国連・障害者権利委員会の総括所見抜粋:子ども・教育関連(1)

  • 2011年~:一般的意見2号抜粋/チュニジア/スペイン/ペルー/アルゼンチン/中国/ハンガリー/パラグアイ/オーストリア/オーストラリア/エルサルバドル/スウェーデン/アゼルバイジャン/コスタリカ
    • 原文は国連・障害者権利委員会のサイト(Sessions)を参照。
  • 関連

一般的意見2号「第9条:アクセシビリティ」(2014年)抜粋

39.学校へのアクセシブルな移動手段、アクセシブルな校舎ならびにアクセシブルな情報およびコミュニケーションがなければ、障害のある人は教育に対する権利(条約第24条)を行使する機会を有しないことになろう。したがって、学校は、条約第9条第1項(a)で明示的に指摘されているように、アクセシブルでなければならない。ただし、アクセシブルでなければならないのはインクルーシブ教育のプロセス全体なのであって、建物のみならず、すべての情報およびコミュニケーション(環境総合支援型(ambient)またはFM活用型の支援システム、支援サービスおよび学校における合理的配慮を含む)についてもこれが当てはまる。アクセシビリティを促進するため、教育、および学校カリキュラムの内容は、手話、点字、代替文字、ならびに、コミュニケーションおよび移動誘導のための拡張型・代替型の形態、手段および様式(第24条第3項(a))を推進するようなものであるべきであり、かつ、これらによって遂行されるべきである。その際、盲、聾および盲聾の生徒が使用する適切な言語ならびにコミュニケーションの形態および手段に特別な注意を払うことが求められる。授業の形態および手段はアクセシブルであるべきであり、かつアクセシブルな環境において遂行されるべきである。障害のある生徒が置かれる環境全体が、インクルージョンを促進し、教育プロセス全体におけるこれらの生徒の平等を保障するようなものでなければならない。条約第24条の全面的実施は、他の中核的人権文書、および、教育における差別を禁止する条約(国際連合教育科学機関)の規定とあわせて検討されるべきである。(原文英語〔PDF〕全文日本語訳〔日本障害者リハビリテーション協会仮訳〕)

チュニジア(2011年)

障害のある子ども(第7条)
16.委員会は、2~14歳の子どもの94%が家庭において暴力的手段(言語的暴力、身体的暴力または剥奪のいずれによるかは問わない)よるしつけを受けていることを明らかにした複数指標クラスター調査(MICS2006)の結果に鑑み、危険な事態に達する可能性もある、子ども(障害のある子どもを含む)に対する常習的な不当な取扱いの通報(signalement)率が低いことをとりわけ懸念する。
17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある男子および女子に対する暴力の現象について評価を実施するとともに、このような現象との闘いを改善する目的で体系的なかつ細分化されたデータ(後掲パラ39参照)を集積すること。
  • (b) 障害のある子どもをケアしている施設が、適切な基準にしたがうことを条件として特別な訓練を受けた職員を配置され、定期的な監視および評価を受け、かつ、障害のある子どもがアクセスできる苦情申立て手続を設置することを確保すること。
  • (c) 独立のフォローアップ機構を設置すること。
  • (d) 障害のある男子および女子の施設措置に代えてコミュニティを基盤とするケアを提供するための措置をとること。
教育(第24条)
30.委員会は、障害のある子どものインクルーシブ教育に関する国家プログラムに留意する。しかしながら委員会は、インクルージョン戦略が実際には学校において平等に実施されていないこと、普通学校における子どもの人数およびインクルーシブな学級の運営に関する規則の違反が当たり前になっていること、ならびに、同一県内の諸地域間で学校が公平に分布していないことに、深い懸念とともに留意するものである。
31.委員会は、多くの統合学校において障害のある子どもを受け入れる設備が整っておらず、かつ、障害に関する教員および管理者の研修が締約国において依然として懸念事項のひとつとなっていることを、同様に懸念する。
32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある者が、他の者との平等を基礎として表現および意見の自由に対する権利を行使できることを確保するための措置をとるとともに、これとの関連で、一般公衆向けの情報をアクセシブルな形式で提供し、ならびに、――とくにろう者、難聴者および盲ろう者との関係で――手話の使用を承認しおよび促進すること。
  • (b) 障害のある女子および男子を対象としたインクルーシブ教育をすべての学校で施行するための努力を増強すること。
  • (c) 教員および管理者を含む教育関係者を対象とした研修を強化すること。
  • (d) 障害のある子どものインクルーシブ教育に関する国家プログラムを実施するため、十分な財源および人的資源を配分すること。

