総括所見:モンゴル(第1回・1996年)


CRC/C/15/Add.48(1996年2月13日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1996年1月10日および11日に開かれた第264~266回会合においてモンゴルの第1回報告書を検討し、以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、モンゴル政府に対し、締約国が第1回報告書を提出したこと、事前質問事項に掲げられた質問に文書で回答したことおよび建設的かつ実りのある対話に携わってくれたことに関して、謝意を表する。委員会は、議論が率直かつ協力的な雰囲気のなかで行なわれ、かつ、その際、締約国代表が、政策およびプログラムの方向性のみならず条約の実施の過程で直面した問題点についても明らかにしたことを、心強く思うものである。

B.積極的な側面

3.委員会は、政治的および経済的移行期という困難な状況下にあっても、政府が子どもの問題を政治的な優先課題として位置づけてきたことに、満足感とともに留意する。このような政府の姿勢は、「子どもの保護および発達に関する全国サミット」(1995年)のようなハイレベルな会議を開催してきたこと、1995年を「子ども年」および1996年を「教育年」として宣言したこと、ならびに、国家予算の20%を教育に振り向けてきたことに表れている。
4.委員会は、国内法および少年司法の運営に関する領域で子どもの権利条約の規定が全面的に実施されるようにするため、締約国が助言および技術的援助を求めたいとの姿勢を明らかにしたことを歓迎する。
5.委員会は、法改正の領域で政府が行なってきた努力、とくに、新憲法および新教育法の採択、ならびに、現在行なわれている子どもの権利に関する法律の起草作業に留意する。
6.委員会は、また、子どもの問題および子どもの権利に関わる問題に対処するための機構が設置されたこと、とくに、全国子どもセンター(NCC)および全国子ども評議会が設置されたことを歓迎する。
7.委員会は、子どもの権利条約をモンゴル社会で普及させ、かつ、関連する政府の措置をメディア、とくにテレビ番組を通じて公表していくことに関して政府が前向きな姿勢を見せたことを心強く思う。

C.条約の実施を阻害する要因および問題点

8.委員会は、政治的移行、社会的変化および深刻な経済危機の最中にあってモンゴルが直面している困難に留意する。貧困の悪化および失業の増大の結果、多くの子どもの状況が悪化してきた。委員会はまた、締約国の地理的および気候的特殊性が、子どもの日常生活にある程度影響を与えうることにも留意する。

D.主要な懸念事項

9.委員会は、締約国を覆う困難な経済状況が子どもに与える影響について、不安を感ずる。これとの関連で、条約第3条および第4条に照らし、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれている集団の子どもを保護するために適切な措置がとられているかどうかが、とくに懸念されるところである。
10.委員会は、子どもの権利を促進しかつ保護するための政策を実施するにあたって、さまざまな省庁間のおよび中央当局と地方当局との間の効率的な調整を図る機構が必要であることについて、十分な関心が払われていないことを懸念する。
11.委員会は、条約で対象とされているすべての領域において、体系的かつ包括的なデータ収集を行ない、適切な指標を特定し、かつ監視のための機構を確立することに関して十分な関心が払われていないことを懸念する。このことは、とくに、子どもの虐待および不当な取扱いといった最も見えにくい領域について言えるとともに、マイノリティ集団の子ども、ノマドの子ども、ひとり親家庭の子ども、農村部の子ども、施設に措置された子どもおよび障害のある子どもならびに路上で生活しかつ(または)働いている子どもをはじめとする、すべてのグループの子どもにも当てはまる。
12.委員会は、締約国が、条約の一般原則、すなわち第2条(差別の禁止の原則)、第3条(子どもの最善の利益の原則)、第6条(生命、生存および発達への権利)、第12条(子どもの意見の尊重)を、その国内法においてまだ十分に考慮に入れていないことに、懸念を表明する。
13.委員会は、子どもの出生登録を確保するために十分な措置がとられていないこと、および、遠隔地に住む子どもは登録されない場合があり、そのことによって基本的権利を奪われている可能性があることを、懸念する。
14.委員会は、国際養子縁組を規制する法律が存在しないことを不安に思う。
15.委員会は、とくに農村部に住む男子の間で学校中退率が高いこと、および、児童労働が増加しているとの報告があることを不安に思う。委員会は、また、保健、社会サービスおよび教育といった基本的サービスへのアクセスに関して、農村部および遠隔地に住む子どもならびに障害児が困難に直面していることを懸念する。
16.委員会は、家庭における子どもの不当な取扱いを効果的に防止しかつ闘うための適切な措置がまだとられていないこと、および、この問題に関して十分な情報が存在しないことを懸念する。子どもの性的搾取の問題にも特別な注意が必要である。
17.少年司法の運営に関する状況、および、それが条約第37条および40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則といった他の関連の基準に合致しているかどうかは、委員会の懸念するところである。

