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るいは智を呼ぶ - (2021/03/24 (水) 17:51:51) のソース

#contents(fromhere)
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*るいは智を呼ぶ
【るいはともをよぶ】
 
|ジャンル|新美少女エンタメADV|&amazon(B00171MNQ0)&br()&amazon(B003H9MM34)|
|対応機種|Windows 2000/XP/Vista&br()(FVEは7まで対応)|~|
|メディア|DVD-ROM 1枚|~|
|発売・開発元|暁WORKS|~|
|発売日|初回限定版:2008年6月26日&br()通常版:2008年7月31日&br()FVE:2010年9月23日|~|
|定価|初回限定版:9,240円&br()通常版・FVE:8,190円|~|
|レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~|
|配信|【FVE】FANZA:2011年12月22日/6,995円|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|特異な女装男子作品&br;洗練された設定とシナリオ&br;実は異能バトル物&br;個性的すぎる各キャラ|~|
※FVE=フルボイスエディション
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**概要
有限会社AKABEiSOFT2((読みは「あかべぇそふとつぅ」。))のブランド「暁WORKS」から発売された作品。~
2010年2月20日にファンディスクである『るいは智を呼ぶファンディスク-明日のむこうに視える風-』が発売され、それに合わせて主人公のボイスを新規収録する等した『るいは智を呼ぶ-フルボイスエディション-』が発売されている。~

従来の「女装男子」というジャンルに、サスペンスやホラーや異能バトル物等の、一見すると親和性の低そうなジャンルを融合させた意欲作である。~
それだけに内容はなかなかに異端である。例えば、主要人物は学生だが、学園要素はほとんどない。~

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**あらすじ
私立南聡学園に通う美少女、和久津智には〝痣〟があった。呪いの痣。痣を持つ者に〝あるひとつの行動〟を禁じる呪われた徴。~
ある日、智の許に一通の手紙が届く。それは、死んだはずの母からの手紙。そこに記されていた母からの命――。~
『皆元さんを頼りなさい』~
件の人物、皆本信吾の一人娘、皆本るいの許を訪れる智。そこで出会った少女、るいは家なき娘だった。~
たてつづけに起こるトラブル。火事、都市伝説との遭遇、轢殺未遂、裏社会に追われる少女。その中で出会った6人の少女達。~
〝腹ぺこ娘〟皆元るい。〝レズビアン〟花城花鶏。〝ロリスケーター〟鳴滝こより。〝毒舌陶器〟茅場茜子。〝キングオブ空気読めない〟白鞘伊代。~
そして智は知る。運命に導かれるように出会った6人の少女。彼女たちには智と同じ〝呪いの痣〟があった。~
一心同体から程遠いバラバラの6人は、〝呪われた世界〟をやっつけるため、『同盟』を結ぶ。~
〝呪われた世界〟と闘い続ける6人の少女は、やがて『同盟』から『仲間』へと変わっていく……。~
しかし智には、誰も知らない、仲間にも言えない、〝ある秘密〟があった。~
彼女は…………。~

**用語
-「呪い」
--ヒロインおよび重要人物が持っている、行なってはいけない体質のようなもの。呪いを踏むと、骸骨のような『ノロイ』に命を奪われるという。
-痣
--呪い持ちが一様に持っているもの。模様は同じだが、ついている箇所が異なる。
-「才能」
--呪いとは相反する、一種の特殊能力。一部のキャラは、酷使すると反動で腹が減ったり眠気に襲われたりする。

尚、呪いと才能についてはキャラクター紹介内で記述しているため、当該項目を参照のこと。
-「ノロイ」
--呪いを踏むことで襲ってくるという畏怖されし存在。それは黒い影だったり、骸骨だったりと姿は定着していない。

**キャラクター紹介
#region(クリックで展開)
&size(15){''和久津智(わくつとも)''}~
本作の主人公。優秀な女学園で優等生を演じている、正真正銘の&bold(){男}。見た目は黒髪ロングの似合う美少女。~
最初から女性として生活しているため、女装行為に関しての葛藤や努力等は少ない。たまに苦悩するシーンはあるが。~
『演じて』いるということで、実は非常に卑怯な性分を持つ。策略家でもあり、同盟の中では智謀という存在。~
あくまで性分であるため、性格はどこか人情臭かったり、世話好きな面があり、まともである。

&size(15){''皆元るい(みなもと-)''}~
メインヒロイン。情に厚く、疑うことを知らない。そのため、花鶏とは犬猿の仲で常に揉めに揉める。~
あまり生かされなかった設定だが、ベースの演奏が得意。家なき娘なため、これで生活費を捻出している。~
タイトルにもあるように、智の良きパートナーで、お楽しみシーン数は全キャラでダントツ。~

&size(15){''花城花鶏(はなぐすくあとり)''}~
ロシア系クォーター。本作における&bold(){色々な面での問題キャラ}。~
ヒロイン中最狂の変態。最初は百合好きな少女だが、実際は真性レズ。~
言動もほとんど18禁を横行しているため、コンシュマー化が絶望視されている要因。~
お気に入りのヒロインには名前で呼ぶが、アウトオブ眼中のキャラは苗字で呼び捨てである。~
その割にはかなり薄情な面が多く、基本的にはアンニュイなイメージが強い。そのため、るいとは仲が悪い。

