総括所見:モンゴル(第2回・2005年)


CRC/C/15/Add.264(2005年9月21日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年5月26日に開かれた第1040回および第1041回会合(CRC/C/SR.1040 and 1041参照)においてモンゴルの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.32)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の第2回定期報告書を歓迎するものの、その提出が遅かったことおよび当該報告書が報告ガイドラインに全面的にしたがっていないことを遺憾に思う。委員会はまた、有用な統計データその他の詳細な情報が記載され、かつ締約国における子どもの状況についていっそう明確な理解を与えてくれた、委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/MNG/2)に対する文書回答の提出も歓迎するものである。委員会はさらに、率直な対話の過程で追加的情報の提供のためハイレベルな代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意する。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下のもののような、子どもの権利の保護および促進を目的とする法律が採択されたことに留意する。
  • (a) 子どもの特別な保護に関する行動のための法的枠組みを定めた子どもの権利保護法の採択(1996年)。
  • (b) とくに両親を失って法定後見人のいない子どもおよび障害のある子どものための社会手当の種別および適用範囲について定めた社会福祉法の採択(1998年)。
  • (c) とくに子どもに対する専門的医療ケアの提供について定めた保健法の採択(1998年)。
  • (d) とくに未成年者の雇用およびその労働条件について規制する労働法の採択(1999年)。
  • (e) とくに親の責任ならびに養子縁組、監護および養育費に関する規則について定めた家族法の採択(1999年)。
  • (f) モンゴル国家人権委員会法の採択(2000年)および同委員会の設置。
  • (g) 少年が行なった犯罪ならびに子ども、家族および社会に対して行なわれた犯罪について独立の条項を導入した刑事訴訟法改正(2002年)。
  • (h) ドメスティック・バイオレンスと闘いおよびこれを防止することならびに被害者(被害を受けた子どもを含む)の人権を保護することを目的とする、ドメスティック・バイオレンス禁止法の採択(2004年)。
4.モンゴルにおける子どもの権利および地位に関して、委員会は、数次のテーマ年(1997年の子ども年、1998年の若者年、2000年の子どもの発達年、2001年の障害市民支援年など)を宣言しかつ全国子どもサミット(2004年)を開催することにより、この問題の重要性を強調しようとする締約国の継続的努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、子どもの社会サービスのための予算配分を増加させるための締約国の努力にも、満足感とともに留意するものである。
5.委員会はまた、以下の条約が批准されたことも歓迎する。
  • (a) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ第33号条約(2000年4月)。
  • (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(1999年)(2001年2月)。
  • (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2002年1月)。
  • (d) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2002年3月)。
  • (e) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)(2002年12月)。
  • (f) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2003年6月)。
  • (g) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2004年10月)。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

6.委員会は、1991年にモンゴルで始まった経済的移行が相対的に迅速であり、かつモンゴル社会に広範な影響をもたらしてきたことに留意する。経済的不安定、失業および貧困の増加は、家族、とくに子どもが多い家族および遠隔地に住んでいる家族に影響を及ぼしてきた。
委員会は、土地面積が広大であり、かつ人口密度がきわめて低いという、締約国の特有の性質に留意するものである。加えて、委員会は、1999年から2001年にかけての例外的に困難な気候条件(厳しい冬および雪害ならびに夏季の旱魃と冬季の著しい寒さおよび吹雪の組み合わせ)も多くの経済的および社会的困難を発生させてきたことを認知する。これらの要因は締約国の全般的発展に悪影響を及ぼし、とくに最遠隔地の数千人の子どもの生活に影響を与えてきた。

