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ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート - (2023/12/13 (水) 15:52:54) のソース

*ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート
【どらごんくえすともんすたーず きゃらばんはーと】
|ジャンル|ロールプレイングゲーム|CENTER:&image(https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/512FRSQEHAL.jpg,height=200)|
|対応機種|ゲームボーイアドバンス|~|
|メディア|64MbitROMカートリッジ|~|
|発売元|エニックス|~|
|開発元|トーセ|~|
|発売日|2003年3月29日|~|
|定価|5,980円(税別)|~|
|プレイ人数|1人(対戦時:2人)|~|
|セーブデータ|1個(EEPROM)|~|
|レーティング|CERO:全年齢(全年齢対象)|~|
|周辺機器|GBA専用通信ケーブル対応|~|
|判定|BGCOLOR(lightsteelblue):''スルメゲー''|~|
|ポイント|従来と違う独特なシステムで発売時は批判多し&br;しかし慣れれば魅力的でやり込み甲斐あり&br;現在では再評価されている|~|
|>|>|CENTER:''[[ドラゴンクエストシリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
『[[ドラゴンクエストモンスターズ2 マルタのふしぎな鍵 ルカの旅立ち/イルの冒険]]』の続編。~
『[[VII>ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち]]』のキーファが主人公を務める他、同じく『VII』からフォズ大神官が出演している。~
人間とモンスターが協力して戦闘を行うキャラバンシステムや歩くたびに減っていく食料など、ドラゴンクエストモンスターズ(以下DQM)の中でも独自要素がとても多い。

なお、本作がエニックス名義で販売された最後のソフトである。

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**特徴
-今までのDQMシリーズは「一つの拠点から旅の扉経由で様々な所に行く」というものだったが、キャラバンハートは「''キャラバンを率いて世界中を歩き回ってオーブを集める''」というのが冒険の目的となっており、従来のDQMと比べて本家ドラクエのようにストーリー重視となっている。
--舞台となる世界もマルタの国やタイジュの国といったオリジナルの世界ではなく『[[ドラゴンクエストII>ドラゴンクエストII 悪霊の神々]]』の世界そのものであり、ロトの勇者達がシドーを倒した数百年後という設定。
---ストーリーの内容もナンバリングドラクエと同じようなお使いイベントや魔物討伐などが中心となっている。

-本作ではキャラバンを率いて冒険する。最大3つまでの馬車を連れることとなり、馬車ごとに警護役として1匹の「ガードモンスター」がつく。これが倒れるとその馬車は行動不能に。
--また、モンスターオンリーだった前作までと違って''本家のように人間を仲間にできる''。この仲間たちを馬車に乗せて、戦いをサポートさせるのが本作の醍醐味だろう。
---仲間の職業は戦闘用から冒険用まで22種類あり、1キャラにつき3段階のランクが設定されている。加入できるのは最大20人までで、それ以上仲間にする時は誰かと別れることとなる。
---人間は街の中で話しかければ仲間になってくれる。基本的には固定された位置にしか登場しないが、エンディング後だと世界各地にランダムに出現する様になる。
---1つの馬車のターンは5ターンで1順する。最大4人のメンバーが席の順番に行動し、5ターン目は誰も行動しない。4ターン目まででも空席だったり、以下の「連携」によって行動済みになっている場合も行動しない。
---同じ職業を同時に載せるとランクが合算される。例えばランク1の戦士とランク2の戦士を同乗させるとランク3の戦士として扱われ、「連携」としてランク3相当の特技を放つ。さらに同じ職業を同じ馬車に4人乗せれば、ランクを問わず「究極連携」が発動する。~
ただし、連携に参加すると本来動くべきターンに行動不能になるので隙が多くなる。ランクは3が上限で、職業が揃うと必ず発生するので、クリア後で高ランクの仲間が増えてくると「同じ馬車に同じ職業を入れる」ことに対するペナルティとなる(究極連携は例外)。
---対戦では相手の馬車に誰が乗っているかが分からないので、それを読んだ戦略が重要である。
---ただし、馬車には重さ制限がある。ガードモンスターや仲間にはそれぞれ重さの値が設定されており、その合計が制限を越えてはならない。
--キャラバンの旅の基点となるベースキャンプも最初は設備が少ないが、特定の仲間が加入することで道具屋(商人)・酒場(踊り子or料理人)・預り所(盗賊)・カジノ(遊び人・ギャンブラー)などが開設され、さながら1つの「移動する町」として旅の助けになってくれる。