&size(15){''鳴滝こより(なるたき-)''}~
貴重なまとも系キャラ。○学生っぽい描写はあるが、18歳以上なのは間違いない。~
スケートを靴同様に使っており、機動性に優れる演出が多い。~
まともではあるが、序盤においては幼い故に問題行動をよく起こしている。

&size(15){''白鞘伊代(しらさやいよ)''}~
貴重なまとも系キャラその2。トークが下手なのと、空気が読めない((とはいうものの、言ってることは至極真っ当なもので、KY扱いをされるのはまともなキャラが少ないからである。))のを除けば。~
巨乳メガネキャラで、委員長キャラ。実際に委員長なのかは明言されていない。~
ダイエットには多大な熱を入れ込んでいる。~
FDでは担当声優の引退に伴い、キャストが交代した。

&size(15){''茅場茜子(かやばあかねこ)''}~
花鶏に次ぐ超個性派キャラ。猫っぽいイメージが強いゴスロリ少女。~
人のことを妙な俗称で呼ぶのがデフォルトで、自分のことはさん付けで呼ぶ。~
珍妙な立ち絵でとんちきな事を言い、伊代に突っ込まれるのが様式美。~
大のらーめん好き。猫に名前をつけているが、何故か仰々しい横文字ばかり。


以下は非攻略メインキャラ

&size(15){''才野原惠(さいのはらめぐむ)''}~
見た目はスラッとした男子校生だが、実は女。茜子よりは胸がある。~
言動が謎めいており、はぐらかすような言葉が多い。~
女性でありながらも体術は得意で、特に剣術は秀でている。~
智に一目惚れしたような節があるが、固定ルートに入るとその面はなくなっていく。

&size(15){''尹央輝(ゆんいぇんふぇい)''}~
ドスの利いた声とそれに見合った凄みのある少女。というかロリ。~
スリーサイズは全キャラダントツのボトム。AAサイズ。胸に関しては彼女の態度も激変する。~
裏の社会に精通しており、容姿も魔女のようなコスプレに見える。~

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#region(各キャラの呪い一覧。ネタバレのため要展開)

|智|自分のほんとうの性別を知られてはいけない|
|るい|約束を交わしてはいけない|
|花鶏|助けを求めてはいけない|
|こより|通ったことのない扉を開けてはいけない|
|伊代|固有名詞(名前等)を呼んではいけない|
|茜子|地肌で触れてはいけない|
|惠|自分に関する真実を語ってはいけない|
|央輝|直接太陽の光を浴びてはいけない|

#endregion
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#region(各キャラの才能一覧。重要なネタバレのため要展開)

|智|望んだ未来を引き寄せる。ただし有り得ない未来は不可|
|るい|とてつもない怪力を発する。スクーターを難なく放り投げたりなど|
|花鶏|思考を加速させ、常人の3秒を15秒ほどで感じ取る|
|こより|一度見た動きをそっくりそのまま射影して行動できる|
|伊代|あらゆる機器を使いこなす。PC等のパスワードも瞬時に解読する|
|茜子|相手の心を読み取る。ただし、嘘をついているかいないかの判断程度|
|惠|他者を殺すことで延命し、更に致命的な外傷を短時間で完治させる|
|央輝|%%相手を奴隷にさせる%%視線を合わせた相手の感情を増幅させる|

#endregion
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**評価点
''シナリオ''
-概要の通り「女装男子」に一見すると親和性の低いジャンルを組み合わせたにもかかわらず、1つの物語として纏め上げた点は高く評価される。
--ただし、重要人物が呆気なく死んだり、非常に陰鬱な展開も多いため、「女装男子」の部分に惹かれたりジャケ買いした人にとっては不意打ちに思える。

**賛否両論点
''『南総里見八犬伝』との類似点''
-痣のある位置や作中の固有名詞が『南総里見八犬伝』を意識しており、相応に共通点が多い。そのため、オリジナリティの観点から賛否が分かれる。
--歴史的書物のためパクリという指摘は皆無だし、そもそも『八犬伝』を参考にした作品は多いが、読んだ事がある人はそう感じてもおかしくない。~
詳細については、[[こちら>https://www37.atwiki.jp/ruitomo/pages/31.html]](外部サイト)を参照。

''キャラクター''
-「女装男子」というジャンルの割にクセの強いキャラが多いため、その点ではジャンルに対する先入観を取り払う事が必要になる。
--花鶏は、好きなキャラとそうでないキャラとの態度の違いがはっきりしており、シリアスなシーンでは呪いのせいもあってか、ある意味伊代以上のKYさを見せる。~
中の人の演技も抑揚が少なく、喘ぎ声や激高するシーンを除いては棒読みに聞こえる。また、花鶏ルートの結末はやや後味の悪いものとなっている。
--るいは、タイトルやシーン数のおかげで優遇されてはいるが、最終ルート(固定)の存在により、攻略を進めていくほど存在感が薄まってしまう。~
るいの才能を生かすシーンも徐々に減っていくため、るいがメインヒロインなのか疑問が生じる。

