総括所見:カンボジア(第1回・2000年)


CRC/C/15/Add.128(2000年6月28日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2000年5月24日に開かれた第629回および第630回会合(CRC/C/SR.629-630参照)において、2000年5月24日に提出されたカンボジアの第1回報告書(CRC/C/11/Add.16)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)2000年6月2日に開かれた第641回会合において。

A.序

2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/CAM.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国の代表団との建設的対話を心強く思うとともに、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する反応を歓迎するものである。委員会はまた、条約の実施に直接関与する高位の代表団が出席してくれたことにより、委員会が締約国における子どもの権利の状況を十全に評価できたことも歓迎する。

B.積極的側面

3.委員会は、カンボジアが、人権保護のための6つの主要国際文書の締約国であることを歓迎する。締約国が、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約を批准したこと(1999年)も歓迎されるところである。
4.委員会は、締約国が、子どもの権利条約に掲げられた権利の保護を1993年憲法(第48条)に盛りこんだことを歓迎する。
5.カンボジア政府と人権高等弁務官事務所が調印し、人権に関する技術的援助および助言サービスのプログラムを開設した了解覚書(1996年)は、委員会の歓迎するところである。
6.委員会は、ILO最低年齢条約(第138号)の批准(1999年)およびカンボジア政府とILO/IPECによる了解覚書の調印(1997年)のような、児童労働と闘うために締約国がとった措置を歓迎する。
7.委員会は、締約国の第1回報告書の作成および条約の実施に非政府組織が参加していることを歓迎する。

C.条約の実施における進展を阻害する要因および困難

8.委員会は、とくに20年以上に及ぶジェノサイド、武力紛争および政治的不安定ならびに長年にわたる締約国の孤立を理由として、締約国が条約の実施に関して多くの困難に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国のきわめて困難な社会経済的状況により、子どもを含むもっとも脆弱な立場に置かれた集団に影響が生じており、かつその権利の享受が妨げられていることにも留意するものである。