スペイン(2011年)

障害のある子ども(第7条)
23.委員会は、障害のある子どもの虐待率が他の子どもに比して高いと報告されていることをとりわけ懸念する。委員会は、障害のある子どもの早期発見、家族的介入および十分な情報を提供したうえでの支援が行なわれているために障害児の全面的発達および意見表明能力が危機にさらされていること、ならびに、とくに社会サービス、保健サービスおよび教育サービスにおいて利用可能な資源および調整のとれた行政が欠けていることを、同様に懸念するものである。
24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を増強するとともに、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究を実施して、このような権利侵害を根絶するための措置をとること。
  • (b) 自分自身の意見を表明する障害児の権利を確保するような政策およびプログラムを確立すること。
  • (c) 十分な情報を提供したうえでの治療、リハビリテーションおよびハビリテーションのためのサービスを含む支援サービス、ならびに、とくに乳幼児期における障害児の健康上、心理社会上および教育上のニーズに対応するケアへのインクルーシブなアクセスを確保するため、十分な資源をともなう、調整のとれた公共政策を策定すること。
教育(第24条)
43.委員会は、特別な教育ニーズを有する生徒の学校教育がインクルージョンの原則によって規律されていること、教育における差別が禁じられていること、および、障害のあるほとんどの子どもが普通教育制度に包摂されていることを歓迎する。委員会は、専門の教員、有資格の専門家ならびに必要な教材および資源の提供を教育当局に対して義務づけた教育に関する組織法第2/2006号、ならびに、障害のある生徒のために必要なカリキュラムの修正および多様化を学校に対して義務づけた諸法律の制定を称賛するものである。しかしながら委員会は、合理的配慮が行なわれないとされる事案、隔離および排除が継続しているとされる事案、差別を正当化するために財政的主張が利用されているとされる事案ならびに子どもがその親の意思に反して特別教育に編入される事案に鑑み、これらの法律の実際の実施について懸念を覚える。委員会は、障害のある子どもの特別教育への措置について異議を唱える親に不服申立ての可能性が認められておらず、かつ、このような親にとっての唯一の選択肢は、自己の費用により子どもの教育を行なうか、または普通教育制度における子どもの合理的配慮のための費用を支払うことであることに、懸念とともに留意するものである。
44.委員会は、合理的配慮の否定は差別であること、および、合理的配慮を行なう義務は即時的に適用されるものであって漸進的実現の対象ではないことを、あらためて指摘する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) インクルーシブ教育に対する権利を実施するために十分な財源および人的資源を配分し、専門の資格を有する教員を手配できる可能性の評価に特段の注意を払い、ならびに、地方政府の教育部局が条約上の義務を理解しおよび条約の規定にしたがって行動することを確保することにより、教育において合理的配慮を行なうための努力を増強すること。
  • (b) 障害のある子どもを特別学校もしくは特別学級に措置し、またはこのような子どもに対して水準を緩和したカリキュラムによる教育のみを提供する旨の決定が、親との協議に基づいて行なわれることを確保すること。
  • (c) 障害のある子どもの親が教育のための費用または普通学校における合理的配慮措置のための費用の支払いを義務づけられないことを確保すること。
  • (d) 子どもを隔離された環境に措置する旨の決定に対し、速やかにかつ効果的に不服申し立てが行なえることを確保すること。

ペルー(2012年)

  • (注)未編集版に基づいて訳出
障害のある子ども(第7条)
16.子どもおよび青少年法(法律第27337号)において障害のある子どもの一定の権利が認められていることには留意しながらも、委員会は、これらの権利の事実上の享受について懸念を覚える。委員会は、締約国の統計データにおいて、障害のある子ども、とくに先住民族の子どもが不可視化されていることを懸念するものである。
17.委員会は、締約国が、障害のある子ども(とくに先住民族の子ども)に対する特別なケアおよび援助に優先度の高い課題として取り組み、かつ利用可能な資源を最大限に投資しながらこれらの子どもに対する差別の解消を図るとともに、これらの子どもの権利の擁護状況を監視するために正確なデータを収集するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、障害のある子どもに対する暴力、その虐待および極度の遺棄を防止するための措置をとるよう、勧告するものである。
教育(第24条)
36.インクルーシブ教育の制度の枠組みを定めることを目的とした多くの省令には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、これらの規定の事実上の実施に関して存在する欠陥、とくに、先住民族およびアフリカ系ペルー人コミュニティにおける非識字率ならびにこれが先住民族およびマイノリティの障害児に与える可能性がある影響について、懸念を覚える。
37.委員会は、締約国が、障害のある子どもおよび青少年を対象のためのインクルーシブ教育の制度に向けた進展における前進を達成するために十分な予算財源を配分するとともに、障害のある子ども、とくに先住民族およびアフリカ系ペルー人の子どもの非識字を特定しかつ減少させるために適切な措置をとるよう、勧告する。

