「クロックタワー3」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

クロックタワー3 - (2024/01/31 (水) 13:42:45) のソース

*クロックタワー3
【くろっくたわーすりー】
|ジャンル|ホラーアドベンチャー|&amazon(B00006D2DM,image=https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51Y4B7CQGRL._SL160_.jpg)|
|対応機種|プレイステーション2|~|
|発売元|カプコン|~|
|開発元|カプコン&br()サンソフト&br()フラグシップ|~|
|発売日|2002年12月12日|~|
|定価|6,800円(税込)|~|
|判定|BGCOLOR(khaki):''シリーズファンから不評''|~|
|ポイント|''完全に別ゲーム''&br;''ホラーから魔法少女物の特撮劇へ''&br;''一番の被害者はシザーマン''|~|
|>|>|CENTER:''クロックタワーシリーズ''&br;[[クロックタワー]] / [[2>クロックタワー2]] / [[ゴーストヘッド>クロックタワー ゴーストヘッド]] / ''3''|
//キャラの演技が舞台劇っぽいのは確かだけど、歌い踊るシーンがあるわけではないので表現をちょっと変更。
----
#contents(fromhere)
----
~
#center(){{
 &big(){''子供がやってはいけない、&br;鬼ごっこがあるのを、&br;知っていますか?''}
}}
~
----
**概要
ヒューマン株式会社制作のホラーアドベンチャーゲーム『クロックタワー』シリーズの続編で、ナンバリングタイトル3作目。~
シリーズ作品としては前作『[[ゴーストヘッド>クロックタワー ゴーストヘッド]]』から4年ぶり、ナンバリングタイトルとしては『2』以来、6年ぶりの新作となる。~
倒産後、シリーズの版権を引き継いだサンソフトとカプコンの共同開発によって制作された作品で、カプコンとフラグシップが主導となって開発した。

「殺人鬼から逃げつつ謎を解いて脱出する」という従来のコンセプトを持ちつつ、従来作とは大きく異なるゲーム性を取り込んでおり、ストーリー、演出面においても従来のシリーズの作風からかなり変化している。

イベントCGムービーの監督に『仁義なき戦い』や『バトル・ロワイアル』で有名な映画監督・深作欣二氏を起用しており、セールスポイントとして大きく宣伝されていた。~
深作氏は本作発売翌月の2003年1月に逝去したため、これが遺作となった((氏が最後に携わった作品は『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』だがクランクインから間もなく容体が悪化し、復帰する事なく亡くなったため、完成まで関わった作品としては本作が最後となる。))。

----
**ストーリー
>親元から離れ実家から遠く離れた寄宿学校に通う14歳の少女アリッサ・ハミルトンのもとに、母からの手紙が届く。~
久しぶりの連絡となる母からの手紙に心躍らせるアリッサだったが、その内容はあまりにも不可解だった。~
アリッサに身の危険が迫っていること、そして15歳の誕生日が過ぎるまで隠れているようにと諭すその内容を読んで不安に駆られたアリッサは、言いつけを破って実家の下宿館に帰ってしまう。そしてそこにいた謎の老人との出会いをきっかけに恐ろしい怪異に巻き込まれていく。
>
>その中で、自分が魔性の力を与えられたことで不死身の殺人鬼と化した人間「魔のモノ」と戦う力を持つ一族、「ルーダーの家系」の末裔である事を知ったアリッサは、魔のモノの王となるため自身の命を狙う老人と、その配下の魔のモノ達との戦いへと身を投じる事となる。

----
**ゲームシステム
概要の通り、本作では「敵に追われる恐怖」という従来と共通のコンセプトを持ちつつ、大幅なゲーム性の改編が行われている。~
ここでは、従来作からの変化点を中心に述べる。

&bold(){アクションゲーム的な構成のゲーム性}
-画面内のクリックでキャラクターを間接的に操作する従来のシステムを廃止。~
自キャラを直接操作し、調査や会話をボタンで行うという、『[[バイオハザード]]』タイプのアクションアドベンチャーのスタイルになった。
--画面内におかれているアイテムが光る、攻略のヒントとなる情報やゲーム内容を深めるコラム的な内容が書かれたファイルが存在するなどのアクションアドベンチャーらしい仕様を取り入れている。
--この仕様変更のため、セーブはセーブポイントでしか行えない。
--カメラ形式は固定画面切り替え方式ではなく、キャラクターの動きに合わせてカメラアングルがリアルタイムで変化していくタイプになっている。この点は『2』に近い。
---一方、自動での視点切り替えも行われる。2つのカメラ形式を組み合わせた形と言える。
--従来のような「調べると発動する即死トラップ」は存在しないが、終盤には当たると即死する斧のトラップを避けて進むシーンがある。
---また、落下判定のある場所を落ちないように進むシーンも一部存在する。落下すると死亡、或いは水に流れて戻される。
--各シナリオの最後には主人公が特殊能力に覚醒し、追跡者とのアクション戦闘が展開される。

&bold(){謎解きのシステム}
-操作方法
--『バイオハザード』などのようなラジコン方式ではなく、左スティックを倒すとその方向に走る。十字キーは使用できない。
--歩く…□ボタンを押しながらスティックを倒すとゆっくり歩く。空き缶などを蹴って音を立てる事なく進める。
--しゃがみ…×ボタンを押すとしゃがみこみ、そのまま移動するとハイハイをする。狭い場所を潜り抜ける際に使用する。
--聖水…△ボタンを押すと聖水を撒く。

-幽霊の「癒し」
--主に死体の近くに幽霊が浮遊している。近付くと襲って来て、掴まれるとパニックメーター(後述)が上昇する。幽霊たちはみな未練を残して死んでおり、彼らにとっての思い出の品を探して返すと昇天し、常用アイテム或いは矢が貰える。
--一部キーアイテムをもらえる場合もあり、ストーリー進行上で癒しが必要な場面もある。

&bold(){敵撃退・回避関連}
-逃走状態
--追跡者が出現し追われている状態。従来と同様に、敵が出現すると同時に専用のBGMが鳴り響き、撃退・回避するまで解除されない。
--追跡者は主人公を見失うと周辺を探し始める。この状態で一定時間見つからずにやり過ごせば追跡者はテレポートで姿を消し、逃走状態は解除される。
--前作と異なり、振り切って逃げ切る、死角に潜んで敵が消えるのを待つ、といった形で回避することも可能。

-敵出現の条件
--「特定のイベント」「時間経過」に加え「使い魔に触れる」「マップ上のオブジェを蹴って音を出してしまう」という条件が加わっている。
---使い魔とは青白い光を発する蝶のような生命体。触れると追跡者を呼ばれる他、数秒間身動きが出来なくなる。聖水で追い払える。
--本作では「トラップによる出現」はない。

-新システム「パニックメーター」
--主人公であるアリッサがどれだけ恐怖感を抱いているかを示すメーター。ボタン連打で危機回避の成功の判定を行う「RSIシステム」の廃止に伴い、新たに導入された。
--画面左上のメーターが追跡者や幽霊からの攻撃を受ける、追跡中に隠れている場所付近に接近されるといった条件により上昇する。
追跡者に接近された時も徐々に上昇していき、近くで攻撃を空振りされただけでも上昇の原因になる。また、威嚇行動をとられただけでも上昇する。~
ゲージがMAXになると主人公がパニック状態に陥る。
---パニック状態中は操作性に著しい制限が付き、「足がもつれて思うようにコントロールできなくなる」「過呼吸に陥って勝手に立ち止まる」「視界がぼやけて周囲が見え難くなる」等のデメリットが付く。パニック状態中に敵の攻撃を食らうことで死亡、ゲームオーバーとなる。

-回避ポイント
--敵を撃退するためのアイテム。基本的に1回限りの使い捨て。前作のように失敗して追跡が継続、といったことはない。
---第二章にある消火器は目眩ましになるだけで撃退は出来ない。

-隠れポイント
--文字通り、隠れてやり過ごせる場所である。隠れると主観視点に切り替わり、視点操作が出来る。
---ただし、隠れポイントに関しては入ってすぐに完全回避が確定するわけではなく、隠れた場所付近に敵が接近するとパニックメーターが徐々に上昇し満タンになると主人公が恐怖のあまり飛び出してしまう。また敵がすぐ近くにいる状態で隠れるとすぐにパニックメーターがMAXになってしまう。何回でも使用できるが、パニックメーターの度合いをよく見て使用する事が重要。~
但し、2のように見つかる確率の変動という要素は無く、基本的に隠れる瞬間を見られなければ見つからない。
--パニックメーターの状況に関係なく追跡者を何度でもやり過ごせるポイントも存在する。

-聖水
--ストーリー序盤で「聖水のビン」入手後に使える。~
聖水を振りまき、結界の封印をとく、使い魔を払う、追跡者や幽霊を怯ませるといった効果がある。
--使用回数は最初は3回で、ボスを倒してアイテム「ブローチの欠片」を手に入れるごとに増える。最大は5回。
---水の入った壺、セーブポイントであるライオン像の水汲み場で補充できる。
--また、ブローチの欠片でパワーアップする度にひるませた際の硬直時間とエフェクトが変化する。

