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ローグ - (2024/02/14 (水) 23:33:15) のソース

*ROGUE
【ろーぐ】
|ジャンル|RPG|&image(ROGUE.jpg)|
|対応OS|UNIX|~|
|製品版対応機種|IBM-PC、Macintosh、Amiga、Atari ST、Commodore 64、&br;PC-8801、PC-9801他|~|
|発売元|Epyx|~|
|日本版移植元|アスキー|~|
|開発者|マイケル・トーイ、グレン・ウィヒマン、ケン・アーノルド|~|
|開発元|A.I. Design|~|
|発表日|1980年|~|
|製品版発売日|【IBM-PC】1983年&br;【PC98】1986年|~|
|定価|【PC98】12,800円|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
『[[ウィザードリィ>Wizardry]]』『[[ウルティマ>ウルティマI 第1暗黒期]]』と並ぶコンピュータRPG(CRPG)の始祖。自動生成されるダンジョンを探索し、最終的にスコアを競うという独特のコンセプトを持つ。~
元々UNIX付属ソフトで、何度も遊べるようにとダンジョンの自動生成システムが考えられた。CRPG黎明期のゲームでありながら「迷宮探索のゲーム」として完成度を高めるための様々な要素を備えている。
//『「RPG」という言葉すらも一般的ではなかった』はあくまでも日本での話。開発国であるアメリカではD&Dは既に一般的だった。

**ストーリー
> 戦士育成ギルドを卒業したばかりの冒険者に、最後の能力確認の課題が出された。それは洞窟奥に秘匿されたイェンダーの魔除けを持ち帰る事だ。それを持って帰還すれば正式にギルドの一員として認められる。家族、知人との別れを済まし、彼は洞窟へと入っていった。

**特徴
-ローグライクゲームの原点。
--ダンジョンの自動生成、探索マップと戦闘シーンを区別しないシステムなどなど、独自のシステムを築き上げ、&color(blue){『''Roguelike(ローグ風の)''』};というゲームジャンルを意味する言葉の元にまでなっている。
--日本では「[[不思議のダンジョンシリーズ]]」の原型として知られており、同シリーズのプレイ経験があれば、ほぼゲーム性は理解できるだろう。スタートの度に自動生成されるダンジョンを巡り、アイテムや金塊を収集しながら、最後にイェンダーの魔除けを持って地上に戻るのだ。アイテムは多岐に渡っており、これらの使い道をいろいろ試行錯誤するのが大きなポイント。
---クリアもしくはゲームオーバーすると、スコアが提示される。これをどれだけ上げられるかが、本作の目的。
--画面表示は全てASCII文字((今で言う半角文字の事。アメリカ製なのでカタカナは存在しない。))で構成されている。自キャラは”@”、鎧は”[”、金塊は"&tt(){*}"で表現されたり、モンスターもAからZまでのアルファベット。ダンジョン自体も壁は”|”と”-”、通路は”#”、階段は”%”で表されるという具合。
---もっとも当時のUNIXには文字以外を表示する機能が無かったので当然と言えば当然である。

             大うずらの攻撃は命中した。&br;
&tt{               ###########  -------}&br;
&tt{               #     #  |...*.|}&br;
&tt{              --+------  #  |.[...|}&br;
&tt{              |...&nolink@E..|  ####+.....|}&br;
&tt{              |....*.%|  #  |.....|}&br;
&tt{              ---------  #  -------}&br;



-ターン制のシステム。
--一見するとトップビューのARPG。実際、モンスターはシームレスにおり、自キャラの攻撃も体当たりや矢をモンスターへ向かって放ったりと、まるでARPGの様。だが、実はターン制のシステム。どういうものかというと、移動やアイテムの使用、武器の装備など何か行動を起こす度、モンスターも一つ行動を起こすのだ。だから一歩プレイヤーが動くと、モンスターも一歩動く。プレイヤーが一回攻撃すると、次は相手が一回攻撃するという感じで、お互いの行動が必ず交互((一部のモンスターは1ターンの間に2回行動する))に行われる。
--行動は基本的にコマンド入力で行われる。武器の装備は”w”(wield)、ものを投げるのは”t”(throw)、巻物を読むのは”r”(read)と、だいたい行動の頭文字となっている。
---アルファベットは大文字・小文字で役割が違い、"W"だと鎧を付ける(Wear)、"T"だと鎧を脱ぐ(Take off)、"R"だと指輪を外す(Remove ring)動作になる。
--移動コマンドはhjkl(左下上右)に割り付けられているが、キーが横並びに配置されているため慣れないと使いにくかった。斜め移動はまた別のコマンドに割り振られているため、これも慣れがいる。
---hjklの操作は、実はUNIXで標準的に用いられているテキストエディタ(vi)のキーバインドと同じである。そのためviに慣れているユーザにとっては逆に使いやすいものであった。ただし、移植版ではテンキーやカーソルキーも使えるようになっていることが多い。