D.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

立法
9.締約国の立法上の枠組みにおいて条約のいくつかの規定が網羅されており、かつ新法を起草するための努力が行なわれていることは認識しながらも、委員会は、条約を全面的に尊重するためには国内法をなお見直し、かつ新法を制定する必要があることを依然として懸念する。現行法が執行されていないことも懸念の対照である。
10.委員会は、現行法を条約の規定、とくに一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)と一致させる目的で、その見直しを行なうよう勧告する。その際、出生登録、家庭および代替的養護ならびに少年司法の分野に特別な注意を払わなければならない。委員会はさらに、締約国が、現在進行中のおよび今後の法律起草プロセス、とくに民法草案、刑法草案および刑事訴訟法草案に、子どもの権利に関わる問題を盛りこむよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めるよう奨励する。
調整
11.委員会は、条約の実施の調整を担当するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)が設置されたことは歓迎するものの、その任務を締約国全域で全面的にかつ効果的に履行する同評議会の能力について懸念を表明する。とくに、評議会が人的資源および財源を欠いていることに対して懸念が表明されるところである。
12.委員会は、締約国が、国、地域および地方のレベルで条約の実施を調整することに関するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)の役割を強化するため、国際協力等も通じて効果的な措置をとるよう勧告する。CNCCに対してより実質的な人的資源および財源を提供し、かつ子どもの権利の分野で活動する非政府組織とのより緊密な協力および調整を確立するため、いっそうの努力が行なわれるべきである。
監視
13.委員会は、条約の実施を監視する締約国の能力が限られていること、および、条約に基づく権利の侵害についての子どもからの苦情を登録しかつこれに対応する独立の機構が存在しないことを、懸念する。
14.委員会は、締約国が、条約の実施を監視し、ならびに、自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情に子どもにやさしい方法でかつ迅速に対応し、かつそのような侵害に対して救済を提供する独立の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)の設置を検討するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもが当該機構を効果的に活用することを促進するための意識啓発キャンペーンを実施するよう提案するものである。
データ収集
15.委員会は、教育管理情報システムおよび保健情報システムのような、データ収集の分野で締約国がとった措置を歓迎する。にもかかわらず、条約が対象とするすべての分野(子どもの虐待および不当な取扱い、マイノリティ集団に属する子ども、女子、農村部の子どもならびに売買、取引および買春の被害を受けた子どもを含む)についての体系的、包括的かつ細分化された量的および質的データを収集するための機構が存在しないことに、懸念が表明されるところである。
16.委員会は、条約が対象とするあらゆる分野を包摂する目的で、データ収集システムの開発および強化を継続するよう勧告する。当該システムは、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価する基盤として、18歳未満のすべての子どもを含み、かつ脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視するべきであり、かつ、条約の規定の実施を向上させるための政策立案の一助として活用されるべきである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフの国際援助を求めるよう奨励する。
予算配分
17.数十年間の戦争の結果、締約国のインフラおよび社会サービスのほとんどが破壊されたことは認識しながらも、委員会は、「利用可能な資源を最大限に用いて」予算を配分することに関わる条約第4条の規定に十分な注意が払われていないことに、懸念を表明する。
18.委員会は、締約国が、利用可能な最大限の資源が子どものための保健サービス、教育サービスおよび社会サービスに配分され、かつ、脆弱な立場に置かれたおよび周縁化された集団に属する子どもの保護に特段の注意が払われることを確保することを優先するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにドナーによる「カンボジア協議グループ」の調整枠組みのなかで、国際社会との開かれた協力を継続しかつ醸成するよう奨励するものである。
条約の普及
19.学校カリキュラムに条約を含めることなど、条約の原則および規定に関する広範な意識を促進するためにとられた措置は認識しながらも、委員会は、これらの措置を強化する必要があるという見解に立つ。
20.委員会は、子どもの権利に関する社会の感受性を高めるため、締約国が、条約の原則および規定を普及するための努力を強化するよう勧告する。マイノリティ集団の間ならびに農村部および遠隔地における条約の普及がとくに重視されるべきである。委員会は、締約国に対し、この分野に関してとくにユニセフおよびOHCHRの技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。
専門家の研修
21.委員会は、子どもともにおよび子どものために働く専門家を対象とする研修に関して、締約国がOHCHRおよびユニセフと協力しながら行なっている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、現行プログラムをさらに発展させてすべての専門家集団を対象にしなければならないとの見解に立つものである。
22.委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(とくに議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、自治体職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象とする、条約の規定に関する体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを、引き続き実施するよう奨励する。これとの関連で、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を引き続き要請することが考えられる。

2.子どもの定義

23.委員会は、締約国の法律で子どもの法的定義が明確に定められていないことを懸念する。とくに、性的同意および刑事責任に関する法律上の最低年齢が定められていないことに懸念が表明されるところである。
24.条約の原則および規定に照らし、委員会は、締約国が法律に子どもの定義を設けるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、新法の起草過程で、刑事責任および性的同意に関する最低年齢の編入を考慮するよう勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、婚姻の最低年齢に関する法律を執行するよう勧告する。

3.一般原則

25.委員会は、締約国の国内法に条約の一般原則を編入するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。
26.委員会は、条約の一般原則(すなわち差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)が、子どもに影響を当たるすべての関連の法律に掲げられ、かつ、子どもに関連するすべての行政上および司法上の決定ならびにすべての政策およびプログラムにおいて考慮されるよう、勧告する。子どもを権利の主体ではなく客体としてとらえる伝統的な見方を変革するため、コミュニティの指導者および宗教的指導者を含む公衆一般の意識啓発およびこれらの原則の実施に関する教育プログラムが強化されるべきである。
差別の禁止
27.条約第2条に関して、委員会は、ジェンダー、民族的出身、HIV/AIDSの感染の有無および障害を理由とする差別の様式が存在することに、懸念を表明する。とくに、締約国の憲法がクメール系市民の権利にしか触れていないことに対し、懸念が表明されるところである。
28.委員会は、締約国が、条約に掲げられたすべての権利がいかなる区別もなくすべての子どもによって享受されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、とくに女子による教育へのアクセスとの関連で、女子差別を解消するための効果的措置をとるよう勧告するものである。路上で生活しかつ(または)働いている子どもおよびマイノリティ集団に属する子ども(とくにベトナム系の子ども)に対する差別を解消するための努力が行なわれなければならない。さらに、委員会は、これに関連して自由権規約委員会(1999年、CCPR/C/79/Add.108、パラ17)および人種差別撤廃委員会(1998年、CERD/C/304/Add.54、パラ11~13)が締約国に対して行なった勧告を支持する。

