「キングオブキングス」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

キングオブキングス」(2024/02/21 (水) 14:26:47) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*キングオブキングス 【きんぐおぶきんぐす】 |ジャンル|シミュレーション|&image(http://www.suruga-ya.jp/database/pics/game/174000136.jpg,height=160)| |対応機種|ファミリーコンピュータ|~| |発売元|ナムコ|~| |開発元|アトラス|~| |発売日|1988年12月9日|~| |定価|5,900円(税別)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents() ---- **概要 「ナムコット ファミリーコンピュータゲームシリーズ」第48弾のファンタジーウォーシミュレーション。~ 拠点を制圧して資金を調達し、ユニットを雇って敵軍との戦闘を繰り返しながら、最終的に総大将であるキングを打ち倒す。~ ---- **ゲームモード CPUプレイヤーと一対一で戦うキャンペーンモード「ルシファーとの戦い」(全4シナリオ+隠し1)と、自由にマップを選びCPUまたはプレイヤーから最大4人まで参加するフリー対戦の「マルチプレイモード」がある。 **システム ''主なルール'' -マップには2つ以上の城があり、最初は各陣営の大将ユニット「キング」が1人につき1つ守っている。敵キングを全員倒す事が勝利条件である。 --キャンペーンモードのCPU専用キャラクター「ルシファー」も、キング相当の存在として扱われる。 --マルチプレイモードでは「同盟」を設定できる。設定した場合は同盟国同士のユニットは戦闘を行えず、同盟国以外の勢力を全て倒すと勝利となる。 ---地形や町の位置関係により、同じマップでも城ごとにそれぞれ攻略難度が異なる。同盟設定を交える事で、チーム戦やハンデ戦など、更に幅広い遊び方ができるようになる。 ---なお、同盟はターンごとに組み直すことが可能。ゲーム外の会話戦での共謀や裏切りに制限など設けようもない話だが、度を越した悪用はしないように。 -キングが城にいる場合は、その城でお金を支払う事でユニットを雇う(召喚する)。 --軍資金は毎ターン一定額の収入がある他、他の城やマップ上に点在する都市を制圧している数だけ増額される。 --キャンペーンモードは、シナリオによって雇えるユニットに制限がかけられている。規模の小さいマップほど、強い制限の中で攻略しなければならない。 -自軍に属する城や町にいるユニットは、ターン開始時にお金を支払って、減った部隊やFOOD(後述)を補給できる。 -戦闘 --戦闘は、縦横斜めを含む周囲8マスに隣接したユニット同士で行う。戦闘を仕掛けた側が先制攻撃し、仕掛けられた側が全滅していなかった場合は反撃をして戦闘終了。 --ユニットは小型キャラの8部隊編成と、大型キャラの4部隊編成の2種類に分かれる。攻撃回数は生存している部隊数に応じる。なお、攻撃力はユニット同士の相性によって大きく変動し、中には意外な相手に高い攻撃力を発揮する組み合わせもある。 --戦闘を行ったユニットは、倒した相手との相性に応じて内部パラメータである経験値がランダムで蓄積され、戦闘を繰り返すことでレベルが上がる。レベルの上がったユニットは攻撃力にプラス補正がかかる。また、人間に属する一部ユニットは、これによってクラスチェンジして能力が大幅に強化される。 ---相性が悪く高ダメージを被弾しやすい敵ほど戦闘後にレベルが上がりやすい仕様となっている。部隊数が減って弱った苦手ユニットを相手に経験を積むのも有効な戦術である。 -縄張り --2つ以上の自軍ユニットを1マス開けて配置すると、両者の間にはユニットを倒さないと自陣営以外のユニットが1歩ずつしか進めない、俗に言う「縄張り」が発生する。