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*QUOVADIS 2 惑星強襲オヴァン・レイ 【くぉう゛ぁでぃすつー わくせいきょうしゅう おう゛ぁんれい】 |ジャンル|リアルタイムストラテジー&br()(戦略シミュレーション)|&amazon(B000069SEI)| |対応機種|セガサターン|~| |メディア|CD-ROM 2枚組|~| |発売・開発元|グラムス|~| |発売日|1997年4月4日|~| |定価|6,800円|~| |レーティング|セガ審査:全年齢推奨|~| |判定|なし|~| |ポイント|底の浅い戦略性&br()貧相なゲーム画面、画質の悪いムービー&br()スナイパーゲー&ムービーゲー&br()''莫大な開発費でメーカーが倒産''&br()|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -リアルタイムストラテジーを採用した戦略シミュレーションゲーム。プレイヤーは主人公オヴァンを動かし、指揮官として部隊のユニットにリアルタイムで命令を与え、自身も兵器を駆って八惑星連合軍の一戦力としてG.O.A.軍と戦う。 -ユニットは敵を発見次第自動的に交戦を開始する他、移動や敵機撃破などそれぞれの状況を音声と小型ナビによる通信で逐一報告する。 -主戦力となる兵器は『アサルト・アーマー(以下AA)』と呼ばれる汎用人型機械で、本作における戦争の花形。それぞれファイター、ミディアム、スナイパー、ヘビーの4タイプが両軍で生産され、戦場に多数投入されている。ストーリーではこれらAAの主燃料となる資源の確保なども戦争の背景にある。 ---- **ストーリー セテウア歴3086年、G.O.A.軍エリート士官であった主人公オヴァンは、婚約者であるヒルダ、親友ディオンとともに大統領の就任式で警護の任に就いていた。しかし、式の最中に傭兵部隊「赤い蠍」による襲撃を受け、自ら囮として『アサルト・アーマー』に乗り込み出撃するも、敵の大部隊を前にあえなく撃墜されてしまう。~ かろうじて大統領を守りきったオヴァンだったが、意識を取り戻した時、彼の目に信じられない光景が飛び込んでくる。~ ~ 「……G.O.A.はオヴァン・レイ元少尉を惑星指名手配すると共に、……」~ ~ そこに写っていたのは、大統領襲撃事件の首謀者として指名手配されていた己自身の姿であった。~ オヴァンは惑星G.O.A.を脱出し、真実を探すべく、名前を変えて八惑星連合軍の傭兵として各惑星を転戦する事になる。~ 真相はむしろ敵地にあった。大統領襲撃事件から10年後、オヴァンはかつて事件に関わっていたと思われる傭兵部隊「赤い蠍」に入隊するのだった。~ ---- **評価点 -練りこまれた設定 --ストーリーや人物、AAの設定は非常に綿密に作られており、ムービーにもしっかり反映されている。 キャラクターの性格もリアリティーを重視しており、気候や環境による性格や言動の変化も現実味がある。 --付属特典である設定資料にはAAの設定画も。 -多彩な兵器のバリエーション --用意されたAAは支給配備されている武器を自由に着脱でき、瞬間火力や敵の士気を低下させられるサブマシンガンや、射程・威力を重視したアサルトライフル、間接射撃の強力なレールガンから高い破壊力を持つミサイルランチャーなど様々な用途に応じて換装させる事が可能。 --武器の中には使用する弾によって「エリア効果」「クリティカル」「間接射撃」の各3つの特徴を有しているものがあり、これの選択も非常に重要なものとなる。 --中盤から配備されるAA『スナイパー』は射程・破壊力・機動性全てが抜きん出ており、その制圧力は爽快。 パイロットは、多用した武器の特性に合わせて能力を上昇させるが、スナイパー、ホーボー等、格闘能力の低い機体で格闘戦を行うと、操縦と格闘の能力が著しく上昇する。 -戦略性を高めたシステム --「包囲効果」…複数のユニットで包囲して射撃を行うほど与えるダメージが増加する。当然自軍に対しても適用されるため、いかに敵を包囲し、自軍を囲まれないように部隊を展開するかが勝利のカギとなる。 --「高速移動」…敵の射撃に対して脆くなる代わりに、地形による移動速度の低下を抑える事ができる移動コマンド。 --「斉射」…ミサイルやロケットなどの兵器を、残弾全てを一斉に発射する。弾数の多いものではすさまじい弾幕となる。 --「士気」…主人公であるオヴァン以外のユニットは、敵から攻撃を受けると士気=MPが減少していく。これは時間ごとに回復していくが、一度0になってしまうと一定時間勝手に戦線から後退してしまう。この間はあらゆる命令を受け付けない上、射撃に対して無防備にもなる。上記の包囲効果によってもかなり減少に幅が出るため、ここでもいかに敵の士気を削ぐかが戦略の一つとなっている。 -豪華な声優陣 --小杉十郎太、三石琴乃、林原めぐみ、子安武人、大塚芳忠とベテラン揃い。 --ムービーはもちろん、戦闘シーンでも通信という形で戦況に合わせて喋りまくる。その演技力も相まって臨場感は抜群。 -随所に挟まれたアニメムービー --セガサターンでありながら多くの全画面ムービーを持つ。その大半は精密なメカニックデザインまで見事に描き込まれた傑作で、非常に高水準。 --2Dのデジタルアニメーションを採用しているが、開発当時のアニメ業界にはまだデジタルアニメーションのちゃんとしたノウハウが存在しなかったため、&s(){ゲーム会社なのに}社内にアニメスタジオを抱え自前で環境を整えるという無茶をしてこれを実現した。 --参加アニメーターは板野一郎をはじめマクロスシリーズに関わった一流のスタッフで構成。おかげで作画と演出も凄まじいものになっており、総力戦では板野サーカスまで披露する。当時のデジタルアニメの基準を考えると異常とも言えるクオリティであり、現代から見てもほとんど見劣りしない。 ---- **問題点 -戦略性 --個々のシステムでは問題ないのだが、''戦略は常に包囲効果と長距離射撃の力押しのみ''と非常に底が浅い。要するに敵の出現位置を把握して包囲しながら進むだけ。任務自体は侵攻だけでなく戦線保持や護衛など様々なのだが、どのシチュエーションでもやる事は同じなためゲーム的な面白さに乏しく、遊び方に工夫が必要。 --敵ユニットが移動でなく突然ある地点(索敵範囲内)に沸いて出る箇所があり、射程や絶対視認距離が設定されている意味がない事がある。高度や地形効果を無視して見えない場所から一方的に攻撃を仕掛けてくる場合も。 //--ZOCのような概念はなく、味方と味方が重なっても問題なく移動していく上、格闘圏内でなければ敵ユニットも素通り。また、敵ユニットが移動でなく突然ある地点(索敵範囲内)に沸いて出る箇所があり、絶対視認距離が設定されている意味がない事も多々。 --作戦完了後、キャラクターが行動に応じて経験値を得て成長していくのだが、スナイパー機に乗せているパイロットばかり(機体が強力なため)能力が飛びぬけて成長しやすい。 -ゲーム画面 --画面に表示されるユニットは''大半が10*10のドット絵''で、パターン数もあまり用意されていない。 --武器エフェクトに至ってはさらに少なく、サブマシンガンやライフル、ソリッドキャノンなどは全て同じで、あとはビーム武器と敵のレーザー、ミサイル・ロケットの計4パターン。うち実弾系は1~2ドットの点、ビームはペイントツールの直線のようなドットと、エフェクトに関してはファミコンに毛が生えた程度。 -機体の格差 --序盤で配備される機種「スナイパー」の性能がぶっとび過ぎ。 ---高い機動力・射程・破壊力・索敵能力を持ち合わせるスナイパーは本作屈指のバランスブレイカーで、単機で敵を見つけてはそのまま片付けてしまう程の高性能な機体。重武装なのに脚も早く、苦手な近距離からも逃げられる他、盾として数機を前に立たせればもはや完全無欠の移動要塞。威力の高いビームキャノン、間接射撃が可能なロングキャノン、支援用ミサイルなど強力かつ軽量で扱いやすい兵装が数多く用意されているのも本機のみ。 --逆に使えないのは最後の登場となるヘビー。 ---機体速度の遅さから足手まといになりやすい上、登場以降はメインキャラクターが搭乗するため、ほぼ必ず一機は強制で出撃しなければならず、進軍の足並みを狂わせる。防衛ミッションなら役に立つかと思うと、脚が遅すぎて防衛ラインに到達する前に敵と交戦する始末。 ---ちなみに装備を減らせば量産タイプであるミディアム並みの速度にはなれるのだが、''スナイパーなら同じ武装を二門積んでもお釣りがくる''。 ---士気システムと装甲を生かした戦法の相性が極めて悪い事もヘビーの実用性を下げている。士気が0になると戦線から自動的に後退するのは前述した通りだが、ステータスは「高速移動」と同じ状態であり、敵の射撃に対して極めて脆弱になるため、折角の装甲も紙同然になってしまう。地形効果の大きいシステムも相まって、「同時突撃で相手の攻撃を分散させる」「速度で地形効果の高い場所に陣取る」方が圧倒的に有効で、余程熟練したプレイヤーでなければヘビーを生かす場面は無いと言っていい。 --上記2機種は「待ち」「特定位置に出現」する敵側では持ち味を生かした凶悪さを発揮する。 -兵装バランス --兵装は様々なものが用意されているが、こちらもバランスが取れているとは言い難い。特に厳しいのが「重さ」のばらつき。兵装の重量は機体速度に深刻な影響を及ぼすため、あまりに重い兵装はそもそも積む価値がなくなってしまう。 --''スナイパー用の汎用狙撃兵装が恐ろしく軽い。''反対に、ヘビー用の兵装はミサイル以外とんでもなく重い。 --「敵に撃たれると脚が止まる」仕様があるため、生命線である移動速度を低下させる格闘兵装はほとんど存在価値がない。兵装自体がけっこう重い上、そもそもファイターは格闘兵装を積む必要がない。 -通信の不備 --画面に表示されるナビの中で全ユニットの音声通信に使用される割り当てが2つしかないため、報告中の通信が後から発信された通信で割り込まれて消されてしまったり、報告事態が後回しにされたりする。また、機体破損や敵機撃破の報告は優先度が高く設定されているため、これらに隠れて移動や交戦の通信が掻き消されてしまう事が非常に多い。 --さらにこのナビはイベントの強制通信や揚陸艇の指令、ひいては小ムービーなども使用するせいで、イベント中はユニットの通信が一切入らなくなる。 //-また、主人公オヴァンはプレイヤー自身であるためか、一切通信を行わない(移動目標地点に到達、交戦など)。そればかりか士気が絶対に減らないという特徴があり、勝手に一人で突撃してゲームオーバーということもしばしば。 -低画質なムービー --全画面ムービー自体の出来は素晴らしく良いのだが、''画質がとにかく悪い''。信じられない程に悪い。実は低画質には理由があるのだが、その事について説明書などに一切説明はない。従って一般プレイヤーはほぼ確実に低画質となる。特定の環境でのみ再生可能な高画質ムービーは動画サイトなどにアップロードされているものがあるため、そちらを参照されたし。 --作戦中に流れる小型ナビでのムービーはさらに劣悪で、音声までにごっている。こちらのフォローはない。 //-''ゲーム性の変化'' //--そもそも前作とゲーム性が全く異なっており、また前作のキャラクターが出演するのはいいものの、出番は最後のごく僅かな間だけだった。 ---- **総評 本作は意欲的な設定制作とは裏腹に実績を残す事が出来なかった。続編『クォヴァディス3』の構想があったという噂もあるが、本作の売れ行き不振によって完全に爆死してしまったのである(売上本数は10万本とも言われているが、それでも補いきれなかったらしく、「ムービーや設定に金をかけ過ぎた」というのがプレイヤー間における一致した見解のようだ)。~ キャラクターの、特にネリーは設定・容姿から現在でも人気があり、当時のセガサターンのゲームとしては設定・シナリオ共に確かに革新的なものを持っていた。
*QUOVADIS 2 惑星強襲オヴァン・レイ 【くぉう゛ぁでぃすつー わくせいきょうしゅう おう゛ぁんれい】 |ジャンル|リアルタイムストラテジー&br()(戦略シミュレーション)|&amazon(B000069SEI)| |対応機種|セガサターン|~| |メディア|CD-ROM 2枚組|~| |発売・開発元|グラムス|~| |発売日|1997年4月4日|~| |定価|6,800円|~| |レーティング|セガ審査:全年齢推奨|~| |判定|なし|~| |ポイント|底の浅い戦略性&br()貧相なゲーム画面、画質の悪いムービー&br()スナイパーゲー&ムービーゲー&br()''莫大な開発費でメーカーが倒産''&br()|~| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -リアルタイムストラテジーを採用した戦略シミュレーションゲーム。