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DEPTH - (2021/07/16 (金) 19:55:40) のソース

//『[[判定不一致修正依頼]]』が出ています。対応できる方はご協力をお願いいたします。~
//依頼内容は以下の通りです。~
//-[[別の記事>BABY UNIVERSE]]との内容の不一致の修正。
//-スルメゲーに抵触する内容。
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*DEPTH
【でぷす】
|ジャンル|ミュージック・アドベンチャー|#amazon(B00005OVF8)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~|
|開発元|オーパス・スタジオ|~|
|発売日|1996年12月6日 |~|
|定価|5,040円(税込)|~|
|配信|ゲームアーカイブス:2007年6月28日/600円|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|いろいろな意味で評価不可能&br()ゲームというよりシンセサイザー&br()音楽関係者には魅力的に映る内容?|~|
//20/4/8 要強化の期限切れにより判定なしに変更
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#contents(fromhere)
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#center(){{
&big(){''誰も知らない音楽の遊び。''}
~
~
そこにあるのは音のかけら。~
ゆらゆらとみるみると、~
心の中を揺さぶってゆく。~
激しく、優しく、~
それは、あなただけの密やかなグルーヴ。~
誰も知らない音楽の遊び。~
溺れながら聞く音は、きっと心地よい。
}}
~
(取扱説明書P2より引用)
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**概要
世の中のゲーム機で再生できるソフトは2種類に分類できる。~
すなわち、純粋にクリアやスコアを目指す「ゲーム」と、そういった要素は無関係にデータベースとして用いる「実用ソフト」である。~
…しかし、広い世間には何をどうやってもそのどちらにも分類できない代物も存在する。この『DEPTH』もそのようなソフトの一本である。~

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//曖昧気味な記述が多かったので全体的に立て直してみるテスト。追記修正歓迎(21/03/29)
**システム
-''本作には「クリア」や「スコア」などと言った概念は存在しない。''通常「ゲーム」を構成する要素のほとんどは削られている。
--「今までのゲームが知らぬ間にセオリーとしてきたあらゆる要素が何もない」と説明書にも明記されている。
-プレイヤーはナビゲーターとなるイルカを操作し、以下のモードで遊ぶことになる。

***SILENT SPACE
-ゲームを始めるといきなりこの海中の空間に放り出される。ここには幾何学的なモニュメントが多数存在し、イルカを操作してそれに触れることによって以下の「CRUISE STAGE」「GROOVE EDITOR」に侵入できる。
--なお、マップはループ構造になっており、泳ぎ続けると元の場所に戻る。
--○ボタンで泳ぐが、○ボタンを連打して海底から急浮上すると海上にジャンプすることができる。

***CRUISE STAGE
-「SILENT SPACE」には円状に12個のオブジェクトが配置されており、光っているオブジェクトに触れるとこの「CRUISE STAGE」に移動する。
-それぞれの「CRUISE STAGE」にはテーマが定められており、○×△□ボタンのいずれかを押しながらイルカを操作することで、ボタンに対応した音を鳴らすことができる((説明書では「アドリブプレイ」と名付けられている。))。またイルカの位置は音楽ミキサーにおけるフェーダーとなっており、上に行くほど高音優位、下に行くほど重低音優位、左に行くほどメロディ優位、右に行くほどリズム優位のミックスバランスになる。上下位置については入力をやめるとイルカは自動的に中央に戻る。
--リプレイ機能が搭載されており、途中で演奏した音楽を残すことも出来る。STARTボタンで「SILENT SPACE」に戻る。
--小技として、左右どちらかにしばらく泳がせた後に逆方向を急に入力するとイルカが回転し、ドラムのフィルインが入る。
-しばらく泳ぐと分岐が示され、このときにL1ボタンまたはR1ボタンを押すと隣のステージに移動することができる。全部で12ステージ。
--この分岐を何回かスルーすると「''???''」という分岐先が表示される。これに移動するとムービーが再生されるが、幻想的だったりサイケデリックだったり様々。

***GROOVE EDITOR
-「CRUISE STAGE」で泳いだ後、「SILENT SPACE」に戻ると「音」が手に入る。これを使って音楽を作るのが「GROOVE EDITOR」の目的である。
-8つのトラックがあり、それぞれバスドラム、スネア、ハイハット、エクストラリズム((バスドラム、スネア、ハイハットに当てはまらないパーカッション音が分類されている。))、ベース、シーケンス3パート((メロディや効果音が分類されているが、まれにパーカッションが含まれている場合もある。))で構成されている。これらの構成の中でサウンドパターンを自由に組み替え、音楽を作っていく。
--自由度は非常に高く、様々な音を選んだり、テンポを変えたり出来る。違うステージの音を持ってきたり、不要な場合は鳴らさない設定にすることも可能。
--音にエフェクトをかけることもでき、音量、左右パン・オートパン振り、ディレイ、モジュレーション、リバーブに対応している。ただしすでにそのエフェクトがかかっている一部のサウンドは、項目が暗くなり設定を変えることができない。
--また各ステージにA/Bふたつのサイドが存在し、SELECTボタンでいつでも切り替えることができる。サイドそれぞれにサウンドパターンを設定できるため、都合各ステージに2曲用意されることになる。
-この「GROOVE EDITOR」で作成した音楽は、対応した「CRUISE STAGE」で再生される。自分が作ったミックスに浸るもよし、感じるままにアドリブプレイを楽しむもよし。SELECTボタンによるA/Bサイド切り替えも「CRUISE STAGE」に反映される。
--基本的には「CRUISE STAGE」と「GROOVE EDITOR」を行き来し、12ステージすべてのサウンドパターンを集めるのがとりあえずの目標となる。
--12ステージすべてのサウンドパターンを集めると「GROOVE EDITOR」上でステージの切り替えが可能になる。

