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*オーディンスフィア 【おーでぃんすふぃあ】 |ジャンル|アクションRPG|&amazon(B000NI3YN4)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売元|アトラス|~| |開発元|ヴァニラウェア|~| |発売日|2007年5月17日|~| |定価|7,329円(税込)|~| |廉価版|PlayStation2 the Best&br()2008年6月19日/3,990円(税込)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents(fromhere) ---- **ストーリー >それはある日アリスという少女が屋根裏部屋で見つけた古い絵本の物語。~ 大陸・エリオンは多くの国々を抱えた豊かな土地、しかし古代からの予言によりこの世界はいずれ「終焉」を迎えるという…~ かつて大陸に栄えていた「魔法大国バレンタイン」は、生命エネルギーとして空気中に漂い、大地の恵みを与える存在「フォゾン」を結晶化させる魔法の炉・コルドロンを作り出し各地を制圧。~ ところが栄華を誇っていたバレンタインはある日突如として原因不明の滅亡を迎えてしまう。~ 王の失われたコルドロンをめぐり、残された各国家はコルドロンを手中に収めるべく争い始める。~ 特に魔王「オーダイン」率いる北方の軍事大国・ラグナネイブルとフォゾンを糧に生きる種族である妖精の国・リングフォールド間の争いは熾烈を極め、~ もう一つの歴史ある大国・タイタニアでは宮廷魔術師ウルズールの策略により国王は傀儡化されていた。~ もはや誰も止めるものも居ないまま戦火は日増しに強くなり、多くの陰謀うごめく中終焉の予言の時は刻一刻と近づいていた…。 ---- **概要 『プリンセスクラウン』で一躍名を馳せた神谷盛治らによるヴァニラウェア開発、作曲は『伝説のオウガバトル』等を手がけた崎元仁で知られるベイシスケイプが担当。~ ワーグナーの楽劇ニーベルングの指環をベースに、戦争に翻弄される人々と世界の終焉を5人の主人公それぞれの視点から描く。~ 物語の世界には妖精、獣人、死霊などのファンタジーに定番のキャラクターが多く登場し、また多くの王国が戦争を起こしている。 育成システムは「敵を倒したときに発生するフォゾン(生命の力の源であり、宙を漂うエネルギー体)を用いた武器の強化」「食事を摂る事によるHP最大値の強化」の2つのみというシンプルな作り。~ アクション部分は強いが、アクションが苦手な人でも育成を行ったりアイテムを上手く使えば切り抜けられるバランスになっている。 ---- **基本システム -横スクロールアクション風だが、戦闘するステージには所謂「壁」はなく、ステージはリング状になっている。ラウンド(各地域)ごとに多くのステージ同士の繋がったマップがあり、キャラクターごとにステージの開始場所や難易度構成、クリア報酬などは異なっている。 -5人の主人公の物語は章立てになっており、一人をクリアしたら次の主人公の章をプレイ可能に…という流れになる。 --各章は必ずしも時系列順にはなっていない。実際の時系列のつながりや、その時々で各主人公がどう動いていたか等については、ストーリーアーカイブスで閲覧可能。 ***サイファー 生命エネルギー「フォゾン」を結晶化させた魔石で作られた武器。竜の鱗も切り裂く程の無類の性能を誇る上、フォゾンを吸収する事で更にそのエネルギーを蓄積して力を増していくという生きた武器となる。~ 主人公たちはそれぞれ形状は異なるもののこれらのサイファーを扱う事になる。 -フォゾンはゲーム中で敵を倒すと出現するほか、戦闘中に稀にフォゾンの蝶が発生する事がある。