アルゼンチン(2012年)

障害のある子ども(第7条)
15.委員会は、子どもおよび青少年の権利の包括的保護に関する法律第26.061号に障害のある子どもについての具体的規定が掲げられていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国における障害児の状況に関する情報がないことも懸念するものである。
16.委員会は、締約国が、優先的課題として、法律第26.061号ならびに子どもおよび青少年の権利の包括的保護のための制度に、障害の視点を編入するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、障害のある子どもに対する差別を終わらせることに対して可能な最大限の量の利用可能な資源を投資するとともに、障害のある子どもが健康保険制度の対象とされ、かつ受給資格のあるサービスおよび手当(年金および住宅など)を受給することを確保するよう、促すものである。
教育(第24条)
37.委員会は、締約国における教育を規制する法律上の枠組みにおいて、インクルーシブ教育の原則が明示的に認められていること(法律第26.206号第11条)に留意する。しかしながら委員会は、プログラムおよびカリキュラムが障害のある生徒のニーズに適合させられていないこと、および、障害のある者が差別なくかつ他の生徒と平等な立場で教育制度にアクセスすることを妨げるあらゆる種類の障壁が蔓延していることにより、この原則の実施が実際には限定されていることを懸念するものである。委員会は、特別学校に通学している障害児の人数が多いこと、および、障害のある生徒の効果的インクルージョンを支える教育リソースセンターが設置されていないことを、深く懸念する。
38.委員会は、締約国が、インクルーシブ教育に対する権利を保障する包括的な国家教育政策を策定するとともに、障害のある生徒を包摂する教育制度の確立に向けた進展を確保するために十分な予算財源を配分するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、先住民族およびその他の農村コミュニティに特段の注意を向けながら、障害のあるすべての子どもが締約国の定める全面的義務教育を受けることを確保するための努力を強化することも、促すものである。委員会は同様に、締約国に対し、特別学校に通学している障害のある生徒がインクルーシブな学校に編入されることを確保し、かつ一般教育制度において障害のある生徒のために合理的調整を行なうために、必要な措置をとるよう促す。

中国(2012年)

障害のある子ども(第7条)
13.委員会は、締約国の障害児が、親によって遺棄される危険性が高い状況に置かれ、かつしばしば孤立した施設に措置されていることを恐れる。農村部の在宅障害児については、委員会は、コミュニティを基盤とするサービスおよび援助が存在しないことを懸念するものである。
14.委員会は、締約国に対し、障害のある男子および女子の遺棄の根本的原因と闘うため、障害のある男子および女子に関わって広く存在しているスティグマと闘い、かつ厳格な家族計画政策を改定するための措置をとるよう促す。委員会は、締約国に対し、農村部でもコミュニティを基盤とする十分なサービスおよび援助を提供するよう求めるものである。
教育(第24条)
35.委員会は、特別学校が多数設置されていること、および、締約国がこのような学校を積極的に発展させる政策をとっていることを懸念する。委員会は、実際には特定の種類の機能障害(身体障害または軽度の視覚障害)がある生徒のみ普通教育に出席できる一方で、他のすべての障害児は特別学校への就学または完全な脱落を余儀なくされていることを、とりわけ憂慮するものである。
36.委員会は、締約国が、インクルージョンの概念は条約の基本概念のひとつであり、教育の分野でとりわけ遵守されるべきであることを想起するよう望む。これとの関連で、委員会は、より多くの障害児が普通教育に出席できることを確保する目的で、普通学校におけるインクルーシブ教育を促進するために特別教育制度からの資源の再配分を行なうよう、勧告するものである。

ハンガリー(2012年)