#region(職業一覧)
-戦士
--オノを使ってモンスター単体に攻撃する。ランクや馬車のガードモンスター(以下GM)の攻撃力に影響されて威力が上昇する。究極連携も単体攻撃。
--ランク3で持つ能力のちからためは、初回のみGMの攻撃力を倍増させる。対戦では不発。
-剣士
--剣で複数回斬りつける。一発の威力はGMの攻撃力を下回るが、守備力の低い敵に対しては戦士よりもこちらが優れる。究極連携はGMの攻撃力で4回攻撃。
--ランク3でGMが初回のみ2回攻撃できるはやぶさの能力を持つ。戦士と併用すれば2倍の威力で2回攻撃となり非常に強力だが、対戦では不発。
-武闘家
--打撃で単体攻撃をする。戦士よりも弱いが会心の一撃が出る可能性の高い一撃を出す。究極連携は100%会心の一撃。
--ランク3でGMが高確率で先制攻撃できるしっぷうの能力を持つ。もちろん対戦だと不発。
-騎士(シリーズ初)
--全身を鎧で包み、大盾でGM全員が受けるダメージを減らす。究極連携は攻撃完全無効。
--GMを防御させることで最初に馬車の仲間を動かすテクニックがあり、騎士との相性が非常に良い。
--ランク3のみまわりは敵からの先制攻撃を完全に防げる。
-メタルハンター(シリーズ初)
--どんな相手にでも必中の極小固定ダメージを出せる。究極連携は全体に25ダメージ。名前の通り対メタル系に特化しており、要はレベル上げ用。
--ランク3のメタルさがしの能力は、ランダムエンカウントに混じって「メタルもどき」が登場。守備が低く逃げないが、その分HPが高くて強い。経験値も本物に比べて低めではあるがレベルアップには役に立つ。
-僧侶
--GMを回復させる職業。ランク3だとベホマかベホマラーを使い分ける。究極連携はベホマズンで完全回復。
--移動中は回復を使えないが、ランクによって道具屋や教会を呼び出せる。
-魔法使い
--魔法でモンスターを攻撃する。GMに左右されないダメージが特徴か。マホカンタも貫通する。
--特技の幅が狭い本作ではランク3のメラゾーマ、ベギラゴン、ヒャダルコも強い。移動中はトラマナとトヘロスも使える。更に究極連携はミナデインである。
//なぜかマヒャドではなくヒャダルコ
-賢者
--回復も出来る攻撃係。ホイミ系とイオ系を使い分ける。ランク3では移動中はルーラが使える。
--究極連携は僧侶のベホマズンか魔法使いのミナデインのどちらかを放つ。
-医術士(シリーズ初)
--状態異常回復。ランクが高くなるにつれ治せる状態異常も多くなる。究極連携は全員の状態異常回復+復活。
--従来の僧侶から状態異常回復を分離した職業といえる。ランク次第だが移動中はキアリーとシャナクを使える。
-狩人(シリーズ初)
--矢で相手単体に状態異常。ランクが高くなると与える状態異常も増える。究極連携は単体にザキ効果の矢。
--探索中は狩りを行うことで食料を調達できる。ただし連続では使えない。
-釣り師(シリーズ初)
--水辺で魚を釣って食料が得られる。直接食料値を増やす狩人と異なりアイテムとして入手できるが、やはり連続では行えない。
--戦いだと撒き餌などで相手を行動不能に。究極連携は相手全体を3ターン行動不能に。
-地図士(シリーズ初)
--地図を表示できるため、探索中は必須の職業。
--戦いではGMに周囲の地形を伝えて素早さアップ。究極連携は全員素早さMAXに。
-踊り子
--状況に応じて様々な踊りでサポートする。究極連携は全員復活。
-吟遊詩人
--こっちは歌でサポート。究極連携はこっちも全員復活。
--ベースキャンプではGMや馬車の改名も行える。
-料理人(シリーズ初)
--探索中の食糧消費を抑える。
--戦いだとGMのMPを回復。究極連携はMP200回復とかなりしょっぱい。
-占い師(シリーズ初)
--地図に階段の位置を表示したり、オーブの位置も表示する事ができる。
--相手のHPとMPを調べる。ランクが上がるにつれ正確な値になる。究極連携は何故か天災を起こす。
-遊び人
--戦いでは知っての通り遊んでばかり。運の要素が強いが耐性無視の効果が多いので実は優秀なサポート職である。究極連携はなんらかの攻撃系特技を使う。
--探索中はゴールドを消費して敵かアイテムを呼び寄せることができる。
-ギャンブラー(シリーズ初)
--敵か味方のHPを半分にすると言う大ギャンブル。究極連携に至っては敵か味方かどちらかがHP1に。ただし相手によっては無効。
--遊び人かギャンブラーがいるとキャラバンにカジノができる。合計のランクに応じてスロットの掛け金が高くなる。
-商人
--探索中は小さなメダルと宝箱の位置を地図に表示する。ベースキャンプでは道具屋を開き、ランクや人数に応じて品ぞろえが豪華になる。
--戦いではモンスターから金を奪う。究極連携でも金をとる。対戦では無意味。
-まもの使い
--戦いでは相手モンスターをなだめることで心を落としやすくさせる。究極連携も同様。対戦では無意味。
--ランク3になると、周囲に出現するモンスターの種類がわかるようになる。
-盗賊
--地図に商人と同じ効果を与え、モンスターから道具を盗む。究極連携も同様だが、本作では敵から奪えるアイテムがあまり有用ではないので今ひとつ。
--盗賊がいるとベースキャンプに預かり所ができる。
-転生士(シリーズ初・クリア後のみ)
--倒したモンスターを人間に転生させ、キャラバンに加入させると言うシュールな能力を持っている。転生は戦闘後に行われるので戦闘には直接影響しない。
--究極連携は確実にモンスターを転生させ、さらに低確率だがあらゆるモンスターをランク3の職業にできるため有用。ちなみに転生士に転生するモンスターはミノーンと各精霊のみである。
#endregion