&bold(){追跡者との戦闘}
-主人公であるアリッサは実はただの少女ではなく、魔のモノと戦う戦士「ルーダー」の力を受け継いでいる。本作では各シナリオ最後ではルーダーの力の覚醒により、それまで逃げることしか出来なかったアリッサが超常的な戦闘能力を獲得し、追跡者との戦闘が展開される。
--追跡者にルーダーの武器である弓矢を打ち込んでダメージを与え、先に相手のゲージを減らせば勝利。このシーンではアリッサ自身のライフゲージも表示され、これが無くなると死亡してゲームオーバーになる。
--矢を構えると画面が主観視点に変化し、矢の先にパワーが溜まっていく。ある程度力を溜めた矢を放つと、光の帯で相手を地面に繋ぎ止め足止めできる。この光の帯を複数の角度から打ち込み相手の動きを完全に封じる、あるいは一定角度から6本ほど打ち込んだ状態で最大溜めの攻撃を放つと、派手な演出と共に特大攻撃が発動。通常よりも大ダメージを与えられる。
---特殊効果を持つ矢は有限でありシナリオ中でマップから手に入る。矢の種類によって攻撃力は異なる。

&bold(){アイテム一覧}
-インビジブル
--一定時間、使い魔・追跡者・幽霊などから発見されなくなり、パニックメーターが増加しなくなる。
--敵の攻撃もキャンセルされるため、やられる間際に使っても効果的。

-思い出の品
--さまよう幽霊を成仏させるために必要不可欠のアイテム。種類は様々。

-結界石
--所持していると、パニック状態の際に追跡者や幽霊から攻撃を受けても、一度だけ無効にして死亡を防ぐ。
---終盤に出現するトラップは当たると一撃で死亡してしまうが、結界石があれば防ぐ事が出来る。

-ラベンダー
--気分を落ち着け、パニックメーターを最低まで下降させる。パニック状態を鎮める事ができる他、あらかじめ使って上昇しかけているゲージを下げることも可能。ただし、即座にパニック状態が解除される訳ではない。

-霊木の矢
--戦闘時のみ使用可能。中間クラスの威力を持つ。

-神木の矢
--戦闘時のみ使用可能。最大の威力を持つ。タメずとも一撃で縛りつけが可能。

-ブローチのかけら
--アリッサが母から託された四葉のクローバーを模したブローチ。バラバラに砕かれてしまっており、ボスを倒すごとに1つ破片が取り戻される。
---取り戻すごとに聖水の使用回数と威力が強化される。

----
**問題点
***ゲーム単体の問題点
&bold(){ゲーム面}~
-敵の出現率がやたら高い割に回避ポイントが少ない。
--上述のように今作は敵の出現条件が多い。特に時間経過による出現頻度が尋常でないほど高く、「撃退して1分経ったか経たないかの内にまた襲ってくる」なんてことも多々。加えて、通過すると強制的に敵が出現するポイントも少なくない。
--それに比べて回避ポイントはゲーム全体を見ても10個程度とかなり少なく、1度使うともう使用不可。結局、ステージに何個もない隠れポイントに一々戻るか、追われながら強引に先に進むしかない。
---回避ポイントのバランスも悪く、配置の仕方も微妙。広大な第一章や第四章にはろくに無いのに、狭い第二章には何故かやたら配置されている。~
第一章は数自体は3個で割とあるようにも見えるが、1つは強制イベント、もう1つは縛りプレイでもない限り必ず使うものであり、任意で使えるものは実質1つしか無い。第三章に至っては正真正銘1つしか無い。
---そして実は隠れポイントはそれに輪を掛けて少なく、1マップに1つが良い所。第二章とラストダンジョンには''全く無い。''結局、頼りになるのは''追跡者が仕様上立ち入り出来ない場所''という、何ともリアリティの無い事になっている。
--その上、追跡者は旧作のシザーマンと真逆に走って追いかけて来るため、追跡速度がかなり速い。~
にも拘らず、今作の主人公は移動速度がかなり遅いので、懸命に逃げているつもりでも追い付かれやすい。後半の素早い敵に至っては貼り付かれっ放しも珍しくない。
--回避ポイント以外でも、発見される前や聖水で怯んでいる隙、インビジブルが効いている間などに物陰に潜んで消えるのを待つ…と言う隠れ方も出来なくもないが、かなり難しい。
--「音を立てる」「使い魔に触れる」など出現条件にバリエーションがつけられているが、そんな事せずともすぐに再出現するのであまり意味がない。~
物音を立てるオブジェクトに至っては中盤を過ぎるとほとんど登場しなくなり、存在意義が疑われる。
--後述の2周目では追跡者が強化され、移動速度が更に上がるのに加えて被弾によるパニックメーターの上昇度まで増えるため、わずかな被弾が命取りになる。ただでさえ追跡者の出現率が高いのに、事故を防ぐため聖水で頻繁に足止めしなければならず、非常に面倒。

-追跡者との対決が単調。
--「力を溜めた矢を打ち込んで相手の動きを停止させ、特大攻撃を叩き込む」の繰り返しで、ステージを進むに従って敵の耐久力も上がるため作業感を感じやすい。
--また、回避アクションはその場にしゃがみ込むだけで、側転やバックステップ、クイックターンなどの特殊アクションがないため、敵の攻撃モーションを見てから左右に走り回って攻撃を避け、大振りの隙をついて距離を離すというワンパターンな戦い方になりがち。~
また、しゃがむ以外の回避用アクションがない分スピーディな立ち回りができないため、ただでさえ移動速度の遅いキャラの動きの緩慢さが際立っている。
--特大攻撃は相手の体力が残っている間なら何発でも発動可能だが、演出が大仰なために戦闘に戻るまで時間がかかる上にスキップもできないため、発動の度にテンポが削がれる。もっとも、ラスボス以外は1発当てるだけで体力の大半を削れるので2発目を撃つ前に決着がつく場合も多いが。
--ほとんどの敵は倒れた主人公を追撃する追い討ち攻撃を持っているが、本作は倒れても自動で立ち上がる仕様且つ、敵は攻撃ヒット後は''決めポーズを取る''ことが多いので、大抵は追撃が間に合わず空振りで終わる。喰らう方が珍しい。
---結果、こちらを追い詰めるはずの攻撃がほぼ隙にしかなっていないという妙な事に。ボタン連打やレバガチャですぐに起き上がらないと追撃される、というような緊張感は無い((海外版のプレイ動画ではすぐに起き上がれず喰らってしまう場面も見受けられる。仕様を変更したのだろうか。))。
--近接状態からは掴み攻撃を受ける事もあるが、これを使用するのは最初のハンマー男とラスボスだけという寂しいもの。
--ラスボスはそれまでのようなパターンが通用しない強敵ではあるが…。
#region(ネタバレ)
--「こちらのタメ撃ちと同じく鎖に繋げる光弾」「動きを止める血溜まり」といったトリッキーな攻撃を放ってくるが、前者は短いモーションで連発してくるのでタメ撃ちをする隙が無い。後者は発動したらすぐにその場を離れないと捕まってしまう上、攻撃を当てて止めることもできない。
---このようにラスボス戦では相手を鎖に繋げる事自体が難しく、攻撃を避けながらあまり溜められていない矢をちまちま当てて削っていくしかない。
---また、光弾で鎖を3本繋げられると特大攻撃によって問答無用で即死させられる。この演出もやはり大仰で長く、ストレス要因になる。
--戦闘後半になると繋がった鎖を断ち切る行動も取る((この時にかなり隙が生じるので、断ち切る→タメ撃ちで鎖に繋げる、でハメられないこともない。結局、作業じみているが。))ので、特殊矢の連発でもしなければ特大攻撃は不可能に近い。
---しかも体力が直近のボスの3倍近くあるため、無駄に時間が掛かる。更に首絞めを喰らうとこちらの体力を吸収して回復されてしまう。挙句、即死攻撃まであるので長い戦闘で神経を擦り減らしながら戦わなければならない。
--主人公も直前のイベントでパワーアップしているはずなのだが、システム上は体力が増えているだけ。
#endregion

