総括所見:中国(第2回・2005年、香港・マカオ特別行政区を含む)


CRC/C/CHN/CO/2(2005年11月24日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年9月19日および20日に開かれた第1062回~第1065回会合(CRC/C/SR.1062-1065参照)において、2003年6月27日に提出された中国の第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.9, Parts I and II)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、3部構成により本土ならびに香港・マカオ両特別行政区(SAR)を網羅した、包括的かつ豊富な情報を記載した締約国の定期報告書、および、委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/CHN/2 and Parts I and II)に対する詳細な文書回答が提出されたことを歓迎する。これにより、締約国における子どもの状況についての理解をより明確なものにすることができた。委員会はさらに、代表団が、本土ならびに香港・マカオ両特別行政区の代表によって構成された、大規模かつハイレベルな部門横断型のものであったことに、評価の意とともに留意するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、主要なミレニアム開発目標のいくつかに予定よりもはやく到達することを可能にした貧困削減における目覚ましい達成に、評価の意とともに留意する。
4.委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の批准(2001年)を歓迎する。
5.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(第33号)を2005年9月16日に批准したことを歓迎する。

C.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.7および連合王国属領としての香港についてはCRC/C/11/Add.9)の検討を受けて行なわれたさまざまな懸念の表明および勧告(CRC/C/15/Add.56および香港についてはCRC/C/15/Add.63参照)への対応が立法措置および政策を通じて行なわれてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部については十分な対応が行なわれていない。たとえば以下のとおりである。
  • (a) 本土について、委員会は、国内人権機関の設置(CRC/C/15/Add.56、パラ26)および差別の禁止(同、パラ34および35)をめぐる勧告に関してほとんど進展がなかったことを懸念する。
  • (b) 香港SARについて、委員会は、調整および評価に関する委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.63、パラ20)は実際的ではないと考えられた旨の締約国の説明に留意する。にもかかわらず、委員会は、国内法および国内政策においては条約の実施に対するホリスティックかつ包括的なアプローチがとられなければならず、そのためには子どもの問題が優先されなければならないこと、このような政策は積極的に調整されなければならないこと、および、政策決定が子どもに及ぼす潜在的影響について評価が行なわれなければならないことを見解として維持するものである。
7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために、あらゆる努力を行なうよう促す。
留保および宣言
8.委員会は、香港SARに適用される、第22条に対する締約国の留保が撤回されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、第6条に関する留保が維持されておりかつ締約国全域に適用されること、ならびに、香港・マカオ両SARについて第32条および第37条(c)に関する留保が引き続き効力を有することを、遺憾に思うものである。
9.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域について条約に対するすべての留保を見直し、かつ撤回するよう勧告する。
立法
10.中国本土で法改正に関する相当の進展が見られたことは歓迎しながらも、委員会は、子どもに適用されるすべての法律が条約に全面的に一致しているわけではないことを懸念する。
11.委員会は、締約国が、本土に関して、法律が条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するための見直しを引き続き行なうよう勧告する。この総括所見のパラ33、40、45、48、53、82、93および94、ならびに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書についての委員会の総括所見(CRC/OPSA/CO/2)のパラ11および13で強調されているとおりである。
調整および国家的行動計画
12.委員会は、第2次国家的行動計画である「中国児童発達計画」(2001~2010年)が本土について策定されたことに評価の意とともに留意し、かつ、子どもの権利を監視しおよび実施するために国、地域および省のレベルで設置される委員会および作業部会の数が増えていることに留意する。しかしながら委員会は、調整が断片的であること、「計画」が本土のすべての地域および地方で統一的に実施されているわけではないこと、および、地方および地域のレベルにおける実施の調整が時として不十分であることを懸念するものである。
13.前掲パラ6(b)のとおり、委員会は、条約を実施するための包括的行動計画が香港SARに存在しないこと、ならびに、現行のプログラムおよび政策の調整がどちらかといえば縦割りでありかつ断片的であることを懸念する。委員会は、包括的行動計画について議論が行なわれている最中であるという、マカオSAR代表から提供された情報に留意するものである。
14.委員会は、あらゆる地域および省における統一的実施を確保するため、本土において、締約国が、「中国児童発達計画」(2001~2010年)の実施に取り組んでいるあらゆるレベルの機関間の調整をさらに強化するよう勧告する。
