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パワードリフト - (2024/04/17 (水) 11:24:26) のソース

*パワードリフト
【ぱわーどりふと】
|ジャンル|レース|&amazon(B000092PGN/,width=244)|
|対応機種|アーケード(Y-BOARD)|~|
|発売・開発元|セガ・エンタープライゼス|~|
|稼働開始日|1988年8月5日|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
『[[アウトラン]]』『[[アフターバーナー]]』等で知られる鈴木裕による、専用の大型筐体を使ったレースゲーム。~
派手なモンスターマシンに乗り込み、アップダウンが激しい特徴の立体的な周回コースを走る。~
89年度ゲーメストでプレイヤー人気は6位、年間ヒットゲームは3位を受賞。
&br()製作はAM2研。使用基板は『ギャラクシーフォース(Ⅱ)』で使用され、「スプライトの怪物」と称されたYボード基板。

**システム・特徴
-A・B・C・D・Eに分かれたコースを選び、12人のドライバーの中から選択する。各コースは全5ステージ+α構成。
--ドライバーは顔アイコンの上を自動で移動するカーソルが目当てのキャラに止まった瞬間にスタートボタンを押して決定するルーレット方式で選択。カーソルスピードは少し速めだが目押しが難しいほどではない。
---ドライバーで自車性能や難易度が変わるといったことはないので、そこは安心。
--裏技としてドライバー選択のカーソルが右端から左端へ移る瞬間にコースを選択すると、ドライバーがいないマシンが走り出す演出の後、ステージ毎にドライバーがランダムに変化する。
-一般的なレースゲームとは違い制限時間がない代わりに、順位ノルマ方式を採用。各コースを3位以内でゴールすれば次に進み、4位以下だとゲームオーバー。
--レースは3位の車がゴールした時点で終了となるため、これが実質的な制限時間となる。
-通常は全5ステージを3位以内にゴールできればゲームクリアとなるが、5ステージ全てを1位で通過するとエキストラステージに進む。その際、自車はA・C・Eでは『[[アフターバーナー]]』の「F-14XX」に、B・Dでは『ハングオン』の「バイク」に変化する。
-デモ画面中やゲーム中にスタートボタンを押していると自車を前方から見た視点に切り替わる。ゲームオーバーまでそのままプレイ可能。

''「通信対戦バージョン」''
-オリジナル版の後にリリースされたバージョン。オリジナル版は1人用だったが、こちらは筐体を複数接続しての通信対戦プレイに対応したのが最大の特徴。「ツイン筐体バージョン」とも呼ばれる。~
元々本作は通信対戦を想定して作られた作品ではなかったため、それに合わせるようにゲーム内容が作り直されている。
-オリジナル版からの変更点は以下の通り
--ミッションに自動変速のオートマチック車が追加。ミッション選択はゲーム開始時にドライバー選択と共に行う。
--ドライバー選択がルーレット方式からハンドルで任意に選択する方式に変更。
--全5ステージ構成。コースは予め決められた5つのコースを順番に回る方式。1ステージ目開始前に順位ノルマがない練習走行ステージが挟まれる。
---5つのコースでループする関係上、最終ステージのコースは練習走行ステージで走ったコースとなる。
--次のステージへ進むためのノルマ順位は1ステージ目は6位から開始。ステージが進む毎にノルマが上がっていき、最終ステージでは2位となる。
---レース自体は順位ノルマに関係なく6位の車がゴールした時点で終了となる。
--通信対戦は開始時にエントリーしたプレイヤー同士で一斉にスタートする方式だけでなく、他のプレイヤーがいる状態で途中から参加する「乱入対戦」も可能。
---途中乱入の場合、開始してすぐに対戦というわけではなく、先行プレイヤーがプレイ中のステージを終えて、次のステージへ進んでから合流となる。プレイ中のステージが終わるまでの待ち時間は練習走行ステージとなる。
---なお、ステージ数と順位ノルマは各プレイヤー毎に判定される。例として先行プレイヤーが4ステージ目中に乱入した場合、次の先行プレイヤーの最終ステージ(+順位ノルマ2位)から対戦開始となるが、乱入したプレイヤー側は1ステージ目+順位ノルマ6位として扱われる。~
そのため、どのタイミングで乱入しても遊べるステージ数は同じである。

**評価点
-クオリティの高い音楽。
--作曲は『[[スペースハリアー]]』等でお馴染みの「HIRO師匠」こと川口博史氏。
--ドラムとベースをサンプリングした電子楽器調のノリのいい曲が揃っており、その中でもBコースのテーマである「LIKE THE WIND」は人気が高い。