D.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.32)の検討後に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.48)について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに農村部における男子の学校中退およびこれらの子どもが児童労働に関与することの防止(パラ23)、農村部の子どもによる基礎的サービス(保健、教育および社会的養護)へのアクセスの強化(パラ23)、障害児による基礎的サービスへのアクセスの国全体での強化(パラ23)、子どもの難民の権利の促進および保護(パラ26)、中央および地方のレベルにおける資源の賢明な配分(パラ27)ならびに法律に触れた子どもの権利(パラ29)に関するものについては、十分な対応が行なわれていない。
8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告に対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
立法
9.委員会は、子どもの権利の保護を強化するためにとられたさまざまな立法措置を含む、締約国における包括的な法改正を歓迎する。国内法の分野で締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、実施措置の数が不十分であることによって法律と実践が乖離する傾向にあることを懸念するものである。加えて、委員会は、国内法に矛盾する規定が若干ある(たとえば、義務教育〔修了〕年齢が17歳であるのに対し、労働法は14歳および15歳の子どもが週30時間を上限として働くことを認めている)ことから、子どもが十分な保護を受けられないままになっていることを懸念する。
10.委員会は、締約国が、最近採択された法律を含む国内法の効果的実施のため、十分な財源および人的資源の提供を含むあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの保護に関して存在する可能性がある乖離を特定するため、国内法の見直しを行なうことも勧告するものである。
調整および国家的行動計画
11.委員会は、子どもの発達に関する国家行動計画(1990~2000年)の実施において獲得された積極的成果に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、締約国が採択した第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)、および、子どもに関する総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」のフォローアップに対する締約国のコミットメントも歓迎するものである。委員会は、2004年9月に採択された国家子ども局の新しい体制および戦略に留意するものの、部門横断型のおよび国以下のレベルにおける調整を促進するための包括的な戦略計画が存在せず、かつ、国家子ども局の新しいアプローチに関する、あらゆるレベルの機関を対象とした研修が限られていることを、懸念する。
12.委員会は、締約国が、第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)の全面的および効果的実施のために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供し、かつ、同計画の実施のために権利を基盤とする、開かれた、協議に基づく参加型のプロセスを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、条約の実施に関わるあらゆるレベルでの調整を目的とした包括的な戦略計画を策定し、国家子ども局の新しいアプローチに応じた十分な情報提供および研修を行ない、かつ、国家子ども局の調整活動について次回の報告書で委員会に情報を提供するよう、勧告するものである。
独立の監視
13.委員会は、国家人権委員会が2001年に設置されたこと、および、とくに、3名の委員のうち1名に子どもの権利に関する権限を委ねると決定されたことを歓迎する。委員会はまた、現在、別個の子どもオンブズパーソンの設置が検討されていることにも留意するものである。
14.独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、国家人権委員会が十分な人的資源、財源および技術的資源を提供されること、ならびに、条約の実施における国および地方のレベルでの進展を監視しおよび評価しならびに子どもからの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応する便益を有することを確保するよう、促す。委員会は、締約国が、別個の子どもオンブズパーソンの設置の検討に関わって進められている議論を加速させるよう提案するものである。さらに、委員会は、締約国が、グッド・ガバナンスのための戦略を策定しかつ汚職と闘うために適当な措置をとるよう勧告する。
資源配分
15.委員会は、子どもの福祉のための予算策定および国内資源の動員に関する20/20イニシアティブを実施することにより、締約国が、子どもの社会サービス、保健および教育への資源配分を優先させていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための予算配分額が、子どもの権利の促進および保護に関する国および地方のニーズに応えるにはいまなお不十分であることに、懸念を表明する。委員会は、子どもに提供されるサービスに関する農村部と都市部間の格差について、とりわけ懸念するものである。
16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの権利の実現のために配分される予算の割合を増やすとともに、この流れにおいて、権利の享受に関する農村部と都市部間の差別を解消する目的で、農村部の小規模コミュニティおよび遠隔地の子どもにとくに注意を払いながら十分な人的資源の提供(国際協力を通じてのものも含む)を確保し、かつ子ども政策の実施が優先されることを保障すること。
  • (b) 国際金融機関および国連機関ならびに二国間ドナーと引き続き協力すること。
データ収集
17.委員会は、モンゴルの経済移行期により統計システムの相当な変更が必要となったことを認知する。委員会は、とくに第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)のための基準データを提供する「子ども発達調査2000」のような、統計の編纂における締約国の努力に、評価の意とともに留意するものである。締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、データ収集が十分に発展しておらず、かつ条約が対象とするすべての分野に関して細分化されたものとなっていないことに、懸念を表明する。
18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とりわけ脆弱な立場に置かれた子ども(障害のある子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、農村部に住んでいる子ども、移住者の子ども、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、ストリートチルドレン、法律に触れた子どもおよびマイノリティに属する子どもなど)をとくに重視しながら18歳に達するまでのすべての子どもを対象とし、かつ条約のすべての分野を網羅する目的で、国家的統計システムにおける体系的データ収集を引き続き発展させること。
  • (b) すべてのデータおよび指標が、条約を効果的に実施するための政策、プログラムおよびプロジェクトを立案し、監視しかつ評価する目的で活用されることを確保すること。
  • (c) これらの統計を公表し、かつ統計情報を公衆が広く利用できるようにするための革新的方法を追求すること。
  • (d) この点に関してとくに国連児童基金(ユニセフ)と引き続き連携すること。
条約の普及
19.とくにモンゴル子ども全国フォーラム(1998年および2001年)、子どもの問題に焦点を当てたテーマ年ならびに定期的な研修活動を通じ、条約の原則および規定に関する情報を普及するために行なわれた努力を歓迎しつつ、委員会は、これらの措置が望ましい程度の効果を発揮していないことに懸念を表明する。条約が社会のすべてのレベルで普及されているわけではなく、かつ、とくに農村部においておよびマイノリティの間で地域格差が存在する。
20.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が、国際機関および非政府組織と連携しながら実施されてきたことに留意する。しかしながら委員会は、これらの措置をさらに強化し、かつ継続的、包括的かつ体系的に実施する必要があるとの見解に立つものである。
21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに地方レベルでおよびマイノリティの間でならびにメディアを通じて条約を促進するための、より創造的かつ子どもにやさしい手法を発展させること。
  • (b) 条約、その原則および規定を学校カリキュラムに含めること。
  • (c) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、保健従事者、教員、学校および施設の管理者ならびにソーシャルワーカーおよびジャーナリストなど)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を実施するための努力を引き続き強化すること。
  • (d) とくにユニセフ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)および国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の技術的援助を引き続き求めること。