15.委員会は、締約国が、香港SARに関する行動計画を策定しおよび実施することにより、香港SARにおいて条約の実施に関する活動の調整を改善するべきであるという従前の勧告をあらためて繰り返す。委員会は、締約国が、マカオSARにおいてこの点に関わる議論を迅速に進めるとともに、マカオSARに関する包括的行動計画を策定しかつ実施するよう勧告するものである。
独立の監視
16.委員会は、本土のさまざまな省庁が公衆からの苦情を受理することができる旨の情報に留意するものの、条約の実施を監視する明確な権限を与えられた独立の国内人権機関が存在しないことを懸念する。委員会は同様に、本土ならびに香港・マカオ両SARにおいて、子どもの権利に関する具体的権限を与えられた独立の国内人権機関が存在しないことを遺憾に思うものである。
17.委員会は、締約国が、1993年12月20日の国連総会決議48/134の付属文書である人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがい、本土ならびに香港・マカオ両SARにおいて、国、地域および地方のレベルで子どもの権利を監視しかつ条約を実施する明確な権限を与えられた国内人権機関を設置するよう勧告する。委員会は、独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に対して締約国の注意を促しつつ、このような機関に対しては、個々の子どもも含む公衆からの苦情を受理し、調査しかつ対応する権限が認められ、かつ十分な財源、人的資源および物的資源が提供されるべきであることに留意するものである。香港SARについては、既存のオンブズマン事務所内に専門部署を設けてこのような機関とすることもできる。
資源配分
18.委員会は、近年、義務教育、母子保健ケア、社会的救済および人身取引対策プログラムに配分される予算資源が本土で相当に増額されていることについて締約国を賞賛するものの、教育のような一部のきわめて重要な分野が引き続き資金不足に陥っていることを依然として懸念する。委員会は、より貧しい地域の開発に相当の資源が配分されていることに留意しながらも、もっとも脆弱な立場におかれた集団に十分に的を絞る形でこれらの資源が活用されていないことを、依然として懸念するものである。
19.委員会は、香港SARにおいて貧困削減に十分な資源が配分されていないこと、および、所得格差が住民の間で拡大しつつあることを懸念する。委員会は、1997年アジア金融危機の経済的苦境の結果押して縮小された社会福祉体制が、経済がその勢いを取り戻したのにともなって再調整されていないことを懸念するものである。
20.委員会は、本土において、締約国が、子どものための主要分野(とくに保健および教育)に配分される予算額が政府歳入の増加と軌を一にすることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、配分される予算がもっとも脆弱な立場におかれた集団のために効果的に用いられ、かつ、とくに農村部と都市部間および東部諸省と西部諸省間の地域的格差の縮小につながることを確保するための十分な監視システムを発展させるよう、勧告するものである。
21.委員会は、香港SARにおいて、予算配分の焦点が所得格差の縮小(社会的セーフティネットのための資金を増額させることによるものも含む)に当てられるべきことを勧告する。委員会はまた、配分される予算がもっとも脆弱な立場に置かれた住民の利益となることを確保するため、十分な監視システムが設置されるべきことも勧告するものである。
データ収集
22.委員会は、締約国のあらゆる場所で統計データの収集を改善するための締約国が行なっている努力を歓迎し、かつ、代表団から提供された、細分化されたデータを収集するための新たな機構がまもなく本土で設置される旨の情報に評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、本土において、条約が対象とするあらゆる分野についての信頼できかつ包括的な統計データに公衆が限られた形でしかアクセスできないことを、依然として懸念するものである。
23.委員会は、締約国が、条約が対象とするあらゆる分野についての信頼できかつ包括的な統計データを収集する努力をさらに強化するとともに、このようなデータが、締約国のあらゆる場所で、時宜を得た形でかつ体系的に、公衆に対して利用可能とされることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、統計データが子どものための適切な政策およびプログラムの策定、実施および監視のために活用されることを確保するため、締約国が、本土および両SARについて、子どもに関する統計の中央データバンクを発展させる可能性を模索するよう勧告するものである。
条約の普及
24.委員会は、条約が締約国で用いられている主要な少数民族言語に翻訳されたことに留意する。しかしながら委員会は、香港SARおよび本土において、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに子どもおよび親自身が、条約について限られた意識および理解しか有していないことを懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域で以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約をすべての言語で、かつ子どもにやさしい資料および学校カリキュラムも活用しながら普及するための努力をさらに強化すること。
  • (b) 条約に関する親および子どもの意識を高めるためのプログラムを拡大すること。
  • (c) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修を行なう努力を強化すること。
市民社会との協力
26.委員会は、非政府組織が中国本土においてますます活発になりつつある旨の情報に留意するものの、非政府組織が活動を展開できる余地およびその活動の範囲が依然としてきわめて限られていることを懸念する。
27.委員会は、中国本土において、締約国が、とくに、非政府組織が条約の実施に自由にかつ積極的に参加すること(報告書の作成への参加ならびに委員会の総括所見および勧告の実施への参加も含まれる)を確保することにより、非政府組織、とくに子どもの権利の促進および保護のために活動している組織による活動の独立性および拡大を促進しかつ奨励するよう勧告する。

