「バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海 - (2024/03/03 (日) 10:42:56) のソース

*バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海
【ばてんかいとす おわらないつばさとうしなわれたうみ】
|ジャンル|君とはじめて出会うRPG|CENTER:&amazon(B00013RAAO)|
|対応機種|ニンテンドーゲームキューブ|~|
|発売元|ナムコ|~|
|開発元|モノリスソフト&br()トライクレッシェンド|~|
|発売日|2003年12月5日|~|
|定価|7,140円|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''バテン・カイトスシリーズ''&br()''バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海'' / [[バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子]]|
----
#contents(fromhere)
----

**概要
『[[ゼノサーガ>ゼノシリーズ]]』シリーズで知られるモノリスソフトと、『[[スターオーシャン>スターオーシャンシリーズ]]』シリーズのサウンドなどを手がけていたトライクレッシェンドが提携して製作した作品。~
ゲームキューブにはいわゆる大作RPGというものが少なかった。~
これより先に出ていたRPGとしてはフロム・ソフトウェア開発の『[[RUNE]]』があるが、あちらは非常に取っつきにくい作風故に当時はあまり評価されていなかった。~
そのため、本作はRPG好きなユーザーの期待を背負って発売された。~
ハード自体がそれほど売れていないこともあって売り上げはそこまで高くはないものの、独創的な世界観やバトルシステム、質の高いシナリオによりプレイヤーからの高い評価を得ている。~

----
**ストーリー
>遥か昔、人々と邪神「マルペルシュロ」との間に戦いが起こった。長き戦いののち、人々はついに邪神を倒し、~
「エンド・マグナス」と呼ばれる5つのカードに封印することに成功した。~
そして人々は長い戦いで荒れ果てた大地を捨て、エンド・マグナスの力を借りて大陸を大空へと上げ、人類の未来を託したのだった。
>
>時は流れ、現代に生きる人々は「こころの翼」という大きな羽を持って生まれ、~
5つの浮遊大陸とそれらを統治する大小の国家で形成された世界で平和に暮らしていた。
>
しかしその陰で、強大な軍事力を持つ帝国アルファルドの皇帝ゲルドブレイムは、各大陸に封じ込められたエンド・マグナスを集め、~
邪神マルペルシュロの力を我が物にしようと企んでいた。~
その企みを知ったヒロイン・シェラは、皇帝の野望を阻止するため旅に出る。
>
>その一方、主人公の少年カラスは、精霊と呼ばれる異世界の住人をその身体に宿らせ、~
育ての親と弟を殺した仇を討つべく、復讐の旅を続けていた……。

----
**特徴・評価点
//可読性を高めるため、箇条書きの戦闘を太字強調で見出し化し、内容毎に分けました
''世界観''
-『[[バイオハザード>バイオハザード (GC)]]』でも使われた動画背景の技術を用い、「空に浮かぶ大陸」というファンタジーな世界観をグラフィックで丁寧に表現している。
--それぞれの大陸の特徴は住民の服装や街の風景などにもしっかりと反映されており、街の中を調べた時のテキストも、想像力を刺激するものになっている。
--各大陸や都市の名前は、星の名前から取られていることが多い。タイトルである「バテン・カイトス」も、くじら座を形成する星の一つである。

#region(大陸の紹介)
大空に浮かんだ大陸には様々な国家や都市が存在し、その中でも大きい5つの大陸は五大陸と呼ばれている。
-辺境サダルスウド
--五大陸の中で最も小さく、辺境に浮かぶ大陸。豊かな自然に恵まれており、領主ロドルフォの統治のもと、住民たちは特産品である「山りんご」と「うしぶたミルク」を売って暮らしている。
--物語の始めとなる大陸であり、森でモンスターに襲われ倒れていた主人公カラスは、近くの農村ケバルライで目覚めるところから始まる。

-雲の国ディアデム
--国王レイドカーンが治める雲に包まれた王国。他の大陸にも雲が流れることはあるが、雲そのものが生まれるのはこの国だけである。
---大陸の至るところに雲が流れており、その流れに乗ってやってくる空飛ぶ魚が名産品だが、最近はなぜか魚が全くやってこなくなってしまった。
--国王に仕える誇り高き騎士が護る国でもあり、帝国アルファルドに次ぐ軍事力を持つ。しかしエンド・マグナスを狙う帝国との間で戦争が起こり、物語中に攻め込まれ危機に瀕する。

