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---- #contents ---- *トラスティベル ~ショパンの夢~ 【とらすてぃべる しょぱんのゆめ】 |ジャンル|RPG|&amazon(B000GJ5FHI)| |対応機種|Xbox 360|~| |発売元|バンダイナムコゲームス|~| |開発元|トライクレッシェンド|~| |発売日|2007年6月14日|~| |価格|7,329円|~| |判定|なし|~| |ポイント|爽快かつ独特な戦闘システム&br()良質な音楽&br()説明不足すぎるシナリオ&br()説教エンディング|~| ---- **概要 トライエース作品や『[[バテン・カイトス>バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海]]』などで共同開発を行っている「トライクレッシェンド」が初めて単独開発を行った作品。~ ポーランドの有名な作曲家・ピアニスト「フレデリック・フランソワ・ショパン」を題材にしており((ただショパンを姉か妻かと思われる女性が看病しているなど、今作独自の解釈も多い。))、彼が39歳の短い生涯を閉じる3時間前に見た夢の世界を冒険する。 ---- **評価点 -独特な戦闘システム(タイムシェアードリアルタイムバトルシステム) --戦闘はフィールド上に存在するシンボルと接触することで発生する。~ プレイヤーキャラと敵が戦闘フィールドに配置され、素早い順番にターンが回ってくる。 --ターンは、プレイヤーが行動を考える「シンキングタイム」と実際に行動して敵を攻撃する「アクティブタイム」の2部構成となっている。 ---シンキングタイム中は全ての時間が停止しているので、敵の配置やコマンドを確認し、実際の行動を吟味する。そしてアクティブタイムでは実際にシンキングタイムで考えた行動を実行し、敵の下へ移動、攻撃を行う。 --行動はスティックでの移動以外に、Aボタンで通常攻撃、Bボタンで防御、Xボタンでアイテムスロットのアイテムを使用、Yボタンで必殺技を使用する。 --Aボタンの通常攻撃を当てると、コンマ数秒ほどアクティブタイムの行動時間が増えるため、そのコンマの時間の入力が戦況を左右することもある。 --また、攻撃のヒット数に応じて「エコー」と呼ばれるポイントがたまり、このポイントがたまっているときに必殺技を使用すれば、ポイントを消費するかわりに攻撃力が上がる。 ---限られた行動時間でどのように行動するかを考えるのはなかなか面白い。必殺技のエフェクトも派手で爽快感もある。 --また、本作で非常に重要なのは、Bボタンの防御である。 ---敵の攻撃時に、タイミングよくBボタンを押すと敵の攻撃をガードしてダメージを減らすことができる。連打ではガードできず、タイミングよく目押しすることが求められる。 ---敵の攻撃力は高めに設定されており、雑魚ボス問わず、このガードをうまく決められるかによって戦闘の難易度は劇的に変わる((キャラクターの体力はレベル20程度で5000近くまで到達するが、ガードをしくじればボス等なら半分近く消し飛ぶ事もざらにある。))。できなければ雑魚戦でも余裕で全滅できるため、いつでも気を抜けない緊張感のある戦闘が楽しめる。 ---また背後からの攻撃はガードすることができないため、敵に背後を取られないようにする位置取りも求められる。もちろんこれは敵にも当てはまるので、いかに敵の背後をとるかも重要である。 --戦闘フィールドには日向と日陰があり、どの場所にいるかでさまざまな影響がある。 ---プレイヤーキャラは、日向と日陰どちらにいるかによって必殺技の種類が変わる。日向にいるときは連激系の、日陰にいるときは遠距離技が出るなど、どの技を出したいのかによって上記の防御のことも踏まえて位置取りを変える必要もある。 ---敵の場合は日向か日陰かによって名前や外見、強さが変化するものがいる。日向にいるときはそれほど強くないが、日陰に入ると強力な攻撃を行ってくるものもいるため、日向におびき出すようにキャラを日向に移動させる、敵を押し飛ばす効果のある必殺技で日向へ押し出す、キャラの回りがどこでも日向になるアイテムを使うといった戦略をとる必要がある。 --総じて難易度は高めであり戦闘には慣れが必要だが、相応にとても高い戦略性を兼ね備えており、慣れてくると緊張感と爽快感を両立させた戦闘を楽しめると好評である。 --ストーリーが進むとパーティークラスと呼ばれるレベルが上昇していき、レベルが上がるとシンキングタイムとアクティブタイムがやや短くなるかわりに、敵の攻撃にあわせてAボタンを目押ししてダメージを与える「反撃」や必殺技を連続してつなげる「ハーモニーチェイン」が開放されていくなど、プレイヤーの慣れにあわせて戦闘の行動も広がっていくので、順当に上達している実感もわきやすい。 -音楽 --桜庭統氏作曲の音楽は非常に好評 ---通常戦闘曲である『Leap the Precipice』は通常戦とは思えないほど壮大な楽曲に仕上がっている。 ---ダンジョンなどの曲も世界観を引き立てる良質な音楽がそろっている。 --また題材である「ショパン」が作曲したピアノ曲がスタニスラフ・ブーニンの演奏によってゲーム中で流れる。メニューのサウンドテストで桜庭氏の曲も含めていつでも聴きなおすことができる。 -グラフィック --1080pに対応しており、次世代機相応の美しいグラフィックとなっている。草木、水なども美麗に表現されている。 --キャラクターたちも、元のキャラクターデザインをうまく3Dグラフィック化していると好評。 -収集要素や2周目もやり応えのあるものになっている。 --世界に点在する楽譜である「スコアピース」の収集や、敵の写真をとって写真屋に評価してもらってポイントをもらう「エネミーフォト」などがある。 --2周目は敵の攻撃力やHPが1.3倍になるため、よりガードやキャラの立ち位置の管理が求められる歯ごたえのある戦闘が楽しめる。 ---- **問題点 -シナリオ --今作の評価を著しく下げたのはほとんどがこの部分といっても過言ではない。 --とにかく登場人物の台詞がいちいち詩的で、なおかつ説教臭いのが特徴。開始直後に流れるムービーの台詞「届くかな 彼に… ''私のエアーキッス…''」からして並の感性では理解に苦しむだろう。 --ストーリー中で「トラスティの輝き」という言葉が頻繁に用いられるが、''その「トラスティ」がいったい何を指しているのか直接的に語られることは最後まで無い。''おそらくは清らかな心の輝きのようなものと思われるが……。 ---オープニングからしてプレイヤーの度肝を抜いてくれる。初めは少女と母親の微笑ましい掛け合いのように見えるが、少女の「どうして海には波があるの?」という問いに答える母親の話がどんどんとおかしな方向に転がってゆく。 ---その内容は、海に波が立つのは月の美しさに海の水がざわめくから→人間界には人の心を波立たせるものがたくさんある→人が多ければ大きな欲望の波が起こり争いが起こる→''もしも世界が波立った時にはあなたが海に飛び込まなくてはいけないかもしれない。'' ---''何を言っているのか分からないと思うが、''特に内容を削ったわけではなく本当にこんな話をする。「波立つ」という繋がりから海の波の話を人の欲望の話に運ぶ時点で相当ぶっ飛んでいるし、その後の「海に飛び込め」に関しては本当に意味不明でしかない。一応これはエンディングへの伏線なのだが、あまりにも唐突かつ説明不足すぎる。 ---そして母は最後に''「月の美しさで揺らめく海水と 汚い魅力で波立つ人間とを比べたら 海水に失礼ね…」''と言って話を締める。''娘に何の話をしているんだ。'' --これでも序盤のストーリーはまだマシな方で、後半になるにつれていつ張られたのかわからない伏線や描写を削ったかのような不自然な展開がどんどんと目立っていく。 ---また今作の夢の世界の謎やヒロインとショパンの関係なども、ほとんど描写がなされず((まったくなされていないわけではないがさりげなさすぎる、もしくは抽象的すぎてプレイヤーは理解できない。))、世界の根本の設定もゲーム中には説明してくれない。 ---この設定は後に発売された攻略本に解説を丸投げしてしまっている。 --特にプレイヤーに不評だったのがエンディングとスタッフロールでのプレイヤーへの語りかけ。唐突に出てきたラスボスを倒すと、各キャラクターたちがプレイヤーに語りかけ、「努力し続けろ」「まだ間に合う」などといったアドバイスなのか説教なのかわからない言動をスタッフロールが終わるまで延々と聞かされることになる。 ---ラスボスの唐突さもあいまって、''電波な説教''といったイメージを抱いたプレイヤーが多かった。 --キャラクターの言い回しや言葉遣いなども統一されていない部分が見られ、シーンによって不自然な会話になっている部分もある。 --後半の展開だけでなく、いつ主人公に好意を抱いたかわからないヒロイン、印象的だった中ボスを倒した後に捨て台詞などもなく何事もなかったかのように退場など、お粗末な部分が多すぎる。 --結果、自分で好意的に脳内で補完するといったことができないプレイヤーからすればただの電波シナリオにしか見えない。 --本作の軸となっている設定は、その手のアニメ、漫画、SF小説に触れた事のある人ならストーリー途中の段階でも「あ、そういう話か」と察する事も出来る物ではある。しかしそれはスタッフが説明をしなくても良い理由にはなっていない。設定の描写不足もそうだが特に酷いのがキャラの行動(思考)で、何故そう考え、その行動を選んだのかという重要な部分をほぼ全員スッ飛ばされているので何もかもが唐突に見えてしまうのである(簡単に言えば起承転結の内、承転の部分が漏れなく抜けている状態)。 ---抽象的で考える余地が豊富にあるという物語にしたかっただろう形跡はあるのだが、上記の通りそもそも考えるだけの描写や材料やヒントが全くと言っていいほど提示されないため、結局のところほぼ全編を通してひたすら説明不足で唐突なだけの物語となってしまっている。 --本作のウリでもあるショパンのピアノ曲についても、お世辞にも有効な使い方が出来ているとは言えない。 ---というのもその使い方というのが、''イベントシーン中に唐突にブーニン氏の生演奏をバックにショパンやそのピアノ曲に関する雑学がぶち込まれる''というもの。単純にやり方として余りにも強引であり、ぱっと見では無理矢理ねじ込まれたようにしか見えない。 ---「ショパン自身の夢」という本作の世界観設定や結末を考えれば実は割とアリな演出であるのだが、本当に唐突なために少なくともプレイ中は無理矢理ねじ込まれたようにしか見えず、やはりもっと有効な使い方があったのではと思わずにはいられない。 #region(結末のネタバレ注意) 本作の世界はヒロインの犠牲で無限ループしている世界であり、その無限の繰り返しの最中に生死の境を彷徨っているショパンがやって来た変化がトリガーとなってループを打ち破るという話。~ そしてラスボスは今までパーティキャラとして参加していたショパンである。~ 彼が唐突に仲間に牙を剥いたのは、ヒロインの犠牲で世界を維持するという悲劇の結末に対し、「この世界は私の見ている夢であり貴方達も私の生み出した存在に過ぎない、しかし貴方達が本当に自分の意志で生きている人間であるなら、私を倒し…私の生み出した結末を超えられるハズだ!(意訳)」という試練の意味があった。~ しかし前述の通り全編に渡って描写の説明が足りてないので、せっかくの決意も電波な行動にしか見えないのである。~ それに対する仲間達のリアクションも「は?ショパンさんは何を言ってるの?」と&bold(){プレイヤーと見事にシンクロしている}ので、ある意味成功していると言えなくもないのだが。 #endregion -戦闘面 --戦闘での敵や味方の配置が固定。 ---そのため戦略が固定化されやすく、何度も同じ敵と戦っていると飽きやすい。 --戦闘は基本的に「近づいて攻撃ボタン連打→行動終了直前に必殺技」の繰り返しと、攻撃面での幅が狭いためやや飽きやすい。 ---前述の敵配置固定もこれに拍車をかける。 -その他 --エネミーフォトが高価に買い取られすぎるので、ほとんど資金繰りに困らない。 ---このため戦闘がアイテムのごり押しなどがやりやすすぎるため、ガードの存在感が薄くなるときがある。 ---ただアイテムを戦闘に持ち込める数は制限があるので過信は出来ない。 --低すぎる1周目の自由度。 ---終盤の町に各エリアへの転送装置が存在するのだが、1周目では一度イベントで使ったら故障してしまう。更に各章ごとに行ける場所は限られており、シナリオ攻略以外にはできることがない。 ---そのためサブイベントのほとんどが発生するにもかかわらず1周目ではクリアできない。 ---2周目になっても転送装置が使えるようになるのは終盤のわずかな期間、基本的に一本道である。 --- ---- **総評 色鮮やかに表現された美しいグラフィック、独特の世界観やシミュレーションの要素を併せ持った戦闘システムなど光る部分も多かったのだが、シナリオひとつで全てを台無しにしてしまった。~ 1つ1つの要素は一級品になれるものがそろっていたはずなのに、それを組み上げる過程で失敗したといえる。