E.提案および勧告

18.委員会は、締約国が、人権および子どもの権利に関わっているさまざまな政府機関の間の調整を中央レベルおよび地方レベルの双方で強化し、かつ、非政府組織とより密接に協力できるようにするために、さらなる措置をとるよう勧告する。
19.委員会は、さらに、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれている集団の子どもに関する情報を含め、条約が対象としているさまざまな領域の子どもに関するすべての必要な情報を収集する作業に着手するよう、勧告する。委員会は、また、条約によって認められた権利の実現に関して達成された進展および直面した問題点を中央レベルおよび地方レベルで評価し、かつ、とくに経済的変化が子どもに与える影響を定期的に監視するため、学際的な監視システムを設置するよう提案するものである。このような監視システムは、締約国が、適切な政策を形成し、かつ、広く行き渡っている社会的格差および伝統的偏見と闘うことを可能にするであろう。委員会はまた、締約国が、オンブズパーソンのような独立した機構の設置を検討するようにも奨励する。
20.委員会は、条約第42条に照らし、おとなにも子どもにも同様に広く条約の規定および原則を知らせかつ条約に関する理解を深めるため、さらなる努力が必要とされているという見解に立つものである。委員会は、条約第12条に照らし、締約国が、子どもの参加権に関する公衆の意識を高めるための体系的な取り組みをさらに発展させるよう奨励したい。
21.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働いている専門家集団(教員、法執行官、ソーシャルワーカーおよび裁判官を含む)を対象として子どもの権利に関する研修プログラムを定期的に組織するとともに、これらの専門家の養成カリキュラムに人権および子どもの権利を盛りこむよう、勧告する。
22.すべての子どもが人間として認められ、かつ、その権利を全面的に享受できるようにするため、子どもの出生登録は優先事項とされるべきである。委員会は、子どもの出生登録を確保するため、移動登録所の設置を含むさらなる措置をとるよう奨励する。
23.委員会は、また、条約第2条に照らし、締約国が、農村部における男子の学校中退と闘いかつこのような子どもが児童労働に携わるのを防止すること、ならびに、農村部の子どもおよび障害のある子どもによる基本的サービス(保健、教育および社会的養護)へのアクセスを全国的に強化することを目的として、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
24.委員会は、政府が法改正を行なうにあたっては、子どもの権利条約の規定、とくにその一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)を全面的に考慮に入れるよう勧告する。
25.委員会は、国際養子縁組に関して、締約国は、可能なかぎり早く、国際養子縁組を規制するための法律を起草しかつ採択するべきだという見解に立つものである。また、締約国が、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を批准することも奨励される。
26.難民の子どもの保護を促進するため、委員会は、締約国が難民の地位に関する条約(1951年)を批准するよう勧告する。
27.委員会は、モンゴル政府が、条約第4条の全面的実施にとくに関心を払い、かつ、中央レベルおよび地方レベルで資源が公正に配分されるようにするよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分は、利用可能な資源を最大限に利用して、かつ、子どもの最善の利益に照らして確保されるべきである。
28.委員会は、さらに、条約第19条に照らし、政府が、家庭における子どもの不当な取扱いおよび子どもの性的虐待と闘うために、法的措置含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、公的機関が、この問題の性質および規模を理解するために情報を収集しおよび包括的な調査に着手すること、ならびに、あらゆる形態の児童虐待を防止するための社会プログラムを開始することを提案するものである。
29.少年司法の運営の分野に関して、委員会は、法改正をさらに行ない、かつ、その際、子どもの権利条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則といった他の関連の国際基準を考慮に入れるよう勧告する。少年非行の防止、自由を奪われた子どもの権利の保護、少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利および法的保護の尊重、ならびに、少年に対応する司法機関の全面的独立および公平性に、特段の関心が払われるべきである。
30.〔国連〕人権センターおよび犯罪防止刑事司法部が行なっている技術的援助プログラムの枠組みに沿って、子どもの権利の領域における法改正および子どもとともに働いている専門職の研修が開始されるべきである。とくに裁判官、法執行官、矯正施設職員およびソーシャルワーカーに向けた、関連の国際基準に関する研修に関して、特段の関心を払うことが求められる。政府に対し、〔国連〕人権センターおよび犯罪防止刑事司法部に対してこのような具体的援助の要請を行なうことを検討することが奨励されるところである。さらに、政府が、国際労働機関、国連難民高等弁務官、国連児童基金および世界保健機構を始めとする他の関連の機関からも技術的援助を求めることを検討することも提案される。委員会はまた、国際社会に対しても、締約国が現在行なっている努力に関して技術的援助および助言を提供するよう奨励するものである。
31.委員会は、締約国が、政府報告書、委員会における同報告書に関する議論の議事要録および報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を、広く普及するよう奨励する。委員会は、こうした文書に対して議会の関心を促し、かつ、そこに掲げられている行動のための提案および勧告をフォローアップするよう提案したい。これとの関連で、委員会は、非政府組織との協力を強化するよう提案する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。