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*大戦略III'90 【だいせんりゃく すりー ないんてぃ】 |ジャンル|SLG| |対応機種|PC-9800VM/UV以降、FM TOWNS、X68000| |発売・開発元|システムソフト| |発売日|1990年10月26日| |定価|9,800円| |判定|なし| |>|CENTER:''[[大戦略シリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 元となった『大戦略III』は、現代戦SLG大戦略シリーズのナンバリングタイトルの三作目(シリーズとしての三作目ではない)。~ 本作は、その『III』にあった多くの問題をある程度解消した改良版である。~ それまでのターン制をリアルタイム制に変更。また自軍のAI化等、様々な意欲的なシステムが導入されている。さらにボリュームも大きくアップ。 **特徴とシステム 『III』はシリーズ初のリアルタイム制を採用。さらにシステム的にも意欲的な物が多い作品であった。~ だが、内容以前にあまりにも動作が遅くプレイが非常に困難という代物だった。他にもバグや、兵器の数値がおかしいなどの問題もあった。~ それらを改善、プレイできる程度まで引き上げたのが本作である。 -本作のリアルタイム制は、ややターン制の名残のあるシステム。 --1ターンを100カウントで構成し、そのカウントに応じて各ユニットが行動するもの。実質的には普通のリアルタイム制とそれほど違いはない。 --ただし、配備や収入、燃料の備蓄などはターンの最初のカウントで行われる。この点は完全なリアルタイム制とはなっていない。 -AIの積極的な導入。 --従来はプレイヤーが全ての行動を指示していたが、本作では大雑把にユニットの行動を決める事ができる。 --大まかにいうと、侵攻、占領、防衛、偵察などの指示を出すと、それに従ってAIが独自に判断行動する。 ---さらに補給、攻撃の頻度や、行動の目的地など、その内容も細かく決める事もできる。 -4個小隊構成のユニット。 --従来は1ユニット同一兵器一部隊というスタイルだったが、本作では4個小隊で1ユニットとなっている。 --各小隊は同じ兵器ではなくてもよく、例えば戦車2個小隊、対空車両1個小隊、歩兵輸送車1個小隊という形で、1ユニットの構成ができる。 ---ただし、行動の高度(地上・海上・空中など)が同じ高さの兵器で揃える必要がある。例えば輸送ヘリコプターと戦車というユニット構成はできない。 -視界の概念が複雑化。 --視界の概念自体が単に距離だけではなく、高度によって細かく分かれた。それに対応するように、従来なかった偵察専用のユニットも採用されている。 -スタックが可能に。 --従来では同一へクスに、複数部隊を配置する事ができなかった。このためユニットの経路をいろいろと考える必要があったが、本作ではスタックが可能になったおかげで、その点を解消。 -建築物も多彩に。 --建築物は種類も増え、それまでの単純なパラメータから複雑なものになった。 --まず規模と防御力というパラメータがついた。規模は各建築物の生産力に影響し、防御力は占領時にこれを0にしないと占領できないというものに(『II』の耐久力に当たる)。 --燃料も従来は無尽蔵に補給できていたが、本作では製油所で作られ備蓄するようになった。補給のための備蓄が足らない場合は購入する事となる。 -兵器生産の複雑化。 --従来の一つの手順で生産できたものが、大きくかわった。 ---一旦、工場で生産し、それを配備する際に資金がかかるという形になった。兵器の生産ペースは、どれだけ工場を支配下に置いているかによる。 -生産できる部隊数上限が大幅に増加。艦船が実在のものに。 --4個小隊を1ユニットと扱うため、部隊総数が大きく増えた。 --兵器の種類も増えている。特に艦船は実在のものとなった。従来は、イージス艦や輸送艦といった一般名称で、実在の船ではなかった。 -生産型エディタを完備。 --自分なりの生産型(生産されるユニットの国籍)を作れる。 --本作の兵器の中には、開発計画の段階のものもある。基本の生産型の中にはこれらは組み込まれておらず、エディタで組んだ場合のみ使える。 ---- **評価点 -リアルタイム制による独特のゲーム性 --とっつきにくい部分はあるものの、従来とは違うゲーム性を楽しめる。ターンとは違い刻々と状況が変わるため、ターン制のような一気に情勢が変わるような事は起こりにくくなった。 -ボリュームアップで戦闘の形態も多彩に。 --兵器の種類が増えたのも、素直にうれしい点。さらに実在の艦船となり、生産型の特色がよく出るようになった。 -索敵が多彩に。 --高度により視界が変わるようになった上、新たに加わったユニットの中には偵察専門のものもあり、索敵の意味合いがより強くなった。 -小隊構成のユニットにより臨機応変の対応。 --4個小隊からの1ユニット構成のため、状況に応じて各小隊を分離して独自の行動を取らせたりする事ができるようになった。 **問題点 -AIが残念な出来。 --『III』は「グレートコマンダー」の副題の通り、自軍のAI操作による俯瞰からの指揮をイメージしたのだろう。本作も当然その流れなのだが、AIが貧弱なため台無しである。 ---大戦略シリーズは全般的にAIが今一歩と言われるが、その中でもリアルタイム制のものは、あまり評価が高くない。 --本作ではAIに任せておくと無駄な行動が頻発する。戦車で兵員輸送ヘリを落としに行ったり、長射程で敵の射程外から撃てるにもかかわらず近づきに行ってしまったり、航空機が勝手に目的外の場所に飛び立ち気づかない内に燃料不足で墜落したり…と、他にも様々な予想だにしない事態が起こるため、常に気を配る必要がある。 ---結局は従来のシリーズ同様、プレイヤーがこまごまと指示する事に。 --敵もそれほど賢くない。命令を頑なに守るため、特に占領において臨機応変の対応ができない。トラック1両置いておけば占領を防げてしまったりする。また、占領偏重気味のため、防衛を疎かにして一気に首都を落とされる事も。 --ユニットの配備も自動で行われる。ところがこれが今一つ。より敵に近い基地や空港に配備される事が多く、状況によっては勝手に飛び地に配備され面倒な事に。 -人間との対戦ができなくなった。 --過去作品とは異なりゲームシステムがリアルタイムなため回避不能な問題なのだが。上のAIの出来もあいまって…。 -スタックやボリュームアップの弊害も。 --AIの問題点の影響もあるのだが、こまごまと指示を出すため、全体状態を把握しておく必要がある。これがやりにくい。 --スタックの状態で表示されるのはその中の一部隊のみで、MAP上からは全ユニットがどこにいるかがやや分かりにくい。また部隊一覧も、AI操作を想定したせいか、大雑把な状況しか分からず使いづらい。 -混成部隊の意味がない。 --異なった兵器で1ユニットを構成できるが、攻撃力が分散するだけなので意味がなく、まず使わない。 -歩兵の存在が無意味に。 --兵員輸送兵器にも占領能力が付加されたため、展開能力で劣る歩兵を使う事がまずなくなった。 -動作が遅い。 --『III』を改良し、大幅にスピードアップしたとは言え、それでも遅い。ユニットが増えるとそれが顕著になる。 -マップエディタが無くなった。 --『III』にはあったマップエディタが何故か無くなっている。本作で改悪された部分。 ---- **総評 本作の元となった『III』は、単にリアルタイム制を導入しただけではなく、AIによる自軍の操作、4個小隊構成のユニット、製造と配備を分離した兵器生産など多くの意欲的なシステムが取り入れられた、従来とは大きく変わった作品である。だが、それらを生かすには問題点がありすぎた。~ そうした問題点をある程度解消したのが本作である。 そうは言っても、AIの貧弱さ、まだまだ遅いスピードなど完全な問題解決には至っていない。~ しかし、プレイできるレベルには仕上がっている。少なくともリアルタイム制を楽しむ事はできるものだ。
