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*ぞくぞくヒーローズ 【ぞくぞくひーろーず】 |ジャンル|振力(フルパワー)RPG|&amazon(B0000645NS)| |対応機種|ゲームボーイカラー(専用)|~| |発売元|メディアファクトリー|~| |開発元|KAZe|~| |発売日|2000年8月4日|~| |定価|5,980円|~| |プレイ人数|1~2人|~| |セーブデータ|3箇所|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -メディアファクトリー(現:KADOKAWA)のゲーム制作部門がゲームボーイ末期にリリースしたロールプレイングゲーム。 -キャラクターデザインは当時[[コロコロコミック>コロコロコミックシリーズ]]で学級王ヤマザキを連載していた樫本学ヴ。&br()その縁かタイアップ漫画もコロコロコミックや小学館の学年誌で連載されるなど、ターゲットを子供に絞ったかのような販売戦略を取っていた。しかしその内容は決して子供向けと侮れない程に作り込まれている。 ---- **ストーリー それは、ある平凡な町の出来事だった。 満天の星空。そこでふたつの光が激突している。 ふたつの光球は接触して町へと落下!そして上空からたくさんの光が流れ星のように町へと降り注いでいった。 翌日、主人公の一平は、家の前にヘンな男が行き倒れになっているのを発見!一平は、男をじいちゃんの研究室に連れていった。 「ワタシ、スペクターは正義の味方デース!宇宙の平和を乱すギャラクタスを倒すためにやってきました。  でも、地球の上で相討ちになったのでーす。そのときに50以上ものブライトパワーが全部なくなってしまいました……!」 ブライトパワーとは超能力を秘めた宇宙の力。それを手に入れると同じ数だけのヒーローになれるという。話を聞いた一平はブライトパワーを集めることを決意した。 その翌朝、町はギャラクタス軍団の怪人たちであふれかえっていた! 一平はパワーアップさせたゲームボーイによって宇宙ヒーロー初心者が着るブライトスーツを着用できるようになった。 これでブライトパワーを集めれば一平もヒーローになれるのだ。 「さあ、ゆくのじゃ!イッペイ!」 一平はブライトパワーをすべて見つけ出せるのか? 今、銀河をかける”ご町内決戦”がはじまる!! (公式ガイドブックより引用) ---- **特徴 -主人公は男の子「一平」と女の子「ミナ」(名前変更可)の二人から選択可能。選ばれなかった方は主人公の幼馴染みとなり、ストーリー等にも若干の変化がある。 -主人公はブライトスーツを着用し「ブライトボーイ/ガール」(名前変更可)に変身((本作では「変身」と書いて「チェンジ」と読む。))できるのだが、更にそこから「ブライトヒーロー」と呼ばれる姿に変身可能。ブライトボーイ/ガールの姿のままではぶっちゃけかなり弱いのだが、ブライトヒーローに変身する事で大きく強化され、怪人と対等に戦えるようになる。 -ブライトヒーローは複数存在し、その数実に70種類。条件を満たせば好きなブライトヒーローに変身できる。その条件とは、ブライトヒーローに対応した「ブライトパワー」を手に入れる事。 --ブライトパワーは様々なアイテムに宿っており、それを鑑定する事で入手できる。宿っているアイテムとブライトパワー、ブライトヒーローは頭文字が共通しているという特徴があり、例えばアイテムの「&bold(){う}んどうぐつ」を鑑定すると「&bold(){う}」のブライトパワーを入手でき、「&bold(){ウ}ルトランナー」というブライトヒーローに変身できるようになる。ちなみに同じ頭文字のブライトヒーローは存在しない。 --ブライトヒーローと怪人には「エレキ」「バイオ」「リキッド」「メタル」「フレア」「スピード」の六つの属性がありそれぞれ優劣がある。ちなみに前述のウルトランナーはスピードである。 -怪人とエンカウントすると、ブライトヒーローに変身して戦う事になるが、&bold(){その変身方法こそが本作の最大の特徴}。 --本作には「フルチェンジャー」と呼ばれる周辺機器が同梱されており、これをリアルに3回振って各々のブライトヒーローの頭文字に対応した「宇宙文字」を描いて、そのデータをゲームボーイカラーに送信する事で変身できる…というシステムになっているのだ。 ---宇宙文字はタテ、ヨコ、ナナメの8方向矢印×3画の組み合わせで表される。例えば「う」の宇宙文字は「↓↑↓」。下、上、下の順にフルチェンジャーを振り、送信すればウルトランナーに変身できるという仕組み。 --受信はゲームボーイカラーの赤外線機能を用いて行われる。故に本作はゲームボーイアドバンスやゲームボーイプレイヤーなどでは遊べない。ゲーム自体は起動するのだが、チュートリアルで変身が必須なので詰む。 --変身は戦闘中に何度でも可能だが、最初のターン以外は変身に一ターンを費やす。また、戦闘中に二回同じヒーローに変身する事はできない。 --HPがピンチの時に別のヒーローに変身するとある程度HPが回復する為、沢山ブライトパワーを集めておけばその分戦闘が有利になる。 --各属性ごとに変身回数が記録され、100回変身した属性のブライトボーイ/ガール専用必殺技を習得可能。これらを使えば、一応変身せずとも怪人と互角に戦う事もできる。 --戦闘はオーソドックスな1VS1の対決。変身によるHP回復が前提なのか、全体的に敵はやや強めに設定されている。 --本作の怪人の正体はギャラクタスによって姿を変えられた市民や動物である。怪人を倒すと助けたお礼としてお金がもらえるが、未成年はあまりお金をくれず、犬やゴキブリといった人間以外のキャラはお金を全くくれない。 -シナリオをある程度進めるとプレイヤー二人で対戦もできる。要通信ケーブル。 --通信対戦ではアイテムが使えず、一部の必殺技に使用不可、もしく追加効果が発生しないものが存在する。逆に通信対戦専用の必殺技も存在する。 ---- **評価点 -フルチェンジャーの操作による(リアル)アクションゲームとRPGが上手い具合に融合している。 --特に変身によるHP回復は大変重要であり、窮地で変身を失敗できないという緊張感はなかなかのもの。 -樫本学ヴによる個性豊かで豊富なキャラクター達。 --ありがちなカッコイイヒーローだけでなく、かわいらしい小動物の様なヒーローやどこかギャグっぽいヒーローも多く、果てには実在の人物をモデルにしたもの((「流し台」をモチーフにしたヒーロー……なのだが、その風貌や名乗り台詞はどう見ても某野球監督が元ネタと一発で分かる代物である。いわゆるひとつのナニですネ!))まで存在する。主人公の性別によって姿が変わるヒーローも。 --過去に氏の作品を読んでいる人にとってはどこか既視感を覚える場面もあるが、秀逸なデザインも多くプレイヤーを飽きさせない。 --ヒーロー達のステータスは千差万別である。「ゴリラ」のヒーローは攻撃が高かったり、「ダイヤモンド」のヒーローは防御が高かったりと特徴が分かりやすい。各ステータスが低く一見役立たずに見えるヒーローもいるが、実はレベルアップ時にステータスが伸びやすいという特徴がある。 --ヒーローには全員分の名乗り台詞が用意されている。それだけなら特筆すべき評価点とはならないが、例えば上述したウルトランナーだと… >&bold(){う}ちゅうをかけるはやいやつ! >&bold(){う}なるてあしのそのちから! >&bold(){う}るさいてきをはねとばし! >&bold(){ウ}ルトランナー! ダッシュかいし!! ---…といった具合の「頭文字がヒーロー名のそれと共通する名乗り台詞」が、日本語の仮名から拗音と「を」を除いた70通り分用意されているのだ。台詞の文章を考案したスタッフの苦労は容易に想像できるだろう。 ---流石に濁音・半濁音の文字になってくると少々苦しい文章も多い((頭文字がヒーロー名のそれと同一の「自身の必殺技」を台詞に含めているヒーローが何体か存在する。またペットをモチーフにした「ぢ」「づ」のヒーローについては、名乗り台詞というよりもそのペットの鳴き声と表現した方が正しい))が、文章作成の難度を考えれば多少は目を瞑るべきか。 -ゲーム中のドット絵のレベルも高い。 --全てのブライトヒーローや怪人の立ち絵はもちろん、顔グラはモブキャラを含めた全員分が用意されている。 ---犬や猫、ゴキブリ、果ては藪にすら専用の顔グラが用意されているゲームというのは、本作を含めても片手で足りる程度の数しか無い筈である。%%というかそんな作品がそうそうあってたまるか。%% -エンカウントのON/OFFをアイテム無しで自由に切り替えられる。 --主人公がブライトボーイの姿の時のみ怪人とエンカウントする仕様になっている。散策したい時やピンチの時はブライトボーイの姿を解除しておけば絶対にエンカウントすることは無い為、快適にマップを探索できる。 --ダンジョンなどの危険なマップにいる時は自動でブライトボーイに変身してしまい解除も不可能となるが、本作ではランダムエンカウントした敵からは100%逃走できるのであまり問題にはならない。 -ネタバレ回避の為詳細な説明は避けるが、ストーリーも奥が深く面白い。 --ラスボスのギャラクタスはどこか間が抜けており、時折ギャグシーンを挟みつつシナリオが進行していく。