2.一般原則

生命に対する権利
28.委員会は、中国本土において選択的中絶および嬰児殺を禁止するためにとられた法的措置に、満足感とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、現行家族計画政策および社会的態度の悪影響として、選択的中絶および嬰児殺ならびに子ども(とくに女子および障害のある子ども)の遺棄が続いていることを依然として懸念するものである。
29.委員会は、締約国に対し、領域内のすべての子どもの生命、生存および発達に対する権利を保障するための努力を継続しかつ強化するよう、促す。委員会は、締約国が、選択的中絶および嬰児殺を禁じた現行法の実施を強化するとともに、家族計画政策から生ずるいかなる悪影響(子どもの遺棄および不登録ならびに出生時の不均衡な男女比を含む)をも解消するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。
差別の禁止
30.差別に関する委員会の前回の懸念に対応するために締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、本土において一部の集団(女子、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子ども、障害のある子ども、チベット族・ウイグル族・回族のような民族的および宗教的マイノリティの子どもならびに国内移住民の子どもなど)に対する差別が行なわれていることを依然として懸念する。
31.委員会は、香港SARで子どもの難民、庇護希望者および資格外移民に対する差別が根強く残っており、かつ、人種または性的指向に基づく差別を具体的に禁ずる法律が存在しないことを懸念する。委員会は、マカオSARにおける条約第2条の実際的実施について利用可能な情報が存在しないことを遺憾に思うものである。
32.委員会は、本土において、締約国が、以下の措置をとることにより、女子、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子ども、障害のある子ども、チベット族・ウイグル族・回族の子どもならびにその他の民族的および宗教的マイノリティに属している子ども、国内移住民の子どもならびにその他の脆弱な立場に置かれた集団に対する差別を解消するための努力を強化するよう、勧告する。
  • (a) これらの子どもが基礎的サービス(保健、教育その他の社会サービスを含む)に平等にアクセスでき、かつ、これらの子どもが利用するサービスに対して十分な財源および人的資源が配分されることを確保すること。
  • (b) 格差を特定しかつ解消する目的で、地方当局によるプログラムおよびサービスの監視を強化すること。
33.委員会は、香港SARにおいて、締約国が、人種または性的指向に基づく差別を禁ずる法案を起草しかつ採択する努力を迅速に進めるよう勧告する。委員会は、マカオSARにおける第2条の実際的実施についての具体的情報を、次回的報告書に記載するよう要請するものである。
34.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち、子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの最善の利益
35.委員会は、子どもに関わるすべての行動において子どもの最善の利益の原則がどのように第一次的考慮事項として活用されているかに関して締約国から提供された情報が、その管轄下にあるすべての地域について限られていたことを懸念する。
36.委員会は、締約国に対し、第3条がどのように実施されているか、および、子どもに関わるすべての行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることをどのように確保しているかに関するより詳細な情報を、次回定期報告書に記載するよう促す。
子どもの意見の尊重
37.委員会は、中国本土において、子どもが裁判所に苦情を申し立て、または親の同意を得ることなく裁判所による直接の協議の対象となることができないこと(子どもが16歳以上であって自ら生計を立てている場合を除く)に、懸念とともに留意する。委員会は、学校において生徒がどのように代表され、かつその意見がどのように考慮されているかに関して限られた量の情報しか提供されなかったことを遺憾に思うものである。
38.委員会は、子ども評議会作業委員会など、子どもを代表する団体を支援するために締約国が香港SARで行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに影響を与えるすべての政策およびプログラムについて子どもの意見が制度的に求められているわけではないことを、依然として懸念するものである。委員会は、マカオSARにおいて、子どもの意見があらゆる場面でどのように考慮されているかについての情報が存在しないことを遺憾に思う。
39.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が、子どもが自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつ政策立案、行政手続、学校および家庭においてその意見を正当に重視される権利を認められることを確保するための努力を、本土ならびに香港・マカオ両SARにおいて強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、次回定期報告書で、その管轄下にあるすべての地域についてこの問題に関するより詳細な情報を提供するよう奨励するものである。
40.さらに委員会は、子どもが自己に影響を与えるいかなる司法上および行政上の手続においても聴聞される機会を与えられ、かつ子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見が正当に重視されることを確保する目的で、締約国が、本土において、子どもに影響を与える法律を見直すよう勧告する。
41.委員会は、締約国が、香港SARにおいて、現在進められている教育改革のような自己に影響を与える政策またはプログラムの策定に子ども団体が積極的に参加することを制度的に確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、政治的プロセスにおいて子どもたちの意見を代弁する常設機関の設置を検討するよう奨励するものである。