-虹の都アヌエヌエ
--亜熱帯の気候で緑豊かな自然が溢れる大陸。三十年に一度、満開の花を咲かせる巨大な大樹「天の樹」がそびえ立つ。
--妖精導師コレルリが治めており、大陸は魔女たちが張った魔法のシールドで守られているため、他国の侵略や脅威とは無縁の中立国家である。

-幻影都市ミラ
--この世界と異次元との狭間を常に浮遊しているとされる幻想的な大陸。辿り着くためには「魂の道」と呼ばれる異次元空間の道を通らなければならない。
---お菓子でできた村、精霊が住む杜、まるで絵本のような村など、他の大陸とは一風変わった特徴を持つ。
--大公カルブレンが統治しており、主人公カラスの出身国でもある。

-帝国アルファルド
--発展した科学技術をもとに、巨大な戦艦や数々の戦車など多くの兵器を所有し、他国に対して圧倒的な軍事力を誇る軍事国家。
--現在は皇帝ゲルドブレイムが主導者であり、他大陸のエンド・マグナスを奪うため策略を企てている。
--科学が発達しているため、ここに住む人々はこころの翼を捨て去り、「飛翔機」という機械でできた羽や空中ポッドなどを利用して暮らしている。
---首都である帝都ミンタカは生活水準が高く、そこで暮らす人々は自分たちが他国の人間よりも優れているという考えを持っているが、帝都を離れると貧しい砂漠の村があるなど同じ帝国内でも貧富の差が激しい。

#endregion

''シナリオ''
-シナリオは最初から最後まで綺麗にまとまっており評価は高い。『[[クロノ・トリガー]]』や『[[ゼノギアス]]』で脚本や演出を担当してきた加藤正人氏が担当している。
--プレイヤーは「主人公に憑いた精霊」という立場で物語に関わることになり、主人公は要所要所で精霊という位置づけのプレイヤーへ判断を仰ぎ、物事の選択をしてもらうという一風変わった構成になっている。~
つまり「プレイヤー=主人公の仲間」という位置づけであり従来のRPGのように「主人公=プレイヤーの感情移入の対象」という図式になっていないのだが、これにはシナリオ構成上、大きな意味が持たされている。
--プレイヤー自身を「第三者的立場で物語に関わる存在」と位置づけることで従来のRPG作品とはまた違った角度からシナリオの没入度を深めており、さらにその設定自体がシナリオに密接に関わっている。特に中盤から終盤にかけての展開はプレイヤーを大いに驚かせ、その巧みなシナリオ構成と、プレイヤーの意表を突いた展開で引き込みつつ王道ながらも熱い展開に発展していく筋運びが高く評価された。
---後述する戦闘のテンポの悪さもあって、前半で止めてしまってそこまでたどり着けなかったというプレイヤーも多かったのが惜しいところ。
--キャラクターたちも奇抜なデザインや王道を敢えて半分外したような設定が多いものの、世界観に上手く溶け込んでおり個性的で新鮮味がある。

#region(主要キャラクターの紹介)
&font(b,14){メインキャラクター}
-''カラス''(CV:鳥海浩輔)
--世界でも珍しい精霊憑きの青年。ゲームを始めた時点では18歳。生まれつきこころの翼を片方しか持たず、祖父であり元技術者のゲオルグに作ってもらった飛翔機を付けている。
--物語が始まる前、帝国アルファルドの部隊長ジャコモに祖父ゲオルグと弟のフィーを殺されており、復讐を果たす目的で旅をしている。
--こうした経緯もあって打算的でひねくれているという、主人公らしからぬ性格をしている。帝国全体を敵に回そうとするシェラ達に対して呆れた態度を取り、最初は嫌々戦っていたが、この戦いに仇敵であるジャコモが深く関わっていることを知ると進んで協力をするようになっていく。
---人助けを面倒臭がるところもあるが、シェラがモンスターに襲われているところを救ったりと決して根っからの薄情者というわけではない。
--戦闘面では主人公らしく高水準にバランスのとれたステータスをしていて、いろいろな属性の武器も手に入り、武器で防御することもできる使いやすいキャラクターとなっている。

