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*ARCUS 【あーくす】 |ジャンル|RPG| |対応機種|PC-8801mkIISR以降、PC-9801VM/UV以降、&br()FM77AV、X1turbo、X68000、MSX2| |発売・開発元|ウルフチーム| |発売日|1988年5月13日| |定価|7,800円| |判定|なし| |ポイント|経験値とレベルがない特異なRPG&br;ストーリー性やキャラクター性が強い作り&br;バランス面に難多し| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 ウルフチーム独立後、初めて作ったRPGであり、同社の看板シリーズの一つ。ウルフチームらしさが顕著に出ているゲームでもある。経験値とレベルがないという特異なRPG。~ 当時としては、それまでにないほどストーリー性、キャラクター性を前面に出している。 **ストーリー 自然に翻弄されるだけであった人間。だが彼らはその強大さ魅せられ、獲得しようと努力を重ねた。やがてそれは叶えられ、自然を司る精霊より大いなる力を授かる。それは魔学と呼ばれ人間の新たな力となった。~ だが奢る人間たちは、その力で他の種族を追いやり全てを得ようとした。あまりの無謀を見かねた精霊達は、人間が治める国、アルカサス王国を見捨ててしまった。精霊の加護を失った王国は、荒廃が進み、戦乱が頻発するようになっていた。~ そんなある日、伝承にある金龍からお告げが下る。それは次の日食の時にアルカサス王国を滅ぼす。それまでにこの土地から出て行けという、驚くべきものだった。~ 国王は国を滅ぼす金龍を討つために騎士団を送ったが、一人も戻ってこなかった。打つ手立てをなくした国王は病床に落ち、ただただ苦悶の表情を浮かべるしかなかった。~ そんな王国の辺境、みすぼらしい墓の前に一人の少年が立っていた。旅立ちの最後の挨拶のために。ジェダ・チャフは母を早くに亡くし、人里離れた山奥で元騎士の父と共に暮らしていた。だが、その父も病気によりもはや帰らぬ人となる。~ しかし、彼には父に鍛え上げられた剣の腕があった。やがて彼は挨拶を済ますと、父の形見の剣を握ると何処へともなく旅立っていった。その行き着く先で、王国存亡に大きく関わるとも知らずに…。 **特徴とシステム -ドラマはRPGを覚醒させる・・・! --OPデモでタイトルより先に出てくるこの言葉。本作の本質を語っていると言えるだろう。ストーリーを中心に置いたゲーム作りと、スタッフの前のめりの気合が感じられる言葉である。 -基本システムはウィザードリィタイプ。マッピングが必要。戦闘システムもウィザードリィと同様ターン制戦闘だが、攻撃や防御の種類が多い。 -経験値とレベルがないため、キャラクターのパラメーターは全く上昇しない。ただし、体調によって減少はする。この体調を示すのがPLというパラメーターである。これが低すぎると大きく戦闘力が落ちる。PL値の回復と共に元へと戻る。またこのパラメーターは魔法が使えるようになると、MPの様に消費されていく。 --成長要素はない訳ではない。「何度も戦った事のある敵に対して強くなる」という隠しパラメーターがある。ただし、それは各モンスター個別のもので、他の敵には影響しない。オークとばかり戦っているとオークに対しては強くなるが、初めて会った敵には、それが最弱クラスでもプレイ開始時と同程度の戦闘力しか発揮できないのである。 -武器屋がない。武装で強化という要素もない。 -戦闘では得るものがほとんどない。経験値がないシステムな上、お金も戦闘では得られない。 -体力とPLは休憩する事によって回復する。休憩中もエンカウントが発生するが、実は壁の方を向いて休憩するとエンカウントしない。本作のテクニックの一つ。このため宿屋はほとんど使わずじまい。