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注意:当記事ではPS2『侍』と、バージョンアップ版であるPS2『侍~完全版~』と、マイナーチェンジ移植版であるPSP『侍道ポータブル』について記載しております。いずれも判定は「なし」です。 ---- #contents ---- *侍 【さむらい】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B00005UOHV,image)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売元|スパイク|~| |開発元|アクワイア|~| |発売日|2002年2月7日|~| |定価|6,800円(税抜)|~| |判定|なし|~| |ポイント|侍の世が終わりを告げた明治時代が舞台のチャンバラ活劇&br;マルチエンド方式かつ主人公の立場が変わる豊富な選択肢&br;剣の腕だけでなく、それ以外でも''侍らしさ''が問われる作品&br;程よいおバカ要素の数々&br;バグの多さが悔やまれる|~| |>|>|CENTER:''侍道シリーズ''&br;''侍(完全版)(ポータブル)'' / 侍道2(決闘版)(ポータブル)&br()サムライウエスタン 活劇侍道 / 侍道3(Plus) / [[侍道4]](Plus)&br()侍道外伝 KATANAKAMI| ---- **概要 『天誅』などのアクションADVを手がけるアクワイアが開発((フロム・ソフトウェアが権利を取得してからの『天誅』シリーズの一部は別の会社(K2もしくはフロム内製)。))し、スパイク(現:スパイク・チュンソフト)からPS2向けに発売された作品。~ 時は明治10年、プレイヤーは戊辰戦争後の時代を生きるさすらいの侍。彼と同じく時代に取り残された侍たちが寄り付く「六骨峠(ろっこつとうげ)」で、操業停止して久しい西洋式の高炉「アラヤシキ」を巡り、「黒生 鉄心(くろふ てっしん)」を主とする武家「黒生家(くろふけ)」と、鉄心の勘当息子である「吉兆(きっちょう)」が率いる反政府組織「赤玉党(あかだまとう)」に加え、その二勢力に虐げられる宿場の住民、そして政府軍のそれぞれの陰謀が渦巻く2日間を生き抜いていく。 **基本システム -主人公はこれといった設定はなく、ゲーム開始時に名前や数種類の顔つきと服装を組み合わせて自由に設定可能。 -基本操作は一般的な3Dアクション方式で、峠を駆け回って様々なイベントをこなし、二日間を過ごしていく。 -六骨峠は8つのエリアで構成されている。時間帯は日中→夕方→夜の2セットで構成されており、特定の重要イベントをこなすことで時間が経過する。逆に言えば、何もイベントを起こさなければいつまでも同じ時間帯で行動することもできる。 -本作の肝は会話時やイベント時の主人公の反応の多さ、そしてそれぞれに応じたストーリー分岐の豊富さにある。時間帯ごとに特定の人物に近づくと会話やイベントが発生し、主人公に発言の選択肢が現れるが、それぞれの発言や主人公の態度(無言でいる、抜刀もしくは会話相手に攻撃する、その場を立ち去る((イベントによっては発言か無言しか選べない場合や、それぞれの態度を取っても相手が反応しない場合もある。)))により相手のリアクションや自分の立場が大きく変化する。 --選択肢一つひとつにより、相手の所属組織に加勢するか敵対するかが左右される。途中で裏切ったり、あるいは再度仲間になったりすることも可能。 -ストーリーはマルチエンディング方式。最終的には黒生家・赤玉党・宿場のいずれかに協力し、六骨峠に襲い来る政府軍、そして軍の指揮官である「玉川 上水(たまがわ じょうすい)」と戦うことになる。 --エンディング分岐は6つあり、それぞれの所属組織に応じたものが3つと、そこからの派生エンディングが3つ用意されている。 ---中には政府軍に寝返るエンディングもあるが、実際に政府軍の一員として戦闘を行うことはなく、分岐が確定した時点でエピローグとなる。 ***戦闘 -本作では刀を鞘にしまっている「納刀」と刀を抜き攻撃体勢を整える「抜刀」という2つの状態がある。納刀中は「蹴り((ニュートラルの下段蹴り、キー入力と合わせた前蹴り、ジャンプ中の飛び蹴りの3種類がある。))」もしくは後述の道具でしか攻撃できず、戦闘では抜刀状態がメインとなる。 --なお、戦闘時以外の状況での抜刀は周囲に敵意や恐怖心を与える行為に他ならず、普段は納刀状態でいることが推奨される。 -戦闘は3D格闘ゲームに近い方式が取られている。威力は低いが隙が小さい「小技」、威力は高いが隙の大きい「大技」、刀を眼前に構えての「防御」、防御不能の「蹴り」((技によっては蹴り以外の打撃技や飛び道具も含まれる。))が基本要素となる。 --小技・大技・蹴り・ジャンプを特定の順や組み合わせで入力する、もしくは方向キー入力と組み合わせると刀それぞれの固有技や連続技として繰り出すことができる。 --自分・相手ともに攻撃を防御された際には無入力・前入力・後入力により「崩し」の攻防が発生する。前入力の「押し」は無入力の相手をのけぞらせて防御をこじ開け、後入力の「捌き」は押してくる相手を受け流してよろけさせ、無入力は相手の捌きを空振らせ隙を作る、といった三竦みが存在する。 --格闘ゲームのブロッキングのような「あわせ」というシステムも存在。相手の攻撃が当たる瞬間にタイミングよく''防御を解く''ことで発動するというリスキーなアクションだが、成功すれば防御時とは違い硬直やノックバックなしに次の行動に移ることができる。攻撃後の隙の大きい技にあわせを行えば、相手の攻撃動作が終わる前に反撃に転じられる。 ---あわせは攻撃モーション中やのけぞり・ダウンなどの地上やられモーション中でない限り、防御モーションが実際にとれるかどうかにかかわらず「防御ボタンを押す→タイミングよく離す」という入力で使用可能。浮かせ技やダメージの大きい技を食らって吹き飛ばされている最中でも、あわせが成功すれば一瞬で体勢を整えられる。 ---一部の技はあわせが成功した際に低確率で「見切り」が発生し、以降はその攻撃に対してコマンド入力なしで自動的にあわせが発動するようになる。 -複数人を相手にする場合は、標的としている相手以外は攻撃してこず、1対1の体裁が守られている(こちらが納刀している場合や自由移動中を除く)。逆にこちらから複数人を同時に攻撃したり、自由移動で標的を変更することが可能。 -戦闘が発生する状況はイベントが主であるが、通行人として通りかかるザコ(黒生家家臣および赤玉党党員)に辻斬りで襲い掛かる、あるいは挑発的な発言を行い喧嘩を売ることでも発生する。 --ザコを相手にした場合は果たし合うも途中で逃げるも自由に行えるが、主要人物を相手にした場合は決着のつけ方(殺害・負傷撤退・降参)があらかじめイベントごとに決まっている。こちらの降参や逃亡も同様であり、中には決着が付くまで別エリアへ逃げられなくなる戦闘イベントもある。 --相手が主要人物であればこの戦闘時にもセリフの選択肢が現れる。「待て」を選べば相手は思わず静止し、相手の容姿や腕前などをバカにした挑発セリフを選べば必殺の固有技を繰り出してくる(あわせや見切りを狙える)。ただし、何度も発言すると相手がひっかからなくなる。 --逆に主要人物が味方に付いている場合は、回復アイテムを要求したり、必殺技で援護を頼むことができる。ただし、回復アイテム要求についてはそれまでのイベントでその味方に好印象を残す振る舞いをしていることが条件となる。((主人公に好印象がない場合や何度もねだった場合は激励の言葉が返ってくるのみ。)) ***刀について -初期装備は「中庸刀(ちゅうようとう)」という刀で、他の刀は倒した敵から拾うことにより入手可能。 --刀は装備しているものも含め3本まで持ち歩くことができる。ゲームをクリアすることで「刀蔵(かたなぐら)」に所持していた刀が納められ、次回プレイ時に初期装備として持ち出すことが可能。 --主人公が死亡しゲームオーバーになると、''そのとき持っていた刀は全て失ってしまう。'' -刀それぞれには硬度・体力・攻撃力・防御力が設定されている。 --「硬度」とは、いわば刀の耐久値で、画面下に体力とともに白いゲージが表示されている。戦闘で攻撃が相手に当たると硬度ゲージ上で赤い「疲労度ゲージ」が貯まっていき、疲労度ゲージの長さが硬度ゲージを超えると、硬度が減少してしまう。疲労度ゲージは攻撃しなければ自動的に下降するが、大技を防御される、複数人を同時に大技で攻撃するなどすると上昇しやすい。硬度が0になってしまうと刀身が砕け散り、攻撃のダメージがほぼゼロになり防御もできなくなるなど重大なペナルティを背負わされることになる。 --体力・攻撃力・防御力はアイテムで上昇する他、「一本松」にいる鍛冶屋「堂島 軍二(どうじま ぐんじ)」に依頼することで、硬度も含めたステータスを変更することが可能。また、堂島には所持している刀を一本だけ刀蔵に運んでもらうこともできる。 -固有技・連続技は刀それぞれによって固定されている。戦闘を繰り返して刀の経験値を貯める、特定の技でとどめを刺す等特定の条件を満たせば新しい技を習得できる。刀によっては二者択一の習得技(一方を習得するともう一方が習得できない)も存在する。 -構えは中段・下段・上段・脇構え・片手・忍者構えの6種類が存在する。それぞれの構えにより攻撃スタイル(素早い動きで翻弄する、威力が高いなど)や技の傾向が概ね定まっている。 ***アイテム -アイテムは回復アイテム(食べ物)・強化アイテム・現金・道具に分類される。 --回復アイテムは大根・ひよこういろう・アジの塩焼き・キノコ/毒キノコの5種類で、マップごとにあらかじめ配置されており、入手後もエリアを移動すれば元の場所に復活する。また、敵を撃破した際にドロップする場合もある。このうちキノコは毒であるか否かは出入りするごとにランダムであり、さらに体力回復量・減少量にも幅がある。 --強化アイテムは刀の体力・攻撃力・防御力上昇の他、刀の習得技や見切り技を入手できるものも存在する。こちらは敵からのドロップでのみ入手可能。 --現金は1円札と5円札の2種類。主な使い道は前述の刀の鍛錬の代金であり、他には一部のイベントで奪われる程度。アイテムとしては敵からのドロップでしか出現しないが、特定の依頼をこなすことで金を稼ぐこともできる。 --道具は持ちあげて凶器として投げつける・殴りつけるなどして攻撃できる。片手で持てる軽いものと両手で持ち上げ動作が遅くなる重いものの2種類が存在する。中には爆弾や大砲の不発弾、黒生家待望の跡取りの''赤ん坊''である「金太郎(きんたろう)」など、刀よりも大きなダメージを与えられるものも存在する。しかし納刀状態でなければ使用できず、刀に比べ隙が大きいため、戦闘での活用は難しい。こちらも一部除き回復アイテムと同様にマップごとに配置が固定で、持ち運んで位置をずらしてもエリアを出直せば復活する。 --いずれも納刀中に□ボタンで入手できるが、道具以外は蹴り技を当てて蹴り上げることでも入手可能(回復アイテムの場合は食べるモーションが省略される)。武器やアイテムの入手は、基本的により素早く行える蹴りで行うことになるだろう。 ***侍偏差値 -ゲーム中には「侍偏差値」という隠し数値があり、主人公のセリフや行動が侍としてふさわしかったかに応じて上下する。善良な・人道的な行動をとったかどうかだけでなく「適切な状況以外でむやみに抜刀や攻撃をしない」「一度味方についた勢力に尽くし、裏切らない」「戦闘になれば必ず勝ち、降参しない」などの要素が判断基準に含まれる。 --侍偏差値はゲーム内で確認することはできないが、通行人のザコが主人公とすれ違った際の反応である程度判断できる。 -ゲームをクリアするかゲームオーバーになると、最終的な侍偏差値と、それによる「称号」が表示される。侍偏差値以外の特定の条件を満たしたときのみ取得できる特殊な称号も存在する。なお、これらはエンディング自体には影響しない。 --称号に応じて「GP」が加算され、累計GPの値によって主人公の容姿などの隠し要素が解禁される。 ***対戦モード -本作の戦闘システムを利用し、1対1の格闘ゲーム風の対戦が楽しめるモード。主人公を含めた本編登場キャラを選択可能。 --主人公は当モード選択直前の本編プレイ時の容姿が反映される。 --使用する刀はお互いに刀蔵から選ぶことができる。 ***隠し要素 -侍度は「GP」という数値として加算され、このGPが貯まることで主人公の容姿や対戦モードの使用キャラ・ステージなどの様々な隠し要素が解放されていく。 --主人公の容姿の中には漫画『無限の住人』の主人公・万次が含まれている。万次を選択するとデフォルト装備も原作の愛刀と同じ名前の「妹守辰政(いものかみたつまさ)」に変化するというこだわりよう。 ***その他 -登場人物はいずれも声優が当てられているがフルボイスのセリフはなく、発言時に短い言葉を発したり、攻撃時に掛け声を発するといった『[[ゼルダの伝説>ゼルダの伝説シリーズ]]』シリーズに近い演出がとられている。 **評価点 -侍の世が終わった明治時代に繰り広げられる、最後の侍たちの物語の濃密さ。 --武家の存続という現実問題を見据え、不本意ながらも政府への「アラヤシキ」の売却に臨む黒生家。その「アラヤシキ」を強奪して装備を整え、政府を打倒し再び侍の世を取り戻さんとする赤玉党。真っ向にぶつかり合う二勢力でありながら、ともに受け入れがたき新たな時代に向き合う侍の苦しみを強く感じさせる。 --入れ墨を施した落ち武者のような姿の荒くれ者「坪八(つぼはち)」こと「坪内 八郎(つぼうち はちろう)」や、"人斬り=狩り"という危ない志向が人相からにじみ出た「刈部 星雲(かりぶ せいうん)」を始め、個々の登場人物がやたらと濃い。 ---この他、吉兆の恋人でチャイナドレスに身を包んだイギリス出身の麗人剣士「チェルシー」や、武士道を追い求める巨大アフロヘアーの黒人侍「ドナルド・ドナテロウズ(自称「ドナドナ((当人は「みんなはドナドナと呼ぶでござる」と述べるが、実際には作中で彼をそう呼ぶ人物はいない。))」)」といった異国の人物が登場。侍活劇に明治時代らしい「洋」のテイストが溶け込んだ、独特の雰囲気が作り出されている。 ---勢力の内外に関わらず、それぞれの人物の関係が複雑に絡み合っており、より一層ストーリーに深みを与えている。 -主人公の振る舞い方の自由度の高さ。 --真面目に相手の話を聞くのみならず、その場を立ち去ったり相手に蹴りを入れたりと、思うがままのリアクションをとれる。 --属する勢力を決めるも変えるも自分次第。本作の登場人物は少々お人よしに過ぎる傾向にあり、一度裏切って再度味方についても割とあっさり許してくれる。 ---同じイベントでも、主人公の立場やリアクションによって目線や展開ががらりと変化する、多重構造となっている。 --己の信念や正義に基づいて行動するもよし、極悪非道の限りを尽くすもよしという、主人公の設定が存在しないゆえの自由さ。プレイごとに自分で主人公の性格を考えて行動するという楽しみ方もできる。 -40種類以上にもわたる刀の種類の豊富さ。プレイヤーの好みに応じて様々な戦闘スタイルを楽しめる。 --技に関しても正統派な剣術に限らず、「回転して体当たりを繰り出す」「野球のバットスイングのような動作で一撃を繰り出す」といったユニークなものも存在する。 -単なる剣劇アクションにとどまらない"侍"の側面の描写。 --従来の侍題材作品では剣客としての描写のみがクローズアップされることが多かったが、本作では個々の行動が侍らしさという尺度で測られたり、刀の抜き差しによる周囲の反応の違いが明確に描写されているなど、剣の腕前以外の"侍"のあり方が随所に打ち出されている。 -時間帯や状況に応じたBGM。 --特に夕方に流れるBGMは、侍の世の終わりにふさわしい悲壮感を感じさせるメロディとなっている。 -そこかしこに光るおバカ要素。 --解放される主人公の容姿に珍妙なロボットが含まれていたり、セリフの選択肢の中には明らかに空気の読めないぶっ飛んだものも存在するなど、遊び方によっては一気にお笑い物へと変貌する要素が見られ、堅苦しさや湿っぽさにとらわれない雰囲気が与えられている。 --一通りのイベントを経験した後は、「支離滅裂な言動で周囲を振り回し、戦闘ではショボい刀を振りかざすも文字通り太刀打ちできず命乞いを繰り返す」といった三枚目のアホ侍を演じるのもまた一興。 -多彩な隠しコマンド。 --体力全回復・硬度回復といった初心者救済策的なものあれば、主人公の容姿を作中登場人物に変更するといったコミカルものまで様々。本作をあらゆる面でより楽しませようとするスタッフの気遣いが感じられる。 **賛否両論点 -エンディング分岐条件は基本的にノーヒントであり、特にエンディング1の分岐条件は他のエンディングに比べ難しめ。 --黒生家・赤玉党の双方を介在してそれぞれが直接衝突するイベントを避け、それぞれの所属人物を全員生存させることが条件となる。 --特に条件を満たす上で必須となる知床との手合いイベント、刈部の暴走を食い止めるイベントは、実力や装備が整っていなければかなり厳しい。 -グッドエンディングであるエンディング1・2においても主要人物に死者が出る構成となっている。 --一日目の夜のイベントはどんなルートを選んでも必ず死者が出るようになっており、誰かを見殺しにせざるを得ないのである。 ---あくまで「黒生家&赤玉党におけるグッドエンディング」と「宿場におけるグッドエンディング」なので、メインの勢力以外に死者が出てしまうのも仕方ないところではある。 -前述のように裏切り行為は侍偏差値が下がるのだが、複数の勢力に属することへのペナルティは存在しない。 --エンディング1ルート終盤における、主人公の存在が政府軍に対する黒生家・赤玉党の共闘へと導く演出は見事なのだが、そこに至るまでのコウモリ的とも言える立ち居振る舞いが侍らしいかについては疑問が残る。主要人物に紛れ込んでいた政府軍の間者は成敗されるものの、結果的に共闘を招いたとはいえ双方に内通していた主人公が一切咎められないのも少々不自然である。 -周回プレイを前提としているためか、ストーリー一回一回のボリュームは少ない。 -前述した主人公の姿を他の登場人物に変える隠しコマンドは、裏技ということもあってか少々おかしな点がある。 --一部のキャラクターには専用モーションが用意されているのだが、この隠しコマンドで主人公を変更すると、主人公本来のモーションに固定されてしまう。~ 例えばドナドナやチェルシーは抜刀時に専用の構えモーションが用意されているのだが、それらのモーションを主人公が使用することはできない。