死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~
【しかくたんてい くうのせかい さうざんど どりーむず】
ジャンル
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本格推理ADV
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対応機種
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プレイステーション2
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開発・発売元
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Nine's fox(プリンセスソフト)
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発売日
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2007年9月13日
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定価
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4,800円(税別)
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レーティング
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CERO:B 12歳以上対象
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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残留思念を読み取って事件を解決 ファンタジーの皮を被った本格推理作品
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概要
女性向けゲームがメインのNine's foxブランドの恋愛ADVではないミステリ作品。
主人公は他人の視覚情報の残留思念を観ることが出来るというファンタジーモノ。
PS2で同様に主人公が残留思念を読めるサスペンスADV『玻璃ノ薔薇』があったが、あちらは推理モノではなくサスペンスだったのに対し、本作はプレーヤーが謎を解かなければならない推理モノである。
ストーリー
空(主人公)は砂浜でうたた寝をしていた。その間に潮が満ちて、ずぶ濡れとなってしまう。
通りかかった少女夕葵観砂からのシャワーを貸してくれるという申し出を受けて夕葵家の別荘に向かうと、そこは観砂の父、夕葵風行の遺産の取り合いの修羅場だった。
システム
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独り言や会話の中で
赤く色の付いた文節
が現れることがある。
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赤く色の付いた部分
が現れた時に△キーを押下するとその事柄についてさらに突っ込んだ質問や確認を行うことができる。ただし、事件の解決と関係ない話に展開する場合も多い。
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気力
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気力は捜査パート突入時に規定値が与えられ、
赤く色の付いた部分
と共に気力ゲージが現れた場合、△キーを押下すると気力が -1される。
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解決に必要な情報を獲り損ねたまま気力を使い切ると強制的に捜査開始時に戻され、手に入れた情報などは失われてしまい、再度情報を集め直さなければならない。この仕様からか、捜査パート内ではセーブ不可となっている。
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赤く色の付いた部分
に△キーで一度突っ込んだ後は
その部分
は黄色く色付けされて表示される。一度
黄色くなる
と、そこで△キーで突っ込んでも気力は減らずに会話を変化させることが出来る。
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アクティブ・リアクションモード
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コマンド選択式ADVの調査モードにて、階層式のメニューからアクションを選ぶUIはユーザーフレンドリーではないという思いから作られたというUI。
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場面場面で、選択可能なコマンドをコントローラーのキーに割り当てて、1プッシュで様々な行動を選択可能としている。
視覚結晶
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主人公"空"が持つ他人が残した視覚結晶を再生する能力。
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視覚結晶は24時間後に消滅してしまう。また、それを残した人物が死んだ場合にはそれ以前に消えてしまう。
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視覚結晶は、基本的には「レンズ」と「センス」の2つの「視覚の欠片」が揃わなければ形成されない。
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「レンズ」は視覚結晶が残されるきっかけとなったモノや場所などの直接的なもの。
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「センス」はその時の感情や思考、それに関連する言葉など抽象的なもの。
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「レンズ」もしくは「センス」を取得すると、システムメニュー内の「視覚の記憶」内にストックされ、両方が揃うと"結晶化"して、ムービーとなる。
評価点
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演出面は評価が高め
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フルボイスになっており主人公は梶裕貴、夕葵観砂は中村繪里子。ドラマCD「闇の世界」同梱等、声には力を入れている。
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OPムービーは地上波アニメのOPレベルの出来。
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会話中にまばたきや口元が動くと上々な頃に大きな動きのある描写を入れている。
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音楽プレーヤーから漏れているという設定の音楽がそのままBGM代わりであるなど、細かい点に凝った演出となっている。
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アクティブ・リアクションモードのおかげで操作性は良い。
問題点
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必要な情報のみに絞って指摘するのが非常に面倒
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気力消費の仕様から総当たりは出来ない仕様になっているが、最序盤の登場人物の素性もわからない状態では手当たり次第に
赤く色の付いた部分
に突っ込んでいくしかない。
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ある程度話が進んでくればどの情報が重要かはある程度目星は付くようになるが、どうしても失敗前提で理不尽に感じやすい。加えて、やり直しの際にはそのパートで集めた情報はすべて失われるため、登場人物と同じ会話を繰り返すハメになる。
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推理パートでは集めた情報から正解を導く情報を数個選んで提示する必要があるが、第1話から取得可能な情報は最大240個。集めた情報にすべて目を通すだけで疲れる。総当りはかなり厳しい。
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なお、捜査パートでなるべく情報を集めないと、情報は2割ほど減らせるが、それでも膨大な数である。
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ボリューム不足
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ハーフプライスという事もあってシナリオは全3話と短く、物足りなさを感じやすい。
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グラフィック面の残念な点
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この頃のNine's foxは乙女ゲーを中心にリリースしていたためか、男性キャラの美化に力が入って一部の中年男性キャラが年相応に見えない、女性キャラがさほど魅力的ではないという点は気になるところ。
総評
設定はファンタジーだがトリックは真っ当な本格推理モノ。
事件の推理自体の難易度はやや難しい程度なのであるが、捜査や推理パートで使用されている情報の量が半端なく多いため、情報の内容を読むだけで疲れてしまうレベルであり、そこから正解を提示するのは至難の業となっている。
ストーリーは父の死に打ちひしがれている少女らの描写などが細やかで、各エピソードを見れば良く出来ているものの、3話しかないことによるボリューム不足、そして、主人公の謎が語られぬままとなっていることによる消化不良感がもったいない。
褒めるべき点もあるのに、問題点が大きく足を引っ張っているのが残念な作品である。
余談
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Nine's foxブランドのHPのドメインは本記事執筆現在、第三者の手に渡っているようである。
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公式サイトの魚拓
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あまりにも難しすぎて、発売後に上記公式サイトにて「攻略のヒント」が公開された。
最終更新:2022年09月22日 16:43