吸収アクションをとる事で武器に吸収され、経験値が溜まると攻撃力も上昇していく、経験値ゲージとは別にサイファーゲージもあり、蓄積したゲージによって強力なサイファースキルを放つ事も出来る。 --戦闘中に連続攻撃を行っていると減ってしまうPOWゲージも早く回復することが可能。 ***通貨 -本作では貨幣単位がゲーム内で統一されているわけではなく、「○○硬貨」といった具合に複数種の硬貨が存在する。所持数も硬貨ごとに分かれている。 --買い物の際には「どの硬貨を何枚使うのか」という指定をする。記念硬貨などは後述する料理施設で使用する為、使い分けが大切になる。もちろん記念硬貨でも普段の買い物に使ってしまうという選択肢もある。 --こういった記念硬貨集めも単なる「金稼ぎ」とはまた一味違った「コイン収集」的な楽しみ方が出来るだろう。 ***食事・アイテム -食事を摂る事でHP経験値が増加し、HP最大値を増やす事が可能。 --回復アイテムも兼ねているため、アクション戦闘でよくダメージを受けてしまうプレイヤーも、意識せず成長の機会が増える。 ---HP回復効果の高い食事は食べるのに時間がかかる、など特徴がある。 --アイテムによっては小分けして食べる物もあり、これらの場合は複数回にわけて使用できる。 -一方、薬は摂取が早く回復効果も高いが、こちらではHP経験値は増えない上に合成以外では手に入りにくい。 -木の実系統の回復アイテムは完食後に種が残り、植えるとフォゾンを吸収して成長する。 --成長しきると実り、収穫することで再び利用できるのでお金を使わずにアイテム入手可能。 --タマゴからヒヨコをふ化させ、種を食べさせて育てる事でタマゴの量産、鳥肉の入手が出来るなどの楽しみも。 -中盤から記念硬貨と持ち込み食材でより豪華な料理を楽しめる「プーカキッチン&カフェ」という施設も利用できるようになり、より育成に力を注げるようになる。 --その料理のどれもが美味しそうな解説+グラフィックな為、見ているだけでプレイヤーの食欲も増進される。 --後に「ヴァニラウェアといえば食事ゲーム」と言われるようになるが、本作もその一つ。存分に堪能しよう。 -マテリアルと合成 --マテリアルという水薬にアイテムを混ぜる事で数値を変化させ、1の桁の数値と各種マンドラゴラとの組み合わせで様々な薬品を作ることが出来る。 --マテリアルに混ぜるアイテムは、装備品から肉を食べた後に残る骨まで様々なアイテムを合成可能。またマテリアル同士を合成させることで数値を掛け合わせることが出来る。 --合成結果に反映されるのは1の桁のみだが、マテリアル数値が大きいほど合成した時にボーナスフォゾンが発生し、フォゾンが必要な場面などで活用できる。 ---- **評価点 ***グラフィック -非常に多彩で滑らかなキャラクターグラフィックで評価されたプリンセスクラウンに続き、その鮮やかな色彩、絵本のようなタッチの背景、微細な首の動きからつま先までこだわったキャラクターアニメーション等、グラフィックはどこを見ても素晴らしいの一言。~ キャラクターのモーションも非常に細かく、物を食べたり飲んだりしたとき口をぬぐうモーションも各キャラごとに個性的。ダッシュ中にちらりとこちらを見る等、各所にこだわりを感じられる。 ***サウンド -崎元仁らベイシスケイブのBGMが秀逸で、本作の雰囲気に非常にマッチしている。 --公式サイトと本編を通して使われるメインテーマ曲のコーラスも美しい。この曲を聞いて購入を決めたプレイヤーもいるくらいである。 ---本作のサウンドトラックは2007年に発売されたが、2012年には再販されている。本作のBGMの評価が伺える。 ***シナリオ -多くの人間の陰謀や様々な思念の複雑な絡み合い、「終焉の予言」のキーワード、コルドロンを起動させる指輪を巡る抗争、そして鮮やかな伏線回収など濃密で破綻のないシナリオも好評。近年のゲームに多く見られる描写不足で消化不良な要素は少なく、オールクリア後の満足感は十分なものと言える。 --何気なく利用してきたシステムも最終盤でストーリー上に大きく絡んでいたりするなど、今までコツコツとキャラクターを育成してきたプレイヤーに驚きと感動を与えるだろう。 -愛くるしいキャラクターが多く出現するわりに、戦争物語の為かやや暗くなりがちだが、主人公達の恋物語や「プーカ」と呼ばれる獣人キャラクターたちの持つ勤勉さや誠実さによって上手く相殺されている((とはいえそのプーカもとてつもなく重い設定を持っているのだが))。 -ストーリーの時系列が追いやすいストーリーチャートも存在し、好きな時にストーリーイベントを閲覧することが出来る。 ***その他 -戦闘ステージには「マンドラゴラ」という宝探し的システムがあり、単調になりがちな戦闘ステージにも工夫がされている。 -声優陣の演技力も軒並み高く、演劇調の台詞も映える演出。 ---- **賛否両論点 ***ゲームバランス面 -戦闘バランスはやや癖があり、適当につっこんでいるとポンポン死ぬ。 --ただしゲームオーバー時のマイナス要素は一切無し。死んで覚える、という側面もある。 --全体的に高性能なアイテムが多く、ナパームというアイテムが入手が容易な割にかなり強力なので、これがあればほとんどの場面がどうとでもなる(救済とも言われている) ---あるラスボスにウーズを投げつけるとほぼ攻撃してこなくなるといった抜け穴もある。 ***演出・ストーリー -ストーリーは本の物語世界という設定の為、キャラの掛け合いは演劇調なのだが、臭い台詞が多く人によっては抵抗がある。 --声優陣は全体的に見て非常に演技力が高いのだが、それがかえってラブストーリー部分の迫真のポエムに思わず赤面するプレイヤーも多い。 --ただし演劇調の演出が好きな人には合っている演出だろう。また、音声のオンオフも可能。 --特に主人公の一人であるオズワルドは序盤は冷徹で孤独な剣士といったキャラなのだが、ストーリー中盤で愛に目覚めてしまい、その豹変っぷりとあまりに詩的な台詞から「ポエマルド」とまで呼ばれる事に。 ---- **問題点 ***ゲームバランス面 -キャラクター間の性能差は若干存在する。性能差というものはプレイアブルキャラが複数人のゲームならばあってしかるべきものだが、ストーリーの攻略順も操作キャラも固定である本作においては、使いにくいと感じるキャラクターも保留にしておく事が出来ない。 --最初の主人公であるグウェンドリンだが、武器が槍の割にリーチが短く、意外にクセのある動きなので初心者には操作が難しく感じてしまう。 --プレイキャラによっては通常の武器攻撃では倒せない敵が存在し、アイテムのストックがないと下手すると詰む。いつでもホームポイントには戻れるので進行不能になる事は無いが。 --最終シナリオのラスボス群はキャラクターを選択して挑めるのだが、あるボスにメルセデス((遠距離攻撃、リロードの必要あり、飛行可能など他のキャラとは大きく異なった性能のキャラ))で挑むと性能上、勝つのが難しくなってしまう。尤も、その組み合わせはトゥルーエンドの条件ではないし、また、それでしか発生させられないイベントがある訳でも無いので、無理に挑む必要は無い。 -5人目をクリアすると主人公全員とラスボス群が対決する最終シナリオが解禁される。この最終シナリオはラスボス戦のみであり、経験値稼ぎや買い物など一切出来ない。もし勝てなくてキャラを強化したい場合は、そのキャラのシナリオを再度プレイしなければならない。 --しかしクリア後の再プレイでは、一度クリアしたキャラのストーリーを最初からプレイする羽目になる。序盤ではレベル上げやアイテム集めがままならないので、効率よく強化する為にまたストーリーを進めなければならない訳である。 --料理やマテリアルなどの合成レシピも各キャラの攻略を進めるごとに増える仕様なので、後半手に入る優秀な回復アイテムのレシピは当然1キャラ目であるグウェンドリンはクリアしたままのデータでは所持していない。 --ラスボス群はそれぞれのシナリオのボスよりも段違いに強いので、辛うじてクリア出来たような状態ではとても勝てる相手ではない。また、アイテムも揃える必要があるので、予めラストバトルに備えた状態でクリアでもしていない限り、必然的にやり直しを強いられる。 --但し、シナリオ選択画面にはいつでも戻れるので、最後までクリアする必要はない。また、パラメーターが引き継がれた状態なので、サクサク進める事は出来る。 -アイテムがスタックされないので、バックパックは常にほぼ満杯になりがち。 --逆に言えばどんどん合成などに使うプレイが正解なのだが、戦闘後の報酬アイテムは大量に出現する傾向があるため、戦闘が終わるたびに合成タイムが挟まれてしまいややテンポが悪い。どんなアイテムでも使い道が豊富に用意されているのもあって、捨てるにも勿体無いと思わせてしまう。 --持ち込み料理用食材や稀少な薬などを保存しておこうとすると、バックパックは常に圧迫され続ける事になる。 -効果の高い回復薬や料理などでよく利用されるマンドレイクが、キャラクターによっては入手が難しい。 --ある2ヶ所の地域でよく採れるものなのだが、その2ヶ所とも物語途中で再進入不可能になってしまう事が多い為、入れる期間中に確保しておかないと入手しにくくなる。一応回復アイテムは代替となるアイテムが豊富ではあるのだが… -ロードが長い上に頻繁に発生する。イベントスキップの選択もロードが終了してからのため、ロード→イベントスキップ→ロード、とかなり待たされることになる。ただし初期型PS3で起動すればかなり改善されている模様。 -処理落ちがひどい。前述した救済処置であるナパームだが、これも処理落ちする。死の国のボスなどはスカート部分の処理のせいか取り巻きのアルファ処理のせいか、何もしなくても動きがスローになるので更にナパームを使うとフリーズする事もある。 --本作はボリュームもかなりある。プレイを投げたプレイヤーの理由の大半がロードや処理落ちを上げており、何気に本作で一番の問題ともいえる。こちらも起動ハードにより多少は改善される。 --ロード/処理落ち関係は、ハードスペックが上がったリメイク版ではほぼ解決されている。 ***演出・ストーリー -美麗なグラフィック故に使いまわしが気になる。ステージ攻略は同じような背景が続いてしまうためやや単調と言える。物語中の重要な登場人物も色違いのモブキャラのような人物が多い。 --キャラクター全員で共通のステージばかりなのも単調に感じる。とあるボスとは主人公5人全員が一度は戦うハメになる。 //-ストーリー上戦闘に勝っても(例え圧勝でも)プレイヤーキャラが死んでしまう展開がある。前述したウーズを投げつけると動きが停止するボスでそういった演出があるとプレイヤー的にはやるせなくなるだろう。 //--またバッドエンドで滅びる世界に残された人々のシーンがあるのだが、トゥルーエンドでも描写されていないだけで同じ状況にはなっているものと思われ、結局彼らは救われていない。 //この辺はちょっとネタバレに繋がりかねないので… ---- **総評 完成されたシナリオ、絵本のような美しいグラフィックで描かれた世界。~ 本作は国内・海外で評価され、ヴァニラウェアの知名度を一気に向上させた。 ---- **余談 -本作、さらに『プリンセスクラウン』でも登場した「おべんとパン」は、アニメ映画「天空の城ラピュタ」に登場した目玉焼きを乗せたバタートーストがモデル。一口目で目玉焼き部分から食べる点も元ネタ準拠。 -残念ながら本作のアートワークは予約特典として頒布されたため、今現在は入手が困難となってしまっている。 -本作のフルリメイク版として、『[[オーディンスフィア レイヴスラシル]]』がPS3/PS4/PSVにて発売された。 --ゲームシステムの大幅な改修が行われており、全体的にシンプルかつ遊びやすい調整になっている。PS2版をHDリマスターしたクラシックモードも収録されている。
