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//文章量の割に目次が長く見辛くなってしまっていたため、小見出し(***)を普通の太字に変更(2017/10/5) //編集の注意点:『魔法使いの弟子』はディズニーの作品名ではなく使用された楽曲の名前で、作品名は『ファンタジア』(1940)。 *キングダム ハーツ 3D [ドリーム ドロップ ディスタンス] 【きんぐだむ はーつ どりーむ どろっぷ でぃすたんす】 |ジャンル|アクションRPG|CENTER:&image(https://img.atwikiimg.com/www26.atwiki.jp/gcmatome/attach/4551/2320/kh3dpackage.jpg,width=170)&image(KH3ds.jpg,width=170)&image(10thbox.jpg,width=170)| //パッケージ画像が死んでいたのでURLを変更(2017/10/5) |対応機種|ニンテンドー3DS|~| |発売・開発元|スクウェア・エニックス|~| |発売日|2012年3月29日|~| |定価|通常版:6,090円&br()3DS同梱版:21,090円&br()10th Anniversary Box:15,000円&br;(全て税別)|~| |プレイ人数|1~2人|~| |セーブデータ|2個|~| |レーティング|CERO:A(全年齢対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|キングダム ハーツシリーズ第7作目&br;新要素は概ね高評価&br;ただしドロップシステムは賛否両論|~| |>|>|CENTER:''[[キングダム ハーツシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- &font(16,b){ストーリー} //見づらくなるだけなので余計な色装飾は控えなさい >''闇は光となり、光は闇に堕ちる。''~ ~ マスター・ゼアノートは、天才的なキーブレードマスターであった。~ その姿を幾度も変えさせて光を守護するキーブレード使いたちの前に立ちはだかった。~ だが、まだ終っていない――~ ~ 我々には、脅威に立ち向かう準備が必要だ。そこでソラとリク、二人にはキーブレードマスター承認試験を受けてもらいたい。~ ~ 眠りの鍵穴を開くことで、新たな力を身につけるとともに、眠りに閉ざされた世界の開放にもなるだろう。~ 純粋な光の数と等しく、''7つ''の眠りの鍵穴を開放し、再びこの地に戻ってくることで、マスター承認とする。~ ~ (取扱説明書より) 『[[KHIII>キングダム ハーツIII]]』へと直接つながる、最終決戦への序章となるストーリーが展開される。 ---- **概要 キングダム ハーツ第7作目。開発は『[[キングダム ハーツ バース バイ スリープ]](以下BbS)』のチーム(いわゆる「大阪チーム」)がメインで担当。~ [[初代>キングダム ハーツ]]~『[[II>キングダム ハーツII]]』を手掛けたスタッフ((こちらは「東京チーム」等と呼ばれる。『ディシディア ファイナルファンタジー』を手がけている、こちらも強力なチームだが、後にFFXV等の開発に伴い解体))が『[[ファイナルファンタジーXV]]』の開発に忙しく、代役として抜擢された。~ また、シリーズ10周年記念としてパッケージにはアニバーサリーロゴが入っている。 **内容 -本作の主人公はお馴染み「''ソラ''」だけでなく、過去作でソラの親友・ライバルとしての立ち位置を担ってきたキャラクター「''リク''」がシリーズで初めて本編の主人公となった。((一応、リクが主役となるモード自体はCoMやKHIIのラスボス戦等の前例はある)) --この二人はモードとしては独立しておらず、W主人公として二人のキャラクターを入れ替えながらストーリーを進めていく事になる。 -『トロン:レガシー』『ノートルダムの鐘』『ミッキー・ドナルド・グーフィーの三銃士』『ファンタジア』が新たなディズニー作品のワールドとして登場した。 -『[[すばらしきこのせかい]]』のキャラクターもゲストで登場する。((一見、野村絵であること以外KHとは無関係に見えるが、『キングダム ハーツ チェインオブメモリーズ』の開発元であるジュピターが手掛けた作品という共通点がある。))が、本作ではモーグリ以外のFFキャラは登場しない -本作では夢を喰らう「ドリームイーター」が重要な役割を果たす。善良なものをスピリット、邪悪なものはナイトメアと呼び区別しており、~ 特にナイトメアは、従来シリーズのハートレスに代わる敵となっている。 --同じドリームイーターでもスピリットかナイトメアかで色彩がガラッと変わる。また、片方側しか存在しないものもある。 --ちなみに初回購入特典のARカードを使えば、本編で入手が困難な特別なドリームイーター(計3種)を呼び出せる。 //入手は不可能ではないです。 ---- **特徴 &font(16,b){戦闘システム:デッキコマンド} -『BbS』や『[[キングダム ハーツ Re:コーデッド]]』(以下Re:coded)で使われたものと同じ。詳しくは両記事を参照。 --本作のみの特徴として、コマンドの成長要素は廃された。このため、コマンド同士の掛け合わせなども無くなっており、レアな物については後述のスピリットのリンクアビリティになっている。 &font(16,b){フリーフローアクション} -壁やポールにYボタンを使ったアクションで突っ込むと、操作キャラが光に包まれ、フリーフローアクションに移行する。 --ここでAボタンを押すと、状況に応じて強力なフィニッシュを放つ。 --Bボタンを押せば、更に高く、遠くにジャンプすることが出来る。使いこなせば一見行けそうに無い場所にも楽々と飛び移ることができる。 --更にYボタンを押せば、そこから高速で移動する。大きい敵に突っ込めばブロウオフというアクションで敵を吹き飛ばすことができる。 --ちなみにこれらフリーフローアクションは全てアビリティ扱いであり、ゲーム開始時点で全て所持。一部を除いて強制ではないので外す事も可能。 &font(16,b){リアリティシフト} -特定のオブジェクトに近づいたり、攻撃中に特定条件を満たすとそのオブジェクト・敵にピンク色のマーカーが出る。 -下にスライドするか、X+Aでリアリティシフトが発動できる。ワールドによってギミックは異なり、各ワールドの世界観に合ったものとなっている。 --攻撃の威力としても優秀であり、チャンスがあれば積極的に狙うことで敵を一掃できる。 --ボスへのとどめに使われたりと演出面でも十分に働きを見せている。 &font(16,b){ストーリー・ワールド} -下記の「賛否両論点」に書かれているような複雑な点ばかりが取り沙汰されがちだが、過去作にないほどにシリアス・コメディが入り混じった完成度の高いストーリーである。 -本作のシナリオはソラとリクとの間の「友情」が最前面に押し出されており、特にリクに関しては本作で評価が良い方向に激変したというファンの声も多く聞かれる。 --ディズニーのワールドも原作の雰囲気を再現し、かつソラとリクで別の視点からストーリーを楽しめるようになっており完成度は高い。また、前述の「リアリティシフト」の存在も各ワールドの印象をより強いものとしている。それ故にディズニー由来のボスキャラが少ないのは残念なところ。 ---KH2以来久しぶりの実写映画を元とするワールド「ザ・グリッド」(『トロン:レガシー』)のキャラクターは、KH2の『トロン』から約6年間の劇的な技術の進化を体感できる凄まじくリアルなグラフィックとなっている。 --『[[キングダム ハーツ チェイン オブ メモリーズ]]』(以下CoM)では設定上、リク編では各ワールドのキャラとの交流が皆無だったが、今回はしっかり絡む。良くも悪くも天真爛漫なソラとは違って理知的に関わり、しかしその中でも熱さと正義感を以て行動するリクの姿は新鮮且つ、彼の印象を良い方向に押し上げている。 -本作のマップはフリーフローアクションで飛び回る都合上極めて広く立体的で非常に複雑になっており、久しぶりに探索的要素が強くなっている。 --マップ全域+高度限界までほぼ自由に探索できる為、広域かつ高低様々な場所に宝箱が配置されている。場所によってはざっと回っただけでは発見できないものもあり、コンプを狙うとかなり骨が折れる。 &font(16,b){音楽} -『BbS』の3人体制(下村、関戸、石元)で作曲。 --『すばらしきこのせかい』の人気曲もアレンジされて登場。アレンジの甲斐もあってか世界観からもそこまで浮いていない。 --ボス戦の曲の評価は高い。「L'Impeto Oscuro」や「UNTAMABLE」などが人気曲として挙げられる。 -また、『ファンタジア』のワールドでは無声映画であった原作に合わせ、探索中は「ソラたちの声が出ない」「効果音が楽器の音」という演出がされている(ムービーは普通通り)。 --そこで流れるBGMは原作でも使われたクラシック音楽であり、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」やベートーヴェンの「田園」といった有名曲が惜しみなく収録されている。 --BGMもリアリティシフトの演出を考慮しながらうまく編曲されている。 --凝った演出なのだが、発売当初はバグ騒動のせいでこれもバグだと思ってしまうユーザーもいた((ver1.1のパッチにより現在は致命的なものは解消されている。))。 &font(16,b){新たな仲間・「スピリット」} -本作に登場するモンスター的な存在「ドリームイーター」の中で、主人公らに付き添い、戦闘の手助けをする存在を指す。 --『[[キングダム ハーツ 358/2 Days]]』(以下Days)や『BbS』、『Re:coded』でも一部で復活していたが、全編を通した本格的なパーティ戦闘は実に『KHII』以来となる。 //ジュリアス戦(隠しボス)はソラorリク単体でのバトル。 ''戦闘面'' -ステータスを上げるアビリティはスピリットを連れて行くことによって効果を出す。 --敵の特徴によってスピリットを入れ替えたりと、戦略性のある要素でもある。 -パーティに加わっているスピリットとのリンクゲージが満タンになると、そのスピリットとの連携攻撃(リンク攻撃)ができる。 --ソラのリンク攻撃は『I』や『II』の「しょうかん」や「れんけい」をイメージしたもので、一方リクのリンク攻撃は『BbS』のスタイルチェンジをイメージしたものとなっている。 -なお、スピリットは体力が無くなって戦闘不能になると、30秒のカウントダウンが始まる。この時、近づいてAボタンを連打する事でゲージを溜めて蘇生させることができるが、カウントが0になってしまうと、''そのスピリットは永久に失われる。'' -本作のスピリットは過去作のパーティ戦闘の仲間と比較しても非常に心強い存在。全体的にレベルが上がりやすく、早い内からパーティーに入れていると、ソラやリクよりもレベルが高くなる事がある。 --仕事に粗はあるが、攻撃力が初代のドナルド・グーフィー並みに戻っており、雑魚敵くらいなら放っておいても倒してくれたりする。~ もちろん魔法や特技などでのサポートなども行ってくれる。回復などももちろんだが、特筆すべきは「スピリットロア」。短時間ながらソラ・リクの攻撃力・魔法力を1.5倍にするという強烈な効果を発揮してくれる。 --なお、ネタバレとなるので詳細は伏せるが、ソラとリクでリンクの仕様が違うのはストーリー上必然の設定だったりする。 ''育成面'' -敵を倒すことで手に入る「~の幻想」等の素材(「ドリームピース」と呼ばれる)を一定数集めることで、スピリットを自由に生み出す(「ブリード」する)ことができる。 -リンクポイントを貯めれば「アビリティリンク」でスピリットが持っているアビリティやコマンドを開放できる。 --インターフェース的には『[[ファイナルファンタジーXIII]]』のクリスタリウムに類似している。 -スピリットたちとのふれあい要素も充実。 --様々なおもちゃで遊んだり、食べ物をあげたりできる。他にも突っついたり撫でたりしたり、カメラを使って写真撮影することも可能。 --これらは完全にお遊び、という事ではなくこれによって経験値やリンクポイントを効率よく稼げたり、「相性レベル」や「性格」の変化をもたらす。 --「相性レベル」を上げることによって戦闘中の行動がより賢くなったり、「性格」を変化させることによって戦闘中の行動自体が大きく変化したりとゲーム攻略に直結する要素は多く、戦闘に疲れた武闘派にもスピリットを可愛がりながら進めたい育成派にも満足の仕様。 -初期スピリット「ワンダニャン」や「コウモリバット」を筆頭に、可愛らしいだけでなくどこか妙な魅力を感じるデザインが好評。 --名前は自由に付けられる。本作のドリームイーターのネーミングがいろいろと直球なのはそのためなのだろうか。 &font(16,b){フリックラッシュ} -育てたスピリットを3vs3で戦わせるモード。『CoM』のカードデッキにシステムがよく似ている。 --カードには数字が振り分けられており、カードの数字が大きいほうが弱いほうの行動をブレイクできる。数字は0((後出し最強、先出し最弱のカード。))が無くなった代わりに完全最強の☆が登場した。 --カードを上にスライドすることで攻撃、下にスライドすることで防御ができる。防御が成功すればそのスピリットの必殺技ともいえるカードが手札に追加される。 -相手方のスピリットもなかなかの強敵揃いであり、簡単に活路を見出すことはできない。 --ちなみにここでは様々なFF、すばせかキャラが名前だけとはいえ参戦している。 &font(16,b){リンクポータル} -すれちがい通信で他のプレイヤーにドリームイーターを送受信し、マップ上で特殊なバトルを発生させたり逆に一時的に仲間として戦闘に参加させたりすることができるようになる。 -NPCのリンクポータルもマップ上に配置されている。またレアな素材を入手できるスペシャルポータル、クリア後に強化版ボスと再戦できるシークレットポータルというものも存在。 ---- **評価点 ''縦横無尽のアクション'' -フリーフローアクションによって、高速移動もハイジャンプもお手のもの。シリーズ他作品とは一線を画した爽快感が得られる。 --壁やオブジェクトに突っ込むだけで発動するので、難しい操作も要求されない。 --攻撃力もあるので、アクションに不慣れな人でもこれを使えばそれなりに見栄えもよく、安定して戦える。 --本作のマップはかなり広めに作られており、宝箱なども複雑な配置をされているが、移動手段がこのように強力であるため探索の楽しみもある。 --狭い路地なら壁を次々と蹴って高速移動することができたりと、爽快感は満点。 ''スピリットを育成し共闘する楽しみ'' -スピリットも単なる仲間に留まらず、「強化する事で自分自身も強くなる」事や、フリックラッシュによるミニゲームなど、様々な要素を上手く一つにまとめて組み込む事に成功している。 --種類も多く、どのスピリットも一定の強さがあるので、お気に入りのスピリットと最後まで戦うこともできる。 --「II」のリアクションコマンドで見られたような、外連味溢れる爽快なアクションが(バリエーションは限られるものの)任意で出せる爽快感はかなりの物。 --戦うだけでなく、純粋にスピリットを愛でるモードも用意されていたりと、遊びの幅は広くなっている。 --ただし、どちらの要素も非常に出来がいい一方、流石に調整不足・詰め込み過ぎな部分があり、賛否両論とは別に問題点となる部分も存在している。詳しくは後述。 ''相変わらずきめの細かい演出'' -上述の通り、諸々の問題で空回りしてしまった点もあったが、演出としての細かさは流石。本作では、ソラとリクの二人で、同じワールドの違う場所を探索するが、~ シリーズで登場した事のあるワールドを探索する際は、ソラはこれまで行けなかった箇所を探索し、リクはこれまでに登場した場所を探索するようになっている。 --こちらも上述されているが、今作のストーリーの主軸は「ソラとリクの友情」。この点は十分に描き切られており、特にシリーズファンから高い評価を得た。 --ワールド単体で見て行っても、「三銃士」のワールドは初代の頃を思わせる、ディズニーテイスト満載のコミカルな演出が目を引く。~ 近作ではとかくシリアスな展開に終始する事が多かっただけに、シリーズファンなら全く新しいワールドにも拘らず、どこか懐かしさも感じる事ができる。 ''見事な出来のOP'' -本作のオープニングムービーはファンなら必見。最終決戦へ向け、歴代主人公たちが一堂に会する感動的なもの。%%むしろ何故これがKHIIIのOPでないのかという程。%% --今までの作品の名シーンが非常にうまく編成されている。つなぎ目も全く違和感がなく、素晴らしい出来。発売記念イベントで先行上映された際も反響はかなりのものだった。 --本作の数多い見所の中でも「''OPが一番盛り上がった''」とまで言われるほど。なお、シリーズで初めてオーケストラ版の「光」がOPムービーに採用されている(これまでは歌付きのバージョンが使われていた)。 ---ではEDテーマもいつも通りの「光」…ではなく、『Days』以来となる「Passion」((『II』『Days』のED同様、「after the battle」バージョン。))が久しぶりに使用されている。OP、EDでそれぞれ別の楽曲を、そして「光」と「Passion」の両方を使用しているのは何気にシリーズ初。 ''工夫されたストーリーの展開と説明'' -「メモワール」によって、過去作やワールド(原作)におけるシナリオ、用語がしっかりフォローされている。 --新規プレイヤーへの配慮が見えるシステムなのだがこの点に関してはあまり広告を打たれなかった。 --また、同じくメモワールには「回想シーン」というものが登録される。これは本作のストーリーの背景を見ることができるというシステム。シナリオを進めていく途中で自動的にムービーが登録され、その都度見ることができるが、見ないで後回しにすることもできる。 --本作全体の背景の説明もメモワールで小分けにすることで、開幕早々延々と説明が続くことのないよう配慮がなされている。~ とにかく先に進めたいという人はムービーをスキップするまでもなく飛ばす事が可能で、逆にしっかりとストーリーを追いたいという人は、従来通り進行に合わせて追っていける。 ''シリーズとしては高い難易度'' -ストーリーにおけるボス戦の難易度の高さはシリーズでも屈指。特にリク編終盤のボスラッシュはシリーズでも一二を争う難所。 --ボス敵全般の強さはもちろん、雑魚の中にも難敵が多い。プレイヤーにもよるが、スタンダードでも歯ごたえ十分で、総合的に見てシリーズトップクラスの難易度であると言える。勿論、これまで同様自分の腕に見合った難易度調整も可能(最高難易度のクリティカルのみ2周目以降限定)。 --クリア後は各ステージのボスと再戦が可能。しかしリク編のボスラッシュの敵は対象外。大ボスクラスかつ、それぞれが一個体としても非常に難敵なため、少々残念なところ。 --なお、この時は後述の「ドロップ」をする事は無い。腰を据えてじっくりと強敵と戦うことができる。 --ちなみに作品全体を通しての高難易度の救済措置としてか、今作は過去作と比べても明らかにレベルが上がりやすい。~ レベルアップによる必要経験値の増加の度合いがかなり緩やかになっているため、1つ手前のワールドに戻った程度ではほとんどレベルアップの速度が低下しない。詰みかけた場合にはスピリット育成も兼ねて素直にレベル上げすることもできる。 --後述されているが今作ではレベルアップでアビリティを覚えることはないものの、少なくとも基礎ステータスはちゃんと成長するので、レベル上げで多少なりとも楽になる調整にはなっている。 ---- **賛否両論点 &font(16,b){ドロップシステム} -''本作最大の賛否両論点。''ドロップゲージと呼ばれるゲージが無くなると、強制的にキャラが移り変わるというシステム。~ 正確には、ゲージが無くなると30秒間ボーナスタイムができ、その後の策を練ることができる。 --ボーナスタイム中はドロッププライズが出やすくなる。ここで効率よくドロップポイントを稼ぐことも可能。 --ドロップポイントを戦闘中集めておけばドロップの際に相手側の能力を大きく強化できるというメリットもあり、上手く活用すればLV1プレイなどの縛りプレイもある程度楽になる。 --しかし、''ボス戦でも容赦なくドロップしてしまう上''、''戦闘そのものは仕切り直しにも拘らず、自分のダメージだけは引き継ぐ''。これが最大の批判点である。 ---「デッキにモーニングベル((ドロップゲージを回復できるアイテム。コマンド1マスにつき2つ使える。))を仕込む」「ボス戦前に一度ドロップしておく」といった対策はできるが、根本的な解決にはならない。 -ただし、このドロップシステム自体は本作のストーリーに深く関わっており、これ無しでは成り立たない程重要なシステムである事は明記しておく。 -また、当システムによって意図せずともソラ編とリク編の進捗を合わせられるため、ダブル主人公制のゲームとしては上手く交互にストーリーを進めることが出来る。 --一般的なダブル主人公制のゲームだと、「一周目と二周目でそれぞれの主人公のストーリーを進める」「特定のストーリーまで進めると主人公が交代する」という仕様が多いが、両主人公並行して物語を進められる点では画期的システムとも言える。 &font(16,b){難解なストーリー} -主に黒幕であるゼアノート関連((ハートレス体やノーバディ体の存在と行動、果ては時代によって姿形そのものまで異なる))や「夢の世界」との行き来などは設定が複雑で分かりにくい。更にそこへタイムスリップ的な要素も絡んでいる為、ますます物語を複雑にしている。 --本作のシナリオが複雑なのは''KHシリーズの根幹である「心」そのものに踏み込んだ内容である''という面が強い。 ---また、次回作に向けての新たな設定も登場しており、これまでの流れを理解するシリーズファンはまだしも、新規層にはかなりとっつき辛い所まで来てしまっている。 ---良くも悪くも野村氏の本領をいかんなく発揮した入り組んだ設定が広がっており、あまりに難解なためか''ディズニー側にさえ一回の説明で理解してもらえなかった''という逸話もある。 ---[[インタビューで野村ディレクターが答えるという形でストーリーの解説もされている。>http://www.famitsu.com/news/201205/16014704.html]]ただ、解決されていない疑問点もある。 --さらに本作から登場したタイムスリップ要素がプレイヤーの混乱を招いた。この要素は本作の本筋にはまだ絡まず、「倒したはずのあのキャラがなぜ登場するのか?」という疑問に対する回答だと思っておけば本作単体の理解には十分。しかし、本編では本作内のネタばらし以上の時間をとって時間移動の設定とその制約について長々と語ってくれるためプレイヤー側もそちらに思考を割いてしまいがちで本編の理解がおろそかになってしまう。 ---時間移動という要素そのものが非常に強力で何でもありとなってしまいかねないので、制約そのものは必要であるし、それが次回作に持ち越されず早めに明かされたのはむしろ良い点と言えるのだが……。 -ただし難解ではあるが、伏線はところどころに張られており「複雑な伏線がつながったときの快感」を意識しているとのこと。 --実際、かなり大胆な伏線の張り方をしており、それをネタばらしで気づけたときには「やられた!」と思うこと請け合いである。 --また、NEW GAME開始直後にろくに舞台説明もないままいきなりチュートリアルに入ってしまうのだが、これは野村ディレクターの意図によるもので、最初はソラたちと同じように「何が何だか分からない」状態からのスタートにしたかったということらしい。 -上記の通り、ストーリーはかなり「過去作をプレイした人向け」の内容である。初っ端から完全にこれまでの設定・ストーリーありきでスタートしており、固有名などもポンポン出てくるため、最初の辺りなどは特に新規ユーザーには理解しがたい。 --しかし、重要な用語や過去作のあらすじはメモワールで解説が用意されており、目を通していれば初見でも100%は無理でもある程度の理解はできるようになっている。とりあえず良く分からない単語が出てきたらメモワールかレポートを開けば大抵書いてある。 --なお、''「過去作をプレイした人向け」の内容であるというのはこれまでのシリーズにおいてもほぼ同様''であり、そもそも今作特有の問題点ではない(最も顕著なのは『KH2』)。~ これまではイベントムービーなどで解説していたものを別モードを用意して任意にチェックできるようになったということであり、これもある種のムービーゲーとしての問題点の解消手段ともとれる(アルティマニアで野村ディレクターもこの旨を明言している)。また、新規キーワードやあらすじを入手した時にはちゃんと画面に表示される。 ---- **問題点 ''新規ワールドに対する説明不足'' -各々が独立した世界観・設定を持つディズニーワールドだが、一部のワールドでは初めて訪れた際も「クルー」「ジプシー」など、そのワールド特有の固有名詞がロクに解説もされずシナリオが進んでいく。 -評価点にて述べられている通り、「メモワール」のおかげでストーリーを追うという意味では苦労しないのだが、世界観や設定を理解するまでには至らない。 --シナリオを進めれば理解できるようにはなっているが、単語だけで意味を推測することも難しく、初見の作品では混乱を招いてしまう。 --これまでのシリーズでは、作品の冒頭部分なども描写する事で、これら説明不足を補っていたが、本作では、いきなり作品の盛り上げ部分から始まる事が多いのが理由か。 ''敵の硬さ'' -コマンド攻撃やガードなどのリアクションをしても敵がほとんど隙を見せない。特にボス戦で顕著。 --強力な一撃を加え、そのまま巨体に見合わぬ高速移動で距離を離して様子を窺うような行動を取るボスが多く、「''敵のほうがヒット&アウェイを成立させている''」という皮肉めいた指摘もある程。 --過去作ではガードや回避から反撃の起点を生み出すものがほとんどであり、逆に言えば、ハッキリとした反撃の起点を自らが生み出せていた。 --ボス戦は全体的に攻撃のメリハリがなく、はっきり言えばダラダラと攻撃してくる為、パターンが非常に掴みにくい。~ 分かりやすい反撃チャンスは終盤に行くほど減り、結局は攻撃の合間に1、2発当ててチマチマと反撃し、回復魔法ゴリ押しで突破という形になりやすい。 --フリーフローシステムは各ボス戦でもほぼ必須となっている。しかし、『II』のリアクションコマンドの様に、それを起点に反撃へ移るには至らず、あくまで攻撃・移動手段の一つに落ち着いている為、折角の爽快感を生かし切れていない。 -雑魚戦も同様で、全体的によろけを取りにくく、こちらの攻撃中に割り込まれる形で反撃を食らう事もしばしばある。 --終盤の相手の中には「丸まってバウンドする攻撃をするが、この攻撃中は完全無敵状態」「当たり判定も含めて完全に姿を消し、突然ほぼゼロ距離に現れて攻撃、再び姿を消す」「頭部(オプション)と胴体(本体)が完全に分離し、胴体がよろけている間も頭部は自由に行動・攻撃する」など、少々無理のある形で難易度を上げている雑魚敵も存在する。 --総じて、瞬間瞬間の爽快感はあるが、プレイヤーが一方的に攻撃し続ける事を許さない様に作られている印象が強い。爽快感を追求し過ぎた結果が、ライト向けに作られた「II」である為、~ シリーズの反省を踏まえた難易度調整ともいえるが、折角の新システムや煮詰められた戦闘バランスと調和できていないのも確かである。 --「ひるみ」に関わる隠しパラメータとして各種技には「リアクション値」というステータスが設定されており、この数値が大きいほどひるみを取りやすくなる。~ 通常攻撃である「たたかう」のうちもっとも基本的な技のリアクション値がゼロであるため、基本的に至近距離で普通に「たたかう」をした場合はひるみを取ることが出来ない(遠距離での突きからなら取れる)。 --つまりこの''雑魚のひるみにくさは調整不足などではなく意図的なものなのである''。単なる設計ミスならまだしも、''これで良しとしているのだからなおのことタチが悪い''。 --''リアクション値が極端に低いのは通常攻撃のみ''であり、他のリンク攻撃や各種コマンド技は高い数値が設定されているものがほとんどである。つまりこれらの要素を使わせるための意図的な調整か。過去作で散々揶揄されてきた「連打ゲー」という風評からの脱却を狙ったものと思われる。 --なお、PS4版では、雑魚敵がかなりひるみやすくなっている((通常攻撃のリアクション値が増加している))。しかし、大型のドリームイーターやボスタイプのものは変わっておらず、解決には至っていない。 -それ以外にも、足が速いうえにフラフラ走り回って(飛び回って)どこかへ行ってしまうような行動ルーチンのものが多いなど、テンポが削がれやすい要素がちらほらと存在する。 --通常のエンカウント時なら無視して良いが、敵の殲滅が必須な場面ではどうしても追跡する必要があるため面倒。今作はフリーフローを意識してか、かなり高めの段差が多く用意されており、落ちてしまったりすると更に面倒。 ''バトル関連の細かい操作性'' -操作性も完璧とは言えない。この点は携帯機作品かつ類似のシステムを持つ『BbS』『Re:coded』とよく比較される。 --コマンドデッキの操作が非常にやりにくい。BbSの操作方法に慣れ親しんだ人なら尚更そう感じる。 --デッキ送りを十字ボタンで行うことには変わりないが、BbSはPSPの作品であり、方向キーは上部にあった。しかし、3DSの十字ボタンは下に付いているため、指の配置を考えるとどうしてもデッキを下に送ることが難しくなってしまう。 --同様にデッキコマンドシステムを採用した『Re:coded』では、Lボタンを使うことでデッキを操作できたため、これを採用してほしかったという声も多い。 --また、『Re:coded』では前述のLボタンのデッキ送りや、視点の変更、キャンプメニュー内でのアイテム使用など便利な要素もあり、どうして本作でも採用してくれなかったのかと不満を漏らすファンもいる。 ---なお『Re:coded』とは開発元が別であった事や本作と開発期間が一時的に重なっていた為ノウハウをそのまま流用できなかったのかもしれない。 -この他、エアリカバリー((攻撃を受けて吹き飛ばされた際、一瞬無敵になりながら体勢を立て直す。いわゆるハメ防止))系の入力受付が遅く、リカバリーする前に着地したり((吹き飛ばされた状態で着地すると、硬直が通常よりも長くなる))、連続ヒットさせられる事が多い、 リクの地上コンボフィニッシュの発生が異様に遅く、相手によっては途中で抜けられる等、いまいち調整しきれていない部分も散見される。 -フリーフローアクションが暴発しやすい --ドッジロールやエアスライドなどで敵の攻撃を回避しているときに壁に当たってしまうとプレイヤーが意図せずともフリーフローアクションに移行してしまう。 --上記の通りフリーフローアクションは外すことも可能なのだが、ウォールキックとスーパージャンプとスーパースライドはアクションコマンドに存在せず外すことができない。 --ウォールキックはスーパーアーマーが付加されるとはいえ硬直が長く、高難易度だと一撃が致命傷になることもあるのでこの暴発のせいで泣きを見ることも多々ある。 ''スピリットの問題点'' -「スピリット」の行動パターンを決める「性格」についてゲーム中でほとんど説明が無いため、具体的にどの性格で何をしてくれるのか良く分からない。 --「かしこい」「ゆうもう」等なんとなく想像がつくようになっている性格名も多いが、一方で「ノラ」「バジリスク」「レーサー」等やっぱり良く分からないものも多い。 --性格の違いで立ち回りも大きく変わり、性格によって解放されるリンクアビリティもある為、難易度高めの今作では結構重要な問題である。 --性格によって目の色も3色にかわるため、目の色を見てある程度判断することもできる。 //-名前が雑なスピリットが少なからずいる。 //--「ネコキャット」「タカイーグル((イーグルは「鷲」だが、生物学の違いはない))」「ゾウエレファント」など、同じ意味の言語を変えただけのスピリットがいる。 //--「キバタイガー」「ツノケラトプス」「ハサミクワガタ」など、動物名と体の一部の2つだけで構成されているスピリットもいる。 //---特にツノケラトプスは直訳すると「角角の顔((「ケラトプス」は」角の顔」を意味する。トリケラトプスなら「3本角の顔」、ペンタケラトプスなら「5本角の顔」、ディアブロケラトプスやら「悪魔のような角の顔」など))になってしまう。 //--一応、固有名詞を自由につける事もできる。 //これは単にそういうネーミングで多くのスピリットを統一してるだけなのでは -ソラ、リクの強化のためにスピリット選択の幅は狭まることがある --上述のスピリットの特徴に記載の通り、スピリット達との触れ合い(によるリンクアビリティ)を通じて、自分達の基礎能力を強化する事ができる。しかし、本作におけるアビリティの取得は、このリンクアビリティにほぼ全面的に依存している為、レベルアップによる能力強化は限定的。 --「コンボプラス((通常攻撃のコンボ回数を1つ増やす。手数が増える一方、高威力のコンボフィニッシュを、ボスや素早いエネミーに当てにくくなるデメリットもある))」の様なメリット・デメリットあるものはもちろん、「リーフベール((ケアル系魔法を使う際に無敵状態になる。複数の敵によるハメを抜け出す事も可能))」や後述の「ラストリーヴ((HPが0になるような攻撃を受けても、1だけ残して耐える))」もこれに該当する。~ なおかつ、これらアビリティはスピリットで共通の物ではなく、取得できるスピリットが決まっており、しかも育成の最終盤にようやく取得できる。アクションアビリティ以外はソラとリクで共有できるのが救い。 --有用なアビリティはある程度育てないと手に入らない事から、目的のアビリティ取得まで同じスピリットを連れ歩かざるを得ない。 ''多数のバグ'' -実質1年ほどの短期間制作のためかバグが多い。後に修正パッチが配信されるが、初期バージョンでは進行不能バグなど結構重大なバグが多かった。公式HPにもいくつか載っている為チェックしておくと良いだろう。 --現在でも全ては修正されておらず、特定条件を満たしてしまうとリクの最大HPが低くなるバグなどいくつかは残っている。 -ここまでに記載されている通り、あと一歩の調整不足やテストプレイ不足なども散見される為、製作期間の短さがなんとも惜しまれる作品である。 ''その他の問題点'' -本作のクリティカルモード(最高難易度モード)は「被ダメージ激増、与ダメージ半減」というバランスで、『KHII FM』においての「防御面はもろくなるがこちらの攻撃力も上昇する」というアクションゲームの醍醐味であるヒット&アウェイをより強く楽しむ事が出来るようになっていた物とは全く逆方向のバランス調整となっている。 --「相変わらず詰めが甘い」「アクションの醍醐味をまるで分かっていない」と、アクションを大事にするファンからは辛辣な批判が寄せられた。 --一応、本作ではLv1でも一撃死を免れる「リーヴ系」のアビリティを手に入れることができ((ただし1周目のデータからリーヴ系のアビリティを所持したスピリットを連れてこないと入手はだいぶ終盤になってしまう。))、そもそもクリティカルモード自体がクリア後の特典であるという違いがあるが、それにしたって苦行すぎる。 --ちなみに制作チームが同じ『BbS FM』のクリティカルモードも、与ダメ半減でこそなかったが後半こちらの火力が極端に不足するという欠点はこの時点で指摘されていた。リーヴ系のアビリティを序盤から用意できる点も同じ(ちなみにKH2ではレベルで習得)。 -シリーズマニア向けのやりこみ要素「Lv1プレイ」も本作のゲームデザイン上落とし穴がある。 --なお、経験値ゼロのアビリティこそあるがLv1でのプレイは極端な縛りプレイであるため、きわめてマニアックな遊び方であることは注記しておく。しかし、こうした遊び方は『IIFM』『Re:coded』等で絶妙なバランスで成り立っていたというのも事実であり、アクションに自信があるプレイヤーたちにはシリーズ恒例のやり込み要素となっている現状がある。 --2周目以降のスピリット引き継ぎと「EXPゼロ」装備時でもスピリットには経験値が入るという仕様や、そもそも今作の敵は防御力は低く最大HPを高める方向でのパラメータ調整になっていることなどから、今作のLv1攻略は多彩なブースト要素をフル活用してパラメータを高め、敵の防御力を直接上回るようにして攻略するように、意図してこのようなバランス調整が行われていたと思われる。 --これは上述の『BbS FM』だけでなく、好評だった『IIFM』でも決して見られなかった調整であり、本作の発売時点で既にプレイヤー間では「''終盤では攻撃力・魔法力はいくら上げても敵の防御力(≒最低与ダメージ)を超えられないため無意味''」という風評が定着してしまっていた。 --後年になって研究が進んだ結果、従来シリーズとは異なりステータスブーストの手段が多い今作では、''Lv1であってもラスボスクラスの敵の防御力を上回る攻撃力・魔法力で攻略可能''であることがわかっている((当然敵の防御力を上回れるなら最低保障のダメージだけで戦うより遥かに高効率で戦うことが可能。))。 --つまり、調整不足だったのではなく、''馴染みのない新システムに根幹を任せてしまったことが問題だった''のである。~ ましてや、上述のように、スピリットの育成もサクサク進められるものではない為、慣れている・早く進めたいプレイヤーにほど軽視されやすく、狙いとプレイする層がズレていた事も要因となった。 --バランス調整自体は上述のようにむしろ緻密かつ過去作の反省を活かしたものとなっているため、それがプレイヤーになかなか理解されなかったのは惜しまれるところではある。 --発売当初はクリア報告も僅かしか存在していなかったが、以下の仕様が明らかになった現在ではクリティカルLv1での攻略達成報告も多く上がるようになった。 #region(風評の一因について) 特に同制作チームであった『BbS FM』の影響は大きい。『BbS』は敵の防御力が高めであり、更に最低与ダメージが基本的に1ダメージと非常に低いバランスであったことから、一部の状態異常攻撃を除けば「最大HP=攻撃回数」であるとプレイヤー間では揶揄されていた。~ そして今作でも根本的なダメージ計算式は『BbS』とほぼ同じであり、レベル1での基本攻略法は『BbS FM』と同様だとプレイヤーに誤認させる要素は揃っていた。更に『BbS』に存在したシュートロックなどの超多段ヒット技も本作では大幅に削減されており、最低与ダメージで戦う限りにおいては火力も大幅に低下してしまっていた。このことがドロップシステム、及び終盤のとあるボスの制限時間の仕様に対してLv1では火力不足で対抗できない、という認識を定着させ、前述の不評を生むことになった。 #endregion() ---- **総評 総合的に見れば十分良作に値する作品ではあるが、『BbS』から改善の兆しが見えない部分もある事で、良くも悪くも大阪チーム製KHの作風が明確になった一作でもある。~ シリーズの新機軸を打ち出したフリーフローアクションには一定の評価が集まっている。~ その他の新要素も本作独自のフレーバーとしては申し分ない。~ 音楽やリアリティシフトによる演出もゲームに上手く絡めており、原作尊重の流れも崩れておらずディズニー作品の世界を鑑賞するだけでも面白い。~ ストーリーは複雑だが、一方でメモワールなどのシステムでシリーズ初見のプレイヤーにも手をつけやすくするような利点も存在する。~ しかし、かなり大きく賛否を分けたドロップシステムの存在、アクション関連の問題点もあり手放しに賞賛できる作品とも言えない。~ 過去作の問題点を積極的に解消しようと様々な仕様変更や新要素を追加したはいいものの、詰め込みすぎて空回りしてしまった要素も多くなってしまった。~ ---- **余談 -本作を代表するBGMである「Dream Eater」。 --かわいらしい女声の「らん♪らん♪らん♪らららん♪」が特徴的な曲なのだが、この曲を手掛けた下村氏は「&bold(){オジサンが低音で歌うキモかわいい曲はどうかな?}」と野村氏に提案していたらしい……どうやら却下されたようだが。([[参考>https://www.famitsu.com/news/201205/15014639.html]]) -『すばせか』からのゲストの一人である「ビイト」。 --彼が隠す妙に長い本名をヨシュアにバラされてビイトが大慌てする…という原作に良く似たシチュエーションがあるのだが……''名前の漢字を思いっきり間違えられている。'' ---「尾藤大輔之丞(ビドウ‐ダイスケノジョウ)」が本名なのだが、本作だと「丞」が「丈」になってしまっている。 ---後述のHDリマスター版ではちゃっかり修正されているのでご安心を。 --ちなみに原作でもヨシュアのセリフに「役不足」の典型的な誤用をしているものがあり、ある意味スタッフの間違った知識の犠牲者となっている。 -『[[シアトリズム ファイナルファンタジー]]』ではかつて「FFゆかりの人物たちにシアトリズムを体験してもらう」旨の動画が配信されていた。 --そこで最後に登場したのが野村氏だったが、''いきなりカメラを強奪したあげくシアトリズムそっちのけで本作の試作版を遊んでいた。'' ---スタッフも予想していなかった展開ではあるが、公開されたプレイ画面にはしっかりとディズニーのコピーライトが入っているところがこれまたシュール。 -野村氏は、スピリットとの触れ合いは『nintendogs』の影響を受けたと「社長が訊く」のインタビューで語っている。(リンクは下記。4ページ目を参照。) --「''『nintendogs』はなんで戦えないかなーって(笑)''」と、かなり突き抜けた発言を岩田社長の前でしている。字面から察するに、一同大ウケだったようだ。 -リンク:[[社長が訊く 第15回 KINGDOM HEARTS 3D>http://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/creators/vol15/index.html]] --インタビューを受けている部屋のムードがなんというかノムリッシュ(いい意味で)。他の作品のインタビューでは明るい場所を選んでいるため尚更目立つ。 --これまで見られなかった野村ディレクターの意外な一面を見ることができる。 ---- **その後の展開 -ナンバリングでないが本作は『BbS』と同様に本編に匹敵するボリュームと内容を持つ作品であり、後のシリーズでも『BbS』相当の扱いがされる事が多い。しかし『I』『II』『BbS』のような追加要素を加えた「ファイナルミックス」が発売される事は無かった。 --ディレクターは「大阪開発チームが複数のタイトルを抱えていてそれどころではない状況なので、数年後はわからないが現在はその予定はない」と答えており、結果として下記のHDリマスター版としてリリースされるに留まっている。 -本作のスタッフロールではある仕掛けが施されており、条件を満たすとキーワードグロッサリーに謎の英文が追加される。 --簡単に訳すと「過去はより精彩な新たな数字として目覚める。次のナンバーの目覚めに備えよ」。 --これだけだとよく分からないだろうが、過去=以前の作品。新たな数字=HDリマスター版『1.5』『2.5』。次のナンバー=『III』の事で、要するに''『III』の復習用としてHDリマスター版が出る事''を予告している。 --この予告通り1年後には『1.5』が。その1年後には『2.5』が発売された。 -過去作HDリマスターに収録される中で本作だけ仲間外れの状況になっていたが、2017年1月に発売された『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』(PS4)に本作のHDリマスター版が収録された。 --素のドロップゲージ蓄積速度の低下((速度1.0で15分でドロップだったものが20分になった))に加え、ドロップボーナスに「ドロップゲージ速度低下」が追加され、ドロップ関連のバランスが大幅に緩和されている。雑魚敵もやや怯みやすくなった。~ これは3DS海外版の時点で既に実装されており、追加要素自体はほぼないものの実質FM版のような再調整版となっている。 --更に3DS版でタッチ操作が前提だった部分をPS4コントローラに合わせて操作の変更が行われた。 --やりこみ部分ではクリティカルモードの与ダメ補正が0.5倍から0.75倍に緩和された。 ---なお、他のシリーズのHDリマスターのようにアビリティ「EXPゼロ」自体に与ダメ補正が掛かる仕様は追加されていない。これは上記のように敵の防御力を直接上回るようにして攻略する、という本来意図したバランスが破綻しかねないためだろう。 --ちなみに本作にナンバリングを付けるなら、『''キングダムハーツ2.6''』になると言う。この「2.8」という微妙な数字も、同時収録の新作である『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-』の「0.2」を本作に足したものだとか。 -冒頭で述べた通り、本作は一作目から続く「ダークシーカー編」完結編である『[[キングダム ハーツIII]]』の序章に位置する作品である。 --しかし以降はシリーズはしばらくブラウザゲーム『キングダム ハーツ キー』((後にスマートフォンゲーム『キングダム ハーツ アンチェインド キー』としてリニューアルされ、更にアップデートで『キングダム ハーツ ユニオン クロス』に改題された。))や過去作のリマスターを中心に展開するようになり、上述の『2.8』が発売されるまで5年。『III』発売まで更に2年を要し、本作で予告された最終決戦が実際に始まるまでリアルタイムで7年もの歳月が掛かった。 ----