*大戦略III'90 【だいせんりゃく すりー ないんてぃ】 |ジャンル|SLG| |対応機種|PC-9800VM/UV以降、FM TOWNS、X68000| |発売・開発元|システムソフト| |発売日|1990年10月26日| |定価|9,800円| |判定|なし| |>|CENTER:''[[大戦略シリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 元となった『大戦略III』は、現代戦SLG大戦略シリーズのナンバリングタイトルの三作目(シリーズとしての三作目ではない)。~ 本作は、その『III』にあった多くの問題をある程度解消した改良版である。~ それまでのターン制をリアルタイム制に変更。また自軍のAI化等、様々な意欲的なシステムが導入されている。さらにボリュームも大きくアップ。 **特徴とシステム 『III』はシリーズ初のリアルタイム制を採用。さらにシステム的にも意欲的な物が多い作品であった。~ だが、内容以前にあまりにも動作が遅くプレイが非常に困難という代物だった。他にもバグや、兵器の数値がおかしいなどの問題もあった。~ それらを改善、プレイできる程度まで引き上げたのが本作である。 -本作のリアルタイム制は、ややターン制の名残のあるシステム。 --1ターンを100カウントで構成し、そのカウントに応じて各ユニットが行動するもの。実質的には普通のリアルタイム制とそれほど違いはない。 --ただし、配備や収入、燃料の備蓄などはターンの最初のカウントで行われる。この点は完全なリアルタイム制とはなっていない。 -AIの積極的な導入。 --従来はプレイヤーが全ての行動を指示していたが、本作では大雑把にユニットの行動を決める事ができる。 --大まかにいうと、侵攻、占領、防衛、偵察などの指示を出すと、それに従ってAIが独自に判断行動する。 ---さらに補給、攻撃の頻度や、行動の目的地など、その内容も細かく決める事もできる。 -4個小隊構成のユニット。 --従来は1ユニット同一兵器一部隊というスタイルだったが、本作では4個小隊で1ユニットとなっている。 --各小隊は同じ兵器ではなくてもよく、例えば戦車2個小隊、対空車両1個小隊、歩兵輸送車1個小隊という形で、1ユニットの構成ができる。 ---ただし、行動の高度(地上・海上・空中など)が同じ高さの兵器で揃える必要がある。例えば輸送ヘリコプターと戦車というユニット構成はできない。 -視界の概念が複雑化。 --視界の概念自体が単に距離だけではなく、高度によって細かく分かれた。それに対応するように、従来なかった偵察専用のユニットも採用されている。 -スタックが可能に。 --従来では同一へクスに、複数部隊を配置する事ができなかった。このためユニットの経路をいろいろと考える必要があったが、本作ではスタックが可能になったおかげで、その点を解消。 -建築物も多彩に。 --建築物は種類も増え、それまでの単純なパラメータから複雑なものになった。 --まず規模と防御力というパラメータがついた。規模は各建築物の生産力に影響し、防御力は占領時にこれを0にしないと占領できないというものに(『II』の耐久力に当たる)。 --燃料も従来は無尽蔵に補給できていたが、本作では製油所で作られ備蓄するようになった。補給のための備蓄が足らない場合は購入する事となる。 -兵器生産の複雑化。 --従来の一つの手順で生産できたものが、大きくかわった。 ---一旦、工場で生産し、それを配備する際に資金がかかるという形になった。兵器の生産ペースは、どれだけ工場を支配下に置いているかによる。 -生産できる部隊数上限が大幅に増加。艦船が実在のものに。 --4個小隊を1ユニットと扱うため、部隊総数が大きく増えた。 --兵器の種類も増えている。特に艦船は実在のものとなった。従来は、イージス艦や輸送艦といった一般名称で、実在の船ではなかった。 -生産型エディタを完備。 --自分なりの生産型(生産されるユニットの国籍)を作れる。 --本作の兵器の中には、開発計画の段階のものもある。