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沙耶の唄 - (2023/08/03 (木) 06:47:07) のソース

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*沙耶の唄
【さやのうた】
|ジャンル|サスペンスホラーアドベンチャー|&amazon(B0000V68BY)|
|対応機種|Windows 98~XP|~|
|メディア|CD-ROM 1枚|~|
|発売・開発元|ニトロプラス|~|
|発売日|2003年12月26日|~|
|定価|4,800円(税別)|~|
|レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~|
|廉価版|NITRO THE BEST!&br;2009年7月31日/2,800円(税別)|~|
|~|あそBD&br;2013年2月28日/5,800円(税別)|~|
|~|Win10対応版&br;2017年4月28日|~|
|配信|2009年7月30日/2,300円(税別)|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|グロゲーの皮を被った純愛?&br;物語に特化した設計|~|
|>|>|CENTER:''[[Nitro+作品]]''|
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#contents(fromhere)
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#center{&size(25){''WARNING!!!!!!!''}&br;'''閲覧の際はゲーム本編のネタバレに注意してください。'''}
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**概要
処女作の『[[Phantom>Phantom -PHANTOM OF INFERNO-]]』以来、ハードな作風で人気を博していたブランド「ニトロプラス」の第六作目。シナリオは『Phantom』を手がけた虚淵玄(うろぶち げん)氏が担当している。~
当時の宣伝では、(ハードな展開に定評のある)虚淵玄が珍しい恋愛モノに挑戦していることが強調されていたし、発売前の宣伝には、キャッチコピーの「''それは世界を侵す恋''」と言う実に当たり障りのない文句が躍っていた((エンディングの一つでは確かにそうなるので嘘はついていない。))。~
だがいざ発売されてみると、パッケージに踊るジャンル名には「''サスペンスホラーアドベンチャー''」と打たれており、異種陵辱モノを思わせるサンプルCGが載っていた。~

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**ストーリー
***表向きのあらすじ
以下は通販サイト「げっちゅ屋」の紹介記事に添えられていた宣伝文である(現在では別の物に差し替えられている)。当時の記事は[[こちら>https://web.archive.org/web/20101031065316/http://www.getchu.com/soft.phtml?id=36221&gc=gc]]

//文頭空白による整形テキストでの表示は改行を適度に入れないとスクロールしなきゃいけなくなるんで、できるだけ改行入れるか、空白入れずに普通に書いてほしい。
ニトロプラス・アクションシリーズでお馴染みの虚淵玄&中央東口の両氏が、今回は得意とするアクション活劇路線はあえてとらず、男女の恋愛物語、そしてアダルトゲームとしてのHCGの充実など、新しい作風へとチャレンジした意欲作となっている。~
医科大学に籍を置く男女4人の恋物語。そして、ある日とつぜん郁紀(ふみのり)の家へと転がり込んでくる謎の少女・沙耶。人知れず悩みを抱えた一人の青年が、様々な人々との出会いと別れを経験し、ついには自分なりの人生を切り開いていこうと歩み出す…。

厄介なのが一見は普通の恋愛物の宣伝文句に見える事。~
しかしプレイすると''嘘は書いていないが真実は伏せられている''ことに気が付かされるだろう。~

***実際のゲーム内容
#region(''注意! ゲーム内容の重大なネタバレあり'')

主人公の郁紀は事故で両親を失い、さらにその時脳に受けた障害のせいで、「''視覚に重大な後遺症を残し、それに引きずられて他の感覚も全て歪んで感じる''」ようになってしまった。建物の壁は内臓を裏返したかのような赤黒い肉の壁に、人間は異臭を放つぬるぬるした肉塊(しかも声にはノイズが入り、まともに聞き取ることすら困難)に見える状況である。

//その一方で「原色のペンキを何種類か混ぜ合わせて塗りたくる」と、肉の模様が消え落ち着いた緑色に見えたりもする。普通の人間には「世界への憎悪をぶちまけたよう」でとても直視できない光景だが彼にとっての普通が変化したことが窺える要素だ。