ただセーブは宿屋のみで行われるため、全く泊まらないという訳にもいかないが。 --ただし一部壁が全くない真っ平のマップがある。そこでは当然、エンカウントを回避できない。 -お金は宝箱から得るしかないので有限である。 --しかし、一般のRPGで最も費用がかかる武装がなく、宿屋の必要性も低い。死者の復活も無料。つまりお金の使い道がそれほどない。よほど無駄遣いしなければ、まずなくならない。 **評価点 -演出とビジュアルに力を入れた、ストーリー性とキャラクター性が強い作り。 --ビジュアルを伴った会話イベントが多く、演出面が映えている。そもそもビジュアルを伴ったイベントシーンがあるRPGは、当時はほとんどなかった。これがストーリーと同時に、キャラクター性も強く出している。 ---キャラ作りそのものは、当時としてもオーソドックスでややベタ。もっともキャラクター性自体を強調しているRPGが、当時他にはあまりなかった。 --ストーリーも分かりやすいもの。仲間と力を合わせ苦難を乗り越える冒険譚。 --OPやEDも含めデモはさすがウルフチームらしく凝っており、情景描写もアニメを混ぜながら見事に表現している。 -マップは比較的分かりやすいものに。 --ストーリー性を重視し世界観を表現しようとしているので、マップもそれに倣っている。例えば塔でのマップは円形、峡谷のマップは分岐は少ないが道が長いなどとなっている。このため傾向が読みやすい。~ さらにマップ自体も大して複雑ではない。さらに、ワープポイントや回転床など混乱させるような仕掛けもほとんどない。一応すり抜けられる壁というものがあるが、これも事前にメッセージが表示される親切設計。~ 厄介なのはあちこちにあるトラップくらいだが、それでもそう陰湿なものはない。 -レベル上げや、稼ぎという手間が発生せず、ストーリーに集中してプレイできる。 **問題点 -エンカウント率が高い。 --五歩進めばエンカウントという高確率。少々鬱陶しい。救いは休憩で簡単に体力を全快できてしまう点。 -ちぐはぐな戦闘システム。 --戦闘で敵パーティの攻撃目標を指示できない。このため、やっかいなモンスターを全員で先に始末して、ザコを後で処分と言った戦術が取れない。どの敵を攻撃するかは勝手に決められる上、弱い方から攻撃しに行く傾向がある。 --本作の攻撃、防御コマンドは多彩だが、選択できる戦術自体が狭いのではその意味も半減する。 -話が先に進むほど減ってくイベントシーン。 --前半まではイベントが結構あるのだが、本格的に冒険を始める後半になると少なくなる。しかも後半にあるイベントシーンは、使いまわしが多い。 -凶悪モンスター「バンシー」。 --レベルがないため、逆に突出して強いモンスターも居ないのだが、その中でも異常な強さを誇るのがバンシーという老婆姿のモンスター。 ---その攻撃に「叫び」というものがある。これは、キャラクターのPL値を大きく下げ、戦闘力を極端に低下させる技。それどころか、下がりすぎてコントロール不能になる場合も少なくない。 ---しかも、前述のように弱い敵から攻撃に行く傾向のため、バンシーに攻撃が届く前にコントロール不能に陥る可能性も。 -凄まじくうんざりするマップがある。 --評価点と矛盾するようだが、むしろ本作の印象はこちらの方が強いかもしれない。そのマップはいかなるものかというと、砂漠と氷河である。つまり、何もないだだっ広い大地に、ポツリとある目的地を探せというもの。 --確かにこれらに特徴的な地形などないが、それを本当に採用してしまっている。しかも壁に向かっての安全な休憩ができない点が、このマップをさらにうんざりするものにしてしまっている。演出を重視している本作で、地形をそのまま表現している点は意図通りなのだろうが…。 ---また上記のバンシーが登場するマップも、マップ自体は大して難しくはないが、バンシーのせいでやや憂鬱なものとなってしまっている。 -バランスブレイカー即死魔法。 --後半になるとイベントにより魔法が使えるようになるのだが、この内即死魔法がバランスを崩壊させている。 ---まず成功率が異様に高い。一般のRPGなら、即死魔法は高レベルのモンスターには効きにくいのだが、本作にはレベルがないためこうなってしまった。もちろんこんな強力な魔法故にPL(MPに相当)の消費量は多い。しかし、このPLが戦闘中の「励ます」コマンドであっさり回復する。そして休憩でも回復する。つまり使用無制限。さらに即死魔法は複数ある。この魔法を手に入れると、前述のバンシーは相手にならない。というより勝負になる敵など、ほとんどいなくなる。もっとも戦闘にうまみがないため、楽に勝てるようになるのは逆にいい事なのかもしれないが。 -ラスボスに勝つのは運しだい。 --どのRPGにも言えるがラスボスは強大である。本作でも強く即死級の攻撃力を誇る。一般のRPGならそれに勝つためにレベル上げに励むのだが、本作にはレベルがなく、強くなってラストバトルに臨むという訳にはいかない。ではどうするかというと、即死攻撃が出ない事を祈りながら戦うしかない。結構長い最終ダンジョンの終点が運次第故に、負けた時の虚脱感はなんとも言えない。ちなみにこのラスボスは撃退する事はできても死なない。ラスボス打倒後、誤って出現場所に踏み込むとまた戦うハメになる。 ***そもそもRPGなのか? -本作にある根本的な疑問。経験値とレベルがない。武装も強化できない。それではRPGとしての成長要素はどこにあるのか? マニュアルには経験による行動の変化を成長と考えている…と書かれているが、行動に関するゲーム性はない。意味不明。 --前述の隠しパラメーターも、その上昇具合は大した事はない。一つのダンジョンでの敵の種類がそこそこいるため、同種の敵に対しての戦闘回数がそれほど多くならない。さらに、話を進めると従来の敵は出なくなり新規の敵ばかりになる訳で、どれほど戦闘経験を積んでもあまり効果がない。こんな調子のため、本作で成長を感じられる事はほとんどない。成長要素がないゲームなのにRPGなのか?むしろRPGのスタイルをとったADVと言った方が近いかもしれない。 **総評 いかにもウルフチームらしいゲーム。~ 演出に力を入れ、従来とは一風変わったシステムを目指した。が、一方でそれが的外れとなっている面もある。気合が演出では上手くかみ合い、逆にゲーム性では空回り。ウルフチームのPCゲームでよく見られる傾向である。~ 本作はレベル上げや稼ぎが発生しないため、話の進むテンポは前半は悪くない。また力を入れられているビジュアルやキャラクター性の強調は、それまでのRPGではあまり見なかったもの。~ しかし一方で、独特な成長システムはほとんど効果を出さず、後半の広いだけのマップも徒労感の方が大きい。またイベントシーンが後半乏しくなるのも、演出に力を入れている本作としては残念な所。戦闘も、後半はバランスが崩壊しておりただの作業。~ 目立つ長所と短所が折り重なっている。しかし、演出が当時としては突出しており、妙に印象の残るゲームだった。~ **その後の展開 -本作はシリーズ化され本家が三作目まで続いている。しかしながらシステムは『II』では2DのARPG、『III』ではまた3DのRPGになっている。 --物語的にも『I』と『II』『III』の間には数年の開きがあり、『II』『III』の主人公は『I』の“男の子ヒロイン((「ヒロイン的立場の少年」と言う意味で、別に「男の娘」と言うわけではない。))が青年となった姿である。 ---後にメガCDにて『アークスI・II・III』としてカップリング移植がされた。システムのベースやキャラデザインは『III』のもので統一されている((『I』及び『II』にのみ登場する人物も『III』ベースで新たに描き直されている。))。 --また、派生作品として『I』のパーティメンバーを主人公としたMD/X68000用クォータービューARPG『アークスオデッセイ』及びそのSFC移植版『アークススピリッツ』がある。 ---こちらはシステムはやや大味ながらも作品評価は良好。 -そのほかにも、当時マイコンBASICマガジンのウルフチーム広報ページ「WOLF GAMERS」で連載されていた本作セルフパロディ4コマ漫画をベースにしたコメディADV『あーくしゅ』がある。 --『アークス』のネタだけにとどまらず、『[[夢幻戦士 ヴァリス]]』などの日本テレネット時代を含めたウルフチームが過去に製作を担当した作品のネタも含まれている。 -本作をベースとして、以降のウルフチーム作品に「''セイクリッド・ファンタジー''」と呼ばれる''シェアワールド''設定が作られる事となった。 --時系列的には『ガウディ ~バルセロナの風~』(''現代'')→『ファイナルゾーン』(''近未来'')→第三次世界大戦か何かで''文明が一度崩壊''→『アークス』シリーズ(''ファンタジー'')→『ミッドガルツ』(''ファンタジー'')の順番。 -後に親会社である日本テレネットが経営危機に陥った際に同社の多数のゲームの版権が売却されることになり、本シリーズの版権は''アダルトゲームメーカーの''イーアンツに売却された。そして発売された''アダルトゲーム''『アークスX((“X”はローマ数字の“10”ではなく「X指定(18禁)」と言う意味。))』は''シリーズファンから批判を浴びる事態に''。 --作品としては『アークスI・II・III』のリメイク的な内容だった。一般向け作品がアダルト化する事はこれまでにもあったが・・。 ---尤も''『III』の時点で既に(デザイナーが代わったからか)キャラの恰好がエ%%ロ%%ラい事になっていた''が。「[[90年代的なキャラデザイン>ラングリッサーシリーズ]]」と言えなくもない。 ---尚、『X』のキャラデザインは『III』準拠である。(悪く言えば)''地味だった''『I』『II』ではなく。
*ARCUS 【あーくす】 |ジャンル|RPG| |対応機種|PC-8801mkIISR以降、PC-9801VM/UV以降、&br()FM77AV、X1turbo、X68000、MSX2| |発売・開発元|ウルフチーム| |発売日|1988年5月13日| |定価|7,800円| |判定|なし| |ポイント|経験値とレベルがない特異なRPG&br;ストーリー性やキャラクター性が強い作り&br;バランス面に難多し| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 ウルフチーム独立後、初めて作ったRPGであり、同社の看板シリーズの一つ。ウルフチームらしさが顕著に出ているゲームでもある。経験値とレベルがないという特異なRPG。~ 当時としては、それまでにないほどストーリー性、キャラクター性を前面に出している。 **ストーリー 自然に翻弄されるだけであった人間。だが彼らはその強大さ魅せられ、獲得しようと努力を重ねた。やがてそれは叶えられ、自然を司る精霊より大いなる力を授かる。それは魔学と呼ばれ人間の新たな力となった。~ だが奢る人間たちは、その力で他の種族を追いやり全てを得ようとした。あまりの無謀を見かねた精霊達は、人間が治める国、アルカサス王国を見捨ててしまった。精霊の加護を失った王国は、荒廃が進み、戦乱が頻発するようになっていた。~ そんなある日、伝承にある金龍からお告げが下る。それは次の日食の時にアルカサス王国を滅ぼす。それまでにこの土地から出て行けという、驚くべきものだった。~ 国王は国を滅ぼす金龍を討つために騎士団を送ったが、一人も戻ってこなかった。打つ手立てをなくした国王は病床に落ち、ただただ苦悶の表情を浮かべるしかなかった。~ そんな王国の辺境、みすぼらしい墓の前に一人の少年が立っていた。旅立ちの最後の挨拶のために。ジェダ・チャフは母を早くに亡くし、人里離れた山奥で元騎士の父と共に暮らしていた。