総括所見:ベトナム(OPAC・2006年)


CRC/C/OPAC/VNM/CO/1(2006年10月17日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2006年9月22日に開かれた第1187回会合(CRC/C/SR.1187参照)においてベトナムの第1回報告書(CRC/C/OPAC/VNM/1)を検討し、2006年9月29日に開かれた第1199回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関してベトナムで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する実質的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書、文書回答および文書による追加情報の提出を歓迎する。委員会はまた、部門横断型のハイレベルな代表団との建設的な対話についても謝意を表するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2003年1月31日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.200)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

4.委員会は、ベトナム法上、軍隊に徴募されるのは18歳以上の男性の市民のみであることを歓迎する。委員会はさらに、締約国が以下の文書を批准したことを歓迎するものである。
  • (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2001年12月20日)。
  • (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号条約(1999年)(2000年12月19日)。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

立法
5.委員会は、ベトナムの領域外で行なわれた犯罪について、締約国が批准しまたは加入した国際条約に定められた状況下で当該行為が国内法違反となる場合にはベトナムの裁判所に裁判権の行使を認める規定が、締約国の刑法に存在することに留意する。しかしながら、以下の点が明確ではない。
  • (a) ベトナム法において、18歳未満の者を強制的に徴募しもしくは敵対行為に関与させることまたは選択議定書に掲げられた規定の他のいずれかの違反が犯罪とされているか。
  • (b) ベトナム法において、これらの行為がベトナム外で行なわれた場合またはベトナム市民に対して行なわれた場合に裁判所の裁判権の行使が認められているか。
6.軍隊または武装集団のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) (子どもの権利条約第38条に照らし)15歳未満の子どもを軍隊/武装集団に徴募することおよびこのような子どもが敵対行為に直接参加することを法律で明示的に禁止すること。
  • (b) 子どもの徴募および敵対行為への関与に関する選択議定書の規定に違反することを法律で明示的に禁止すること。
  • (c) これらの犯罪が、締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によって、またはこれらの者に対して行なわれた場合の、当該犯罪についての域外裁判権を設定すること。
  • (d) 軍の要員は、選択議定書に掲げられた権利を侵害するよう命ずる軍令の存在に関わらずそのような行為を行なうべきではない旨を、明示的に規定すること。
7.委員会は、国際刑事裁判所を設置するローマ規程の採択に至るプロセスに締約国が積極的に参加し、かつその内容に合意している旨の情報を歓迎し、締約国に対し、可能なかぎり早期にローマ規程の加盟国となるよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関するジュネーヴ諸条約の第2追加議定書を批准するよう勧告するものである。
普及および研修
8.委員会は、高等段階(軍事学校を含む)の倫理公民コースに人権が含まれているという情報を歓迎しながらも、選択議定書に関する十分な情報が関連の専門家集団に提供されていないことを懸念する。
9.委員会は、締約国が、関連のすべての専門家集団(とくに軍の要員)が条約および武力紛争への子どもの関与に関するその選択議定書の規定についての体系的研修を受けることを確保するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムを通じて条約およびその選択議定書の規定を子どもに広く知らせるよう勧告するものである。

2.子どもの徴募

10.委員会は、出生登録が近年相当に向上してきたという情報を歓迎するものの、過去に出生登録が行なわれていなかったために若い新兵の年齢が確かでない事態がいまなお生じうることを、依然として懸念する。
11.委員会は、締約国が、出生証明書が存在しない場合、新兵の年齢が他の信頼しうる手段(医師による検査を含む)によって決定されることを確保するよう勧告する。

3.敵対行為への子どもの関与

敵対行為への直接参加
12.委員会は、締約国が選択議定書の批准時に行なった宣言によれば、18歳未満の者は軍事戦闘(敵対行為)に直接関与しないとされるものの、「国家の独立、主権、統一および領土の一体性を保護する緊急の必要があるときはこのかぎりでない」とされていることを懸念する。
13.委員会は、国際連合憲章にしたがって国の自衛権を全面的に尊重しながらも、締約国が、選択議定書第3条2項にしたがって子どもの志願入隊に関する最低年齢を定めるとともに、たとえ前掲パラ12に挙げた例外的状況が存在する場合であっても敵対行為への子どもの積極的参加を防止するよう勧告する。

4.武装解除、動員解除、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関してとられた措置

14.委員会は、1975年の再統一以降、ベトナムが平時復興の一環として数次の動員解除プログラムを実施してきたことを歓迎するものの、選択議定書に反する行為の被害を受けた者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関して行なわれた措置およびプログラムについての情報が乏しいことを遺憾に思う。委員会は、危険物除去のために行なわれている種々のプロジェクトおよび活動にも関わらず、締約国の領域の広範な部分がいまなお過去の紛争時から残されている不発弾(UXO)および地雷の影響を受けており、住民およびとくに子どもにとって深刻な危険を引き起こしていることを、懸念するものである。
15.委員会は、締約国が、選択議定書に反する行為の被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関してとられた措置に関して、次回報告書でより多くの情報を提供するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、国際協力の枠組みのなかで必要な技術的および財政的支援(国連諸機関からのものも含む)を求めながら、地雷および不発弾の除去活動ならびにその危険性に関する教育活動を引き続き行なうよう勧告するものである。

5.国際的な援助および協力

16.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関して提供されたおよび(または)受けた協力(技術的協力および財政援助を通じてのものも含む)に関するさらなる情報を提出するよう勧告する。

6.フォローアップおよび普及

17.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国防省、国民議会、人民評議会および適用可能なときは省当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
18.選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。

7.次回報告書

19. 第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合報告書(提出期限・2007年9月1日)に記載するよう要請する。

  • 更新履歴:ページ作成(2011年9月9日)。
最終更新:2011年09月09日 07:50