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ざくろの味 - (2023/01/11 (水) 00:37:58) のソース

*ざくろの味
【ざくろのあじ】
|ジャンル|サウンドノベル|&amazon(B000068HI9)|
|対応機種|スーパーファミコン|~|
|メディア|16MbitROMカートリッジ|~|
|発売元|イマジニア|~|
|開発元|スタジオ・クリップス|~|
|発売日|1995年11月22日|~|
|定価|11800円|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|これ、おいしいよ|~|
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#contents(fromhere)
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#center(){{
 &big(){''……ひどく寒い夜だった。''}
 }}
~
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**概要
イマジニアから『[[月面のアヌビス]]』と同時に発売された、世にも珍しい双子サウンドノベルの片割れ。~
ただし開発元は異なり、世界観や登場人物も異なっている。

シナリオはSF・特撮研究家の聖咲奇氏が担当している。

**ストーリー
酷く冷える雪の夜。SF作家の青年・土門は、都内のビルの4階にある雑誌編集部を訪れていた。~
しかしそこで地震が発生し、ビルは丸ごと地下に埋没してしまう…。

**特徴
-主人公は大学浪人2年生の青年。ヒロインはその高校時代の先輩で、編集部のデザイナー。共に名前は変更可能。

-シナリオは複数用意されているが、「地下に埋没したビルからの脱出を目指す」という設定は共通している。

-登場人物は『[[かまいたちの夜]]』同様シルエットで描かれている。またメインシナリオのみ、敵側のキャラは違う色になる。
--この設定を効果的に利用した演出もある。''1回だけだが''。

-パーセンテージで表わされる「達成率」が存在する。

-''物語冒頭に「月面のアヌビス」という単語が登場する''。因みに『アヌビス』のゲーム中には「ざくろの味」という単語が登場している。

**評価点
-メインシナリオはゾンビの出て来るパニックホラー。話を進めていくと「ざくろの味」というタイトルの意味がわかる。
--ちょっとした判断の間違いで登場人物たちが次々とゾンビ化していく。もちろん主人公自身がゾンビになる、ということも・・・
--ゾンビが登場するシーンはどれも文章だけとはいえグロテスクな想像をかきたてる表現となっている。

-登場人物が印象に残りやすい。特に空手の心得のある「人間凶器」勝又はどのシナリオでも目立つ。
--ちなみに説明書には登場人物紹介が載っておらず、ゲームの冒頭で紹介文が出るのだが、この紹介文は再プレイ時には省略される。

-演出面は可もなく不可もない。シルエットの種類は豊富、実写取り込みの背景も上手く行っている。

-当時のノベルゲーとしては、達成度表示が存在するのは貴重である。

**問題点
-『アヌビス』と違って、章単位の読み直し機能は無い。章題自体は付いているし、選択肢を間違うと1発死にする事が多いソフトなのだからあると便利なのだが。
--とはいえあちらには達成率表示は無い。同時に開発していたなら両方搭載できなかったのだろうか?

-既読文の読み直しは出来るものの、表示スピードが通常時と同じという遅さ。とても遡って見ていられない。

-誤字脱字がやたらと多い。

-達成率を100%にすると隠しシナリオがプレイできるのだが、これは短いというより手抜きな内容で、しかもオチは脱力もの。「これって何のゲームだっけ?」と思う事請け合いである。

-ヒロインは、説明書では「パートナー」と紹介されているが、あまり主人公とは一緒に行動しない。

#region(メインシナリオに奇妙な点が色々と…)

-メインシナリオはゾンビが登場するホラーチックな内容だが、死体を再生する化学兵器による事件なのでオカルトものではない。しかしこの科学兵器の設定がなんともあやふやである。
--首の無い死体が生き返ったり、しかもまるで意思が有るかのようにどこかへ消えたり。はっきり言って『バタリアン』((原題“Return of the Living Dead”。))である。
--ゾンビに殺されて蘇ると、なぜか科学兵器に関する情報が頭に入っており、''敵の行動パターンを読めるようになったりする''。
--「死後数時間以内の死体にしか効かない」という触れ込みなのに、何十年も前の実験体らしい死体まで復活する。
---活動停止していただけで、何十年も前の時点で既にゾンビ化していたと考えると矛盾は無いのかもしれないが。
---ちなみにゲーム中ではこれについて主人公が、自分たちの生のエネルギーに反応したのかもと発言している。

-脱出ルートは2種類あるが、その片方では地面から這い出してきた兵士のゾンビとの対決シーンがある。
--もう片方のルートでも、兵士達が這い出してくるシーンがある(テキスト・演出とも完全に同じ)…のだが、こちらでは対決しないどころか、''主人公達は何事も無かったかのようにデートの話をしながら呑気に歩いて脱出してしまう''。シーンの繋げミスか?

-主人公自身がゾンビ化するバッドエンドでは、他の人間のゾンビが主人公の隣を素通りして階段を下りて行くシーンがあるが、なぜか主人公と一緒にいたはずの編集長はノーリアクションで、しかも主人公が「大丈夫ですよ」の一言で片付けてしまう。

-非常に見るのが難しいバッドエンドが2種類存在する。どちらもゲームの初期に特定の選択肢を選んでおかなければならないのだが、結末の内容と関連性がない上に最後の最後で分岐するものだから、気付きにくい。

#endregion

-シナリオの1つでは、過去に主人公の同級生が死ぬ前に何を伝えるために家に来たのか、結局明かされない。そもそもこのシナリオ自体が手抜きのようにスカスカ。

**総評
-シナリオのボリューム・システムの独自性共に、同時発売の『アヌビス』に劣っている。''しかしプレイヤーに与える印象の強烈さに関しては、本作は『アヌビス』の比ではないだろう''。
--メインシナリオのバッドエンドは後味が非常に悪いものばかりで、更に登場人物の1人がゾンビ化するシーンはトラウマ確実であり、この点だけはいまだに語り草となっているほどである。
--とはいえ、それを上回るインパクトはサブシナリオには無く、しかも前述の通り''最後のシナリオが脱力ものなもんだから''尻すぼみという感は拭えないだろうが…。

**その他
-本作のサウンドトラックCDには、ボイスの入ったパートが新規収録されている。
--ボイスは主人公のモノローグ(+周囲のガヤ声)によるもので、所謂「ドラマCD」というほどのものではない。
---なおこのモノローグでは、「8人の編集部員の内、6人の存在は確認されたが…」と語られているが、ゲーム本編でいなくなっているのは2人ではなく1人である。本編では他に負傷者が1人いるので、「無事が確認されたが…」の間違いか、企画段階のプロットに沿ったものと推測される。
--因みにこのCD、曲名には「ゾンビ」というタイトルが付いており、ボイスでもはっきり「ゾンビ」と言っているのだが、ゲーム本編では「ゾンビ」という単語は1回も出てこない。「死体」「屍人」と呼ばれている。シナリオライターの拘りだろうか?