だが、その父も病気によりもはや帰らぬ人となる。~ しかし、彼には父に鍛え上げられた剣の腕があった。やがて彼は挨拶を済ますと、父の形見の剣を握ると何処へともなく旅立っていった。その行き着く先で、王国存亡に大きく関わるとも知らずに…。 **特徴とシステム -ドラマはRPGを覚醒させる・・・! --OPデモでタイトルより先に出てくるこの言葉。本作の本質を語っていると言えるだろう。ストーリーを中心に置いたゲーム作りと、スタッフの前のめりの気合が感じられる言葉である。 -基本システムはウィザードリィタイプ。マッピングが必要。戦闘システムもウィザードリィと同様ターン制戦闘だが、攻撃や防御の種類が多い。 -経験値とレベルがないため、キャラクターのパラメーターは全く上昇しない。ただし、体調によって減少はする。この体調を示すのがPLというパラメーターである。これが低すぎると大きく戦闘力が落ちる。PL値の回復と共に元へと戻る。またこのパラメーターは魔法が使えるようになると、MPの様に消費されていく。 --成長要素はない訳ではない。「何度も戦った事のある敵に対して強くなる」という隠しパラメーターがある。ただし、それは各モンスター個別のもので、他の敵には影響しない。オークとばかり戦っているとオークに対しては強くなるが、初めて会った敵には、それが最弱クラスでもプレイ開始時と同程度の戦闘力しか発揮できないのである。 -武器屋がない。武装で強化という要素もない。 -戦闘では得るものがほとんどない。経験値がないシステムな上、お金も戦闘では得られない。 -体力とPLは休憩する事によって回復する。休憩中もエンカウントが発生するが、実は壁の方を向いて休憩するとエンカウントしない。本作のテクニックの一つ。このため宿屋はほとんど使わずじまい。ただセーブは宿屋のみで行われるため、全く泊まらないという訳にもいかないが。 --ただし一部壁が全くない真っ平のマップがある。そこでは当然、エンカウントを回避できない。 -お金は宝箱から得るしかないので有限である。 --しかし、一般のRPGで最も費用がかかる武装がなく、宿屋の必要性も低い。死者の復活も無料。つまりお金の使い道がそれほどない。よほど無駄遣いしなければ、まずなくならない。 **評価点 -演出とビジュアルに力を入れた、ストーリー性とキャラクター性が強い作り。 --ビジュアルを伴った会話イベントが多く、演出面が映えている。そもそもビジュアルを伴ったイベントシーンがあるRPGは、当時はほとんどなかった。これがストーリーと同時に、キャラクター性も強く出している。 ---キャラ作りそのものは、当時としてもオーソドックスでややベタ。もっともキャラクター性自体を強調しているRPGが、当時他にはあまりなかった。 --ストーリーも分かりやすいもの。仲間と力を合わせ苦難を乗り越える冒険譚。 --OPやEDも含めデモはさすがウルフチームらしく凝っており、情景描写もアニメを混ぜながら見事に表現している。 -マップは比較的分かりやすいものに。 --ストーリー性を重視し世界観を表現しようとしているので、マップもそれに倣っている。例えば塔でのマップは円形、峡谷のマップは分岐は少ないが道が長いなどとなっている。このため傾向が読みやすい。~ さらにマップ自体も大して複雑ではない。さらに、ワープポイントや回転床など混乱させるような仕掛けもほとんどない。一応すり抜けられる壁というものがあるが、これも事前にメッセージが表示される親切設計。~ 厄介なのはあちこちにあるトラップくらいだが、それでもそう陰湿なものはない。 -レベル上げや、稼ぎという手間が発生せず、ストーリーに集中してプレイできる。 **問題点 -エンカウント率が高い。 --五歩進めばエンカウントという高確率。少々鬱陶しい。救いは休憩で簡単に体力を全快できてしまう点。 -ちぐはぐな戦闘システム。 --戦闘で敵パーティの攻撃目標を指示できない。