国連・子どもの権利委員会の第3回総括所見/最終見解等に対する日本政府のコメント


1.手続面

(1)日本政府の報告書に関する委員会の最終見解については、その公表に先立つ6月11日午後に先行未編集版が事務局から日本政府代表部に送付されてきた後、代表部は最終見解における誤解ないし事実誤認に関する若干のコメントを事務局に伝達した。同日、委員会の最終見解が、日本政府のコメントの一部を反映する形で、インターネット上で公表された。しかしながら、日本政府は、6月11日版にはなかったいくつかの新たなパラグラフ(CRC/C/JPN/CO/3のパラ23、28、73、75等)をともなう異なる版が、事実関係の誤りを検討する機会を締約国に与えないまま公表されたことを遺憾に思う。日本政府はまた、新たなパラグラフは技術的改訂の域を超えており、また一部のメディアは新たに挿入されたパラグラフの一部しか報道しなかったことに対しても委員会の注意を促したい。
(2)さらに、不正確な法律名、用語および日付など、未編集版に含まれていた事実関係の誤りに関する日本政府の指摘が公表された版に一部反映されていないこと(CRC/C/JPN/CO/3のパラ18、CRC/C/OPAC/JPN/CO/1のパラ6、7および13ならびにCRC/C/OPSC/JPN/CO/1のパラ20および21)を鑑みると、日本政府は遺憾ながら最終見解の信頼性についても疑義を呈さざるを得ない。

2.内容面

 最終見解で指摘されたいくつかの側面に関して、日本政府は、児童の権利条約の実施に関わる措置および見解について以下のコメントを委員会に伝達する。


  • パラ33
 男女共同参画の推進に言及した教育基本法第5条の削除に関する委員会の懸念について、日本政府は以下の見解を表明する。
 教育上、男女の共学は認められなければならないと定める旧教育基本法第5条の目的は、制定以降の60年間、日本において広く理解・実践されてきた。しかし、社会における男女共同参画は十全に実現されていないことから、男女双方が、互いにその人権を尊重し、責任を分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、相互の尊重および男女の協働によりより豊かな社会を築いていくために必要な能力および才能を、教育を通じて発達させていくことが重要である。これに基づき、「男女の平等」は、日本で教育を行うために求められる不可欠の目標のひとつとして、改正教育基本法第2条でとくに定められている。委員会の懸念は誤解に基づくものである。

  • パラ72および73
「各種学校」として認可されている外国人学校のほとんどは、実際には自治体による補助を受けている。さらに、これらの学校の卒業生が日本の大学入学試験を受験する資格がない場合がある旨の委員会の懸念については、中等学校を修了した者または同等の学力を有する者は、国籍に関わらず、誰でも大学入学試験の受験資格を有する。外国人学校の卒業生に関しては、以下の基準を満たす者は誰でも大学入学試験の受験資格を有するところである。
1)母国によって高等学校相当の課程を有する旨認定されている日本の外国人学校を卒業した者。
2)国際的な評価団体の認定を受けた外国人学校の12年の課程を修了した者。
3)大学が行う個別の入学資格審査により、高等学校を卒業した者に相当する以上の学力を有していると認められた者。
 したがって、委員会の懸念は誤解に基づくものである。

  • パラ74および75(新規追加)
 小中高校で使用される教科書に適用される教科書検定制度において、政府は歴史または歴史的事件に関する一定の見方を決定する立場にはない。民間企業が制作・編集する教科書の欠陥(明らかな誤りや著しく均衡を書いた記述など)を、審査時における客観的な学問的知見その他の適切な資料に照らして指摘するのは、政府関係者ではない研究者等から構成される教科書用図書検定調査審議会である。審査は、とくに他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを目的とする教育基本法と、近隣のアジア諸国との間の国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされているべきである旨の指針を掲げる、〔文部科学〕省の教科用図書検定指針である。したがって、日本の歴史教科書が、歴史的事件に関して日本の解釈のみを反映しているため、他国の児童との相互理解を強化していないという委員会の懸念は当を得ていない。
 日本政府は、歴史教育の適正な実施を通じ、日本と世界に関する理解を深め、近隣諸国を含む他国との相互理解および相互信頼を強化しようと努めているところである。

  • パラ77
「犯罪行為の疑いがない場合でも庇護申請児童を収容する慣行が広く行われていること」に対する委員会の懸念については、犯罪的活動に数えられる退去強制事由もなく庇護申請児童が収容されることは考えにくい。また、「慣行が広く行われている」という点については、これらの児童の収容はやむを得ない場合に限られている。したがって、委員会の懸念は事実誤認に基づくものである。

  • パラ83
 パラ83の「起訴前勾留」(pretrial detention)は、パラ84ないし85(g)にいう「起訴前勾留」とは明らかに異なる概念であるので、「観護措置」(protective detention)に訂正されるべきである。

  • パラ89
 第3回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。


  • パラ9
 委員会は、締約国に対し、条約に基づく次回の定期報告において、自衛隊生徒として採用された者の社会経済的背景に関する情報を提供するよう求めている。しかし、防衛省は2009年4月に自衛隊生徒の採用を廃止しており、要請された情報を提供することはできない。

  • パラ19
 第1回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。


  • パラ45
 第1回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。
(以上)


  • 更新履歴:ページ作成(2011年10月4日)。
最終更新:2011年10月04日 10:49