-攻撃時の不自由な照準
--弓矢を構えた際は自動的に敵の真正面に狙いをつける自動照準機能が働くようになっているが、そのまま正面に照準が固定され狙いを微調整することができない。そのためちょっと横に移動されるだけで当たらなくなってしまう。~
相手の方が足が速いため追い付かれ易い上、構えを解除して通常移動に戻るまでの間にも若干の硬直があるため、体勢を立て直して弓矢を構え直すのも一苦労である。~
さらには放った攻撃が敵の遠距離攻撃と相殺されて無駄になるということもよく起きるため、戦闘が長引きやすい。
--敵は近接攻撃メインなので鎖に繋げてからならハメることも難しくないのだが、ほぼ隙無しで遠距離攻撃を連発できる硫酸男は別。鎖に繋がっていようが平然と硫酸を飛ばしてくるのでタメ撃ちがし辛く、第二章でいきなり苦戦しがちである。
---攻撃を跳ね返して隙を作れる斧男、必殺技のタメが長いシザーマンなど、以降は寧ろ対処が楽。
--また、シザーウーマン戦のみ、体力が全ボス中最低である代わりに「自動照準が無効」というハンデが課せられるため、自分で敵を正面に捉えてから弓を構えなくてはならない。加えて「主人公よりも足が速い」「ワープを頻繁に行う」「光の帯で動きを封じることができない(特大攻撃も狙えない)」~
「自分を中心に戦闘エリアの6割ほどをカバーする広範囲の竜巻攻撃を放つ」と、こちらの制約が理不尽に思えるほど性能が高く非常に倒し難い。
---竜巻攻撃の最中は長時間動きを止めて隙だらけになるため、立ち回りのコツさえつかめば体力の低さもあって倒すこと自体はそう難しくはない。~
しかし、攻撃中は竜巻のエフェクトで視界が遮られて狙い辛くなる上、ある程度体力を減らしてからでないと使ってこないので、まずそこまでもっていくのが一苦労である。

-逃走システムの粗
--本作ではパニック状態に陥った際に攻撃を受けることで死亡となるが、逆を言えば「''パニック状態でさえなければ、どんなに敵の攻撃を食らっても死なない''」。敵の武器は巨大な鈍器・硫酸・刃物など、一撃で致命傷を狙えるものばかりである。
---しかも「バシ!」「ザシュ!」などと武器に応じたダメージ音がちゃんとするので、紙一重で避けていると解釈することすら不可能である。
---その一方で、パニック状態だとどんな攻撃でも一撃で死んでしまう。散々凶器攻撃に耐えておきながら、いざパニックになれば追い打ちの踏みつけですらあっけなく即死する。
--また、逃走状態でも謎解きができる上、その間は追跡者の動きが止まる。鉄線をペンチで切ったり、レンチを回したり、ゴム手袋を付けて配線を繋ぎ合わせたりなど、どんなに手間の掛かる作業だろうが終わるまで律儀に待ってくれる。
---第一章の細い板の上を渡る箇所では、さすがに逃走中だと「今渡るのは危険」と出て通行できない。~
しかし以降の「壁伝いに僅かな足場を進む」シーンでは逃走中だろうが平然と進める。それもそのはず、当該箇所に進むと''追跡者が姿を消す''からである。渡っている最中に襲われることなど無いし、第一章の板と違って操作ミスで落ちる事も無い。危険なはずの場所が完全な安全地帯にしかなっていない。
--ゲーム的な都合ではあろうが、いずれも「追いつかれる=死あるのみ」という設定のホラーゲームとしては明らかに不自然である。~
特に後者の場合、旧作では「敵出現時にできることは逃げることのみ」とハッキリ区別していた。
--パニックメーターが上がるケースと影響がないケースの区別が謎。~
追跡者に迫られたり攻撃されたりした時に上がるのは当然として、たかだか15歳の少女であれば見ただけでパニックに陥っても当然のものがそこら中にあるのだが…。
---まず実家の中で起こる出来事の中だけでも、~
「暖炉の奥の隠し部屋で見つけた石像が突然壊れて血の涙を流す」→一度驚きはするがすぐに再度近寄り聖水のビンを発見する。しかしパニックメータが上がる。~
「バスタブで相当に腐敗が進んだ死体を発見する」→冷静な状況分析とも取れる感想を述べるだけ。パニックメーターは上がらない。
//バスタブの死体では悲鳴は上げない。第二章で浮かんでくる水死体と間違えた?
---追跡者のいる世界にも複数の死体が転がっているが、発見しても調べても基本的にパニックメーターは上がらない。イベントがあるごく一部の死体を除いて悲鳴すら上げない((コンサートホールのキャットウォークから死体が落ちてきた時は、僅かに上昇するが、死体そのものには全然恐怖していない。))。
果ては「''焼けた頭蓋骨''」というかなりエグいものをアイテムとして入手する事があるが、こちらは取得時のリアクションはもちろんのこと、白骨死体を調べた時のようなセリフによる状況説明すら入らない。アイテム欄のコメントで「……」と沈黙しているためショックを受けている様子がわかる((頭蓋骨の入っていたオーブンを再度調べると「もう開けたくない…」と表示され、やはりショックを受けている様子を見せる。))が、リアクションやセリフがないと説得力がない。
---パニックメーターが上がるイベントでも、メーターは上がっても主人公自身は無反応というケースばかり。繰り返しになるが、怖がっている当人に反応が無いのでは説得力がない。
---このように鈍感極まりないが、殺人鬼や幽霊に襲われた時は上述のように例外なくパニックゲージの上昇を招く。~
殺人鬼と戦う使命を背負っている事を自覚し、幾度かの戦いを経て精神的に成長した後は多少の死体や幽霊では驚かなくなる…というのなら理解できるが、使命について知る前でも、殺人鬼を何度か倒した後でも、一貫して変わらず「死体は平気だが幽霊には常にビビる」のは変わらない。
--パニック状態をプレイヤーの操作性の制限によって表現するという発想自体は新しい試みではあるが、プレイヤーからすれば恐怖よりも思い通りに動かせない煩わしさの方が感じられ易い。特に追跡者の出現頻度が多いことや、武器を近くで空振りされただけでもメーターが溜るという仕様上パニック状態に陥りやすいため、ストレスに感じやすいのは否めないところである。
---メーターというゲーム然としたインターフェイスの表示もリアリティの観点からするといまいちそぐわない。

-動きの緩慢さに加え、主人公のモーションも堅い
--スティックを倒した方向にそのまま進むゲームなのだが、真後ろを向く時に限り180°ターンの動作が入る。走っている最中だとクイックターンになるものの、静止中だとかなりゆっくり振り向く上に動作完了までその場から動けないので、逃走中や戦闘中に暴発して余計な隙を生んでしまう事も。
--また、バイオハザード風のカメラワークが都度変わる仕様とスティック移動は相性が良いとは言い難く、視点が変わった途端に主人公の進行方向がおかしくなる事は日常茶飯事で逃走中は特に痛手になりやすい。スティックを同じ方向に倒し続けることで、視点が変わっても真っ直ぐ走らせられるが、それだけではカバーしきれるものではない。
---ちなみに、翌年発売の『[[バイオハザード アウトブレイク]]』は本作同様のスティック操作と過去のバイオ同様の十字キーラジコン操作の使い分けが可能だった。本作でも導入されていれば良かったのだが。
--通常、敵の攻撃を受けると「敵の方を向いてよろめく」→「尻餅をつく」→「立ち上がる」の動作を取るのだが、尻餅をついた後に追い打ちを受けるとまた「敵の方を向いてよろめく」の動作から始まる。
---一瞬で立ち上がる不自然さも然ることながら、上述した通り敵が接近するだけでもパニックメーターは上昇するため、余計な動作の所ためで「敵が目の前にいる時間」が長くなってしまい、一回の被弾で一気にパニックメーターが上がる事もある。
--逃走中に攻撃を受ければ前述した尻餅動作、パニック時や戦闘中では吹っ飛ぶモーションで倒れるのだが、どんな攻撃でもその動作しか取らないため、攻撃によっては不自然極まりない動きになる。ハンマーを振り下ろされても、硫酸を吹きかけられても、斧で斬られても喰らい方は同じ。
---また、前後のどちらに吹っ飛んでも必ず仰向けに倒れるのも不自然さがある。前に吹っ飛んだ場合は受け身を取るような動きで仰向けになる。そんな余裕など無いであろう死亡時も同様。
---一方、首絞め攻撃や終盤のトラップで死亡した場合はしっかり前に崩れ落ちるモーションを取り、階段で攻撃を喰らった時は尻餅がつけないためか自然に仰け反るモーションに変わる。こう言ったモーションを他にも併用するだけでもある程度は不自然さも緩和出来たと思われるのだが。~
また、幽霊に殺された時は凝った死亡モーションが入るので、モーション関連に拘りが無かった訳ではない事自体は窺えるが、通常時の不自然さはやはり目立つ。

-エンディングが1種類しかない。
--複雑なフラグ立てを試行錯誤し、「大量のBADエンドを回避してベストエンドを目指す」「エンディングのコンプリートを目指す」と言ったスタイルが従来作の作風であったが、本作は一本道であるため、そのどちらの楽しみもない。
--更に肝心のエンディングがあっさりとし過ぎており、スタッフロール後のエピローグなども用意されていないため、消化不良なまま終わってしまう。
---従来シリーズでは細かいところで説明不足な点が多いものであったが、きちんと結末はわかりやすいものになっていた。