4.市民的権利および自由

出生登録
29.条約第7条の実施に関して、委員会は、出生登録が義務ではなく、そのためすべての子どもが出生時に登録されているわけではないことに懸念を表明する。
30.委員会は、締約国が、いかなる種類の差別もなくすべての子どもにとって出生登録を義務的なものとする目的で、条約の原則および規定にしたがって国内法を見直すよう勧告する。クメール系ではない市民の子ども(その法的地位は問わない)または難民も、カンボジアで出生したときは、たとえカンボジア国籍を得る権利がない場合でも、出生時に常に登録されるべきである。委員会はさらに、締約国が、とくに出生時に登録されなかった子どもが登録されることを確保するため、住民票(閣僚会議令第73号)および戸籍(同第74号)に関する現行閣僚会議令(いずれも1997年)を執行するための効果的措置をとるよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、出生時にすべての子どもを登録することを奨励する意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、この目的のためにユニセフその他の国際機関の国際協力を求めることを検討するよう、奨励する。
国籍
31.委員会は、締約国の国籍法(1996年)がクメール系ではない子どもに対する差別につながるおそれがあり、かつ、条約第7条に違反して、マイノリティ集団に属する子どものような、カンボジアで出生した多数の子どもが無国籍のままとなるおそれがあることを懸念する。
32.委員会は、差別となる可能性があるすべての事由を撤廃し、かつ子どもが無国籍となることを防止する目的で、締約国の国籍法を条約に照らして見直すよう勧告する。
子どもの参加権
33.子どもの参加権に関しては、家庭、コミュニティ、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するために締約国がとった措置が不十分であることに対し、懸念が表明される。
34.条約第12~17条に照らし、委員会は、家庭、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するため、法改正を含むさらなる措置をとるよう勧告する。子どもの参加権に関する公衆の意識が、家庭、コミュニティ、諸施設および学校において高められなければならない。
適切な情報へのアクセス
35.委員会は、子どもの福祉および発達にとって有害な情報および資料から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための法律が存在しないことを懸念する。
36.条約第17条に照らし、委員会は、締約国が、有害な情報、とくに残酷な暴力およびポルノグラフィーを含むテレビ番組および映画から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための特別法を制定するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもとメディアに関する一般的討議(1996年)の際に行なった委員会の勧告(CRC/C/57)を考慮するよう勧告するものである。