3.市民的権利および自由

出生登録
42.委員会は、子どもの出生登録が行なわれないことに関する委員会の前回の懸念に対応するために締約国が行なった相当の努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、現行家族計画政策のせいもあり、中国本土においてすべての子どもが出生後ただちに系統的に登録されているわけではなく、かつ、その影響が女子、障害のある子どもおよび一部の農村地帯で生まれた子どもに不相応な形で生じていることを、引き続き懸念するものである。
43.委員会は、すべての子ども、とくに女子および障害のある子どもが出生後ただちに登録されることを確保し、かつ、登録されなかった年長の子どもが登録を受けられるようにするための柔軟な措置を、とくに農村部を重視しながら中国本土全域で提供するための努力を、締約国が引き続き強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような取り組みを強化する目的で戸口登記管理制度の改正を検討するよう提案するものである。
宗教の自由
44.中国本土の少数民族に対して宗教の自由を保障する民族区域自治法が2001年に採択〔改正〕されたことには留意しながらも、委員会は、子ども、とくにチベット系仏教徒、ウイグル族および回族の子どもが自己の宗教の学習および実践を制限されており、かつ宗教的活動への参加を理由として拘禁された事例も存在するという報告に懸念を覚える。委員会はまた、自己の宗教、とくに法輪功を実践する家族が、嫌がらせ、脅迫その他の敵対的行為(労働を通しての再教育を含む)の対象とされているという報告に懸念を覚えるものである。委員会は、ゲンドゥン・チューキ・ニマに関して提供された情報に留意するものの、この情報を独立の専門家に確認させることがまだ可能になっていないことを、依然として懸念する。
45.委員会は、締約国が、民族区域自治法の全面的実施を確保するためあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 限られた数の公認宗教と結びつけられたものではない宗教の自由を18歳未満の者に対して明示的に保障し、かつ、この点に関わる権利の行使にあたって子どもの発達しつつある能力と一致する方法で子どもを指導する親の権利および義務を尊重する法律を制定すること。
  • (b) いかなる年齢の子どもについても、子どもがチベットの宗教上の祝祭に参加することまたは宗教教育を受けることを禁じた地方当局の命令を廃止すること。
  • (c) いかなる年齢の子どもについても、子どもがモスクに通うことまたは宗教教育を受けることを禁じた地方当局の命令を本土全域で廃止すること。
  • (d) 子どもが宗教または無神論の授業に参加するかどうかを選択できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (e) ゲンドゥン・チューキ・ニマおよびその両親のプライバシーを尊重しつつ、独立の専門家がゲンドゥン・チューキ・ニマと面会しかつその安寧を確認することを認めること。
体罰
46.委員会は、中国本土で、学校における体罰を禁じた現行規則の実施が不均等であることを懸念する。委員会はまた、家庭における体罰が禁じられておらず、かつ社会的に容認され続けていることも懸念するものである。
47.委員会は、香港・マカオ両SARで、家庭における体罰が法律で禁じられておらず、かつ家庭で実践され続けていることを懸念する。
48.委員会は、締約国に対し、その管轄下にあるすべての地域で以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭、学校、施設その他のあらゆる場面(刑事施設を含む)における体罰を法律で明示的に禁止すること。
  • (b) 体罰についての公衆の態度を変革するため、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律に関する公衆教育および意識啓発のキャンペーンを、子どもの関与を得ながら拡大すること。

4.家庭環境および代替的養護

家庭環境を奪われた子ども
49.委員会は、締約国が本土について行なった努力、とくに「子どものための社会福祉施設に関する基準」の採択(2001年)を歓迎する。しかしながら委員会は、本土において相当数の子どもが遺棄されていることおよび多数の子どもが施設で暮らしていることを、依然として懸念するものである。委員会は、そのような施設における子どもの入退所件数についての正確な統計データが存在しないことを遺憾に思う。
50.委員会は、本土から香港・マカオ両SARへの入域について設けられている人数割当、および、両SARに居住する権についての規制により、子どもが親から分離されることが助長され、かつ家族再統合が妨げられていることを深く懸念する。
51.委員会は、本土において、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 里親養護および国内養子縁組のような成功しているモデルを本土全域で移植しかつ拡大することにより、家庭を奪われた子どもの代替的養護を向上させる努力を継続すること。
  • (b) 危険な状況にある家族および子どもを早期発見し、かつソーシャルワーカーが直接介入して家族を援助できるようにすることも含む、子どもの遺棄を防止するための効果的戦略を策定すること。
  • (c) 子どもが施設に送致されるときは、小規模集団に統合され、かつ家庭的環境のなかで個別にケアされることを確保すること。