-ダンジョンは部屋とそれと繋ぐ細い通路で構成。
--部屋のサイズや場所、通路の形状に規則性はなく、様々な配置をとる。新たな階層に来たばかりの時は、どこに部屋があり、通路がどこに繋がっているかはまるで分からない。実際に行ってみてはじめて分かるのだ。
---ただ本作のトップビューのダンジョンは、ウィザードリィのような3Dダンジョンと違い、マッピングする手間がかからないため気軽にプレイできた。何度もリスタートする事になる本作だが、この点のためそう苦にはならなかったのだ。
--ダンジョン内部には複雑ではないものの、いくつかの仕掛けがある。このため単に部屋や通路を巡るだけの単調感はない。
---部屋には明るい部屋と暗い部屋がある。明るい部屋は入ったとたんに部屋の内部が全て見えるが、通路や暗い部屋では隣接する場所しか見えない。また隠し扉やトラップもあり、これらは”s”(search)コマンドで探せる。

-アイテムは入手しても、使い道はすぐには分からない。
--様々なアイテムを利用しながらクリアを目指すのだが、入手手段は自分で拾うしか無い。前述の金塊は唯の得点アイテムであり、そもそも店が存在しないので買い物は不可能。なお、アイテムは宝箱等に入っているのではなく、そのまま落ちている。
--アイテムは武器、防具、杖、指輪、巻物、薬、食料の7種(+イェンダーの魔除けと金塊)。特に巻物、薬、食料は使えばなくなってしまう。これらを集め使い道をいろいろ考えるのが本作の面白さの一つ。
--拾ったアイテムはその用途が伏せられていて、どのようなものかは分からない。武器や防具は種類が分かるだけで性能は不明。巻物などは訳の分からない名前が付いているだけである。使ってみれば分かるものもあるが、中には自分に害のあるアイテムもあるので安易に試す訳にもいかない。
---その用途を明かすのが巻物が”scroll of identify”。これを使えば使い道が分かるが、この巻物も使えば消えてしまう。他の巻物に比べれば手に入る機会は多いが、とても十分とは言えない。使いどころはやはり選ぶ。もちろん”scroll of identify”自体も最初は用途が伏せられた巻物で、使ってみないと分からない。
---また、武装の中には呪いのかかったものがあり、誤って装備してしまうと外せなくなる。呪いのかかった武装は、呪い解除の巻物”scroll of remove curse”で解除できる。
---しかもいくつかの薬や巻物は使ってみてもその正体を確定できない場合がある。指輪に至っては効果発揮のメッセージが表示されないのでさらに判別が難しい。このようにアイテムに関しては試行錯誤する要素が山盛りで、さらに”プレイヤー自身”の知識・経験の蓄積も大事である。

-魔法は一応あるが、杖と指輪の付随機能としてのみ。プレイヤー自身が魔法を覚える事はない。
--杖には使用回数制限がある。
--指輪は永続効果(所謂Buff効果)だが装備すると食料の消費が増すものが多い((例外は食料消費を減らす効果を持つ指輪だが、逆に言うと戦闘能力を強化する効果を一切持たない指輪でもある。))。
--どちらもここぞという時に使うのがコツ。

-モンスターへの攻撃は体当たりが基本。
--移動方向にモンスターがいる場合、移動せずにそのモンスターを攻撃する。近接武器(剣やほこ(メイス)など)を装備していれぱ与えるダメージも増える。但し具体的なダメージ値は表示されない。
--一方で遠距離攻撃も色々とある。弓矢や短剣などの飛び道具、杖の魔法、さらには薬でも何でも投げつけることができる((ただし回復薬を投げつけると敵が回復してしまう。))。ただ、どれもアイテムを消費するので(弓矢は矢のみ)、むやみに使う訳にもいかない。遠距離攻撃は難敵向けなのだ。
--また戦闘で受けたダメージはターンと共にわずかずつ回復していく。食料の問題さえ無ければだが…。

-レベルが上がるとHPが上がる。
--しかし、強さ(Str)はレベルでは上がらない。強さ上げる薬を飲む必要がある。
--それではいくら経験を積んでも強くならないのかというと、そういう訳ではない。隠しパラメーターがあり、少しずつ戦闘力と特殊攻撃への抵抗力が上がっていくのだ((元祖TRPGであるD&Dでも能力値が上がることは無かったが、レベル修正値により命中率等が上昇する。))。