5.家庭環境および代替的養護

家庭環境を奪われた子ども
37.委員会は、子どもが里親に委託されまたは養子とされるよりも児童福祉センターまたは児童ホームに措置される傾向にあること、このようなセンターの運営に関する規則が存在しないこと、ならびに、HIV/AIDSの流行によって両親を失う子どもの数が増えていること、および、この状況に対処するために利用可能な措置が限られていることを、懸念する。
38.委員会は、児童福祉センターへの措置を回避するため、締約国が、相談およびコミュニティを基盤とするプログラムを通じて子どもにとって最善の環境としての家族を促進し、かつ子どもの世話をできるよう親のエンパワーメントを図るために、効果的措置をとるよう勧告する。
39.委員会は、締約国が、子どもの施設その他の形態の代替的養護に関する政策および規則を策定するよう勧告する。より多くの子ども、とくにHIV/AIDSの流行によって両親を失った子どもを対象とすることができるよう、社会サービスを強化しおよび拡大しなければならず、ならびに里親家族のような代替的形態の養護を発展させなければならない。委員会はさらに、これらの目的のために十分な財源および人的資源を配分するよう勧告する。この点に関わる国際的な技術的および財政的援助も勧告されるところである。
養子縁組
40.条約および国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に一致した新たな国際養子縁組法の起草に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は、国内養子縁組に関する現行法が条約にしたがっていないこと、および、現行の養子縁組手続は尊重されないのが通例であり、かつ汚職および虐待が顕著に見られる旨の報告があることを、依然として懸念する。違法な非公式の養子縁組が蔓延していることに対しても、懸念が表明されるところである。
41.委員会は、締約国に対し、国際養子縁組に関する法律を制定するプロセスを継続し、かつ国内養子縁組に関する現行法の法改正を行なうよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)への加入を検討することに対する締約国の前向きな姿勢に留意し、これを奨励するものである。さらに、委員会は、締約国が養子縁組局を強化するよう勧告する。これとの関連で、とくにユニセフの国際的援助を求めることが考えられる。
子どもの虐待および不当な取扱い
42.家庭の内外における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の規模および有害な影響に関する意識が不十分であること、児童虐待を防止しかつこれと闘うための資源が財源および人的資源ともに不十分であること、ならびに、ケアおよびリハビリテーションのための措置(虐待の被害を受けた子どもが利用可能な便益を含む)が不十分であることに対し、懸念が表明される。
43.とくに条約第19条および第39条に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設および社会一般における児童虐待および子どもの不当な取扱いを防止しかつこれと闘うための効果的措置(学際的プログラムの設置ならびにケアおよびリハビリテーションのための措置を含む)をとるよう、勧告する。委員会はとくに、このような犯罪に関する法執行が強化されるべきであること、ならびに、子どもが司法に迅速にアクセスできるようにし、かつ犯罪者が処罰されないことを回避するため、児童虐待の苦情に対応する、十分かつ子どもにやさしい手続および機構が設立されるべきであることを、提案するものである。さらに、この問題に関する社会の伝統的態度と闘うための教育プログラムを設置することが求められる。委員会は、締約国に対し、この目的のためユニセフおよび国際的非政府組織の国際協力を求めることを検討するよう、奨励するものである。

