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*VANQUISH 【ゔぁんきっしゅ】 |ジャンル|シューティングアクション|CENTER:&amazon(B003T9VDIC)&amazon(B003T9VDIM)|&amazon(B08511GV4F)| |対応機種|プレイステーション3&br()Xbox 360&br()プレイステーション4&br()Xbox One&br()Windows(Steam)|~|~| |発売元|セガ|~|~| |開発元|プラチナゲームズ&br()Little Stone Software(Win版)|~|~| |発売日|【PS3/360】2010年10月21日&br()【Steam】2017年5月26日&br()【PS4/One】2020年5月28日|~|~| |定価|【PS3/360】7,600円(税別)|~|~| |レーティング|CERO:D(17才以上対象)|~|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~| |ポイント|ハイスピードのアクションTPS|~|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 &bold(){新世代アクションシューティング『VANQUISH』} 稲葉敦志氏と三上真司氏のタッグによる、「ハイスピード」&「ハイテンション」をテーマとした新感覚のシューティングアクション。低難易度もあって初心者への対応も万全の作品。~ 近未来を舞台としたSF設定は非常に良く練り込まれており、未来の科学技術や人口が100億を超えた地球で起こりうるだろう混乱や政治、人間模様等も非常に納得のできる出来映えとなっている。~ また、キャラクターデザインは『[[デビルメイクライ]]』や『[[戦国BASARA>戦国BASARAシリーズ]]』で知られる土林誠氏が担当している。 ゲームシステムそのものはいわゆるTPSだが、隠れ場所などから飛び出すカバーアクションや様々な近接戦闘のアクション、ブーストに加えて反射神経を鋭敏化することで周囲がゆっくり動いて見えるようになる''ARモード''など、非常にスピード感溢れるゲーム内容となっている。~ どちらかと言えばシューター(射撃)よりだが前述の近接アクションも豊富で、その気になれば敵である大型戦闘ロボットと殴り合いをすることもできる。~ また、サムの脇腹の光源の色を見てある程度の判断は出来るものの、本ゲームは体力ゲージの様なものは存在しない。短期間に大量の攻撃を受けると緊急ARモードに移行し、そこからさらにダメージを受けるとゲームオーバーとなる。~ しばらくするとARモードが解除されてオーバーヒート状態(後述)を経て、ダメージを受けてない状態に戻るので、危険な状態に陥っても隠れるなり逃げ回るなりしていれば案外死ななかったりする。なお、緊急ARは任意で解除できない。 ---- **評価点 ***難易度の調整 本作では、難易度をカジュアルオート(ARモード中は敵を自動で狙ってくれる)から選択することができ、ゲームの苦手な人でも容易にエンディングまで見ることができる。 -本作と同じく三上氏の手がけた『[[GOD HAND]]』は難易度Easyが他ゲームのHard以上だと言われていた。 --しかしながら、逆に簡単にしすぎたという三上氏のコメントもあったりする。本当は敵に都市迷彩をさせて視認性を落としたかったいう。 -当然(?)、難易度God Hardも存在する。''Yeah!'' --全ての敵が積極的にこちらをヘッドショット、移動しても当然の様に偏差射撃、そもそも通常攻撃の威力が一撃必殺、主人公の能力低下、強力な武器が出現しなくなると言うドM仕様。 ---ランキング上位に名を連ねようとすると、人生捨てる覚悟を持たなくてはならない鬼難易度である。 -セーブポイントも多く、クリア後の実績目当ての再プレイも容易。ムービーの閲覧機能はないが、細かくスタートミッションを選べるためあまり問題にはなっていない。 ***攻撃部位の存在 一部大型の敵は弱点部位が存在しており、頭や手足などを狙って集中攻撃することで、本体へのダメージに加えて攻撃した部位を破壊することができる。時間の流れが遅くなるARモードがあるので、ヘッドショットなども狙いやすい。 -多くのFPS/TPSではヘッドショットくらいしか弱点部位は存在しないが、本作の弱点部位は手・足・頭・背中など種類が多い。 --ただ攻撃可能箇所が多いだけでなく、破壊した箇所に応じて敵戦力が大きく変化する。相手によっては決して少なくない耐久力を一気に削りきって破壊することも可能。 ---頭を破壊された敵はふらふらと彷徨き、でたらめな攻撃をするだけになって大きく戦闘力が低下する。 ---腕を破壊された敵は攻撃力が大きく低下するものもいる一方で、主武器より強力な副武器で攻撃してくる敵がいるなど行動一つとってもバリエーションが豊かである。 ---両足を先に破壊してしまうと無茶苦茶に暴れ回って狙い撃ちが難しくなってしまうなど、かえって不利になってしまう場合もある。 --部位破壊によって武器選択に大きな意味が存在するようになった。 ---超至近距離から頭部破壊を狙う人にはショットガンは非常に有効な武器となり、そこまでスキルがない人には離れた位置からのマシンガンなどの方が使いやすいなど。 ---丸ノコの様なものを射出する「ディスクランチャー」という、大型ロボットの四肢を切断することに長けた武器(というか工具)も存在する。 ***映画のようなストーリー・演出 ストーリーだけでなく、展開やオチもハリウッド映画的。~ ネタバレになるので詳細は省くが、オープニングの大破壊シーンに始まり、どんでん返しやキャラクター同士のやり取り、そして敵組織の目的や行動、なによりエンディングのオチなど実にハリウッド。~ また、全ての武器は「BLADEシステム」という統合兵装が変形したものという扱いなのだが、武器を変更すると一瞬で持ちかえるのではなく逐一変形モーションが入る。 -一例として、主人公・サム・ギデオンの設定もハリウッド的。 --ぶっきらぼうで喧嘩腰に言い返すような言動が多く、無精髭を生やし紙巻き煙草を愛飲して文字通り周囲から煙たがられている。 --だが、DARPAに勤務する超エリートでARスーツの開発者でもあり、粗暴な態度の裏に優しさを秘めていることも周囲には知られている。 --大学時代はアメフトのスター選手だったが怪我によりスポーツ選手としての道を諦めている。 -登場人物とのやり取りもハリウッド。 --任務遂行を至上とする軍の指揮官バーンズとの言い争いに始まり、逃げ遅れた兵士を見捨てようとするバーンズにくってかかるサム。 --「命令無視だ!」