&bold{演出面}~
-''キャラクターのアクションや声の演技が大仰すぎる''
--異様なまでのオーバーアクションとともに淀みなく早口で台詞をまくし立てたりと、喋り方が舞台劇やミュージカルのような感じになっている。敵味方問わず大げさな動きの演技が続いていくため、日本語ボイスも相まって興ざめしやすい。
---この点は「CGには表情がなく人間が持つ細かいしぐさも消えうせてしまう」という理由で深作監督が意図的に指示をした物であるが、舞台劇のように常に遠景視点ではなく、実写映画さながらの視点の変化が起こる映像表現の中では明らかに浮いていると言わざるを得ない。そもそも本作のムービーは十分キャラの表情を表現出来ているのだが。
--普段のアリッサは非力な少女であり、動きも相応に遅い。しかし、イベントシーンでは「敵の不意打ち((あるムービーでは斧男の薙払いを頭を下げてギリギリ回避するという芸当を二度も続けて披露する。))や酸の噴射を避ける」「空襲による複数回の爆発を紙一重で回避する」「屈強な大男を突き飛ばし、壁にぶつけて行動不能にする」などのスタントプレイを平然とやってのけ、逃げる時もしっかり全力疾走している。
--また、斧男もイベントシーンにて「壁に飛び移り、そのまま地面と平行に立つ」「アリッサを蹴って転ばせ、追撃せずに逆方向の噴水を超高速で駆け上り、月をバックに決めポーズ」などのやたらスタイリッシュなアクションを披露するが、これらのアクションはゲーム中では全く反映されていない。
--犠牲者の霊が昇天していくシーンは天から差し込む光に吸い込まれるようにして霊が天に昇っていくというもの。明らかに舞台装置的なスポットライトの中で、アリッサに礼を言いながら微笑んで宙に浮いて消えていくシーンが非常に臭く、見ているこっちが気恥ずかしくなるほど。昇天する犠牲者に「さようなら~」と手を振るアリッサの姿も臭さを助長する。
--ゲーム中盤にて、戦死したルーダー達の霊が登場するのだが……なんと''各人がスポットライトを浴びながら踊り、ポーズを決め、声を張り上げる。''~
正真正銘のミュージカルを2回も見ることになるため、もはや擁護不能。
--なお、深作監督は主に映画とテレビドラマで活躍した人物であり、手掛けた作品にはヤクザ物やアウトロー物が多い。本作の滑稽なまでに舞台調の演出は氏の作風とはかけ離れているが、おそらくは馴染みのないジャンルであっただろうCGやビデオゲームに対して、何かしらの先入観や偏見があったのかも知れない。

-舞台向けの演技であることを踏まえても、一部キャラクターの声に問題あり
--アリッサは時折ダミ声になったり「ぎゃあああ!」という酷い悲鳴を上げる。斧男は声が甲高く、シザー兄妹はハイテンションでふざけた台詞を言うため恐怖感が削がれやすい。
--そのため、本作の恐怖表現に肯定的なプレイヤーからも「怖いのは硫酸男まで」という意見がちらほら見受けられる。

-まぬけ過ぎる追跡者たち
--追跡者撃退時の演出は豊富だが、~
「''アリッサがぶん投げたバイオリンケースを避けた拍子に、ケースが当たって崩れた荷物の下敷きになりあっけなく気絶するハンマー男''」~
「''アリッサが勢い良く開けたドアにぶつかって気絶する硫酸男''」~
「''ドラム缶に逃げ込む瞬間のアリッサに斧を投げたらオイル缶が倒れ、時間差で引火した炎に包まれて悲鳴と共に仰向けに倒れる斧男''」~
「''背後から襲い掛かったもののあっさりかわされ、アリッサが咄嗟に開けた熱いオーブンに頭から突っ込んで動かなくなるシザーウーマン''」~
「''崩れた廊下に追い詰めて飛び掛かったものの、寸前でアリッサの足場が崩れて空振りし、そのまま勢い余って階下に落下するシザーマン''((この時の「何だコノヤロー!」という叫びも相俟って完全にギャグ。))」~
……など、コント風のまぬけなものばかり。 
--さらに、追い詰められた際にBGMが停止し「ジャン、ジャン、ジャンジャンジャンジャン!」と煽るようなフレーズで盛り上げた直後に上述のまぬけな演出の数々が挿入されるため、もはやただのギャグシーンも同然である。
--前作のシザーマンも演出面においてコミカルな部分がありはした((主人公を追いかけた拍子に高所から落ちる等はあった。))が、そちらはきちんと殺人鬼らしい恐怖を表現してメリハリがついていたからこそ受け入れられていたのであり、本作では演出や演技の冗長さ・大仰さも相まって、ただただまぬけさが際立つばかりである。~
また、上記の例の通り、たまたま偶然に助けられて切り抜けるケースも散見され、余計に追跡者のまぬけさが際立っている。
--その他、斧男は逃走時・戦闘時共に斧投げ攻撃を繰り出して来るのだが、戦闘時はこれにチャージした矢を当ててはじき返すことで反撃に利用できる。さらにはじき返された斧に当たると「''ヘギャグワクオァッ!?''」という情けない悲鳴と共にしばらく動けなくなり盛大に隙を晒すという体たらく。
---設定上では「魔のモノの王からルーダー狩りを任され多くのルーダーを葬った((ゲーム中でも本人が公言している。))実力を持つ幹部格」であり、上述の反撃法も「真正面からの攻撃をガードでシャットアウトされてしまう」ためで、それなりの手強さの表現になってはいるが、さすがに自分の攻撃を反撃に利用されて隙を晒すというのでは情けない。

-意図を理解しかねる演出が多い。
--ラストダンジョン「クロックタワー(時計塔)」が出現するムービーも、「アリッサが突風に巻かれたと思ったら''実家の下宿館が粉々になって地下から巨大な城が出現し、更にアリッサがクルクル回る巨大な時計盤に乗せられて宙を飛行する''」という超展開。陽気なBGMと時計盤の上で楽しそうにアリッサが笑う((最初は怒涛の超展開に驚き、建物の中を飛び回る時計板の上で障害物にぶつからないよう身をすくめているものの、時計板が建物の外に飛び出してぶつかる心配がなくなると、急に立ち上がって笑い出す。神経が図太いのか、緊張感が無いのか…。))という演出も相まって、意味がいまいちよくわからない。
--他にも、犠牲者の霊が泣きながらコンサートホールの血塗れのピアノを弾く((犠牲者であるメイの境遇を考えれば理解できないこともない演出だが、そもそもメイが殺されたのは自宅であり、ピアノに返り血が付いたりもしていない。))、部屋に入ってきたアリッサを凄まじいポルターガイスト現象(サイコキネシス?)で弾き出す犠牲者の霊など、特に説明もなく急に大仰な演出が入るシーンが散見される。しかしいずれもその場限りの賑やかしにしかなっていないのが実状であり、上記のオーバーアクションも併せて意味がよく分からない勢いだけの珍ムービーの数々が出来上がってしまっている。
--第二章は日中の下宿館から始まるのだが、過去から一旦戻ってくると夜になっており、不気味なBGMも流れるようになっている。が、''それだけ''であり、[[自宅に怪奇現象が発生する>SILENT HILL 4: THE ROOM]]ようなホラー展開に進む訳でもない。ストーリー的に夜にする必然性は無く、後述するデニス関連のツッコミ所にもなっている。%%第三章から下宿館で起きる超展開は別の意味でホラーだが。%%

-一部のシーンではBGMの使い方もおかしい。
--例えばゲーム冒頭の「真っ暗な家の中で母を探していると、食堂の扉がひとりでに開く」というシーンにて、''扉を映す前からデンデンデン!というデカい音が2回鳴り、扉がゆっくり開く最中にシンバルとツリーチャイムが鳴る。''音が派手すぎるので「扉が開いただけ?」と肩透かしを食らってしまうだろう。

-饒舌でよく喋る殺人鬼たち。
--ひたすら寡黙でまともに喋る事のなかった前作のシザーマンや、『ゴーストヘッド』のひたすら狂気的な笑い声をあげ続ける千夏やうわ言の様に呟きながらさまようだけの才堂に比べ、本作の追跡者たちはよく喋る。~
それが恐怖感を煽っているなどと言う事もなくただやかましいだけであり、上述のキャラモーション・声の演技の過剰さも相まって、恐怖よりも煩わしさすら感じられてしまう。