*オーディンスフィア 【おーでぃんすふぃあ】 |ジャンル|アクションRPG|&amazon(B000NI3YN4)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売元|アトラス|~| |開発元|ヴァニラウェア|~| |発売日|2007年5月17日|~| |定価|7,329円(税込)|~| |廉価版|PlayStation2 the Best&br()2008年6月19日/3,990円(税込)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents(fromhere) ---- **ストーリー >それはある日アリスという少女が屋根裏部屋で見つけた古い絵本の物語。~ 大陸・エリオンは多くの国々を抱えた豊かな土地、しかし古代からの予言によりこの世界はいずれ「終焉」を迎えるという…~ かつて大陸に栄えていた「魔法大国バレンタイン」は、生命エネルギーとして空気中に漂い、大地の恵みを与える存在「フォゾン」を結晶化させる魔法の炉・コルドロンを作り出し各地を制圧。~ ところが栄華を誇っていたバレンタインはある日突如として原因不明の滅亡を迎えてしまう。~ 王の失われたコルドロンをめぐり、残された各国家はコルドロンを手中に収めるべく争い始める。~ 特に魔王「オーダイン」率いる北方の軍事大国・ラグナネイブルとフォゾンを糧に生きる種族である妖精の国・リングフォールド間の争いは熾烈を極め、~ もう一つの歴史ある大国・タイタニアでは宮廷魔術師ウルズールの策略により国王は傀儡化されていた。~ もはや誰も止めるものも居ないまま戦火は日増しに強くなり、多くの陰謀うごめく中終焉の予言の時は刻一刻と近づいていた…。 ---- **概要 『プリンセスクラウン』で一躍名を馳せた神谷盛治らによるヴァニラウェア開発、作曲は『伝説のオウガバトル』等を手がけた崎元仁で知られるベイシスケイプが担当。~ ワーグナーの楽劇ニーベルングの指環をベースに、戦争に翻弄される人々と世界の終焉を5人の主人公それぞれの視点から描く。~ 物語の世界には妖精、獣人、死霊などのファンタジーに定番のキャラクターが多く登場し、また多くの王国が戦争を起こしている。 育成システムは「敵を倒したときに発生するフォゾン(生命の力の源であり、宙を漂うエネルギー体)を用いた武器の強化」「食事を摂る事によるHP最大値の強化」の2つのみというシンプルな作り。~ アクション部分は強いが、アクションが苦手な人でも育成を行ったりアイテムを上手く使えば切り抜けられるバランスになっている。 ---- **基本システム -横スクロールアクション風だが、戦闘するステージには所謂「壁」はなく、ステージはリング状になっている。ラウンド(各地域)ごとに多くのステージ同士の繋がったマップがあり、キャラクターごとにステージの開始場所や難易度構成、クリア報酬などは異なっている。 -5人の主人公の物語は章立てになっており、一人をクリアしたら次の主人公の章をプレイ可能に…という流れになる。 --各章は必ずしも時系列順にはなっていない。実際の時系列のつながりや、その時々で各主人公がどう動いていたか等については、ストーリーアーカイブスで閲覧可能。 ***サイファー 生命エネルギー「フォゾン」を結晶化させた魔石で作られた武器。竜の鱗も切り裂く程の無類の性能を誇る上、フォゾンを吸収する事で更にそのエネルギーを蓄積して力を増していくという生きた武器となる。~ 主人公たちはそれぞれ形状は異なるもののこれらのサイファーを扱う事になる。 -フォゾンはゲーム中で敵を倒すと出現するほか、戦闘中に稀にフォゾンの蝶が発生する事がある。吸収アクションをとる事で武器に吸収され、経験値が溜まると攻撃力も上昇していく、経験値ゲージとは別にサイファーゲージもあり、蓄積したゲージによって強力なサイファースキルを放つ事も出来る。 --戦闘中に連続攻撃を行っていると減ってしまうPOWゲージも早く回復することが可能。 ***通貨 -本作では貨幣単位がゲーム内で統一されているわけではなく、「○○硬貨」といった具合に複数種の硬貨が存在する。所持数も硬貨ごとに分かれている。 --買い物の際には「どの硬貨を何枚使うのか」という指定をする。記念硬貨などは後述する料理施設で使用する為、使い分けが大切になる。もちろん記念硬貨でも普段の買い物に使ってしまうという選択肢もある。 --こういった記念硬貨集めも単なる「金稼ぎ」とはまた一味違った「コイン収集」的な楽しみ方が出来るだろう。 ***食事・アイテム -食事を摂る事でHP経験値が増加し、HP最大値を増やす事が可能。 --回復アイテムも兼ねているため、アクション戦闘でよくダメージを受けてしまうプレイヤーも、意識せず成長の機会が増える。 ---HP回復効果の高い食事は食べるのに時間がかかる、など特徴がある。 --アイテムによっては小分けして食べる物もあり、これらの場合は複数回にわけて使用できる。 -一方、薬は摂取が早く回復効果も高いが、こちらではHP経験値は増えない上に合成以外では手に入りにくい。 -木の実系統の回復アイテムは完食後に種が残り、植えるとフォゾンを吸収して成長する。 --成長しきると実り、収穫することで再び利用できるのでお金を使わずにアイテム入手可能。 --タマゴからヒヨコをふ化させ、種を食べさせて育てる事でタマゴの量産、鳥肉の入手が出来るなどの楽しみも。 -中盤から記念硬貨と持ち込み食材でより豪華な料理を楽しめる「プーカキッチン&カフェ」という施設も利用できるようになり、より育成に力を注げるようになる。 --その料理のどれもが美味しそうな解説+グラフィックな為、見ているだけでプレイヤーの食欲も増進される。 --後に「ヴァニラウェアといえば食事ゲーム」と言われるようになるが、本作もその一つ。存分に堪能しよう。 -マテリアルと合成 --マテリアルという水薬にアイテムを混ぜる事で数値を変化させ、1の桁の数値と各種マンドラゴラとの組み合わせで様々な薬品を作ることが出来る。 --マテリアルに混ぜるアイテムは、装備品から肉を食べた後に残る骨まで様々なアイテムを合成可能。またマテリアル同士を合成させることで数値を掛け合わせることが出来る。 --合成結果に反映されるのは1の桁のみだが、マテリアル数値が大きいほど合成した時にボーナスフォゾンが発生し、フォゾンが必要な場面などで活用できる。 ---- **評価点 ***グラフィック -非常に多彩で滑らかなキャラクターグラフィックで評価されたプリンセスクラウンに続き、その鮮やかな色彩、絵本のようなタッチの背景、微細な首の動きからつま先までこだわったキャラクターアニメーション等、グラフィックはどこを見ても素晴らしいの一言。~ キャラクターのモーションも非常に細かく、物を食べたり飲んだりしたとき口をぬぐうモーションも各キャラごとに個性的。ダッシュ中にちらりとこちらを見る等、各所にこだわりを感じられる。 ***サウンド -崎元仁らベイシスケイブのBGMが秀逸で、本作の雰囲気に非常にマッチしている。 --公式サイトと本編を通して使われるメインテーマ曲のコーラスも美しい。この曲を聞いて購入を決めたプレイヤーもいるくらいである。 ---本作のサウンドトラックは2007年に発売されたが、2012年には再販されている。本作のBGMの評価が窺える。 ***シナリオ -多くの人間の陰謀や様々な思念の複雑な絡み合い、「終焉の予言」のキーワード、コルドロンを起動させる指輪を巡る抗争、そして鮮やかな伏線回収など濃密で破綻のないシナリオも好評。近年のゲームに多く見られる描写不足で消化不良な要素は少なく、オールクリア後の満足感は十分なものと言える。 --何気なく利用してきたシステムも最終盤でストーリー上に大きく絡んでいたりするなど、今までコツコツとキャラクターを育成してきたプレイヤーに驚きと感動を与えるだろう。 -愛くるしいキャラクターが多く出現するわりに、戦争物語の為かやや暗くなりがちだが、主人公達の恋物語や「プーカ」と呼ばれる獣人キャラクターたちの持つ勤勉さや誠実さによって上手く相殺されている((とはいえそのプーカもとてつもなく重い設定を持っているのだが))。 -ストーリーの時系列が追いやすいストーリーチャートも存在し、好きな時にストーリーイベントを閲覧することが出来る。 ***その他 -戦闘ステージには「マンドラゴラ」という宝探し的システムがあり、単調になりがちな戦闘ステージにも工夫がされている。 -声優陣の演技力も軒並み高く、演劇調の台詞も映える演出。 ---- **賛否両論点 ***ゲームバランス面 -戦闘バランスはやや癖があり、適当につっこんでいるとポンポン死ぬ。 --ただしゲームオーバー時のマイナス要素は一切無し。死んで覚える、という側面もある。 --全体的に高性能なアイテムが多く、ナパームというアイテムが入手が容易な割にかなり強力なので、これがあればほとんどの場面がどうとでもなる(救済とも言われている) ---あるラスボスにウーズを投げつけるとほぼ攻撃してこなくなるといった抜け穴もある。 ***演出・ストーリー -ストーリーは本の物語世界という設定の為、キャラの掛け合いは演劇調なのだが、臭い台詞が多く人によっては抵抗がある。 --声優陣は全体的に見て非常に演技力が高いのだが、それがかえってラブストーリー部分の迫真のポエムに思わず赤面するプレイヤーも多い。 --ただし演劇調の演出が好きな人には合っている演出だろう。また、音声のオンオフも可能。 --特に主人公の一人であるオズワルドは序盤は冷徹で孤独な剣士といったキャラなのだが、ストーリー中盤で愛に目覚めてしまい、その豹変っぷりとあまりに詩的な台詞から「ポエマルド」とまで呼ばれる事に。 ---- **問題点 ***ゲームバランス面 -キャラクター間の性能差は若干存在する。性能差というものはプレイアブルキャラが複数人のゲームならばあってしかるべきものだが、ストーリーの攻略順も操作キャラも固定である本作においては、使いにくいと感じるキャラクターも保留にしておく事が出来ない。 --最初の主人公であるグウェンドリンだが、武器が槍の割にリーチが短く、意外にクセのある動きなので初心者には操作が難しく感じてしまう。 --プレイキャラによっては通常の武器攻撃では倒せない敵が存在し、アイテムのストックがないと下手すると詰む。いつでもホームポイントには戻れるので進行不能になる事は無いが。 --最終シナリオのラスボス群はキャラクターを選択して挑めるのだが、あるボスにメルセデス((遠距離攻撃、リロードの必要あり、飛行可能など他のキャラとは大きく異なった性能のキャラ))で挑むと性能上、勝つのが難しくなってしまう。尤も、その組み合わせはトゥルーエンドの条件ではないし、また、それでしか発生させられないイベントがある訳でも無いので、無理に挑む必要は無い。 -5人目をクリアすると主人公全員とラスボス群が対決する最終シナリオが解禁される。この最終シナリオはラスボス戦のみであり、経験値稼ぎや買い物など一切出来ない。もし勝てなくてキャラを強化したい場合は、そのキャラのシナリオを再度プレイしなければならない。 --しかしクリア後の再プレイでは、一度クリアしたキャラのストーリーを最初からプレイする羽目になる。序盤ではレベル上げやアイテム集めがままならないので、効率よく強化する為にまたストーリーを進めなければならない訳である。 --料理やマテリアルなどの合成レシピも各キャラの攻略を進めるごとに増える仕様なので、後半手に入る優秀な回復アイテムのレシピは当然1キャラ目であるグウェンドリンはクリアしたままのデータでは所持していない。 --ラスボス群はそれぞれのシナリオのボスよりも段違いに強いので、辛うじてクリア出来たような状態ではとても勝てる相手ではない。