-大事な食料。
--何をするにしても食料が必要。ダンジョンを探索し続けているとやがて空腹になる。何も口にしないでそのままでいると、気分が悪くなりやがて動けないターンが出てくる。そして動いては止まってとなるのだが、そんな時にモンスターに襲われるとひとたまりもない。無駄な行動によるターンの浪費は命取りの遠因となるのだ。
--食料の確保は大きな悩みどころ。運が悪いと、どれだけ潜っても食料が拾えないといったことも起こる((ただし"全く出現しない"ということはない。その理由は攻略上のネタバレになるためここでは書かない。))。ただ食料がないからと言って餓死したりはしない。

-多彩なモンスター。
--モンスターは単純な打撃のみのものも多いが、一方で特殊な攻撃をするものも結構いる。動けなくなったり、攻撃力を下げられたり、鎧をダメにしたり、レベルを下げられたりと、特殊攻撃には嫌味なのが多い。数々のアイテムを使い、工夫しながら倒していくのだ。

-死はすなわち消滅。
--一応セーブはできるのだが、それはプレイの一時中断という意味のみ。失敗したから再ロードしてやり直しということはできないようになっている。そして死亡すると自動的にセーブデータは消されてしまい、また別のキャラで最初からやり直しである。
--プレイのたびにダンジョンの構造は変化する。巻物や薬の不確定名も違うものになるので、正体も当然分からなくなる。
---それでもアイテムの不確定名が変わるだけで効果自体に変化は無い。つまり前回プレイした時に拾ったのと同じ効果のアイテムの可能性が高いのだ。

-最も重要なもの。それは運。
--本作はアイテムやモンスターの配置もランダム要素が強く、バランスがあまり考慮されていない。このため必要なアイテムがいつまでも手に入らず行き詰ってしまったり、階段を下りたとたんに目の前に強力なモンスターがいて殺されてしまったりなどが起こる。また下層におりるほどモンスターの強さはかなり上がり、終盤は戦う事自体が危険な場合も。このためハイスコアを狙うどころか、クリア自体が難しいゲームとなっている。

**評価点
-繰り返しプレイが可能という、独特のシステム。
--ダンジョンを自動生成する事により、事実上無限に遊び続ける事ができるゲーム性。
--トップビュー視点であることに加えてダンジョン構造が単純で分かりやすいため、マッピング等の手間がかからない点も繰り返しプレイがしやすい点。

-盛りだくさんの探索要素。
--ダンジョンを探索するのはもちろん、武具、アイテム収拾も本作のポイントの一つ。武具、アイテムの正体が伏せられてるだけに、いいものを手に入れた時の満足感は大きい。

-工夫し甲斐のある戦闘。
--特殊攻撃を持っている敵も多く、各種アイテムや武具の使い道を考える面白さがある。

-想像の余地があるグラフィック
--キーボードの文字のみという無骨極まりないグラフィック構成だが、その分、コンピュータRPG黎明期ならではの場景を想像する楽しみにも繋がっている。

**問題点
-成長が掴みにくい。
--経験を積んでいくと確かに強くなっていくのだが、数値で表される訳ではないので実感が今一つ。

-運への依存度が強い。
--食糧供給が比較的シビアなため、行動の選択肢を絞らざるを得ない。それが運の要素を強めている。
--どんなに工夫しても、クリアできない時はできない。もちろん工夫自体が無駄という意味ではない。

**総評
何度でもプレイする事を想定した自動生成システムは、まさに秀逸。最初期のRPGとは思えない奇抜な発想である((内容を全て熟知している作者自身が遊ぶための措置だと言う。))。~
また、トップビューで自キャラを直に動かす操作性も、非常にプレイしやすいものとなっている。アイテムも多岐に渡り、この収集と使い方を工夫してひたすら最下層を目指すことこそが本作の大きな楽しみである。~
ASCII文字のみで構成された見かけの取っ付きにくさに慣れてしまえば、確実にハマるゲームである。~