少数のユニットでも、地形と縄張りを活用すれば有効な防衛線を作ることができる。逆にその縄張りを突破するには、防衛線の弱点を的確に突かなければならない。 -ユニットの移動 --一般的なウォーSLG同様、ユニットの移動力から地形に応じたコストを差し引いて移動させる。地形によるロスコストの大小も、ユニットごとに様々である。 ---地形には、戦闘時に防御力に加算される地形効果が設定されている。なお飛行ユニットは地形効果を受けられない。 --本作には各ユニットが個別に管理する「FOOD」というパラメータがある。移動するごとにこれを消費し、足りない場合はそれ以上動く事ができなくなる。 ---FOODを回復するには、占領した町で補給するか、ユニット「モンク」の回復魔法を使う。また、行動せずにターンを終えれば次のターンで1回フル移動できる分のFOODを獲得できる。 ''ユニットの種類'' -ユニットにはカテゴリがあり、城で雇用できる人間・妖精・ドラゴンの各種族と、位置づけの特殊なモンスターに分類される。&brお金で雇う基本のユニット13種に、クラスチェンジする一部ユニットの上位ユニットが6種、これにモンスター3種とキング、ルシファーを加えた、全24種類が登場する。 #region(種族とユニット一覧) -「''人間''」:初期状態では打たれ弱いが、成長すれば他では得られない大きなアドバンテージの生じる、将来性の高い種族。キングやファイターによる占領で軍資金の増加にも貢献する。 --''キング/ルシファー:''城や町の占領と部隊の生産ができる総大将。 ---ルシファーはキャンペーンでCOMとしてのみ登場。 --''ファイター:''能力は低戦闘力かつ最安値。キング以外では唯一、町の占領を行える。 --''ナイト→シルバーナイト→ドラゴンナイト:''機動力を生かした前線向けユニット。 --''モンク→プリースト→ビショップ:''回復魔法とゴーレム作成の魔法を使える。 --''ソーサラー→メイジ→ウィザード:''攻撃魔法(反撃不能)とスケルトン作成の魔法を使える。 ---ファイターは実はキングに対して有利に戦えるユニットであり、それ以外の3種はレベルが上がるとクラスチェンジしてドラゴン族をも圧倒する攻撃力を持つようになる。中盤以降の主戦力。 -「''妖精''」:中堅を固める奥の深いユニット群。 --''ゴブリン:''山の種族。ファイターに対して強い。 --''ハーピー:''空の種族。飛行能力を持ち、機動性が高い。 --''エルフ:''森の種族。飛行ユニットに対して強い。 ---ゴブリン・ハーピー・エルフは互いに3すくみの関係にある。また比較的安価。 --''ジャイアント:''そこそこのコストで高い防衛性能を持つ。 --''グリフォン:''高速で飛行する。ナイトに対して強い。 -「''ドラゴン''」:大部分が大型部隊。長所が顕著で強力なユニットが揃うが、一方で雇用・補給ともコストが高く、安易な運用は命取りとなる。 --''リザードマン:''海や川の種族。ドラゴン族では最安値かつ唯一の小型部隊。 --''ワイバーン:''最長移動距離を誇る飛行ユニット。 --''サーペント:''陸ではろくに動けないが水上での戦いに長ける。 --''ドラゴン:''一騎当千の歩く要塞。 ---ドラゴン・サーペント・ワイバーンは互いに3すくみの関係にある。 -「''モンスター''」:魔法による召喚ユニットと、CPU専用ユニットが存在する。抜きん出た強さは無いものの、ノーコストで出現して進軍の邪魔をする面倒な存在。 --''ゴーレム:''モンク系ユニットの魔法で召喚される。 --''スケルトン:''ソーサラー系の魔法で召喚される。 --''コカトライス:''キャンペーンモードの毒砂漠・毒沼地形でランダムに出現する。 #endregion ---- **評価点 -ユニット間のバランスが良い。 --例として第一に挙げられるのは、全てのマップで重用する事になるファイターと、それに対して有利に戦えるゴブリン、そのゴブリンを巻き込んで3すくみの関係にある安価ユニットのハーピー・エルフらの位置づけ。