2.一般原則

差別の禁止
22.委員会は、モンゴル憲法(1992年)および子どもの権利保護法(1996年)の制定のような、子どもに対する差別の禁止の原則を促進するためにとられた措置を評価する。これらはいずれも、モンゴル法の適用においてすべての子どもが平等の地位にあることを保障するものである。しかしながら委員会は、障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、法律に触れた子ども、ストリートチルドレン、農村部に住んでいる子どもおよび農村部から移住して公式に登録されることなく首都で生活している子どもが、とくに十分な社会サービスおよび保健サービスならびに教育上の便益のアクセスに関して、根強い事実上の差別に直面していることを懸念するものである。
23.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法を効果的に実施することにより、第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、あらゆる事由による、および脆弱な立場に置かれたあらゆる集団の子どもに対する事実上の差別を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するとともに、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを対象とする社会サービス保健サービスならびに平等な教育機会を優先させるよう、勧告するものである。
24.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの意見の尊重
25.委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明しかつ社会に参加する子どもの権利の促進および尊重のために締約国がとった行動に、大いなる評価の意とともに留意する。締約国がそのためにとった手段には、一連のミニ国連会議、ミニ議会およびミニ政府(1998年および1999年)、モンゴルの子ども全国フォーラム(1998年および2001年)ならびに全国子どもサミット(2004年)の開催、ならびに、モンゴルの10代の権利に対応しようとする試みが含まれる。しかしながら委員会は、締約国における伝統的態度により、家庭、学校およびコミュニティ一般で自由に意見を表明する子どもの権利が制約されている可能性があることを、依然として懸念するものである。
26.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が、すべての子ども、とくに女子の意見の尊重を促進するとともに、家庭、学校その他の施設における、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加の便宜を図るための努力を引き続き強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつ政策立案および裁判所の決定ならびにプログラムの実施および子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうことも勧告するものである。

3.市民的権利および自由

出生登録
27.委員会は、出生後直ちに登録される子どもの権利の実施における欠陥についての懸念をあらためて表明する。委員会は、新生児の登録に際して課される手数料が、貧困家庭にとっては金銭的障壁となる場合があり、かつ出生登録を妨げないまでも遅らせる傾向があることに、特段の懸念とともに留意するものである。加えて、出生登録の遅延は追加の手数料の対象となる。
28.委員会は、締約国が、領域内の最遠隔地まで対象とするための移動出生登録班および意識啓発キャンペーンの導入等も通じ、締約国の領域を完全に網羅した、効率的な、かつあらゆる段階で無償の出生登録制度を実施するよう、勧告する。
体罰
29.委員会は、子どもの体罰がモンゴルで依然として社会的に受け入れられており、かつ、家庭において、かつ学校その他の施設のような体罰が公式には禁じられている場所においても、いまなお行なわれていることを懸念する。委員会はさらに、モンゴル法が家庭における体罰を明示的に禁じていないことにも、懸念とともに留意するものである。
30.委員会は、締約国に対し、家庭、学校その他の施設における子どもの体罰の慣行を防止しかつこれと闘うとともに、家庭における体罰を法律で明示的に禁止するよう、促す。委員会は、締約国が、体罰に関する公衆の態度を変革する目的で、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律に関する公衆教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを子どもの関与を得ながら導入するとともに、この点に関する非政府機関との協力を強化するよう、勧告するものである。