//そしてこの悩みは他人に打ち明けることが出来ない。郁紀は医大学生であったため、そんなことをすれば末期の精神疾患として隔離されるか、未知の後遺症のサンプルとしてモルモット扱いされることがわかってしまっていたからである。

//入院中の郁紀は上記の後遺症のせいで狂った世界にただ一人取り残される格好になってしまい、自殺する寸前にまで追い詰められていたのだが、沙耶と出会ったことで運命が変わる。沙耶は郁紀の世界で唯一まともな人間に見える存在であり、彼女もまた孤独な存在であった((育ての父が行方不明となってしまい、手がかりを求めて病院に忍び込んでいた。))。そして両者は夜な夜な逢瀬を繰り返した末に惹かれあい、互いを心の支えとするようになる。~

//郁紀の退院後、沙耶は郁紀の家に居候することとなり、郁紀自身も障害を隠して大学に復学した。しかし友人達は「化け物」としてしか認識できなくなり((しかもゲーム開始直後に「化け物に見える友人達」と対面することになるため、プレイヤー側でも心の準備が必要になる。))、かつてのように付き合うことはできなくなってしまう。

本作はそんな狂った世界で藻掻き苦しむ郁紀の視点と、彼を心配しながらもその苦しみを理解できない友人達やその他人物の視点とが入れ替わりながら進行していく。

#region(''結末'')
郁紀は最終的に「このまま沙耶と一緒に生きる」のか、それとも「事故の後遺症を治療し、かつての日常を取り戻す」かどうかの選択を迫られることになる。この選択でストーリーが大きく分岐し、最終的に3つのエンディングへと至るのだが、どのエンディングを選んでも郁紀は沙耶と離別し、破局を迎えることになる。
#endregion

//「''ヒロインの沙耶が劇中で取っている行動のほとんどが、つまるところ郁紀への愛に由来している''」からだ。

//まず、前述の通り郁紀は(自分の狂った世界では)唯一まともな人間に見える沙耶に救いを求めていくのだが、実は沙耶にとってもこの世界は似たような物なのである。沙耶は「''名状しがたい何か''」であり、狂ってしまった郁紀以外の人間にとっては「''一目見ただけで発狂しかねない化け物''」なのである((普通の人間なら沙耶の姿を見ただけで正気度が最大20減るという『クトゥルフの呼び声(現:クトゥルフ神話RPG))』(正気度が一度に5減ると一時的狂気に囚われてしまい、合計55減ると完全な狂人になってしまう)を意識した公式設定も存在する。))。~
そんな中でも、沙耶は郁紀がこの狂った世界でも生きていけるよう知恵を出し合うなど献身的に接し、さらに「私なら郁紀の異常を治し、人としての生活を取り戻すことができる」とゲーム中盤で告白する。そんなことをすれば異常の治った郁紀にも沙耶が「化け物」としか見えなくなってしまい、この生活が続けられなくなることは明白。にもかかわらず郁紀の治療を申し出る沙耶は「健気」としか言いようがないのである…((ただし郁紀以外の人間は割とどうでもいいようで、不法侵入者を「撃退」したり、間接的にではあるが善良な一家庭を不幸な目にあわせたりもしている。そもそも郁紀がまともに食べられる食事は「人肉」である。))。

#endregion

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**特徴
''アダルトゲームの皮を被ったビジュアルノベルであり、純愛を語ったグロゲーである。''

-特に虚淵氏の、救いはないが儚さと美しさのあるシナリオに注目すべき作品。
--純愛作品の前フリから一点、グロテスクかつ鬱ゲーの作品に分類されるように思えるが、シナリオを読み込んでいくと、やはり事前の煽りのように''純愛を描いたストーリー''である事がわかる

-グロ画像カット機能。
--背景のグロテスクな描写が取り除かれる。興味はあるがグロが駄目という人間にもオススメ…するにはちょっと不足ではあるのだが。

-使用曲名はすべて「S」で始まっている。
--テーマソングの名前もズバリ「''沙耶の唄(Song of saya)''」である。唄っているのはニトロファンにお馴染みのいとうかなこ氏。
---近年では『[[School Days]]』のバッドエンドテーマ曲を唄っている。