**余談
-本作の発祥となった当時の環境の特殊性ゆえ、日本では『不思議のダンジョンシリーズ』が出るまで本作の影響力は限定的であり、知名度も低かった。同じくコンピューターRPGの祖と言われる『ウィザードリィ』『ウルティマ』に比べると寂しい限り。
--もともと対応OSである''UNIX''は大学の研究室や企業にしかないようなマシーンでしか動かせないものだった。~
また日本において海外ゲーム導入のきっかけを多く作ったパソコン「AppleIIシリーズ」用は発表されずじまい。その後もネット上でのプレイが中心になるなど、“マニアの間で知られるゲーム”に留まってしまったのも大きいだろう。
--一方、海外では『NetHack』『Larn』『omega』『Angband』といった類型ゲームが多数作られている。中には[[荒廃したSF世界>装甲騎兵ボトムズ ザ・バトリングロード]]で部品を集めて巨大ロボットを自作する((ローグライクなので、入手出来る部品の性能にも当然「運」が絡む。))『Gear Head』((作者は外国人だが日本のロボットアニメが大好きなんだとか。))なんて変わり種も存在する。

-本作は非常にバリエーションの多いゲームでもある。
--まず作者たちが細かく改良を加えていったため、本家の時点で多くのバージョンが存在する。
--さらにファンが本作と同等のゲーム『Rogue Clone』を作りそれをソースごと公開した。オープンソースであったが故に、これも様々なバージョンが生まれている。原作製品化にあたり、UNIX上で本作が遊べなくなったため、このClone版が取り入れられたりもした((と言うか、現在は本家のソースコードが残っていないのだとか。))。
--このオープンソース性は『NetHack』等にも受け継がれ、本家改良版・私家版問わず様々なバリエーションが存在し、作る楽しさ・プレイする楽しさが無限大に広がる元となった。

-日本では、Clone版を元に太田純がそのまたClone版(日本語化した上でPC-98環境下で動くもの)を作成し、これが広まった。
--太田は後に商用作『ローグ ハーツ ダンジョン』(コンパイルハート)で監修を担当している。
--インターネットが始まる前の「パソコン通信」時代だった『アスキーネット』の目玉の一つもローグの点数ランキングだった((電話代に定額制が無かった時代のためか、当時の『ログイン』誌に練習用(兼宣伝用)のモドキ作品のプログラムリストも掲載された(当時はプログラミング言語が判らない素人でも自力でプログラムを入力するのが当たり前だった)。))。
---当時の『ログイン』誌ではMORPG化した『アイランド・オブ・ケスマイ』も紹介されていたが、生憎日本での展開は無かった。
--一人称視点の3Dダンジョン内で''ポリゴンで書かれたアルファベットがアニメーションしながら襲ってくる''『WinRogue』(アスキー)という珍作もある。

-日本でローグライクと言うと上記の通りチュンソフトの『不思議のダンジョン』シリーズが一番有名。ローグライク初心者向に作られたシステムはヒットして類似作品を多数生み出した。
--例えばコナミの『エルドラクラウン』(旧[[モンスターゲート]]、エターナルナイツ)、ソフトウェアハウスぱせりの『夢幻の迷宮』、コンパイルの『[[わくわくぷよぷよダンジョン]]』等。
//---当時のチュンソフトは同ジャンルのゲームをリリースした他社の動きを大目に見ていたようである。もっとも『不思議のダンジョン』自体が元々存在していた『ローグ』のゲームシステムをベースにしているため、チュンソフトのみが権利を主張できるようなものではなく、もしも権利を主張しようものなら旧来のローグライクファンからフルボッコだったろうが。
--それ以外では『Angband((トールキンの一連のファンタジー小説の世界をベースにした作品で、タイトルも「シルマリルの物語」の冥王モルゴスの居城に由来する。))』(正確にはバリアントの『Zangband』)に日本アニメ等のネタを(ボスキャラや伝説の武具として)大量に盛り込んだ((そもそも『Zangband』自体も『Angband』に『真世界アンバーシリーズ』をはじめとした(西洋の)オタクネタを盛り込んだ作品であり、『Zangband』の頭文字「Z」は真世界シリーズの作者(ゼラズニイ)の頭文字から来ている。))日本製バリアント(故に日本語完全対応)の『変愚蛮怒』が人気。
--また、Zangband系ながら((ただし魔法等の設定が流用されているだけで、ゲームシステムそのものはAngbandやそのバリアントとは全くの別物。))グラフィックが豪華((グラフィック自体は『RPGツクール2000』用として発表されていたフリー素材を使用している。))で、NPC大量追加、ブラックネタ満載の『Elona』(日本製)も有名。
--不思議のダンジョン以前にも、1990年12月にセガの『ドラゴンクリスタル ツラニの迷宮』、1991年4月にコナミの『カーブノア』があるがヒットとまではいかなかった。

-2020年10月22日にSteamで『Rogue』のタイトルで配信された。
--ローグそのものであるにもかかわらず「ローグライク」のタグが付いているのは御愛嬌。あくまでも分類用のタグである。&s(){そもそもこれも正確には「ローグ・クローン」だし…}