&bold{設定面の粗や矛盾}~
-主人公のアリッサはかなり早いうちから自身の使命を自覚し、戦う決意をする。従って中盤からは追跡者達を「倒すべき敵」と認識し、恐怖を抱くことも少なくなる。
--勇ましい限りだが、このゲームのコンセプトとしては大問題。''パニックホラーなのに序盤で主人公に恐怖を克服させてどうする。''
---硫酸男戦前までなら、犠牲者の霊に悲鳴を上げたり、敵の奇襲や残虐行為を前に泣きそうな顔で腰を抜かすなど、相応の反応は見せていたのだが、斧男の頃になると初登場時のムービーですら「飛んできた斧を寸前で避け、悲鳴も上げず立ち上がる」「凶器を持った怪人を毅然と睨みつけて駆け出す」と言った様子で、もはや殺人鬼を前にした一般人の態度ではない。~
以降も終始そうという訳ではなく、慄く様子を見せる事はあるのだが、凶器攻撃を紙一重で避けたり喉元に刃物を突きつけられて尚も抵抗を試みたりなど、やはりホラーと言うよりアクションか特撮の主人公じみて常人離れしている。
---それでいて、ルーダーの力を発揮できない内は殺人鬼を恐れ逃げ惑ってパニックを起こしまくる。14歳の少女が強大な殺人鬼に襲われたら怖いのは当たり前ではあるが、「特殊能力を駆使して戦う」という戦闘ヒロイン然とした設定との齟齬は否めず、ゲームのコンセプトそのものがどっちつかずになっている。
--また「ルーダーは被害者の遺品を手に入れないと力を発動できない」という設定があるのだが、劇中で2回、自力で力を発動させているシーンがあり矛盾している。「逃げ回ってないでさっさと戦えよ」とツッコみたくなるだろう。
---そもそもの話、斧男とシザー兄妹は数百年以上も前の過去の時代の人間であるため、被害者の遺品を手に入れること自体が無理な話であり、この時点で設定に無理がある。「追い詰められた末に火事場の馬鹿力で力を発動させた」といった補足描写も特にない。
--この設定に則っていた前半においても、遺品入手後も戦闘フィールドとなる場所に行くまでは普通に追われる。硫酸男に至っては遺品入手後にもパニックメーターが激増する奇襲イベントがある。
---一方で、その直後のムービーでは力を発動していないにもかかわらず、直前まで逃げまどっていたのがウソのように、''棚の上から踏み付ける''、''鉄パイプで殴る''と言ったアグレッシブな肉弾戦を繰り広げる。決死の反撃とも捉えられるものの、やはりコンセプトがどっちつかずである。

-わざわざ過去に遡って戦う必然性の薄さ
--前半の追跡者のみ過去の時代にわざわざ遡って戦うことになる。が「魔のモノの配下は不死身」「古代ローマの時代からルーダーと魔のモノの闘争の歴史が続いてきた」「アリッサの母、祖母もルーダーとして戦いを繰り広げてきた」という設定を考慮すれば、~
アリッサが生まれた時代に至るまで魔のモノの悪行が続いていると解釈するのが自然であり、わざわざ過去に飛ぶ必然性がほとんど感じられない。

-アリッサを殺す気満々の追跡者たち
--ラスボスの狙いは「魔のモノと化すための契約の儀式の遂行」で、その条件は「アリッサの15歳の誕生日に心臓を抉り、''生き血''が乾かないうちに啜り取ること」である。~
必然的にラスボス自身の手で儀式を執り行わなくてはいけないため、アリッサは殺さず生け捕りにしなくてはならない。
--しかし、追跡者たちはいずれも残忍な殺人鬼であり、殺意剥き出しで襲い掛かってくるため生け捕りにする気がないとしか思えない((「死ね!」「殺してやる!」だのと平然と言い放ってくる。))。
---事実、パニック状態で彼らの攻撃を喰らったり、ボス戦で体力が尽きると殺されてデッドエンドになる。気絶させられてラスボスに引き渡されゲームオーバー、といった演出はない。
--唯一、シザー兄妹のみ、アリッサの幼馴染であるデニスを人質にして心臓を差し出すよう要求するものの、アリッサの返事を待たずに普通に襲ってくる。~
結局はシザー兄妹も殺る気満々にしか見えず、その後も任務を果たす気があるのか疑わしい支離滅裂な振舞いをする。
---最終的に、2人ともせっかくの人質というアドバンテージを全く活かすことなく、普通に戦いあっさりと討伐されてしまう。~
シザーマンに至っては一度倒れたと見せかけ、油断したアリッサを逆に追い詰める手強さを見せる…と思いきや、デニスの機転でとどめを刺されてしまうという情けない最期である。そもそもルーダーの力でしか倒せない不死身の怪人のはずなのだが。

-ストーリー自体、勢いだけの超展開の連続である。
--アリッサの意思とは関係なく、次々と時間や空間を越えた様々な場所に飛ばされ、その先で出現した追跡者との攻防を繰り広げる…の繰り返しである。~
しかも何故そこに行く必要があるのか、何をさせたいのか、という説明が殆ど無いため、上述した演出の無駄な大仰さや敵の行動の支離滅裂さも相俟って、プレイヤーはよく分からないままなあなあとステージをクリアしていく事になる。
--第1章でメイ親子の昇天を見送った直後に唐突に気絶して倒れこみ自宅のベッドで目覚める、クロックタワーから投げ落とされたら地下洞窟で目覚める、城のエントランスにいたと思ったらいつの間にか森の中にいた。など、脈絡の無い場面転換(空間転移)が多い。魔法陣でワープする場面もいくつかあるが、母の部屋と硫酸男の時代、病院とラストダンジョンの城と、何故そこが繋がっているのか分からず説明も無いケースばかり。
--道中の謎解きにしても、何故こんな仕掛けがあるのか、何故こんな事をしなければならないのか理解に苦しむものが多い。同社の『バイオハザード』シリーズも似たような特徴はあったが、本作はファンタジーじみた世界観なので余計に意味不明な仕掛けが見受けられる。
---第一章では、仕立て屋で招待状を手に入れるとコンサートホールの扉が開くというファンタジー展開で、それは良いとしてもコンサートホールに行かされる理由は「仕立て屋にある''何故か鉄線で封鎖された扉を開ける道具''を取りに行く」だけである。ホール内には犠牲者であるメイの霊もいるが、遭遇するのはついでのようなもの。~
そして封鎖された部屋で小箱を開けると、メイと父親の記憶が''再生''され、メイの父が戦争で死亡するまで身に付けていた懐中時計が''小箱の中に転送されてくる''というファンタジーぶり。精神世界か何かだろうか?
---第三章後半の霊廟に至っては謎解きと言い、ギミックと言い、最後に手に入るアイテムと言い、もはやRPGのダンジョンのような「ゲーム的」な内容で意味も理由も本当に分からない((例えるなら、ファンタジー作品でよくある「試練を与えてくる遺跡」のようなもの。))。

-数少ない普通のシーンすらムービーとのすり合わせが出来ていない
--第二章冒頭にて、デニスと一緒に下宿館を探索する展開がある。インターバル的なシーンでこのゲームでは珍しく超展開の無い日常部分なのだが、「アリッサは1階、デニスは2階を手分けして調べる」と話したばかりなのに、''2階に行かないとストーリーが進まない。''そもそもこの会話をした祖父の部屋以外に1階で入れる部屋など無いので調べようも無い。
--そして2階に行っても探索しているはずのデニスは影も形も無く、第四章まで''完全に忘れ去られる''。直前のやり取りが「帰っていいと言われたデニスがそれを断って協力を申し出、アリッサも承諾する」というものだったため、話の流れとしても相当おかしい。
---前述の通り過去から戻ってくると夜になるのだが、デニスについての言及は全く無く、アリッサも気に留めない。

-思わせぶりなままで終わる謎
#region(ネタばれ)
-第二章のみ入れるアリッサの実家の浴室にて、バスタブに浸かった白骨死体が見つかる。その後、第三章の斧男との対決直前のムービーシーンにて、アリッサの父フィリップが彼を疎んじる祖父ディック(=後のラスボス)ともみ合った末に殺されてしまい、ディックによってその死を隠蔽されていたという事実が発覚する。
--このことから白骨死体は彼女の父親のものだと思われるのだが、何かしらのイベントが起きるということもなく普通に癒しを行っただけで成仏する((その癒しも「異臭を消すためにラベンダーを使う」だけ。))上、上述のムービーシーンでも特に言及されないため、白骨死体の身元も真相もゲーム中では一切不明のままである。
--しかもこの浴室、第一章の時点では聖水でも解けない強力な封印が施されているのだが、第二章になると普通に解けるようになる。一体これにどのような意味があるのか、中にどんな秘密があるのかと期待して浴室に入っても結果は上記の通りである。物理的な方法でドアが開かないようにするならまだ納得いく範疇だが、わざわざ封印という大仰な細工を施しているだけに思わせぶり感が強い(そもそも誰が封印を施したのかも謎)。
#endregion

''その他''~
-主役のアリッサはイギリス人なのだが、顔の造詣が外国人らしくない。「髪を染めてカラーコンタクトを付けただけの日本人」だと言われることも。
--アリッサの外見のモデルは深作欣二監督の『バトル・ロワイアル』で映画デビューした美波氏で、彼女自身はフランス人とのハーフであるため顔立ちは西洋人らしさがあるのだが、肝心のキャラクターデザインはあまり本人に似ておらず日本人っぽく見えるという意見が多い。
--[[デザイン画>https://clocktower.fandom.com/wiki/Alyssa_Hamilton?file=AlyssaConcept.jpg]]もやはり西洋人らしくは描かれていない。
//--アリッサは設定上はイギリス人なのだが、モデルは深作欣二監督の『バトル・ロワイアル』で映画デビューした女優・美波氏(日本人)である。
//---初期2作の主人公が実在の女優をモデルにしていたのでそれを意識したのかもしれないが、日本人では明らかに場違いだろう。
//美波氏はフランス人とのハーフで、西洋人らしい顔立ちしてます
//キャラデザ自体が西洋人らしくないってのは意見として存在するので表現を変えて復帰。