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**評価点
-プレイ中の没入感は高い。
--中だるみもなくハードカバーの本一冊を一気に読み切る感覚に陥る。
--そこにCGやBGM、演技の要素が加わり、ビジュアルノベルとして十二分のクオリティ。

-登場人物は少ないながら、ヒロインたる沙耶の造形美は素晴らしい。
--厳密には主人公の郁紀にはそう見えているという話にすぎないが。

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**賛否両論点
-グロ、残酷描写があり、ストーリーそのものも人を選ぶ。描写は間接的だが、それが却って恐ろしく感じられることもある.
--頭蓋骨など直接的な描写も含まれ、郁紀の友人が彼らの「ご馳走」を見てしまうシーンは特にエグい。

-グロ描写カット機能に不足
--CGの表示スキップはされない。特に有名な上記のご馳走シーンの回避が不可能である。
--ただそれらをカットしないと駄目なほどに苦手であれば無理にプレイする必要はないという意味も含まれよう。

-ゲーム全体を通して選択肢は2つしかない。
--攻略ヒロインが一人である事を踏まえても、マルチエンディングの分岐にしては少ない。故にゲームかと言われるとビジュアルノベルの要素が強い。

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**問題点
-話の骨子はしっかりしているが、短編という事情もあって全体的に話の進行は駆け足。
--ボイススキップなしかつ全ルートをプレイしても10時間もあれば終わる。アダルトゲームにありがちなルート分岐付近のシナリオの中だるみはない事は評価点。

-アダルトゲームながら性的欲求を満たす事はおおよそ無理。
--根本的に行為に及ぶ場面が少ない。内容を考えれば妥当なのだが求めるとがっかりする。折角の背徳的な造形が勿体ない。
--商業流通に乗せるためにアダルトゲームの皮を被せているフシのあるニトロプラスに、その要素を求めるなという話だが、それにしても、の少なさである((ただし、PCゲーム業界では「エロゲー以外のADVは売れない」と言われており、非エロADVは流通からも扱いを断られる事が多いという事情がある。))。

-バックログ閲覧機能の操作性に難がある。ただしベスト版では改善された。

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**総評
ニトロプラス印満載のCOLOR(red){''アダルトゲームというジャンルの異端作品''}である。~
扱っている題材も陰鬱で、エロティックな要素も少なく、ニトロプラス特有の陰惨な描写が多出するため人を選んでしまうのが勿体ない。~
しかしプレイしてみるとグロテスクな世界に混ざった「美しい別れ」のあるシナリオに純愛を感じる内容になっている。~
そのため本作はニトロプラスとシナリオライターの虚淵玄氏を語る上で外せない作品といえよう。

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**余談
-物語の設定は『クトゥルフ神話』がベースになっており、『[[斬魔大聖デモンベイン / 機神咆吼デモンベイン]]』にも(僅かだが)繋がりがある。
--また、狂った世界の中で人間として見えるヒロインという構図は『火の鳥 復活篇』のオマージュであり、本編中でも郁紀の口から「昔見た漫画で同じようなことが描いてあった」と語られる。
--他沙耶の設定や、恋愛描写の一部に『グリーン・レクイエム』の要素も見受けられる。

-虚淵玄氏が脚本を担当した『[[魔法少女まどか☆マギカ>魔法少女まどか☆マギカ ポータブル]]』には愛する男性への献身を発端として化け物に成り果て破滅してゆく「さやか」がおり、これらをかけ合わせた「''さやかの唄''」というネタが存在していたりする。
--初出は「まどマギ」コミカライズ単行本2巻のカバー裏。なんと公式ネタ。

//-その「グロで覆い隠された巧妙なシナリオ」「醜さを見せたが故の美しさ」からか[[ライアーソフト>ライアーソフト作品]]の『腐り姫』と一緒に語られる事も多い。
//--某画像掲示板などでは、「[[二人はグロキュア>https://www.nicovideo.jp/watch/sm3654375]]」なんてネタもあったり…。