所謂コロコロの冒険ギャグ漫画の様なノリが続くわけだが、とにかく主要登場人物全員のキャラが濃く、所謂「空気」なキャラは一人も存在していない。 ---- **問題点 -フルチェンジャーをリアルで振らなければならない。 --ある意味最大の問題点。この性質上、携帯ゲーム機にもかかわらず屋外で遊ぶのがためらわれる。 --更にフルチェンジャーを振る度に「ピッ」「ピッ」「ピロリピロリ」と大きめの電子音が鳴る為、自宅におけるプレイでも中々にやかましい。せめて音量調節ができれば……。 --条件を満たせばフルチェンジャー無しでも戦闘中1回だけ、事前に設定した任意のヒーローに変身可能なシステムも存在するが、その条件というのが「特定の場所で、そのヒーローに変身する為の入力を10回連続で成功させる」というもの。どうあがいてもフルチェンジャー必須である。 -フルチェンジャーの仕様が原因で、事実上ゲームボーイカラーでしか遊べない作品である事。 --特徴の項目でも述べた通り、GBAやGBプレーヤーだと変身できず一部イベントの進行が不可能。 //幸いにしてゲームボーイカラーは相当数普及しており、中古品の入手を厭わないならばプレイ環境を整えるのは容易ではある。 -フルチェンジャーでのナナメの入力がかなり難しい。 --正確に振ったつもりでもタテやヨコになってしまい、変身に失敗したり想定外のヒーローに変身してしまったり……という事態がしばしば発生する。 --これを見越してか、ナナメ入力が必要なヒーローは強力なものが多い。中でも作中で最強のヒーローと称される「ぽ」のヒーローは唯一ナナメ入力が3回必要である。 -鑑定が面倒。 --アイテムを手に入れたら、いちいちじいちゃんの家に戻って一個ずつアイテム鑑定しなければならない。しかも鑑定に少し時間がかかる。 --どのアイテムにパワーが宿っているかのヒントが少ない為、結局ひたすら往復してしらみつぶしに鑑定し続ける事になる。 -一部アイテムの説明が不親切。 --例えば「コロコロコミック」は戦闘中に使うと100%の確率で子供系の敵の行動を封じるといった具合の効果を有しているのだが、ゲーム内ではアイテム使用時の具体的な効果についての説明が存在していない。基本的には自分で使って試すか、若しくは攻略本・攻略サイトなど外部の情報を頼るしかアイテムの効果を知る術が無いのである。 ---一部のアイテムについては、モブキャラに話しかけた際ヒントらしき台詞を聞ける事もあるが…。 --また「れいぞうこ」など、値段が高い割に全く使い道が無い地雷アイテムも幾つか存在している。 //確かアイテムの解説は精々「なにかのやくにたつかもしれない(たつのかなぁ?)」という文章程度だったはず -シナリオ展開の都合による「詰みに陥りやすい」ポイントの存在。 --具体的には、比較的序盤に発生する「隕石により商店街が壊滅する」というイベント。商店街ではブライトパワーの宿ったアイテムが大量に販売されており、もしそれらをあまり収集していないうちにシナリオを進行させてしまうと、少数のヒーローでイベントクリアを目指さなくてはならなくなる。 --イベントをクリアすれば商店街は復活するものの、このイベント自体の難易度が比較的高め。ヒーローが少数だった場合余計にクリアが難しい。 -入手時期が限定されているブライトパワーが存在する。 --救済措置もなく、入手しないままゲームを進めてしまうとそのパワーは同じデータでは二度と手に入らない。しかも真のエンディングを見るためには全70種のブライトパワーをコンプリートしなくてはならない為、データを作り直すしかなくなる。 #region(入手期間が限られるパワーについての説明。ネタバレ注意) -上述したウルトランナーがその筆頭。「うんどうぐつ」は序盤の比較的短い期間しか入手イベントが発生しない。 -商店街壊滅イベントの最中しか入手できないパワーが2種類もある。しかも片方は戦闘発生のオマケ付き。 -特定の時期に発生するサブイベントでパワーを入手できるのだが、この時シナリオを進めてしまうとサブイベントが消滅してしまい、そのパワーを入手できなくなってしまう。更にはわらしべイベントも進行不可能になる((此方は救済措置が存在するが、99,990円という大金が必要))。 --厄介な事にこのサブイベントが発生する時点では、拠点の宇宙船((序盤のイベントクリア後に使用可能となる))へ移動するだけでシナリオが進行してしまう。 -「ぽ」のヒーローを入手する為には「宇宙文字を使用したクイズ」に全問正解する必要がある。後半の3問以外は期間限定であり、1問でもすっぽかせば入手不可能になってしまう。 --後半3問のクイズは挑めるようになればラスボス戦まで消滅しないが、最後の最後で宇宙文字の規則性から外れた「とある文字」の入力を求められてしまう。一応作中に入力方法のヒントはあるものの、聞けるのはよりにもよって隠しボス(当然ラスボスより強い)に勝利した後。 #endregion -期間限定ではないものの、入手に手間が掛かるブライトパワーも幾つか存在している。 #region(入手に手間が掛かるパワーについての説明。ネタバレ注意) -「けいたいでんわ」を鑑定すればブライトパワーが手に入るが、序盤の短い期間、若しくは最終盤に登場する怪人が偶に落とす以外の入手方法が存在しない。 -店で売られている「なにかのにく」「やさい」「くだもの」を鑑定すると、それぞれに設定された4種類のアイテムのどれかにランダムで変化する。 --このランダムというのが曲者。コンプリートの為には「なにかのにく」から変化する「マトン」と、「やさい」から変化する「セロリ」を引き当てなければならないのだが、リアルラック次第では時間と手間とゲーム内のお金を大いに消費してしまう可能性がある。 --ハズレのアイテムでもMP回復用途に使えるのがせめてもの救いか。また「くだもの」を鑑定して入手可能なアイテムにはブライトパワーが宿っておらず、クリアを目指すだけなら鑑定の必要は無い。~ %%というか子供目線では判別し難いかもしれない肉類はともかく、野菜と果物は態々鑑定せずとも何の種類か一目瞭然だろうに。%% -ペット(と、それらに宿ったブライトパワー)を入手するサブイベントがあるのだが、このイベントの進め方がゲーム中では全くのノーヒント。 --イベントを進めるためには「ぢ」「づ」の宇宙文字を入力しなければならない。宇宙文字には規則性((「だ」の宇宙文字を90度時計回りに回転させると「ぢ」の宇宙文字になる。))がある為、イベントの進め方を知る事さえできれば後は何とかなるのだが…。 #endregion ---- **総評 フルチェンジャーを振ってヒーローに変身するというその恰好は、まさに子供たちが夢見たヒーローものの変身シーンに近い。~ しかもゲームを通して実際に変身ができる為、ある意味では子供たちの夢を叶えた作品と言えなくもない。 故にターゲットは子供に絞らざるを得なくなったが、ゲーム性やストーリーの奥深さから今も続編を待ち続けているファンは多い。 ---- **余談 -本作は続編の発売が予定されていたが、10年以上経った今でも発売していない。 --ゲーム中で続編への伏線を大量に張っており、公式ガイドブックでも発売を明言していたが結局実現しなかった。 --伏線の一つとして、本作では入手できない拗音(「きゃ」など)を用いたブライトパワーが存在する事がゲーム終盤で判明する。フルチェンジャー内にも既に宇宙文字のデータが入っていたようで、全ヒーローをコンプリートしているときに誤った宇宙文字を変身で用いると「そのもじはまだみつけていない! すべてのもじをあつめたはずなのになぜだろう…?」という意味深なメッセージが表示される。 --何らかの形で本作の復刻を求める声も多いが、その仕様および手間隙の都合上絶望的と思われる。ニンテンドー3DSであれば何気なく復活した赤外線ポートを活用するなどの手段が無い訳ではなかったのだが…。 -フルチェンジャーを同梱し忘れたパッケージが混ざっていたらしい。 --箱の外からも見えるのですぐ気付きそうなものだが、「ゲームに疎い親が子供へのプレゼントとしてよく確認せずに買ってしまった」という事例もある。 -本作発売と同時期にエニックスから似たようなコンセプトを持つ『コマンドマスター』というゲームが発売されている。 --こちらはカートリッジに動きセンサーを搭載しており、ゲームボーイを縦横に動かして変身コマンドを入力する。 -発売当時、コロコロコミックと小学三年生・小学四年生でコミカライズが連載されていた。どちらも単行本化はされていない。 --コロコロコミック版は、キャラクターデザインを務めた樫本学ヴ本人によって描かれていた。 ---ゲーム本編はギャグを挟みつつもキチンと勧善懲悪ヒーローもののシナリオをやっていたのに対し、こちらは最初から最終決戦に至るまでコロコロらしいギャグ全開で物語が進行する。ちなみにラモズやヤマザキなど作者の他作品のキャラが登場していることも。 ---ちなみに本作中盤に「ギャラコミック」という妙にカッコイイ怪人が登場するのだが、このキャラ自体&bold(){樫本先生ご本人がギャラクタスによって姿を変えられてしまった存在}という設定があったり……。 --小学三年生・小学四年生版の作者はまつやまいぐさ氏。