4.家庭環境および代替的養護

親の責任
31.委員会は、ひとり親が世帯主である家族の数が増えており、かつこのような家族が社会経済的困難に直面していること、および、一般的に父親は限られた限度でしか親責任を担っていない場合が多いことを懸念する。
32.委員会は、締約国が、ひとり親家族およびとくに困難な状況下で暮らしている家族に注意を払いながら、親および家族に対して可能なかぎり必要な金銭的その他の支援を提供するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。子どもの養育および発達については双方の親が責任を有するという原則に関して、委員会は、共同親責任の考え方を支えかつ促進する法律、政策および教育プログラムを発展させるよう締約国に対して促した、女性差別撤廃委員会が2001年に採択した勧告(A/56/38、パラ269-270)を支持するものである。
家庭環境を奪われた子ども
33.委員会は、自宅を逃げ出して児童養護センターに措置された子どもを含む、施設養護の対象とされる子どもの人数が増えていることを懸念する。家族法第25条9項を参照しつつ、委員会は、措置手続が条約の原則および規定に全面的に一致していないとの見解に立つものである。
34.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭環境から子どもを分離することを回避し、かつ施設で暮らす子どもの人数を減らすための防止措置を直ちにとること。
  • (b) 施設養護への子どもの措置について、権限のある学際的権威者グループによるアセスメントが常に行なわれること、ならびに、当該措置がもっとも短い期間で行なわれかつ司法審査に服すること、および、条約第25条にしたがって当該審査がさらなる再審査の対象とされることを確保すること。
  • (c) 条約で認められている権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払うことによって伝統的な里親養護制度を発展させ、かつ家族を基盤とするその他の形態の代替的養護を発展させるための努力を強化すること。
  • (d) 親を対象とする教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラム等も通じ、親および法定保護者が子どもの養育責任を遂行するにあたって適切な援助および支援サービスを提供すること。
養子縁組
35.委員会は、養子縁組に関する家族法の規定の制定(1999年)、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准(2000年)および「モンゴル国籍の子どもを養子縁組のために外国人市民に与えること」に関する規則の採択を含め、国内養子縁組および国際養子縁組の双方を規制するために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の古くからの伝統、および国際養子縁組の相対的少なさに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の国内法がまだ条約の原則および規定に全面的に一致していないことを、依然として懸念する。
36.委員会は、締約国が、里親養護および養子縁組の手続が条約の原則および規定に全面的に一致する形で、かつ資格および権限のある、効率的かつ学際的な人材および機関によって処理されることを確保するよう、勧告する。
虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力
37.締約国が、子どもに対する虐待および暴力の甚大な規模および否定的影響を認識しており、かつ防止のための措置をとってきたことは認知しながらも、委員会は、この問題が根強く残っていることを依然として懸念する。委員会は、子どもを近親姦から保護するための法的枠組みが存在しないことをとりわけ懸念するものである。
38.家庭および学校における子どもへの暴力(CRC/C/111参照)ならびに子どもに対する国家の暴力(CRC/C/100参照)に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに2004年5月に採択されたドメスティック・バイオレンス禁止法を実施することにより、家庭における家族間暴力(身体的か精神的かは問わず、かつ女性に対する暴力を含む)に対応しおよびこれを予防し、ならびに子どもがこの種の暴力から全面的に保護されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 家族間暴力の現象および社会一般における暴力を防止しかつ減少させる目的で、子どもに対する暴力の問題の根本的原因および規模に関する研究を行なうこと。
  • (c) 近親姦から子どもを保護するための法的枠組みを確立すること、通報機構に対する子どもおよびおとなのアクセスを向上させること、3ケタの電話番号で24時間開設されているフリーダイヤルの電話ヘルプラインを全面的に支援すること、ならびに、事案の捜査および有責者の訴追の件数を増やすこと等も通じ、子どもの性的虐待を終わらせるための措置をとること。
  • (d) 被害者、とくに女性および女子の通報を妨げる公衆の態度および伝統を変革することを目的として、家族間暴力の問題に関する公衆の意識啓発を図るとともに、この分野で活動している非政府組織(全国暴力反対センターなど)との協力を強化すること。
  • (e) 子どもにやさしい司法手続を通じて家族間暴力および性的虐待の事案を捜査するとともに、プライバシーに対する子どもの権利の保障を正当に考慮しながら、加害者に対して制裁が科されることを確保すること。
  • (f) 子どもに対する性的虐待および暴力の被害を受けた子どもおよび加害者がカウンセリングならびに回復および再統合に関連するその他のサービスに十分にアクセスできるようにするため、児童精神科医、心理学者、ソーシャルワーカーその他の専門家の不足に対応すること。
保育サービス
39.委員会は、保育施設および就学前施設のようなサービスで利用可能な定員が不十分であるように思われ、かつこの点に関して顕著な地域格差があることを懸念する。
40.条約第18条3項に照らし、委員会は、締約国が、地域間の平等に特段の注意を払いながら、保育施設および就学前施設の定員を増加させるために即時的措置をとるよう勧告する。