の声を振り切り、サムは我が身を危険にさらして兵士を助ける。だが、撤退中に兵士は狙撃兵の攻撃により殺されてしまった。 --その後も人命を優先し命令違反や無謀な行動をするサムを、バーンズは見捨てる発言をしたり別行動を取ったりするが、後にバーンズ自身が我が身を危険にさらして絶体絶命のサムを救出する。 ---「バーンズ!?無事だったのか!」「人をゴキブリみてぇに言うな!」ニヤリと笑いあう2人。 -何かと映画的・漫画的なQTEが時折発生する。 --ただし、一部の例外を除いてQTEは失敗しても良い。ペナルティが発生することもあるが、失敗したなら失敗したで別の方法で解決すれば良い。 --QTEはあくまで演出の一部であり、ボスキャラをどう倒すかなどは完全にプレイヤーに委ねられている。 --ただし、イベント・戦闘を問わず、失敗すれば即死するQTEも随所に存在するので注意が必要。 ---地道に体力を削り、発生したQTEで倒すも良し、ロケットランチャーを連発して瞬殺するも良し。 -ハリウッド映画らしさは演出にも溢れており、大型の敵との戦いや要所でのシーンの締めなどは映画のようなムービーが展開される。 --ただし、あくまで主役はゲームであるということか、ムービーによる演出は最低限となっている。 -音声・字幕の徹底 --昨今のゲームでは珍しく、複数の言語音声と字幕に対応している。 --英語、日本語のみならずドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語までカバーしている。 ***(無駄に格好を付けられる)アクション性の高さ -基本的に本作はTPSなのだが、戦場を高速で移動する「ブースト」と素早く敵襲をかわす「回避」加え、武器によって性能が変わる「近接攻撃」が実装されており、また障害物の飛び越えなどのジャンプギミックも可能で、アクション性もかなり高め。 --特に「無駄なカッコつけ」においては相当なこだわりを持って作りこまれている。 ---ブースト姿勢のバリエーションだけでも(カッコつけ以上の意味はないのに)数種類が存在し、さらに近接攻撃を入力する事で敵に向かってライダーキックをかましたり、そこから跳ね返ってジャンプをするだけでもわざわざ宙返りのジャンプを決めたり、さらにそこからの銃撃でカッコ良く決めたり…。 ---大人しく障害物に隠れている時ですら「喫煙」で余裕のある挑発をかます事もでき、さらには吸殻を投げる事で熱源センサーに対するデコイとして機能するなど、戦術にも応用が可能。ただし、喫煙は体に悪いので1ステージ3本までとなっている。 ---このように基本となるアクションからただの挑発行動まで、本当に細かく作り込んでおり、戦場にあるまじき無駄なスタイリッシュさがそこらじゅうに散見される。 --さらにこれらに先述の''ARモード''を加えることにより、「敵前を一瞬のうちに通り過ぎ、掃討射撃で瞬殺する(ような感じにキメる)」「ジャンプしてから滞空したまま精密狙撃を行う」等の無駄なアクションを自分で演出することも可能となっている。 -これらの点において本作はかなりの動きの自由度を誇っており、「動かす楽しさ」は非常に大きい。 --この辺りは、やたらと豊富に用意された決めポーズとアクション性を重視された((反面、奇抜さやゲーム性の難の為にあまり受け入れられなかった。))三上氏監督のTPS『P.N.03』(GC)がようやく受け入れられる形になったと言っていいかも知れない。 --「ブースト中にブロックを飛び越えると同時に手榴弾を投げ、ARモードを作動。敵の頭上で手榴弾を狙撃して強制着火、さらに限界時間まで銃撃を続け、エネルギー切れ寸前に近接攻撃でトドメ」…といった映画のようなアクションも(''極めれば'')可能。 -また、アクション性が高いとは言え、操作自体は簡単で、ゲームバランスもこれらを必要としない程度のものに収まっているため、「TPSは好きだけどアクションが苦手」というプレイヤーでも問題なくプレイすることができる。 --敵弾飛び交う中を駆け巡るスリルやダイナミックさ、豊富なアクションを楽むか、あるいは普通のTPSのように渋い立ち回りを楽しむかをユーザーが選べる間口の広い作りになっている。逆に「アクションは好きだけどTPSは苦手」というプレイヤーも楽しめるだろう。 ---- **問題点 ***画面の見づらさ -HDのグラフィックは非常に綺麗なのだが、綺麗すぎて背景にとけ込んでしまい、一部見えづらくなっている箇所もある。瞬間の判断が大事な本ゲームでこれは致命的。慣れれば問題ないとも言えるが…。 -特に光の当たっている明るいところは眩しいほどである一方、影となっているところは容赦なく真っ暗闇であるなど、比喩抜きで敵が見えなくなるところも。 --主人公の着ているARスーツは試作型とはいえ未来技術の塊である。赤外線視覚など暗闇や遠方を見やすくする機能があってもおかしくはなかったのだが。 ***オンライン要素が乏しい -スコアランキング以外のオンライン要素は存在しない。ARモードの存在から、対戦や協力プレイを成立させづらかったためだろう。 --機動兵器や武器の奪い合いが起こったことは想像に難くなく、実現すれば他に類を見ないプレイ環境となっていただろうことを考えると残念なところである。 --どちらの機種を買ってもオンライン状況を考える必要が無いのは利点と言えば利点となっているが…。 ***敵の使い回しが多い -どのボスとも2回以上戦うことになるため、後半は目新しさが少なくダレやすい。 --再戦時は味方や他の敵の配置、地形の変化などの配慮はなされているが、ボスの攻撃パターンやステータスの強化は全く無いので代わり映えしない。 ***スタッフロールが飛ばせない -本作のスタッフロールはスタッフの顔を模した隕石を撃っていくシューティングになっており、スタッフの遊び心が窺える。 -しかし、初回プレイ時はまだしも2周目以降もスキップすることができないため、周回の際のストレスになる。 --しかも、総合成績の表示&セーブが行われるのはスタッフロールが終わってからなので、勝手にタイトルに戻ったりするわけにも行かない。クリアするたびに長いスタッフロールが終わるのを待つはめになる。 --ついでに、このミニゲームで獲得したスコアも総合スコアにしっかり加算されるため、高スコアを目指すユーザーにとっては放置すら不可能。嫌でもプレイする必要に迫られる。 --内容自体もシンプル極まりないため、初回の驚きはあるかも知れないが、2回目以降はそう面白いものではない。 ---- **賛否両論点 ***エネルギー消費行動やオーバーヒートのバランス -ARモード発動や格闘攻撃に必要な主人公のエネルギーは若干少なめに設定されており、少しのことでうっかりオーバーヒートしやすい。 --オーバーヒート中は防御機能も働かないため死に易くなり、また多くのアクションに制限が発生するためあまり大胆な行動ができなくなる。