プレイヤーは主人公オヴァンを動かし、指揮官として部隊のユニットにリアルタイムで命令を与え、自身も兵器を駆って八惑星連合軍の一戦力としてG.O.A.軍と戦う。 -ユニットは敵を発見次第自動的に交戦を開始する他、移動や敵機撃破などそれぞれの状況を音声と小型ナビによる通信で逐一報告する。 -主戦力となる兵器は『アサルト・アーマー(以下AA)』と呼ばれる汎用人型機械で、本作における戦争の花形。それぞれファイター、ミディアム、スナイパー、ヘビーの4タイプが両軍で生産され、戦場に多数投入されている。ストーリーではこれらAAの主燃料となる資源の確保なども戦争の背景にある。 ---- **ストーリー セテウア歴3086年、G.O.A.軍エリート士官であった主人公オヴァンは、婚約者であるヒルダ、親友ディオンとともに大統領の就任式で警護の任に就いていた。しかし、式の最中に傭兵部隊「赤い蠍」による襲撃を受け、自ら囮として『アサルト・アーマー』に乗り込み出撃するも、敵の大部隊を前にあえなく撃墜されてしまう。~ かろうじて大統領を守りきったオヴァンだったが、意識を取り戻した時、彼の目に信じられない光景が飛び込んでくる。~ ~ 「……G.O.A.はオヴァン・レイ元少尉を惑星指名手配すると共に、……」~ ~ そこに写っていたのは、大統領襲撃事件の首謀者として指名手配されていた己自身の姿であった。~ オヴァンは惑星G.O.A.を脱出し、真実を探すべく、名前を変えて八惑星連合軍の傭兵として各惑星を転戦する事になる。~ 真相はむしろ敵地にあった。大統領襲撃事件から10年後、オヴァンはかつて事件に関わっていたと思われる傭兵部隊「赤い蠍」に入隊するのだった。~ ---- **評価点 -練りこまれた設定 --ストーリーや人物、AAの設定は非常に綿密に作られており、ムービーにもしっかり反映されている。 キャラクターの性格もリアリティーを重視しており、気候や環境による性格や言動の変化も現実味がある。 --付属特典である設定資料にはAAの設定画も。 -多彩な兵器のバリエーション --用意されたAAは支給配備されている武器を自由に着脱でき、瞬間火力や敵の士気を低下させられるサブマシンガンや、射程・威力を重視したアサルトライフル、間接射撃の強力なレールガンから高い破壊力を持つミサイルランチャーなど様々な用途に応じて換装させる事が可能。 --武器の中には使用する弾によって「エリア効果」「クリティカル」「間接射撃」の各3つの特徴を有しているものがあり、これの選択も非常に重要なものとなる。 --中盤から配備されるAA『スナイパー』は射程・破壊力・機動性全てが抜きん出ており、その制圧力は爽快。 パイロットは、多用した武器の特性に合わせて能力を上昇させるが、スナイパー、ホーボー等、格闘能力の低い機体で格闘戦を行うと、操縦と格闘の能力が著しく上昇する。 -戦略性を高めたシステム --「包囲効果」…複数のユニットで包囲して射撃を行うほど与えるダメージが増加する。当然自軍に対しても適用されるため、いかに敵を包囲し、自軍を囲まれないように部隊を展開するかが勝利のカギとなる。 --「高速移動」…敵の射撃に対して脆くなる代わりに、地形による移動速度の低下を抑える事ができる移動コマンド。 --「斉射」…ミサイルやロケットなどの兵器を、残弾全てを一斉に発射する。弾数の多いものではすさまじい弾幕となる。 --「士気」…主人公であるオヴァン以外のユニットは、敵から攻撃を受けると士気=MPが減少していく。これは時間ごとに回復していくが、一度0になってしまうと一定時間勝手に戦線から後退してしまう。この間はあらゆる命令を受け付けない上、射撃に対して無防備にもなる。上記の包囲効果によってもかなり減少に幅が出るため、ここでもいかに敵の士気を削ぐかが戦略の一つとなっている。 -豪華な声優陣 --小杉十郎太、三石琴乃、林原めぐみ、子安武人、大塚芳忠とベテラン揃い。 --ムービーはもちろん、戦闘シーンでも通信という形で戦況に合わせて喋りまくる。その演技力も相まって臨場感は抜群。 -随所に挟まれたアニメムービー --セガサターンでありながら多くの全画面ムービーを持つ。その大半は精密なメカニックデザインまで見事に描き込まれた傑作で、非常に高水準。 --2Dのデジタルアニメーションを採用しているが、開発当時のアニメ業界にはまだデジタルアニメーションのちゃんとしたノウハウが存在しなかったため、&s(){ゲーム会社なのに}社内にアニメスタジオを抱え自前で環境を整えるという無茶をしてこれを実現した。 --参加アニメーターは板野一郎をはじめマクロスシリーズに関わった一流のスタッフで構成。おかげで作画と演出も凄まじいものになっており、総力戦では板野サーカスまで披露する。当時のデジタルアニメの基準を考えると異常とも言えるクオリティであり、現代から見てもほとんど見劣りしない。 ---- **問題点 -バトルシステムの問題 --リアルタイムストラテジーではあるが、ほぼ全てのマップで「移動」の指示が9割以上を占めておりやれる事が少ない。 ---せいぜい敵発見後に間接射撃を行ったりする程度。間接射撃も味方の誰かが発見したらそこに向かって撃つというだけなので、やり過ぎるとやはり作業的になる。ミサイル・ロケット系武装なら一斉射撃コマンドも使えるが、当然使用後は弾切れになるため濫用はできない。 ---移動がメインという事は、''戦略は常に囮・包囲効果・長距離射撃の力押し''という事。防御的なアクションは一切存在しないし、偵察アクションは事実上囮を使った強行偵察か威力偵察しか行えない。作戦自体は侵攻だけでなく戦線保持や護衛などもあるが、どのシチュエーションでも敵の出現位置を把握して十字砲火や遠距離射撃を狙うしか有効な戦術がなく、全編通してやる事が同じなのでゲーム的な面白さに乏しい。 --敵ユニットが移動でなく突然ある地点(索敵範囲内)に沸いて出る箇所があり、射程や絶対視認距離が設定されている意味がない事がある。高度や地形効果を無視して見えない場所から一方的に攻撃を仕掛けてくる場合も。 //--ZOCのような概念はなく、味方と味方が重なっても問題なく移動していく上、格闘圏内でなければ敵ユニットも素通り。また、敵ユニットが移動でなく突然ある地点(索敵範囲内)に沸いて出る箇所があり、絶対視認距離が設定されている意味がない事も多々。 --マップは完全に2Dであり、立体的な表現のない一枚絵なので目視での地形の把握が難しい。 ---カーソルに表示される地形の名称を頼りに虱潰しに調べて把握するしかないのだが、地形の境界が分かりづらい上に判定が地味に細かく、森林沿いにルートを設定したと思ったら一瞬だけ露出して敵の射撃が飛んできたり、洞窟の壁に引っかかって移動停止といった事もある。 ---高度はさらに細かい事が多く、「高度の値がより大きい場所からは低い場所の地形効果が無視される」というシステムを生かしたいのに、数ドットの小さい場所でころころ高度が変わったりする。当然敵にも適用されるので、''上の高度の場所に陣取った敵ユニットがどう考えても視界の通らないビルの中や高架で隔てられた場所にいる味方ユニットを狙う''など不自然なシチュエーションもある。 --作戦完了後、キャラクターが行動に応じて経験値を得て成長していくのだが、スナイパー機に乗せているパイロットばかり(機体が強力なため)能力が飛びぬけて成長しやすい。 -ゲーム画面 --説明書と共に同梱されているストーリーブックには綿密で詳しい設定が記載されているのだが、画面に表示されるユニットは''大半が10*10のドット絵''とゲームシステムに落とし込むにしても落差が酷い。パターン数もあまり用意されておらず、主役たるオヴァンの格闘でさえ腕から数ドット武器が伸びた2パターンが踊るという全く見栄えがないものであり、著しく外連味に欠ける。 --武器エフェクトに至ってはさらに少なく、サブマシンガンやライフル、ソリッドキャノンなどは全て同じで、あとはビーム武器と敵のレーザー、ミサイル・ロケットの計4パターン。うち実弾系は1~2ドットの点、ビームはペイントツールの直線のようなドットと、エフェクトに関してはファミコンに毛が生えた程度。 -機体の格差 --序盤で配備される機種「スナイパー」の性能がぶっとび過ぎ。 ---高い機動力・射程・破壊力・索敵能力を持ち合わせるスナイパーは本作屈指のバランスブレイカーで、単機で敵を見つけてはそのまま片付けてしまう程の高性能な機体。重武装なのに脚も早く、苦手な近距離からも逃げられる他、盾として数機を前に立たせればもはや完全無欠の移動要塞。