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**評価点
&font(b,16){作りこまれたストーリー}
-前作までと違いナンバリング作と同じく一つの大きな世界全体を冒険するので、ナンバリング作をプレイしているのと同じ感覚でプレイできる。
--同じ世界を舞台とするだけあって、ロト三部作をプレイしたユーザーを意識して作られている。過去作ネタが多々存在しているため、既プレイのプレイヤーにとっては懐かしさが感じられる。
--さすがに船は定期船のみという都合上、船でしか行けなかったテパの村や大灯台が地続きで行けるなど、地理にもアレンジが加えられているが。
--「美味しい物」であるラストステーキを持ってくると旅の祠の通行許可だけでなく、配下のモンスター・ビーナスや馬車も気前良く譲る太っ腹な一面も持つ幻魔・カカロンや、腐った死体となった恋人・スミスのために魔物使いとなった女性・マチュアとその気持ちという「形にならない物」を「美しいもの」として認める幻魔・クシャラミなど、幻魔も個性付けがなされている。
---なお、この幻魔たちはもともと『VII』の特技「げんま召喚」で現れたもの。もともとは攻撃を行うのみで、外見や性別・性格などの設定は本作で設定された。
--また、漫画『ドラゴンクエストモンスターズ+』の一部設定を引き継いだと思われる要素も存在する。
-『DQI・II』と『DQVII』、『DQM』の世界観がクロスする世界観であり、様々な想像を引き起こす。同時期に連載されていた『DQVII』のコミカライズ作品『エデンの戦士たち』にも本作の内容を受けたと思しき独自の要素が登場している。更には、エンディング後には『DQIV・V・VI』と関連性があるとある重要キャラクターも登場。これまでのような過去作オールスターズとまではいかないが、違った方向性で各種ドラクエ同士の要素が交じり合い考察勢からは一定の注目をされた。