-ゲームクリア後の特典が少ない。
--コスチュームチェンジ、ムービー、イラスト鑑賞のみ。
--この手のゲームならこんなものという見方も出来なくも無いが、他のカプコンのゲームならもっと頑張っているし、前作『2』でも6種類の特典、『ゴーストヘッド』でも5種類のおまけ要素があったのだからもう少し気前よくして欲しかったところ。
--ちなみに、2周目は追跡者側の凶器とパニックメーターのゲージ上昇率も変化するため、強制的に難易度が上昇した状態でスタートする。~
かと言って隠しイベントや別エンディング等と言った追加要素も無く、高難易度の2周目をクリアしても''ただタイトル画面に戻るだけ''である。~
クリアデータもセーブ出来ないので、3周目は無い。仮に2周目を再びプレイしたかったとしても、1周目のクリアデータが残っていなければまた最初からやり直しである。
---特にコスチュームチェンジは2周目の冒頭でしか出来ないので、衣装を切り替えて遊ぶにはデータ保持が必須。この点も不便である。

***シリーズ作品としての問題点
&bold(){従来作とのコンセプトの乖離}~
-ストーリー面、設定面ともに、従来作の特徴であったホラー的要素が薄い。
--これまでのシリーズでは「なんの特殊能力もない一般人が、密室の中で正体不明の不死身の怪物に襲われる」というホラー映画の王道的なスタイルであったが、本作は「主人公が生まれ持った特殊能力で魔物と戦う」「人を殺人鬼に変える魔の者」「魔の者を退治する宿命を背負ったヒロイン」等、現実離れしたファンタジー寄りな要素が強い。一応、話の中でダン・バロウズやクロックタワーといった従来作の用語も登場するが、過去作とはなんの繋がりもない。
--ルーダーの設定にしても「15,6歳で力が最高になり、それ以降で衰え20歳以降で完全に消失(つまり絶対に少女でなくてはいけない)」という点や、古代ギリシャ人のような衣装で戦うラストバトルなど、「''変身魔法少女''」などと揶揄されたり。

-ホラーというよりもバイオレンス的な面にやや傾いたムービー演出。
--被害者がなす術もなくなぶり殺されてゆく様を克明に描写していくシナリオ前半のムービーシーンの残酷描写に賛否が分かれる。
---特に第2ステージのボス・硫酸男の登場ムービーでの殺害シーンは、年老いた母親とその息子を無理やりドラム缶に詰め込み硫酸を浴びせかけるという非常に残酷なもの。~
ボス自身が「老人の家に言葉巧みに上がりこんで金目の物を奪った後始末に相手を殺害する」という外道設定な上、悲鳴を上げてもがき苦しむ被害者に追い討ちをかけるようなセリフまで言い放つ。こうした描写上、恐怖よりも胸糞の悪さや不快感の方が先に立ち易い。~
ルーダーの設定的に、ある意味打倒ボスのモチベーションを高めているといえなくもないが、「殺人鬼から逃げるホラー」というコンセプトと著しく乖離していると言わざるを得ない。
--そのくせ、いざ追われるパートになると追跡者は間抜けさや滑稽さばかりが目立ち、上述した恐怖感を削ぐシステムや演出の数々も相俟って、殺害シーンで抱いた恐怖すらもあっさり消え失せてしまう。
--そもそもの話、アリッサが事件現場を訪れた時点で既に惨劇は起きた後((第一章では殺害シーン前から仕立て屋は荒れており、壁には夥しい血が付いている。第二章では殺害シーン前に犠牲者の霊と遭遇する。))であり、殺害シーンはあくまでアリッサ(とプレイヤー)に殺害状況を見せつけるための再現映像といった感じである。「お前も同じ目に遭わせてやる」という感じで襲ってくる事から、インパクト重視のための演出なのだろう。~
こうなると尚の事「恐ろしい殺人鬼が人を殺す瞬間を見てしまった」というより「外道が罪の無い人を嬲り殺す様子を見せつけてくる」という感じで、やはり恐怖よりも胸糞悪さや打倒追跡者といった感情の方が強くなってしまう。

&bold{アクションゲーム寄りの構成に変化したこと。}~
-シリーズを象徴するシステムであった''RSIシステム''が廃止されて『バイオハザード』式の操作形態に変化し、面クリア型アクションゲーム的な構成になったことにより、従来作が持っていた「間接的なキャラクターの操作によるもどかしさや焦燥感」といったプレイ感覚がなくなったことが旧作ファンからの評価を下げる大きな要因となった。
--それに伴って主人公が「戦うヒロイン」となったことにより、「殺人鬼から逃げるホラーゲーム」というコンセプトとの齟齬が生じている。
---ボス戦に至っては画面に表示されたライフゲージを削り合うバトルアクションであり、力の発動によって主人公はライフが尽きるまでならいくら凶器攻撃を喰らっても立ち上がり、ダメージによるデメリットも一切無いスーパーヒロインと化す。~
攻撃手段も敵によっては衝撃波や竜巻などのトリッキーな技を繰り出したり、挙句主人公まで必殺技を放ったりと、その光景にはもう「殺人鬼から逃げるホラーゲーム」の面影は無い。

-当時の雑誌やWebサイトでの宣伝でも戦う事について触れているものはほとんどなく、大抵は「逃げる事しか出来ないホラーゲーム」というような宣伝詐欺気味の紹介だった。
--そのため、そう言った紹介だけを見て旧作のようなゲーム内容を期待して手を出すと面食らう事に。また、キャッチコピーの「''子供がやってはいけない鬼ごっこがあるのを、知っていますか?''」も実際の内容とかけ離れている。
--[[公式サイト>https://web.archive.org/web/20131219235749/http://www.capcom.co.jp/ct3/top.html]]にすら「戦って追跡者を倒す」という点は一言も書かれておらず((強いて言えば、当時配布されていたオンラインブックにその事が書かれているのと、PVや公開ムービーで仄めかすシーンが映る程度。))、それどころか「''アリッサは非常にか弱い存在です''。あなたの手で、無事に魔のモノから逃がしてあげてください」などと実際のゲーム内容と反する事まで書かれており、いかにも「逃げる事しか出来ないホラーゲーム」であるかのように紹介していた。
//RuffleでFlashページが見られるようになっていたのでリンク復帰
---各章のストーリー概要を紹介するページもあったが、ここでも悉く戦う事は伏せて「逃げる」ことのみを強調していた。特に第三章の部分は実際の展開は「斧男を倒した後、バロウズ城に転送される」なのだが、このページでは「斧男から逃げ切った末にバロウズ城に辿り着く」としか読み取れない内容になっていた。

-閉鎖空間の中で事件が展開していた旧作と違い、展開に応じてフィールドが屋内・屋外含めて様々に変化するため、閉塞感という恐怖要素が薄い。

&bold{シザーマンの扱い}~
-『2』までのシザーマンとは似ても似つかない完全な別人
--さながら''中国雑技団の芸人''のような出で立ちであり、性格はやたらハイで「アクション!」だの「カモンアリッサ!」だのと言いながら追いかけてくる特撮怪人ぶり。ぱっと見、某シノラーにしか見えない''妹''のシザーウーマンも「殺ったげるー!」だの「チョキチョキ☆」だのキャラ付けが迷走している。
---兄妹コンビでのやりとりは芸人・林家ペー&パー子を彷彿とさせ、もはやギャグの域。
--武器も片刃の双剣を時折交差させて鋏のようなモーションをとってみたりするだけという、徹底してシザーマンのイメージとは程遠いキャラクター像に。もはや狂気的というよりただうるさいだけでホラー性をますます希薄にさせている。
---一応、設定上では「両手それぞれに持ち分けられる特殊な鋏」との事なのだが、パッと見では鋏と判別するのは難しいだろう。
---これまでのキャラクター像を完璧に破壊され、ホラーの欠片もない無茶苦茶な改変が施されて失笑を買うだけのキャラにされているため、ある意味''本作一番の被害者''とも言える。
--彼の最期は拷問器具が突き刺さると言うエグいものなのだが、何故か''傷口から紙吹雪のようなものが噴き出す''という謎の倒れ方をし、妹も''体が紙吹雪になって霧散する''という消え方をする。前ステージまでの追跡者はこのような倒され方はしていないため、意図がよくわからない。そもそもルーダーの力でしか(ry
---その後も兄妹の霊が振り子に乗ってはしゃいでそのまま消滅するという、最後まで何を狙っているのか判らないままで終わる。残虐な幼児性というイメージを狙ってのことなのだろうが、支離滅裂すぎてそれすらも伝わってこない。
--2周目ではシザーマンが''日本刀''、シザーウーマンが''レイピア''を鋏として使う。1周目では設定上は辛うじて鋏の体裁を維持していたが、こちらではおかしな衣装と相まって、もはや誰なのか分からない。
---他にもハンマー男が''モーニングスター''、斧男が二丁の''鎌''に変わるのだが、敵キャラのアイデンティティに関わる部分を変えてどうする。おかげで、通常ボスでアイデンティティが保たれているのは手元の噴射機がスプレー缶に変わった硫酸男くらいである。