実際、ストーリーモード最初のシナリオで雇えるのはこの4種のみであり、これだけでゲームを構成しうる底力を持っている。 --基本的に先手側圧倒有利な戦闘ルールなので、補給にもお金のかかる高コストユニットはそれだけ慎重に運用しなければならない。取り回しの良い小型部隊、それらに対して適度に強い中コストの大型部隊、中堅ごときなら蹴散らせる高コストの大型部隊、そんな高コスト群を足止めする小型部隊編隊…といった、大局的な意味での3すくみも成立する。 --完全無欠のユニットも、死にユニットも存在しない。マップによっても活躍の幅に違いがあり、絶妙なバランスの上で様々なユニットを取り混ぜて戦う面白さがある。 -SLGにおいて総ユニット種24・生産可能ユニット13は決して多い数字ではないが、バランスが取れているという前提に立つなら十二分にバリエーション豊かと言える。 -高い戦略性。 --必要に応じてその都度コストを支払いユニットを雇うシステムではあるが、レベル制やクラスチェンジといった成長要素があり、特定のユニットに軸を置き長期的な展望を持って立ち回る必要がある。 ---例えばどんなに戦線を圧倒しようとも、キングはほとんどのユニットに強く、ファイターかナイト・高レベルのユニットが複数居ないとキングを倒すことは難しい。ファイター・ナイト共に守備が弱く「天敵」が存在するため敵の城近くへ連れてくるのは難しく、ユニット育成も一筋縄でないので、単純な力押しが難しいシステムになっている。 ---ユニットの育成が一筋縄ではない理由は、レベルアップで上昇するのは攻撃力だけで、それ以外は(クラスチェンジしない限り)何も変化しない点にある。それゆえ敵の攻勢を許してしまえばどんなユニットも脆く崩れ去る。レベルの高いユニットを上手に守るのも重要な作戦の内である。「弱いユニットを強く育てて勝利」という勝ち筋のもつ達成感はかなりのもの。 ---逆に、生半可な攻撃を加えて討ちもらすような行動は控えなければならない。討ちもらしたユニットは相性の悪い敵との戦いを繰り返した結果、レベルが上がっていることが多い。戦闘相性をよく考慮し、攻めると決めたら徹底的に潰すべし。 ---たとえ最弱のファイターでも終盤の城落としのほかに都市の制圧・縄張り役など多方面に使える。ゆえに運用が確かであれば、弱ユニットを軸にした戦い方でも、高性能・高コストユニットの物量作戦を展開するよりも効率よく勝てる場合がある。 --少数で防壁を作れる縄張りシステムによって、マップ上には同時に複数の交戦ポイントが作られる格好になりやすい。なおかつ、ユニットの雇用が城でしか行えない関係で、防戦側の方が戦力投入に対応しやすいバランスとなっている。 ---敵の対応力を落とすため、城攻めは領土の囲い込みとの同時進行を心がけたい。また強力なユニットを投入する際も、本来の性能を十分に発揮できるよう、派遣先も適切に選ばなければならない。FOODの概念も、その傾向を更に促進している。 ---つまり「安易には勝てない」。これもまた、ウォーSLGとしての十分な歯ごたえにつながっている。 -操作性・ユーザーインターフェース --把握しなければならない情報が多くプレイ難度の高いゲームではあるが、ゲーム中にもフォローがあって遊びやすい。 --例えば戦闘の相性については、メニューにアタック表が用意されている他、攻撃時に表示される記号(○や×などで表示)を目安にできる。 -BGM --ゲームで流れるBGMは繊細な音色の短調を中心に構成されている。高山ヒロヒコによる楽曲はアトラス製作ということもあり、どことなく女神転生シリーズを髣髴とさせるもの。 --N106音源チップによるサウンドはファミコン離れした高音質で、耳に残るメロディアスな曲という訳ではないがプレイの邪魔にも一切ならず、加えてファミコンには珍しく1/fゆらぎを採用しており繰り返し長く聞き続けられる心地良さがある。 **問題点 -かなり長丁場の戦いであり、また収束性が無い。 --例えば、広いマップなどで一対一となった後、片方が優位に立って城攻めをしたが落としきれなかった場合。そこに至るまでに大抵は既に長時間が経過している事もあって、その後のゲーム展開がグダグダになりがちである。&br一定ターンでゲーム終了とし、国力を比較して順位付けするようなルールも無い。 --人間が3人以上参加するマルチプレイでは、脱落したプレイヤーは残りの決着がつくまでヒマになる。SLG初心者を交えて気軽に遊ぶのにはあまり向かない。 ---「降伏」コマンドが用意されているので、元々長いゲームが更に長引くと感じた際は、劣勢を認めた側が潔くゲームを終わらせつつも互いの健闘を讃えあおう。 -CPUの頭はさほど賢くない。 --ルシファーは初期領土や地形の関係でプレイヤーよりも有利な条件で戦いが始まるが、その代わりユニットの雇用方針にムラがあり、戦術に安定感が欠けている。そこまでならCPU戦のバランスとしては丁度良いかもしれないが、コストを度外視する用兵により、マップ条件によっては自発的に金欠に陥って一人で困っている事も。 ---プログラムミスのためか、CPUユニットが戦線の反対側の画面端目掛けて突進したり、同じ所をグルグル移動する場合がある。 //-ややストレスな仕様のユニットが存在する。 //--概ねバランス良好な本作のユニットの中で、煙たがられているのがスケルトンである。このユニットはいわゆる「超低火力・超高装甲」で、致命傷を食らうことはないが逆に有効打を与えるのも難しい、というストレスキャラ。ソーサラー系ユニットの召喚魔法でしか生産できないが、そのスケルトンを最前線に置かれると「敵も味方も戦線を一向に拡大できない状態」となり、ただでさえ長期化する戦いが更に間延びしやすい。 //--しかも、CPUは部隊数に空きがある限りスケルトンを積極的に召喚する思考ルーチンなので、余計に戦いが膠着状態になりやすい。 //↑スケルトンはモンク(とその上位ユニットで)で面白いように蹴散らせる。スケルトン同士でも有効。レベルの低いソーサラーでは1~2体しか生まれないし、補給コストも高い。 ---- **総評 ファンタジー世界で一国の主となったプレイヤーが騎士やドラゴンを雇いながら戦うという、硬派ながら魅力的な世界観を持つウォーシミュレーションである。互いに複雑な相性関係を持つユニットが、戦闘における強弱バランスを絶妙に保ちつつも数多く取り揃えられ、国同士の軍事行動を彩り豊かに飾っている。~ ルールがシンプルでありながら奥行きも深く、容易に覇者とはなれない難易度で完成された本作は、SLGファンにとって心に強く残りうる一本だろう。~ プレイ時間が長くなかなか気楽には手を出せないゲームではあるが、それ以外にSLGとしての目立った欠点が見当たらない事も、地味ながら評価すべき点である。 ---- **その後の展開 -のちにPSの『ナムコアンソロージー2』にて移植。こちらはFC版そのままの移植に加え、PS版としてリメイクされたアレンジ版がある。 --アレンジ版ではファイターが「剣ファイター」「斧ファイター」「槍ファイター」「弓ファイター」の4種類となり、それぞれ3すくみや妖精ユニットとの相性変動などが発生している。他にも「バーバリアン」や「ゾンビ」などの新ユニットが登場している。 --他にも新マップが登場し、「ストーリーモード」も一新。CPUも超攻撃的思考になっている。 ---ただ、戦闘前後に使われるビジュアル表現がPS独自の演算技術を用いたものであり、残念ながらPS2以降のハードではアレンジ版のみフリーズが発生してプレイがほぼ不可能になってしまっている(故障覚悟でオープントレイを繰り返せば無理やりフリーズを解消することが可能との報告有り)。 -2020年6月18日にNintendo Switchで配信されたオムニバスソフト『ナムコットコレクション』の第3弾DLCとして、2020年8月20日に配信された。 -今作の続編としてGB『ポケットキング』が存在する。 --さらにその血をひくSLG作品に『[[テイルズ オブ ザ ワールド ~サモナーズ リネージ~]]』が存在するが…(詳細は該当ページ参照)。 ----