~ 「RPGのシナリオはどれほど重要な要素なのか」という問いに対し本作は最悪の形で回答を出してしまっており、現在ではその失敗例としてよく名前が挙げられる存在となってしまっている。~ とはいえ、シナリオには期待せず戦闘などを重点に置くなら十分楽しめるゲームではある。~ 「良質なグラフィックや音楽に浸りながら、高度な戦闘を楽しむゲーム」として割り切るのが、本作に対する最も正しい向き合い方かもしれない。 ---- **余談 -本作の完成記念イベントでは、どういうわけかゲストに格闘家の桜庭和志氏が招かれた。 --この謎の人選について一部で「''スタッフが桜庭統と間違えたんじゃないのか?''」などの憶測が飛び交ったが真相は不明。 -本作を開発した「トライクレッシェンド」という会社は、その社名から察することができる通り、かつてトライエースにて敏腕サウンドディレクターとして活躍していた初芝弘也氏が独立し、立ち上げた会社である。 --更に言うなら、同氏はトライエースの前身であるウルフチームにて『[[テイルズ オブ ファンタジア]]』の製作にも深くかかわっている。本作の音楽を担当した桜庭統氏とはその頃からの仲である。 --初の単独開発となった今作については、上記の通り「戦闘システムと音楽は優れているがシナリオが低評価」というものであり、そういった意味でも、本作はトライエース作品の特徴を非常に色濃く残した作品であるといえる。 ---- *トラスティベル ~ショパンの夢~ ルプリーズ 【とらすてぃべる しょぱんのゆめ るぷりーず】 |対応機種|プレイステーション3|&amazon(B001FSJFR0)| |発売日|2008年9月18日|~| |判定|なし|~| |ポイント|シナリオ大幅改善の完全版|~| ※共通部分は省略する。 ---- **概要(PS3) 約1年後に発売された完全版で、PS3単独で発売された。 ---- **改善点・変更点 -シナリオの大幅修正 --序盤は台詞など細かい変化があり、中盤から後半にかけてはキャラクターの心境などを補完するイベントが大量に追加された。 --最も問題視されたスタッフロールの語りかけも全く別の物に変更され、登場人物たちがストーリー中の象徴的な台詞を語るものとなった。しかし、元々本編の台詞自体が説教臭いため語りの内容はともかく説教臭さ自体はあまり変わっていない。やたら批判的な台詞が多いため重苦しい雰囲気になっており、人によってはリメイク前より悪化していると感じるかもしれない。 --特定条件を満たすことで3種類のスタッフロールのパターンを見ることができ、その中のひとつである「ショパン独白Ver」はこの物語の垣根といえる設定の種明かしがされる形となっている。 ---物語の中でこれらの設定があまり説明されていないのは相変わらずであるが、種明かしがされる分改善されているといえる。 --ただし、上記のエアーキッスの場面や海について語る場面、ある中ボス撃破後の流れがあっさり過ぎるなど、修正しきれなかった粗もまだまだ目立っている。 ---世界観の把握にすら大きく支障をきたしていた元に比べれば間違いなく大幅改善されており、ある程度以上キャラクターに愛着を持てるぐらいにはなっているのだが、依然としてツッコミどころは散見される。''それだけ元が酷すぎた''という事でもあるが・・・ -新パーティーメンバー2人追加。さらに一部キャラのコスチュームチェンジ機能も追加。 -戦闘での敵配置がランダムとなった --これにより同じ敵と戦っても、配置によって動き方を変える必要がでてきたためマンネリ感が軽減した。 -2周目の敵の攻撃力が2倍近くまで上がった。 --このためガードの重要性がより上昇し、緊張感がました戦闘が楽しめるようになった。 ---- **劣化点 -解像度が720pまでの対応となり、360版よりやや落ちている。 -セーブデータをセーブ、ロードする時間が長くなっている。 --2周目では油断すれば即ゲームオーバーになるため、ストレス要因。こまめにセーブしようにも時間がかかるし、全滅する度にタイトルに戻され時間のかかるロードを強いられる。 ---- **総評(PS3) 元々高評価であった戦闘システムは更に戦略的なものに改善された上、なによりストーリーの電波度が大幅に軽減され、かなり理解しやすい物語になった。~ 劣化点もあまり多くなく、ストーリーも細かい突っ込みどころは残っているものの、360版と比べれば十分見られる物語になっているので、物語も楽しみたいプレイヤーはこちら一択となるだろう。