&font(b,16){豊富なやりこみ要素}
-最初のエンディングを見ると、ランダム出現するダンジョン「まものの巣」で心などを稼いだり、世界中に散らばる「カラーオーブ」を集めながら、「オーブのダンジョン」に入ってボスと戦い、一定ターン以内に倒して報酬を得たり、今まで歩んできた街を回りながら様々な仲間を集めたりすることが可能。様々な職業の人間を仲間にできたり様々な敵が出るダンジョンを遊べたりと、従来のモンスターズよりやりこみ要素がてんこ盛り。
--発売当初は食料問題などの欠点が目立ち、気にもされていなかったが、次回作『[[DQMJ>ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー]]』のやりこみ要素がとても少なかったこともあり、現在ではこれらの要素は高く評価されている。
--クリア後にはランダムに加えられる仲間の中には「重さは軽いがランク3の仲間で、1人で3人分の役割を果たす」といった有用な者もおり、結果としてキャラバンの戦力増強に役立ってくれる。ランダム遭遇という運に恵まれない人のために転生士という救済措置もあるので、どちらを取るかはプレイヤー次第。
--2回目のエンディングを見ると、アレフガルドで閉ざされていた竜王の城の門が開いて竜王と戦えたり、オーブのダンジョンで奥まで進んでも戦ってくれなかった光の精霊・闇の精霊が戦ってくれるようになったりといった変化が見られる。


&font(b,16){グラフィック}
-全般的にグラフィックがよくできている
--人間キャラクター、モンスターのドット絵の出来がよい。
---特にフィールド上のイベントに確率で出現する踊り子やクシャラミの戦闘中グラフィックは、現在では全年齢ゲームでの描写が難しい露出度で書き込まれている。
--戦闘中の背景も細かい書き込み。
--塔のダンジョンで壁がなく外が直接見えるようになっている部分が、階層を上がるにつれて遠景がどんどん高所からのものになる演出がなされている。
--屋外のフィールド移動時に、フィールドが遠近法や地球の局面を意識した描画になった。
--同様の描画は、PS2版の『DQV』でも見られた。


&font(b,16){BGM}
-当時のゲームとしてはかなり良質なBGMがそろっている。
--BGMは概ね原曲の曲想を守った状態でアレンジされた『I』・『II』の楽曲群であり、体験者には懐かしさを感じさせる。
---中にはあの魔王の曲が同じ状況で流れることも……。


&font(b,16){フィールドイベント}
-フィールドを歩いているとシルエットクイズや道具屋との対面などの様々なイベントが登場する。
--食料や金を魔物やニセ僧侶から奪われたりすることもあるが、特定の職業の人間を馬車に入れていることで回避できたり、アイテムやお金を入手できることもある。さらにここでしか入手できないアイテムもあり、ランダム性でありながら面白い所。

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**賛否両論点

&font(b,16){食料}
-本作を語る上で欠かせないのが食料システム。食料は店で購入できる(1つにつき1G)が、これを購入しないと旅が非常に困難になる。~
食料が尽きるとパーティーが消耗し、''歩くたびにモンスターのHPが減っていく''のだ。
--放置しておくとHPが1になってしまいモンスターとであった瞬間、バギなどで一掃されて全滅…ということもある。~
特に今作ではモンスターのエンカウント数が過去シリーズのように3体までではなく、本家のように大量に出てくるので逃げるのに失敗すると袋叩きにされてしまう。
--しかもベースキャンプを移動する時は食料消費が早くなる。山や砂漠を歩くと非常に早くなるほか、ベースキャンプを連れたまま全滅するとキャンプごと最初のエリアに戻されるのも厳しい仕様。
---章始めには大陸の入口にベースキャンプを呼んでくれたり、中盤からは使った場所にベースキャンプを呼ぶアイテムが買えるのでそれらを活用していくようになる。
--携帯用の食料(使うと一定数食料が補充される)や職業の力で回復することも可能だが、前者については後述するがアイテムの所持数がかなりきついのであまり持ち歩けないのが辛く、後者については一定間隔を開けないと再使用できないので気休め程度の役割である。