  • (d) 効果的な監視機構(第25条にしたがって行なわれる各措置の定期的再審査および子どもがアクセスしやすい苦情申立て機構を含む)を設置し、かつ、すべての施設、プログラムおよびサービスが適正な訓練および認証を受けた職員を有することを確保することにより、あらゆる形態の代替的養護が条約に一致する質の基準を満たすことを確保すること。
  • (e) 代替的養護の対象とされた子どものすべての死亡が適正に記録されおよび調査され、ならびに必要なときは適切なフォローアップ措置がとられることを確保すること。
養子縁組
52.前掲パラ5のとおり、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(第33号)が批准されたことに評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、本土における国際養子縁組件数および国際養子縁組の斡旋機関数に関して入手可能な情報が不十分であることを遺憾に思うものである。委員会はさらに、出生証明書を持たない子どもが養子縁組手続全体を通じてアイデンティティに対する権利を維持する旨の明示的保障が存在しないことを懸念する。
53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 1993年ハーグ条約の適用を、可能なかぎり早期に香港・マカオ両SARにも拡大すること。
  • (b) 1993年ハーグ条約の法的規定が本土ならびに香港・マカオ両SARの国内法に統合されることを確保すること。
  • (c) とくに子どもの人身取引の可能性ならびに養親が支払う手数料および寄付の使用との関連で、国際養子縁組斡旋機関の監視をさらに強化すること。
  • (d) 出生証明書を持たないすべての子どもが養子縁組手続全体を通じてアイデンティティに対する権利を保障されることを確保するため、立法上および行政上の措置をとること。
  • (e) 親のケアを受けていない子どもともに働く政府職員その他の専門家に対し、養子縁組(とくに国際養子縁組)は代替的養子縁組の選択肢としては例外的なものであり、かつ、そのような決定を行なう際には差別の禁止および子どもの最善の利益の原則が考慮されなければならない旨を通知すること。
虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力
54.委員会は、中国本土における子どもの虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いに関して入手可能な情報が限られていること、および、暴力と闘いかつ被害者を援助するために利用可能なプログラムの数が限られていることを、懸念する。
55.香港SARでソーシャルワーカーを増員するために行なわれた努力には留意しながらも、委員会は、暴力の被害を受けた子どもを援助するための政策およびプログラムが十分に効果的でないことを懸念する。
56.委員会は、医師、教員およびソーシャルワーカーのような子どもとともに働く職員に対して通報義務要件を課し、かつ子どもがアクセスしおよび利用することのできる具体的ヘルプラインを開設すること等も通じて、虐待、ネグレクト、暴力および不当な取扱いと闘う努力を締約国のすべての場所で強化するよう勧告する。
57.本土に関して、委員会は、締約国が、家庭、学校および施設で子どもに対して行なわれるさまざまな形態の暴力についてのさらなる調査研究を実施するとともに、その知見を以下の目的で活用するよう勧告する。
  • (a) あらゆる形態の暴力から子どもを保護することに関する現行法を強化すること。
  • (b) さまざまな形態の暴力に対処する子どもの意識およびスキルを高めることを目的とした、学校を基盤とする教育プログラム等も通じて、暴力を防止しかつこれと闘うための戦略および介入策を発展させること。
  • (c) 暴力の被害を受けたすべての子どもがケアおよび回復に関わる適切な援助を受けられることを確保するためのプログラムを発展させること。
58.香港SARに関して、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 性的虐待の形態をより明示的な形で定義するとともに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした、あらゆる形態の発見、処理および防止に関する教育および研修を増加させること。
  • (b) 虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの個別事案の調整およびフォローアップを強化するとともに、いずれかの形態の虐待の被害を受けたすべての者およびその家族が社会サービスおよび社会援助にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 加害者とされる者が家族の一員であるかないかを理由とする差別なしに調査が処理されることを確保すること。
59.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、締約国の文書回答、および、東アジア・太平洋地域協議(タイ、2005年6月14日~16日)への中国本土および香港SARの代表の参加を、評価の意とともに認知する。委員会はさらに、2005年5月16日~17日に北京で全国レベルの協議が開催されたことを評価するものである。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための、具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告する。