***その他
-特撮ヒーローの怪人を思わせる様な風貌の追跡者。
--シナリオ1、2のハンマー男と硫酸男はいかにもホラー映画の殺人鬼らしい現実感のある風貌をキープしているが、斧男とシザー兄妹は明らかにデザインが浮いている。
--ラスボスも「大剣を持った中世の貴族が紫色の光弾を多用する」という妙なデザイン((2周目だと大剣のデザインまで特撮チックに変わる。))。これに対し、アリッサが女神のような白い布服で戦うため、本当にホラーゲームなのか疑ってしまう。
--キャラデザインを担当しているのは『仮面ライダーZO』『人造人間ハカイダー』『牙狼-GARO-』等の特撮アクション作品で有名な雨宮慶太氏。確かにこれらの作品で雨宮氏のデザインは高く評価されているが、明らかにクロックタワーの雰囲気とマッチしておらず、多くのファンが「人選ミスじゃないのか?」と首をかしげた。
---余談だが雨宮氏は、本作より前に発売された同メーカーのゲーム『[[鬼武者2]]』でもキャラクターデザインを担当していたので「人選が面倒だから引き続き担当してもらったのでは?」という疑念もある。
---本作のシナリオライター・杉村升氏を始め、本作の開発元の一つであるフラグシップの設立メンバーには東映特撮スタッフが多く参加している((同じく脚本家の上原正三氏・高久進氏・宮下隼一氏の3名、演出家の三ツ村鐵治氏、本作の美術担当でイラストレーターの野口竜氏など。))こともあり、雨宮氏の起用はその縁からと考えられなくもない。ちなみに杉村氏は前述の『仮面ライダーZO』のシナリオライターでもある。
--なお、魔の配下のCVは殆どが''特撮の俳優''を起用している。しかも、『スーパー戦隊シリーズ』で主役級キャラのスーツアクターを勤めたことがあるような、スタントもできるバリバリのアクション俳優ばかり。スタッフは特撮になにか拘りでもあったのだろうか?
--その中でも斧男は、[[あの伝説のクソゲー>デスクリムゾン]]の主人公を髣髴とさせるほど異常に甲高い声であり、完全にミスマッチである。
---フォローしておくと、斧男を演じた岡本美登氏はスーパー戦隊シリーズで複数の敵幹部役を担当し、アフレコ経験も数多い。また、地声は決して甲高いわけではなく、斧男の声・演技がかなり作り込まれており相応に質が高いことは聞けばわかるレベルである。問題は演技指導のミス、さらにドラマとゲームのアフレコ形式の違いに起因するものと考えられる。
---なお魔の配下に限らず、本作のCVは皆、声の仕事を本業としない俳優である((アリッサ役の藤村ちか(現・藤村知可)氏は数年後から声優活動もしている。また、デニス役の程島鎮磨(現・程嶋しづマ)氏は現在では『ファイナルファンタジーIV』のセシル役としても知られる。))。
--纏めると、シナリオ・キャラクターデザイン・美術・声優の一部に共通する代表作が『仮面ライダーBLACK』とその続編『仮面ライダーBLACK RX』と言えばわかりやすいだろうか?
---よほどこのスタッフに自信があったのか、説明書24ページ中16ページをスタッフ紹介とインタビューに当てており、ゲームの説明は残りの8ページしかない。また、予約特典も撮影のメイキングDVDだった。
--ラストバトル前の「仲間が身を犠牲にして手渡したアイテムでパワーアップ」エンディングの「追い詰められた後、起死回生的に更にパワーアップして反撃し敵を打倒」という流れもいかにも特撮っぽい感じである

-説明書には実際の猟奇殺人事件の犯人達をモデルにしていると書かれている。
--しかし、実際にモデルにしているのは第2章の硫酸男だけと思われる。他の殺人鬼たちの名前は少なくともGoogleで検索をかけても本ゲームの話題しか出てこない。
---硫酸男の本名はジョン・ヘイグ。かつてイギリスに実在した殺人鬼ジョン・ジョージ・ヘイグがモデルとなっている。被害者の殺害シーンや戦闘パートでは直接硫酸を浴びせかけてくるが、公式のキャラ紹介やゲーム中で手に入る手記では元ネタ通り、犯行後に被害者の遺体を硫酸で溶かしていたという記述がある、
//---ただし、現実のジョン・ヘイグの場合、殺害方法は銃を使った''射殺''であり、硫酸は証拠隠滅に死体を始末するための手段であった。~
この辺りはゲーム化する上でのアレンジだろうが、風貌のデザインはモデルとなった本人が逮捕された後に新聞に掲載された[[犯行現場の再現図に描かれた犯人の姿>https://www.madisons.jp/murder/images2/haigh.gif]]と似ており、デザイン面でも一応モデルにしている模様。
//公式のキャラ紹介やゲーム中に手に入る手記では元ネタ通りに「証拠隠滅のために殺害後に硫酸で遺体を溶かしていた」という記述がある。

''台詞が日本語音声(のみ)''~
-イギリスが舞台の物語だがキャラのCVを担当しているのは全員日本人であり、登場人物の台詞は全て日本語。英語音声は無い。英語で作った作品を吹き替えている訳ではなく、最初から日本語音声作品として作られている。
--『[[メタルギアソリッド]]』など日本のゲームなら、海外が舞台でも最初から日本語音声が前提となっていることも珍しいことではないし、海外ゲームや洋画作品を日本語吹き替えにすることは極普通に行われていることであるため、その手の作品だと思って見れば見れないこともないのだが、本作は美麗なグラフィックでイギリスの町並みをリアルに表現しているにもかかわらず、主人公の容姿の造形が日本人なので違和感が強い。
--更に、本作は聞き取り難い台詞や、上記の通り早口でまくし立てる部分が少なく無いにも関らず、ムービーに字幕が無い。
---翌年に発売された海外版は字幕がきちんと用意されている。

----
**評価点
-グラフィックは綺麗。演出はともかくムービーの出来自体は良く、特に一部シーンのプリレンダムービーの美麗さは抜きん出ている。
--その分、残酷描写の演出も生々しさを増している。
--ただ、主人公のアリッサはムービーに比べるとプレイヤー操作時のポリゴンは人形のようでやや作りが粗い。当時としては出来が悪い訳ではないのだが、ムービーが良いだけに差が目立っているとも言える。

-舞台となったイギリスの首都ロンドンは中々高いレベルで再現されている。
--特に、序盤のステージである40年代のロンドンは暗い街並みや降りしきる雪などで、いかにも殺人鬼が現れそうな雰囲気が出ている。この点はよく研究していたのだろう。

-新しい恐怖演出のシステムを構築した点。
--粗は多くとも従来とはまた違った恐怖感の方向性を開拓しており、旧作未経験のプレイヤーからはこのプレイヤーが直接追われる演出が「純粋に怖い」という意見もある。
--後に本作のスタッフが開発した『[[DEMENTO]]』では本作のパニックメーターシステムを発展・改良したシステムが用いられており、その結果「追われる恐怖」を見事に表現した良作ホラーゲームとして好評を得ている。
---本作では多すぎる粗によって成功とは言い難い出来栄えに終わってしまっただけで、システム自体はそこまで悪いものではなかったといえるだろう。

-基本システムの刷新については以下の要因も考えられるため一概に不正解だったとは言い切れない面もある
--旧作のマップ描写を見ればわかる通り、ポイントクリック形式のADVは、リアルな3D空間描写との相性がよくない。
---2Dグラフィックであった初代は建物内の様子を断面図のように真横から見た視点で固定されており奥行の概念は存在しない。~
3D描写であった『2』に関しても初代のマップの描き方を忠実に3D化した感じで、カメラが常に外側から内側に向かって主人公とその周囲を客観視点で映し出すようになっている。~
『2』のマップ描写自体も箱庭的表現で描かれており、規模の大きい建物であってもこじんまりとしたスケールに収まっている。~
だからこそプレイヤーの視点が細かいところに行き届き易く、キャラクターの移動も比較的させやすいのである。
---空間の全てをフルスケールで描く場合、調査システムを含めて忠実に旧作を再現しようとすると、周囲の状況が把握しづらい、移動させ辛い等の問題が生じてしまう。
--また、クリックポイント形式のADV自体が日本のゲームシーンではマイナーなジャンルであり、旧作の発売から既に年月が経っていたことも要因として考えられる。
--新しい恐怖表現をシステムとして構築するという試みも含め、純粋なゲーム制作面における判断としては英断だったと言える。
---問題だったのは著名なタイトルの正統続編を謳ったタイトルでやってしまったこと、肝心の内容が旧作からかけ離れていたことに尽きるだろう。