-''シェラ''(CV:たかはし智秋)
--優しく気丈な心を持ち、帝国の野望を止めるため旅をする17歳の少女。こころの翼は妖精のような羽をしている。
--物語の最初にお供二人を連れて登場するが、その後モンスターにお供をやられてしまい、危機に陥ったところでカラスに救われる。
--カラスとは対照的にしっかりとした性格をしているが、その出自は不明であり、物語の中盤で謎が明かされる。
--戦闘では魔法を使った属性攻撃を得意とする。また素早さがパーティー内で最も高く最初に行動できるが、耐久力は低め。

-''ギバリ''(CV:梁田清之)
--雲の国ディアデムの漁村ナシラに住む漁師。年齢は34歳でパーティー内最高齢であるため、自然とまとめ役や切り出し役を担う事が多い。
--性格は豪快でややいい加減そうにも見えるが、ここぞというときには筋を通す。だが古いしきたりには囚われない奔放さが他の漁師たちとの衝突を招くこともある。
--カラス達に船を貸してほしいと頼まれたことをきっかけに行動を共にするようになり、祖国に攻め込んできた帝国を相手に戦うことを決意する。
--怪力で船を漕ぐ櫂(かい)を振り回して戦う。攻撃力が高くカラスと同様に武器による防御もできるが、素早さが低く雑魚相手でも先手をとられることがしばしばなので雑魚戦はやや苦手。
--今作の20年前が舞台である続編のIIにも少年姿で登場し、今作ではあまり語られることのない彼の過去を知ることができる。

-''リュード''(CV:岸尾大輔)
--帝国アルファルドの士官で、18歳で帝国貴族生まれのエリート。雲の国ディアデムに特務大使として派遣(左遷)させられていた。
--優しい乳母アルマードに育てられたためか、帝都の人間にしては珍しく生真面目で正義感が強い性格。しかしそのせいで帝国の方針に疑問を持ち反発するようになる。ディアデムで帝国の汚いやり方を目にしたとき祖国に対し銃を向けることを決意し、カラス達と行動を共にする。
--帝国を裏切ったあとも幾度となく自分の選択に対し苦悩することになり、精神的に参ってしまうことが多い。
--帝国出身なのでこころの翼を持たない。また戦闘では音衝銃という特殊な銃を使い、光属性と闇属性を専門とする。
--戦闘面では平均的に低いステータスをしており、武器の攻撃力や防具にも恵まれていない、いわゆる不遇キャラ。しかしストーリー中では光属性が弱点の敵が多く出現するため、長所を活かせばうまく戦うことができる。
---必殺技にはなぜか銃からレーザーやビームが出るものがあり、銃を使った肉弾戦も行う。&strong(){「邪なる魂に聖なる一撃を!」}と言い放ち相手を&strong(){銃でタコ殴りにする闇属性の必殺技}など突っ込み所満載なものまである。

-''サヴィナ''(CV:浅野まゆみ)
--虹の都アヌエヌエにある滝の村オプでひっそりと暮らしている女性。25歳。モンスターを狩って生計を立てているハンターである。
--無口で落ちついた雰囲気を漂わせているが、孔雀のようなこころの翼を持ち華麗な格闘技で敵を圧倒する様からは只者ではないことを匂わせる。
--カラス達がアヌエヌエにやって来ることをわかっていたような口振りをし、その時点では多くを語らずそのまま仲間になる。
--攻撃属性は水属性と火属性を専門とする。また戦闘中の攻撃アクションが他の仲間と比べかなり早いのが特徴。慣れないうちは大変だが、慣れてしまえば爽快に連続攻撃を叩き込む姿を拝むことができる。

-''ミズチ''(CV:中山依里子)
--風変わりな仮面を付け、独特な喋り方が特徴的な謎の人物。正義の味方と名乗り、自分のことを「ミズチさま」と言っている。
--カラス達が幻影都市ミラに向かうために「魂の道」を通る際、異次元の狭間に落ちてしまうがその時に突如現れ、道案内をしてくれる。その時点では一度別れるが、その後再会したときに仲間になる。
--強力な古代魔法を扱い、こころの翼は持たないが常に魔法で宙に浮いている。また両手に持つチャクラムで攻撃することもある。
--戦闘ではHPは低いもののパーティー随一の防御力を誇る。しかし通常攻撃にはシェラと同じ魔法を使うため、同時に戦闘に出す場合は魔法マグナスが不足しがちになってしまう。