//文章量の割に目次が長く見辛くなってしまっていたため、小見出し(***)を普通の太字に変更(2017/10/5) //編集の注意点:『魔法使いの弟子』はディズニーの作品名ではなく使用された楽曲の名前で、作品名は『ファンタジア』(1940)。 *キングダム ハーツ 3D [ドリーム ドロップ ディスタンス] 【きんぐだむ はーつ どりーむ どろっぷ でぃすたんす】 |ジャンル|アクションRPG|CENTER:&image(https://img.atwikiimg.com/www26.atwiki.jp/gcmatome/attach/4551/2320/kh3dpackage.jpg,width=170)&image(KH3ds.jpg,width=170)&image(10thbox.jpg,width=170)| //パッケージ画像が死んでいたのでURLを変更(2017/10/5) |対応機種|ニンテンドー3DS|~| |発売・開発元|スクウェア・エニックス|~| |発売日|2012年3月29日|~| |定価|通常版:6,090円&br()3DS同梱版:21,090円&br()10th Anniversary Box:15,000円&br;(全て税別)|~| |プレイ人数|1~2人|~| |セーブデータ|2個|~| |レーティング|CERO:A(全年齢対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|キングダム ハーツシリーズ第7作目&br;新要素は概ね高評価&br;ただしドロップシステムは賛否両論|~| |>|>|CENTER:''[[キングダム ハーツシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- &font(16,b){ストーリー} //見づらくなるだけなので余計な色装飾は控えなさい >''闇は光となり、光は闇に堕ちる。''~ ~ マスター・ゼアノートは、天才的なキーブレードマスターであった。~ その姿を幾度も変えさせて光を守護するキーブレード使いたちの前に立ちはだかった。~ だが、まだ終っていない――~ ~ 我々には、脅威に立ち向かう準備が必要だ。そこでソラとリク、二人にはキーブレードマスター承認試験を受けてもらいたい。~ ~ 眠りの鍵穴を開くことで、新たな力を身につけるとともに、眠りに閉ざされた世界の開放にもなるだろう。~ 純粋な光の数と等しく、''7つ''の眠りの鍵穴を開放し、再びこの地に戻ってくることで、マスター承認とする。~ ~ (取扱説明書より) 『[[KHIII>キングダム ハーツIII]]』へと直接つながる、最終決戦への序章となるストーリーが展開される。 ---- **概要 キングダム ハーツ第7作目。開発は『[[キングダム ハーツ バース バイ スリープ]](以下BbS)』のチーム(いわゆる「大阪チーム」)がメインで担当。~ [[初代>キングダム ハーツ]]~『[[II>キングダム ハーツII]]』を手掛けたスタッフ((こちらは「東京チーム」等と呼ばれる。『ディシディア ファイナルファンタジー』を手がけている、こちらも強力なチームだが、後にFFXV等の開発に伴い解体))が『[[ファイナルファンタジーXV]]』の開発に忙しく、代役として抜擢された。~ また、シリーズ10周年記念としてパッケージにはアニバーサリーロゴが入っている。 **内容 -本作の主人公はお馴染み「''ソラ''」だけでなく、過去作でソラの親友・ライバルとしての立ち位置を担ってきたキャラクター「''リク''」がシリーズで初めて本編の主人公となった。((一応、リクが主役となるモード自体はCoMやKHIIのラスボス戦等の前例はある)) --この二人はモードとしては独立しておらず、W主人公として二人のキャラクターを入れ替えながらストーリーを進めていく事になる。 -『トロン:レガシー』『ノートルダムの鐘』『ミッキー・ドナルド・グーフィーの三銃士』『ファンタジア』が新たなディズニー作品のワールドとして登場した。 -『[[すばらしきこのせかい]]』のキャラクターもゲストで登場する。((一見、野村絵であること以外KHとは無関係に見えるが、『キングダム ハーツ チェインオブメモリーズ』の開発元であるジュピターが手掛けた作品という共通点がある。))が、本作ではモーグリ以外のFFキャラは登場しない -本作では夢を喰らう「ドリームイーター」が重要な役割を果たす。善良なものをスピリット、邪悪なものはナイトメアと呼び区別しており、~ 特にナイトメアは、従来シリーズのハートレスに代わる敵となっている。 --同じドリームイーターでもスピリットかナイトメアかで色彩がガラッと変わる。また、片方側しか存在しないものもある。 --ちなみに初回購入特典のARカードを使えば、本編で入手が困難な特別なドリームイーター(計3種)を呼び出せる。 //入手は不可能ではないです。 ---- **特徴 &font(16,b){戦闘システム:デッキコマンド} -『BbS』や『[[キングダム ハーツ Re:コーデッド]]』(以下Re:coded)で使われたものと同じ。詳しくは両記事を参照。 --本作のみの特徴として、コマンドの成長要素は廃された。このため、コマンド同士の掛け合わせなども無くなっており、レアな物については後述のスピリットのリンクアビリティになっている。 &font(16,b){フリーフローアクション} -壁やポールにYボタンを使ったアクションで突っ込むと、操作キャラが光に包まれ、フリーフローアクションに移行する。 --ここでAボタンを押すと、状況に応じて強力なフィニッシュを放つ。 --Bボタンを押せば、更に高く、遠くにジャンプすることが出来る。使いこなせば一見行けそうに無い場所にも楽々と飛び移ることができる。 --更にYボタンを押せば、そこから高速で移動する。大きい敵に突っ込めばブロウオフというアクションで敵を吹き飛ばすことができる。 --ちなみにこれらフリーフローアクションは全てアビリティ扱いであり、ゲーム開始時点で全て所持。一部を除いて強制ではないので外す事も可能。 &font(16,b){リアリティシフト} -特定のオブジェクトに近づいたり、攻撃中に特定条件を満たすとそのオブジェクト・敵にピンク色のマーカーが出る。 -下にスライドするか、X+Aでリアリティシフトが発動できる。ワールドによってギミックは異なり、各ワールドの世界観に合ったものとなっている。 --攻撃の威力としても優秀であり、チャンスがあれば積極的に狙うことで敵を一掃できる。 --ボスへのとどめに使われたりと演出面でも十分に働きを見せている。 &font(16,b){ストーリー・ワールド} -下記の「賛否両論点」に書かれているような複雑な点ばかりが取り沙汰されがちだが、過去作にないほどにシリアス・コメディが入り混じった完成度の高いストーリーである。 -本作のシナリオはソラとリクとの間の「友情」が最前面に押し出されており、特にリクに関しては本作で評価が良い方向に激変したというファンの声も多く聞かれる。 --ディズニーのワールドも原作の雰囲気を再現し、かつソラとリクで別の視点からストーリーを楽しめるようになっており完成度は高い。また、前述の「リアリティシフト」の存在も各ワールドの印象をより強いものとしている。それ故にディズニー由来のボスキャラが少ないのは残念なところ。 ---KH2以来久しぶりの実写映画を元とするワールド「ザ・グリッド」(『トロン:レガシー』)のキャラクターは、KH2の『トロン』から約6年間の劇的な技術の進化を体感できる凄まじくリアルなグラフィックとなっている。 --『[[キングダム ハーツ チェイン オブ メモリーズ]]』(以下CoM)では設定上、リク編では各ワールドのキャラとの交流が皆無だったが、今回はしっかり絡む。良くも悪くも天真爛漫なソラとは違って理知的に関わり、しかしその中でも熱さと正義感を以て行動するリクの姿は新鮮且つ、彼の印象を良い方向に押し上げている。 -本作のマップはフリーフローアクションで飛び回る都合上極めて広く立体的で非常に複雑になっており、久しぶりに探索的要素が強くなっている。 --マップ全域+高度限界までほぼ自由に探索できる為、広域かつ高低様々な場所に宝箱が配置されている。場所によってはざっと回っただけでは発見できないものもあり、コンプを狙うとかなり骨が折れる。 &font(16,b){音楽} -『BbS』の3人体制(下村、関戸、石元)で作曲。 --『すばらしきこのせかい』の人気曲もアレンジされて登場。アレンジの甲斐もあってか世界観からもそこまで浮いていない。 --ボス戦の曲の評価は高い。「L'Impeto Oscuro」や「UNTAMABLE」などが人気曲として挙げられる。 -また、『ファンタジア』のワールドでは無声映画であった原作に合わせ、探索中は「ソラたちの声が出ない」「効果音が楽器の音」という演出がされている(ムービーは普通通り)。 --そこで流れるBGMは原作でも使われたクラシック音楽であり、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」やベートーヴェンの「田園」といった有名曲が惜しみなく収録されている。 --BGMもリアリティシフトの演出を考慮しながらうまく編曲されている。 --凝った演出なのだが、発売当初はバグ騒動のせいでこれもバグだと思ってしまうユーザーもいた((ver1.1のパッチにより現在は致命的なものは解消されている。))。 &font(16,b){新たな仲間・「スピリット」} -本作に登場するモンスター的な存在「ドリームイーター」の中で、主人公らに付き添い、戦闘の手助けをする存在を指す。 --『[[キングダム ハーツ 358/2 Days]]』(以下Days)や『BbS』、『Re:coded』でも一部で復活していたが、全編を通した本格的なパーティ戦闘は実に『KHII』以来となる。 //ジュリアス戦(隠しボス)はソラorリク単体でのバトル。 ''戦闘面'' -ステータスを上げるアビリティはスピリットを連れて行くことによって効果を出す。 --敵の特徴によってスピリットを入れ替えたりと、戦略性のある要素でもある。 -パーティに加わっているスピリットとのリンクゲージが満タンになると、そのスピリットとの連携攻撃(リンク攻撃)ができる。 --ソラのリンク攻撃は『I』や『II』の「しょうかん」や「れんけい」をイメージしたもので、一方リクのリンク攻撃は『BbS』のスタイルチェンジをイメージしたものとなっている。 -なお、スピリットは体力が無くなって戦闘不能になると、30秒のカウントダウンが始まる。この時、近づいてAボタンを連打する事でゲージを溜めて蘇生させることができるが、カウントが0になってしまうと、''そのスピリットは永久に失われる。'' -本作のスピリットは過去作のパーティ戦闘の仲間と比較しても非常に心強い存在。全体的にレベルが上がりやすく、早い内からパーティーに入れていると、ソラやリクよりもレベルが高くなる事がある。 --仕事に粗はあるが、攻撃力が初代のドナルド・グーフィー並みに戻っており、雑魚敵くらいなら放っておいても倒してくれたりする。~ もちろん魔法や特技などでのサポートなども行ってくれる。回復などももちろんだが、特筆すべきは「スピリットロア」。短時間ながらソラ・リクの攻撃力・魔法力を1.5倍にするという強烈な効果を発揮してくれる。 --なお、ネタバレとなるので詳細は伏せるが、ソラとリクでリンクの仕様が違うのはストーリー上必然の設定だったりする。 ''育成面'' -敵を倒すことで手に入る「~の幻想」等の素材(「ドリームピース」と呼ばれる)を一定数集めることで、スピリットを自由に生み出す(「ブリード」する)ことができる。 -リンクポイントを貯めれば「アビリティリンク」でスピリットが持っているアビリティやコマンドを開放できる。 --インターフェース的には『[[ファイナルファンタジーXIII]]』のクリスタリウムに類似している。 -スピリットたちとのふれあい要素も充実。 --様々なおもちゃで遊んだり、食べ物をあげたりできる。他にも突っついたり撫でたりしたり、カメラを使って写真撮影することも可能。 --これらは完全にお遊び、という事ではなくこれによって経験値やリンクポイントを効率よく稼げたり、「相性レベル」や「性格」の変化をもたらす。 --「相性レベル」を上げることによって戦闘中の行動がより賢くなったり、「性格」を変化させることによって戦闘中の行動自体が大きく変化したりとゲーム攻略に直結する要素は多く、戦闘に疲れた武闘派にもスピリットを可愛がりながら進めたい育成派にも満足の仕様。 -初期スピリット「ワンダニャン」や「コウモリバット」を筆頭に、可愛らしいだけでなくどこか妙な魅力を感じるデザインが好評。 --名前は自由に付けられる。本作のドリームイーターのネーミングがいろいろと直球なのはそのためなのだろうか。 &font(16,b){フリックラッシュ} -育てたスピリットを3vs3で戦わせるモード。『CoM』のカードデッキにシステムがよく似ている。 --カードには数字が振り分けられており、カードの数字が大きいほうが弱いほうの行動をブレイクできる。数字は0((後出し最強、先出し最弱のカード。))が無くなった代わりに完全最強の☆が登場した。 --カードを上にスライドすることで攻撃、下にスライドすることで防御ができる。防御が成功すればそのスピリットの必殺技ともいえるカードが手札に追加される。 -相手方のスピリットもなかなかの強敵揃いであり、簡単に活路を見出すことはできない。 --ちなみにここでは様々なFF、すばせかキャラが名前だけとはいえ参戦している。 &font(16,b){リンクポータル} -すれちがい通信で他のプレイヤーにドリームイーターを送受信し、マップ上で特殊なバトルを発生させたり逆に一時的に仲間として戦闘に参加させたりすることができるようになる。 -NPCのリンクポータルもマップ上に配置されている。またレアな素材を入手できるスペシャルポータル、クリア後に強化版ボスと再戦できるシークレットポータルというものも存在。 ---- **評価点 ''縦横無尽のアクション'' -フリーフローアクションによって、高速移動もハイジャンプもお手のもの。シリーズ他作品とは一線を画した爽快感が得られる。 --壁やオブジェクトに突っ込むだけで発動するので、難しい操作も要求されない。 --攻撃力もあるので、アクションに不慣れな人でもこれを使えばそれなりに見栄えもよく、安定して戦える。 --本作のマップはかなり広めに作られており、宝箱なども複雑な配置をされているが、移動手段がこのように強力であるため探索の楽しみもある。 --狭い路地なら壁を次々と蹴って高速移動することができたりと、爽快感は満点。 ''スピリットを育成し共闘する楽しみ'' -スピリットも単なる仲間に留まらず、「強化する事で自分自身も強くなる」事や、フリックラッシュによるミニゲームなど、様々な要素を上手く一つにまとめて組み込む事に成功している。 --種類も多く、どのスピリットも一定の強さがあるので、お気に入りのスピリットと最後まで戦うこともできる。 --「II」のリアクションコマンドで見られたような、外連味溢れる爽快なアクションが(バリエーションは限られるものの)任意で出せる爽快感はかなりの物。 --戦うだけでなく、純粋にスピリットを愛でるモードも用意されていたりと、遊びの幅は広くなっている。 --ただし、どちらの要素も非常に出来がいい一方、流石に調整不足・詰め込み過ぎな部分があり、賛否両論とは別に問題点となる部分も存在している。詳しくは後述。 ''相変わらずきめの細かい演出'' -上述の通り、諸々の問題で空回りしてしまった点もあったが、演出としての細かさは流石。本作では、ソラとリクの二人で、同じワールドの違う場所を探索するが、~ シリーズで登場した事のあるワールドを探索する際は、ソラはこれまで行けなかった箇所を探索し、リクはこれまでに登場した場所を探索するようになっている。 --こちらも上述されているが、今作のストーリーの主軸は「ソラとリクの友情」。この点は十分に描き切られており、特にシリーズファンから高い評価を得た。 --ワールド単体で見て行っても、「三銃士」のワールドは初代の頃を思わせる、ディズニーテイスト満載のコミカルな演出が目を引く。~ 近作ではとかくシリアスな展開に終始する事が多かっただけに、シリーズファンなら全く新しいワールドにも拘らず、どこか懐かしさも感じる事ができる。 ''見事な出来のOP'' -本作のオープニングムービーはファンなら必見。最終決戦へ向け、歴代主人公たちが一堂に会する感動的なもの。%%むしろ何故これがKHIIIのOPでないのかという程。%% --今までの作品の名シーンが非常にうまく編成されている。つなぎ目も全く違和感がなく、素晴らしい出来。発売記念イベントで先行上映された際も反響はかなりのものだった。 --本作の数多い見所の中でも「''OPが一番盛り上がった''」とまで言われるほど。なお、シリーズで初めてオーケストラ版の「光」がOPムービーに採用されている(これまでは歌付きのバージョンが使われていた)。 ---ではEDテーマもいつも通りの「光」…ではなく、『Days』以来となる「Passion」((『II』『Days』のED同様、「after the battle」バージョン。))が久しぶりに使用されている。OP、EDでそれぞれ別の楽曲を、そして「光」と「Passion」の両方を使用しているのは何気にシリーズ初。 ''工夫されたストーリーの展開と説明'' -「メモワール」によって、過去作やワールド(原作)におけるシナリオ、用語がしっかりフォローされている。 --新規プレイヤーへの配慮が見えるシステムなのだがこの点に関してはあまり広告を打たれなかった。 --また、同じくメモワールには「回想シーン」というものが登録される。これは本作のストーリーの背景を見ることができるというシステム。シナリオを進めていく途中で自動的にムービーが登録され、その都度見ることができるが、見ないで後回しにすることもできる。 --本作全体の背景の説明もメモワールで小分けにすることで、開幕早々延々と説明が続くことのないよう配慮がなされている。~ とにかく先に進めたいという人はムービーをスキップするまでもなく飛ばす事が可能で、逆にしっかりとストーリーを追いたいという人は、従来通り進行に合わせて追っていける。 ''歯応えのあるバトル'' -ボスはソラ編、リク編で行動パターンが全く異なるような敵が用意されており、過去作よりも充実している。使い回しのようなものも存在していない。 -ストーリーにおけるボス戦の難易度の高さはシリーズでも屈指。特にリク編終盤のボスラッシュはシリーズでも一二を争う難所。 --ボス敵全般の強さはもちろん、雑魚の中にも難敵が多い。プレイヤーにもよるが、スタンダードでも歯ごたえ十分で、総合的に見てシリーズトップクラスの難易度であると言える。勿論、これまで同様自分の腕に見合った難易度調整も可能(最高難易度のクリティカルのみ2周目以降限定)。 --クリア後は各ステージのボスと再戦が可能。しかしリク編のボスラッシュの敵は対象外。大ボスクラスかつ、それぞれが一個体としても非常に難敵なため、少々残念なところ。 --なお、この時は後述の「ドロップ」をする事は無い。腰を据えてじっくりと強敵と戦うことができる。 --ちなみに作品全体を通しての高難易度の救済措置としてか、今作は過去作と比べても明らかにレベルが上がりやすい。~ レベルアップによる必要経験値の増加の度合いがかなり緩やかになっているため、1つ手前のワールドに戻った程度ではほとんどレベルアップの速度が低下しない。詰みかけた場合にはスピリット育成も兼ねて素直にレベル上げすることもできる。 --後述されているが今作ではレベルアップでアビリティを覚えることはないものの、少なくとも基礎ステータスはちゃんと成長するので、レベル上げで多少なりとも楽になる調整にはなっている。 ---- **賛否両論点 &font(16,b){ドロップシステム} -''本作最大の賛否両論点。''ドロップゲージと呼ばれるゲージが無くなると、強制的にキャラが移り変わるというシステム。~ 正確には、ゲージが無くなると30秒間ボーナスタイムができ、その後の策を練ることができる。 --ボーナスタイム中はドロッププライズが出やすくなる。ここで効率よくドロップポイントを稼ぐことも可能。 --ドロップポイントを戦闘中集めておけばドロップの際に相手側の能力を大きく強化できるというメリットもあり、上手く活用すればLV1プレイなどの縛りプレイもある程度楽になる。 --しかし、''ボス戦でも容赦なくドロップしてしまう上''、''戦闘そのものは仕切り直しにも拘らず、自分のダメージだけは引き継ぐ''。これが最大の批判点である。 ---「デッキにモーニングベル((ドロップゲージを回復できるアイテム。コマンド1マスにつき2つ使える。))を仕込む」「ボス戦前に一度ドロップしておく」といった対策はできるが、根本的な解決にはならない。 -ただし、このドロップシステム自体は本作のストーリーに深く関わっており、これ無しでは成り立たない程重要なシステムである事は明記しておく。 -また、当システムによって意図せずともソラ編とリク編の進捗を合わせられるため、ダブル主人公制のゲームとしては上手く交互にストーリーを進めることが出来る。 --一般的なダブル主人公制のゲームだと、「一周目と二周目でそれぞれの主人公のストーリーを進める」「特定のストーリーまで進めると主人公が交代する」という仕様が多いが、両主人公並行して物語を進められる点では画期的システムとも言える。 &font(16,b){難解なストーリー} -主に黒幕であるゼアノート関連((ハートレス体やノーバディ体の存在と行動、果ては時代によって姿形そのものまで異なる))や「夢の世界」との行き来などは設定が複雑で分かりにくい。更にそこへタイムスリップ的な要素も絡んでいる為、ますます物語を複雑にしている。 --本作のシナリオが複雑なのは''KHシリーズの根幹である「心」そのものに踏み込んだ内容である''という面が強い。 ---また、次回作に向けての新たな設定も登場しており、これまでの流れを理解するシリーズファンはまだしも、新規層にはかなりとっつき辛い所まで来てしまっている。 ---良くも悪くも野村氏の本領をいかんなく発揮した入り組んだ設定が広がっており、あまりに難解なためか''ディズニー側にさえ一回の説明で理解してもらえなかった''という逸話もある。 ---[[インタビューで野村ディレクターが答えるという形でストーリーの解説もされている。>http://www.famitsu.com/news/201205/16014704.html]]ただ、解決されていない疑問点もある。 --さらに本作から登場したタイムスリップ要素がプレイヤーの混乱を招いた。この要素は本作の本筋にはまだ絡まず、「倒したはずのあのキャラがなぜ登場するのか?」という疑問に対する回答だと思っておけば本作単体の理解には十分。しかし、本編では本作内のネタばらし以上の時間をとって時間移動の設定とその制約について長々と語ってくれるためプレイヤー側もそちらに思考を割いてしまいがちで本編の理解がおろそかになってしまう。 ---時間移動という要素そのものが非常に強力で何でもありとなってしまいかねないので、制約そのものは必要であるし、それが次回作に持ち越されず早めに明かされたのはむしろ良い点と言えるのだが……。 -ただし難解ではあるが、伏線はところどころに張られており「複雑な伏線がつながったときの快感」を意識しているとのこと。 --実際、かなり大胆な伏線の張り方をしており、それをネタばらしで気づけたときには「やられた!」と思うこと請け合いである。 --また、NEW GAME開始直後にろくに舞台説明もないままいきなりチュートリアルに入ってしまうのだが、これは野村ディレクターの意図によるもので、最初はソラたちと同じように「何が何だか分からない」状態からのスタートにしたかったということらしい。 -上記の通り、ストーリーはかなり「過去作をプレイした人向け」の内容である。初っ端から完全にこれまでの設定・ストーリーありきでスタートしており、固有名などもポンポン出てくるため、最初の辺りなどは特に新規ユーザーには理解しがたい。 --しかし、重要な用語や過去作のあらすじはメモワールで解説が用意されており、目を通していれば初見でも100%は無理でもある程度の理解はできるようになっている。とりあえず良く分からない単語が出てきたらメモワールかレポートを開けば大抵書いてある。 --なお、''「過去作をプレイした人向け」の内容であるというのはこれまでのシリーズにおいてもほぼ同様''であり、そもそも今作特有の問題点ではない(最も顕著なのは『KH2』)。~ これまではイベントムービーなどで解説していたものを別モードを用意して任意にチェックできるようになったということであり、これもある種のムービーゲーとしての問題点の解消手段ともとれる(アルティマニアで野村ディレクターもこの旨を明言している)。また、新規キーワードやあらすじを入手した時にはちゃんと画面に表示される。 ---- **問題点 ''新規ワールドに対する説明不足'' -各々が独立した世界観・設定を持つディズニーワールドだが、一部のワールドでは初めて訪れた際も「クルー」「ジプシー」など、そのワールド特有の固有名詞がロクに解説もされずシナリオが進んでいく。 -評価点にて述べられている通り、「メモワール」のおかげでストーリーを追うという意味では苦労しないのだが、世界観や設定を理解するまでには至らない。 --シナリオを進めれば理解できるようにはなっているが、単語だけで意味を推測することも難しく、初見の作品では混乱を招いてしまう。 --これまでのシリーズでは、作品の冒頭部分なども描写する事で、これら説明不足を補っていたが、本作では、いきなり作品の盛り上げ部分から始まる事が多いのが理由か。 ''敵の硬さ'' -コマンド攻撃やガードなどのリアクションをしても敵がほとんど隙を見せない。特にボス戦で顕著。 --強力な一撃を加え、そのまま巨体に見合わぬ高速移動で距離を離して様子を窺うような行動を取るボスが多く、「''敵のほうがヒット&アウェイを成立させている''」という皮肉めいた指摘もある程。 --過去作ではガードや回避から反撃の起点を生み出すものがほとんどであり、逆に言えば、ハッキリとした反撃の起点を自らが生み出せていた。 --ボス戦は全体的に攻撃のメリハリがなく、はっきり言えばダラダラと攻撃してくる為、パターンが非常に掴みにくい。~ 分かりやすい反撃チャンスは終盤に行くほど減り、結局は攻撃の合間に1、2発当ててチマチマと反撃し、回復魔法ゴリ押しで突破という形になりやすい。 --フリーフローシステムは各ボス戦でもほぼ必須となっている。しかし、『II』のリアクションコマンドの様に、それを起点に反撃へ移るには至らず、あくまで攻撃・移動手段の一つに落ち着いている為、折角の爽快感を生かし切れていない。 -雑魚戦も同様で、全体的によろけを取りにくく、こちらの攻撃中に割り込まれる形で反撃を食らう事もしばしばある。 --終盤の相手の中には「丸まってバウンドする攻撃をするが、この攻撃中は完全無敵状態」「当たり判定も含めて完全に姿を消し、突然ほぼゼロ距離に現れて攻撃、再び姿を消す」「頭部(オプション)と胴体(本体)が完全に分離し、胴体がよろけている間も頭部は自由に行動・攻撃する」など、少々無理のある形で難易度を上げている雑魚敵も存在する。 --総じて、瞬間瞬間の爽快感はあるが、プレイヤーが一方的に攻撃し続ける事を許さない様に作られている印象が強い。爽快感を追求し過ぎた結果が、ライト向けに作られた「II」である為、~ シリーズの反省を踏まえた難易度調整ともいえるが、折角の新システムや煮詰められた戦闘バランスと調和できていないのも確かである。 --「ひるみ」に関わる隠しパラメータとして各種技には「リアクション値」というステータスが設定されており、この数値が大きいほどひるみを取りやすくなる。~ 通常攻撃である「たたかう」のうちもっとも基本的な技のリアクション値がゼロであるため、基本的に至近距離で普通に「たたかう」をした場合はひるみを取ることが出来ない(遠距離での突きからなら取れる)。 --つまりこの''雑魚のひるみにくさは調整不足などではなく意図的なものなのである''。単なる設計ミスならまだしも、''これで良しとしているのだからなおのことタチが悪い''。 --''リアクション値が極端に低いのは通常攻撃のみ''であり、他のリンク攻撃や各種コマンド技は高い数値が設定されているものがほとんどである。つまりこれらの要素を使わせるための意図的な調整か。過去作で散々揶揄されてきた「連打ゲー」という風評からの脱却を狙ったものと思われる。 --なお、PS4版では、雑魚敵がかなりひるみやすくなっている((通常攻撃のリアクション値が増加している))。しかし、大型のドリームイーターやボスタイプのものは変わっておらず、解決には至っていない。 -それ以外にも、足が速いうえにフラフラ走り回って(飛び回って)どこかへ行ってしまうような行動ルーチンのものが多いなど、テンポが削がれやすい要素がちらほらと存在する。 --通常のエンカウント時なら無視して良いが、敵の殲滅が必須な場面ではどうしても追跡する必要があるため面倒。今作はフリーフローを意識してか、かなり高めの段差が多く用意されており、落ちてしまったりすると更に面倒。 ''バトル関連の細かい操作性'' -操作性も完璧とは言えない。この点は携帯機作品かつ類似のシステムを持つ『BbS』『Re:coded』とよく比較される。 --コマンドデッキの操作が非常にやりにくい。BbSの操作方法に慣れ親しんだ人なら尚更そう感じる。 --デッキ送りを十字ボタンで行うことには変わりないが、BbSはPSPの作品であり、方向キーは上部にあった。しかし、3DSの十字ボタンは下に付いているため、指の配置を考えるとどうしてもデッキを下に送ることが難しくなってしまう。 --同様にデッキコマンドシステムを採用した『Re:coded』では、Lボタンを使うことでデッキを操作できたため、これを採用してほしかったという声も多い。 --また、『Re:coded』では前述のLボタンのデッキ送りや、視点の変更、キャンプメニュー内でのアイテム使用など便利な要素もあり、どうして本作でも採用してくれなかったのかと不満を漏らすファンもいる。 ---なお『Re:coded』とは開発元が別であった事や本作と開発期間が一時的に重なっていた為ノウハウをそのまま流用できなかったのかもしれない。 -この他、エアリカバリー((攻撃を受けて吹き飛ばされた際、一瞬無敵になりながら体勢を立て直す。いわゆるハメ防止))系の入力受付が遅く、リカバリーする前に着地したり((吹き飛ばされた状態で着地すると、硬直が通常よりも長くなる))、連続ヒットさせられる事が多い、 リクの地上コンボフィニッシュの発生が異様に遅く、相手によっては途中で抜けられる等、いまいち調整しきれていない部分も散見される。 -フリーフローアクションが暴発しやすい --ドッジロールやエアスライドなどで敵の攻撃を回避しているときに壁に当たってしまうとプレイヤーが意図せずともフリーフローアクションに移行してしまう。 --上記の通りフリーフローアクションは外すことも可能なのだが、ウォールキックとスーパージャンプとスーパースライドはアクションコマンドに存在せず外すことができない。 --ウォールキックはスーパーアーマーが付加されるとはいえ硬直が長く、高難易度だと一撃が致命傷になることもあるのでこの暴発のせいで泣きを見ることも多々ある。 ''スピリットの問題点'' -「スピリット」の行動パターンを決める「性格」についてゲーム中でほとんど説明が無いため、具体的にどの性格で何をしてくれるのか良く分からない。 --「かしこい」「ゆうもう」等なんとなく想像がつくようになっている性格名も多いが、一方で「ノラ」「バジリスク」「レーサー」等やっぱり良く分からないものも多い。 --性格の違いで立ち回りも大きく変わり、性格によって解放されるリンクアビリティもある為、難易度高めの今作では結構重要な問題である。 --性格によって目の色も3色にかわるため、目の色を見てある程度判断することもできる。 //-名前が雑なスピリットが少なからずいる。 //--「ネコキャット」「タカイーグル((イーグルは「鷲」だが、生物学の違いはない))」「ゾウエレファント」など、同じ意味の言語を変えただけのスピリットがいる。 //--「キバタイガー」「ツノケラトプス」「ハサミクワガタ」など、動物名と体の一部の2つだけで構成されているスピリットもいる。 //---特にツノケラトプスは直訳すると「角角の顔((「ケラトプス」は」角の顔」を意味する。トリケラトプスなら「3本角の顔」、ペンタケラトプスなら「5本角の顔」、ディアブロケラトプスやら「悪魔のような角の顔」など))になってしまう。 //--一応、固有名詞を自由につける事もできる。 //これは単にそういうネーミングで多くのスピリットを統一してるだけなのでは -ソラ、リクの強化のためにスピリット選択の幅は狭まることがある --上述のスピリットの特徴に記載の通り、スピリット達との触れ合い(によるリンクアビリティ)を通じて、自分達の基礎能力を強化する事ができる。しかし、本作におけるアビリティの取得は、このリンクアビリティにほぼ全面的に依存している為、レベルアップによる能力強化は限定的。 --「コンボプラス((通常攻撃のコンボ回数を1つ増やす。手数が増える一方、高威力のコンボフィニッシュを、ボスや素早いエネミーに当てにくくなるデメリットもある))」の様なメリット・デメリットあるものはもちろん、「リーフベール((ケアル系魔法を使う際に無敵状態になる。複数の敵によるハメを抜け出す事も可能))」や後述の「ラストリーヴ((HPが0になるような攻撃を受けても、1だけ残して耐える))」もこれに該当する。~ なおかつ、これらアビリティはスピリットで共通の物ではなく、取得できるスピリットが決まっており、しかも育成の最終盤にようやく取得できる。アクションアビリティ以外はソラとリクで共有できるのが救い。 --有用なアビリティはある程度育てないと手に入らない事から、目的のアビリティ取得まで同じスピリットを連れ歩かざるを得ない。 ''多数のバグ'' -実質1年ほどの短期間制作のためかバグが多い。後に修正パッチが配信されるが、初期バージョンでは進行不能バグなど結構重大なバグが多かった。公式HPにもいくつか載っている為チェックしておくと良いだろう。 --現在でも全ては修正されておらず、特定条件を満たしてしまうとリクの最大HPが低くなるバグなどいくつかは残っている。 -ここまでに記載されている通り、あと一歩の調整不足やテストプレイ不足なども散見される為、製作期間の短さがなんとも惜しまれる作品である。 ''その他の問題点'' -本作のクリティカルモード(最高難易度モード)は「被ダメージ激増、与ダメージ半減」というバランスで、『KHII FM』においての「防御面はもろくなるがこちらの攻撃力も上昇する」というアクションゲームの醍醐味であるヒット&アウェイをより強く楽しむ事が出来るようになっていた物とは全く逆方向のバランス調整となっている。 --「相変わらず詰めが甘い」「アクションの醍醐味をまるで分かっていない」と、アクションを大事にするファンからは辛辣な批判が寄せられた。 --一応、本作ではLv1でも一撃死を免れる「リーヴ系」のアビリティを手に入れることができ((ただし1周目のデータからリーヴ系のアビリティを所持したスピリットを連れてこないと入手はだいぶ終盤になってしまう。))、そもそもクリティカルモード自体がクリア後の特典であるという違いがあるが、それにしたって苦行すぎる。 --ちなみに制作チームが同じ『BbS FM』のクリティカルモードも、与ダメ半減でこそなかったが後半こちらの火力が極端に不足するという欠点はこの時点で指摘されていた。リーヴ系のアビリティを序盤から用意できる点も同じ(ちなみにKH2ではレベルで習得)。 -シリーズマニア向けのやりこみ要素「Lv1プレイ」も本作のゲームデザイン上落とし穴がある。 --なお、経験値ゼロのアビリティこそあるがLv1でのプレイは極端な縛りプレイであるため、きわめてマニアックな遊び方であることは注記しておく。しかし、こうした遊び方は『IIFM』『Re:coded』等で絶妙なバランスで成り立っていたというのも事実であり、アクションに自信があるプレイヤーたちにはシリーズ恒例のやり込み要素となっている現状がある。 --2周目以降のスピリット引き継ぎと「EXPゼロ」装備時でもスピリットには経験値が入るという仕様や、そもそも今作の敵は防御力は低く最大HPを高める方向でのパラメータ調整になっていることなどから、今作のLv1攻略は多彩なブースト要素をフル活用してパラメータを高め、敵の防御力を直接上回るようにして攻略するように、意図してこのようなバランス調整が行われていたと思われる。 --これは上述の『BbS FM』だけでなく、好評だった『IIFM』でも決して見られなかった調整であり、本作の発売時点で既にプレイヤー間では「''終盤では攻撃力・魔法力はいくら上げても敵の防御力(≒最低与ダメージ)を超えられないため無意味''」という風評が定着してしまっていた。 --後年になって研究が進んだ結果、従来シリーズとは異なりステータスブーストの手段が多い今作では、''Lv1であってもラスボスクラスの敵の防御力を上回る攻撃力・魔法力で攻略可能''であることがわかっている((当然敵の防御力を上回れるなら最低保障のダメージだけで戦うより遥かに高効率で戦うことが可能。))。 --つまり、調整不足だったのではなく、''馴染みのない新システムに根幹を任せてしまったことが問題だった''のである。~ ましてや、上述のように、スピリットの育成もサクサク進められるものではない為、慣れている・早く進めたいプレイヤーにほど軽視されやすく、狙いとプレイする層がズレていた事も要因となった。 --バランス調整自体は上述のようにむしろ緻密かつ過去作の反省を活かしたものとなっているため、それがプレイヤーになかなか理解されなかったのは惜しまれるところではある。 --発売当初はクリア報告も僅かしか存在していなかったが、以下の仕様が明らかになった現在ではクリティカルLv1での攻略達成報告も多く上がるようになった。 #region(風評の一因について) 特に同制作チームであった『BbS FM』の影響は大きい。『BbS』は敵の防御力が高めであり、更に最低与ダメージが基本的に1ダメージと非常に低いバランスであったことから、一部の状態異常攻撃を除けば「最大HP=攻撃回数」であるとプレイヤー間では揶揄されていた。~ そして今作でも根本的なダメージ計算式は『BbS』とほぼ同じであり、レベル1での基本攻略法は『BbS FM』と同様だとプレイヤーに誤認させる要素は揃っていた。更に『BbS』に存在したシュートロックなどの超多段ヒット技も本作では大幅に削減されており、最低与ダメージで戦う限りにおいては火力も大幅に低下してしまっていた。このことがドロップシステム、及び終盤のとあるボスの制限時間の仕様に対してLv1では火力不足で対抗できない、という認識を定着させ、前述の不評を生むことになった。 #endregion() ---- **総評 総合的に見れば十分良作に値する作品ではあるが、『BbS』から改善の兆しが見えない部分もある事で、良くも悪くも大阪チーム製KHの作風が明確になった一作でもある。~ シリーズの新機軸を打ち出したフリーフローアクションには一定の評価が集まっている。~ その他の新要素も本作独自のフレーバーとしては申し分ない。~ 音楽やリアリティシフトによる演出もゲームに上手く絡めており、原作尊重の流れも崩れておらずディズニー作品の世界を鑑賞するだけでも面白い。~ ストーリーは複雑だが、一方でメモワールなどのシステムでシリーズ初見のプレイヤーにも手をつけやすくするような利点も存在する。~ しかし、かなり大きく賛否を分けたドロップシステムの存在、アクション関連の問題点もあり手放しに賞賛できる作品とも言えない。~ 過去作の問題点を積極的に解消しようと様々な仕様変更や新要素を追加したはいいものの、詰め込みすぎて空回りしてしまった要素も多くなってしまった。~ ---- **余談 -本作を代表するBGMである「Dream Eater」。 --かわいらしい女声の「らん♪らん♪らん♪らららん♪」が特徴的な曲なのだが、この曲を手掛けた下村氏は「&bold(){オジサンが低音で歌うキモかわいい曲はどうかな?}」と野村氏に提案していたらしい……どうやら却下されたようだが。([[参考>https://www.famitsu.com/news/201205/15014639.html]]) -『すばせか』からのゲストの一人である「ビイト」。 --彼が隠す妙に長い本名をヨシュアにバラされてビイトが大慌てする…という原作に良く似たシチュエーションがあるのだが……''名前の漢字を思いっきり間違えられている。'' ---「尾藤大輔之丞(ビドウ‐ダイスケノジョウ)」が本名なのだが、本作だと「丞」が「丈」になってしまっている。 ---後述のHDリマスター版ではちゃっかり修正されているのでご安心を。 --ちなみに原作でもヨシュアのセリフに「役不足」の典型的な誤用をしているものがあり、ある意味スタッフの間違った知識の犠牲者となっている。 -『[[シアトリズム ファイナルファンタジー]]』ではかつて「FFゆかりの人物たちにシアトリズムを体験してもらう」旨の動画が配信されていた。 --そこで最後に登場したのが野村氏だったが、''いきなりカメラを強奪したあげくシアトリズムそっちのけで本作の試作版を遊んでいた。'' ---スタッフも予想していなかった展開ではあるが、公開されたプレイ画面にはしっかりとディズニーのコピーライトが入っているところがこれまたシュール。 -野村氏は、スピリットとの触れ合いは『nintendogs』の影響を受けたと「社長が訊く」のインタビューで語っている。(リンクは下記。4ページ目を参照。) --「''『nintendogs』はなんで戦えないかなーって(笑)''」と、かなり突き抜けた発言を岩田社長の前でしている。字面から察するに、一同大ウケだったようだ。 -リンク:[[社長が訊く 第15回 KINGDOM HEARTS 3D>http://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/creators/vol15/index.html]] --インタビューを受けている部屋のムードがなんというかノムリッシュ(いい意味で)。他の作品のインタビューでは明るい場所を選んでいるため尚更目立つ。 --これまで見られなかった野村ディレクターの意外な一面を見ることができる。 ---- **その後の展開 -ナンバリングでないが本作は『BbS』と同様に本編に匹敵するボリュームと内容を持つ作品であり、後のシリーズでも『BbS』相当の扱いがされる事が多い。しかし『I』『II』『BbS』のような追加要素を加えた「ファイナルミックス」が発売される事は無かった。 --ディレクターは「大阪開発チームが複数のタイトルを抱えていてそれどころではない状況なので、数年後はわからないが現在はその予定はない」と答えており、結果として下記のHDリマスター版としてリリースされるに留まっている。 -本作のスタッフロールではある仕掛けが施されており、条件を満たすとキーワードグロッサリーに謎の英文が追加される。 --簡単に訳すと「過去はより精彩な新たな数字として目覚める。次のナンバーの目覚めに備えよ」。 --これだけだとよく分からないだろうが、過去=以前の作品。新たな数字=HDリマスター版『1.5』『2.5』。次のナンバー=『III』の事で、要するに''『III』の復習用としてHDリマスター版が出る事''を予告している。 --この予告通り1年後には『1.5』が。その1年後には『2.5』が発売された。 -過去作HDリマスターに収録される中で本作だけ仲間外れの状況になっていたが、2017年1月に発売された『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』(PS4)に本作のHDリマスター版が収録された。 --素のドロップゲージ蓄積速度の低下((速度1.0で15分でドロップだったものが20分になった))に加え、ドロップボーナスに「ドロップゲージ速度低下」が追加され、ドロップ関連のバランスが大幅に緩和されている。雑魚敵もやや怯みやすくなった。~ これは3DS海外版の時点で既に実装されており、追加要素自体はほぼないものの実質FM版のような再調整版となっている。 --更に3DS版でタッチ操作が前提だった部分をPS4コントローラに合わせて操作の変更が行われた。 --やりこみ部分ではクリティカルモードの与ダメ補正が0.5倍から0.75倍に緩和された。 ---なお、他のシリーズのHDリマスターのようにアビリティ「EXPゼロ」自体に与ダメ補正が掛かる仕様は追加されていない。これは上記のように敵の防御力を直接上回るようにして攻略する、という本来意図したバランスが破綻しかねないためだろう。 --ちなみに本作にナンバリングを付けるなら、『''キングダムハーツ2.6''』になると言う。この「2.8」という微妙な数字も、同時収録の新作である『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-』の「0.2」を本作に足したものだとか。 -冒頭で述べた通り、本作は一作目から続く「ダークシーカー編」完結編である『[[キングダム ハーツIII]]』の序章に位置する作品である。 --しかし以降はシリーズはしばらくブラウザゲーム『キングダム ハーツ キー』((後にスマートフォンゲーム『キングダム ハーツ アンチェインド キー』としてリニューアルされ、更にアップデートで『キングダム ハーツ ユニオン クロス』に改題された。))や過去作のリマスターを中心に展開するようになり、上述の『2.8』が発売されるまで5年。『III』発売まで更に2年を要し、本作で予告された最終決戦が実際に始まるまでリアルタイムで7年もの歳月が掛かった。 ----

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