6.基礎保健および福祉

生存および発達に対する権利
44.委員会は、とくにポリオに対する全国的な予防接種プログラムを発展させることに関する政府の能力の再構築を目的とした、保健省ならびにいくつかの国連機関(WHO、ユニセフ、UNDPおよびUNFPA)との国際協力イニシアティブである「保健制度の強化」を歓迎する。にもかかわらず、締約国の乳児死亡率および5歳未満児死亡率が依然として地域で最高の部類に入ることについて、懸念が表明されるところである。子どもの栄養不良も懸念される領域である。
45.委員会は、締約国が、現在の小児期疾病の発生態様において非識字、清潔な水が供給されないことおよび食糧事情が不安定であることが果たす重要な役割を認識した部門横断型アプローチをとることにより、小児期の罹病および死亡の問題に対処するよう勧告する。注意深くかつ包括的な調査研究により収集された基準データをもとに、優先領域が特定されなければならない。このような戦略においては、ほとんどの保健ケアが保健施設外でおよび国の統制の及ばないところで行なわれていることを考慮しなければならず、かつ、とくに隔離されたコミュニティのニーズも認識しなければならない。加えて、委員会は、効率的なプライマリーヘルスケア部門を確立するための措置(小児期疾病に関する医師等への相談を奨励するための戦略も含む)を整備するよう勧告する。これの関連で、委員会は、締約国に対し、引き続き国際機関と協力しながら活動するよう奨励するものである。
HIV/AIDSの影響を受けまたはこれに感染した子ども
46.HIV/AIDSの予防および感染者のケアのために締約国がとった措置は認識しながらも、委員会は、締約国におけるHIV/AIDS感染率の増加の度合いが地域最大であり、かつ、とくに母子感染を理由として子どもがもっとも影響を受けている集団のひとつに数えられることに、深い懸念を表明する。
47.委員会は、締約国が、HIV/AIDS予防のための効果的措置(意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを含む)を引き続きとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/80)を考慮するよう勧告するものである。これとの関連で、とくにユニセフ、WHOおよびUNAIDSの国際的技術的援助を引き続き要請することが求められる。
障害のある子ども
48.委員会は、長期に及んだ武力紛争の結果、締約国における障害の水準が世界で最高レベルのひとつであることに深い懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、障害のある子どものためのサービスのほとんどがNGOによって提供されており、かつ、これらのNGOがケアおよびリハビリテーションのためのサービスの水準を現状どおり高いまま維持するためには相当の資源が必要とされることに、留意するものである。
49.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発見させ、障害のある子どもの施設措置に代わる措置を実施し、差別を減少させるための意識啓発キャンペーンを計画しおよび実施し、特別教育のためのプログラムおよびセンターを設置しかつ教育制度および社会への障害児のインクルージョンを奨励し、ならびに、障害のある子どものための私立施設の十分な監視を確立する目的で、この分野で活動しているNGOと緊密に連携し、かつその活動を支援するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の研修について技術的協力を求めるよう勧告するものである。
健康および保健サービスに対する権利
50.とくに、とりわけ農村部において医療従事者および公衆衛生従事者が不足しておりかつプライマリーヘルスセンターの数が不十分であることを理由として、保健サービスへの子どものアクセスが限られていることに対し、懸念が表明される。また、保健ケアおよび医薬品の費用負担が大きいことにより、家族が債務を負いかつさらなる貧困に陥ることに対しても、懸念が表明されるところである。
51.委員会は、貧困家庭および周縁化されたその他の集団に属する子どもによるアクセスを保障するため、保健ケア・サービスおよび医薬品を改善しかつ拡大するよう勧告する。
思春期の健康
52.委員会は、妊産婦死亡率が高く、リプロダクティブヘルスおよびセクシュアルヘルスに関する教育および相談サービス(学校制度外のものを含む)に対する10代のアクセスが限られており、かつ避妊手段の使用水準が低いことに懸念を表明する。また、思春期の精神保健の問題に対して十分な注意が向けられていないことについても、懸念が表明されるところである。
53.委員会は、締約国が、思春期の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブヘルス教育を強化するための基盤として、思春期の健康問題(精神保健を含む)の規模を判断するための包括的かつ学際的な研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、青少年を対象とする子どもにやさしいカウンセリング・サービスならびにケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるため、さらなる努力を行なうことも勧告するものである。

7.教育、余暇および文化的活動

54.教育制度を改善するため、国際機関と協力しながら締約国が現在進めている努力は歓迎しながらも、委員会は、初等教育が義務とされていないこと、初等学校の就学率は相対的に高いものの、農村部および遠隔地に学校が設けられていないため良質な教育に対する平等なアクセスが確保されていないこと、通学に関してジェンダー格差があること、留年率および中退率が高いこと、ならびに、マイノリティ集団に属する子どもの過半数がいかなる形態の教育にもアクセスできていないことに対し、懸念を表明する。
55.委員会は、初等教育をすべての子どもにとって無償かつ義務的なものとすること、就学率を高めかつ中退率および留年率を減少させること、ならびに、とくに貧しい子ども、女子、マイノリティ集団に属する子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもによる学校へのアクセスを向上させることを目的として、締約国が引き続き効果的措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、教育部門に対する予算配分を増額し、教員の能力を向上させるための研修を提供し、学校カリキュラムを子どものニーズにより関連したものとし、職業訓練および非公式教育(就学前および中等段階におけるものも含む)の機会を拡大し、かつ、教育制度の効果測定のための評価システムを確立することにより、教育制度を改善するための措置を引き続きとるよう勧告するものである。