&font(b,14){サブキャラクター}
-''ゲルドブレイム''(CV:茶風林)
--帝国アルファルドの現皇帝。絶対的権力で恐怖政治を行う独裁者。裕福な帝都ミンタカの民からは異常なほど心酔されている。
--性格は残忍で猜疑心が強く、邪神の力を我が物にしようと企む。エンド・マグナスを腹心の部下ジャコモに捜索させ、ときには他国に対し武力行為を行う。

-''ジャコモ''(CV:松本大)
--ゲルドブレイム直属の帝国特殊部隊隊長。部下のエイメ、フォロンと共にエンド・マグナス捜索の任務を受け、飛空戦艦ゴルドバで各地を暗躍する。
--超人的な戦闘能力を持ち、大鎌を振るって戦う。こころの翼は持たず、ジェット型の飛翔機を付けている。
--カラスにとって祖父と弟の仇であるが、当の本人はカラスのことを敵視している様子はなく、むしろカラスに興味を持っているようだ。

-''エイメ''(CV:浅川悠)
--帝国特殊部隊の隊員でジャコモの部下。凄腕の女スナイパーで、飛翔機を利用した体術も得意とする。カラスが仇として追っている一人でもある。
--性格はジャコモ以上に残虐で、敵をいたぶるのが趣味。帝国のディアデム侵攻の際には巨大兵器「鉄甲虫」を操作してカラス達の前に立ちはだかった。

-''フォロン''(CV:中國卓郎)
--エイメと同じ特殊部隊の隊員でジャコモの部下。青白い肌が特徴で、エンド・マグナス捜索のためアヌエヌエでカラス達と対峙する。
--飄々としていて相手を見下すが、その実力は確か。ジャコモと同じく常人離れした技を使う。

-''レイドカーン''(CV:千葉進歩)
--雲の国ディアデムの若き国王。文武に優れ、民から絶大な信頼を受ける名君である。

-''コレルリ''(CV:松井菜桜子)
--虹の都アヌエヌエを治める女性。妖精導師と呼ばれ、予言の力を持つ。中立国であるがゆえ、他国の協力要請に対しては否定的な態度を見せる。
//--設定では17歳となっているが、20年前が舞台の次作でもほぼ変わらない姿で登場している。あまり深く考えてはいけない。

-''カルブレン''(CV:小山武宏)
--幻影都市ミラを治める大公。9年前に息子夫婦を流行病で亡くし、孫娘のミローディアを溺愛している。

-''ミローディア''(CV:荒木香恵)
--カルブレン公の孫で、民から愛される天使のような少女。
--両親を亡くしてからはふさぎ込んでいたが、最近は元気を取り戻してきているらしい。


#endregion


''音楽''
-『スターオーシャン』シリーズや『[[テイルズオブ>テイルズ オブ シリーズ]]』シリーズなどで有名な桜庭統氏が担当している。
--桜庭氏自身が続編を望むほど力が入っており、丁寧に作られたファンタジーの世界を盛り上げてくれる。
---サウンドテストが搭載されており、メニュー画面を開けるタイミングならば一度ゲーム中で流れた曲はいつでも聞くことが出来る。
--通常戦闘曲『The true mirror』など戦闘曲への評価が特に高く、戦闘時間が長くなりがちな本作であるが、曲のおかげで気にならなかったという人もいるほど。

''マグナス''
-本作では、装備品やアイテムの類の一切を、「物体の本質であるマグナエッセンスを封印したカード『''マグナス''』」として持ち運ぶ。~
武器防具、回復アイテム、魔法などの一切がマグナスとして扱われ、本作の戦闘はこのマグナスを用いたカードバトル風のルールによる「マグナスバトル」という形式で行われる(後述)。
--全部で1022種類あり、マグナスの収集が本作の大きなやりこみ要素となっている。メニュー画面のマグナスの項で、何種類集めたのかを確認することが出来る。~
それぞれのマグナスには簡単な説明文があり、マグナスと同じく真面目なものから笑えるものまでバリエーションは豊富。ゲーム進行の手段としてだけでなく、純粋に収集する楽しみも味わえる。

-マグナスの中には、時間が経つと別のマグナスに変化するものもある。例を挙げると「ロックアイス」のマグナスは時間がたつ事により氷が溶け、「ミネラルウォーター」のマグナスに変化するといった具合。
--こうした形で変化してしまうものも多くあるが、基本的にはどれだけ時間が経過してもマグナスそのものが消滅する事はない((「火」のマグナスのみ例外で、時間経過の後に消えてしまう。))。