5.基礎保健および福祉

障害のある子ども
60.本土について、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 障害のある子どもに関する、細分化された具体的なデータが存在しないこと。
  • (b) 障害の定義が狭いこと。
  • (c) 障害のある子どもの人数が都市部と農村部で相当に異なること。
  • (d) 一人っ子政策の例外として、障害のある子どもがいる家族は第2子を設けることが認められていること。このことは、障害のある子どもに対する事実上の差別を助長するものである。
61.委員会は、締約国が、自国の管轄内にいる障害のある子どもを対象として条約のすべての原則および規定の実施を確保するため、障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れるよう、勧告する。委員会はさらに、本土において、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 性別、年齢、農村部・都市部の別、生活形態および障害の種別によって細分化された、障害のある子どもに関する正確なデータが利用可能となることを確保するため、データ収集システムを強化すること。
  • (b) 国際的に受け入れられた基準に忠実な定義を定めること。
  • (c) 障害のある子どもに対する事実上の差別、とくにこのような子どもの遺棄を解消するためにあらゆる必要な措置をとること。
健康および保健サービス
62.保健ケア指標の顕著な改善には留意しながらも、委員会は、乳幼児の死亡、栄養その他の子どもの保健指標に関わって、本土において農村部と都市部の間、東部諸省と西部諸省の間ならびに漢人と少数民族との間に格差が存在することについての前回の懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国全域で栄養不良が根強く残っており、子どもの肥満が発生してきており、かつ母乳育児政策が不十分であることも懸念するものである。
63.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子ども(登録されていない子どもも含む)が母子保健サービスに普遍的にアクセスできるようにするため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの栄養不良および肥満の問題に十分に対応するための政策およびプログラムを発展させるとともに、締約国のすべての場所で「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の実施(中国版・母乳代替品の販売促進に関する基準を含む)を強化することおよび香港SARで赤ちゃんにやさしい病院を推進することにより、母乳育児を促進するよう促すものである。
思春期の健康
64.委員会は、中国本土およびマカオSARにおいて利用可能な思春期保健サービスに関する情報が存在せず、かつ、香港SARにおける10代の妊娠および中絶の件数が多いことを懸念する。
65.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康および適切な思春期保健サービスの提供に細心の注意を払うとともに、学校で性教育およびリプロダクティブヘルス教育を提供することも含めて思春期の健康を促進し、かつ学校保健サービス(若者に配慮した、秘密が守られるカウンセリングおよびケアを含む)を導入するための努力を強化するよう、勧告する。
精神保健
66.委員会は、若者の自殺の多発に対処するために締約国が香港SARでとった措置を評価する。委員会は、本土およびマカオSARで子どもが利用可能な精神保健サービスならびにタバコ、アルコールおよび薬物の濫用に関するデータおよび情報が存在しないことを依然として懸念するものである。
67.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、思春期の子どものための予防的および治療的精神保健サービスを拡大するとともに、とりわけ思春期の子どもをとくに対象として立案された健康行動上の選択およびライフスキルに関するキャンペーンを発展させることにより、思春期の子どもの喫煙、アルコール消費および薬物濫用を減らすためのプログラムを開発するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、香港SARにおいて、若者の自殺を防止するための努力を引き続き強化するよう勧告するものである。
HIV/AIDS
68.委員会は、本土における、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもを対象とした政策およびプログラムの発展を歓迎する。それでも委員会は、これらの政策およびプログラムの実施が不十分であることを懸念するものである。
69.委員会は、締約国が、以下の措置をとることにより、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもを対象として本土で設けられている政策およびプログラムの実施を強化するよう、勧告する。
  • (a) これらのプログラムに配分される財源を増やすこと。
  • (b) 地方当局が、条約の最善の利益の原則(第3条)に一致する形でプログラムおよび政策を実施するための十分な訓練を受けかつその用意を整えることを確保する目的で、地方当局との協力を強化すること。
  • (c) この疾病に関する意識を高め、かつ、この総括所見のパラ32で述べられているようにHIV/AIDSに感染した子どもに対する差別を解消するための、公的情報キャンペーンを強化すること。
70.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針に照らし、委員会は、締約国が、本土および両SARの双方においてHIV/AIDSの蔓延を予防するための努力を強化するとともに、思春期の子ども、とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの間でHIV/AIDSに関する意識啓発を引き続き行なうよう、勧告する。
生活水準
71.委員会は、中国本土で印象的な経済的達成が見られたこと、および、近年、貧困下で暮らす人々のための資源配分が増やされていること(不利な立場におかれた子どもに対する奨学金の供与を通じてのものも含む)について、締約国を賞賛する。しかしながら委員会は、とくに一部の地域および特定の人口集団(移民または「流動」人口など)との関連における貧困、ならびに格差の拡大が、依然として深刻な問題であることを懸念するものである。
72.同様に、委員会は、香港SARにおける経済的達成にも関わらず、失業者、移民およびひとり親家庭のような脆弱な立場に置かれた層で子どもの貧困が存在すること、および、貧困線が定められていないために貧困と闘うための適切な政策の立案が阻害されていることを、依然として懸念する。
73.委員会は、締約国が、本土において、均衡のとれた経済的発展(この文書のパラ20で述べられている予算配分の調整、および子どもの貧困に関するデータベースの整備によるものも含む)を達成するための努力を引き続き強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、不利な立場におかれた子ども(「流動」人口および中国西部の貧困地域にすむ人々のような脆弱な立場に置かれた住民の子どもを含む)のための奨学金のような手当を拡大するよう促すものである。
74.委員会は、締約国が、香港SARで貧困線を定めるとともに、脆弱な立場に置かれたすべての住民(新たな移民を含む)を対象として社会福祉手当へのアクセスを拡大しながら所得格差の拡大に対処する、子どもの貧困と闘うための適切な政策を策定するよう勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動

教育(職業訓練および職業指導を含む)
75.中国本土で締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、教育へのアクセスおよび教育の利用可能性に関して依然として格差があり、女子、学習障害のある子ども、少数民族の子ども、農村部および西部諸州に住む子どもならびに移民の子どもに悪影響が生じていることを懸念する。委員会はまた、義務教育について諸費用の徴収が行なわれていること、生徒数と教員数の比が高いこと、初級・高級中学における中退率が高いこと、および、本土全域で教育の質が低いことを具体的に懸念するものである。
76.香港SARについて、委員会は、中等学校における中退率、学校制度の競争的性質および学校におけるいじめについて懸念を覚える。委員会は、マカオSARにおけるこれらの問題について利用可能とされた情報の量が限られていることを遺憾に思うものである。
77.委員会は、締約国が、中国本土において以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 初等教育が真に無償であることを確保するため、初等教育についてのすべての諸費用その他の「隠れた」費用の徴収を解消すること。
  • (b) 教育法が命じるとおり、GDP増にあわせて教育への資源配分を増加させるとともに、すべての子ども、とくに女子、学習障害のある子どもならびに少数民族の子どもおよび移民の子どもが9年間の義務教育を修了し、かつ乳幼児期教育発達プログラムに平等にアクセスできることを確保するために、これらの資源を重点的に用いること。
  • (c) とくに貧困または移住を理由として学校を中退した子どもが義務教育を修了し、かつ非公式な経路を通じて適切な資格認定を得られるように柔軟な学習制度の発展を促進するとともに、技術および職業に関する適切な教育訓練の利用可能性およびアクセス可能性も確保すること。
  • (d) 初等中等段階のすべての教授用資料および教材が少数民族言語でも入手でき、かつ文化的配慮のある内容であることを確保すること。
  • (e) 教員研修および教員数と生徒数の比の改善等も通じて教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。
  • (f) とくに、子どもの主体的学習能力を促進し、かつ遊びおよび余暇に対する子どもの権利にも焦点を当てたカリキュラムの開発を通じて、「全面発達」政策の実施を強化すること。
  • (g) この点に関して、とくにユニセフおよび関連の国内機関の技術的援助を求めること。
78.委員会は、締約国が、香港SARにおいて以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 中等教育における中退率に対処するためのプログラムを発展させること。
  • (b) 生徒自身の参加も得ながら、学校における暴力に対処するための現行プログラムをさらに強化すること。
  • (c) 教育制度の競争性の低減に努め、かつ主体的学習能力ならびに遊びおよび余暇に対する子どもの権利を促進するような方法で、教育の質を高めること。
79.マカオSARについて、委員会は、締約国に対し、無償の義務教育を12年間に延長する計画を迅速に実施するよう奨励する。委員会は、次回定期報告書に、教育の質に関する情報および学校における暴力を減少させるためのプログラムに関する情報を記載するよう要請するものである。