-食料自体はキャンプやキャラバンという要素を感じさせるシステムであり、単なるゲームとしてのリソース管理でしかなく、職業を活かすという観点では概ね成立している。関連作品の『不思議のダンジョン』シリーズでは普通に受け入れられているし、まったくドラクエ界隈において馴染みがないものでもなかった。~
しかし、モンスターズにおける導入は初の試みであった上に従来昨比の比べて非常に毛色が異なる仕様になったため、困惑したり面倒なデメリット要素が追加されただけだ、と感じる人がプレイヤーの中で一定数発生した。
--少なくない不満につながってしまったのは、&bold(){序盤のやりくりの厳しさ}(食料保持の最大数が少ない、購入資金も有利な職業も少ない)といった事情や、手探り状態で消費の激しい山を歩かざるを得ないことや、ストーリー進行に一番食料消費の激しい砂漠でのイベントが必須となったことなどが重なってしまい、「食料=面倒くさい」というイメージがゲームの最初の方で付いてしまいやすいのが大きな原因である。
---最序盤はエンカウント率はやや高いものの敵を倒して得たゴールドでは赤字、商人1人目を仲間にして戦闘毎にゴールド回収をして平地移動でやっと黒字、商人2人目を仲間にしたあたりからは余裕が出てくる。それより先になると敵モンスターのドロップ(ゴールド・食料・食料アイテム)が充実してくるため、中盤以降は食料のやりくりで悩むようなことはほぼなくなっていく。


&font(b,16){モンスター}
-今作では配合システムではなく、転身システムが使用されているので仲間になるモンスターは7匹のみ。
--前作までのポケモンのように野生で出るものを次々に捕まえていく方式ではなく、一人一人NPCとして性格が設定され、加入も固有イベントを経て行われる。要するに、ナンバリング作の「仲間キャラ」のように扱われている。~
そのため従来のDQMであった配合のようにモンスターがいなくなることはなく、「転身」で2つのモンスターの心を吹き込んで姿を変えながらストーリーを進めることになる。
--劇中でスラロン(最初に加わるガードモンスター)が、「姿は変わってもオレはオレのままだ。お前の事を忘れたりしない。」と励ましてくれる。
--7匹と少なくても、対戦用3匹・探索用3匹と区切れるのは悪くないところだろう。
--ゲームとしては真っ当に成り立っている本作特有の要素でしかないのだが、急な方向転換で従来と同じようなモンスターの扱いを期待していて違和感を覚えた人は少なくなかった。

-今作ではモンスターの系統が絞られており、「スライム系」・獣、鳥、水系を統合した「動物系」・虫、植物系を統合した「自然系」・ドラゴン系や一部の獣系を統合した「魔獣系」・「物質系」・ゾンビ系を含めた「悪魔系」・物質系の一部(液体や気体など)や????系のポジションを統合した「エレメント系」となっているため、過去作からのプレイヤーは簡略化をつまらなく感じたり違和感を覚えた。
--どういう訳か「わたぼう」「ワルぼう」のデザインが前作までと異なっており、こちらも人によっては違和感を覚える。

&font(b,16){戦闘バランス}
-本作では今までと比べ、かなり毛色が異なっている。
--まず高威力の特技の「マダンテ」や「ばくれつけん」などが軒並み削除され、最高威力であっても「ギガデイン」の250程度となっている一方で、回復特技は相変わらず「ベホマズン」や「ザオリク」が存在し、最大999のMPから見れば非常に低コストで唱えられる。~
「くろいきり」「いてつくはどう」のような封印・リセット技も存在しない。そこで決定力として、前述の通り職業を駆使して戦うのが主流。
---防御すると最初に行動できるため、そこでダメージを減らす騎士やトドメに攻撃系職業を使うのが基本。究極連携も強力だが5ターンに一度しか職業サポートが発生しないのでリスクは高い。
--従来は主要な属性に完全な耐性を持たせることがやり込んだ対戦では前提だったが、今作では完璧な耐性を持ったモンスターが存在しない上に、転身のたびに耐性が初期化されるので、どのモンスターでも何らかの弱点はどうしても残ってしまう。
---職業の心の使用で一時的に耐性を高められるが、それでも完全な耐性を得るのは不可能。このため、従来のシリーズよりも属性攻撃や状態異常の比重が大きい。