---- #contents ---- *トラスティベル ~ショパンの夢~ 【とらすてぃべる しょぱんのゆめ】 |ジャンル|RPG|&amazon(B000GJ5FHI)| |対応機種|Xbox 360|~| |発売元|バンダイナムコゲームス|~| |開発元|トライクレッシェンド|~| |発売日|2007年6月14日|~| |価格|7,329円|~| |判定|なし|~| |ポイント|爽快かつ独特な戦闘システム&br()良質な音楽&br()説明不足すぎるシナリオ&br()説教エンディング|~| ---- **概要 トライエース作品や『[[バテン・カイトス>バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海]]』などで共同開発を行っている「トライクレッシェンド」が初めて単独開発を行った作品。~ ポーランドの有名な作曲家・ピアニスト「フレデリック・フランソワ・ショパン」を題材にしており((ただショパンを姉か妻かと思われる女性が看病しているなど、今作独自の解釈も多い。))、彼が39歳の短い生涯を閉じる3時間前に見た夢の世界を冒険する。 ---- **評価点 -独特な戦闘システム(タイムシェアードリアルタイムバトルシステム) --戦闘はフィールド上に存在するシンボルと接触することで発生する。~ プレイヤーキャラと敵が戦闘フィールドに配置され、素早い順番にターンが回ってくる。 --ターンは、プレイヤーが行動を考える「シンキングタイム」と実際に行動して敵を攻撃する「アクティブタイム」の2部構成となっている。 ---シンキングタイム中は全ての時間が停止しているので、敵の配置やコマンドを確認し、実際の行動を吟味する。そしてアクティブタイムでは実際にシンキングタイムで考えた行動を実行し、敵の下へ移動、攻撃を行う。 --行動はスティックでの移動以外に、Aボタンで通常攻撃、Bボタンで防御、Xボタンでアイテムスロットのアイテムを使用、Yボタンで必殺技を使用する。 --Aボタンの通常攻撃を当てると、コンマ数秒ほどアクティブタイムの行動時間が増えるため、そのコンマの時間の入力が戦況を左右することもある。 --また、攻撃のヒット数に応じて「エコー」と呼ばれるポイントがたまり、このポイントがたまっているときに必殺技を使用すれば、ポイントを消費するかわりに攻撃力が上がる。 ---限られた行動時間でどのように行動するかを考えるのはなかなか面白い。必殺技のエフェクトも派手で爽快感もある。 --また、本作で非常に重要なのは、Bボタンの防御である。 ---敵の攻撃時に、タイミングよくBボタンを押すと敵の攻撃をガードしてダメージを減らすことができる。連打ではガードできず、タイミングよく目押しすることが求められる。 ---敵の攻撃力は高めに設定されており、雑魚ボス問わず、このガードをうまく決められるかによって戦闘の難易度は劇的に変わる((キャラクターの体力はレベル20程度で5000近くまで到達するが、ガードをしくじればボス等なら半分近く消し飛ぶ事もざらにある。))。できなければ雑魚戦でも余裕で全滅できるため、いつでも気を抜けない緊張感のある戦闘が楽しめる。 ---また背後からの攻撃はガードすることができないため、敵に背後を取られないようにする位置取りも求められる。もちろんこれは敵にも当てはまるので、いかに敵の背後をとるかも重要である。 --戦闘フィールドには日向と日陰があり、どの場所にいるかでさまざまな影響がある。 ---プレイヤーキャラは、日向と日陰どちらにいるかによって必殺技の種類が変わる。日向にいるときは連激系の、日陰にいるときは遠距離技が出るなど、どの技を出したいのかによって上記の防御のことも踏まえて位置取りを変える必要もある。 ---敵の場合は日向か日陰かによって名前や外見、強さが変化するものがいる。日向にいるときはそれほど強くないが、日陰に入ると強力な攻撃を行ってくるものもいるため、日向におびき出すようにキャラを日向に移動させる、敵を押し飛ばす効果のある必殺技で日向へ押し出す、キャラの回りがどこでも日向になるアイテムを使うといった戦略をとる必要がある。 --総じて難易度は高めであり戦闘には慣れが必要だが、相応にとても高い戦略性を兼ね備えており、慣れてくると緊張感と爽快感を両立させた戦闘を楽しめると好評である。 --ストーリーが進むとパーティークラスと呼ばれるレベルが上昇していき、レベルが上がるとシンキングタイムとアクティブタイムがやや短くなるかわりに、敵の攻撃にあわせてAボタンを目押ししてダメージを与える「反撃」や必殺技を連続してつなげる「ハーモニーチェイン」が開放されていくなど、プレイヤーの慣れにあわせて戦闘の行動も広がっていくので、順当に上達している実感もわきやすい。 -音楽 --桜庭統氏作曲の音楽は非常に好評 ---通常戦闘曲である『Leap the Precipice』は通常戦とは思えないほど壮大な楽曲に仕上がっている。 ---ダンジョンなどの曲も世界観を引き立てる良質な音楽がそろっている。 --また題材である「ショパン」が作曲したピアノ曲がスタニスラフ・ブーニンの演奏によってゲーム中で流れる。メニューのサウンドテストで桜庭氏の曲も含めていつでも聴きなおすことができる。 -グラフィック --1080pに対応しており、次世代機相応の美しいグラフィックとなっている。草木、水なども美麗に表現されている。 --キャラクターたちも、元のキャラクターデザインをうまく3Dグラフィック化していると好評。 -収集要素や2周目もやり応えのあるものになっている。 --世界に点在する楽譜である「スコアピース」の収集や、敵の写真をとって写真屋に評価してもらってポイントをもらう「エネミーフォト」などがある。 --2周目は敵の攻撃力やHPが1.3倍になるため、よりガードやキャラの立ち位置の管理が求められる歯ごたえのある戦闘が楽しめる。 ---- **問題点 -シナリオ --今作の評価を著しく下げたのはほとんどがこの部分といっても過言ではない。 --とにかく登場人物の台詞がいちいち詩的で、なおかつ説教臭いのが特徴。開始直後に流れるムービーの台詞「届くかな 彼に… ''私のエアーキッス…''」からして並の感性では理解に苦しむだろう。 --ストーリー中で「トラスティの輝き」という言葉が頻繁に用いられるが、''その「トラスティ」がいったい何を指しているのか直接的に語られることは最後まで無い。''おそらくは清らかな心の輝きのようなものと思われるが……。 ---オープニングからしてプレイヤーの度肝を抜いてくれる。初めは少女と母親の微笑ましい掛け合いのように見えるが、少女の「どうして海には波があるの?」という問いに答える母親の話がどんどんとおかしな方向に転がってゆく。 ---その内容は、海に波が立つのは月の美しさに海の水がざわめくから→人間界には人の心を波立たせるものがたくさんある→人が多ければ大きな欲望の波が起こり争いが起こる→''もしも世界が波立った時にはあなたが海に飛び込まなくてはいけないかもしれない。'' ---''何を言っているのか分からないと思うが、''特に内容を削ったわけではなく本当にこんな話をする。「波立つ」という繋がりから海の波の話を人の欲望の話に運ぶ時点で相当ぶっ飛んでいるし、その後の「海に飛び込め」に関しては本当に意味不明でしかない。一応これはエンディングへの伏線なのだが、あまりにも唐突かつ説明不足すぎる。 ---そして母は最後に''「月の美しさで揺らめく海水と 汚い魅力で波立つ人間とを比べたら 海水に失礼ね…」''と言って話を締める。''娘に何の話をしているんだ。'' --これでも序盤のストーリーはまだマシな方で、後半になるにつれていつ張られたのかわからない伏線や描写を削ったかのような不自然な展開がどんどんと目立っていく。 ---また今作の夢の世界の謎やヒロインとショパンの関係なども、ほとんど描写がなされず((まったくなされていないわけではないがさりげなさすぎる、もしくは抽象的すぎてプレイヤーは理解できない。))、世界の根本の設定もゲーム中には説明してくれない。 ---この設定は後に発売された攻略本に解説を丸投げしてしまっている。 --特にプレイヤーに不評だったのがエンディングとスタッフロールでのプレイヤーへの語りかけ。唐突に出てきたラスボスを倒すと、各キャラクターたちがプレイヤーに語りかけ、「努力し続けろ」「まだ間に合う」などといったアドバイスなのか説教なのかわからない言動をスタッフロールが終わるまで延々と聞かされることになる。 ---ラスボスの唐突さもあいまって、''電波な説教''といったイメージを抱いたプレイヤーが多かった。 --キャラクターの言い回しや言葉遣いなども統一されていない部分が見られ、シーンによって不自然な会話になっている部分もある。 --後半の展開だけでなく、いつ主人公に好意を抱いたかわからないヒロイン、印象的だった中ボスを倒した後に捨て台詞などもなく何事もなかったかのように退場など、お粗末な部分が多すぎる。 --結果、自分で好意的に脳内で補完するといったことができないプレイヤーからすればただの電波シナリオにしか見えない。 --本作の軸となっている設定は、その手のアニメ、漫画、SF小説に触れた事のある人ならストーリー途中の段階でも「あ、そういう話か」と察する事も出来る物ではある。しかしそれはスタッフが説明をしなくても良い理由にはなっていない。設定の描写不足もそうだが特に酷いのがキャラの行動(思考)で、何故そう考え、その行動を選んだのかという重要な部分をほぼ全員スッ飛ばされているので何もかもが唐突に見えてしまうのである(簡単に言えば起承転結の内、承転の部分が漏れなく抜けている状態)。 ---抽象的で考察する余地が豊富にあるという物語にしたかっただろう形跡はあるのだが、上記の通りそもそも考えるだけの描写や材料やヒントが全くと言っていいほど提示されないため、結局のところほぼ全編を通してひたすら説明不足で唐突なだけの物語となってしまっている。 --本作のウリでもあるショパンのピアノ曲についても、お世辞にも有効な使い方が出来ているとは言えない。 ---というのもその使い方というのが、''イベントシーン中に唐突にブーニン氏の生演奏をバックにショパンやそのピアノ曲に関する雑学がぶち込まれる''というもの。単純にやり方として余りにも強引であり、ぱっと見では無理矢理ねじ込まれたようにしか見えない。 ---「ショパン自身の夢」という本作の世界観設定や結末を考えれば実は割とアリな演出であるのだが、本当に唐突なために少なくともプレイ中は無理矢理ねじ込まれたようにしか見えず、やはりもっと有効な使い方があったのではと思わずにはいられない。 #region(結末のネタバレ注意) 本作の世界はヒロインの犠牲で無限ループしている世界であり、その無限の繰り返しの最中に生死の境を彷徨っているショパンがやって来た変化がトリガーとなってループを打ち破るという話。~ そしてラスボスは今までパーティキャラとして参加していたショパンである。~ 彼が唐突に仲間に牙を剥いたのは、ヒロインの犠牲で世界を維持するという悲劇の結末に対し、「この世界は私の見ている夢であり貴方達も私の生み出した存在に過ぎない、しかし貴方達が本当に自分の意志で生きている人間であるなら、私を倒し…私の生み出した結末を超えられるハズだ!(意訳)」という試練の意味があった。~ しかし前述の通り全編に渡って描写の説明が足りてないので、せっかくの決意も電波な行動にしか見えないのである。~ それに対する仲間達のリアクションも「は?ショパンさんは何を言ってるの?」と&bold(){プレイヤーと見事にシンクロしている}ので、ある意味成功していると言えなくもないのだが。 #endregion -戦闘面 --戦闘での敵や味方の配置が固定されている。 ---そのため戦略が固定化されやすく、何度も同じ敵と戦っていると飽きやすい。 --戦闘は基本的に「近づいて攻撃ボタン連打→行動終了直前に必殺技」の繰り返しと、攻撃面での幅が狭いためやや飽きやすい。 ---前述の敵配置固定もこれに拍車をかける。 -その他 --エネミーフォトが高価に買い取られすぎるので、ほとんど資金繰りに困らない。 ---このため戦闘がアイテムのごり押しなどがやりやすすぎるため、ガードの存在感が薄くなるときがある。 ---ただアイテムを戦闘に持ち込める数は制限があるので過信は出来ない。 --低すぎる1周目の自由度。 ---終盤の町に各エリアへの転送装置が存在するのだが、1周目では一度イベントで使ったら故障してしまう。更に各章ごとに行ける場所は限られており、シナリオ攻略以外にはできることがない。 ---そのためサブイベントのほとんどが発生するにもかかわらず1周目ではクリアできない。 ---2周目になっても転送装置が使えるようになるのは終盤のわずかな期間、基本的に一本道である。 --- ---- **総評 色鮮やかに表現された美しいグラフィック、独特の世界観やシミュレーションの要素を併せ持った戦闘システムなど光る部分も多かったのだが、シナリオひとつで全てを台無しにしてしまった。~ 1つ1つの要素は一級品になれるものがそろっていたはずなのに、それを組み上げる過程で失敗したといえる。~ 「RPGのシナリオはどれほど重要な要素なのか」という問いに対し本作は最悪の形で回答を出してしまっており、現在ではその失敗例としてよく名前が挙げられる存在となってしまっている。