7.特別な保護措置

子どもの難民および移民
80.委員会は、約30万人のインドシナ難民が中国本土に永住できるようにするために締約国が行なってきた努力に留意する。しかしながら委員会は、これらの元難民の子どもが中国で出生した場合に中国の市民権を与えられないことを懸念する。委員会はさらに、朝鮮民主主義人民共和国から中国本土に入国した子どもが一律に経済的移民と見なされ、帰還後に子どもに回復不能な被害が生じるおそれがないかを検討されることなく朝鮮民主主義人民共和国に送還されることを懸念するものである。
81.香港SARについて、委員会は、子どもの難民および資格外移民である子どもが教育へのアクセスを保障されていないことに留意する。
82.委員会は、締約国が、本土および両SARのいずれにおいても、憲法および条約で保障されているすべての人権をその管轄内にあるすべての子ども(難民、庇護希望者および他の資格外移民を含む)に拡大して適用するよう勧告する。とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 国内法を改正し、中国本土において、元インドシナ難民の子どもが中国で出生した場合に中国の市民権を取得できるようにすること。
  • (b) 保護者のいない未成年者に関する委員会の一般的意見6号(2005年)にしたがい、保護者のいないいかなる子ども(朝鮮民主主義人民共和から来た子どもを含む)も、たとえば出入国管理法違反を理由とする比例性を欠いた処罰により子どもに回復不能な被害が生じる真のおそれがあると考える相当の理由があるときは、国に送還されないことを確保すること。
  • (c) 法令改正により、香港SARにいる子どもの難民、庇護希望者または資格外移民全員が不当に遅延することなく通学できることを確保すること。
経済的搾取
83.委員会は、ILO第138号条約および第182号条約がそれぞれ1998年と2002年に批准されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、児童労働が広く行なわれていることを示す報告がある一方で、本土における児童労働についての具体的データが存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、有害な労働を定義し、かつそのような労働における搾取から子どもを保護する法律および具体的な行政規則がないことも懸念する。委員会はさらに、労働を通しての再教育が広く行なわれていることを懸念するものである。
84.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、ILO第138号条約および第182号条約の実施をさらに強化するよう勧告する。
  • (a) 児童労働に関する具体的かつ細分化されたデータを収集するとともに、当該データを活用し、働く子どもと協力しながら、あらゆる形態の児童労働を防止しかつ撤廃するための効果的措置を発展させること。
  • (b) 影響を受けている子どもと協議しながら、18歳未満のいかなる者も従事すべきではない有害な労働および危険な労働の形態についての詳細な規則を策定すること。
  • (c) 労働を通しての再教育の結果、子どもがILO第138号条約および第182号条約の原則および規定に違反して働くことにつながらないことを確保すること。
ストリートチルドレン
85.中国本土における締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、相当数の子どもが路上で生活しかつ働いていることを懸念する。
86.委員会は、本土において、締約国が、とくに以下の措置をとることによりストリートチルドレン関連の努力を強化するよう勧告する。
  • (a) 路上で生活しかつ働く子どもの状況についてさらなる調査研究を実施するとともに、このような調査研究を活用して、ストリートチルドレンの人数を減らしかつこのような子どもに適切な援助を提供するための適切なプログラムおよび政策を発展させること。
  • (b) これらの子どもが家族に成功裡に再統合できるようにするための、家庭およびコミュニティを基盤とする介入策を優先的に実施すること。
  • (c) ストリートチルドレンおよびその家族にサービスを提供している地方当局に対し、より多くの資源を提供すること。
性的搾取および人身取引
87.中国本土およびマカオSARについて、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書が提出されたことに評価の意とともに留意し、かつ、締約国に対し、同報告書に関する総括所見(CRC/C/OPSA/CO/2)に掲げられた関連の勧告を参照するよう促す。委員会は、選択議定書の適用がまだ香港SARに拡大されていないことを遺憾に思うものである。ポルノグラフィーからの子どもの保護を強化することを目的とした刑事犯罪条例改正を歓迎しながらも、委員会は、香港SARにおける児童買春についてのいかなるデータも存在せず、かつ報告された事例もないことを懸念する。
88.性的搾取その他の搾取を目的とする子どもの人身取引を防止しかつこれと闘うため、委員会は、締約国が香港SARにおいて以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 性的搾取および人身取引の早期防止システムをさらに発展させかつ増進させること。
  • (b) 人身取引の事案を発見しおよび捜査し、人身取引問題に関する理解を向上させ、ならびに加害者が訴追されることを確保するための努力をさらに強化すること。
  • (c) 子どもの性的搾取および人身取引(子どもがそのような搾取のおそれにさらされる根本的原因および要因を含む)を防止しかつこれと闘うための包括的政策を策定しかつ採択すること。
  • (d) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。
  • (e) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。
少年司法の運営