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**問題点

&font(b,16){モンスター}
-転身システムが導入されたことで、モンスター図鑑を埋めるのが非常にやりにくくなっている。
--従来のように野生で出るものを捕まえることができないため、色々なモンスターを扱って性能を試したり、入手数を増やしていくのが一気に難しくなった。
---別段今作は入手数が何らかの評価や報酬に繋がることはないのだが、やり込み派や従来通りの収集的な楽しみを期待していた層には肩透かしとなった。

-従来の????系の後継ポジション的な「エレメント系」がカオスなことになっている。新モンスターの「パーラル」「ピモ」など「バーバパパ」みたいなのが何種類もいたり、????系らしい他作品のキャラがりゅうおう、わたぼう、ワルぼう、デュランのみ。なんとも言い難いチョイスとなっている。
--魔王系のキャラはほぼ存在しない。
---ただし、ハーゴンやシドーが討ち果たされた後の世界であるため、モンスターズとしては良くても本作の世界観としては矛盾が生じるので出ないようにしたこと自体は英断である。そうなると子孫を残していた設定の竜王は出せることになるが、他の魔王だけ出ていると不自然であるためこのようになったとも推測される。

-特技から「ギガスラッシュ」「ビッグバン」などの技が無くなり、モンスターも魔王などの特別感のある存在が減ったことで、全般的に本作は派手さに欠けていまいち盛り上がりや成長面での到達感がない。

-本作には『DQVII』要素が多いのだが、同作で登場した○○の精霊系は似ても似つかない別人となっている。

-モンスターごとの強さや成長速度、重さなどのバランスも取れているとは言い難い。
--特に重量のある大型モンスターは成長も遅く、非常に使いにくいものが多い。


&font(b,16){戦闘バランス}
-全体的に、モンスターズや本編でも見られた呪文と特技の格差や物理と魔法の格差などが全く改善されていない。
--エンディング後の冒険では、すべてのボス戦で呪文や特技で攻撃するより物理で殴った方が効率よくダメージを与えられる。
--職業のマスター戦士(最初のターンだけダメージ2倍)やマスター剣士(最初のターンだけ2回攻撃)の特殊効果も強すぎる。効果も重複するので基本的にひたすら殴るのが最適解。
--魔法使いのような固定ダメージの職業、及びモンスターの呪文攻撃は、雑魚戦ではともかくボス戦ではまったく役に立たない。
--戦士・剣士・武闘家など戦闘の花形となる職業の攻撃力もガードモンスターの攻撃力に依存するという長所(および短所)があるため、モンスターの転身も攻撃力の成長重視になりやすい。

-すべての補助効果を打ち消す「いてつくはどう」が存在しないので、スクルトやバイキルトで強化したらひたすら殴って時々回復するだけという単調な戦闘になりがちである。
--後述のように対人戦であればお互いにサポートキャラが入るので話は変わってくるが、ゲーム内の戦闘は非常に単調。

//&font(b,16){転生士}
//-転生士は倒したモンスターを人間に変えることができる能力を持つが、究極連携を使わない限り、その確率は非常に低く、究極連携でしかランク3の職業を獲得できない。~
//あちこちの町を巡って仲間を探すか、転生士を早めに4人揃えてランク3の職業を集めるか、どちらにせよ納得のいくキャラバンの戦力を集めるのには時間がかかる。~
//ちなみに魔物から転生した人間はほとんどが男性になる。魔物の世界には女性がほとんどいないのだろうか。~
//あ、配合から転身に変わった理由って・・・
//↑ミノーンを転生させての究極連携で、確率は高くないけどランク3が出る可能性がないため、問題点ではないと思えます。

&font(b,16){職業}
-人間キャラは成長しないので、より強いキャラバンを作るためには優秀な人材に取っ替え引っ替えする必要がある。
--本編のシナリオで仲間になる人物は1人を除いてランク1で、定員も少ないので最終的には別れることになってしまう。
--エンディング後はある場所で再び仲間に出来るが、弱い仲間と再会しても……