このため、やっかいなモンスターを全員で先に始末して、ザコを後で処分と言った戦術が取れない。どの敵を攻撃するかは勝手に決められる上、弱い方から攻撃しに行く傾向がある。 --本作の攻撃、防御コマンドは多彩だが、選択できる戦術自体が狭いのではその意味も半減する。 -話が先に進むほど減ってくイベントシーン。 --前半まではイベントが結構あるのだが、本格的に冒険を始める後半になると少なくなる。しかも後半にあるイベントシーンは、使いまわしが多い。 -凶悪モンスター「バンシー」。 --レベルがないため、逆に突出して強いモンスターも居ないのだが、その中でも異常な強さを誇るのがバンシーという老婆姿のモンスター。 ---その攻撃に「叫び」というものがある。これは、キャラクターのPL値を大きく下げ、戦闘力を極端に低下させる技。それどころか、下がりすぎてコントロール不能になる場合も少なくない。 ---しかも、前述のように弱い敵から攻撃に行く傾向のため、バンシーに攻撃が届く前にコントロール不能に陥る可能性も。 -凄まじくうんざりするマップがある。 --評価点と矛盾するようだが、むしろ本作の印象はこちらの方が強いかもしれない。そのマップはいかなるものかというと、砂漠と氷河である。つまり、何もないだだっ広い大地に、ポツリとある目的地を探せというもの。 --確かにこれらに特徴的な地形などないが、それを本当に採用してしまっている。しかも壁に向かっての安全な休憩ができない点が、このマップをさらにうんざりするものにしてしまっている。演出を重視している本作で、地形をそのまま表現している点は意図通りなのだろうが…。 ---また上記のバンシーが登場するマップも、マップ自体は大して難しくはないが、バンシーのせいでやや憂鬱なものとなってしまっている。 -バランスブレイカー即死魔法。 --後半になるとイベントにより魔法が使えるようになるのだが、この内即死魔法がバランスを崩壊させている。 ---まず成功率が異様に高い。一般のRPGなら、即死魔法は高レベルのモンスターには効きにくいのだが、本作にはレベルがないためこうなってしまった。もちろんこんな強力な魔法故にPL(MPに相当)の消費量は多い。しかし、このPLが戦闘中の「励ます」コマンドであっさり回復する。そして休憩でも回復する。つまり使用無制限。さらに即死魔法は複数ある。この魔法を手に入れると、前述のバンシーは相手にならない。というより勝負になる敵など、ほとんどいなくなる。もっとも戦闘にうまみがないため、楽に勝てるようになるのは逆にいい事なのかもしれないが。 -ラスボスに勝つのは運しだい。 --どのRPGにも言えるがラスボスは強大である。本作でも強く即死級の攻撃力を誇る。一般のRPGならそれに勝つためにレベル上げに励むのだが、本作にはレベルがなく、強くなってラストバトルに臨むという訳にはいかない。ではどうするかというと、即死攻撃が出ない事を祈りながら戦うしかない。結構長い最終ダンジョンの終点が運次第故に、負けた時の虚脱感はなんとも言えない。ちなみにこのラスボスは撃退する事はできても死なない。ラスボス打倒後、誤って出現場所に踏み込むとまた戦うハメになる。 ***そもそもRPGなのか? -本作にある根本的な疑問。経験値とレベルがない。武装も強化できない。それではRPGとしての成長要素はどこにあるのか? マニュアルには経験による行動の変化を成長と考えている…と書かれているが、行動に関するゲーム性はない。意味不明。 --前述の隠しパラメーターも、その上昇具合は大した事はない。一つのダンジョンでの敵の種類がそこそこいるため、同種の敵に対しての戦闘回数がそれほど多くならない。さらに、話を進めると従来の敵は出なくなり新規の敵ばかりになる訳で、どれほど戦闘経験を積んでもあまり効果がない。こんな調子のため、本作で成長を感じられる事はほとんどない。成長要素がないゲームなのにRPGなのか? むしろRPGのスタイルをとったADVと言った方が近いかもしれない。 **総評 いかにもウルフチームらしいゲーム。~ 演出に力を入れ、従来とは一風変わったシステムを目指した。が、一方でそれが的外れとなっている面もある。気合が演出では上手くかみ合い、逆にゲーム性では空回り。ウルフチームのPCゲームでよく見られる傾向である。~ 本作はレベル上げや稼ぎが発生しないため、話の進むテンポは前半は悪くない。また力を入れられているビジュアルやキャラクター性の強調は、それまでのRPGではあまり見なかったもの。~ しかし一方で、独特な成長システムはほとんど効果を出さず、後半の広いだけのマップも徒労感の方が大きい。またイベントシーンが後半乏しくなるのも、演出に力を入れている本作としては残念な所。戦闘も、後半はバランスが崩壊しておりただの作業。~ 目立つ長所と短所が折り重なっている。しかし、演出が当時としては突出しており、妙に印象の残るゲームだった。~ **その後の展開 -本作はシリーズ化され本家が三作目まで続いている。しかしながらシステムは『II』では2DのARPG、『III』ではまた3DのRPGになっている。 --物語的にも『I』と『II』『III』の間には数年の開きがあり、『II』『III』の主人公は『I』の“男の子ヒロイン((「ヒロイン的立場の少年」と言う意味で、別に「男の娘」と言うわけではない。))が青年となった姿である。 ---後にメガCDにて『アークスI・II・III』としてカップリング移植がされた。システムのベースやキャラデザインは『III』のもので統一されている((『I』及び『II』にのみ登場する人物も『III』ベースで新たに描き直されている。))。 --また、派生作品として『I』のパーティメンバーを主人公としたMD/X68000用クォータービューARPG『アークスオデッセイ』及びそのSFC移植版『アークススピリッツ』がある。 ---こちらはシステムはやや大味ながらも作品評価は良好。 -そのほかにも、当時マイコンBASICマガジンのウルフチーム広報ページ「WOLF GAMERS」で連載されていた本作セルフパロディ4コマ漫画をベースにしたコメディADV『あーくしゅ』がある。 --『アークス』のネタだけにとどまらず、『[[夢幻戦士 ヴァリス]]』などの日本テレネット時代を含めたウルフチームが過去に製作を担当した作品のネタも含まれている。 -本作をベースとして、以降のウルフチーム作品に「''セイクリッド・ファンタジー''」と呼ばれる''シェアワールド''設定が作られる事となった。 --時系列的には『ガウディ ~バルセロナの風~』(''現代'')→『ファイナルゾーン』(''近未来'')→第三次世界大戦か何かで''文明が一度崩壊''→『アークス』シリーズ(''ファンタジー'')→『ミッドガルツ』(''ファンタジー'')の順番。 -後に親会社である日本テレネットが経営危機に陥った際に同社の多数のゲームの版権が売却されることになり、本シリーズの版権は''アダルトゲームメーカーの''イーアンツに売却された。そして発売された''アダルトゲーム''『アークスX((“X”はローマ数字の“10”ではなく「X指定(18禁)」と言う意味。))』は''シリーズファンから批判を浴びる事態に''。 --作品としては『アークスI・II・III』のリメイク的な内容だった。一般向け作品がアダルト化する事はこれまでにもあったが・・。 ---尤も''『III』の時点で既に(デザイナーが代わったからか)キャラの恰好がエ%%ロ%%ラい事になっていた''が。「[[90年代的なキャラデザイン>ラングリッサーシリーズ]]」と言えなくもない。 ---尚、『X』のキャラデザインは『III』準拠である。(悪く言えば)''地味だった''『I』『II』ではなく。

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