*ぞくぞくヒーローズ 【ぞくぞくひーろーず】 |ジャンル|振力(フルパワー)RPG|&amazon(B0000645NS)| |対応機種|ゲームボーイカラー(専用)|~| |発売元|メディアファクトリー|~| |開発元|KAZe|~| |発売日|2000年8月4日|~| |定価|5,980円|~| |プレイ人数|1~2人|~| |セーブデータ|3箇所|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -メディアファクトリー(現:KADOKAWA)のゲーム制作部門がゲームボーイ末期にリリースしたロールプレイングゲーム。 -キャラクターデザインは当時[[コロコロコミック>コロコロコミックシリーズ]]で学級王ヤマザキを連載していた樫本学ヴ。&br()その縁かタイアップ漫画もコロコロコミックや小学館の学年誌で連載されるなど、ターゲットを子供に絞ったかのような販売戦略を取っていた。しかしその内容は決して子供向けと侮れない程に作り込まれている。 ---- **ストーリー それは、ある平凡な町の出来事だった。 満天の星空。そこでふたつの光が激突している。 ふたつの光球は接触して町へと落下!そして上空からたくさんの光が流れ星のように町へと降り注いでいった。 翌日、主人公の一平は、家の前にヘンな男が行き倒れになっているのを発見!一平は、男をじいちゃんの研究室に連れていった。 「ワタシ、スペクターは正義の味方デース!宇宙の平和を乱すギャラクタスを倒すためにやってきました。  でも、地球の上で相討ちになったのでーす。そのときに50以上ものブライトパワーが全部なくなってしまいました……!」 ブライトパワーとは超能力を秘めた宇宙の力。それを手に入れると同じ数だけのヒーローになれるという。話を聞いた一平はブライトパワーを集めることを決意した。 その翌朝、町はギャラクタス軍団の怪人たちであふれかえっていた! 一平はパワーアップさせたゲームボーイによって宇宙ヒーロー初心者が着るブライトスーツを着用できるようになった。 これでブライトパワーを集めれば一平もヒーローになれるのだ。 「さあ、ゆくのじゃ!イッペイ!」 一平はブライトパワーをすべて見つけ出せるのか? 今、銀河をかける”ご町内決戦”がはじまる!! (公式ガイドブックより引用) ---- **特徴 -主人公は男の子「一平」と女の子「ミナ」(名前変更可)の二人から選択可能。選ばれなかった方は主人公の幼馴染みとなり、ストーリー等にも若干の変化がある。 -主人公はブライトスーツを着用し「ブライトボーイ/ガール」(名前変更可)に変身((本作では「変身」と書いて「チェンジ」と読む。))できるのだが、更にそこから「ブライトヒーロー」と呼ばれる姿に変身可能。ブライトボーイ/ガールの姿のままではぶっちゃけかなり弱いのだが、ブライトヒーローに変身する事で大きく強化され、怪人と対等に戦えるようになる。 -ブライトヒーローは複数存在し、その数実に70種類。条件を満たせば好きなブライトヒーローに変身できる。その条件とは、ブライトヒーローに対応した「ブライトパワー」を手に入れる事。 --ブライトパワーは様々なアイテムに宿っており、それを鑑定する事で入手できる。宿っているアイテムとブライトパワー、ブライトヒーローは頭文字が共通しているという特徴があり、例えばアイテムの「&bold(){う}んどうぐつ」を鑑定すると「&bold(){う}」のブライトパワーを入手でき、「&bold(){ウ}ルトランナー」というブライトヒーローに変身できるようになる。ちなみに同じ頭文字のブライトヒーローは存在しない。 --ブライトヒーローと怪人には「エレキ」「バイオ」「リキッド」「メタル」「フレア」「スピード」の六つの属性がありそれぞれ優劣がある。ちなみに前述のウルトランナーはスピードである。 -怪人とエンカウントすると、ブライトヒーローに変身して戦う事になるが、&bold(){その変身方法こそが本作の最大の特徴}。 --本作には「フルチェンジャー」と呼ばれる周辺機器が同梱されており、これをリアルに3回振って各々のブライトヒーローの頭文字に対応した「宇宙文字」を描いて、そのデータをゲームボーイカラーに送信する事で変身できる…というシステムになっているのだ。 ---宇宙文字はタテ、ヨコ、ナナメの8方向矢印×3画の組み合わせで表される。例えば「う」の宇宙文字は「↓↑↓」。下、上、下の順にフルチェンジャーを振り、送信すればウルトランナーに変身できるという仕組み。 --受信はゲームボーイカラーの赤外線機能を用いて行われる。故に本作はゲームボーイアドバンスやゲームボーイプレイヤーなどでは遊べない。ゲーム自体は起動するのだが、チュートリアルで変身が必須なので詰む。 --変身は戦闘中に何度でも可能だが、最初のターン以外は変身に一ターンを費やす。また、戦闘中に二回同じヒーローに変身する事はできない。 --HPがピンチの時に別のヒーローに変身するとある程度HPが回復する為、沢山ブライトパワーを集めておけばその分戦闘が有利になる。 --各属性ごとに変身回数が記録され、100回変身した属性のブライトボーイ/ガール専用必殺技を習得可能。これらを使えば、一応変身せずとも怪人と互角に戦う事もできる。 --戦闘はオーソドックスな1VS1の対決。変身によるHP回復が前提なのか、全体的に敵はやや強めに設定されている。 --本作の怪人の正体はギャラクタスによって姿を変えられた市民や動物である。怪人を倒すと助けたお礼としてお金がもらえるが、未成年はあまりお金をくれず、犬やゴキブリといった人間以外のキャラはお金を全くくれない。 -シナリオをある程度進めるとプレイヤー二人で対戦もできる。要通信ケーブル。 --通信対戦ではアイテムが使えず、一部の必殺技に使用不可、もしく追加効果が発生しないものが存在する。逆に通信対戦専用の必殺技も存在する。 ---- **評価点 -フルチェンジャーの操作による(リアル)アクションゲームとRPGが上手い具合に融合している。 --特に変身によるHP回復は大変重要であり、窮地で変身を失敗できないという緊張感はなかなかのもの。 -樫本学ヴによる個性豊かで豊富なキャラクター達。 --ありがちなカッコイイヒーローだけでなく、かわいらしい小動物の様なヒーローやどこかギャグっぽいヒーローも多く、果てには実在の人物をモデルにしたもの((「流し台」をモチーフにしたヒーロー……なのだが、その風貌や名乗り台詞はどう見ても某野球監督が元ネタと一発で分かる代物である。いわゆるひとつのナニですネ!))まで存在する。主人公の性別によって姿が変わるヒーローも。 --過去に氏の作品を読んでいる人にとってはどこか既視感を覚える場面もあるが、秀逸なデザインも多くプレイヤーを飽きさせない。 --ヒーロー達のステータスは千差万別である。「ゴリラ」のヒーローは攻撃が高かったり、「ダイヤモンド」のヒーローは防御が高かったりと特徴が分かりやすい。各ステータスが低く一見役立たずに見えるヒーローもいるが、実はレベルアップ時にステータスが伸びやすいという特徴がある。 --ヒーローには全員分の名乗り台詞が用意されている。それだけなら特筆すべき評価点とはならないが、例えば上述したウルトランナーだと… >&bold(){う}ちゅうをかけるはやいやつ! >&bold(){う}なるてあしのそのちから! >&bold(){う}るさいてきをはねとばし! >&bold(){ウ}ルトランナー! ダッシュかいし!! ---…といった具合の「頭文字がヒーロー名のそれと共通する名乗り台詞」が、日本語の仮名から拗音と「を」を除いた70通り分用意されているのだ。台詞の文章を考案したスタッフの苦労は容易に想像できるだろう。 ---流石に濁音・半濁音の文字になってくると少々苦しい文章も多い((頭文字がヒーロー名のそれと同一の「自身の必殺技」を台詞に含めているヒーローが何体か存在する。またペットをモチーフにした「ぢ」「づ」のヒーローについては、名乗り台詞というよりもそのペットの鳴き声と表現した方が正しい))が、文章作成の難度を考えれば多少は目を瞑るべきか。 -ゲーム中のドット絵のレベルも高い。 --全てのブライトヒーローや怪人の立ち絵はもちろん、顔グラはモブキャラを含めた全員分が用意されている。 ---犬や猫、ゴキブリ、果ては藪にすら専用の顔グラが用意されているゲームというのは、本作を含めても片手で足りる程度の数しか無い筈である。%%というかそんな作品がそうそうあってたまるか。%% -エンカウントのON/OFFをアイテム無しで自由に切り替えられる。 --主人公がブライトボーイの姿の時のみ怪人とエンカウントする仕様になっている。散策したい時やピンチの時はブライトボーイの姿を解除しておけば絶対にエンカウントすることは無い為、快適にマップを探索できる。 --ダンジョンなどの危険なマップにいる時は自動でブライトボーイに変身してしまい解除も不可能となるが、本作ではランダムエンカウントした敵からは100%逃走できるのであまり問題にはならない。 -ネタバレ回避の為詳細な説明は避けるが、ストーリーも奥が深く面白い。 --ラスボスのギャラクタスはどこか間が抜けており、時折ギャグシーンを挟みつつシナリオが進行していく。所謂コロコロの冒険ギャグ漫画の様なノリが続くわけだが、とにかく主要登場人物全員のキャラが濃く、所謂「空気」なキャラは一人も存在していない。 ---- **問題点 -フルチェンジャーをリアルで振らなければならない。 --ある意味最大の問題点。この性質上、携帯ゲーム機にもかかわらず屋外で遊ぶのがためらわれる。 --更にフルチェンジャーを振る度に「ピッ」「ピッ」「ピロリピロリ」と大きめの電子音が鳴る為、自宅におけるプレイでも中々にやかましい。せめて音量調節ができれば……。 --条件を満たせばフルチェンジャー無しでも戦闘中1回だけ、事前に設定した任意のヒーローに変身可能なシステムも存在するが、その条件というのが「特定の場所で、そのヒーローに変身する為の入力を10回連続で成功させる」というもの。どうあがいてもフルチェンジャー必須である。 -フルチェンジャーの仕様が原因で、事実上ゲームボーイカラーでしか遊べない作品である事。 --特徴の項目でも述べた通り、GBAやGBプレーヤーだと変身できず一部イベントの進行が不可能。 //幸いにしてゲームボーイカラーは相当数普及しており、中古品の入手を厭わないならばプレイ環境を整えるのは容易ではある。 -フルチェンジャーでのナナメの入力がかなり難しい。 --正確に振ったつもりでもタテやヨコになってしまい、変身に失敗したり想定外のヒーローに変身してしまったり……という事態がしばしば発生する。 --これを見越してか、ナナメ入力が必要なヒーローは強力なものが多い。中でも作中で最強のヒーローと称される「ぽ」のヒーローは唯一ナナメ入力が3回必要である。 -鑑定が面倒。 --アイテムを手に入れたら、いちいちじいちゃんの家に戻って一個ずつアイテム鑑定しなければならない。しかも鑑定に少し時間がかかる。 --どのアイテムにパワーが宿っているかのヒントが少ない為、結局ひたすら往復してしらみつぶしに鑑定し続ける事になる。 -一部アイテムの説明が不親切。 --例えば「コロコロコミック」は戦闘中に使うと100%の確率で子供系の敵の行動を封じるといった具合の効果を有しているのだが、ゲーム内ではアイテム使用時の具体的な効果についての説明が存在していない。基本的には自分で使って試すか、若しくは攻略本・攻略サイトなど外部の情報を頼るしかアイテムの効果を知る術が無いのである。 ---一部のアイテムについては、モブキャラに話しかけた際ヒントらしき台詞を聞ける事もあるが…。 --また「れいぞうこ」など、値段が高い割に全く使い道が無い地雷アイテムも幾つか存在している。 //確かアイテムの解説は精々「なにかのやくにたつかもしれない(たつのかなぁ?)」という文章程度だったはず -シナリオ展開の都合による「詰みに陥りやすい」ポイントの存在。 --具体的には、比較的序盤に発生する「隕石により商店街が壊滅する」というイベント。商店街ではブライトパワーの宿ったアイテムが大量に販売されており、もしそれらをあまり収集していないうちにシナリオを進行させてしまうと、少数のヒーローでイベントクリアを目指さなくてはならなくなる。 --イベントをクリアすれば商店街は復活するものの、このイベント自体の難易度が比較的高め。ヒーローが少数だった場合余計にクリアが難しい。 -入手時期が限定されているブライトパワーが存在する。 --救済措置もなく、入手しないままゲームを進めてしまうとそのパワーは同じデータでは二度と手に入らない。しかも真のエンディングを見るためには全70種のブライトパワーをコンプリートしなくてはならない為、データを作り直すしかなくなる。 #region(入手期間が限られるパワーについての説明。ネタバレ注意) -上述したウルトランナーがその筆頭。「うんどうぐつ」は序盤の比較的短い期間しか入手イベントが発生しない。 -商店街壊滅イベントの最中しか入手できないパワーが2種類もある。しかも片方は戦闘発生のオマケ付き。 -特定の時期に発生するサブイベントでパワーを入手できるのだが、この時シナリオを進めてしまうとサブイベントが消滅してしまい、そのパワーを入手できなくなってしまう。更にはわらしべイベントも進行不可能になる((此方は救済措置が存在するが、99,990円という大金が必要))。 --厄介な事にこのサブイベントが発生する時点では、拠点の宇宙船((序盤のイベントクリア後に使用可能となる))へ移動するだけでシナリオが進行してしまう。 -「ぽ」のヒーローを入手する為には「宇宙文字を使用したクイズ」に全問正解する必要がある。後半の3問以外は期間限定であり、1問でもすっぽかせば入手不可能になってしまう。 --後半3問のクイズは挑めるようになればラスボス戦まで消滅しないが、最後の最後で宇宙文字の規則性から外れた「とある文字」の入力を求められてしまう。一応作中に入力方法のヒントはあるものの、聞けるのはよりにもよって隠しボス(当然ラスボスより強い)に勝利した後。 #endregion -期間限定ではないものの、入手に手間が掛かるブライトパワーも幾つか存在している。 #region(入手に手間が掛かるパワーについての説明。ネタバレ注意) -「けいたいでんわ」を鑑定すればブライトパワーが手に入るが、序盤の短い期間、若しくは最終盤に登場する怪人が偶に落とす以外の入手方法が存在しない。 -店で売られている「なにかのにく」「やさい」「くだもの」を鑑定すると、それぞれに設定された4種類のアイテムのどれかにランダムで変化する。 --このランダムというのが曲者。コンプリートの為には「なにかのにく」から変化する「マトン」と、「やさい」から変化する「セロリ」を引き当てなければならないのだが、リアルラック次第では時間と手間とゲーム内のお金を大いに消費してしまう可能性がある。 --ハズレのアイテムでもMP回復用途に使えるのがせめてもの救いか。また「くだもの」を鑑定して入手可能なアイテムにはブライトパワーが宿っておらず、クリアを目指すだけなら鑑定の必要は無い。~ %%というか子供目線では判別し難いかもしれない肉類はともかく、野菜と果物は態々鑑定せずとも何の種類か一目瞭然だろうに。%% -ペット(と、それらに宿ったブライトパワー)を入手するサブイベントがあるのだが、このイベントの進め方がゲーム中では全くのノーヒント。 --イベントを進めるためには「ぢ」「づ」の宇宙文字を入力しなければならない。宇宙文字には規則性((「だ」の宇宙文字を90度時計回りに回転させると「ぢ」の宇宙文字になる。))がある為、イベントの進め方を知る事さえできれば後は何とかなるのだが…。 #endregion ---- **総評 フルチェンジャーを振ってヒーローに変身するというその恰好は、まさに子供たちが夢見たヒーローものの変身シーンに近い。~ しかもゲームを通して実際に変身ができる為、ある意味では子供たちの夢を叶えた作品と言えなくもない。 故にターゲットは子供に絞らざるを得なくなったが、ゲーム性やストーリーの奥深さから今も続編を待ち続けているファンは多い。 ---- **余談 -本作は続編の発売が予定されていたが、発売されることはなかった。 --ゲーム中で続編への伏線を大量に張っており、公式ガイドブックでも発売を明言していたが結局実現しなかった。 --伏線の一つとして、本作では入手できない拗音(「きゃ」など)を用いたブライトパワーが存在する事がゲーム終盤で判明する。フルチェンジャー内にも既に宇宙文字のデータが入っていたようで、全ヒーローをコンプリートしているときに誤った宇宙文字を変身で用いると「そのもじはまだみつけていない! すべてのもじをあつめたはずなのになぜだろう…?」という意味深なメッセージが表示される。 ---シナリオを担当した三条陸氏の著書『三条陸 HERO WORKS』によれば、次世代ハードのゲームボーイアドバンスに赤外線受光部が存在しないことがわかり、シリーズ化自体ができなくなったためとのこと。 --何らかの形で本作の復刻を求める声も多いが、その仕様および手間隙の都合上絶望的と思われる。ニンテンドー3DSであれば何気なく復活した赤外線ポートを活用するなどの手段が無い訳ではなかったのだが…。 -フルチェンジャーを同梱し忘れたパッケージが混ざっていたらしい。 --箱の外からも見えるのですぐ気付きそうなものだが、「ゲームに疎い親が子供へのプレゼントとしてよく確認せずに買ってしまった」という事例もある。 -本作発売と同時期にエニックスから似たようなコンセプトを持つ『コマンドマスター』というゲームが発売されている。 --こちらはカートリッジに動きセンサーを搭載しており、ゲームボーイを縦横に動かして変身コマンドを入力する。 -発売当時、コロコロコミックと小学三年生・小学四年生でコミカライズが連載されていた。どちらも単行本化はされていない。 --コロコロコミック版は、キャラクターデザインを務めた樫本学ヴ本人によって描かれていた。 ---ゲーム本編はギャグを挟みつつもキチンと勧善懲悪ヒーローもののシナリオをやっていたのに対し、こちらは最初から最終決戦に至るまでコロコロらしいギャグ全開で物語が進行する。ちなみにラモズやヤマザキなど作者の他作品のキャラが登場していることも。 ---ちなみに本作中盤に「ギャラコミック」という妙にカッコイイ怪人が登場するのだが、このキャラ自体&bold(){樫本先生ご本人がギャラクタスによって姿を変えられてしまった存在}という設定があったり……。 --小学三年生・小学四年生版の作者はまつやまいぐさ氏。

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