*キングオブキングス 【きんぐおぶきんぐす】 |ジャンル|シミュレーション|&image(http://www.suruga-ya.jp/database/pics/game/174000136.jpg,height=160)| |対応機種|ファミリーコンピュータ|~| |発売元|ナムコ|~| |開発元|アトラス|~| |発売日|1988年12月9日|~| |定価|5,900円(税別)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| ---- #contents() ---- **概要 「ナムコット ファミリーコンピュータゲームシリーズ」第48弾のファンタジーウォーシミュレーション。~ 拠点を制圧して資金を調達し、ユニットを雇って敵軍との戦闘を繰り返しながら、最終的に総大将であるキングを打ち倒す。~ ---- **ゲームモード CPUプレイヤーと一対一で戦うキャンペーンモード「ルシファーとの戦い」(全4シナリオ+隠し1)と、自由にマップを選びCPUまたはプレイヤーから最大4人まで参加するフリー対戦の「マルチプレイモード」がある。 **システム ''主なルール'' -マップには2つ以上の城があり、最初は各陣営の大将ユニット「キング」が1人につき1つ守っている。敵キングを全員倒す事が勝利条件である。 --キャンペーンモードのCPU専用キャラクター「ルシファー」も、キング相当の存在として扱われる。 --マルチプレイモードでは「同盟」を設定できる。設定した場合は同盟国同士のユニットは戦闘を行えず、同盟国以外の勢力を全て倒すと勝利となる。 ---地形や町の位置関係により、同じマップでも城ごとにそれぞれ攻略難度が異なる。同盟設定を交える事で、チーム戦やハンデ戦など、更に幅広い遊び方ができるようになる。 ---なお、同盟はターンごとに組み直すことが可能。ゲーム外の会話戦での共謀や裏切りに制限など設けようもない話だが、度を越した悪用はしないように。 -キングが城にいる場合は、その城でお金を支払う事でユニットを雇う(召喚する)。 --軍資金は毎ターン一定額の収入がある他、他の城やマップ上に点在する都市を制圧している数だけ増額される。 --キャンペーンモードは、シナリオによって雇えるユニットに制限がかけられている。規模の小さいマップほど、強い制限の中で攻略しなければならない。 -自軍に属する城や町にいるユニットは、ターン開始時にお金を支払って、減った部隊やFOOD(後述)を補給できる。 -戦闘 --戦闘は、縦横斜めを含む周囲8マスに隣接したユニット同士で行う。戦闘を仕掛けた側が先制攻撃し、仕掛けられた側が全滅していなかった場合は反撃をして戦闘終了。 --ユニットは小型キャラの8部隊編成と、大型キャラの4部隊編成の2種類に分かれる。攻撃回数は生存している部隊数に応じる。なお、攻撃力はユニット同士の相性によって大きく変動し、中には意外な相手に高い攻撃力を発揮する組み合わせもある。 --戦闘を行ったユニットは、倒した相手との相性に応じて内部パラメータである経験値がランダムで蓄積され、戦闘を繰り返すことでレベルが上がる。レベルの上がったユニットは攻撃力にプラス補正がかかる。また、人間に属する一部ユニットは、これによってクラスチェンジして能力が大幅に強化される。 ---相性が悪く高ダメージを被弾しやすい敵ほど戦闘後にレベルが上がりやすい仕様となっている。部隊数が減って弱った苦手ユニットを相手に経験を積むのも有効な戦術である。 -縄張り --2つ以上の自軍ユニットを1マス開けて配置すると、両者の間にはユニットを倒さないと自陣営以外のユニットが1歩ずつしか進めない、俗に言う「縄張り」が発生する。少数のユニットでも、地形と縄張りを活用すれば有効な防衛線を作ることができる。逆にその縄張りを突破するには、防衛線の弱点を的確に突かなければならない。 -ユニットの移動 --一般的なウォーSLG同様、ユニットの移動力から地形に応じたコストを差し引いて移動させる。