-ハイスピードでダイナミックな演出。
--「スプライト以外のグラフィックは表示できない」制約がある代わりに、非常に数が多く、大きいスプライトを表示できるYボードの特徴を生かして作られたコースはどれもダイナミック。擬似3Dでありながら、非常に高いレベルの立体感を実現している。
--これらの派手なコースを240km/hオーバーのモンスターマシンで疾走するため、ゲーム中はゲーム内の視点や筐体が目まぐるしく動く。
--ゲーム自体も常時60fpsで動作。テンポを削ぐような処理落ちも起きないため、抜群のスピード感を味わうことが出来る。
--全体的に1コースの長さが短い上に、完走後はすぐに次のステージへ進むため、展開はかなりスピーディー。

-キャラクターデザイン
--洋ゲーだと見間違われやすい程のキャラクターデザインが特徴的。それでいて本作の世界観・雰囲気とマッチしている。
--画面の上のキャラクターにアニメーションがある。何度見ても飽きない。
--レースなのに、それも落下の危険性もあるコースを走るのに全員普段着で運転していて大丈夫なのかとツッコミたくなるがそこはご愛敬。

**問題点

-難易度は高め。
--コースの仕様上ゲーム内の視点が派手に動くことや、ゲーム展開が忙しないことから、慣れるまではやや厳しい。
--ステージの中にはコースバリアがないものがあり、それらのステージでうっかり落ちてしまうと、致命傷になることも。
--ジャンプ中は制御が効かない。ジャンブ前に速度が遅いとジャンプが低く落下ミス確定になる。
--E4面は全面唯一ジャンプが交差する。この際にジャンプ交差中に横から衝突してしまうことがある。これは防げないので運任せ。
--画面右端にコースマップ上部には各キャラが表示されているが、展開の早さの為プレイ中に見ている余裕は殆ど無い。
--実質は全面優勝してエキストラステージまで行って全面クリアと言えるが、全コーストップは中々難しい。
-前述の通り12人のキャラクターには性能差は全くない。そのため女性キャラのルーシーとエミリーに人気が集中したが、キャラ選択方法がタイミング命で、ミスって隣のモヒカン野郎((イメージイラストの某赤きサイクロンなプロレスラー似の人とは別人。というか彼はゲーム中には登場しないのだが。))でプレイせざるを得ない時もあり、開始前からやる気がそがれたプレイヤーもいた模様。
//『システム・特徴』では容易となっていたので間をとる感じでどちらも修正してみました。あとナンシーじゃなくてエミリー。

**賛否両論点

-「通信筐体バージョン」について
--発売がオリジナル版のリリースからかなり後であり、市場に出回った数が少なく、稼動期間もかなり短かった。
---通信対戦用に作り直された際に特徴であるスピード感やダイナミックなコースがカットされてしまい、オリジナル版の派手な演出を好むファンからの評判はよろしくなかったようである。
--だが、オリジナル版から改善された部分や、独自の仕様もある為、通信対戦バージョンの方がいいと言うファンもいる。
---キャラクター選択方式の変更によりお気に入りのキャラクターを選びやすくなった。
---オートマチック車追加と序盤ステージでの順位ノルマ大幅緩和により。遊ぶためのハードルは下がった。~
ただし、最終ステージでは2位とオリジナル版よりも順位ノルマが厳しくなり、ただ単にヌルくもなっていない。
---アーケード用レースゲームの通信対戦は開始前にエントリーを受けつけ、参加したプレイヤー同士一斉にスタートする方式が一般的である中で、好きなタイミングで参加できる「乱入対戦」が可能な本作の通信対戦方式は当時としては物珍しさがあった。~
次のステージで合流する方式のため、プレイ中のレースが一時停止する等テンポを損なうようなことがなく、また順位ノルマが先行していたプレイヤーに合わせられて後から参加したプレイヤーが不利になったり、遊べるステージ数が減るといったこともないため、気軽に乱入できた。

**総評
大型可動筐体と派手な演出により、セガファンのみならずハイスピードゲーマー等から幅広く認知された作品となった。
他のゲームに与えた影響は大きく、今でも存在は熱く語り継がれている。

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**家庭用移植
-Amiga、Amstrad CPC、Atari ST、コモドール64、ZX Spectrum、MSX、IBM PC DOS版
--事実上の初移植。ハードスペック差の関係からか、いずれももっさり気味な内容となっている。

-PCE版
--アスミックから発売、開発はコピアシステム。ハードの制約上コースは9ステージ+EXTRAしか無く、ドライバーしか選ぶ事が出来ない状態になった上、元であるAC版のハードウェアスペックからどうしても劣る以上再現にも限界があった。
--BGMはメドレー形式に変更されており、EXTRA STAGEにてDコースのBGMが流れる。 
--「超絶 大技林 '98年春版」では「スピード感はあるものの、ゲーム自体は大味な感じ。移植度はいいとはいえない」と紹介されている。