8.特別な保護措置

子どもの難民
56.保護者のいない子ども、子どもの庇護希望者および難民を保護するための法的枠組みが存在しないことについて、懸念が表明される。
57.委員会は、締約国が、関連の国際基準にしたがって子どもの難民の権利を保護するための法律を導入し、かつ、家族から分離された可能性がある子どもの難民を援助するための家族再統合手続を策定するため、必要な措置をとるよう勧告する。この点に関して、UNHCRの技術的援助を求めることが考えられる。
武力紛争の影響を受けている子ども
58.18歳未満の子どもを軍隊に徴募することを禁じた法律の制定、および、軍隊に残っている未成年兵士の動員解除に対する締約国の前向きな姿勢は歓迎しながらも、委員会は、元子ども兵士の社会的再統合および身体的リハビリテーションのための措置が不十分であることに懸念を表明する。また、最近の武力紛争の間に締約国の領域に多数の地雷が埋設され、子どもたちの生命を脅かしていることに対しても、懸念が表明されるところである。
59.委員会は、締約国が、子ども兵士の特定、動員解除および心理的リハビリテーションならびに社会への再統合のための効果的措置をとるとともに、子ども兵士のさらなる徴募を防止するため、軍の職員を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、未成年兵士のリハビリテーションおよび再統合のために引き続きユニセフと協力しながら活動するよう勧告するものである。
60.地雷の問題に関して、委員会は、締約国が、紛争後の地域における地雷除去のための予算配分を増額し、かつ、地雷関連の事故を防止するための意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、地雷撤去のために引き続き国際機関と協力しながら活動するよう勧告するものである。
経済的搾取
61.委員会は、インフォーマル部門、農業および家族の文脈におけるものも含む、働く子どもの人数が多いことを懸念する。現行労働法の執行が不十分であることに対しても、懸念が表明されるところである。
62.委員会は、締約国が就労へのアクセスについての最低年齢に関わる労働法の規定を執行し、労働査察官に対して児童労働を監視するための研修および手段を提供し、かつ、違反者に対して適当な制裁を適用するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、危険な形態の労働から子どもを保護する法律を制定するよう勧告するものである。委員会は、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する新たなILO条約(第182号、1999年)の批准を検討していることを認知し、批准を奨励する。
性的搾取および人身取引
63.性的搾取と闘うための特別法の制定および子どもの性的搾取に対抗する5か年行動計画(2000~2004年)の採択ならびにこの分野における他の関連の措置は歓迎しながらも、委員会は、児童買春ならびに子どもの売買および取引が広範な現象となっており、これらの問題に関する新法の執行が不十分であり、かつ、被害者にリハビリテーションを提供するための訓練を受けた人材および施設が不足していることに、懸念を表明する。
64.委員会は、締約国が、法律を強化する方向でその見直しを行ない、かつ当面は性的搾取を禁ずる現行法を全面的に執行するとともに、行動計画を全眼的に実施すること、計画の実施のために人的資源および財源の双方を十分に配分すること、性的搾取の被害を受けた子どものリハビリテーションのための社会サービスを強化しおよび拡大すること、違反者を訴追すること、ならびに、とくに近隣諸国との二国間協力を強化しおよび国境管理を増強することを勧告する。委員会は、締約国が、とくにOHCHRおよびユニセフのさらなる技術的援助を求めるよう、提案するものである。
少年司法の運営
65.法律に触れた子どもの状況に関しては、この分野における特別の法律、政策およびプログラムの欠如、子どもが成人とともに収監されている旨の報告、告発されず、かつ弁護士または裁判所にもアクセスできないまま長期にわたって拘禁されている子どもの状況、ならびに、拘禁されている子どもが殴打その他の不当な取扱いを受けている疑いがある旨の報告に対し、懸念が表明される。
66.委員会は、締約国が、条約の原則および規定、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような、この分野における他の関連の国連基準を考慮に入れながら、少年司法制度を確立するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、自由を奪われた子どもの状況および少年非行の防止にとくに注意を払いながら、法律に触れた子どもの状況に関する包括的な政策およびプログラムを策定するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、締約国に対し、とくに少年司法に関する調整パネルを通じてOHCHR、国際犯罪防止センター、ユニセフおよび少年司法国際ネットワークの技術的援助を求めることを検討するよう、勧告する。
報告書の普及
67.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。

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