威力の高いビームキャノン、間接射撃が可能なロングキャノン、支援用ミサイルなど強力かつ軽量で扱いやすい兵装が数多く用意されているのも本機のみ。 --逆に使えないのは最後の登場となるヘビー。 ---機体速度の遅さから足手まといになりやすい上、登場以降はメインキャラクターが搭乗するため、ほぼ必ず一機は強制で出撃しなければならず、進軍の足並みを狂わせる。防衛ミッションなら役に立つかと思うと、脚が遅すぎて防衛ラインに到達する前に敵と交戦する始末。 ---ちなみに装備を減らせば量産タイプであるミディアム並みの速度にはなれるのだが、''スナイパーなら同じ武装を二門積んでもお釣りがくる''。 ---士気システムと装甲を生かした戦法の相性が極めて悪い事もヘビーの実用性を下げている。士気が0になると戦線から自動的に後退するのは前述した通りだが、ステータスは「高速移動」と同じ状態であり、敵の射撃に対して極めて脆弱になるため、折角の装甲も紙同然になってしまう。地形効果の大きいシステムも相まって、「同時突撃で相手の攻撃を分散させる」「速度で地形効果の高い場所に陣取る」方が圧倒的に有効で、余程熟練したプレイヤーでなければヘビーを生かす場面は無いと言っていい。 --上記2機種は「待ち」「特定位置に出現」する敵側では持ち味を生かした凶悪さを発揮する。 -兵装バランス --兵装は様々なものが用意されているが、こちらもバランスが取れているとは言い難い。特に厳しいのが「重さ」のばらつき。兵装の重量は機体速度に深刻な影響を及ぼすため、あまりに重い兵装はそもそも積む価値がなくなってしまう。 --''スナイパー用の汎用狙撃兵装が恐ろしく軽い。''反対に、ヘビー用の兵装はミサイル以外とんでもなく重い。 --「敵に撃たれると脚が止まる」仕様があるため、生命線である移動速度を低下させる格闘兵装はほとんど存在価値がない。兵装自体がそれなりの重さを持つため移動速度の低下を招く。加えてファイターはそもそも格闘兵装を積む必要がない。 -通信の不備 --画面に表示されるナビの中で全ユニットの音声通信に使用される割り当てが2つしかないため、報告中の通信が後から発信された通信で割り込まれて消されてしまったり、報告事態が後回しにされたりする。また、機体破損や敵機撃破の報告は優先度が高く設定されているため、これらに隠れて移動や交戦の通信が掻き消されてしまう事が非常に多い。 --さらにこのナビはイベントの強制通信や揚陸艇の指令、ひいては小ムービーなども使用するせいで、イベント中はユニットの通信が一切入らなくなる。 //-また、主人公オヴァンはプレイヤー自身であるためか、一切通信を行わない(移動目標地点に到達、交戦など)。そればかりか士気が絶対に減らないという特徴があり、勝手に一人で突撃してゲームオーバーということもしばしば。 -低画質なムービー --全画面ムービー自体の出来は素晴らしく良いのだが、''画質がとにかく悪い''。信じられない程に悪い。実は低画質には理由があるのだが、その事について説明書などに一切説明はない。従って一般プレイヤーはほぼ確実に低画質となる。特定の環境でのみ再生可能な高画質ムービーは動画サイトなどにアップロードされているものがあるため、そちらを参照されたし。 --作戦中に流れる小型ナビでのムービーはさらに劣悪で、音声までにごっている。こちらのフォローはない。 //-''ゲーム性の変化'' //--そもそも前作とゲーム性が全く異なっており、また前作のキャラクターが出演するのはいいものの、出番は最後のごく僅かな間だけだった。 ---- **総評 本作は意欲的な設定制作とは裏腹に実績を残す事が出来なかった。続編『クォヴァディス3』の構想があったという噂もあるが、本作の売れ行き不振によって完全に爆死してしまったのである(売上本数は10万本とも言われているが、それでも補いきれなかったらしく、「ムービーや設定に金をかけ過ぎた」というのがプレイヤー間における一致した見解のようだ)。~ キャラクターの、特にネリーは設定・容姿から現在でも人気があり、当時のセガサターンのゲームとしては設定・シナリオ共に確かに革新的なものを持っていた。

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