障害のある子ども(第7条)
21.委員会は、障害のある生徒の権利を保護しかつ促進することに対する締約国の献身的姿勢の表明に留意する。しかしながら委員会は、施設環境で生活している子どもの人数が多いこと、および、障害のある子どもの多くが在宅ケアではなく施設ケアを受けていることを懸念するものである。委員会は、障害のある子どもがコミュニティで家族とともに生活し続けられるようにするために十分な資源を配分することの重要性を強調する。
22.委員会は、締約国に対し、障害のある子どもが家族とともに生活できるようにするため、子どもの権利委員会から勧告された(CRC/C/HUN/CO/2)ように、障害のある子どもおよびその家族を対象とした、コミュニティを基盤とするリハビリテーションサービスその他のサービスをそれぞれの地域コミュニティで促進しかつ拡大する目的で、とくに地方レベルで必要な専門的資源および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうよう、求める。
教育(第24条)
39.委員会は、障害のある生徒が手話および点字システムの利用を学習する機会を有していることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、これらの教科に関する研修が教員を対象として行なわれていることにも留意するものである。委員会はさらに、締約国が、普通教育施設において障害のあるすべての生徒について合理的配慮を行ない、ならびに条約が定めるインクルーシブ教育の制度を発展させおよび促進するための十分な措置をとっていないことに、懸念とともに留意する。
40.委員会はさらに、障害のあるロマの子どもが普通教育にアクセスできることを確保するための社会的プログラムが存在せず、かつ、教育に対するこれらの子どもの権利を充足するためにどのような支援が必要かを決定するための、子どもおよびその親との十分な協議が行なわれていないことを懸念する。
41.委員会は、締約国に対し、障害のある子どものためのインクルーシブ教育の制度を発展させるために十分な資源を配分するよう、求める。委員会は、合理的配慮の否定は差別であることをあらためて指摘するとともに、締約国が、生徒の個人的必要に基づいて障害児に対する合理的配慮を行ない、障害のある生徒に対して一般教育制度において必要な支援を提供し、かつ、教員および他のすべての教育職員を対象として、インクルーシブ教育の環境で働けるようにするための研修を引き続き行なうための努力を、相当に増強するよう勧告するものである。
42.委員会は、締約国に対し、望まれる成果を得るために必要となる可能性がある合理的配慮の実施を軽視することなく、障害のあるロマの子どもが普通教育プログラムに包摂することを確保するためのプログラムを発展させるよう、促す。

パラグアイ(2013年)

障害のある子ども(第7条)
19.委員会は、「障害のある子どもおよび青少年の包括的ケア国家プログラム」が、医学モデルの障害特性の予防および早期発見だけに限定されており、障害のある子どもに認められた一連の権利を全面的に考慮していないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、障害のある子どものインクルージョンに関する公共政策を実施するための資源が不十分であることも懸念するものである。委員会は、不当な取扱いおよび虐待を受けるおそれが高い障害のある子ども(障害のある先住民族の子どもを含む)についての情報がないことを遺憾に思う。
20.委員会は、締約国に対し、子どもの権利委員会がパラグアイの第3回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/PRY/CO/3、パラ49)で勧告したように、障害のある子どもを対象とする、インクルーシブなかつコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラムを発展させることによって、生活のあらゆる分野(家族生活およびコミュニティにおける生活を含む)における障害のある子どものインクルージョンについての広範な政策を実施するために必要な十分な資源を配分するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、虐待および不当な取扱いからの保護を提供する目的で、農村部および先住民族コミュニティにおける障害のある子どもの状況を調査しかつ記録することも依頼するものである。
教育(第24条)
57.委員会は、障害のある子どもの就学者数が少ないこと(1パーセント未満)、および、これらの学校のほとんどが特別学校であり、かつ、教育水準を評価する際、障害の医学モデルからとられた用語法が一貫して用いられていることを懸念する。委員会はまた、都市部および農村部における就学率についての情報ならびに教育が民族的および言語的に関連性を有しているかについての情報がないことも遺憾に思うものである。
58.委員会は、障害のあるすべての子どもおよび青少年が国の教育制度にアクセスできるようにするための戦略を締約国が実施すること、ならびに、教育はあらゆる段階および国内全域でインクルーシブなものであるべきであり、またジェンダーの視点を組みこみ、かつ民族的および言語的に関連性を有するものであるべきことを勧告する。委員会は、締約国に対し、医学モデルからとられた教育用語を修正し、かつ隔離型の特別教育からインクルーシブ・モデルへの方向転換を図るよう促すとともに、締約国がその方向に向けた行動を起こすよう奨励するものである。