5.基礎保健および福祉

障害のある子ども
41.委員会は、障害のある子どもの状況について重大な懸念を表明するとともに、これらの子どもに対する差別を遺憾に思う。障害のある子どものためのサービスの大多数が都市部に存在することには留意しながらも、委員会は、国の農村部に住んでいる障害児およびこれらの子どもが直面している困難な社会経済的境遇について、とくに懸念を覚えるものである。障害のある人の権利について定めた法律および1999年に採択された障害市民状況改善国家計画には留意しながらも、委員会は、障害のある子どもを支援する効果的な政策、基礎k的サービスおよび調整が存在しないことを懸念する。委員会は、障害のある子どもが物理的環境にアクセスできるようにするための法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、社会サービスおよび保健サービスにも教育サービスにも十分にアクセスできていない障害児が多いことにも、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、障害のある子どもに関する十分な統計データが存在しないこと、および、障害のある子どもへの偏見が存在することに懸念を表明するものである。
42.委員会は、締約国に対し、障害者の機会均等化に関する基準規則および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らして以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を主導しかつ計画するとともに、当該計画を実施するために必要な財源および人的資源を配分すること。
  • (b) 国の農村部に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関する十分なかつ細分化された統計データを収集するとともに、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際に当該データを活用すること。
  • (c) 障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止し、ならびに生活のあらゆる分野に障害のある子どもが完全に参加するための平等な機会を確保すること。
  • (d) 障害のある子どもを可能なかぎり主流の学校制度に包摂するためにあらゆる必要な措置とり、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。
  • (e) 障害のある子どもが物理的環境、情報および通信にアクセスできるようにするための措置をとること。
  • (f) 公衆の否定的態度を変革する目的で、障害のある子ども(その権利、特別なニーズおよび潜在的可能性も含む)に関する、モンゴル社会に深く根づいた障害児に対する偏見を理由とする〔不十分な〕意識を高めること。
健康および保健サービス
43.プライマリーヘルスケアを向上させるための締約国の努力、とくに全国予防接種計画(1993~2000年)の実施が成功した結果としての感染症(はしか、髄膜炎および下痢など)の予防には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、保健サービスへのアクセスの面で地域格差があること、妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率がともに高く、かつこの点に関して地域的差異があること、ならびに、子どもの間で栄養不良が蔓延している状況があることを懸念する。委員会は、完全母乳育児率が下降していること、および、締約国がまだ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択していないことに、懸念とともに留意するものである。医薬品の使用および作用に関する知識が貧弱であり、かつ負担可能な小児薬へのアクセスが限られていることは、若干の深刻な懸念の理由となる。委員会は、同国において衛生状態が劣悪であること、環境汚染の問題が生じていること、および清潔かつ安全な飲料水へのアクセスが限られていることに、懸念を表明するものである。さらに、委員会は、同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが、保健サービスおよび社会サービスにきわめて限られた形でしかアクセスできていないことを、懸念する。
44.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう強く勧告する。
  • (a) 同国のすべての地域の子ども(同国の最遠隔地に住んでいる子どもも含む)が良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保するため、保健部門に対して財源および人的資源を優先的に配分すること。
  • (b) 同国の遠隔地に住んでいる母子に特段の注意を払いながら、産前ケアを改善し、かつ妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率を相当に削減するための努力を継続すること。
  • (c) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択するとともに、生後6か月間は母乳のみを与え、その後適切な乳児食を加える育児を奨励すること。
  • (d) 農村部の子どもに特段の注意を払いながら、たとえば学校栄養プログラムを通じて子どもの栄養状態を向上させること。
  • (e) 子どものさまざまな健康状態の予防および治療に用いられる安全かつ負担可能な薬への平等なアクセスを確保するとともに、医薬品の使用および作用に関する意識を高めること。
  • (f) 同国のすべての地域で安全かつ清潔な飲料水および衛生設備へのアクセスを確保し、かつ環境汚染の影響から子どもを保護すること。
  • (g) 同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが保健サービスおよび社会サービスに平等にアクセスできることを促進するため、これらの子どもの健康状況に注意を払うこと。
思春期の健康
45.委員会は、「生徒と青少年の健康に関する国家リプロダクティブ計画」および「健康推進学校」キャンペーンを実施することにより、学校で思春期の健康および健康教育を促進するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、定期的身体検査が行なわれていないことおよび学校の児童生徒の健康に関する統計データが存在しないことを含め、学校保健サービスの数が限られていることを懸念するものである。加えて、委員会は、喫煙、アルコール消費および薬物濫用のような、生活様式の要因に関連した非感染性疾患に関わる思春期の健康に対し、十分な注意が向けられていないことを懸念する。
46.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康に細心の注意を払うとともに、学校におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育等も通じて思春期の健康を促進し、かつ学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアも含む)を導入する努力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、学校に通っていない青少年に対して健康に関する同一の教育、情報およびサービスが提供されることを確保するよう、勧告するものである。青少年の喫煙、アルコール消費および薬物濫用を減らすため、委員会は、締約国が、とくに青少年のために考案された、健康的行動に関する選択についてのキャンペーンを開始するよう勧告する。
HIV/AIDS
47.委員会は、同国のHIV感染率が相対的に低いことに留意するとともに、とくにHIV/AIDS対応国家戦略、公衆衛生国家政策、国家リプロダクティブヘルス計画、HIV/AIDS予防法および国家感染症計画を実施することにより、HIV/AIDSおよび性感染症(STI)を予防するために締約国が行なった努力を心強く思う。締約国がとった前向きな措置にも関わらず、委員会は、若いセックスワーカーが増えていることのような、これらの若者をHIVに感染しやすくするリスク要因が存在することに、懸念を表明するものである。
48.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、委員会は、締約国が、HIV/AIDSの流行を予防するための努力を強化し、かつ、青少年、とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する青少年の間で引き続きHIV/AIDSに関する意識啓発を図るよう、勧告する。
生活水準
49.委員会は、締約国の貧困率が根強く高いままであることを深く懸念する。委員会は、農村部からの移住の増加の結果、貧困がいっそう都市化されつつあり、かつ、このような変化によって、路上で生活する子どものような一連の新たな社会問題が生み出されていることに留意するものである。とくに、最低限の所得しか得ていない家庭で暮らしている子どもと対象とした「希望のお金」手当制度の採択(2004年)、ならびに、貧困削減のための計画、プログラムおよびプロジェクトを実施するための締約国の努力には留意しながらも、委員会は、十分な生活水準(十分な住居その他の基礎的サービスを含む)に対する権利を享受していない子どもが同国の都市部においても農村部においても多いことについての懸念を、あらためて表明する。
50.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、支援および物的援助を必要としている経済的に不利な立場におかれた家族に特段の注意を払いながら、貧困削減のための国家的計画およびプログラムを引き続き優先的課題として実施するとともに、十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障するよう、勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動