-キャラバンに入れられる仲間の数が最大で20人と非常に少ない。
--全職業が22種類なので、&bold(){各職を1人ずつ入れることすらできない数}。本編でも中盤である4章から仲間の切り捨てが必要になってくるほど。
--この容量は、ストーリー上で仲間になるキャラですら全員加入させることができないほど少ない。
---既に上限に達しているであろう終盤の町なのに、仲間が4人も加入する町が存在するなど、もはや嫌がらせに近い要素も存在する。
---しかも、一部のキャラ(初期メンバーの戦士、僧侶、地図士の3人など)はクリアするまでorストーリーをある程度進めるまで別れることが出来ない。
---大所帯を形成していくのが魅力なのに、仲間の取捨選択を迫られるのはチグハグ感がある上、物語で事情があって積極的に加盟してくれた人たちを解雇しなければならないのは心苦しくなってしまう。
---すべての職業には男女二種類×大人と子供二種類でそれぞれ4種類のバリエーション違いが存在するなど無駄に豪華なのだが、こんな状況なのでコンプなど不可能。
--クリア後にオーブを集めるには地図師や占い師などが必須で、戦士など戦闘役も必要。さらにアイテム所持数を補える盗賊や仲間の加入を考えて転生士も……とすれば非常にカツカツ。
--通信対戦までしようものなら、20人中最大12人も枠を奪われてしまう。残りの8人で探索は補えないことはないが、もう少し余裕が欲しかったところ。あと4枠あれば対戦用と探索用で切り替えられた。
--一応、戦士3人と騎士1人は探索・対戦のいずれにおいても極めて有用なキャラクターである。とはいえ、様々な組み合わせや究極連携を試すのであれば到底足りないだろう。
-職業ごとの格差も酷い。中でも魔法使いはとにかく不遇で、最初に仲間になるのが1章なのに2人目が加入するのが4章と非常に遅い。本編中だと他に魔法使いが仲間にならないので、まず戦力にはならない。せめて2人目に加入するのがランク2のベテランであれば、まだ移動中にも戦闘中にも役立てたのだろうが。

-同じ職業でも大人と子供がいるが、その違いは重さのみ。
--馬車の重量制限があるのでランクが同じならば体重の軽い子供のほうが当然有利となる。要するに、大人キャラはビジュアルでの差を抜きにすれば抽選の外れ枠のような扱い。むしろ体重などで差を付けない方が良かったであろう。


&font(b,16){対戦バランス}
-対戦に入るまでのハードルが高い。
--馬車の重量制限、キャラバンの人数制限もあるため、構成が思うようにできない。
---馬車の改造はストーリー中では1回ずつしかできないが、馬車のオーブのダンジョンで改造ができる。しかし、そのオーブの入手条件が「2回目のエンディング後あるカラーオーブのダンジョンのボスを一定のターン数で倒す」というもの。最大になるまでこれを12周することとなる。これまで重めの仲間は満足に使えない。
--他にもランク3の職業を集めていくこととなる。人数制限も厳しいので、編成を変えようとすれば必然的に今までの仲間を切り捨てることに。

-これらからして前作までの対戦とはかなり内容が異なっているため、前作までの対戦を好む人もいれば、今作の地味ながら戦術性のある対戦を好む人もいる。ただ、一発限りのネタだからか、次回作以降の対戦に本作の要素は組み込まれなかった。
--そもそも、ゲーム内ではキーファのもの以外にもキャラバンが無数ありながら、キャラバン同士の腕比べという状況が発生しない。前作までのような格闘場などで行われる通信対戦に近いシステムの戦闘が起こり得ないのだ。
---このため、通信相手がいなければ対戦モードを意識することすら難しい。公式大会も開催されなかった。


&font(b,16){その他}
-敵からの報酬が少ない。
--レベルアップに必要な経験値に対してモンスターからもらえる経験値がかなり低く、敵が質・量共に高いので厳しいバランス。
---もちろんDQ名物メタル狩りはあるが、安定して倒せるようになるのはなかなか大変。メタルハンターの特技や魔物の巣でエンカウントするメタルもどきは強い上に経験値も低いが、それすらが救済措置になる程に低い。
--また、前作までと違い、倒した魔物からゴールドが出るようになったが、その大半が食料代に消えるためアイテム調達が難しい。
---特に序盤は余裕がないにもかかわらずイベントアイテムを旅のキャラバンから買うことになる。商人で余分に稼いだり釣り師などで食料減少を抑えるのは必須。
---その一方で、「トラマナのつえ」は200Gで買えて250Gで売れるので錬金術が可能。攻略本には500Gで買えると書いてあるので設定ミスの可能性が高い。