~ とはいえ、シナリオには期待せず戦闘などを重点に置くなら十分楽しめるゲームではある。~ 「良質なグラフィックや音楽に浸りながら、高度な戦闘を楽しむゲーム」として割り切るのが、本作に対する最も正しい向き合い方かもしれない。 ---- **余談 -本作の完成記念イベントでは、どういうわけかゲストに格闘家の桜庭和志氏が招かれた。 --この謎の人選について一部で「''スタッフが桜庭統と間違えたんじゃないのか?''」などの憶測が飛び交ったが真相は不明。 -本作を開発した「トライクレッシェンド」という会社は、その社名から察することができる通り、かつてトライエースにて敏腕サウンドディレクターとして活躍していた初芝弘也氏が独立し、立ち上げた会社である。 --更に言うなら、同氏はトライエースの前身であるウルフチームにて『[[テイルズ オブ ファンタジア]]』の製作にも深くかかわっている。本作の音楽を担当した桜庭統氏とはその頃からの仲である。 --初の単独開発となった今作については、上記の通り「戦闘システムと音楽は優れているがシナリオが低評価」というものであり、そういった意味でも、本作はトライエース作品の特徴を非常に色濃く残した作品であるといえる。 ---- *トラスティベル ~ショパンの夢~ ルプリーズ 【とらすてぃべる しょぱんのゆめ るぷりーず】 |対応機種|プレイステーション3|&amazon(B001FSJFR0)| |発売日|2008年9月18日|~| |判定|なし|~| |ポイント|シナリオ大幅改善の完全版|~| ※共通部分は省略する。 ---- **概要(PS3) 約1年後に発売された完全版で、PS3単独で発売された。 ---- **改善点・変更点 -シナリオの大幅修正 --序盤は台詞など細かい変化があり、中盤から後半にかけてはキャラクターの心境などを補完するイベントが大量に追加された。 --最も問題視されたスタッフロールの語りかけも全く別の物に変更され、登場人物たちがストーリー中の象徴的な台詞を語るものとなった。しかし、元々本編の台詞自体が説教臭いため語りの内容はともかく説教臭さ自体はあまり変わっていない。やたら批判的な台詞が多いため重苦しい雰囲気になっており、人によってはリメイク前より悪化していると感じるかもしれない。 --特定条件を満たすことで3種類のスタッフロールのパターンを見ることができ、その中のひとつである「ショパン独白Ver」はこの物語の垣根といえる設定の種明かしがされる形となっている。 ---物語の中でこれらの設定があまり説明されていないのは相変わらずであるが、種明かしがされる分改善されているといえる。 --ただし、上記のエアーキッスの場面や海について語る場面、ある中ボス撃破後の流れがあっさり過ぎるなど、修正しきれなかった粗もまだまだ目立っている。 ---世界観の把握にすら大きく支障をきたしていた元に比べれば間違いなく大幅改善されており、ある程度以上キャラクターに愛着を持てるぐらいにはなっているのだが、依然としてツッコミどころは散見される。''それだけ元が酷すぎた''という事でもあるが・・・ -新パーティーメンバー2人追加。さらに一部キャラのコスチュームチェンジ機能も追加。 -戦闘での敵配置がランダムとなった --これにより同じ敵と戦っても、配置によって動き方を変える必要がでてきたためマンネリ感が軽減した。 -2周目の敵の攻撃力が2倍近くまで上がった。 --このためガードの重要性がより上昇し、緊張感がました戦闘が楽しめるようになった。 ---- **劣化点 -解像度が720pまでの対応となり、360版よりやや落ちている。 -セーブデータをセーブ、ロードする時間が長くなっている。 --2周目では油断すれば即ゲームオーバーになるため、ストレス要因。こまめにセーブしようにも時間がかかるし、全滅する度にタイトルに戻され時間のかかるロードを強いられる。 ---- **総評(PS3) 元々高評価であった戦闘システムは更に戦略的なものに改善された上、なによりストーリーの電波度が大幅に軽減され、かなり理解しやすい物語になった。~ 劣化点もあまり多くなく、ストーリーも細かい突っ込みどころは残っているものの、360版と比べれば十分見られる物語になっているので、物語も楽しみたいプレイヤーはこちら一択となるだろう。

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