基本の生産型の中にはこれらは組み込まれておらず、エディタで組んだ場合のみ使える。 ---- **評価点 -リアルタイム制による独特のゲーム性 --とっつきにくい部分はあるものの、従来とは違うゲーム性を楽しめる。ターンとは違い刻々と状況が変わるため、ターン制のような一気に情勢が変わるような事は起こりにくくなった。 -ボリュームアップで戦闘の形態も多彩に。 --兵器の種類が増えたのも、素直にうれしい点。さらに実在の艦船となり、生産型の特色がよく出るようになった。 -索敵が多彩に。 --高度により視界が変わるようになった上、新たに加わったユニットの中には偵察専門のものもあり、索敵の意味合いがより強くなった。 -小隊構成のユニットにより臨機応変の対応。 --4個小隊からの1ユニット構成のため、状況に応じて各小隊を分離して独自の行動を取らせたりする事ができるようになった。 **問題点 -AIが残念な出来。 --『III』は「グレートコマンダー」の副題の通り、自軍のAI操作による俯瞰からの指揮をイメージしたのだろう。本作も当然その流れなのだが、AIが貧弱なため台無しである。 ---大戦略シリーズは全般的にAIが今一歩と言われるが、その中でもリアルタイム制のものは、あまり評価が高くない。 --本作ではAIに任せておくと無駄な行動が頻発する。戦車で兵員輸送ヘリを落としに行ったり、長射程で敵の射程外から撃てるにもかかわらず近づきに行ってしまったり、航空機が勝手に目的外の場所に飛び立ち気づかない内に燃料不足で墜落したり…と、他にも様々な予想だにしない事態が起こるため、常に気を配る必要がある。 ---結局は従来のシリーズ同様、プレイヤーがこまごまと指示する事に。 --敵もそれほど賢くない。命令を頑なに守るため、特に占領において臨機応変の対応ができない。トラック1両置いておけば占領を防げてしまったりする。また、占領偏重気味のため、防衛を疎かにして一気に首都を落とされる事も。 --ユニットの配備も自動で行われる。ところがこれが今一つ。より敵に近い基地や空港に配備される事が多く、状況によっては勝手に飛び地に配備され面倒な事に。 -人間との対戦ができなくなった。 --過去作品とは異なりゲームシステムがリアルタイムなため回避不能な問題なのだが。上のAIの出来もあいまって…。 -スタックやボリュームアップの弊害も。 --AIの問題点の影響もあるのだが、こまごまと指示を出すため、全体状態を把握しておく必要がある。これがやりにくい。 --スタックの状態で表示されるのはその中の一部隊のみで、MAP上からは全ユニットがどこにいるかがやや分かりにくい。また部隊一覧も、AI操作を想定したせいか、大雑把な状況しか分からず使いづらい。 -混成部隊の意味がない。 --異なった兵器で1ユニットを構成できるが、攻撃力が分散するだけなので意味がなく、まず使わない。 -歩兵の存在が無意味に。 --兵員輸送兵器にも占領能力が付加されたため、展開能力で劣る歩兵を使う事がまずなくなった。 -動作が遅い。 --『III』を改良し、大幅にスピードアップしたとは言え、それでも遅い。ユニットが増えるとそれが顕著になる。 -マップエディタが無くなった。 --『III』にはあったマップエディタが何故か無くなっている。本作で改悪された部分。 ---- **総評 本作の元となった『III』は、単にリアルタイム制を導入しただけではなく、AIによる自軍の操作、4個小隊構成のユニット、製造と配備を分離した兵器生産など多くの意欲的なシステムが取り入れられた、従来とは大きく変わった作品である。だが、それらを生かすには問題点がありすぎた。~ そうした問題点をある程度解消したのが本作である。 そうは言っても、AIの貧弱さ、まだまだ遅いスピードなど完全な問題解決には至っていない。~ しかし、プレイできるレベルには仕上がっている。少なくともリアルタイム制を楽しむ事はできるものだ。

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