-SPコンボ
--戦闘中に特定の順番でマグナスを出すと、戦闘終了後に新しいマグナスを入手出来るシステムがある。
---「松の木」+「ファイアバースト(炎属性の魔法)」→「炭」といったシンプルなものや「えび」+「釣り竿」→「鯛」というような洒落の効いたものまで様々な変化があり、新しいマグナスを入手するという効果だけでなく変化そのものも面白い。中にはこのSPコンボでしか入手できないマグナスもあり、色々試しながら組み合わせを探すのが楽しい。
---前述したマグナスの説明文の中には、SPコンボのヒントになるものもあるので、新しいマグナスを入手したらチェックしてみると良いだろう。

-ただし、一部のマグナスは入手出来る期間が限られていたり、入手方法が理不尽だったりする。隅々までプレイすれば初プレイでも多くの種類を集めることが出来るが、攻略情報無しに全種類を集めるのは非常に難しい。

-カードゲーム風のルールを採用した戦闘システム「マグナスバトル」
--前述したマグナスは、戦闘においてはアイテムであったり、魔法や必殺技であったり、逃走や通常攻撃といったコマンドであったりする。これらのマグナスをゲーム中に収集し、それぞれ組み合わせてキャラごとに30~70枚のデッキにする。
--ターン制のバトルではあるが、ドラクエやFFタイプのRPGにおいては、基本的にプレイヤーは何をするか自由に行動を選択できるのに対し、マグナスバトルでは戦闘に入るとデッキの中にあるカードの中からランダムで何枚か並べられて表示され、常に提示されたカードの中から行動を選んでいく。提示されたカードは選択すると消え、代わりに別のカードが新たに引かれる。一回の行動でカードを引ける最大の枚数は決まっているが引く時間に制限があり、早く引かないと行動が終了してしまう。
---攻撃や回復といったコマンドがマグナスの選択で行われるイメージをしてもらえると分かりやすい。
--マグナスには精霊数と呼ばれる1~9までの数字がそれぞれ付与されており、選んだマグナスの精霊数をポーカーのように揃えることで、プライズが発生し、与えるダメージや回復量がアップする((防御ターンの場合はダメージを軽減でき。))。
---序盤に手に入るマグナスに精霊数は1つしかないが、ゲームの進行に合わせて付与される精霊数の数も増えていき、終盤は最大で4つの精霊数が付いたマグナスを入手できる。
---一度に選べるマグナスの枚数が2,3枚の頃はプライズが発生しても数%にしかならないため、あまり意識する必要はないが、5,6枚ほど揃えられるようになると、プライズは数十%になり、無視できない存在となる。
--また、光属性の攻撃と闇属性の攻撃といった「反対属性」同士を組み合わせるとダメージが減少するなど、マイナスの効果の組み合わせもある。
--反対属性に注意しつつプライズを狙っていくために、限られた時間でカードの選択はよく考えないといけない。
--デッキの組み合わせの自由度の高さ、行動時間内にカードを消費し新たなカードを引く切り回しの速さが要求されることなどから、プレイヤーの慣れやデッキ構成の戦略が重要になり、マンネリになりにくい。
--とはいえ、実際にプレイしてみると問題点が多い。詳しくは後述。

''その他''
-ロードがほぼなく、快適にゲームを進めることが出来る。

----
**問題点
''戦闘面のテンポの悪さ''~
まず、本作の最大の問題点なのが、戦闘のテンポの悪さである。~
中盤以降は敵も味方も一度に5回も6回も行動するため、一回の戦闘時間がとても長くなってしまう。~
そうなってしまった原因は以下の要因による。

-運の要素が強い。
--バランスよくデッキを構成したとしても、プレイヤーの思い通りに行動できないことが多い。攻撃がしたいのに防御マグナスばかり引いてしまったり、回復がしたいのに回復が出来るマグナスが引けないといったことが良くある。
--逆に、マグナスを上手く繋げることさえ出来れば、一度の行動で大ダメージを与えたり、受けるダメージをかなり抑えたりすることが可能でもある。