***COLOR CYCLE
-「GROOVE EDITOR」内に用意された機能で、「音」を「見る」ためのモード。「GROOVE EDITOR」画面でR2ボタンを押すとエディタのUIが消え、このモードになる。
--説明書では「もう一つのCRUISE STAGEと言ってもいいでしょう」と記述されており、独立したモードとして扱われている。
-ボタンを操作して背景映像を様々に変化させられる。用意されている映像はこれまた綺麗なものからサイケデリックなものまで様々。[[BABY UNIVERSE]]の背景映像にも似ている。
-なお、□ボタンを押した際の効果や一部の背景にフラッシュ効果が使用されているため、部屋を明るくしてからモードに浸ろう。
--ちなみに、映像の上には再生中の「CRUISE STAGE」に対応したオブジェクトが浮遊しているが、このモードに入ってから無操作状態で放置していると、数分後になぜかオブジェクトが目玉に変化する。

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-以上を読んでもらえれば分かっていただけたと思うが、どこからどう見ても''コレはゲームではない''。
--ゲームの体裁を成したシンセサイザー、もしくはシーケンサーと思うべきだろう。その意味では実用ソフトなのだが…。

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**評価点
-作曲の自由度は非常に高い。
--用意された音はアンビエントハウス・テクノ系で統一されており、12ステージ集めきった際のサウンドパターンは''合計601''((内訳はバスドラム61パターン、スネア75パターン、ハイハット66パターン、エクストラリズム147パターン、ベース73パターン、シーケンス179パターン。))と莫大な量に及ぶ。これらを組み合わせ、自分の思うがままに音楽を奏でられる。そうするうちに、デフォルトの状態だった音楽は、いつしかプレイヤーが奏でる世界観に書き換えられていく。
--プレイヤーによって音楽が全く異なってくるのも特徴の一つ。動画投稿サイトに上げられている本作のプレイ動画は、実に多種多様な音楽が繰り広げられている。中には本作を作曲ツールとして利用するプレイヤーも。
---用意されたものを組み合わせるだけとシンプルなため、作曲ツールとして見るならば本作はかなりとっつきやすい部類に入る。「音楽作りに興味はあるが、DTM((デスクトップミュージックの略。パソコンと電子楽器をMIDIなどを利用して音楽制作を行うことの総称。))はハードルが高い…」という人におすすめ。
---音質も良く、「音で遊ぶオモチャ」としてはハイクオリティ。
--なお、&u(){発売当時はWindows95が出て1年が経過したくらいで、DTMは現在ほど一般的ではなかった。}この環境下で、手軽にテクノミュージックを作成できるDTMソフトをあえて普及率の高いPSで発売したという点は特筆に値する。

-「GROOVE EDITOR」のユーザビリティは意外に高く、かなり多機能。
--エフェクト設定の際にはオブジェクトの挙動が選択中のエフェクトに応じて変化するため、単語の意味が分からずともどんなエフェクトであるかが視覚的に理解しやすくなっている。例えばディレイをかけるとオブジェクトが残骸を残しながら動いたり、モジュレーションをかけると上下運動が加わる、など。

-グラフィックレベルが異常に高い。PS発売から2年後とは到底思えないほど。晩期、あるいはPS2にも匹敵する。
--「CRUISE STAGE」のテーマは様々であり、そのイメージに合ったグラフィックは見ていて癒やされるものがある。
--これに「GROOVE EDITOR」で自ら作った音楽が組み合わさることによって、自分だけの世界に浸ることができる。本作独特の世界観がかっちり合う人にとってはどっぷりと浸れること間違いなし。

-「CRUISE STAGE」のアドリブプレイは、実際にコントローラーを楽器として扱うわけではなく、操作したタイミングによって音楽に合わせて音程が変わるようになっている。
--すなわち、ボタンを連打したり、ボタンを押しながらイルカを操作することで自動的にメロディになるわけである。演奏の知識がないプレイヤーでも、アドリブで演奏を楽しむことが可能になっている。

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**賛否両論点
-明確な目的は提示されず、どのように遊ぶかはプレイヤーに任されるため、音楽作りに興味がない場合はモチベーションを保ちづらい。
--「GROOVE EDITOR」で使用できる音はそれぞれの「CRUISE STAGE」に縛られない。どんな音を組み合わせるかも自由なので、これをやりこみ要素と見なすか、「CRUISE STAGE」を回りサウンドパターンをすべて回収した後は解禁要素もなくなるためやりこみ甲斐に欠けると見なすかで賛否が分かれる。
--プレイヤーの創意工夫が試されるゲームに共通するが、プレイヤー自身でゲームに面白さを見出す事ができるかで評価も変わってくると言える。

-ループミュージックしか作ることができない。
--一般に作曲と言えば2分~5分程度の曲を作ることと思いがちだが、本作は作った曲が「CRUISE STAGE」で流されることもあり、BGMのような4~16小節でループする曲しか作成することができない。
--とはいえ「CRUISE STAGE」は、イルカを操作することによる音量バランスの変化、アドリブプレイを楽しむためのモードであるため、「GROOVE EDITOR」で作成できる曲はバックトラックと見なすこともできる。

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**問題点
-ジャンルは「ミュージック・アドベンチャー」だが、''アドベンチャー要素は皆無''。
--広義の意味で「冒険」と取っても、穏やかな世界をイルカが泳ぎ回るだけなのであまり冒険している感はない。

-なぜか全編英語。
--難しい単語があるわけではないが、若干理解しにくい部分もある。
---とはいえ、文章で語られる部分に本作の本質はない、とも言える。あくまでグラフィックと音楽を楽しむべきだろう。

-「GROOVE EDITOR」において音楽全体の一時停止ができない。

-「CRUISE STAGE」のリプレイデータはメモリーカードにセーブができない。保存データが肥大化するので当然ではあるが…
--説明書ではどうしてもリプレイを残したい場合はビデオ機器で録画することを推奨している。

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**総評
まだ「作曲」という概念が一般的ではなかった時代に突如として放たれたこのゲームは、端的に言えばPS用ゲームソフトの体を成して発売された作曲ソフトと言うべきだろう。~
イルカとともに質の高い映像を鑑賞しながら自分で作った音楽に浸る、アドリブプレイに興じて独特のグルーヴを生み出す、はたまた「COLOR CYCLE」で[[BABY UNIVERSE]]よろしくトリップしてみる…など、本作をどうプレイするかはプレイヤー次第。~
作曲ツールとして見てもとっつきやすい部類に入るので、作曲に興味がある人や、日々の生活に疲れた人、イルカを見て癒されたい人などに、是非手に取っていただきたい一本である。~
~
ただ唯一断言できるのは、これはPS用ゲームだが''ゲームではない''。あえて挙げるなら、[[LSD]]から毒を抜いた感じ、と言えば近いかもしれない。~
ストーリーや歯ごたえのあるゲームを求める人には誇張抜きでおすすめすることは出来ないだろう。

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**余談
-タイトル画面で、とあるコマンドを入力すると、「SILENT SPACE」においてイルカが金色に変化する(「CRUISE STAGE」は変化なし)。
-本作はアメリカでは「Fluid」、ヨーロッパでは「Sub」のタイトルで海外でも発売されている。
-[[公式サイトが現存しており>https://www.opus.co.jp/products/depth/index2.html]]、書かれている内容は非常に詩的。本作の世界観に魅入られた人は一見の価値あり。
-発売当時は本作のプロモーションのために立ち上げられた『Unit DEPTH』というパフォーマンスユニットが存在し、[[''PS本体とメモリーカードを持ってクラブに行き、DJ機材ではなくコントローラーを握ってフロアを沸かせる''>https://www.redbull.com/jp-ja/depth-which-pioneered-dtm]]という傍から見れば珍妙なパフォーマンスをしていたそうな。
--無論本作の秀逸な音楽の出来もあって、反応は上々だったそうだ。
-本作は音楽ゲーム『SweepStationシリーズ』の第一作である。第二作は''故意犯的バカゲーとして有名な『グルーヴ地獄V』''。
--実は両作品とも「''音ネタを収集し、それを組み合わせて楽しむ''」という根底は共通しているのだが、『グルーヴ地獄V』においては音ネタを提供した電気グルーヴの個性がいかんなく反映された結果、本作とはまったく異なる雰囲気の作品となってしまった。
--その後第三作かつ事実上の最終作として、より音ゲーとしての側面の強い「ビートプラネットミュージック」が発表された。インパクトではグルーヴ地獄Vに劣るものの、''PSに入れた音楽CDから音ネタをサンプリングできる''(しかも異様にメモリーカードの容量を食う)などと、実質最終作にふさわしいなかなかのトガりっぷりを有している。
-本作及びSweepStationシリーズのサウンドチームには、後に[[BEMANIシリーズ]]に「RAM」名義で楽曲提供を行う山崎耕一氏の名前が確認できる。