オーストリア(2013年)

障害のある子ども(第7条)
19.子どもの権利委員会は、オーストリアに関する2012年の総括所見(CRC/C/AUT/CO/3-4)で、障害のある子どもの権利が多くのやり方で廃止されるおそれに直面していることについての懸念を表明した。
20.委員会は、子どもの権利委員会の勧告を支持するとともに、締約国に対し、これらの勧告を可能なかぎり迅速に実施するよう要請する。
教育(第24条)
40.委員会は、オーストリアにおけるインクルーシブ教育への進展が停滞していることを懸念する。委員会は、特別学校に在籍する子どもの人数が増えていること、および、障害のある子どものインクルーシブ教育を支援するために行なわれている努力が不十分であることを示唆する報告に、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、「インクルーシブ」教育と「統合」教育との間に若干の混同があることに留意する。しかしながら委員会は、いくつかの州でインクルーシブ教育モデルが確立されていることを称賛するものである。
41.委員会は、オーストラリアにおいて障害のある大卒者がきわめて少数であることに失望する。委員会は、高等教育段階で学生に手話通訳を提供していることについてオーストリアを称賛するものの、締約国が建設的対話の際に述べたように、聴覚障害のある学生はこれまで13名いたにすぎず、かつそのうち3名しか大学を卒業していないことに留意するものである。
42.障害のある教員および手話を使用する教員を対象とする教員養成が行なわれていないように思われる。手話の技能を有する教員が十分に存在しなければ、聾の子どもは相当に不利な立場に置かれる。
43.委員会は、幼稚園から中等学校に至るインクルーシブ教育のすべての分野で障害のある学生を支援するため、いっそうの努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はとくに、締約国が、諸州で導入されているインクルーシブ教育モデルの日常的実施に障害のある人(障害のある子どもおよびその代表団体を含む)が関与することを確保するよう、勧告するものである。委員会はさらに、障害のある学生が大学その他の高等教育機関で学習できるようにするため、いっそうの努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はまた、締約国が、オーストリア憲法においてオーストリア手話が正式に承認されていることにしたがい、聾および聴覚障害者である女子および男子の教育を増進させる目的で、障害のある教員および手話を使用する教員を対象とする質の高い教員養成を行なうための努力を向上させるようにも勧告するものである。

オーストラリア(2013年)

障害のある子ども(第7条)
18.委員会は、「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み」が暴力、虐待およびネグレクトからの子どもの保護に焦点を当てていること、ならびに、子どもの権利がどのように実施され、監視されかつ促進されるべきかについて詳しく述べた、子ども(障害のある子どもを含む)のための包括的な国家的政策枠組みが定められていないことを懸念する。
19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもおよび若者一般に適用される法律、政策、プログラム、サービス基準、運用手続および法令遵守枠組みに条約を編入することにより、障害のある子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を向上させること。
  • (b) 自己に関わるあらゆる事柄について意見を表明する障害児の権利を確保する政策およびプログラムを確立すること。
教育(第24条)
45.委員会は、平等を基礎として教育へのアクセスを確保するために定められた「教育における障害基準」にもかかわらず、障害のある生徒が特別学校に措置され続けており、かつ、普通学校に在籍している障害生徒の多くは主として特別学級または特別班に押しこまれていることを懸念する。委員会はさらに、普通学校に就学した障害のある生徒が、合理的配慮が欠けているために標準以下の教育を受けていることを懸念するものである。委員会はまた、障害のある生徒の中等学校修了率が障害のない人々の約半分であることも懸念する。
46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 必要な質の合理的配慮を教育において行なうための努力を向上させること。
  • (b) 現行の教育インクルージョン政策がどの程度有効であり、かつ「教育における障害基準」が各州および準州でどの程度実施されているかに関する調査を実施すること。
  • (c) あらゆる段階の教育および訓練において障害のある学生の参加率および修了率を高めるための目標値を定めること。

エルサルバドル(2013年)