地形によるロスコストの大小も、ユニットごとに様々である。 ---地形には、戦闘時に防御力に加算される地形効果が設定されている。なお飛行ユニットは地形効果を受けられない。 --本作には各ユニットが個別に管理する「FOOD」というパラメータがある。移動するごとにこれを消費し、足りない場合はそれ以上動く事ができなくなる。 ---FOODを回復するには、占領した町で補給するか、ユニット「モンク」の回復魔法を使う。また、行動せずにターンを終えれば次のターンで1回フル移動できる分のFOODを獲得できる。 ''ユニットの種類'' -ユニットにはカテゴリがあり、城で雇用できる人間・妖精・ドラゴンの各種族と、位置づけの特殊なモンスターに分類される。&brお金で雇う基本のユニット13種に、クラスチェンジする一部ユニットの上位ユニットが6種、これにモンスター3種とキング、ルシファーを加えた、全24種類が登場する。 #region(種族とユニット一覧) -「''人間''」:初期状態では打たれ弱いが、成長すれば他では得られない大きなアドバンテージの生じる、将来性の高い種族。キングやファイターによる占領で軍資金の増加にも貢献する。 --''キング/ルシファー:''城や町の占領と部隊の生産ができる総大将。 ---ルシファーはキャンペーンでCOMとしてのみ登場。 --''ファイター:''能力は低戦闘力かつ最安値。キング以外では唯一、町の占領を行える。 --''ナイト→シルバーナイト→ドラゴンナイト:''機動力を生かした前線向けユニット。 --''モンク→プリースト→ビショップ:''回復魔法とゴーレム作成の魔法を使える。 --''ソーサラー→メイジ→ウィザード:''攻撃魔法(反撃不能)とスケルトン作成の魔法を使える。 ---ファイターは実はキングに対して有利に戦えるユニットであり、それ以外の3種はレベルが上がるとクラスチェンジしてドラゴン族をも圧倒する攻撃力を持つようになる。中盤以降の主戦力。高位の魔法使い(ビショップ・ウィザード)は敵の縄張りを無視して通過できる。 -「''妖精''」:中堅を固める奥の深いユニット群。 --''ゴブリン:''山の種族。ファイターに対して強い。 --''ハーピー:''空の種族。飛行能力を持ち、機動性が高い。 --''エルフ:''森の種族。飛行ユニットに対して強い。 ---ゴブリン・ハーピー・エルフは互いに3すくみの関係にある。また比較的安価。 --''ジャイアント:''そこそこのコストで高い防衛性能を持つ。 --''グリフォン:''高速で飛行する。ナイトに対して強い。 -「''ドラゴン''」:大部分が大型部隊。長所が顕著で強力なユニットが揃うが、一方で雇用・補給ともコストが高く、安易な運用は命取りとなる。 --''リザードマン:''海や川の種族。ドラゴン族では最安値かつ唯一の小型部隊。 --''ワイバーン:''最長移動距離を誇る飛行ユニット。 --''サーペント:''陸ではろくに動けないが水上での戦いに長ける。 --''ドラゴン:''一騎当千の歩く要塞。 ---ドラゴン・サーペント・ワイバーンは互いに3すくみの関係にある。 -「''モンスター''」:魔法による召喚ユニットと、CPU専用ユニットが存在する。抜きん出た強さは無いものの、ノーコストで出現して進軍の邪魔をする面倒な存在。 --''ゴーレム:''モンク系ユニットの魔法で召喚される。 --''スケルトン:''ソーサラー系の魔法で召喚される。 --''コカトライス:''キャンペーンモードの毒砂漠・毒沼地形でランダムに出現する。 #endregion ---- **評価点 -ユニット間のバランスが良い。 --例として第一に挙げられるのは、全てのマップで重用する事になるファイターと、それに対して有利に戦えるゴブリン、そのゴブリンを巻き込んで3すくみの関係にある安価ユニットのハーピー・エルフらの位置づけ。実際、ストーリーモード最初のシナリオで雇えるのはこの4種のみであり、これだけでゲームを構成しうる底力を持っている。 --基本的に先手側圧倒有利な戦闘ルールなので、補給にもお金のかかる高コストユニットはそれだけ慎重に運用しなければならない。取り回しの良い小型部隊、それらに対して適度に強い中コストの大型部隊、中堅ごときなら蹴散らせる高コストの大型部隊、そんな高コスト群を足止めする小型部隊編隊…といった、大局的な意味での3すくみも成立する。 --完全無欠のユニットも、死にユニットも存在しない。マップによっても活躍の幅に違いがあり、絶妙なバランスの上で様々なユニットを取り混ぜて戦う面白さがある。 -SLGにおいて総ユニット種24・生産可能ユニット13は決して多い数字ではないが、バランスが取れているという前提に立つなら十二分にバリエーション豊かと言える。 -高い戦略性。 --必要に応じてその都度コストを支払いユニットを雇うシステムではあるが、レベル制やクラスチェンジといった成長要素があり、特定のユニットに軸を置き長期的な展望を持って立ち回る必要がある。 ---例えばどんなに戦線を圧倒しようとも、キングはほとんどのユニットに強く、ファイターかナイト・高レベルのユニットが複数居ないとキングを倒すことは難しい。ファイター・ナイト共に守備が弱く「天敵」が存在するため敵の城近くへ連れてくるのは難しく、ユニット育成も一筋縄でないので、単純な力押しが難しいシステムになっている。 ---ユニットの育成が一筋縄ではない理由は、レベルアップで上昇するのは攻撃力だけで、それ以外は(クラスチェンジしない限り)何も変化しない点にある。それゆえ敵の攻勢を許してしまえばどんなユニットも脆く崩れ去る。レベルの高いユニットを上手に守るのも重要な作戦の内である。「弱いユニットを強く育てて勝利」という勝ち筋のもつ達成感はかなりのもの。 ---逆に、生半可な攻撃を加えて討ちもらすような行動は控えなければならない。討ちもらしたユニットは相性の悪い敵との戦いを繰り返した結果、レベルが上がっていることが多い。戦闘相性をよく考慮し、攻めると決めたら徹底的に潰すべし。 ---たとえ最弱のファイターでも終盤の城落としのほかに都市の制圧・縄張り役など多方面に使える。ゆえに運用が確かであれば、弱ユニットを軸にした戦い方でも、高性能・高コストユニットの物量作戦を展開するよりも効率よく勝てる場合がある。 --少数で防壁を作れる縄張りシステムによって、マップ上には同時に複数の交戦ポイントが作られる格好になりやすい。なおかつ、ユニットの雇用が城でしか行えない関係で、防戦側の方が戦力投入に対応しやすいバランスとなっている。 ---敵の対応力を落とすため、城攻めは領土の囲い込みとの同時進行を心がけたい。また強力なユニットを投入する際も、本来の性能を十分に発揮できるよう、派遣先も適切に選ばなければならない。FOODの概念も、その傾向を更に促進している。 ---つまり「安易には勝てない」。これもまた、ウォーSLGとしての十分な歯ごたえにつながっている。 -操作性・ユーザーインターフェース --把握しなければならない情報が多くプレイ難度の高いゲームではあるが、ゲーム中にもフォローがあって遊びやすい。 --例えば戦闘の相性については、メニューにアタック表が用意されている他、攻撃時に表示される記号(○や×などで表示)を目安にできる。 -BGM --ゲームで流れるBGMは繊細な音色の短調を中心に構成されている。高山ヒロヒコによる楽曲はアトラス製作ということもあり、どことなく女神転生シリーズを髣髴とさせるもの。 --N106音源チップによるサウンドはファミコン離れした高音質で、耳に残るメロディアスな曲という訳ではないがプレイの邪魔にも一切ならず、加えてファミコンには珍しく1/fゆらぎを採用しており繰り返し長く聞き続けられる心地良さがある。 **問題点 -かなり長丁場の戦いであり、また収束性が無い。 --例えば、広いマップなどで一対一となった後、片方が優位に立って城攻めをしたが落としきれなかった場合。そこに至るまでに大抵は既に長時間が経過している事もあって、その後のゲーム展開がグダグダになりがちである。