それぞれの所有武器である「活火山」「微熱」を装備していても同様。 ---主人公よりモーション性能で劣るキャラもいるため、足の遅いすずや栗吉らの移動速度が反映されないのは救いではある。((ちなみに続編の『侍道2』『3』では、容姿を変更するとその人物と同様のモーションを取るようになったが、その分、足の遅い人物を選ぶと移動に苦労する。なお『3』に関しては固有モーションを適用するかどうかの選択ができる。)) --無論、変更したキャラによってセリフのテキストが変わるなどということはないため、キャラによってはかなりの違和感(あるいはネタっぷり)が発生することになる。 ---ちなみに、隠しコマンド無しで使用可能なチュートリアルの女剣士を主人公にした場合でも、セリフは一切変わらない。ただし、女剣士は元々主人公と口調が似ており、違和感を感じないように配慮はされている。 --政府軍兵士など一部の人物は、ボイスの割り当てが間違っている。 -悪徳警官「井ノ頭 茂吉(いのがしら もきち)」は本作で戦闘を行うキャラクターの中では唯一となる"銃"の使い手で、主人公が戦っている相手に関係なく一定のタイミングでガード不能の銃弾を発射して攻撃してくる特殊なキャラクターである。~ が、対戦モードでの井之頭は下段構えの刀「網走(あばしり)」を装備しており、普通に刀で戦うキャラクターとなっている。これには肩透かしを食らったプレイヤーも多かったことだろう。 --本作の拳銃はお世辞にも優れた性能とは言えないが、それでも使ってみたいという要望は多かったらしく、後発作『侍道4』では正式な武器の種類として銃が実装されることとなった。 **問題点 -バグ・不具合が異様に多い。 --中にはゲーム進行不能になる致命的なものもあり、刀消失のペナルティや後述するセーブシステムの仕様と合わさって猛威を振るった。詳細は[[こちら>http://www.suginami-s.net/game/samurai/data/bagu.html]]を参照。 -ゲーム進行のテンポが非常に悪い。 --ザコ敵一人ひとりのパラメータが高く、中には主要人物と同等以上の強さを誇る敵も。行動パターンも主要人物と比べそれほど弱く作られているわけではなく(慣れればむしろ大技で積極的に攻めてくる主要人物の方が戦いやすい)、戦闘には手間がかかる。 --主人公の移動能力が低く、マップ間の移動にはかなりの時間を食う。 --イベントにはセリフ送りやスキップなどの機能が一切なく、周回を重ねるほどテンポの悪さが際立つ。フルボイスの収録を見送ったことも、かえって間延びした印象を与える一因となってしまっている。 -鍛冶場の仕様には問題が多い。 --「するどく」を選ぶと攻撃力上昇・防御力低下、「しなやかに」を選ぶと攻撃力低下・防御力上昇の変化が加えられるのだが、増減値の振れ幅が大きく、強力な武器を作ろうとするとかなりの金額が必要になる。「てきとうに」では体力も含めたパラメータがランダムに変化し、全てのパラメータが低下する場合も少なくない。 ---すべてのパラメータを最大値にする場合は、能力低下が0になるまで鍛え続けるか、敵が落としたアイテムを拾って強化するしかないので非常に面倒である。 --依頼のたびに鍛錬を行う演出が挿入されるのもテンポが悪い。 --依頼後に金を払わず逃げた場合や金が足りない場合は堂島が問答無用で襲いかかり、決着が付くまで逃げられない戦闘となる。無論、敗れてしまえば刀を失うし、勝利しても堂島が死亡するのでその周回では二度と刀の鍛錬が行えなくなってしまう。また、宿場の人々に加勢して政府軍との戦いに臨むエンディングルートも絶たれることとなる。 ---前者の場合は完全な自業自得ではあるが、後者の場合はなんらかの救済措置は欲しかったところ。 -セーブのシステムが不親切。 --ストーリーの進行状況は中断セーブという形になっており、一度ロードすると再度やり直すことはできない。緊張感を演出するための仕様と考えられるが、本作のゲームバランスとは致命的に合っていない。 --さらに問題なのは、一回のストーリーでセーブできる回数が厳しく制限されており、しかもセーブできるタイミングがストーリー前半に偏っているということ。テンポの悪さも相まって、ストーリー後半ではエンディングまで長時間拘束されることになってしまう。 --不評だったためか、このセーブシステムは後の作品では採用されていない。 -特定のエンディングを目指す場合、ストーリー分岐を誤ったり条件を満たせなかったりすると刀消失のペナルティを避けるため別のエンディングでクリアせざるを得なくなり、モヤモヤした気分を引きずったままのプレイを強要される。 --あるコマンドを入力するとリセットして即座にタイトルに戻ることができるが、これを利用したときもゲームオーバー時と同様刀を失うことになる。 --鍛冶屋で刀を預けてもらう方法を使うにしても、少なくない金額がかかる上に''バグで失敗することがある。''そのため、刀だけ預けてゲームオーバーになってやり直し、という手段も使いにくい。 -特定箇所では固定視点が使用されているが、そのうち黒生屋敷内は部屋ごとにコロコロと視点が切り替わるため操作しにくい。 -刀は上位互換・下位互換がはっきり存在している他、二者択一の習得技にも使い勝手に差があるなどにより、戦闘を有利に進めるためには選択肢が絞られてくる。 -複数人との戦闘の際、相手側が密集すると攻撃時にターゲットが切り替わりやすく、もどかしさを感じさせる。 -まとまった金額を稼ぐ手段が一部のイベントしかなく、しかも黒生家ルートのイベントに偏っている。 --宿場ルートでも大金を稼げるイベントがあるが、仲間をわざと死亡させる必要があるためグッドエンディングは見られなくなる。 --幸い、エンディングに影響の出ない1日目朝・昼のイベントだけでもそれなりの額が稼げるので、そこで金だけ入手したら別の勢力に乗り換えるという手もある。 **総評 明治時代を舞台に据え、マルチエンディングや個々の振る舞いで主人公の立場が大きく揺らぐイベントの形式を通じ侍のあり方を問うという、チャンバラ中心であった従来の侍モノとは一線を画した作品。~ それでいて真面目さやシリアスさに振り切れることなく、ほどよいバカさ加減が清涼剤として機能している。バグの多さや不便さの目立つシステム面により良作には今一歩及ばないものの、その独特な作風は多くのプレイヤーを引き付けた。 **余談 -主人公は掛け声とイベント中の発言以外にセリフを発しないのだが、とあるエンディング分岐ルートで吹き出しで「おう!」と発するシーンがある。 --厳密にいうと「吹き出し位置の関係で主人公がしゃべっているように見える」シーン。無関係な吹き出しが割り込んだだけなのか、ボツになった主人公のセリフを消し忘れた等の裏事情があったのか、真実は謎である。 -開発段階では刈部は「相手の技を吸収し自分のものとする」という戦闘スタイルをもつ案があったが、刀それぞれで使用できる技が決められているシステムを導入したことにより、この案はボツとなった。 -クリア後にはプレイ中に倒したキャラの総数が「斬った人数」として表示されるのだが、敵を瀕死に追いこんで味方にトドメを刺させた場合や爆弾を攻撃させて自爆させた場合はカウントされないため、イベント戦闘で常に味方がいるor爆弾があるエンディングルートならば斬った人数0人でクリアすることも可能である。 ---- *侍~完全版~ 【さむらいかんぜんばん】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B00007KG9B,image)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売元|スパイク|~| |開発元|アクワイア|~| |発売日|2003年1月16日|~| |判定|なし|~| |ポイント|海外版『Way of the Samurai』の逆輸入バージョン&br;バグの修正や新装備・新イベント追加により正当進化&br;一部の仕様により完全上位互換とは言えない|~| ---- **概要(完全版) 『侍』の海外版である『Way of the Samurai』を日本国内に逆輸入した作品。~ 『侍』と比較し、バグの修正やより遊びやすくするための変更が加えられている。 **変更点(完全版) -オリジナル版でプレイヤーを苦しめたバグは、そのほとんどが解消された。 -画面レイアウトが大きく変更。画面上下のブラックアウトしていた部分がなくなり、画面が見やすくなった。ゲージ類も一新され、視認性が向上している。 --ただ、画面上下の黒い帯が無くなった分、アスペクト比が縦に引き伸ばされている。 -新しい装備の登場。斧や鎌、ノコギリなどいずれも純粋な刀ではない装備となっている。 --ノコギリは相手を引き裂くエグい投げ技を使えたり、両剣の薙刀は高速で回転させるダイナミックな技を使えたり、専用技の見栄えも良い。鉄アレイは何故かサイコキネシスの如き投げ技が使える。 --この他、既存の刀の中にも技や仕様が変化したものがある。 -難易度「むずかしい」の登場。上記の新装備の中にはこの難易度でしか入手できないものもある。 -イベントの追加・一部変更。概ねストーリーがよりわかりやすくなるような描写となっている。 -戦闘時にターゲットとしている相手に紫のオーラが付加され、複数人を相手にしていても標的が分かりやすくなった。 -六骨峠のエリアの1つ「鉄道」の土砂でふさがれていた道が開通し、プレイ途中でここから六骨峠を去りゲームを終了させることが可能となった。 --この方法で峠を去った場合も、侍偏差値や称号の判定が行われる。GPも加算されるため、隠し要素の解禁がしやすくなった。刀もクリア時と同様すべて刀蔵に納められるため、気軽にやり直しができる。 -既に見た会話イベントを省略できるセリフが大幅に増加。((オリジナル版では飯屋・甘栗でドナドナと昼食を食べるシーンの「黙って食え」くらいしかなかった。)) -元の英語表記に合わせ、セリフのテキストが縦書きから横書きに変更された。 **評価点(完全版) -バグの解消や新しい要素の導入により、通常プレイでもやりこみ方面でもネタ方面でもより遊びやすい進化を遂げた。 **賛否両論点(完全版) -小技の崩しを受けて体勢を崩した際にも、あわせが使えるようになった。 --ストーリーの攻略には大いに役立つ要素なのだが、対人戦では「待ち有利」が決定的になりバランスが崩壊気味になっている。 -テキストが横書きに変更されたことで、「和」の雰囲気が少々薄れている。 --ちなみに横書きテキスト自体は『侍道2』以降も引き継がれている。 **問題点(完全版) -敵があわせを使用してくるようになった。 --本来あわせは「メリットが大きい分扱いが難しい」という性質のアクションなのだが、操作の精度など関係ないCPUが使用するとメリットの部分だけが残ることになってしまい、難易度を無意味に上げてしまっている。~ このあたりは、日本市場と比べより高難易度のゲームが好まれる海外市場向けのバージョンを導入した弊害と言えるだろう。 --しかも、本来あわせを使用できないタイミングでも当たり前のように使ってくる、という理不尽な仕様まである。 --この仕様により、浮かせ技からのコンボは高確率で防がれてしまう。連続技タイプの大技も厳しい。 --そして主にあわせを使ってくるのは政府軍兵士を中心としたザコキャラで、主要キャラは全くと言っていいほど使ってこない。ここまでくると、明らかにプレイヤーへの嫌がらせを目的とした調整と言える。 ---このため、ストーリー終盤の政府軍と戦うイベントは、仲間と力を合わせて強大な敵の大軍団を倒していく熱いイベントのはずが、大量のザコ一人ひとりにいちいち攻撃を防がれるというとてもストレスフルなバトルになってしまっている。 -多くの既存武器で技の削除・統合が行われているが、その基準が不可解。 --「追加武器の技を実装するために技の総数を減らすことが目的で、無計画に削っただけ」と言っても過言ではない変更で、『侍』と比べ単純にできることが少なくなっている。 ---武器によってはこの影響で''習得条件を満たせない技が生まれてしまった。'' ---中には「技が削除された結果、強力なハメ技が暴発のリスクなしに簡単に出せるようになった」という、明らかにまともに調整していないことがわかるようなケースすら存在する。 -ストーリー終了時の侍偏差値表示が廃止された。 --内部計算はしっかり行われており、称号は従来通り表示されるため、オリジナル版をプレイしていればある程度は推測ができる。だが、侍偏差値と無関係な特殊称号を取ってしまうと、侍偏差値がまったくわからなくなってしまう。 -バグこそほぼ一掃されたものの、不評だった仕様に関しては多くが手つかずのまま残されている。 --武器強化が面倒な点はオリジナル版と同様。鍛冶屋の仕様が据え置きなだけでなく、難易度ごとに敵が落とすアイテムのテーブルが変化するようになったことで強化アイテムが入手しづらくなった((前作と異なり、最低難易度の「やさしい」では強化アイテムがほぼ出現しなくなっている。厳密にいうと「強化アイテムの代わりに回復アイテムを落とすようになった」といえる調整になっており、難易度調整という意味では完全に間違っているとも言い切れないが…。))ため、余計に面倒に。 --イベントのスキップやセリフ送りは相変わらずできない。イベントやテキストの追加により、オリジナル版に比べかえってテンポが悪化した箇所もある。 --パッケージの追加要素に「セーブポイントの追加」と書かれているが、実際にはオリジナル版と変わっていない。前述した峠を脱出できるポイントをセーブポイントとして数えたのだろうか? **総評(完全版) 『侍』の面白さをそのままに、さらなる遊び応えを追求したバージョン。廉価版としてリリースするには大盤振る舞いといえるその内容には、一見の価値がある。~ その一方で、『侍』から劣化した点もいくらか見受けられ、"完全版"と題するには少々力不足なのが残念ではある。~ 遊びやすさは確実に向上しているので、オリジナルにこだわりがなければ本作を選ぶことをおすすめする。 ---- *侍道ポータブル 【さむらいどうぽーたぶる】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B001BWUEMK,image)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~| |発売元|スパイク|~| |開発元|ゼロディブ、アクワイア|~| |発売日|2008年9月18日|~| |定価|3,990円(税5%込)|~| |レーティング|CERO:C(15才以上対象)|~| |配信|2009年8月10日/3,000円(税5%込)|~| |廉価版|PSP the Best&br;2013年7月11日/1,800円(税5%込)|~| |判定|なし|~| |ポイント|『完全版』のPSP移植版&br;内容的にはベタ移植+追加要素|~| ---- **概要(ポータブル) 『侍~完全版~』をさらにPSP向けに移植した作品。 **変更点(ポータブル) -アドホック通信によりユーザー間で対戦が行えるアドホック対戦モードの追加。 --またアドホック通信を介してプレイヤー間で刀を交換すると、一部の刀の名前とステータスが変化する。 -オープニングムービーのBGMがアレンジバージョンに変更された。 --特典として旧BGMのオープニングも収録。 -当時発売前であった『侍道3』の映像を特典として収録。 --主人公の容姿にも『侍道3』の主人公のものが追加されている。 -クリア特典で使用できた隠しキャラ「万次」が削除され、代わりに妹守辰政を装備したすずが解禁される。 -オートセーブが抑制され、PS2版ではセーブデータが消されていた場面でもセーブデータが残っており、以前のセーブデータから無事再開できる場面が増えた。 --ゲームオーバーになってもセーブさえしなければ刀を失わずに済むようになった。 -浮かせ技をヒットさせても敵が浮きにくくなり、空中コンボが狙いにくくなった。 -主人公の移動速度が上昇した。 **評価点(ポータブル) -刀消失ペナルティを避けられるようになったため、より安心して周回できるようになった。 **問題点(ポータブル) -『侍』⇒『侍~完全版~』ほどの劇的な追加要素が見当たらず、『完全版』からのさらなる進化を期待すると肩透かしを食らう。 **総評(ポータブル) 刀を失わない救済策や主人公の移動速度上昇などの改善点も見られるが、大部分は『侍~完全版~』と同一。~ テレビを使わずお手軽にプレイしたい場合は本作も選択肢にはなるだろう。 ---- **続編・派生作品 -''『侍道2』(PS2 2003年10月9日発売)'' --ナンバリング第2作。舞台は幕末。本作で好評だったシステムの強化に加え、様々な新要素が追加されている。 --廉価版である『決闘版』にはさらなる追加要素があり、対戦モードも収録。後に本作同様にPSP移植版も発売された。 -''『サムライウエスタン 活劇侍道』(PS2 2005年1月1日発売)'' --シリーズのスピンオフ。舞台は19世紀のアメリカ西部。従来のシリーズと異なりステージクリア型のアクションとなっている。 --「弾き」「かわし」といった新アクションで刀VS銃の戦いを楽しめ、シリーズ初となる成長要素と2人CO-OPが搭載されている。 -''『侍道3』(PS3 2008年11月13日発売 360 2009年2月26日発売)'' --ナンバリング第3作。舞台は戦国時代。「いきなり沙汰システム」によりあらゆる場面で抜刀及び土下座が可能となった。 --後に発売されたPS3廉価版である『3 Plus』には独自の追加要素がある。 -''『[[侍道4]]』(PS3 2011年3月3日発売)'' --ナンバリング第4作。舞台は再び幕末。3つの勢力が登場し、所属するだけでなく寝返り・裏切りが可能。 --廉価版である『4 Plus』には有料DLCが3つ収録されている。詳細は作品ページを参照。 -''『侍道外伝 KATANAKAMI』(PS4/Switch/Win 2020年2月20日発売)'' --8年ぶりの新作となるシリーズのスピンオフ。従来のシリーズと異なり、魑魅魍魎を相手にするアクションRPGとなっている。 --ステージには自動生成ダンジョンが採用されており、ハクスラ要素もある。Win版はSteamでのダウンロード専売。