89.委員会は、締約国が、中国本土において、18歳未満のときに犯罪を行なった者に対する死刑を廃止したことを歓迎する。しかしながら委員会は、終身刑は引き続き18歳未満の者に対して科されうることを、たとえ適用されることが多くないとはいえ、懸念するものである。未成年者保護法のような少年司法関連の法律を改革しようとする努力には留意しながらも、委員会は、現行の法令および行政手続において、法律に触れた子どもをあらゆる段階で保護するための公的機関および司法機関の詳細な義務が十分に定められていないことを、依然として懸念する。
90.香港SARにおいて締約国が刑事責任に関する最低年齢を引き上げたことには留意しながらも、委員会は、10歳という年齢が低すぎることを依然として懸念する。委員会はさらに、16~18歳の子どもが法律に触れた際に一貫して特別な保護を与えられているわけではないことを、懸念するものである。
91.委員会は、法律に触れた子どもを対象とする修復的司法が行なわれていないというマカオSAR代表の懸念を共有するとともに、少年司法制度改革の計画について同代表から提供された情報を歓迎する。
92.少年司法に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/46、パラ203~238)に照らし、委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域で、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準が全面的に実施されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての法域において、少年司法の運営に責任を負う者を対象として関連の国際基準に関する研修を行なうよう勧告するものである。
93.中国本土について、委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 18歳未満のときに犯罪を行なった者について終身刑を廃止すること。
  • (b) 法律を改正し、自由を奪われたすべての子ども(労働教養所に収容された場合を含む)が、弁護人その他の者による適切な援助に速やかにアクセスし、かつ、その自由の剥奪の合法性を、裁判所または他の権限ある独立のかつ公平な機関において時機を失することなく争う権利を有することを確保すること。
  • (c) 自由の剥奪が常に最後の手段として用いられることを確保するとともに、調停、保護観察、社会奉仕活動または刑の執行猶予のような代替的刑の可能性を強化しかつ拡大すること。
  • (d) 18歳未満の者の全面的発達を支えるため、刑を言い渡された者および釈放された者の双方が教育の機会(職業訓練およびライフスキルの訓練を含む)ならびに回復および社会的再統合のためのサービスを提供されることを確保すること。
  • (e) とくにOHCHR、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびユニセフに対し、技術的協力および援助を求めること。
94.香港SARについて、委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に容認可能な水準まで引き上げること。
  • (b) 18歳未満のときに犯罪を行なった者について終身刑を廃止すること。
  • (c) 法律に触れた18歳未満のすべての子どもが一貫して特別な保護を与えられること、および、その事件の審理が、専門の少年裁判所で、適切な訓練を受けた判事によって行なわれることを確保すること。
  • (d) 自由の剥奪が常に最後の手段として用いられることを確保するとともに、調停、保護観察、社会奉仕活動または刑の執行猶予のような代替的刑の可能性を強化しかつ拡大すること。
95.マカオSARについて、委員会は、締約国が、少年司法制度改革の計画を迅速に進めるとともに、当該改革に以下のことが含まれることを確保するよう、勧告する。
  • (a) 自由の剥奪が常に最後の手段として用いられることを確保し、かつ、調停、保護観察、社会奉仕活動または刑の執行猶予のような代替的刑の可能性を拡大するための措置。
  • (b) 家族集団会議のような修復的司法の可能性。
  • (c) 罪を犯した少年の社会的再統合を、子どもの健康、自尊心および尊厳を育くむ環境のなかで援助するためのサービスの拡大。

8.子どもの権利条約の選択議定書

96.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の適用を香港SARに拡大するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、2001年3月15日に署名した武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准し、かつその適用を香港・マカオ両SARに拡大するよう勧告するものである。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
97.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を本土の国務院および全国人民代表大会、香港SARの行政会議および立法会ならびにマカオSARの行政会議および立法会の構成員ならびに適用可能なときは関連する省および地方の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
98.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

99.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得たやり方で定期的な報告を行なううえで困難を経験している締約国があることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2009年3月31日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年9月13日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。