なお、オーバーヒート状態だと緊急ARモードに移行できないため、大ダメージを受けるとそのまま死ぬ。 --比較的あっさりとオーバーヒートしてしまい、そのたびに物陰に隠れ、およそ10秒ほどクールダウンをしなければならない…というテンポが悪い状況に陥りやすい。 -ただ格闘攻撃には一撃必殺級の威力があり、ARモード発動も手軽に大きな有利状況が得られるメリットがあるなど、いずれの行動にもそれ相応のリターンがある。 --そのため、そういったリターンとコストやリスクとの関係を考えればバランスが悪いわけではない。なお、前述のディスクランチャー装着時のみ、ランチャーの弾数を消費することでオーバーヒートせずに格闘攻撃ができる。 --しかしながら近接攻撃を一度しただけで、数秒ブーストしただけでオーバーヒートしてしまい、他のアクション全てに大きな制限が課されるというのは窮屈でもあり、もう少し何とかして欲しかった、という声は多い。 --低難易度ならばエネルギー管理を気にせずとも無双することが可能なので、こだわりがないのならば難易度を調整することで気軽にスタイリッシュアクションを満喫できる。 ***武器出現の欠点 -基本的に主人公は3つの銃器と2つのグレネード類を同時に所持できる。 --そして落ちている武器を拾った場合、それが「所持していない種類の武器」なら装備中の銃器と「''交換''」され、所持している場合は「弾薬補給の余地がある」なら「''弾薬補給''」され、「弾薬補給の必要が無い」ものを「3回拾う」と「''強化''」される、という仕様になっている。 ---この性質上、「強化したい(=有用な)武器は撃てない」というジレンマに陥る場合がある。 -ただ、武器は多くの場所でランダムドロップであり、運が良ければ途切れずに強化や保持を続けられるが、運が悪いと途中で弾薬が切れ、やむなく使い慣れないor使いたくない武器を拾わなければならない場面も。 --もっとも、武器が固定で設置されている場所も多く、多くの場面で最適な武器が直前で入手できるため、そこまで強化にこだわる必要はない。 --また、あまり運頼りなプレイをしたくない場合、「''交換''」システムをフル活用し、マップ上の武器をかき集めて効率良くコツコツ強化する方法も可能ではある。それはそれで少々テンポが悪いが。 -初回購入特典の武器はドロップ率が低く、さらにレーザーを除くと弾数も少ないため、強化や補給がしづらく、強力だがなかなか使いづらい。 -特定の武器が無いと解除が難しい実績orトロフィーがいくつかある。だが上手く入手できるかは運が絡みやすい。 ***繰り返し遊ぶ要素が少ない -基本的な遊び方としてはストーリーをなぞるだけである。 --一応ステージの至る所に隠しターゲットが設置されていたりと、同じステージでも飽きさせない工夫はある。スコアの存在もあるため、やり込みようもある。 -またクリア特典も少ない。クリアしても「タクティカルチャレンジ((いわゆるチャレンジモード。))」「Hard以降の難易度」を選択可能になるのみ。 --コスチュームチェンジや隠し武器などといった要素は無い。ギャラリーモード等も無い。強いて言うなら高難易度をクリアすれば実績orトロフィーが取得できる事が特典か。 --あくまでオマケはオマケであり、メインのゲーム部分が良くできていればそれで良いのだが、ボリューム的な不満は生まれやすい。 ---特に難易度God Hardはクリアしても特に恩恵がないため、やり込みの面でもモチベーションは下がりがち。 ---もっとも、最高難易度に特典など付けられても、解禁できる人間は非常に限られてしまうので、そういった意味では正しい判断ではあるが。 //このボリューム不足が災いしてか、中古市場では非常に早い段階で値崩れがおき、現在では1000円前後で買えてしまう。 ***消化不良なシナリオ -評価点として挙げた映画のような演出だが、いささかくどい面はある。 -特に終盤のどんでん返しに、真相の語りに入る敵、戦いはこれからだ!と続編を作る気もないのに続編を匂わせるエンディングなど、悪く言えばあまりにもベタ。人によっては非常に鼻につくだろう。 //個人の憶測をあたかも事実かのように記載するのはやめましょう。風説の流布に当たります -また派手な演出に傾倒しすぎたが故に物語の整合性を欠いている部分も散見される。 #region(その一例。ネタバレ注意) -終盤、ロシアへの報復攻撃の是非を巡ってサムと米軍総大将バーンズはその装置のコントロールルームで激突。サムは辛くも勝利を収めるが、間をおかず米軍の後詰めの部隊に攻撃を受ける。 --先の戦闘で瀕死の重傷を負ったバーンズは「一緒に来るんだ!」と促すサムを退かせ、後詰めの部隊もろとも自爆して果てる。という突っ込み所満載の超展開が繰り広げられる。 --まず、負けた次の瞬間からサム側として振舞うバーンズが不自然極まる。一応大統領直々のロシアへの報復命令に対して葛藤を見せるシーンが存在するほか、激突直前の本人の言葉「欲しけりゃ勝ち取れ(=勝者が決定する)」に従ったという考え方もできる。 --しかし軍の機密上、先に殺害したフランシス博士同様始末すべき存在であるサムに加担することは、彼の矜持((軍の目的を第一に考え、そのためには手段と犠牲を厭わない。しかしそれは勝利で死者を弔うため、というもの。))と今までの行動・犠牲を全否定し、その先にある筈の米軍の勝利を放棄することに他ならず、これらが上記の発言より軽んじられるとは到底考えられない。確かに洋画でよく見る演出ではあるが。 --サムのほうも大概であり、バーンズの一喝であっさり退場。コントロールルームが占拠された時点で決着なのでサムは簡単に逃げられないはずである。 --そもそもつい数秒前まで殺し合いをしていた敵側その決着を委ねる理由も、こちら側でないバーンズを連れていく理由も彼には無い。 --仮に百歩譲ってバーンズがこちら側だとしても、瀕死の彼はまともに米軍を抑えられる状態ではない。''それこそ彼が自分のために自爆してくれるのが前提でもない限りは''取れない行動である。 ---後詰めの部隊もようやくサムを追い出した矢先に、味方であるはずの御大将が爆裂。無駄に命を散らすこととなる。 --これは余談だが、この一連の出来事のおかげで「''初めての殺生が味方同士''」という余計なおまけまでついてくる。せっかく今まで不殺だったのに…((ロシアの兵力は全て自律兵器ないしは遠隔操作であり、生身の人間は一切出てこない。))。 #endregion ***小ネタ かなりゲームと関係しないおふざけネタが多い。 -日本語音声は他言語や字幕と違い色々と遊んでいる。 --他言語で「クリスタル製の人間~」という呼ばれ方をする敵キャラ「クリスタルヴァイパー」を、日本語音声では「''ムッキムキスケスケマッチョマン''」と呼ぶなどネタの宝庫。 -コミックや映画などが元ネタと思われる細かいおふざけ。 --上記のクリスタルヴァイパーは全身ガラス製のアンドロイドで、光学兵器を完全に無効化するという能力を持つ。''ヒューッ!'' --転がっているテーブルを盾に身を隠すことも出来るが、当然だがそんな机ごと敵は撃ち抜いてくる。ハリウッド映画、というより日本の昭和特撮を皮肉った演出((怪人の攻撃を喫茶店の丸テーブルに隠れるだけで防御する主人公など。))かもしれない。 --人型に変形する敵巨大兵器。「何をしているんだ!?」「トランスフォーメーションです!ジェネレーターと主砲を直結して主砲を発射しようとしてます」どこの[[マクロス>マクロスシリーズ]]だ。 --スナイパーライフルでサーチライトを撃ち抜き、敵に見つからないよう潜入するステージを、見事最後まで発見されずにクリアすると解除される実績/トロフィーの名前が「[[フィッシャーおじさん>トム・クランシーシリーズ スプリンターセル]]」である。某ステルスゲームのサムおじさんを連想せずにはいられない。 -俺の右手はGOD HAND((達成トロフィーの名前に「ゴッドハンド」の文字が…。))。 ***難易度は高め -低難易度モードも存在し、ただクリアすればいいというユーザーには問題ないが、トロフィーor実績解除を目指すと難易度は高め。 --さらに、高得点を目指そうと思うと相当な壁がある。逆に考えるならやり込み甲斐があるとも言える。 ---特に難易度God Hardで高ランキングを目指す人にとっては…。 --また、「タクティカルチャレンジ」は全問どれを取ってもかなりの高難易度であり、相当なやり込みが無ければクリアするのは厳しい。 ---- **総評 爽快感溢れる内容、映画のような演出、非常に凝った設定…これ以外にも評価するべきポイントを数多く持つ、優秀な作品である。~ しかし、『[[アンチャーテッド>アンチャーテッドシリーズ]]』『KILLZONE』『[[Halo>HALOシリーズ]]』『[[Gears of War]]』と、似た特長を持つ強豪のライバルが、どうしても比較対象としてチラついてしまう。~ また、マルチプレイに重きを置かれるFPS/TPSというジャンルでありながら、その方面は弱い。これらが評価に影響してか、残念ながら諸手を挙げての賛辞には至らなかった。~ とは言え、そういった有名タイトル郡とは違った「本作ならでは」の長所も多く、興味があるならば、ぜひオススメしたい一作ではある。 //しかしながら、名作と呼ばれるには内容だけでなく、様々な要因が絡むことは言うまでもない。仮にかの名作『ドラゴンクエスト』がファミコンではなく、パソコンゲームとして発売されたらどうなっていただろうか?~ //あるいは『Ultima』や『Wizardry』が移植された後にファミコンゲームとして発売されたら?~ //一定の評価を受けつつも、一部のマニアに記憶されるだけにとどまったかもしれない((実際、当時の旧エニックス製PCゲームの多くはそうなった。))。 //喩えて言えば、カレー屋が林立した街に新規オープンしたカレー屋のようなものである。味とボリュームは文句ないが、他にも甲乙つけがたいほど美味しいカレーを出す老舗店はたくさんあり、そしておまけのサラダやドリンクのサービスは他店が圧倒的に優れていた。 ---- **余談 -『Gears of War』の開発者クリフ・ブレジンスキーがインタビューにて本作を「スタイルも何もかもが日本製の新幹線・弾丸列車((『Gears of War』は猪突猛進な石炭列車とのこと。))」とたとえ、北米とは異なる日本的表現が豊富に含まれたTPSと評価した上で「''マルチプレイヤーが無いのは罪''」と語っている((当時はFPS/TPSにマルチプレイヤーが存在するのは必須という風潮があった。FPS/TPSがシングルプレイのみでも評価されるようになるのは、本作の発売より数年先の話である。))。 --また、かつてオフィシャルブログにてハリウッド映画のような展開になった理由やゲームの設定、Q&A、開発裏話等が語られていた。 -2015年6月にプラチナゲームズは「E3 2015」で新作を発表することを事前に予告し、発表の1週間前には公式Twitterにて『VANQUISH』のスクリーンショットを[[投稿>https://www.gamespark.jp/article/2015/06/11/57634.html]]し、続編を待ち望むファンを大いに沸かせた。 --しかし、実際に発表されたのは『[[NieR:Automata]]』であったため、期待していたファンを大きく落胆させた。また、後にスクリーンショットが載せられたツイートは削除されている。 ---その後、現在に至るまで『VANQUISH』の新作は発売どころか発表すらされておらず、続編の登場は絶望的な状況である。結局、あの画像は何だったのだろうか? --なお、ディレクターである三上氏は本作の後に須田剛一氏とタッグを組んだ『[[Shadows of the DAMNED>https://www.ea.com/ja-jp/games/shadows-of-the-damned/shadows-of-the-damned]]』やサバイバルホラー『[[サイコブレイク]]』など、複数のTPS作品を手掛けている。%%ついでに『[[Fallout 4]]』にも出演した。%% ---- **その後の展開 -2017年5月26日にSteamにてWin版が配信された。4月に配信された同社の『[[ベヨネッタ]]』からわずか約1ヶ月半後というスピードである。 --こちらも、Win版移植にあたり数多くの最適化が施されており((4K解像度対応はもちろん、フレームレートの制限解除、キーボード+マウスエイミングのPC-FPS仕様の操作が可能、日本語を含む6ヶ国語対応で「音声・字幕・UIの言語を独立して設定可能」など非常に多くの変更点がある。))、CS版でDLC配信された特典武器も最初から全て同梱済みとなっている。 ---なお、こちらも心配されていた「おま国」「おま値」「おま言語」はなく、普通に日本のSteamストアから購入可能。 --ちなみに、Win版の移植は『戦場のヴァルキュリア』のWin版((『Valkyria Chronicles』のタイトルで配信されている。しかし、こちらは残念ながらSteamでは「おま国」のため日本からの購入は不可。))移植を担当したイギリスのデベロッパー「Little Stone Software」との協力により行われている。 -2020年5月28日に発売10周年を記念し『ベヨネッタ』とセットになったリマスター版がPS4で発売された((海外ではOneも発売されている。なお、両作品共に単体販売はされていない。))。