-メーカーサイト等での謳い文句は「''ニトロプラス入門作''」である。
--Windows、ブルーレイ、Androidと様々な媒体でプレイ可能で、セール期間を狙えば1,000円程度で購入可能、短編作品ゆえお手軽にプレイ出来る上ビジュアルノベル要素が強い事からも間違ってはいない。嘘も言っていない。
--ニトロプラスというブランドの作風を理解するにはうってつけなので、そういう意味でも入門作だろう。作風そのものを受け入れられるかどうかという問題だが。

//-ベルリン国際映画祭に出品され、今年4月28日にNetflixで配信が開始し、5月13日に劇場公開された虚淵氏が脚本を務めているオリジナルアニメ映画『[[バブル>https://wwws.warnerbros.co.jp/bubble-moviejp/news/?id=4]]』は、本作との共通点を所々に感じさせ精神的続編と言っても過言では無い純愛アクションラブストーリーとなっている。''作品のトーンは本作とは真逆の切なくも爽やかなものとなっているが。''
//現時点で脚本家以外に共通点はなく、キャッチコピーも映像作品としてはわりとありふれたものです。上記のまどマギネタのように公式が関連性を匂わせているようなこともありません。特筆性が感じられないためCOします。
//また、コメントもなく記述を差し戻しするのはおやめください。異論がある場合は「ゲームカタログ(その他分類専用)意見箱」スレにてお願いします。
//何故かホスト規制で書き込めなかったので、申し訳ありませんがここに書き込みます。確かに雰囲気は全く異なるものの、脚本家と純愛という題材が共通し、更にニトロプラスが関わっているという点で特筆してもいいと個人的には思ったんですが。
//↑最初と別の者ですがやはりCOが妥当かと。「果たして…!?」などと未確定情報を書く場ではありませんし、宣伝と受け取られかねません。もし公式で共通の世界観であることや、精神的続編であることが明かされるなどした場合は微調整のうえ記載は問題ないように思います。
//何故か記載が復活されていたので再度CO。掲載したい場合はスレなどで相談してください。
//再度繰り返される場合、規制依頼を視野に入れさせていただきますのでご注ください。

''移植等''
-Androidアプリにも進出している。当然COLOR(red){''18禁。''}
-18禁要素がどうしても切り離せないがゆえか、虚淵玄氏の作品の中では唯一小説版が存在していなかったが、2018年12月、実に15年越しで発売されることとなった。既に続編の刊行も決定しているという。

-発売から10年以上経過した2017年にWindows 10対応版が発売。
--エロゲー業界では珍しいロングセラーである。

-2023年7月28日に無料アプリ『沙耶の唄 AIアプリ』が配信された。

''外部出演''
-沙耶はキャラ人気が高く、後にニトロプラスが製作した対戦格闘ゲーム『ニトロ+ロワイヤル』『ニトロプラス ブラスターズ -ヒロインズ インフィニット デュエル-』にも出演した。やっていることはある意味原典以上にえげつないのだが、こちらはお祭りゲーなだけに陰鬱さは微塵も感じられない。
--なお、共演した「恋するドラゴン(竜†恋)」からは「[[貴様の愛は侵略行為>覚悟のススメ]]」と切り捨てられている。

-なんとアメコミにも進出。アメリカ向けにリメイクした結果なのか沙耶はセクシーな大人の女性に、郁紀は''筋肉モリモリの尻顎男''になっている。また、本編でははっきり描かれなかった沙耶の真の姿は昆虫のようなエイリアンとして描かれている。
--なお、シナリオは原作ゲームを踏襲しながらも、独自の展開となっている。ちなみに、そのアメコミ版の表紙が[[こち>https://livedoor.blogimg.jp/shake1728/imgs/a/b/ab419191.jpg]][[ら。>https://livedoor.blogimg.jp/shake1728/imgs/9/e/9ebcc33e.jpg]]