#781f7e0c]]』の一作。 これまでのツクールシリーズと異なり、スクリプトが導入され、拡張性が大きく増した。 **特徴 ''スクリプト「RGSS」の導入'' -スクリプトが導入されたことで、プログラミングの知識こそ必要となるが、自身でオリジナルシステムを作成することが可能となった。 --本作で導入されているRGSS(Ruby Game Scripting System)はRubyを元にしたスクリプト言語である。 -旧作まではシステムで用意されていないシステムを導入しようとするとイベントコマンド等を駆使して実行するしかなかったが、RGSSを書き換えるまたは追記することによってイベントコマンド等を駆使せず、或いは駆使しても実現出来なかったシステムの導入が可能である。 --一例として『[[2000>RPGツクール2000]]』ではできなかったタイトルやメニュー画面の変更、運などのパラメータの追加、HPを9999よりも大きくするといったことができる。 ''戦闘画面で味方の立ち絵(バトラー)を表示可能になった'' -戦闘画面は『[[2003>RPGツクール2003]]』のサイドビューから『2000』のフロントビュースタイルに戻った。 --一方で、戦闘画面で味方キャラの立ち絵が表示されるようになった。~ 後の作品で顔グラフィックが表示されるものがあるが、デフォルトで立ち絵が表示されるPC版ツクールは本作が唯一である。 ''ゲームデータの暗号化が可能になった'' -ゲームデータを暗号化することで、他人にゲームデータの中身を見られる心配が無くなった。 **評価点 ''スクリプトの導入で作成の幅が大きく広がった'' -RGSSが搭載されたことによって、専門的な知識は必要となるものの、オリジナルシステムなど、用意されたシステムでは実現不可能な内容についても実現出来るようになった。 --できることは文字通り無限大といってよく、従来ならばツールの仕様上諦めざるを得なかったシステムについても''理論上は''実現可能となる。 ---そこまでできる人ならわざわざRPGツクールを使わなくても良いという突っ込みをなしにするならば、アクションゲームやシューティングゲームなど畑違いのジャンルのゲームを作成することも可能。 -ただし、スクリプトそのものが上級者向けの機能であり、初心者が''簡単にオリジナルシステムを導入できるというわけではない''。 --スクリプトはオブジェクト指向言語であるRubyを元にしているため、Rubyを修得することが大前提となる。 -現在ではRGSSの素材も有志によって配布されているため、導入するだけならば知識が無くとも可能である。 --もっとも、RGSSのカスタマイズなどをしようとするとRGSS素材そのものを書き換える必要があるため、最低限の知識はあるに超したことはない。 ''グラフィック面が秀逸'' -本作の歩行グラフィックは3頭身であり、マップチップの縮尺も大きくなっており、複雑な建物も表現出来るようになっている。 --サンプル素材量もかなり充実しており、十分ゲーム作成に耐えうる。 --戦闘時に立ち絵が表示されるようになったため、キャラ毎に歩行グラフィックや立ち絵がちゃんと用意されているため、シンボルエンカウントのゲームなども素材のみで十分作れる。 ---町民や動物は立ち絵がないが、そもそも戦闘向きのキャラではないので妥当だろう。 -素材の式数制限も大幅に緩和されている。 -これらのグラフィック面については次作である『[[VX>RPGツクールVX]]』に引けを取らないといっていい。 --『VX』以降は歩行グラフィックが2頭身グラフィックとなったため、本作のグラフィックの方が好みという人も少なくない。 -インターフェース面が改善された。 --イベント作成画面においてイベントの種類で色分けされるようになっておりより見易く、使い易くなっている。 -戦闘画面で立ち絵がデフォルト表示されるというのも本作ならではの要素であり、『VX』以降では標準機能ではなくなっている。 --立ち絵に相当する素材も本作ならではの特徴といえる。 ''利用可能なボタンが増えた'' -『2003』までは方向キー+3ボタンしか利用できなかったが、方向キー+8ボタンまで利用できるようになり、アクション要素が高いゲームについても作成可能となった。 --キーコンフィグもデフォルトで搭載されている。 -マップのレイヤー数が上層、下層の2つから下層1つ、上層2つの計3つに増加。 ''BGMのクオリティも評判が高い'' -その質の高さは「(良い意味で)サンプルのクオリティではない」という声も上がるほど。ちなみに、いずれのBGMもオーケストラ風の曲調で統一されている。 -エディターの多重起動が出来るようになり、プロジェクト間のイベントやデータベースのコピーペーストが行いやすくなった。 -ゲームデータの暗号化で、ソースの盗用も防げるようになった。 **賛否両論点 ''解像度が640×480ピクセルになった'' -繊細な表現が可能になったのはもちろん好ましいのだが、『2000』『2003』(『2000』系列)向けの素材をそのまま流用することが難しい。 --『2000』が人気を博し、『2000』向けの素材が多数作られている環境下において、多数作られた素材が利用できないのは痛手である。 -『[[RPGツクール95]]』も同様の640*480ピクセルであったが、当時は『2000』からPC向けツクールに触れたユーザーが多く、素材サイトも2000系列向けが圧倒的多数であった。 ''MIDIファイルがPC搭載のものではなく、本作独自の音源で演奏される'' -独自音源自体は質も高く、環境によってはチープな音になりがちだったMIDI音源が安定した音で再生されるようになったというメリットがある。 -反面、RTP以外のMIDIデータを扱う際に意図しない音で鳴ってしまうという問題点が。リバーブが強めにかかる点も好みが分かれる。 **問題点 ''『2000』まででできたことがデフォルトでできなくなった'' -イベントコマンドについて『2000』や『2003』でできたことが『XP』で何故かできなくなってしまったものがある。 --できなくなった機能の中には「顔グラフィックの表示」など重要な機能も存在する。 -削除されたイベントコマンドで可能な処理はスクリプトを書けば実現できる……のだが、そもそも『2000』だとそのままできたことなのにわざわざ上級者向けのスクリプト機能を利用しなければ実現できないようにする必要性は感じられない。 --多くの機能はもちろんそのままイベントコマンドで実行できるため、簡単なRPGであればスクリプトに頼る必要は無い。しかしながら、旧作で普通にできていた事ができなくなった点は擁護しがたい。 --そもそも、本シリーズは専門的なプログラム知識が不要でゲームが作れることがコンセプトとなっており、困ったことがあればスクリプトを書けば良いというプログラマー向けにリリースされている製品ではない。~ 本作で上級者向けのスクリプト機能を追加した意義は大きいが、初心者を置いてけぼりにするのは本末転倒といわれても仕方ない。 -この点は評価点記載の通り、有志作成のRGSS素材を利用することで多少マシになっているが、多少の知識がないといざというとき対処できないことに変わりはない。 ''要求されるスペックが高い'' -発売当時は必要スペックが高かった。また、処理落ちもよく発生する。 --フレームレートも『2000』が60FPSだったのに対して、通常モードで20、滑らかモードでも40とかなり低くなっており、目に見えて動作がぎこちない。折角使用可能なボタン数が増えたにもかかわらずこれでは快適なアクションゲームを作るのは難しい。 ---RGSSでフレームレートを変更できるが当時の環境では通常モードでも重かったため、変更したところで60FPSで動かせるマシンは限られていた。また、RGSSで変更してしまうと戦闘アニメなどがエディタ上での再生と実際のゲーム上での動作速度にズレが生じてしまう。 --エディター画面で放置しているとフリーズを起こしてしまうことも。 ''わかりにくいダメージ計算式'' -本作では、新たなパラメータとして「腕力」が追加され、ダメージ計算の際には腕力も用いられるのだが、結果的にダメージ計算を分かりづらいものにしている。 --旧作ではダメージ計算の際には「攻撃力-防御力」を基準とするいわゆるアルテリオス計算式が基本((実際には攻撃力の2倍や4倍を基準とするケースもあるが、いずれにせよ攻撃力と防御力の差によってダメージが決定する方式であることにかわりはない))となっていたのだが、本作ではこのアルテリオス計算式によるダメージ算出(攻撃力-防御力÷2)をした後に、そのダメージに''腕力を基準とした倍率を乗算''することで最終的なダメージが決定されることになる。 ---計算式の形で表すなら「(攻撃力-防御力÷2)×(腕力+20)÷20」であるが、要約すれば、腕力が1増える毎に最終ダメージが5%ずつ増えていくといったもの。 ---つまり、腕力と攻撃力はどちらもダメージに影響する要素であることは間違いないのだが、腕力+攻撃力といったシンプルな計算になっていないため、ゲームバランスを調整する際にはこの両方を踏まえたパラメータ調整が必要となってくる。 --魔法使いなど、腕力が低いキャラで、なおかつ武器の攻撃力も低いという設定にしてしまうと二重でダメージが減少してしまう。一方で、腕力が高いキャラに攻撃力が高い武器を宛がうと二重でダメージが増えてしまうため、キャラクターによって与えられるダメージが大きく変わってきやすい。 ---敵からのダメージを考える際にも防御力が低いキャラは腕力の影響をより大きく受けるため、防御力が高いキャラの受けるダメージはかなり少ないのに、防御力が低いキャラの受けるダメージは多すぎるといったバランスになりやすい。 ---腕力による影響が大きくなりがちなので、攻撃力と防御力の変動に掛かるバランス調整は従来より緻密に行う必要がある。「装備を新調するだけで受けるダメージ(与えるダメージ)が大きく変わる」、極端なところでは「装備を更新せずに挑むと即死クラスのダメージを食らうが、更新すると一気に楽になる」といったケースすらありえる。 --また、腕力はあくまで攻撃力と防御力によって算出されるダメージに補正を与える計算式である都合上、攻撃力が低いとダメージが大幅に減衰し、相手の防御力が攻撃力の2倍以上である場合、腕力がいくら高かろうとダメージは問答無用で0になってしまう。 ---味方キャラクターは腕力の設定こそできるが攻撃力の設定はできないため、装備品がない場合、攻撃力は0となってしまう。つまり、いくら相手が貧弱な相手だろうと素手では1ダメージも与えられず、武器装備なしで物理攻撃を行うこと自体が無意味となっている。 ---格闘家など、素手で戦う腕力が高いキャラクターというのは本作の仕様では基本的に実現不可。素手という名前の武器を作り攻撃力を設定すれば作れるが、攻撃力の値を上手く設定しなければならないのは変わりない。 --このように使い勝手が難しい腕力だが、後の作品にあるようなダメージ計算式を編集する機能はデフォルトで用意されておらず、腕力を利用しない設定も存在しないため、基本的に利用しないという選択肢はない。 ---もちろん、「スクリプトをいじってダメージ計算式を書き換える」「そもそも腕力を固定値として攻撃力のみで調整する」といったやり方はあるが、不親切であることは否定しようがない。 ---ただ、攻撃力-防御力のみを基本とするアルテリオス計算式はシンプルすぎるという意見もあり、''上手く使いこなせれば''奥深いダメージ計算式を作ることができないわけではない。もっとも、この計算式が後にも先にも本作以外で用いられていないところを見るとやはり評判は良くなかったとみるべきだろう。 ***ユーザー認証問題 -本作で違法ソフト対策としてネット接続によるアクティベーション(認証)をする必要がある。 --初回のみではなく、定期的にアクティベーションが行われるため、その際にはインターネットに接続する必要がある。 --時代的にはネットもある程度普及していた段階であり、ネットを使って作品を公開等しているプレイヤーも増えてきた頃であるものの、現代ほどにネットが利用されていた時代ではないため、完全オフラインで自分や内輪のみで本作を楽しむプレイヤーにとっては不満の声も聞かれた。 --PCのパーツ構成が変わると別のPCであるとみなされアクティベーションに失敗するケースも発生した。 ---定期的にアクティベーションされるため、途中でPCのパーツ構成が変わるとそれ以降の認証で弾かれることも。 ---ユーザー登録さえ行っていれば再発行可能だが、郵送で再発行されるスタイルなのでやりとりに数日かかる。 -アクティベーションはネットで行うが、ユーザー登録は同梱のハガキを送るというアナログスタイルである。 --ネットでのユーザー登録はできないため、サービスを受けるためには必須である。~ なお、次作『VX』以降はユーザー登録がネットで行えるようになった。 -現在は『XP』をはじめとしたツクールがサポート終了となっており、ユーザー登録は不要になった。 --アクティベーションについても初回の認証のみでよくなっているが、購入時に同封されているプロダクトコードが必須である点は変更されていない。サポート終了に伴い再発行もできないため注意が必要。 **総評 正当進化を遂げたPC版ツクール。RGSSの導入でこれまでには無いシステムを生み出すことが可能となり、PC版RPGツクールの汎用性を高め、以後の作品においてもRGSS(『[[VX Ace>RPGツクールVX Ace]]』まで)やJavaScript(『[[MV>RPGツクールMV]]』以降)を上級者向けの機能としてツクールに搭載する契機となった作品である。~ もっとも、スクリプトをはじめとしたXPでの操作に慣れずに2000に戻ったユーザーも生み出してしまったというのは残念なところである。 本作においてはスクリプトを導入した結果、スクリプトを使えば出来るという理由からか旧作で標準搭載された機能が削除された箇所が少なからずある。この点についてはこれまでのRPGツクールが持ち合わせていた「プログラムができなくても簡単にRPGが作れる」というコンセプトに反してしまっていると評さざるを得ない。~ そのためか、以後のツクールにおいては、上級者向けの機能としてスクリプトやプラグインを搭載しつつも初心者にも使いやすい機能の追加に重きが置かれるようになっていった。 **余談 -現状での販売価格は『2000』と同価格 --作りやすさとライトっぽさの『2000』とRGSSによる作成の幅広さとデフォルメが薄い本格派の『XP』といった様に住み分けが出来るようになった。 -Steamで配信されているものの日本語には非対応。 -2020年8月20日『[[RPGツクールMZ]]』が発売された際に、本作の技術的サポートが2021年1月24日をもって終了されることが発表され、予告通りサポート終了された。 --同時に[[VX>RPGツクールVX]]、VX Aceもサポート終了が発表されたため、RGSSを導入したツクールは全てサポートが終了されたことになる。 -2024年2月15日のツクールの日に合わせて2024年2月13日~2月20日までの間Steam版の本作(RPG Maker XP)が無料で入手可能となった(期間内に入手した場合、期間後も利用可能)。 --なお、Steam版の本作は上述の通り日本語非対応なので注意。

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