*VANQUISH 【ゔぁんきっしゅ】 |ジャンル|シューティングアクション|CENTER:&amazon(B003T9VDIC)&amazon(B003T9VDIM)|&amazon(B08511GV4F)| |対応機種|プレイステーション3&br()Xbox 360&br()プレイステーション4&br()Xbox One&br()Windows(Steam)|~|~| |発売元|セガ|~|~| |開発元|プラチナゲームズ&br()【Win】Little Stone Software|~|~| |発売日|【PS3/360】2010年10月21日&br()【Steam】2017年5月26日&br()【PS4/One】2020年5月28日|~|~| |定価|【PS3/360】7,600円(税別)|~|~| |レーティング|CERO:D(17才以上対象)|~|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~| |ポイント|ハイスピードのアクションTPS|~|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 &bold(){新世代アクションシューティング『VANQUISH』} 稲葉敦志氏と三上真司氏のタッグによる、「ハイスピード」&「ハイテンション」をテーマとした新感覚のシューティングアクション。低難易度もあって初心者への対応も万全の作品。~ 近未来を舞台としたSF設定は非常に良く練り込まれており、未来の科学技術や人口が100億を超えた地球で起こりうるだろう混乱や政治、人間模様等も非常に納得のできる出来映えとなっている。~ また、キャラクターデザインは『[[デビルメイクライ]]』や『[[戦国BASARA>戦国BASARAシリーズ]]』で知られる土林誠氏が担当している。 ゲームシステムそのものはいわゆるTPSだが、隠れ場所などから飛び出すカバーアクションや様々な近接戦闘のアクション、ブーストに加えて反射神経を鋭敏化することで周囲がゆっくり動いて見えるようになる''ARモード''など、非常にスピード感溢れるゲーム内容となっている。~ どちらかと言えばシューター(射撃)よりだが前述の近接アクションも豊富で、その気になれば敵である大型戦闘ロボットと殴り合いをすることもできる。~ また、サムの脇腹の光源の色を見てある程度の判断はできるものの、本ゲームは体力ゲージの様なものは存在しない。~ 短期間に大量の攻撃を受けると緊急ARモードに移行し、そこからさらにダメージを受けるとゲームオーバーとなる。~ しばらくするとARモードが解除されてオーバーヒート状態(後述)を経て、ダメージを受けてない状態に戻るので、危険な状態に陥っても隠れるなり逃げ回るなりしていれば案外死ななかったりする。なお、緊急ARは任意で解除できない。 ---- **評価点 ***難易度の調整 本作では、難易度をカジュアルオート(ARモード中は敵を自動で狙ってくれる)から選択することができ、ゲームの苦手な人でも容易にエンディングまで見ることができる。 -本作と同じく三上氏の手がけた『[[GOD HAND]]』は難易度Easyが他ゲームのHard以上だと言われていた。 --しかしながら、逆に簡単にしすぎたという三上氏のコメントもあったりする。本当は敵に都市迷彩をさせて視認性を落としたかったいう。 -当然(?)、難易度God Hardも存在する。''Yeah!'' --全ての敵が積極的にこちらをヘッドショット、移動しても当然の様に偏差射撃、そもそも通常攻撃の威力が一撃必殺、主人公の能力低下、強力な武器が出現しなくなると言うドM仕様。 ---ランキング上位に名を連ねようとすると、人生捨てる覚悟を持たなくてはならない鬼難易度である。 -セーブポイントも多く、クリア後の実績目当ての再プレイも容易。ムービーの閲覧機能はないが、細かくスタートミッションを選べるためあまり問題にはなっていない。 ***攻撃部位の存在 一部大型の敵は弱点部位が存在しており、頭や手足などを狙って集中攻撃することで、本体へのダメージに加えて攻撃した部位を破壊することができる。時間の流れが遅くなるARモードがあるので、ヘッドショットなども狙いやすい。 -多くのFPS/TPSではヘッドショットくらいしか弱点部位は存在しないが、本作の弱点部位は手・足・頭・背中など種類が多い。 --ただ攻撃可能箇所が多いだけでなく、破壊した箇所に応じて敵戦力が大きく変化する。相手によっては決して少なくない耐久力を一気に削りきって破壊することも可能。 ---頭を破壊された敵はふらふらと彷徨き、でたらめな攻撃をするだけになって大きく戦闘力が低下する。 ---腕を破壊された敵は攻撃力が大きく低下するものもいる一方で、主武器より強力な副武器で攻撃してくる敵がいるなど行動一つとってもバリエーションが豊かである。 ---両足を先に破壊してしまうと無茶苦茶に暴れ回って狙い撃ちが難しくなってしまうなど、かえって不利になってしまう場合もある。 --部位破壊によって武器選択に大きな意味が存在するようになった。 ---超至近距離から頭部破壊を狙う人にはショットガンは非常に有効な武器となり、そこまでスキルがない人には離れた位置からのマシンガンなどの方が使いやすいなど。 ---丸ノコの様なものを射出する「ディスクランチャー」という、大型ロボットの四肢を切断することに長けた武器(というか工具)も存在する。 ***映画のようなストーリー・演出 ストーリーだけでなく、展開やオチもハリウッド映画的。~ ネタバレになるので詳細は省くが、オープニングの大破壊シーンに始まり、どんでん返しやキャラクター同士のやり取り、そして敵組織の目的や行動、なによりエンディングのオチなど実にハリウッド。~ また、全ての武器は「BLADEシステム」という統合兵装が変形したものという扱いなのだが、武器を変更すると一瞬で持ちかえるのではなく逐一変形モーションが入る。 -一例として、主人公・サム・ギデオンの設定もハリウッド的。 --ぶっきらぼうで喧嘩腰に言い返すような言動が多く、無精髭を生やし紙巻き煙草を愛飲して文字通り周囲から煙たがられている。 --だが、DARPAに勤務する超エリートでARスーツの開発者でもあり、粗暴な態度の裏に優しさを秘めていることも周囲には知られている。 --大学時代はアメフトのスター選手だったが怪我によりスポーツ選手としての道を諦めている。 -登場人物とのやり取りもハリウッド。 --任務遂行を至上とする軍の指揮官バーンズとの言い争いに始まり、逃げ遅れた兵士を見捨てようとするバーンズにくってかかるサム。 --「命令無視だ!」の声を振り切り、サムは我が身を危険にさらして兵士を助ける。だが、撤退中に兵士は狙撃兵の攻撃により殺されてしまった。 --その後も人命を優先し命令違反や無謀な行動をするサムを、バーンズは見捨てる発言をしたり別行動を取ったりするが、後にバーンズ自身が我が身を危険にさらして絶体絶命のサムを救出する。 ---「バーンズ!?無事だったのか!」「人をゴキブリみてぇに言うな!」ニヤリと笑いあう2人。 -何かと映画的・漫画的なQTEが時折発生する。 --ただし、一部の例外を除いてQTEは失敗しても良い。ペナルティが発生することもあるが、失敗したなら失敗したで別の方法で解決すれば良い。 --QTEはあくまで演出の一部であり、ボスキャラをどう倒すかなどは完全にプレイヤーに委ねられている。 --ただし、イベント・戦闘を問わず、失敗すれば即死するQTEも随所に存在するので注意が必要。 ---地道に体力を削り、発生したQTEで倒すも良し、ロケットランチャーを連発して瞬殺するも良し。 -ハリウッド映画らしさは演出にも溢れており、大型の敵との戦いや要所でのシーンの締めなどは映画のようなムービーが展開される。 --ただし、あくまで主役はゲームであるということか、ムービーによる演出は最低限となっている。 -音声・字幕の徹底 --昨今のゲームでは珍しく、複数の言語音声と字幕に対応している。 --英語、日本語のみならずドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語までカバーしている。 ***(無駄に格好を付けられる)アクション性の高さ -基本的に本作はTPSなのだが、戦場を高速で移動する「ブースト」と素早く敵襲をかわす「回避」加え、武器によって性能が変わる「近接攻撃」が実装されており、また障害物の飛び越えなどのジャンプギミックも可能で、アクション性もかなり高め。 --特に「無駄なカッコつけ」においては相当なこだわりを持って作りこまれている。 ---ブースト姿勢のバリエーションだけでも(カッコつけ以上の意味はないのに)数種類が存在し、さらに近接攻撃を入力する事で敵に向かってライダーキックをかましたり、そこから跳ね返ってジャンプをするだけでもわざわざ宙返りのジャンプを決めたり、さらにそこからの銃撃でカッコ良く決めたり…。 ---大人しく障害物に隠れている時ですら「喫煙」で余裕のある挑発をかます事もでき、さらには吸殻を投げる事で熱源センサーに対するデコイとして機能するなど、戦術にも応用が可能。ただし、喫煙は体に悪いので1ステージ3本までとなっている。 ---このように基本となるアクションからただの挑発行動まで、本当に細かく作り込んでおり、戦場にあるまじき無駄なスタイリッシュさがそこらじゅうに散見される。 --さらにこれらに先述の''ARモード''を加えることにより、「敵前を一瞬のうちに通り過ぎ、掃討射撃で瞬殺する(ような感じにキメる)」「ジャンプしてから滞空したまま精密狙撃を行う」等の無駄なアクションを自分で演出することも可能となっている。 -これらの点において本作はかなりの動きの自由度を誇っており、「動かす楽しさ」は非常に大きい。 --この辺りは、やたらと豊富に用意された決めポーズとアクション性を重視された((反面、奇抜さやゲーム性の難の為にあまり受け入れられなかった。))三上氏監督のTPS『P.N.03』(GC)がようやく受け入れられる形になったと言っていいかも知れない。 --「ブースト中にブロックを飛び越えると同時に手榴弾を投げ、ARモードを作動。敵の頭上で手榴弾を狙撃して強制着火、さらに限界時間まで銃撃を続け、エネルギー切れ寸前に近接攻撃でトドメ」…といった映画のようなアクションも(''極めれば'')可能。 -また、アクション性が高いとは言え、操作自体は簡単で、ゲームバランスもこれらを必要としない程度のものに収まっているため、「TPSは好きだけどアクションが苦手」というプレイヤーでも問題なくプレイすることができる。 --敵弾飛び交う中を駆け巡るスリルやダイナミックさ、豊富なアクションを楽むか、あるいは普通のTPSのように渋い立ち回りを楽しむかをユーザーが選べる間口の広い作りになっている。逆に「アクションは好きだけどTPSは苦手」というプレイヤーも楽しめるだろう。 ---- **問題点 ***画面の見づらさ -HDのグラフィックは非常に綺麗なのだが、綺麗すぎて背景にとけ込んでしまい、一部見えづらくなっている箇所もある。瞬間の判断が大事な本ゲームでこれは致命的。慣れれば問題ないとも言えるが…。 -特に光の当たっている明るいところは眩しいほどである一方、影となっているところは容赦なく真っ暗闇であるなど、比喩抜きで敵が見えなくなるところも。 --主人公の着ているARスーツは試作型とはいえ未来技術の塊である。赤外線視覚など暗闇や遠方を見やすくする機能があってもおかしくはなかったのだが。 ***オンライン要素が乏しい -スコアランキング以外のオンライン要素は存在しない。ARモードの存在から、対戦や協力プレイを成立させづらかったためだろう。 --機動兵器や武器の奪い合いが起こったことは想像に難くなく、実現すれば他に類を見ないプレイ環境となっていただろうことを考えると残念なところである。 --どちらの機種を買ってもオンライン状況を考える必要が無いのは利点と言えば利点となっているが…。 ***敵の使い回しが多い -どのボスとも2回以上戦うことになるため、後半は目新しさが少なくダレやすい。 --再戦時は味方や他の敵の配置、地形の変化などの配慮はなされているが、ボスの攻撃パターンやステータスの強化は全く無いので代わり映えしない。 ***スタッフロールが飛ばせない -本作のスタッフロールはスタッフの顔を模した隕石を撃っていくシューティングになっており、スタッフの遊び心が窺える。 -しかし、初回プレイ時はまだしも2周目以降もスキップすることができないため、周回の際のストレスになる。 --しかも、総合成績の表示&セーブが行われるのはスタッフロールが終わってからなので、勝手にタイトルに戻ったりするわけにも行かない。クリアするたびに長いスタッフロールが終わるのを待つはめになる。 --ついでに、このミニゲームで獲得したスコアも総合スコアにしっかり加算されるため、高スコアを目指すユーザーにとっては放置すら不可能。嫌でもプレイする必要に迫られる。 --内容自体もシンプル極まりないため、初回の驚きはあるかも知れないが、2回目以降はそう面白いものではない。 ---- **賛否両論点 ***エネルギー消費行動やオーバーヒートのバランス -ARモード発動や格闘攻撃に必要な主人公のエネルギーは若干少なめに設定されており、少しのことでうっかりオーバーヒートしやすい。 --オーバーヒート中は防御機能も働かないため死に易くなり、また多くのアクションに制限が発生するためあまり大胆な行動ができなくなる。