-マップ移動はほぼシームレス。
--画面暗転はエリア間の移動時のみで、各エリア内では部屋間でもロード無しで即座に移動が出来る。
--エリア間の移動には暗転が入るが、こちらもかなり素早く切り替わる。主人公の緩慢さを別にすれば移動自体は快適。

----
**総評
//新規プレイヤーの全てが肯定的というわけではなく、これはこれで好きという旧作ファンの存在も皆無ではないので表現を若干手直し.
設定面、システム面双方で、従来シリーズから大きな変貌を遂げた本作であるが、旧作そのものが「''ホラー映画の視聴者視点で追われるヒロインを導き助ける''」という独特な視点でゲーム性を構築していたのに対し、本作は文字通り「''プレイヤー自身が追われる恐怖を体感すること''」に主眼が置かれている。~

バイオハザードタイプのアクションアドベンチャーとして見れば、粗は多けれど根本的な面で破綻してはおらず、クソゲーと言うほどプレイに堪えない訳ではない。旧シリーズ未経験の新規プレイヤーの意見や感想の中には「普通に遊べる」「直接追われる感覚が純粋に怖い」との肯定的な声も多くあり、「これはこれで好き」という旧作プレイヤーの声も皆無ではない。

しかし、旧作における「現実世界を舞台に非力な少女が怪物に襲われる」という舞台立てから大きく逸脱した世界観やキャラクターの設定によって多くの旧作ファンから失望と反感を買ってしまったことは、シリーズものとしてはやはり致命的と言わざるを得ない。~
演出面においてもミュージカル風のくどくて小恥ずかしい演出やモーションのおかしさ、敵キャラクターのデザインや声のミスマッチ感など、多くの要素がホラーゲームとして悉く噛み合っておらず、珍妙な出来栄えになってしまったのは否めない。

『クロックタワー』シリーズの1作としても深作監督の遺作としても、残念な出来栄えになってしまった。

----
**余談
-キャプチャの撮影は相当苛烈だったらしく、東映のスタジオで''約半年間''も撮影が続いた。''OPの手紙を読んで立ち上がるシーンだけで丸一日費やしたらしい''。
--撮影風景は初回限定のDVDに収録されており、公式サイトでも実際のムービーと撮影現場の両方が公開されているなど、撮影に対する熱の入れっぷりだけは伝わってくる。

-後にスパイク(現:スパイク・チュンソフト)に入社、『[[ダンガンロンパ>ダンガンロンパシリーズ]]』シリーズのシナリオライターなどで活躍する小高和剛氏がキャプチャの助監督として参加している。
--出身大学の教授から紹介された縁での参加で、初めてのゲーム関連の仕事であったという。
---もっとも当時は映画を専攻しており本作にも映画経験のために参加、仕事環境も映画のものだったためゲームの仕事という意識はあまりなかったとか。
--氏は[[後年のインタビュー>https://www.gamer.ne.jp/news/201309080001/]]で、「ホント、地獄でした。あんな辛い仕事ができたので、今は何でも辛くないです。当時は本当に辛かったですね」と当時の製作状況を述懐している。

-問題点で述べたとおりホラーゲームのムービーとしては問題だらけであるにもかかわらず、桜井政博氏はファミ通コラムで絶賛していた。単行本化された際も外されることなく掲載されている((単行本『桜井政博のゲームについて思うこと』収録「『クロックタワー3』の本気」))。
--亡くなった深作監督に配慮した結果の提灯記事ではないかという意見もあったが、後年立ち上げた自身のYouTubeチャンネルでも[[ムービーを評価している>https://www.youtube.com/watch?v=lUVKOvRDPUY]]。
---主題としては「(当時の)CG技術ではキャラクターの表情や細かい仕草が欠落してしまうのを大げさな演技で補う」手法(およびそれをゲーム制作初参加の監督が提唱したこと)に対しての評価。ホラーというジャンルとの相性については明確には語っていないが、「(演技が過剰すぎて)思わず笑ってしまう」とも書いている。~
なお、ゲーム性についてはどちらでも言葉を濁している。
--ついでにファミ通クロスレビューでは''ゴールド殿堂''と高得点を獲得。こちらも低点数は付けられなかった模様。

-同社の『[[DEMENTO]]』は元々本作の続編として企画されたが、新規ユーザー開拓のためにタイトルや設定を変更して開発された。
--本作とは類似点が多く、上述した通りゲームシステムも本作のものを発展・改良させたものが用いられている。

-コスチュームチェンジの衣装は日本版と海外版で異なる。
--日本版ではラストバトルの衣装、セーラー服の夏服と冬服(何故か冬服のみ眼鏡付き)、サンタ衣装。海外版ではラストバトル衣装のみ共通で、他はカウガール、レザースーツ、鎧である。
---さらに余談だが、『DEMENTO』の隠しコスチュームにもカウガールとレザースーツが存在する。

-現在ではページが削除されているが、かつては公式サイトで攻略情報やゲームブックが収録されたオンラインブックがダウンロード可能だった。
--攻略情報ではボス戦の攻撃方法一つ一つに写真付きで解説する詳細ぶりであった。サンプル動画へのリンクもあったが、こちらは早々にリンク切れになっていた。
--ゲームブックは斧男戦までを描いたもので文章のみではあるが、恐怖に震えるアリッサの心情やゲームオーバー時に殺害される描写などがしっかり表現されており、大仰な演出や不自然なシステムも無い分、本編よりよほど「殺人鬼に追われる恐怖」を描けていた。
---ちなみにボス戦に関しては選択肢も無く、「力を覚醒させたアリッサの敵ではなかった」などと簡潔な表現だけで流されている。やはりホラーを描く上ではそぐわないと判断されたのだろうか。

-ドラマCDが前編後編の2作発売されている。
--本編では声優を本業としない俳優が演じていたが、こちらでは松来未祐氏や鶴ひろみ氏、古川登志夫氏などの本職の声優を起用している。
--ちなみに、鶴氏は『2』のドラマCDでもヘレン役で出演している。本作ではアリッサの母・ナンシー役であり、奇しくも前作に続いて主人公の保護者役だった。

//「ゴーストヘッド」の余談の方から移動の上修正。
-前作との妙な符号
--本作『3』にはキャラクターの名称や演出などの各要素に前作に当たる『[[ゴーストヘッド>クロックタワー ゴーストヘッド]]』の海外版から拝借したのではないかと思わせる要素がちらほら見受けられる。
---そちらの主人公である御堂島優、彼女の知人である鷹野初の海外名はそれぞれ「アリッサ」「フィリップ」で、本作における主人公とその父親の名前と一致している。
---また、『ゴーストヘッド』ではピアノからショパンの「幻想即興曲」が流れるギミックがあるが、本作でも「幻想即興曲」をピアノで弾く霊が登場し、BGMとしても使用されている。
---主人公の服装が緑のブレザーという点も同じ。リボンかネクタイか、前釦を止めているか否か、スカートの柄と言った差異はあれど全体的な配色も結構似ている。
---チャプター毎に追跡者が代わり、各チャプターのラストに追跡者との対決がある点も同様である。スタッフが参考にしていたのだろうか?

-ヒューマンの予言?
--前作までクロックタワーシリーズを手がけていた株式会社ヒューマンの人気作『ザ・コンビニ2 ~全国チェーン展開だ!~』(1997年)に、当時まだ発売されていなかった「クロックタワー3」というレアアイテムが登場する。
--これはもちろん自社製品を使ったギャグなのだが、「『2』の次回作が何故『3』ではないのか((『ザ・コンビニ2』発売は『ゴーストヘッド』の3ヶ月前。))」という理由をゲーム内で「あまりに恐ろしく、開発中に不吉な現象が次々起こったため発売を自粛した」と説明している。
--ヒューマンの倒産などの紆余曲折を経て発売された本作であるが、最終的にシリーズを終わらせるという不名誉な結果となってしまい、図らずしも同作で予言したようなシリーズ・開発者にとっての曰く付きの作品になってしまった。

-本作にシリーズ生みの親の河野一二三氏は関わっていないのは前述の通りだが、氏が海外のフォーラムで語った所によると実は手伝いの打診はあったらしい。しかし、『鉄騎』の開発で忙しく断ったのだと言う([[参照>https://www.reddit.com/r/IAmA/comments/2upnph/iama_hifumi_kono_founder_of_game_studio_nude/]])((下から3番目の質問への回答。ただし、全文英語なので注意。))。
--また、同フォーラムでは氏は「(ホラーは)主人公が普通の人間であることが重要。戦士やスペシャリストではホラー感が薄れてしまう」と述べるなど、本作における世界観やキャラクターに対する批判的な見解を暗に示していた。
---更に海外ファンからのメールへの返信にて、本作について直接的な評価は避けつつも「自分のイメージとは違う」と認めており、本作で一新されたバロウズ家の設定についても「思い描いていたものと違う」と綴っている([[参照>https://web.archive.org/web/20160222023932/http://w11.zetaboards.com/dontcryjennifer/topic/195429/3/]])。
--逆に、実質的な次回作『DEMENTO』に関しては犬のパートナーを取り入れるというアイデアを称賛している。