-アイテム所持数は24だが、イベントアイテム(ハートゲッターや各種幻魔の羽根)は捨てる事も預ける事もできずアイテム欄を圧迫する。
--またクリア後は必然的にオーブにアイテム欄の大半を占められるため、回復アイテムや携帯食料が持ちづらい原因ともなっている。
---そのため、クリア後なら預かり所を作れる盗賊の加入はまず必須である。
--常に3台の馬車を伴って冒険しているのに、所持アイテムが少ないことはイメージ的にも違和感がある。

--従来と違って気軽に転身を行いにくく、モンスターの心が溜まっていきやすい。そのため、心の最大所持数が30個程度では余裕がなくなることが多い。特に、やり込みを進めていくと全く枠が足りなくなる。

-キャラバンから冒険に出るときはルインに話しかけて出発するのだが、その時のメッセージがストーリーを進めるにつれてかなり長くなる。
--ベースキャンプを移動させたい時に長いからって連打するとキャラバンでの冒険を誤入力しがちなので更に面倒に。久しぶりにやる人などからしたら嬉しいが、レベル上げ中はかなりうざったい。

-教会でしかセーブができず、さらにセーブにかかる時間が約10秒程度とやけに長い。
--クイックセーブやスリープモードなどの機能も無いので携帯機ではあるが、外で気軽に遊ぶには向かない。GBA本体の電池切れギリギリまで粘ると最悪セーブ中に電池が切れ、セーブが壊れる危険がある。

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**総評
DQM続編の様に見える題名だが、実際には通常のドラクエ寄りのゲーム内容で、ポケモンフォロワーだった前作・前々作とは大きく方向性が変わっていた事や、転身・キャラバン・食料等といったシステムが本作独特で、DQMや従来の作品の路線を期待したユーザーから批判される事になった。

期待とのギャップで発売当初の評判は振るわなかったが、オーブや転生などのやり込み要素は非常に豊富であり、独特のシステムも慣れれば本作独自の魅力があり、やり込み甲斐のある作品として現在では再評価されている。

//単体としては勿論悪い作品ではないし、それでいて既存のDQM作品のプレイ経験が全く役に立たない作品という訳でもない。ともあれ、GBAのスルメゲーをやりたいなら、まさしくこれを差し置いて他は無い。
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**余談
-フォズ大神官の髪の色や髪型について。
--本作では水色のロングヘアーとなっている。当時エニックスから刊行されていた『4コママンガ劇場』でもフォズ大神官を水色の髪で描く作家が多く、その影響か本作の公式イラストでも水色のロングヘアーとして描かれる事となった。
--だが実際は『VII』のドット絵は水色のベールに黒髪のおさげである。『VII』のドット絵を誤認し、ベール部分を髪と勘違いした産物と思われる。
---ドット絵ではおさげの部分が分かり辛く、当時の『VII』関連作品では彼女のイラストが存在しておらず、確認する手段が少なかったことで、黒髪のおさげであることが十分に認知されていなかった。
--一方で2004年に刊行された新装版『小説 ドラゴンクエストVII』の新規挿絵では本来想定していたであろう「ベール+おさげ」のフォズ大神官が描かれており、3DS版『VII』発売まではビジュアルイメージが曖昧な状態が続いていた。

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**その後の展開
-キャラバン編成や転身などの独特のシステムはあったものの、今作のシステムは以降の作品では登場していない。
--ただオーブのダンジョンは評価が高かったのか、本家では似たようなものとして『IX』では「宝の地図」が、『X』では「魔法の迷宮」が登場している。

-過去モンスターズシリーズ2作は後にニンテンドー3DSでリメイク版が発売されたが、本作にはリメイクはない。