&br一定ターンでゲーム終了とし、国力を比較して順位付けするようなルールも無い。 --人間が3人以上参加するマルチプレイでは、脱落したプレイヤーは残りの決着がつくまでヒマになる。SLG初心者を交えて気軽に遊ぶのにはあまり向かない。 ---「降伏」コマンドが用意されているので、元々長いゲームが更に長引くと感じた際は、劣勢を認めた側が潔くゲームを終わらせつつも互いの健闘を讃えあおう。 -CPUの頭はさほど賢くない。 --ルシファーは初期領土や地形の関係でプレイヤーよりも有利な条件で戦いが始まるが、その代わりユニットの雇用方針にムラがあり、戦術に安定感が欠けている。そこまでならCPU戦のバランスとしては丁度良いかもしれないが、コストを度外視する用兵により、マップ条件によっては自発的に金欠に陥って一人で困っている事も。 ---プログラムミスのためか、CPUユニットが戦線の反対側の画面端目掛けて突進したり、同じ所をグルグル移動する場合がある。 //-ややストレスな仕様のユニットが存在する。 //--概ねバランス良好な本作のユニットの中で、煙たがられているのがスケルトンである。このユニットはいわゆる「超低火力・超高装甲」で、致命傷を食らうことはないが逆に有効打を与えるのも難しい、というストレスキャラ。ソーサラー系ユニットの召喚魔法でしか生産できないが、そのスケルトンを最前線に置かれると「敵も味方も戦線を一向に拡大できない状態」となり、ただでさえ長期化する戦いが更に間延びしやすい。 //--しかも、CPUは部隊数に空きがある限りスケルトンを積極的に召喚する思考ルーチンなので、余計に戦いが膠着状態になりやすい。 //↑スケルトンはモンク(とその上位ユニットで)で面白いように蹴散らせる。スケルトン同士でも有効。レベルの低いソーサラーでは1~2体しか生まれないし、補給コストも高い。 ---- **総評 ファンタジー世界で一国の主となったプレイヤーが騎士やドラゴンを雇いながら戦うという、硬派ながら魅力的な世界観を持つウォーシミュレーションである。互いに複雑な相性関係を持つユニットが、戦闘における強弱バランスを絶妙に保ちつつも数多く取り揃えられ、国同士の軍事行動を彩り豊かに飾っている。~ ルールがシンプルでありながら奥行きも深く、容易に覇者とはなれない難易度で完成された本作は、SLGファンにとって心に強く残りうる一本だろう。~ プレイ時間が長くなかなか気楽には手を出せないゲームではあるが、それ以外にSLGとしての目立った欠点が見当たらない事も、地味ながら評価すべき点である。 ---- **その後の展開 -のちにPSの『ナムコアンソロージー2』にて移植。こちらはFC版そのままの移植に加え、PS版としてリメイクされたアレンジ版がある。 --アレンジ版ではファイターが「剣ファイター」「斧ファイター」「槍ファイター」「弓ファイター」の4種類となり、それぞれ3すくみや妖精ユニットとの相性変動などが発生している。他にも「バーバリアン」や「ゾンビ」などの新ユニットが登場している。 --他にも新マップが登場し、「ストーリーモード」も一新。CPUも超攻撃的思考になっている。 ---ただ、戦闘前後に使われるビジュアル表現がPS独自の演算技術を用いたものであり、残念ながらPS2以降のハードではアレンジ版のみフリーズが発生してプレイがほぼ不可能になってしまっている(故障覚悟でオープントレイを繰り返せば無理やりフリーズを解消することが可能との報告有り)。 -2020年6月18日にNintendo Switchで配信されたオムニバスソフト『ナムコットコレクション』の第3弾DLCとして、2020年8月20日に配信された。 -今作の続編としてGB『ポケットキング』が存在する。 --さらにその血をひくSLG作品に『[[テイルズ オブ ザ ワールド ~サモナーズ リネージ~]]』が存在するが…(詳細は該当ページ参照)。 ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: