子どもの権利委員会:総括所見:日本(第3回)〔前編〕


CRC/C/JPN/CO/3
配布:一般
2010年6月11日
原文:英語(PDFファイル)
【日本語仮訳:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議】(注:〔 〕およびリンクは訳者による補足である。また、原文では勧告部分が太字になっているが、ここではパラグラフ番号のみを太字とした。)

子どもの権利委員会
第54会期
2010年5月25日~6月11日

条約第44条にもとづいて締約国が提出した報告書の検討

総括所見:日本

1.委員会は、2010年5月27日に開かれた第1509回および第1511回会合(CRC/C/SR.1509およびCRC/C/SR.1511参照)において日本の第3回定期報告書〔PDF〕(CRC/C/JPN/3)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、第3回定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/JPN/Q/3/Add.1)に対する文書回答〔PDF〕の提出を歓迎する。委員会は、部門を横断した代表団の出席および有益かつ建設的な対話を歓迎するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2010年6月11日に採択された、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/JPN/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展

4.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の批准(2004年8月2日)および子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書の批准(2005年1月24日)を歓迎する。
5.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。
(a)2004年および2008年の児童虐待防止法改正。これにより、とくに児童虐待の定義が見直され、国および地方の政府の責任が明確化され、かつ虐待事案の通報義務が拡大された。
(b)2004年および2008年の児童福祉法改正。これにより、とくに、要保護児童対策地域協議会の設置権限が地方政府に与えられた。
(c)2005年6月の刑法改正による人身売買の犯罪化。
(d)子ども・若者育成支援推進法の公布(2010年)。
(e)2010年〔2006年〕の教育基本法改正。
6.委員会はまた、人身取引対策行動計画(2009年12月)、および、自殺率削減のための取り組みの調整を促進する目的で2005年7月に採択された「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」も歓迎する。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項)

委員会の前回の勧告
7.委員会は、締約国の第2回報告書(CRC/C/104/Add.2)の検討を受けて2004年2月に行なわれた懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.231)の一部に対応するため締約国が行なった努力を歓迎するが、その多くが十分に実施されておらず、またはまったく対応されていないことを遺憾に思う。委員会は、この総括所見において、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返す。
8.委員会は、締約国に対し、第2回報告書審査に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないもの(「調整および国家行動計画」に関するパラ12、独立した監視に関するパラ14、「子どもの定義」に関するパラ22、「差別の禁止」に関するパラ24、「名前および国籍」に関するパラ31、「体罰」に関するパラ35、障害に関するパラ43および「若者の自殺」に関するパラ47に掲げられた勧告を含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた懸念事項に包括的に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。

留保
9.委員会は、締約国が第37条(c)に対する留保を維持していることを遺憾に思う。
10.委員会は、締約国が、条約の全面的適用の障害となっている条約第37条(c)に対する留保の撤回を検討するよう勧告する。

立法
11.委員会は、子どもの権利の分野において、子どもの生活条件および発達の向上に資するいくつかの法律の公布および改正が行なわれたことに留意する。しかしながら委員会は、子ども・若者育成支援推進法が条約の適用範囲を完全に網羅しておらず、または子どもの権利を保障するものではないこと、および、包括的な子どもの権利法が制定されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、少年司法分野におけるものも含め、国内法の一部の側面が条約の原則および規定にいまなお一致していないことにも留意する。
12.委員会は、締約国が、子どもの権利に関する包括的法律の採択を検討し、かつ、国内法を条約の原則および規定と完全に調和させるための措置をとるよう、強く勧告する。

調整
13.委員会は、子ども・若者育成支援推進本部、教育再生会議および種々の政府審議会など、子どもの権利に関する政策の実施に携わる多くの国家機関が存在することに留意する。しかしながら委員会は、これらの機関間でならびに国、広域行政圏および地方のレベル間で効果的調整を確保するための機構が存在しないことを懸念する。
14.委員会は、締約国が、子どもの権利を実施する目的で締約国が国、広域行政圏および地方のレベルで行なっているあらゆる活動を効果的に調整するための明確な権限ならびに十分な人的資源および財源を与えられた適切な国家機構を設置するとともに、子どもの権利の実施に携わっている市民社会組織との継続的交流および協力を確立するよう勧告する。

国家的行動計画
15.委員会は、子ども・若者育成支援推進法(2010年4月)などの多くの具体的措置がとられてきたことを歓迎するとともに、すべての子どもの成長を支援し、かつ子どもを全面的に尊重するために政府の体制一元化を図ることを目的とした「子ども・子育てビジョン」および「子ども・若者ビジョン」の策定に関心をもって留意する。しかしながら委員会は、条約のすべての分野を網羅し、かつ、とくに子どもたちの間に存在する不平等および格差に対応する、子どものための、権利を基盤とした包括的な国家的行動計画が存在しないことを依然として懸念する。
16.委員会は、締約国が、地方の公的機関、市民社会および子どもを含む関係パートナーと協議および協力しながら、子どものための国家的行動計画を採択しかつ実施するよう勧告する。このような行動計画は、中長期的達成目標を掲げ、条約のすべての分野を網羅し、十分な人的資源および財源を提供し、かつ、必要に応じて成果の管理および措置の修正を行なう監視機構を備えたものでなければならない。委員会はとくに、このような行動計画において、所得および生活水準の不平等、ならびに、ジェンダー、障がい、民族的出身、および、子どもが発達し、学習し、かつ責任ある生活に向けた準備を進める機会を形成するその他の要因による格差に対応するよう勧告する。委員会は、締約国が、国連子ども特別総会の成果文書「子どもにふさわしい世界」(2002年)およびその中間レビュー(2007年)を考慮するよう勧告する。

独立した監視
17.委員会は、条約の実施を国レベルで監視する独立の機構が存在しないことに懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、5つの自治体で子どもオンブズパーソンが任命されているという締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、これらのオンブズパーソンの権限、独立性および職務、効果的活動を確保するために利用可能な財源その他の資源、ならびに、(遺憾ながら2002年以来棚上げされている人権擁護法案に基づいて設置予定の)人権委員会との関係のあり方の構想に関する情報が存在しないことを遺憾に思う。
18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)早期に人権擁護法案を通過させ、かつ国内機関の地位に関するパリ原則(国連総会決議48/134)にしたがった国家人権委員会を設置できるようにするとともに、同委員会に対し、条約の実施を監視し、苦情を受け付けてそのフォローアップを行ない、かつ子どもの権利の組織的侵害を調査する権限を与えること。
(b)次回の報告書において、国家人権委員会および子どもオンブズパーソンに与えられた権限、職務および資源についての情報を提供すること。
(c)独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮すること。

資源配分
19.委員会は、締約国の社会支出がOECD平均よりも低いこと、最近の経済危機以前から貧困がすでに増加しており、いまや人口の約15%に達していること、および、子どものウェルビーイングおよび発達のための補助金および諸手当がこれまで一貫したやり方で整備されてこなかったことに、深い懸念を表明する。委員会は、新しい〔子ども〕手当制度および高校無償化法を歓迎するものの、国および自治体の予算における子どものための予算配分額が明確でなく、子どもの生活への影響という観点から投資を追跡しかつ評価できなくなっていることを依然として懸念する。
20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。
(a)子どもの権利を実現する締約国の義務を満たせる配分が行なわれるようにするため、中央および自治体レベルの予算を子どもの権利の観点から徹底的に検討すること。
(b)子どもの権利に関わる優先的課題を反映した戦略的予算科目を定めること。
(c)子どものための優先的予算科目を資源水準の変化から保護すること。
(d)指標システムに基づいて政策の成果をフォローアップする追跡システムを確立すること。
(e)市民社会および子どもがあらゆるレベルで協議の対象とされることを確保すること。

データ収集
21.委員会は、子どもおよびその活動に関する相当量のデータが定期的に収集されかつ公表されていることを理解する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の分野に関してデータが存在しないこと(貧困下で暮らしている子ども、障がいのある子どもおよび日本国籍を有していない子どもの就学率ならびに学校における暴力およびいじめに関するものを含む)に懸念を表明する。
22.委員会は、締約国が、権利侵害を受けるおそれがある子どもについてのデータ収集の努力を強化するよう勧告する。締約国はまた、条約の実施において達成された進展を効果的に監視しかつ評価することおよび子どもの権利の分野における政策の効果を評価することを目的とした指標も開発するべきである。

広報、研修および意識啓発
23.委員会は、子どもとともにおよび子どものために活動している専門家ならびに一般公衆の間で条約に関する意識を促進するために締約国が行なってきた努力には留意するものの、これらの努力が十分ではないこと、または条約の原則および規定を普及するための計画が実行に移されていないことを依然として懸念する。とりわけ、子どもおよびその親に対して情報をより効果的に普及することが緊急に必要である。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家の研修が不十分であることも懸念する。
24.委員会は、締約国に対し、子どもおよび親の間で条約に関する情報の普及を拡大するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに活動しているすべての者(教職員、裁判官、弁護士、法執行官、メディア従事者、公務員およびあらゆるレベルの政府職員を含む)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させるよう促す。

市民社会との協力
25.市民社会組織と多くの会合が持たれてきたことに関する締約国の情報には留意しながらも、委員会は、子どもの権利のための政策およびプログラムの開発、実施および評価のあらゆる段階で重要である継続的協力の慣行がいまなお確立されていないことを懸念する。委員会はまた、市民社会組織が、委員会の前回の総括所見のフォローアップに関与しておらず、または締約国の第3回定期報告書の作成中に意見を述べる十分な機会を与えられなかったことも懸念する。
26.委員会は、締約国に対し、市民社会との協力を強化するとともに、条約の実施のあらゆる段階(定期報告書の作成を含む)を通じて市民社会組織のより組織的な関与を図るよう奨励する。

子どもの権利と企業セクター
27.委員会は、民間セクターが子どもおよびその家族の生活に甚大な影響を及ぼしていることに留意し、かつ、子どものウェルビーイングおよび発達に関わる企業セクターの社会的および環境的責任について締約国が規制を行なっているのであれば、当該規制に関する情報が存在しないことを遺憾に思う。
28.委員会は、締約国に対し、企業の活動から生じるいかなる悪影響からも地域コミュニティ、とくに子どもを保護する目的で、企業セクターが企業の社会的および環境的責任に関する国内外の基準を遵守することを確保するための規制を確立しかつ実施するため、効果的措置をとるよう奨励する。

国際協力
29.委員会は、いまなお相当額にのぼる政府開発援助(ODA)に留意するとともに、2003年の戦略的改定によって貧困削減、持続可能性、安全保障および平和維持措置が優先されるようになったことを歓迎するが、締約国が一貫してODA予算額を削減しており、国内総生産(GDP)の0.7%をODAに支出するという国際合意よりもはるかに低い、対GDP比0.2%という水準であることを懸念する。委員会はとくに、開発途上国における気候変動対策といった特定の目的のために追加的資源の配分を行なうこと、および、アフリカ諸国向けの援助が顕著に増額されること以外には一般的改革は計画されていないと締約国が表明したことを懸念する。
30.委員会は、締約国が、とくに子どもに利益をもたらすプログラムおよび措置に対して提供される資源を増加させる目的で、ODAに関する国際的達成目標へのコミットメントを再検討するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見および勧告を考慮するよう提案する。

2.子どもの定義(条約第1条)

31.委員会は、最低婚姻年齢の男女差(男子18歳・女子16歳)を解消するよう求めた前回の総括所見の勧告(CRC/C/15/Add.231、パラ22)にも関わらず、格差が残っていることについて懸念を表明する。
32.委員会は、締約国がその立場を再検討し、婚姻年齢を引き上げて両性ともに18歳にするよう勧告する。

3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
33.委員会は、若干の立法措置がとられたにも関わらず、無遺言相続を規律する法律上、婚外子がいまなお婚内子と同一の権利を享受していないことを懸念する。委員会はまた、民族的マイノリティに属する子ども、日本国籍を有していない子ども、移住労働者の子ども、難民である子どもおよび障害のある子どもに対する社会的差別が根強く残っていることも懸念する。委員会は、男女平等の促進に言及していた教育基本法第5条が削除されたことに対する女性差別撤廃委員会の懸念(CEDAW/C/JPN/CO/6)を繰り返す。
日本政府のコメント
 男女共同参画の推進に言及した教育基本法第5条の削除に関する委員会の懸念について、日本政府は以下の見解を表明する。
 教育上、男女の共学は認められなければならないと定める旧教育基本法第5条の目的は、制定以降の60年間、日本において広く理解・実践されてきた。しかし、社会における男女共同参画は十全に実現されていないことから、男女双方が、互いにその人権を尊重し、責任を分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、相互の尊重および男女の協働によりより豊かな社会を築いていくために必要な能力および才能を、教育を通じて発達させていくことが重要である。これに基づき、「男女の平等」は、日本で教育を行うために求められる不可欠の目標のひとつとして、改正教育基本法第2条でとくに定められている。委員会の懸念は誤解に基づくものである。
34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。
(b)とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。
35.委員会は、刑法で女性および女子しか強姦罪および関連の犯罪の被害者として想定されておらず、かつ、そのためこれらの規定に基づく保護が男子には及ばないことに、懸念とともに留意する。
36.委員会は、男子か女子かを問わず強姦の被害者全員が同一の保護を与えられることを確保するため、締約国が刑法改正を検討するよう勧告する。