障害のある子ども(第7条)
19.委員会は、子どもおよび青少年保護法に、障害のある子どもの保護を確保するための具体的措置が、保健ケアに関するいくつかの措置を除いて含まれていないことを懸念する。委員会は、貧困下で暮らしている障害児が、遺棄または施設養護への措置の対象にいっそうなりやすい立場に置かれていることを懸念するものである。
20.委員会は、締約国が、農村部および先住民族コミュニティで暮らしている障害児ならびに聴覚障害、視覚障害および知的障害のある子どもにとくに注意を払いながら、障害のある子どもの権利を平等に保障するための国内法の強化および具体的プログラムの策定を進めるよう勧告する。その際、機会および有利な立場等を奪われている家族のための措置を優先させながら、これらの子どもの社会的インクルージョンの確保ならびに遺棄および施設措置の防止を図ることが求められる。
教育(第24条)
49.委員会は、障害のある子どもの就学率が低いこと、ならびに、都市部および農村部のいずれにおいても障害児が教育にアクセスできることを保障するための合理的配慮および成人教育へのアクセスを保障するための合理的配慮が行なわれていないことを懸念する。委員会は、心理社会的障害または知的障害のある子どもについて学校へのアクセスおよび在学継続の面で差別があることを懸念するものである。また、締約国が障害のある子どもを対象とする無償教育の原則を定めていないことも、委員会にとって懸念の対象となる。
50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 都市部および農村部の双方において、あらゆる段階でインクルーシブ教育モデル(ジェンダーの視点および文化的視点、ならびに、障害のある子どもおよび青少年が教育にアクセスできることを確保するために必要な合理的配慮を含む)を発展させること。
  • (b) 障害のある人に関わるインクルーシブ教育の手法について教員を対象とする義務的研修を行なうための計画を採択しかつ必要な予算を配分することにより、心理社会的障害または知的障害のある子どもにとっての、アクセスおよび在学継続に関わる教育上の障壁を取り除くこと。
  • (c) アクセシブルな教育ツールおよび教授法を立案し、かつ障害のある生徒が新たなテクノロジーおよびインターネットにアクセスできるようにするための取り組みおよび官民共同事業を実施すること。

スウェーデン(2014年)

障害のある子ども(第7条)
15.委員会は、障害のある子どもが他の子どもよりも高い割合で暴力にさらされており、かつ子どもとともに働く職員の間で意識が欠けていることを示す報告があることを懸念する。
16.委員会は、締約国が、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究ならびにデータおよび統計の収集を発展させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、親のおよび子どもとともに働く職員の感受性強化および訓練ならびに一般公衆の意識啓発のための戦略および取り組みを強化するようにも勧告するものである。
17.委員会は、精神保健上および心理社会上の問題および障害の発生率が若者の間で高く、学校保健サービスに十分な資源が配分されておらず、かつ、学校心理学者および心理社会的支援制度にアクセスするための待機期間が長い旨の報告があることを懸念する。
18.委員会は、締約国が、子どもが適切な心理社会上および精神保健上の支援ならびに精神医学的保健ケアに時宜を得たやり方でアクセスしかつ当該支援およびケアを受けられることを確保するため、学校保健サービスに対して利用可能とされる資源を増やすよう勧告する。
19.委員会は、障害のある子どもが自己の生活に関わる決定に制度的に関与していないこと、および、これらの子どもが自己に関わる事柄について意見を表明する機会を有していないことを懸念する。
20.委員会は、締約国が、自己に関わるあらゆる事柄について協議の対象とされる障害児の権利を保護するための現行の保障措置を確保し、かつ追加的な保障措置を採択するよう勧告する。
教育(第24条)
47.委員会は、学校が、障害のある一定の児童生徒について、組織的および経済的困難を理由に入学を拒否できる旨の報告があることを懸念する。委員会はさらに、広範な支援を必要とする一部の子どもが、そのような支援が存在しないことを理由として通学できないことを示す報告があることを懸念するものである。
48.委員会は、締約国に対し、普通教育制度におけるすべての障害児のインクルージョンを保障し、かつ、これらの子どもが必要な支援を得られることを確保するよう促す。

アゼルバイジャン(2014年)