なお、オーバーヒート状態だと緊急ARモードに移行できないため、大ダメージを受けるとそのまま死ぬ。 --比較的あっさりとオーバーヒートしてしまい、そのたびに物陰に隠れ、およそ10秒ほどクールダウンをしなければならない…というテンポが悪い状況に陥りやすい。 -ただ格闘攻撃には一撃必殺級の威力があり、ARモード発動も手軽に大きな有利状況が得られるメリットがあるなど、いずれの行動にもそれ相応のリターンがある。 --そのため、そういったリターンとコストやリスクとの関係を考えればバランスが悪いわけではない。なお、前述のディスクランチャー装着時のみ、ランチャーの弾数を消費することでオーバーヒートせずに格闘攻撃ができる。 --しかしながら近接攻撃を一度しただけで、数秒ブーストしただけでオーバーヒートしてしまい、他のアクション全てに大きな制限が課されるというのは窮屈でもあり、もう少し何とかして欲しかった、という声は多い。 --低難易度ならばエネルギー管理を気にせずとも無双することが可能なので、こだわりがないのならば難易度を調整することで気軽にスタイリッシュアクションを満喫できる。 ***武器出現の欠点 -基本的に主人公は3つの銃器と2つのグレネード類を同時に所持できる。 --そして落ちている武器を拾った場合、それが「所持していない種類の武器」なら装備中の銃器と「''交換''」され、所持している場合は「弾薬補給の余地がある」なら「''弾薬補給''」され、「弾薬補給の必要が無い」ものを「3回拾う」と「''強化''」される、という仕様になっている。 ---この性質上、「強化したい(=有用な)武器は撃てない」というジレンマに陥る場合がある。 -ただ、武器は多くの場所でランダムドロップであり、運が良ければ途切れずに強化や保持を続けられるが、運が悪いと途中で弾薬が切れ、やむなく使い慣れないor使いたくない武器を拾わなければならない場面も。 --もっとも、武器が固定で設置されている場所も多く、多くの場面で最適な武器が直前で入手できるため、そこまで強化にこだわる必要はない。 --また、あまり運頼りなプレイをしたくない場合、「''交換''」システムをフル活用し、マップ上の武器をかき集めて効率良くコツコツ強化する方法も可能ではある。それはそれで少々テンポが悪いが。 -初回購入特典の武器はドロップ率が低く、さらにレーザーを除くと弾数も少ないため、強化や補給がしづらく、強力だがなかなか使いづらい。 -特定の武器が無いと解除が難しい実績orトロフィーがいくつかある。だが上手く入手できるかは運が絡みやすい。 ***繰り返し遊ぶ要素が少ない -基本的な遊び方としてはストーリーをなぞるだけである。 --一応ステージの至る所に隠しターゲットが設置されていたりと、同じステージでも飽きさせない工夫はある。スコアの存在もあるため、やり込みようもある。 -またクリア特典も少ない。クリアしても「タクティカルチャレンジ((いわゆるチャレンジモード。))」「Hard以降の難易度」を選択可能になるのみ。 --コスチュームチェンジや隠し武器などといった要素は無い。ギャラリーモード等も無い。強いて言うなら高難易度をクリアすれば実績orトロフィーが取得できる事が特典か。 --あくまでオマケはオマケであり、メインのゲーム部分が良くできていればそれで良いのだが、ボリューム的な不満は生まれやすい。 ---特に難易度God Hardはクリアしても特に恩恵がないため、やり込みの面でもモチベーションは下がりがち。 ---もっとも、最高難易度に特典など付けられても、解禁できる人間は非常に限られてしまうので、そういった意味では正しい判断ではあるが。 //このボリューム不足が災いしてか、中古市場では非常に早い段階で値崩れがおき、現在では1000円前後で買えてしまう。 ***消化不良なシナリオ -評価点として挙げた映画のような演出だが、いささかくどい面はある。 -特に終盤のどんでん返しに、真相の語りに入る敵、戦いはこれからだ!と続編を作る気もないのに続編を匂わせるエンディングなど、悪く言えばあまりにもベタ。人によっては非常に鼻につくだろう。 //個人の憶測をあたかも事実かのように記載するのはやめましょう。風説の流布に当たります -また派手な演出に傾倒しすぎたが故に物語の整合性を欠いている部分も散見される。 #region(その一例。ネタバレ注意) -終盤、ロシアへの報復攻撃の是非を巡ってサムと米軍総大将バーンズはその装置のコントロールルームで激突。サムは辛くも勝利を収めるが、間をおかず米軍の後詰めの部隊に攻撃を受ける。 --先の戦闘で瀕死の重傷を負ったバーンズは「一緒に来るんだ!」と促すサムを退かせ、後詰めの部隊もろとも自爆して果てる。という突っ込み所満載の超展開が繰り広げられる。 --まず、負けた次の瞬間からサム側として振舞うバーンズが不自然極まる。一応大統領直々のロシアへの報復命令に対して葛藤を見せるシーンが存在するほか、激突直前の本人の言葉「欲しけりゃ勝ち取れ(=勝者が決定する)」に従ったという考え方もできる。 --しかし軍の機密上、先に殺害したフランシス博士同様始末すべき存在であるサムに加担することは、彼の矜持((軍の目的を第一に考え、そのためには手段と犠牲を厭わない。しかしそれは勝利で死者を弔うため、というもの。))と今までの行動・犠牲を全否定し、その先にある筈の米軍の勝利を放棄することに他ならず、これらが上記の発言より軽んじられるとは到底考えられない。確かに洋画でよく見る演出ではあるが。 --サムのほうも大概であり、バーンズの一喝であっさり退場。コントロールルームが占拠された時点で決着なのでサムは簡単に逃げられないはずである。 --そもそもつい数秒前まで殺し合いをしていた敵側その決着を委ねる理由も、こちら側でないバーンズを連れていく理由も彼には無い。 --仮に百歩譲ってバーンズがこちら側だとしても、瀕死の彼はまともに米軍を抑えられる状態ではない。''それこそ彼が自分のために自爆してくれるのが前提でもない限りは''取れない行動である。 ---後詰めの部隊もようやくサムを追い出した矢先に、味方であるはずの御大将が爆裂。無駄に命を散らすこととなる。 --これは余談だが、この一連の出来事のおかげで「''初めての殺生が味方同士''」という余計なおまけまでついてくる。せっかく今まで不殺だったのに…((ロシアの兵力は全て自律兵器ないしは遠隔操作であり、生身の人間は一切出てこない。))。 #endregion ***小ネタ かなりゲームと関係しないおふざけネタが多い。 -日本語音声は他言語や字幕と違い色々と遊んでいる。 --他言語で「クリスタル製の人間~」という呼ばれ方をする敵キャラ「クリスタルヴァイパー」を、日本語音声では「''ムッキムキスケスケマッチョマン''」と呼ぶなどネタの宝庫。 -コミックや映画などが元ネタと思われる細かいおふざけ。 --上記のクリスタルヴァイパーは全身ガラス製のアンドロイドで、光学兵器を完全に無効化するという能力を持つ。''ヒューッ!'' --転がっているテーブルを盾に身を隠すことも出来るが、当然だがそんな机ごと敵は撃ち抜いてくる。ハリウッド映画、というより日本の昭和特撮を皮肉った演出((怪人の攻撃を喫茶店の丸テーブルに隠れるだけで防御する主人公など。))かもしれない。 --人型に変形する敵巨大兵器。「何をしているんだ!?」「トランスフォーメーションです!ジェネレーターと主砲を直結して主砲を発射しようとしてます」どこの[[マクロス>マクロスシリーズ]]だ。 --スナイパーライフルでサーチライトを撃ち抜き、敵に見つからないよう潜入するステージを、見事最後まで発見されずにクリアすると解除される実績/トロフィーの名前が「[[フィッシャーおじさん>トム・クランシーシリーズ スプリンターセル]]」である。某ステルスゲームのサムおじさんを連想せずにはいられない。 -俺の右手はGOD HAND((達成トロフィーの名前に「ゴッドハンド」の文字が…。))。 ***難易度は高め -低難易度モードも存在し、ただクリアすればいいというユーザーには問題ないが、トロフィーor実績解除を目指すと難易度は高め。 --さらに、高得点を目指そうと思うと相当な壁がある。逆に考えるならやり込み甲斐があるとも言える。 ---特に難易度God Hardで高ランキングを目指す人にとっては…。 --また、「タクティカルチャレンジ」は全問どれを取ってもかなりの高難易度であり、相当なやり込みが無ければクリアするのは厳しい。 ---- **総評 爽快感溢れる内容、映画のような演出、非常に凝った設定…これ以外にも評価するべきポイントを数多く持つ、優秀な作品である。~ しかし、『[[アンチャーテッド>アンチャーテッドシリーズ]]』『KILLZONE』『[[Halo>HALOシリーズ]]』『[[Gears of War]]』と、似た特長を持つ強豪のライバルが、どうしても比較対象としてチラついてしまう。~ また、マルチプレイに重きを置かれるFPS/TPSというジャンルでありながら、その方面は弱い。これらが評価に影響してか、残念ながら諸手を挙げての賛辞には至らなかった。~ とは言え、そういった有名タイトル郡とは違った「本作ならでは」の長所も多く、興味があるならば、ぜひオススメしたい一作ではある。 //しかしながら、名作と呼ばれるには内容だけでなく、様々な要因が絡むことは言うまでもない。仮にかの名作『ドラゴンクエスト』がファミコンではなく、パソコンゲームとして発売されたらどうなっていただろうか?~ //あるいは『Ultima』や『Wizardry』が移植された後にファミコンゲームとして発売されたら?~ //一定の評価を受けつつも、一部のマニアに記憶されるだけにとどまったかもしれない((実際、当時の旧エニックス製PCゲームの多くはそうなった。))。 //喩えて言えば、カレー屋が林立した街に新規オープンしたカレー屋のようなものである。味とボリュームは文句ないが、他にも甲乙つけがたいほど美味しいカレーを出す老舗店はたくさんあり、そしておまけのサラダやドリンクのサービスは他店が圧倒的に優れていた。 ---- **余談 -『Gears of War』の開発者クリフ・ブレジンスキーがインタビューにて本作を「スタイルも何もかもが日本製の新幹線・弾丸列車((『Gears of War』は猪突猛進な石炭列車とのこと。))」とたとえ、北米とは異なる日本的表現が豊富に含まれたTPSと評価した上で「''マルチプレイヤーが無いのは罪''」と語っている((当時はFPS/TPSにマルチプレイヤーが存在するのは必須という風潮があった。FPS/TPSがシングルプレイのみでも評価されるようになるのは、本作の発売より数年先の話である。))。 --また、かつてオフィシャルブログにてハリウッド映画のような展開になった理由やゲームの設定、Q&A、開発裏話等が語られていた。 -2015年6月にプラチナゲームズは「E3 2015」で新作を発表することを事前に予告し、発表の1週間前には公式Twitterにて『VANQUISH』のスクリーンショットを[[投稿>https://www.gamespark.jp/article/2015/06/11/57634.html]]し、続編を待ち望むファンを大いに沸かせた。 --しかし、実際に発表されたのは『[[NieR:Automata]]』であったため、期待していたファンを大きく落胆させた。また、後にスクリーンショットが載せられたツイートは削除されている。 ---その後、現在に至るまで『VANQUISH』の新作は発売どころか発表すらされておらず、続編の登場は絶望的な状況である。結局、あの画像は何だったのだろうか? --なお、ディレクターである三上氏は本作の後に須田剛一氏とタッグを組んだ『[[Shadows of the DAMNED>https://www.ea.com/ja-jp/games/shadows-of-the-damned/shadows-of-the-damned]]』やサバイバルホラー『[[サイコブレイク]]』など、複数のTPS作品を手掛けている。%%ついでに『[[Fallout 4]]』にも出演した。%% ---- **その後の展開 -2017年5月26日にSteamにてWin版が配信された。4月に配信された同社の『[[ベヨネッタ]]』からわずか約1ヶ月半後というスピードである。 --こちらも、Win版移植にあたり数多くの最適化が施されており((4K解像度対応はもちろん、フレームレートの制限解除、キーボード+マウスエイミングのPC-FPS仕様の操作が可能、日本語を含む6ヶ国語対応で「音声・字幕・UIの言語を独立して設定可能」など非常に多くの変更点がある。))、CS版でDLC配信された特典武器も最初から全て同梱済みとなっている。 ---なお、こちらも心配されていた「おま国」「おま値」「おま言語」はなく、普通に日本のSteamストアから購入可能。 --ちなみに、Win版の移植は『戦場のヴァルキュリア』のWin版((『Valkyria Chronicles』のタイトルで配信されている。しかし、こちらは残念ながらSteamでは「おま国」のため日本からの購入は不可。))移植を担当したイギリスのデベロッパー「Little Stone Software」との協力により行われている。 -2020年5月28日に発売10周年を記念し『ベヨネッタ』とセットになったリマスター版がPS4で発売された((海外ではOneも発売されている。なお、両作品共に単体販売はされていない。))。

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