また、アイテムも揃える必要があるので、予めラストバトルに備えた状態でクリアでもしていない限り、必然的にやり直しを強いられる。 --但し、シナリオ選択画面にはいつでも戻れるので、最後までクリアする必要はない。また、パラメーターが引き継がれた状態なので、サクサク進める事は出来る。 -アイテムがスタックされないので、バックパックは常にほぼ満杯になりがち。 --逆に言えばどんどん合成などに使うプレイが正解なのだが、戦闘後の報酬アイテムは大量に出現する傾向があるため、戦闘が終わるたびに合成タイムが挟まれてしまいややテンポが悪い。どんなアイテムでも使い道が豊富に用意されているのもあって、捨てるにも勿体無いと思わせてしまう。 --持ち込み料理用食材や稀少な薬などを保存しておこうとすると、バックパックは常に圧迫され続ける事になる。 -効果の高い回復薬や料理などでよく利用されるマンドレイクが、キャラクターによっては入手が難しい。 --ある2ヶ所の地域でよく採れるものなのだが、その2ヶ所とも物語途中で再進入不可能になってしまう事が多い為、入れる期間中に確保しておかないと入手しにくくなる。一応回復アイテムは代替となるアイテムが豊富ではあるのだが… -ロードが長い上に頻繁に発生する。イベントスキップの選択もロードが終了してからのため、ロード→イベントスキップ→ロード、とかなり待たされることになる。ただし初期型PS3で起動すればかなり改善されている模様。 -処理落ちがひどい。前述した救済処置であるナパームだが、これも処理落ちする。死の国のボスなどはスカート部分の処理のせいか取り巻きのアルファ処理のせいか、何もしなくても動きがスローになるので更にナパームを使うとフリーズする事もある。 --本作はボリュームもかなりある。プレイを投げたプレイヤーの理由の大半がロードや処理落ちを上げており、何気に本作で一番の問題ともいえる。こちらも起動ハードにより多少は改善される。 --ロード/処理落ち関係は、ハードスペックが上がったリメイク版ではほぼ解決されている。 ***演出・ストーリー -美麗なグラフィック故に使いまわしが気になる。ステージ攻略は同じような背景が続いてしまうためやや単調と言える。物語中の重要な登場人物も色違いのモブキャラのような人物が多い。 --キャラクター全員で共通のステージばかりなのも単調に感じる。とあるボスとは主人公5人全員が一度は戦うハメになる。 //-ストーリー上戦闘に勝っても(例え圧勝でも)プレイヤーキャラが死んでしまう展開がある。前述したウーズを投げつけると動きが停止するボスでそういった演出があるとプレイヤー的にはやるせなくなるだろう。 //--またバッドエンドで滅びる世界に残された人々のシーンがあるのだが、トゥルーエンドでも描写されていないだけで同じ状況にはなっているものと思われ、結局彼らは救われていない。 //この辺はちょっとネタバレに繋がりかねないので… ---- **総評 完成されたシナリオ、絵本のような美しいグラフィックで描かれた世界。~ 本作は国内・海外で評価され、ヴァニラウェアの知名度を一気に向上させた。 ---- **余談 -本作、さらに『プリンセスクラウン』でも登場した「おべんとパン」は、アニメ映画「天空の城ラピュタ」に登場した目玉焼きを乗せたバタートーストがモデル。一口目で目玉焼き部分から食べる点も元ネタ準拠。 -残念ながら本作のアートワークは予約特典として頒布されたため、今現在は入手が困難となってしまっている。 -本作のフルリメイク版として、『[[オーディンスフィア レイヴスラシル]]』がPS3/PS4/PSVにて発売された。 --ゲームシステムの大幅な改修が行われており、全体的にシンプルかつ遊びやすい調整になっている。PS2版をHDリマスターしたクラシックモードも収録されている。

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