教育(職業訓練および職業指導を含む)
51.1995年に採択された改正教育法を実施することにより、教育水準を向上させ、かつ教育へのアクセスを保障しようとする締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、とくに同国の農村部の子どもが教育へのアクセスおよび通学への面で依然として困難に遭遇していることを懸念する。とくに農村部において、初等学校相当年齢の未就学児が多いこと(就学面のジェンダー格差および地域格差も含む)、非識字率が上昇していることおよび学校中退率が高いことは、深刻な懸念の理由となるものである。
52.委員会は、牧民家族に属する子どもおよび農村部に住んでいる男子の間で、学校を中退し、かつ児童労働に従事するようになるおそれがより高いことについての懸念をあらためて表明する。委員会は、学校で徴収される追加費用が多くの子どもにとって金銭的障壁となっており、かつ教育への平等なアクセスの否定につながっていることに、特段の懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、子どもが学校で暴力を受ける事件が報告されていること、および学校の便益に欠陥があること(教室の定員数が不十分であることおよび教科書の質が低いことを含む)を懸念する。委員会は、学校寮を建設しかつ改修しようとする締約国の努力には留意するものの、その環境が劣悪であることおよび子どもの受け入れ能力が限られていることを懸念するものである。
53.委員会は、締約国が、以下の目的で十分な財源および人的資源を配分するための措置を直ちにとるよう勧告する。
  • (a) 同国全域のすべての子どもが、ジェンダーによるいかなる区別もいかなる金銭的障壁もなく良質な教育に平等にアクセスできることを漸進的に確保するとともに、子どもが教育に容易にアクセスできるようにする目的で、子どもの居住地にある学校の地位を回復させることも検討すること。
  • (b) 初等中等教育における就学率をいかなる地域格差もなく高めることを目的とした措置を強化し、かつ、すべての子どもが教育を修了する平等な機会を有することを確保すること。
  • (c) とくに農村部の子どもの学校中退率を低下させるための効果的措置を採択しかつ実施する努力を強化すること。
  • (d) 非識字率の上昇に対応するための追加的措置をとること。
  • (e) 中等学校段階における、かつ一度も学校に通ったことのないまたは修了前に中退した青少年を対象とした、職業訓練のための便益を拡大すること。
  • (f) 教員に対して適切な研修を行なうことにより、教授法の質を高めること。
  • (g) 学校を新設し、かつ、学校における暖房設備および電気設備、教科書の質および学校寮の環境を改善すること等の手段により、学校の便益を向上させること。
  • (h) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮に入れながら、人権一般およびとくに子どもの権利を引き続き学校カリキュラムに盛りこむとともに、安全かつ非暴力的な学校環境を促進すること。
余暇、レクリエーションおよび文化的活動
54.委員会は、都市に住んでいる子どものためのレクリエーション活動および文化的活動ならびに関連の便益の数が不十分であること、ならびに、子どものために建設された遊び場の多くがこの10年間で解体されたことに、懸念とともに留意する。
55.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、遊びに従事する子どもの権利に注意を払うとともに、都市に住む子供のために安全な遊び場を設計しかつ建設すること等により、この権利の実施のために十分な人的資源および財源を配分することによって、休息、余暇、文化的活動およびレクリエーション活動に対する子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を強化するよう、勧告する。