-全体攻撃が存在しない。
--防御ターンの関係上、敵味方ともに全体攻撃が存在しない。一度に登場する敵は最大3体までではあるが、まとめて倒すということが出来ないので、一体一体倒す必要がある。
--一部の敵は他の敵を復活させる技を持っているので、その技を使われてしまうとさらに長引いてしまう。逃げるのにも「逃走」のマグナスを引かなくてはならないため、基本的には面倒でも倒してしまったほうが早いことが多い。

-キャラクターの行動モーションがあまり速くない。
--マグナスを選びながら攻撃や防御を行うため、速くしてしまうとバトルのスピードにプレイヤーの選択が追いつかなくなってしまうので、仕方のない部分ではある。
--しかし、終盤は1ターンで選べるマグナスの枚数が多くなるので、思い通りに行動できたとしても戦闘時間が長くなってしまいがち。

-戦闘中にマグナスを選ぶ際、一度に2枚までしか選ぶことがない。
--例えば、1ターンで3枚のマグナスを選ぶ場合、最初の2枚はすぐに入力ができるが、3枚目のマグナスはすぐに選ぶことができず、''キャラが1枚目のマグナスの行動を終え、マグナスが消費されて空きができるのを待ってから、3枚目のマグナスを選ぶ''必要がある。
--そのため1ターンで選べるマグナスの枚数が多くなると、3枚目以降のマグナスを入力する際の待ち時間が増え、入力できないダウンタイムにストレスを感じてしまう。

-戦闘中だけでなく、デッキを作る際にも少し問題がある。
--マグナスの装備欄は一人につき30~70枚。よって思い切った装備変更をしようとすると非常に手間がかかる。また、仲間一人一人装備欄が個別であるのも面倒さに拍車をかけている((普通のRPGではそれが当たり前だが、本作のシステムでは面倒な部分が目立ってしまう。))。
--キャラクターごとの性能も、同じ魔法マグナスを使い回すためどちらかにリソースを集中させられやすいシェラとミズチや、他のキャラと比べて装備や能力値が明らかに不遇なリュードなどあまり練られているとはいえない。

コンボが繋がって大きなダメージを叩きだした時の爽快感や、カードゲーム独特の雰囲気、狙い通りに行動できた時の面白さは確かにある。~
しかし、システム上の手間や時間のかかる点への配慮が足らなかったため、上述した問題点が目立ってしまったのが惜しい。~
//次回作では今作の反省点を踏まえて大幅にシステムが変更され、大きな評価点となるほどに改善されている。

''移動速度の遅さ''
-いわゆるダッシュに相当するシステムがなく、キャラクターの移動速度が遅い。マップ自体はそれほど広くないのが救いか。
--しかし、終盤の一部のマップでは泥などで足場が悪く、更に移動速度が遅くなってしまう。物語の進行上そのマップは必ず通らなくてはならず、どうすることもできないので我慢するしか無い。

''取り返しのつかない要素が多い''
-本作のシステムの根幹を担うマグナスには、入手時期が限られているものが数多く含まれており、後から収集することができない。1周プレイでコンプリートすることはまず不可能。
--いわゆる「強くてニューゲーム」のような、2周目にマグナスを引き続げるシステムも無いため、周回プレイをしたとしても、全てのマグナスを手に入れることはきわめて困難である。
-また本作には「精霊値」という隠しパラメータがある。これはストーリー上でプレイヤーが選ぶ選択肢によって昇降し、精霊値が高いほど戦闘が有利になっていくのだが、ストーリー上でプレイヤーが選べる選択肢の数は有限であるため、精霊値を後から上げ直すといったことができない。



----
**総評
戦闘システムに問題が見受けられるものの、美麗なグラフィックや良質なシナリオ、壮大な音楽によって多くのファンを生んだ。他の作品にはないシステムや設定などで少々癖のあるゲームではあるが、GCというハードを代表するRPGであることは間違いないだろう。

----
**余談
-本作のメインテーマである「光星煌めく旅路の果てへ」がゲーム音楽のオーケストラコンサートであるPRESS STARTの2008年公演で演奏され、2013年のファン投票では他の有名作品に比べると知名度では劣るものの、6位に入るという大健闘を見せた。

----
**その後の展開
-2023年2月9日配信の「Nintendo Direct」において本作及び続編『II』のリマスター版をカップリング移植したNintendo Switch用ソフト『バテン・カイトス I&II HD Remaster』が発表され、2023年9月14日に発売された。