子どもの最善の利益
37.子どもの最善の利益は児童福祉法に基づいて考慮されているという締約国の情報は認知しながらも、委員会は、1974〔1947〕年に採択された同法に、子どもの最善の利益の優越性が十分に反映されていないことに懸念とともに留意する。委員会はとくに、そのような優越性が、難民および資格外移住者である子どもを含むすべての子どもの最善の利益を統合する義務的プロセスを通じ、すべての立法に正式にかつ体系的に統合されているわけではないことを懸念する。
38.委員会は、締約国が、あらゆる法規定において、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定およびプロジェクト、プログラムならびにサービスにおいて、子どもの最善の利益の原則が実施されかつ遵守されることを確保するための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。
39.委員会は、子どものケアまたは保護に責任を負う相当数の機関が、とくに職員の数および適格性ならびに監督およびサービスの質に関して適切な基準に合致していないという報告があることに、懸念とともに留意する。
40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)そのような機関が提供するサービスの質および量を対象とし、かつ公共部門および民間部門の両方に適用されるサービス基準を発展させかつ定義するための効果的措置をとること。
(b)公共部門および民間部門の両方において、そのような基準を一貫して遵守させること。

生命、生存および発達に対する権利
41.「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」などを通じ、子ども、とくに思春期の青少年の間で発生している自殺の問題に対応しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもおよび思春期の青少年が自殺していること、および、自殺および自殺未遂に関連したリスク要因に関する調査研究が行なわれていないことを依然として懸念する。委員会はまた、子どもの施設で起きている事故が、そのような施設で安全に関する最低基準が遵守されていないことと関連している可能性があるという情報にも懸念する。
42.委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。

子どもの意見の尊重
43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、正式な規則では年齢制限が高く定められていること、児童相談所を含む児童福祉サービスが子どもの意見をほとんど重視していないこと、学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。
44.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。

4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
45.委員会は、締約国の多くの規則が、一定の状況下にある親、とくに子どもの出生を登録することのできない、在留資格のない移住者のもとに生まれた子どもの出生登録の可能性を制約する効果を有しているという、前回の総括所見(CRC/C/15/Add.231)に掲げられた懸念をあらためて繰り返す。これらの規則が存在する結果、多くの子どもが登録されず、このような子どもが法律上無国籍となる状況が生み出されている。
46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)すべての子どもの登録を確保し、かつ子どもを法律上の無国籍状態から保護するため、条約第7条の規定にしたがい、国籍および市民権に関わる法律および規則を改正すること。
(b)無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討すること。

体罰
47.学校における体罰が明示的に禁じられていることには留意しつつ、委員会は、その禁止規定が効果的に実施されていないという報告があることに懸念を表明する。委員会は、すべての体罰を禁ずることを差し控えた1981年の東京高等裁判所判決に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、家庭および代替的養護現場における体罰が法律で明示的に禁じられていないこと、および、とくに民法および児童虐待防止法が適切なしつけの行使を認めており、体罰の許容可能性について不明確であることを懸念する。
48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。
(a)家庭および代替的養護現場を含むあらゆる場面で、子どもを対象とした体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律により明示的に禁止すること。
(b)あらゆる場面における体罰の禁止を効果的に実施すること。
(c)体罰等に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律について、家族、教職員ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の専門家を教育するため、キャンペーンを含む伝達プログラムを実施すること。

子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ
49.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。
(b)以下の勧告に特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に関わる同研究の勧告の実施を優先させること。
  • (i)子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。
  • (ii)子どもとともにおよび子どものために活動しているすべての者の能力を増進させること。
  • (iii)回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。
  • (iv)アクセスしやすく、子どもにやさしい通報制度およびサービスを創設すること。
  • (v)説明責任を確保し、かつ責任が問われない状態に終止符を打つこと。
  • (vi)国レベルの体系的なデータ収集および調査研究を発展させ、かつ実施すること。
(c)すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。
(d)次回の報告書において、締約国による同研究の勧告の実施に関わる情報を提供すること。
(e)子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と協力し、かつ同代表を支援すること。



  • 注/総括所見原文は6月11日(金)の夜〔ジュネーブ時間〕に公表されたが、その後、修正が行なわれた。ここに掲載したのはその修正を反映した日本語訳である。6月14日(月)の院内集会等で配布された日本語訳とは一部内容・表現が異なるため、注意されたい。
  • 更新履歴:ページ作成(2010年6月17日)。/パラ30「とくに子どもが受益者であるプログラム」を「とくに子どもに利益をもたらす……」に、パラ45「子どもの出生を登録することのできない資格外滞在移住者」を「子どもの出生を登録することのできない、在留資格のない移住者」に修正(2010年6月23日)。/パラ33に日本政府のコメントを追加(2011年10月4日)。
最終更新:2011年10月04日 10:40