7.特別な保護措置

子どもの難民
56.委員会は、ノン・ルフールマンの原則を尊重し、かつ持続可能な解決策の追求を援助することにより、子どもの難民、とくに朝鮮民主主義人民共和国から来た子どもの難民を保護するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、モンゴルで難民としての地位を求める子どもが、条約上の権利の享受に関して適切な保護および援助を必ずしも受けていないことを、懸念するものである。
57.条約第22条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)に加入し、庇護に関する特別法(これにはとくに子どもの庇護希望者、とりわけ保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの保護および処遇に関する規定が含まれるべきである)を策定し、かつ、無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約に加入するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.48、パラ26参照)をあらためて繰り返す。
経済的搾取
58.委員会は、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)を2002年に、かつ最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約(1999年)を2001年に批准したこと、就労の最低年齢を16歳と定めた労働法の規定を採択したこと(1999年)、未成年者の雇用が禁じられる職場の一覧を採択したこと(1999年)、ならびに、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)との了解覚書に調印したこと(1999年)およびIPECの活動に参加していることのような、児童労働の搾取から保護される子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。
59.締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、モンゴルにおいて働く子どもの割合が高いこと、および、児童労働の搾取からさまざまな悪影響(学校中退、および有害かつ危険な労働による健康への悪影響を含む)が生じていることを懸念する。子どもの家事労働者および農村労働者、ならびに、金鉱および炭鉱において非常に有害な条件下で働いている子どもの人数が多いことは、深刻な懸念の理由となるものである。
60.さらに、委員会は、伝統的スポーツから、子どもの虐待および搾取につながる特徴を備えた妙味のあるビジネスへと相当に変貌した伝統的競馬において、有害な状況下における子どもの参加および搾取がますます行なわれるようになっていることを懸念する。とくに、委員会は、ときには8歳という幼さの子どもが参加させられており、かつこのような参加が重傷のみならず死亡にさえつながりうることを懸念するものである。
61.委員会は、締約国が、以下の目的のために即時的かつ効果的な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの権利条約第32条ならびに締約国が批准したILO第138号条約(1973年)および第182号条約(1999年)を実施し、かつILO第146号勧告および第190号勧告を考慮することにより、有害なまたは危険な労働で子どもを雇用することの禁止および児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の効果的防止を含む児童労働関連の規定の全面的実施を確保すること。
  • (b) 訓練を受けた労働査察官を増員することにより、同国における児童労働の監視を向上させること。
  • (c) 働く子どもが良質な教育(職業教育および非公式教育を含む)にアクセスでき、かつ、教育ならびに休息、余暇およびレクリエーション活動に対する権利を享受するための十分な休暇および休憩時間を与えられることを確保すること。
  • (d) 児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の搾取から生じるさまざまな種類の悪影響に関する、とくに子ども、親その他の養育者を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうことにより、児童労働に関する公衆の態度に影響を及ぼすこと。
  • (e) 競馬産業における子どもの搾取の性質および規模を評価するための包括的研究を実施し、かつ、労働法に定められた最低年齢にしたがい、これらのレースで16歳未満の子どもを騎手として雇用することを明示的に禁止することによって、伝統的競馬における子ども騎手の問題に対応すること。
  • (f) ILO/IPECの援助を引き続き求めること。
ストリートチルドレン
62.委員会は、締約国報告書でストリートチルドレンの状況に関する十分な情報が提供されなかったことを遺憾に思う。路上で生活している子どものためのセンターが開設されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、非常に厳しい条件下で生活するストリートチルドレンの人数が増えていること、および、この現象をもたらす原因がしばしば虐待的な家庭状況であることを懸念するものである。1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」によれば、家出をした子どもは最長1週間収容される可能性がある。委員会は、締約国の国内法がこの点に関して条約の原則および規定に全面的に一致しないままであることを懸念するものである。さらに、委員会は、ストリートチルドレンに対する公衆の否定的態度および偏見がその困難な状況を悪化させていることに、懸念とともに留意する。
63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ストリートチルドレンの状況に対応するため、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に特段の注意を払いながら包括的な国家的戦略を採択するとともに、これらの子どもに十分な援助(身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復および再統合のためのサービス、ならびにこれらの子どもの全面的発達を支えるための職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供すること。
  • (b) 1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」の実施に関して、家出した子どもの収容は行なわないことを方針とするとともに、条約の規定と全面的に両立する、収容に代わる選択肢を追求すること。
  • (c) この現象を防止する目的で、この現象の根本的原因および規模ならびにストリートチルドレンの個人的特徴を明らかにするための行動志向型研究を行なうとともに、ストリートチルドレンに対し、そのニーズに適合したサービスを提供し、かつ家族と再統合する機会も提供すること。
  • (d) 路上で生活している子どもに関する公衆の否定的態度を変革するため、これらの子どもについての意識啓発を図ること。
  • (e) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織および子どもたち自身と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。
性的搾取および人身取引