注意:当記事ではPS2『侍』と、バージョンアップ版であるPS2『侍~完全版~』と、マイナーチェンジ移植版であるPSP『侍道ポータブル』について記載しております。いずれも判定は「なし」です。 ---- #contents ---- *侍 【さむらい】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B00005UOHV,image)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売元|スパイク|~| |開発元|アクワイア|~| |発売日|2002年2月7日|~| |定価|6,800円(税抜)|~| |判定|なし|~| |ポイント|侍の世が終わりを告げた明治時代が舞台のチャンバラ活劇&br;マルチエンド方式かつ主人公の立場が変わる豊富な選択肢&br;剣の腕だけでなく、それ以外でも''侍らしさ''が問われる作品&br;程よいおバカ要素の数々&br;バグの多さが悔やまれる|~| |>|>|CENTER:''侍道シリーズ''&br;''侍(完全版)(ポータブル)'' / 侍道2(決闘版)(ポータブル)&br()サムライウエスタン 活劇侍道 / 侍道3(Plus) / [[侍道4]](Plus)&br()侍道外伝 KATANAKAMI| ---- **概要 『天誅』などのアクションADVを手がけるアクワイアが開発((フロム・ソフトウェアが権利を取得してからの『天誅』シリーズの一部は別の会社(K2もしくはフロム内製)。))し、スパイク(現:スパイク・チュンソフト)からPS2向けに発売された作品。~ 時は明治10年、プレイヤーは戊辰戦争後の時代を生きるさすらいの侍。彼と同じく時代に取り残された侍たちが寄り付く「六骨峠(ろっこつとうげ)」で、操業停止して久しい西洋式の高炉「アラヤシキ」を巡り、「黒生 鉄心(くろふ てっしん)」を主とする武家「黒生家(くろふけ)」と、鉄心の勘当息子である「吉兆(きっちょう)」が率いる反政府組織「赤玉党(あかだまとう)」に加え、その二勢力に虐げられる宿場の住民、そして政府軍のそれぞれの陰謀が渦巻く2日間を生き抜いていく。 **基本システム -主人公はこれといった設定はなく、ゲーム開始時に名前や数種類の顔つきと服装を組み合わせて自由に設定可能。 -基本操作は一般的な3Dアクション方式で、峠を駆け回って様々なイベントをこなし、二日間を過ごしていく。 -六骨峠は8つのエリアで構成されている。時間帯は日中→夕方→夜の2セットで構成されており、特定の重要イベントをこなすことで時間が経過する。逆に言えば、何もイベントを起こさなければいつまでも同じ時間帯で行動することもできる。 -本作の肝は会話時やイベント時の主人公の反応の多さ、そしてそれぞれに応じたストーリー分岐の豊富さにある。時間帯ごとに特定の人物に近づくと会話やイベントが発生し、主人公に発言の選択肢が現れるが、それぞれの発言や主人公の態度(無言でいる、抜刀もしくは会話相手に攻撃する、その場を立ち去る((イベントによっては発言か無言しか選べない場合や、それぞれの態度を取っても相手が反応しない場合もある。)))により相手のリアクションや自分の立場が大きく変化する。 --選択肢一つひとつにより、相手の所属組織に加勢するか敵対するかが左右される。途中で裏切ったり、あるいは再度仲間になったりすることも可能。 -ストーリーはマルチエンディング方式。最終的には黒生家・赤玉党・宿場のいずれかに協力し、六骨峠に襲い来る政府軍、そして軍の指揮官である「玉川 上水(たまがわ じょうすい)」と戦うことになる。 --エンディング分岐は6つあり、それぞれの所属組織に応じたものが3つと、そこからの派生エンディングが3つ用意されている。 ---中には政府軍に寝返るエンディングもあるが、実際に政府軍の一員として戦闘を行うことはなく、分岐が確定した時点でエピローグとなる。 ***戦闘 -本作では刀を鞘にしまっている「納刀」と刀を抜き攻撃体勢を整える「抜刀」という2つの状態がある。納刀中は「蹴り((ニュートラルの下段蹴り、キー入力と合わせた前蹴り、ジャンプ中の飛び蹴りの3種類がある。))」もしくは後述の道具でしか攻撃できず、戦闘では抜刀状態がメインとなる。 --なお、戦闘時以外の状況での抜刀は周囲に敵意や恐怖心を与える行為に他ならず、普段は納刀状態でいることが推奨される。 -戦闘は3D格闘ゲームに近い方式が取られている。威力は低いが隙が小さい「小技」、威力は高いが隙の大きい「大技」、刀を眼前に構えての「防御」、防御不能の「蹴り」((技によっては蹴り以外の打撃技や飛び道具も含まれる。))が基本要素となる。 --小技・大技・蹴り・ジャンプを特定の順や組み合わせで入力する、もしくは方向キー入力と組み合わせると刀それぞれの固有技や連続技として繰り出すことができる。 --自分・相手ともに攻撃を防御された際には無入力・前入力・後入力により「崩し」の攻防が発生する。前入力の「押し」は無入力の相手をのけぞらせて防御をこじ開け、後入力の「捌き」は押してくる相手を受け流してよろけさせ、無入力は相手の捌きを空振らせ隙を作る、といった三竦みが存在する。 --格闘ゲームのブロッキングのような「あわせ」というシステムも存在。相手の攻撃が当たる瞬間にタイミングよく''防御を解く''ことで発動するというリスキーなアクションだが、成功すれば防御時とは違い硬直やノックバックなしに次の行動に移ることができる。攻撃後の隙の大きい技にあわせを行えば、相手の攻撃動作が終わる前に反撃に転じられる。 ---あわせは攻撃モーション中やのけぞり・ダウンなどの地上やられモーション中でない限り、防御モーションが実際にとれるかどうかにかかわらず「防御ボタンを押す→タイミングよく離す」という入力で使用可能。浮かせ技やダメージの大きい技を食らって吹き飛ばされている最中でも、あわせが成功すれば一瞬で体勢を整えられる。 ---一部の技はあわせが成功した際に低確率で「見切り」が発生し、以降はその攻撃に対してコマンド入力なしで自動的にあわせが発動するようになる。 -複数人を相手にする場合は、標的としている相手以外は攻撃してこず、1対1の体裁が守られている(こちらが納刀している場合や自由移動中を除く)。逆にこちらから複数人を同時に攻撃したり、自由移動で標的を変更することが可能。 -戦闘が発生する状況はイベントが主であるが、通行人として通りかかるザコ(黒生家家臣および赤玉党党員)に辻斬りで襲い掛かる、あるいは挑発的な発言を行い喧嘩を売ることでも発生する。 --ザコを相手にした場合は果たし合うも途中で逃げるも自由に行えるが、主要人物を相手にした場合は決着のつけ方(殺害・負傷撤退・降参)があらかじめイベントごとに決まっている。こちらの降参や逃亡も同様であり、中には決着が付くまで別エリアへ逃げられなくなる戦闘イベントもある。 --相手が主要人物であればこの戦闘時にもセリフの選択肢が現れる。「待て」を選べば相手は思わず静止し、相手の容姿や腕前などをバカにした挑発セリフを選べば必殺の固有技を繰り出してくる(あわせや見切りを狙える)。ただし、何度も発言すると相手がひっかからなくなる。 --逆に主要人物が味方に付いている場合は、回復アイテムを要求したり、必殺技で援護を頼むことができる。ただし、回復アイテム要求についてはそれまでのイベントでその味方に好印象を残す振る舞いをしていることが条件となる。((主人公に好印象がない場合や何度もねだった場合は激励の言葉が返ってくるのみ。)) ***刀について -初期装備は「中庸刀(ちゅうようとう)」という刀で、他の刀は倒した敵から拾うことにより入手可能。 --刀は装備しているものも含め3本まで持ち歩くことができる。ゲームをクリアすることで「刀蔵(かたなぐら)」に所持していた刀が納められ、次回プレイ時に初期装備として持ち出すことが可能。 --主人公が死亡しゲームオーバーになると、''そのとき持っていた刀は全て失ってしまう。'' -刀それぞれには硬度・体力・攻撃力・防御力が設定されている。 --「硬度」とは、いわば刀の耐久値で、画面下に体力とともに白いゲージが表示されている。戦闘で攻撃が相手に当たると硬度ゲージ上で赤い「疲労度ゲージ」が貯まっていき、疲労度ゲージの長さが硬度ゲージを超えると、硬度が減少してしまう。疲労度ゲージは攻撃しなければ自動的に下降するが、大技を防御される、複数人を同時に大技で攻撃するなどすると上昇しやすい。硬度が0になってしまうと刀身が砕け散り、攻撃のダメージがほぼゼロになり防御もできなくなるなど重大なペナルティを背負わされることになる。 --体力・攻撃力・防御力はアイテムで上昇する他、「一本松」にいる鍛冶屋「堂島 軍二(どうじま ぐんじ)」に依頼することで、硬度も含めたステータスを変更することが可能。また、堂島には所持している刀を一本だけ刀蔵に運んでもらうこともできる。 -固有技・連続技は刀それぞれによって固定されている。戦闘を繰り返して刀の経験値を貯める、特定の技でとどめを刺す等特定の条件を満たせば新しい技を習得できる。刀によっては二者択一の習得技(一方を習得するともう一方が習得できない)も存在する。 -構えは中段・下段・上段・脇構え・片手・忍者構えの6種類が存在する。それぞれの構えにより攻撃スタイル(素早い動きで翻弄する、威力が高いなど)や技の傾向が概ね定まっている。 ***アイテム -アイテムは回復アイテム(食べ物)・強化アイテム・現金・道具に分類される。 --回復アイテムは大根・ひよこういろう・アジの塩焼き・キノコ/毒キノコの5種類で、マップごとにあらかじめ配置されており、入手後もエリアを移動すれば元の場所に復活する。また、敵を撃破した際にドロップする場合もある。このうちキノコは毒であるか否かは出入りするごとにランダムであり、さらに体力回復量・減少量にも幅がある。 --強化アイテムは刀の体力・攻撃力・防御力上昇の他、刀の習得技や見切り技を入手できるものも存在する。こちらは敵からのドロップでのみ入手可能。 --現金は1円札と5円札の2種類。主な使い道は前述の刀の鍛錬の代金であり、他には一部のイベントで奪われる程度。アイテムとしては敵からのドロップでしか出現しないが、特定の依頼をこなすことで金を稼ぐこともできる。 --道具は持ちあげて凶器として投げつける・殴りつけるなどして攻撃できる。片手で持てる軽いものと両手で持ち上げ動作が遅くなる重いものの2種類が存在する。中には爆弾や大砲の不発弾、黒生家待望の跡取りの''赤ん坊''である「金太郎(きんたろう)」など、刀よりも大きなダメージを与えられるものも存在する。しかし納刀状態でなければ使用できず、刀に比べ隙が大きいため、戦闘での活用は難しい。こちらも一部除き回復アイテムと同様にマップごとに配置が固定で、持ち運んで位置をずらしてもエリアを出直せば復活する。 --いずれも納刀中に□ボタンで入手できるが、道具以外は蹴り技を当てて蹴り上げることでも入手可能(回復アイテムの場合は食べるモーションが省略される)。武器やアイテムの入手は、基本的により素早く行える蹴りで行うことになるだろう。 ***侍偏差値 -ゲーム中には「侍偏差値」という隠し数値があり、主人公のセリフや行動が侍としてふさわしかったかに応じて上下する。善良な・人道的な行動をとったかどうかだけでなく「適切な状況以外でむやみに抜刀や攻撃をしない」「一度味方についた勢力に尽くし、裏切らない」「戦闘になれば必ず勝ち、降参しない」などの要素が判断基準に含まれる。 --侍偏差値はゲーム内で確認することはできないが、通行人のザコが主人公とすれ違った際の反応である程度判断できる。 -ゲームをクリアするかゲームオーバーになると、最終的な侍偏差値と、それによる「称号」が表示される。侍偏差値以外の特定の条件を満たしたときのみ取得できる特殊な称号も存在する。なお、これらはエンディング自体には影響しない。 --称号に応じて「GP」が加算され、累計GPの値によって主人公の容姿などの隠し要素が解禁される。 ***対戦モード -本作の戦闘システムを利用し、1対1の格闘ゲーム風の対戦が楽しめるモード。主人公を含めた本編登場キャラを選択可能。 --主人公は当モード選択直前の本編プレイ時の容姿が反映される。 --使用する刀はお互いに刀蔵から選ぶことができる。 ***隠し要素 -侍度は「GP」という数値として加算され、このGPが貯まることで主人公の容姿や対戦モードの使用キャラ・ステージなどの様々な隠し要素が解放されていく。 --主人公の容姿の中には漫画『無限の住人』の主人公・万次が含まれている。万次を選択するとデフォルト装備も原作の愛刀と同じ名前の「妹守辰政(いものかみたつまさ)」に変化するというこだわりよう。 ***その他 -登場人物はいずれも声優が当てられているがフルボイスのセリフはなく、発言時に短い言葉を発したり、攻撃時に掛け声を発するといった『[[ゼルダの伝説>ゼルダの伝説シリーズ]]』シリーズに近い演出がとられている。 **評価点 -侍の世が終わった明治時代に繰り広げられる、最後の侍たちの物語の濃密さ。 --武家の存続という現実問題を見据え、不本意ながらも政府への「アラヤシキ」の売却に臨む黒生家。その「アラヤシキ」を強奪して装備を整え、政府を打倒し再び侍の世を取り戻さんとする赤玉党。真っ向にぶつかり合う二勢力でありながら、ともに受け入れがたき新たな時代に向き合う侍の苦しみを強く感じさせる。 --入れ墨を施した落ち武者のような姿の荒くれ者「坪八(つぼはち)」こと「坪内 八郎(つぼうち はちろう)」や、"人斬り=狩り"という危ない志向が人相からにじみ出た「刈部 星雲(かりぶ せいうん)」を始め、個々の登場人物がやたらと濃い。 ---この他、吉兆の恋人でチャイナドレスに身を包んだイギリス出身の麗人剣士「チェルシー」や、武士道を追い求める巨大アフロヘアーの黒人侍「ドナルド・ドナテロウズ(自称「ドナドナ((当人は「みんなはドナドナと呼ぶでござる」と述べるが、実際には作中で彼をそう呼ぶ人物はいない。))」)」といった異国の人物が登場。侍活劇に明治時代らしい「洋」のテイストが溶け込んだ、独特の雰囲気が作り出されている。 ---勢力の内外に関わらず、それぞれの人物の関係が複雑に絡み合っており、より一層ストーリーに深みを与えている。 -主人公の振る舞い方の自由度の高さ。 --真面目に相手の話を聞くのみならず、その場を立ち去ったり相手に蹴りを入れたりと、思うがままのリアクションをとれる。 --属する勢力を決めるも変えるも自分次第。本作の登場人物は少々お人よしに過ぎる傾向にあり、一度裏切って再度味方についても割とあっさり許してくれる。 ---同じイベントでも、主人公の立場やリアクションによって目線や展開ががらりと変化する、多重構造となっている。 --己の信念や正義に基づいて行動するもよし、極悪非道の限りを尽くすもよしという、主人公の設定が存在しないゆえの自由さ。プレイごとに自分で主人公の性格を考えて行動するという楽しみ方もできる。 --ゲーム序盤の内なら、イベント戦でも命乞いをして見逃してもらうことができる。金を奪われる、一部勢力と敵対関係になるなど、それなりのリスクはあるが。 -40種類以上にもわたる刀の種類の豊富さ。プレイヤーの好みに応じて様々な戦闘スタイルを楽しめる。 --技に関しても正統派な剣術に限らず、「回転して体当たりを繰り出す」「野球のバットスイングのような動作で一撃を繰り出す」といったユニークなものも存在する。 -単なる剣劇アクションにとどまらない"侍"の側面の描写。 --従来の侍題材作品では剣客としての描写のみがクローズアップされることが多かったが、本作では個々の行動が侍らしさという尺度で測られたり、刀の抜き差しによる周囲の反応の違いが明確に描写されているなど、剣の腕前以外の"侍"のあり方が随所に打ち出されている。 -時間帯や状況に応じたBGM。 --特に夕方に流れるBGMは、侍の世の終わりにふさわしい悲壮感を感じさせるメロディとなっている。 -そこかしこに光るおバカ要素。 --解放される主人公の容姿に珍妙なロボットが含まれていたり、セリフの選択肢の中には明らかに空気の読めないぶっ飛んだものも存在するなど、遊び方によっては一気にお笑い物へと変貌する要素が見られ、堅苦しさや湿っぽさにとらわれない雰囲気が与えられている。 --一通りのイベントを経験した後は、「支離滅裂な言動で周囲を振り回し、戦闘ではショボい刀を振りかざすも文字通り太刀打ちできず命乞いを繰り返す」といった三枚目のアホ侍を演じるのもまた一興。 -多彩な隠しコマンド。 --体力全回復・硬度回復といった初心者救済策的なものあれば、主人公の容姿を作中登場人物に変更するといったコミカルものまで様々。本作をあらゆる面でより楽しませようとするスタッフの気遣いが感じられる。 **賛否両論点 -エンディング分岐条件は基本的にノーヒントであり、特にエンディング1の分岐条件は他のエンディングに比べ難しめ。 --黒生家・赤玉党の双方を介在してそれぞれが直接衝突するイベントを避け、それぞれの所属人物を全員生存させることが条件となる。 --特に条件を満たす上で必須となる知床との手合いイベント、刈部の暴走を食い止めるイベントは、実力や装備が整っていなければかなり厳しい。 -グッドエンディングであるエンディング1・2においても主要人物に死者が出る構成となっている。 --一日目の夜のイベントはどんなルートを選んでも必ず死者が出るようになっており、誰かを見殺しにせざるを得ないのである。 ---あくまで「黒生家&赤玉党におけるグッドエンディング」と「宿場におけるグッドエンディング」なので、メインの勢力以外に死者が出てしまうのも仕方ないところではある。 -前述のように裏切り行為は侍偏差値が下がるのだが、複数の勢力に属することへのペナルティは存在しない。 --エンディング1ルート終盤における、主人公の存在が政府軍に対する黒生家・赤玉党の共闘へと導く演出は見事なのだが、そこに至るまでのコウモリ的とも言える立ち居振る舞いが侍らしいかについては疑問が残る。主要人物に紛れ込んでいた政府軍の間者は成敗されるものの、結果的に共闘を招いたとはいえ双方に内通していた主人公が一切咎められないのも少々不自然である。 -周回プレイを前提としているためか、ストーリー一回一回のボリュームは少ない。 -前述した主人公の姿を他の登場人物に変える隠しコマンドは、裏技ということもあってか少々おかしな点がある。 --一部のキャラクターには専用モーションが用意されているのだが、この隠しコマンドで主人公を変更すると、主人公本来のモーションに固定されてしまう。~ 例えばドナドナやチェルシーは抜刀時に専用の構えモーションが用意されているのだが、それらのモーションを主人公が使用することはできない。それぞれの所有武器である「活火山」「微熱」を装備していても同様。 ---主人公よりモーション性能で劣るキャラもいるため、足の遅いすずや栗吉らの移動速度が反映されないのは救いではある。((ちなみに続編の『侍道2』『3』では、容姿を変更するとその人物と同様のモーションを取るようになったが、その分、足の遅い人物を選ぶと移動に苦労する。なお『3』に関しては固有モーションを適用するかどうかの選択ができる。)) --無論、変更したキャラによってセリフのテキストが変わるなどということはないため、キャラによってはかなりの違和感(あるいはネタっぷり)が発生することになる。 ---ちなみに、隠しコマンド無しで使用可能なチュートリアルの女剣士を主人公にした場合でも、セリフは一切変わらない。ただし、女剣士は元々主人公と口調が似ており、違和感を感じないように配慮はされている。 --政府軍兵士など一部の人物は、ボイスの割り当てが間違っている。 -悪徳警官「井ノ頭 茂吉(いのがしら もきち)」は本作で戦闘を行うキャラクターの中では唯一となる"銃"の使い手で、主人公が戦っている相手に関係なく一定のタイミングでガード不能の銃弾を発射して攻撃してくる特殊なキャラクターである。~ が、対戦モードでの井之頭は下段構えの刀「網走(あばしり)」を装備しており、普通に刀で戦うキャラクターとなっている。これには肩透かしを食らったプレイヤーも多かったことだろう。 --本作の拳銃はお世辞にも優れた性能とは言えないが、それでも使ってみたいという要望は多かったらしく、後発作『侍道4』では正式な武器の種類として銃が実装されることとなった。 **問題点 -バグ・不具合が異様に多い。 --中にはゲーム進行不能になる致命的なものもあり、刀消失のペナルティや後述するセーブシステムの仕様と合わさって猛威を振るった。詳細は[[こちら>http://www.suginami-s.net/game/samurai/data/bagu.html]]を参照。 -ゲーム進行のテンポが非常に悪い。 --ザコ敵一人ひとりのパラメータが高く、中には主要人物と同等以上の強さを誇る敵も。行動パターンも主要人物と比べそれほど弱く作られているわけではなく(慣れればむしろ大技で積極的に攻めてくる主要人物の方が戦いやすい)、戦闘には手間がかかる。 --主人公の移動能力が低く、マップ間の移動にはかなりの時間を食う。 --イベントにはセリフ送りやスキップなどの機能が一切なく、周回を重ねるほどテンポの悪さが際立つ。フルボイスの収録を見送ったことも、かえって間延びした印象を与える一因となってしまっている。 --これらの点は後の作品ではほとんどが改善されている((イベントスキップは勿論、マップ間の移動が容易になったり、爽快に敵を倒せるシステムが導入されたりしている。))。 -鍛冶場の仕様には問題が多い。 --「するどく」を選ぶと攻撃力上昇・防御力低下、「しなやかに」を選ぶと攻撃力低下・防御力上昇の変化が加えられるのだが、増減値の振れ幅が大きく、強力な武器を作ろうとするとかなりの金額が必要になる。「てきとうに」では体力も含めたパラメータがランダムに変化し、全てのパラメータが低下する場合も少なくない。 ---すべてのパラメータを最大値にする場合は、能力低下が0になるまで鍛え続けるか、敵が落としたアイテムを拾って強化するしかないので非常に面倒である。 --依頼のたびに鍛錬を行う演出が挿入されるのもテンポが悪い。 --依頼後に金を払わず逃げた場合や金が足りない場合は堂島が問答無用で襲いかかり、決着が付くまで逃げられない戦闘となる。無論、敗れてしまえば刀を失うし、勝利しても堂島が死亡するのでその周回では二度と刀の鍛錬が行えなくなってしまう。また、宿場の人々に加勢して政府軍との戦いに臨むエンディングルートも絶たれることとなる。 ---前者の場合は完全な自業自得ではあるが、後者の場合はなんらかの救済措置は欲しかったところ。 -セーブのシステムが不親切。 --ストーリーの進行状況は中断セーブという形になっており、一度ロードすると再度やり直すことはできない。緊張感を演出するための仕様と考えられるが、本作のゲームバランスとは致命的に合っていない。 --さらに問題なのは、一回のストーリーでセーブできる回数が厳しく制限されており、しかもセーブできるタイミングがストーリー前半に偏っているということ。テンポの悪さも相まって、ストーリー後半ではエンディングまで長時間拘束されることになってしまう。 --不評だったためか、このセーブシステムは後の作品では採用されていない。 -特定のエンディングを目指す場合、ストーリー分岐を誤ったり条件を満たせなかったりすると刀消失のペナルティを避けるため別のエンディングでクリアせざるを得なくなり、モヤモヤした気分を引きずったままのプレイを強要される。 --あるコマンドを入力するとリセットして即座にタイトルに戻ることができるが、これを利用したときもゲームオーバー時と同様刀を失うことになる。 --鍛冶屋で刀を預けてもらう方法を使うにしても、少なくない金額がかかる上に''バグで失敗することがある。''そのため、刀だけ預けてゲームオーバーになってやり直し、という手段も使いにくい。 -特定箇所では固定視点が使用されているが、そのうち黒生屋敷内は部屋ごとにコロコロと視点が切り替わるため操作しにくい。 -刀は上位互換・下位互換がはっきり存在している他、二者択一の習得技にも使い勝手に差があるなどにより、戦闘を有利に進めるためには選択肢が絞られてくる。 -複数人との戦闘の際、相手側が密集すると攻撃時にターゲットが切り替わりやすく、もどかしさを感じさせる。 -まとまった金額を稼ぐ手段が一部のイベントしかなく、しかも黒生家ルートのイベントに偏っている。 --宿場ルートでも大金を稼げるイベントがあるが、仲間をわざと死亡させる必要があるためグッドエンディングは見られなくなる。 --幸い、エンディングに影響の出ない1日目朝・昼のイベントだけでもそれなりの額が稼げるので、そこで金だけ入手したら別の勢力に乗り換えるという手もある。 **総評 明治時代を舞台に据え、マルチエンディングや個々の振る舞いで主人公の立場が大きく揺らぐイベントの形式を通じ侍のあり方を問うという、チャンバラ中心であった従来の侍モノとは一線を画した作品。~ それでいて真面目さやシリアスさに振り切れることなく、ほどよいバカさ加減が清涼剤として機能している。バグの多さや不便さの目立つシステム面により良作には今一歩及ばないものの、その独特な作風は多くのプレイヤーを引き付けた。 **余談 -主人公は掛け声とイベント中の発言以外にセリフを発しないのだが、とあるエンディング分岐ルートで吹き出しで「おう!」と発するシーンがある。 --厳密にいうと「吹き出し位置の関係で主人公がしゃべっているように見える」シーン。無関係な吹き出しが割り込んだだけなのか、ボツになった主人公のセリフを消し忘れた等の裏事情があったのか、真実は謎である。 -開発段階では刈部は「相手の技を吸収し自分のものとする」という戦闘スタイルをもつ案があったが、刀それぞれで使用できる技が決められているシステムを導入したことにより、この案はボツとなった。 -クリア後にはプレイ中に倒したキャラの総数が「斬った人数」として表示されるのだが、敵を瀕死に追いこんで味方にトドメを刺させた場合や爆弾を攻撃させて自爆させた場合はカウントされないため、イベント戦闘で常に味方がいるor爆弾があるエンディングルートならば斬った人数0人でクリアすることも可能である。 ---- *侍~完全版~ 【さむらいかんぜんばん】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B00007KG9B,image)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売元|スパイク|~| |開発元|アクワイア|~| |発売日|2003年1月16日|~| |判定|なし|~| |ポイント|海外版『Way of the Samurai』の逆輸入バージョン&br;バグの修正や新装備・新イベント追加により正当進化&br;一部の仕様により完全上位互換とは言えない|~| ---- **概要(完全版) 『侍』の海外版である『Way of the Samurai』を日本国内に逆輸入した作品。~ 『侍』と比較し、バグの修正やより遊びやすくするための変更が加えられている。 **変更点(完全版) -オリジナル版でプレイヤーを苦しめたバグは、そのほとんどが解消された。 -画面レイアウトが大きく変更。画面上下のブラックアウトしていた部分がなくなり、画面が見やすくなった。ゲージ類も一新され、視認性が向上している。 --ただ、画面上下の黒い帯が無くなった分、アスペクト比が縦に引き伸ばされている。 -新しい装備の登場。斧や鎌、ノコギリなどいずれも純粋な刀ではない装備となっている。 --ノコギリは相手を引き裂くエグい投げ技を使えたり、両剣の薙刀は高速で回転させるダイナミックな技を使えたり、専用技の見栄えも良い。鉄アレイは何故かサイコキネシスの如き投げ技が使える。 --この他、既存の刀の中にも技や仕様が変化したものがある。 -難易度「むずかしい」の登場。上記の新装備の中にはこの難易度でしか入手できないものもある。 -イベントの追加・一部変更。概ねストーリーがよりわかりやすくなるような描写となっている。 -戦闘時にターゲットとしている相手に紫のオーラが付加され、複数人を相手にしていても標的が分かりやすくなった。 -六骨峠のエリアの1つ「鉄道」の土砂でふさがれていた道が開通し、プレイ途中でここから六骨峠を去りゲームを終了させることが可能となった。 --この方法で峠を去った場合も、侍偏差値や称号の判定が行われる。GPも加算されるため、隠し要素の解禁がしやすくなった。刀もクリア時と同様すべて刀蔵に納められるため、気軽にやり直しができる。 -既に見た会話イベントを省略できるセリフが大幅に増加。((オリジナル版では飯屋・甘栗でドナドナと昼食を食べるシーンの「黙って食え」くらいしかなかった。)) -元の英語表記に合わせ、セリフのテキストが縦書きから横書きに変更された。 **評価点(完全版) -バグの解消や新しい要素の導入により、通常プレイでもやりこみ方面でもネタ方面でもより遊びやすい進化を遂げた。 **賛否両論点(完全版) -小技の崩しを受けて体勢を崩した際にも、あわせが使えるようになった。 --ストーリーの攻略には大いに役立つ要素なのだが、対人戦では「待ち有利」が決定的になりバランスが崩壊気味になっている。 -テキストが横書きに変更されたことで、「和」の雰囲気が少々薄れている。 --ちなみに横書きテキスト自体は『侍道2』以降も引き継がれている。 **問題点(完全版) -敵があわせを使用してくるようになった。 --本来あわせは「メリットが大きい分扱いが難しい」という性質のアクションなのだが、操作の精度など関係ないCPUが使用するとメリットの部分だけが残ることになってしまい、難易度を無意味に上げてしまっている。~ このあたりは、日本市場と比べより高難易度のゲームが好まれる海外市場向けのバージョンを導入した弊害と言えるだろう。 --しかも、本来あわせを使用できないタイミングでも当たり前のように使ってくる、という理不尽な仕様まである。 --この仕様により、浮かせ技からのコンボは高確率で防がれてしまう。連続技タイプの大技も厳しい。 --そして主にあわせを使ってくるのは政府軍兵士を中心としたザコキャラで、主要キャラは全くと言っていいほど使ってこない。ここまでくると、明らかにプレイヤーへの嫌がらせを目的とした調整と言える。 ---このため、ストーリー終盤の政府軍と戦うイベントは、仲間と力を合わせて強大な敵の大軍団を倒していく熱いイベントのはずが、大量のザコ一人ひとりにいちいち攻撃を防がれるというとてもストレスフルなバトルになってしまっている。 -多くの既存武器で技の削除・統合が行われているが、その基準が不可解。 --「追加武器の技を実装するために技の総数を減らすことが目的で、無計画に削っただけ」と言っても過言ではない変更で、『侍』と比べ単純にできることが少なくなっている。 ---武器によってはこの影響で''習得条件を満たせない技が生まれてしまった。'' ---中には「技が削除された結果、強力なハメ技が暴発のリスクなしに簡単に出せるようになった」という、明らかにまともに調整していないことがわかるようなケースすら存在する。 -ストーリー終了時の侍偏差値表示が廃止された。 --内部計算はしっかり行われており、称号は従来通り表示されるため、オリジナル版をプレイしていればある程度は推測ができる。だが、侍偏差値と無関係な特殊称号を取ってしまうと、侍偏差値がまったくわからなくなってしまう。 -バグこそほぼ一掃されたものの、不評だった仕様に関しては多くが手つかずのまま残されている。 --武器強化が面倒な点はオリジナル版と同様。鍛冶屋の仕様が据え置きなだけでなく、難易度ごとに敵が落とすアイテムのテーブルが変化するようになったことで強化アイテムが入手しづらくなった((前作と異なり、最低難易度の「やさしい」では強化アイテムがほぼ出現しなくなっている。厳密にいうと「強化アイテムの代わりに回復アイテムを落とすようになった」といえる調整になっており、難易度調整という意味では完全に間違っているとも言い切れないが…。))ため、余計に面倒に。 --イベントのスキップやセリフ送りは相変わらずできない。イベントやテキストの追加により、オリジナル版に比べかえってテンポが悪化した箇所もある。 --パッケージの追加要素に「セーブポイントの追加」と書かれているが、実際にはオリジナル版と変わっていない。前述した峠を脱出できるポイントをセーブポイントとして数えたのだろうか? **総評(完全版) 『侍』の面白さをそのままに、さらなる遊び応えを追求したバージョン。廉価版としてリリースするには大盤振る舞いといえるその内容には、一見の価値がある。~ その一方で、『侍』から劣化した点もいくらか見受けられ、"完全版"と題するには少々力不足なのが残念ではある。~ 遊びやすさは確実に向上しているので、オリジナルにこだわりがなければ本作を選ぶことをおすすめする。 ---- *侍道ポータブル 【さむらいどうぽーたぶる】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B001BWUEMK,image)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~| |発売元|スパイク|~| |開発元|ゼロディブ、アクワイア|~| |発売日|2008年9月18日|~| |定価|3,990円(税5%込)|~| |レーティング|CERO:C(15才以上対象)|~| |配信|2009年8月10日/3,000円(税5%込)|~| |廉価版|PSP the Best&br;2013年7月11日/1,800円(税5%込)|~| |判定|なし|~| |ポイント|『完全版』のPSP移植版&br;内容的にはベタ移植+追加要素|~| ---- **概要(ポータブル) 『侍~完全版~』をさらにPSP向けに移植した作品。 **変更点(ポータブル) -アドホック通信によりユーザー間で対戦が行えるアドホック対戦モードの追加。 --またアドホック通信を介してプレイヤー間で刀を交換すると、一部の刀の名前とステータスが変化する。 -オープニングムービーのBGMがアレンジバージョンに変更された。 --特典として旧BGMのオープニングも収録。 -当時発売前であった『侍道3』の映像を特典として収録。 --主人公の容姿にも『侍道3』の主人公のものが追加されている。 -クリア特典で使用できた隠しキャラ「万次」が削除され、代わりに妹守辰政を装備したすずが解禁される。 -オートセーブが抑制され、PS2版ではセーブデータが消されていた場面でもセーブデータが残っており、以前のセーブデータから無事再開できる場面が増えた。 --ゲームオーバーになってもセーブさえしなければ刀を失わずに済むようになった。 -浮かせ技をヒットさせても敵が浮きにくくなり、空中コンボが狙いにくくなった。 -主人公の移動速度が上昇した。 **評価点(ポータブル) -刀消失ペナルティを避けられるようになったため、より安心して周回できるようになった。 **問題点(ポータブル) -『侍』⇒『侍~完全版~』ほどの劇的な追加要素が見当たらず、『完全版』からのさらなる進化を期待すると肩透かしを食らう。 **総評(ポータブル) 刀を失わない救済策や主人公の移動速度上昇などの改善点も見られるが、大部分は『侍~完全版~』と同一。~ テレビを使わずお手軽にプレイしたい場合は本作も選択肢にはなるだろう。 ---- **続編・派生作品 -''『侍道2』(PS2 2003年10月9日発売)'' --ナンバリング第2作。舞台は幕末。本作で好評だったシステムの強化に加え、様々な新要素が追加されている。 --廉価版である『決闘版』にはさらなる追加要素があり、対戦モードも収録。後に本作同様にPSP移植版も発売された。 -''『サムライウエスタン 活劇侍道』(PS2 2005年1月1日発売)'' --シリーズのスピンオフ。舞台は19世紀のアメリカ西部。従来のシリーズと異なりステージクリア型のアクションとなっている。 --「弾き」「かわし」といった新アクションで刀VS銃の戦いを楽しめ、シリーズ初となる成長要素と2人CO-OPが搭載されている。 -''『侍道3』(PS3 2008年11月13日発売 360 2009年2月26日発売)'' --ナンバリング第3作。舞台は戦国時代。「いきなり沙汰システム」によりあらゆる場面で抜刀及び土下座が可能となった。 --後に発売されたPS3廉価版である『3 Plus』には独自の追加要素がある。 -''『[[侍道4]]』(PS3 2011年3月3日発売)'' --ナンバリング第4作。舞台は再び幕末。3つの勢力が登場し、所属するだけでなく寝返り・裏切りが可能。 --廉価版である『4 Plus』には有料DLCが3つ収録されている。詳細は作品ページを参照。 -''『侍道外伝 KATANAKAMI』(PS4/Switch/Win 2020年2月20日発売)'' --8年ぶりの新作となるシリーズのスピンオフ。従来のシリーズと異なり、魑魅魍魎を相手にするアクションRPGとなっている。 --ステージには自動生成ダンジョンが採用されており、ハクスラ要素もある。Win版はSteamでのダウンロード専売。

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