-セガサターン版
--セガエイジスシリーズの一つとして発売。グラフィックの再現度は高いものの、フレームレートが30fpsに落とされている。
--独自要素としてA~Eコース、全25ステージを走破する「グランプリモード」が追加。こちらは5位以内で次のステージへ進む設定になり、難易度が若干下がった。
--BGMはサターンの内蔵音源でアーケード版のBGMを再現したものと、川口博史氏によるアレンジバージョンの2つから選択可能。
--移植はゲームのるつぼではなくファントが担当。当初移植を打診されたるつぼ側は「完全移植は不可能という理由で断った」とコメントしている([[参照>https://twitter.com/JfodxVSqgXSoeOY/status/1073936924736315392]])。
---余談だが、『[[バーチャファイター]]』を32Xに移植してほしいという依頼も、同様の理由で断ったとコメントしている。

-ドリームキャスト『鈴木裕ゲームワークス Vol.1』版
--書籍付属のゲームディスク内に『ハングオン』『[[スペースハリアー]]』『[[アウトラン]]』『[[アフターバーナーII>アフターバーナー]]』と共に収録。移植はゲームのるつぼが担当。
---上記4タイトルはいずれも『[[シェンムー>シェンムー 一章 横須賀]]』のミニゲームの寄せ集めであるが、『ハングオン』はオプションが追加されており、『スペースハリアー』と『アフターバーナーII』はコンティニューが可能になっている。『アウトラン』は出現するアザーカーの数がシェンムー版より多くなっているため、難易度が上がっている。
--ドリームキャストのマシンパワーを生かした初の完全移植。現在は入手困難でプレミア価格が付いているのと、ステアリング操作のレスポンスが悪いのが難点。
--デモ画面でAボタンを押しながらスタートを押すと、オプションが出現する。
--「まぢん」ことセガのグラフィックデザイナーである西村真人氏の[[Twitterの投稿>https://twitter.com/Mazin__/status/53860007527198720?s=19]]によると元々はDC用『[[シェンムーIII]]』のミニゲーム用に開発されていたが、発売されなかったため書籍付属のゲームディスクに収録するという形で日の目を見た旨が書かれている。

-3DS『セガ3D復刻アーカイブス2』版 
--前作のアンケートで収録希望新作の1位に輝いて、新規収録タイトルの一本となった。移植はM2が担当。
--移植としては14年ぶりで、携帯機かつ任天堂ハードとしては初移植となった。
--ボーナスステージの「F-14XX」のグラフィックが独自のものに差し替えられている((F-14は製造元であるノースラップ・グラマン社が権利を持っているので、たとえドット絵であってもライセンス許諾なしでの無断使用はできない。))以外はアーケード版の忠実移植となっている。
--当初は「通信筐体バージョン」も収録される予定だったが、スピードやコース等の問題により断念となった。
--前発の『[[ギャラクシーフォースII]]』と同じY-BOARD作品だが、エミュレーションの高速&軽量化が進み、BGMのエミュレーション再生を可能にした。

-3DS ダウンロードソフト版
--上記の『セガ3D復刻アーカイブス2』版とは別に単品版として後日配信された。
--『セガ3D復刻アーカイブス2』版の内容に加えて、新しい操作タイプ((ステアリング操作がクイックになる「TYPE3」が追加されており、操作性が向上している。))やドライバーやBGMが3D復刻プロジェクトに縁のあるものに変更されたスペシャルモードが追加されている。
---変更されたドライバーの中にはビンズビーン((『スペースハリアー』で敵キャラとして登場する正二十面体。出典では宇宙船という設定。))やドラリンフラー((『ファンタジーゾーン』のラウンド1で登場する敵の前線基地。))といった「どうやって運転するんだ?」とツッコミを入れたくなるようなものもあり、中々カオスなことになっている。

**余談
-中裕司氏がセガに在籍していた頃、セガ本社に来たマイケル・ジャクソンがショールームにあったパワードリフトの4人対戦筐体で遊ぼうとした際、マイケルと子供二人で席がひとつ空いていたため、一緒に遊ばせてもらった思い出があると語っている。
--その件に関して柴田亜美が漫画で「俺はパワードリフトでマイケル・ジャクソンに勝った男だ!」「そりゃ接待しなかっただけだ!」とネタにしている。
--ちなみにその時の様子はここで語られている。([[参考リンク>https://news.denfaminicogamer.jp/interview/190625a]])

-X68000版やメガドライブ版の『[[アフターバーナーII>アフターバーナー]]』を手掛けた電波新聞社による、メガCD版の移植予定もあったが。発表以降これといった続報もなくお蔵入りしている。

-コースの設計は粘土や竹ひごを使って実際にジオラマを作って行われた。