64.委員会は、売春に従事する子どもの人数が増えていることを深く懸念する。モンゴルにおいて子どもの人身取引が比較的新しい人権問題であることには留意しながらも、委員会は、子どもの性的搾取および人身取引を増加させる可能性があるいくつかのリスク要因(根強い貧困、高い失業率、家出につながる困難な家庭事情および観光業の成長を含む)について懸念を覚えるものである。
65.性的その他の搾取を目的とする子どもの人身売買を防止しかつこれと闘うため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの性的搾取および人身取引(子どもをこのような搾取のおそれにさらす根本的原因および要因を含む)を防止しかつこれと闘うための包括的な国家的政策を策定しかつ採択すること。
  • (b) 人身取引事件を発見しおよび捜査し、人身取引の問題に関する理解を向上させ、ならびに加害者が訴追されることを確保するための努力および法律を強化すること。
  • (c) それぞれ1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して、援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。
  • (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に署名し、かつこれを批准すること。
少年司法の運営
66.委員会は、法律に触れた子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なった努力に留意する。これには、「子どもの犯罪および子どもに対する犯罪の防止に関する国家計画」を1999年に採択したこと(刑事警察局子ども課の再編により子ども犯罪防止部を設置したことを含む)、および、18歳未満の者に特別な法的手続を保障する刑法の規定を2002年に採択したことが含まれる。しかしながら委員会は、18歳未満の者を長期間の未決勾留の対象とし、かつ初犯の少年による軽罪に対して収監刑を科すことが実務として確立されていることを、深く懸念するものである。委員会はまた、法律に触れた18歳未満の者に対し、適切な法律扶助および法的援助へのアクセスが提供されていないことも懸念する。18歳未満の者の拘禁および収監の環境を改善するためにとられた若干の積極的措置にも関わらず、委員会は、これらの施設における子どもの生活環境が依然として劣悪であることに、懸念とともに留意する。
67.委員会は、18歳未満の男子がウランバートルに設けられた別個の少年刑務所で刑に服しているのに対し、女子はいまなお成人女性と同じ刑務所で刑に服していることに留意する。委員会は、刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者を対象とする社会的再統合のためのサービスが少数であることを懸念するものである。少年司法の運営に関する国内法について、委員会は、保護観察により釈放された18歳未満の者が困難に直面していることに懸念を表明する。さらに、委員会は、裁判所が依然として、子どもに配慮し、かつ条約の規定に敏感となる訓練を十分に受けているとは言えない状態にあることを懸念するものである。
68.少年司法に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/46、パラ203-238)に照らし、委員会は、締約国が、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するよう、勧告する。これとの関連で、締約国はとくに以下の措置をとるべきである。
  • (a) 少年司法の運営に関する包括的な国家的プログラム(同国のすべてのアイマグ(県)を網羅する、適切な訓練を受けた専門職員を擁した少年裁判所の設置を含む)を策定しかつ実施すること。
  • (b) 18歳未満の者の自由剥奪の期間を法律で制限すること。
  • (c) 18歳未満の者の未決勾留が真に最後の手段としてもっとも短い期間で用いられるよう、その期間を法律で制限するとともに、その決定が可能なかぎり早期に裁判官によって行なわれ、その結果審査されることを確保すること。
  • (d) 保護観察、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、18歳未満の者の自由の剥奪に代わる措置の使用を奨励すること。
  • (e) 自由の剥奪が避けられず、最後の手段として用いられる場合について、逮捕の手続および拘禁の環境を改善すること。
  • (f) 18歳未満の者が適切な法律扶助および弁護人ならびに独立の、子どもに配慮した効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。
  • (g) 少年司法の運営を担当する者に対して関連の国際基準に関する研修を行なうとともに、法律に触れた子どもを援助するため刑務所にソーシャルワーカーの職を設けることを検討すること。
  • (h) 刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者の全面的発達を支えるため、両者に対して教育の機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)ならびに回復および社会的再統合のためのサービスが提供されることを確保すること。
  • (i) とくにOHCHR、国連薬物犯罪事務所およびユニセフの技術的協力および援助を求めること。
マイノリティに属する子ども
69.委員会は、報告書に情報が存在しなかったことにより、カザフ人およびツァータン人のようなマイノリティに属する子どもに関する、条約第30条で保障されている権利についての締約国の義務の遵守状況を審査することがほとんどできなかったことを遺憾に思う。委員会は、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して、このような子どもの人権の享受が制約されていることを懸念するものである。
70.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、マイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。委員会は、国民的または民族的、宗教的および言語的マイノリティに属する子どもについての条約第30条の実施に関して、締約国が次回の定期報告書で具体的かつ詳細な情報を提供するよう、要請するものである。

8.子どもの権利条約の選択議定書

71.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が2003年7月に、かつ武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書が2004年10月に批准されたことを歓迎する。
72.委員会は、選択議定書の実施についての審査を可能にするためには、定期的かつ時宜を得た報告の実践が重要であることを強調する。委員会は、締約国が、選択議定書および条約の報告条項に基づく報告義務を全面的に履行するよう勧告するものである。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
73.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは県の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
74.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

75.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月1日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
最終更新:2012年10月20日 08:56