#region(わかりにくい方へ。要ネタバレ)

初週はるいルートで固定。その後は花鶏、こより、伊代の選択で、最後に茜子のルート(真ルートとも言えるシナリオ)が開放される。~
つまり、本作の重点はるいよりも茜子のほうに向いていると言っても過言ではない。~
また、デレた時の茜子は智のことをちゃんと名前で呼んだりする等評価が高いため、最終的にるいの印象が希薄になる。~
るい自体も人気はあるのだが…。

#endregion

**問題点
''日常シーン''
-会話の中心である智の話し方が、惠同等にはぐらかしたものやわざと小難しい言い回しをしたものが多く、会話のイシューが定まらずテンポが悪い。
--ただし、個別ルートに入ればそれなりに改善される。

''お楽しみシーンの少なさ''
-最多のるいでも3シーン。しかも、本番シーンは1つしかない。そのため、実用性を期待した層からはあまり良い評価を得られなかった。
--歩くセクハラ的な存在である花鶏のシーンも少ないため、これに残念がった人も多い。
--ただし、シナリオ重視の作品なので、お楽しみシーンの少なさを問題視しない人もいる。

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**総評
女装男子というジャンルに一石を投じ、当ジャンルの幅を広げることに成功した意欲作と言ってよい。~
お楽しみシーンの少なさは残念に思われるものの、シナリオは破綻なくまとまっており、各ヒロインの扱いに関してもあくまで許容範囲内である。~
一方で、日常シーンのテンポの悪さはプレイヤーを物語に引き込む上でかなりの障害になってしまっているのも事実であり、これを許容できるかが作品の評価を左右しているのは否定できない。当初の売上不振も、事前に体験版でこの欠点を曝け出したのが一因である。~
結論としては、名作・良作と評するのは憚られ、冒頭で述べたように意欲作と言うのが妥当なところだろう。

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*るいは智を呼ぶファンディスク ―明日のむこうに視える風―
【るいはともをよぶふぁんでぃすく あすのむこうにみえるかぜ】
 
|ジャンル|新美少女エンタメADV|&amazon(B003H9MM3Y)|
|対応機種|Windows 2000~7|~|
|メディア|DVD-ROM 1枚|~|
|発売・開発元|暁WORKS|~|
|発売日|2010年9月23日|~|
|定価|9,240円|~|
|レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~|
|配信|FANZA:2014年10月31日/4,937円|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|完結編とも評される|~|

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**概要(FD)
『るいは智を呼ぶ―フルボイスエディション―』と同日にリリースされたファンディスク。~
一般的なファンディスク同様に、サブヒロインがヒロインに昇格し、後日談やアナザーシナリオが繰り広げられる。~
これだけだとありがちだが、本作は、智がフルボイス化され、完結シナリオと言えるシナリオがあるのが特徴。

**評価点(FD)
''智のフルボイス化''
-「女装男子」というジャンルは、アダルトゲーム界隈では主人公のフルボイス化が望まれる稀有なジャンルである。本作でのボイスの実装は、この要請に応えたと言える。

''完結シナリオ''
-単体としても相応に完成度が高いが、本作を本編のおまけに止まらないものにした点は評価できる。

**問題点(FD)
''蘭の存在意義''
-新キャラとして公式サイトでも大きく取り扱われたが、シナリオ上ではほとんど出番がない。
--最終章での重要な要素にはなるが、蘭自体には何の掘り下げもない。あるキャラとの確執が存在するが、それも解決しない。

''無印版の未プレイが前提のシナリオが存在する''
-無印版をプレイ後にあるキャラのシナリオをプレイすると、意外性がなく拍子抜けする。そのため、却ってファンディスクとしての立ち位置が微妙である。

''花鶏役の演技''
-日常パートでの演技の拙さは顕著である。感情を抑えた演技を要求されたであろう点を勘案しても、さすがに棒読みが過ぎる。

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**総評(FD)
ファンディスクとしては、あくまで標準的なものである。ただし、完結編と言えるシナリオを用意した事でファンディスクの在り方に一石を投じた点は相応に評価されてよい。

**余談
-2013年9月26日に5pb.によりプレイステーション3とプレイステーション・ヴィータに移植されている。
--ファンディスクも同時収録されている。

-この会社の作品では半ば恒例行事の感があるが、「広報戦略の乏しさが原因で盛大にコケる→発売後に評価される→慌てて通常版を生産する→ジワ売れ」のパターンを本作も踏襲している。
--また、同社のメインブランド「あかべぇそふとつぅ」の新作と発売日が被っており、ただでさえ市場規模の小さい業界であるのに、経営戦略の観点からも首を傾げざるを得ない事になっている((ちなみに、2011年の話だが、社内ブランド同士で発売日が被って共倒れした例がある。))。

-ファンディスクの制作にあたってシナリオが公募されており、応募者はスタッフロールで全員が列挙されている。FDという位置づけに応える措置と言えるだろう。