障害のある子ども(第7条)
18.子どもの権利委員会は、アゼルバイジャンに関する2012年の総括所見(CRC/C/AZE/CO/3-4)のパラ34において、ヨーロッパで5番目に高いとされる、締約国における乳児死亡率の高さについて不快懸念を表明した。さらに同委員会は、締約国による生児出生の定義が、国際的に承認された世界保健期間の定義と一致していない旨の懸念を表明している。障害者権利委員会は、子どもの権利委員会による懸念をあらためて繰り返すとともに、さらに、締約国の高い乳児死亡率の影響を受けている先天性障害児の人数についてのデータが存在しないこと、とくにこの現状が障害のある男女の子どもの出生登録にどのように影響しているかについて、懸念を表明するものである。
19.委員会は、子どもの権利委員会の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国がその実施を速やかに進めるよう要請する。したがって委員会は、締約国に対し、世界保健機関による生児出生の定義の実施に一致する形で、障害のある男女の子どもの死亡率に関する研究を実施し、かつ乳児死亡率を削減するための努力を速やかに向上させるよう、促すものである。
教育(第24条)
40.委員会は、障害のある子どもが特別寄宿学校その他の特別学校に措置され続けていることを懸念する。
41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに支援技術および教室内支援、アクセシブルでありかつ適切な修正を加えた教材およびカリキュラムならびにアクセシブルな学校環境を提供することにより、学校その他の学習機関においてインクルーシブ教育および合理的配慮を実施するための努力を向上させること。
  • (b) 「インクルーシブ教育に関する国家プログラム」の実施のために十分な財源および人的資源を配分すること。
  • (c) すべての種別の障害児(聾および難聴の女子および男子を含む)の教育を増進させる目的で、障害のある教員を含む教員を対象として点字および手話の使用に関する良質な研修を実施するための努力を向上させること。また、インクルーシブ教育が、大学における中核的な教員養成の不可欠な一部に位置づけられることを確保すること。
  • (d) 現行のインクルーシブ教育プログラムがどの程度有効であり、かつアクセシビリティに関する基準が締約国でどの程度遵守されているかについての調査を実施すること。
  • (e) 次回の定期報告書に、障害のある生徒を就学させているインクルーシブな学校の数についてのデータ(学年度別、男女別および障害別ならびに地域別に細分化されたもの)を記載すること。

コスタリカ(2014年)

障害のある子ども(第7条)
15.委員会は、締約国が、施設に措置され、遺棄され、虐待の被害を受け、または貧困下もしくは農村環境下で生活している障害児(先住民族の子どもを含む)の状況についてまったく調査を実施していないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、国家子ども福祉庁が、援助を基調とする非正規状況モデルを反映しており、障害のある子どもの権利を軽視していることを遺憾に思うものである。委員会はまた、障害が法律第7739号(子どもおよび青少年法)に主流化されておらず、かつ、同法第62条(特別教育に対する権利)が条約第24条に一致していないことも懸念する。
16.委員会は、締約国が、障害のある子どもを虐待および遺棄から保護し、かつ施設措置を防止するための緊急の措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、障害のある子どもに対して表現および意見の自由を保障することも促すものである。委員会はまた、締約国に対し、子どもおよび青少年法を改正することにより障害を横断的テーマのひとつとして含めること、および、障害のある子どもに良質なインクルーシブ教育を保障する目的で同法第62条(特別教育に対する権利)を改正することも促す。
教育(第24条)
45.委員会は、特別教育モデルが引き続き存在していること(当該モデルのもと、障害のある子どもおよび若者は隔離され、かつインクルーシブ教育にアクセスできていない)、および、教員その他の専門職員を対象とする訓練がこのような特化された枠内で行なわれ続けていることを、遺憾に思う。
46.委員会は、締約国に対し、教員を対象としてインクルーシブ教育の訓練を行なう政策を採択するとともに、訓練を受けた教員に対する支援、点字、コスタリカ手話、コミュニケーションの代替的な手段および形態、読むことが容易なテキストならびにその他の補助用品および補助媒体を提供することによってインクルーシブ教育を保障するよう、促す。
47.委員会は、障害のある子ども、若者および成人の教育面でのインクルージョンに関する指標が存在しないことを懸念する。委員会は、障害のある成人、障害のある女性および女子、重複障害者、先住民族ならびに農村部で暮らしている人々の間で排除の度合いがいっそう高いことに、とりわけ懸念しながら留意するものである。
48.委員会は、締約国が、障害のあるすべての人を対象として、成人教育を含むすべての段階の教育において、かつ国内全域でインクルーシブ教育へのアクセスを確保するとともに、この教育モデルが最遠隔地も対象とし、ジェンダーの視点を編入し、かつ民族的および文化的に妥当なものとなることを保障するよう、勧告する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年12月6日)。/パラグアイ~コスタリカを追加(2014年9月1日)。/冒頭に一般的意見2号抜粋を追加(9月12日)。
最終更新:2014年09月12日 05:09