総括所見:ベトナム(第2回・2003年)


CRC/C/15/Add.200(2003年3月18日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2003年1月22日に開かれた第848回および第849回会合(CRC/C/SR.848 and 849参照)において、2000年5月10日に提出されたベトナムの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.20)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがった締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はさらに、事前質問事項(CRC/C/Q/VIE/2)に対する文書回答および最新の締約国報告書が時宜を得たやり方で提出されたことを歓迎するものである(これらの文書は詳細かつ豊かな情報を含んでおり、ベトナムにおける子どもの状況に関する理解をより明確なものとしてくれた)。委員会は、ハイレベルな部門横断型の代表団の出席が、締約国代表団との間に持たれた建設的対話に貢献してくれたことに、評価の意とともに留意する。

B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、子ども参加を支援しおよび促進し、ならびに子どもの権利政策の調整および実施を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。とくに委員会は、1994年の政令第118/CP号の制定により、子どもの保護、ケアおよび教育に関わる活動を監視しおよび調整する中央機関として子どもの保護およびケアのためのベトナム委員会(CPCC)(その後、2002年8月5日に人口・家族・子ども全国委員会に吸収された)が設置されたことに留意するものである。委員会はまた、CPCCおよび統計局によって具体的な子どもの権利指標が開発されたこと、第2次子どものための国家行動計画(2001~2010年)が編成されたこと、ならびに、飢餓撲滅、貧困削減および雇用〔創出〕に関する国家目標計画(2001~2005年)および売買春防止計画(2001~2005年)のような他のさまざまな特別プログラムが策定されたことも、歓迎する。
4.委員会は、締約国が、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を2001年9月〔12月〕に批准し、かつ、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を2000年12月に批准したことを、歓迎する。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

5.委員会は、市場経済への移行により経済成長が高まった一方で、たとえば保健サービスおよび教育サービスに関する世帯の金銭的負担が増えたことにより、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施に悪影響も生じていることを認知する。

D.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.4)の検討を受けて行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.3)の一部、とくに経済改革が脆弱な立場に置かれた集団に及ぼす悪影響の緩和(パラ7)、少年司法制度改革(パラ8)および民族的マイノリティ間での条約の普及(パラ9)に関するものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。
7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ全面的に実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
立法
8.委員会は、国内法令および政令の多くの改正に留意しながらも、国内法が条約の規定および原則にまだ全面的に一致していないことを依然として懸念する。
9.委員会は、締約国に対し、国内法が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するための努力を、とくに少年司法の分野で引き続き強化するよう奨励する。
調整および国家的行動計画
10.委員会は、140の地方組織を有し、かつ条約の実施に関わるさまざまな部門横断型の活動を調整する明確な権限を与えられた人口・家族・子ども全国委員会の存在に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、これらの機関間ならびに子どもの問題に関わるさまざまな行動計画およびプログラムの間で重複が生じる可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、人口・家族・子ども全国委員会に配分される人的資源の水準が不十分であることにも懸念とともに留意する。
11.委員会は、人口・家族・子ども全国委員会が、条約、子どものための国家行動計画(2001~2010年)ならびに子どもに関わる他のすべての国家的計画およびプログラムを実施するために活動しているすべての機関を効果的に調整しおよび監視できるよう、締約国が同委員会に対して十分な資源を配分するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、可能なときは調整活動の調和を図り、かつ調整システムを可能なかぎり透明化するようにも勧告するものである。
独立の監視
12.委員会は、人口・家族・子ども全国委員会の一部として査察制度が存在し、苦情を受理しかつ施設を不定期に訪問できることに留意する。この種の監視制度も重要ではあるものの、この制度は、国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(CRC/GC/2002/2)でその概要を示した、子どもの権利の促進および保護のための独立した監視機関であるとは思われない。
13.独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号で委員会が行なった勧告を考慮し、委員会は、締約国に対し、十分な人的資源および財源を提供され、かつ子どもが容易にアクセスできる、子どもの権利の促進および保護を監視するための独立したかつ効果的な機構を設置するよう奨励する。委員会は、締約国が、子どもオンブズマンを設置する試験的プロジェクトの開始を検討するよう勧告するものである。
資源配分
14.委員会は、子どものための資源配分が、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応するには不十分であることに、懸念とともに留意する。とくに、遠隔地および山間部における保健インフラおよび教育の発展に対しては不十分な資源しか配分されていない。
15.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもおよび遠隔地または山間部で暮らす子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって条約第4条を全面的に実施することに対し、特段の注意を払うよう勧告する。とくに、締約国は、ソーシャルワーク、子どもの保護およびカウンセリングの分野における熟練した人的資源の育成に配分される資源を増加させるべきである。
データ収集
16.委員会は、データ収集を向上させるために締約国が行なっている努力には留意しつつ、事前質問事項に対する文書回答で締約国が述べているように、児童労働または障害のある子どもに関するデータ収集システムが存在せず、かつ児童虐待に関して入手可能なデータが包括的でないことを懸念する。
17.委員会は、締約国がデータ収集システムを拡大して子どもの経済的搾取および児童虐待に関する統計も含めるとともに、必要であればこの点に関してILOの技術的援助を求めるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のためにあらゆるデータおよび指標を活用するよう勧告するものである。
市民社会との協力
18.委員会は、条約の実施に関する締約国と国際非政府組織(NGO)との協力が増えつつあることは歓迎しながらも、NGOが行なう活動の調整が十分な有効性を発揮していないことを懸念する。
19.委員会は、条約の規定の実施におけるパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、このような協力をより効果的に活用する目的で、透明性を高め、かつ条約実施に関して国際NGOとともに行なわれている活動の調整を促進するよう勧告する。
普及
20.委員会は、締約国の活動にも関わらず、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に認識しまたは理解していないことを懸念する。
21.子どもの権利に関する情報を普及するためにNGOおよび国際組織が行なっている活動には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定ならびに条約の実施に関する自国の報告書を広く知らせるという、第42条および第44条に基づく自国の義務を想起するよう求める。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どもともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する研修を実施するための努力を引き続き行なうこと。
  • (b) 民族的マイノリティ集団の構成員への条約の普及に特段の注意を払うとともに、可能なときは常に、条約全文が地域言語に翻訳されることを確保すること。

2.一般原則

差別の禁止
22.委員会は、条約第2条に列挙されたすべての事由に基づく差別が国内法で具体的に禁じられていないことに、懸念とともに留意する。とくに、障害のある子どもに対する差別が明示的に禁じられていない。さらに、民族的マイノリティに関する開発指標がより低い水準を示していることは、具体的にはこのようなマイノリティによる保健および教育へのアクセスに関して、一定水準の社会的および制度的差別が存在することを明らかにしているように思われる。
23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国内法が条約第2条のすべての規定に全面的に対応すること、および、とくに障害を理由とする子どもへの差別が法律で明示的に禁じられることを確保する目的で、国内法を改正すること。
  • (b) 保健ケアおよび教育のアクセス可能性および質に関する、地域間および民族的マイノリティ間の格差を解消するための努力を強化すること。
  • (c) 民族的マイノリティの子どもがどの程度差別を受けているかを明らかにし、かつそのような差別の根本的原因に対応するための政策およびプログラムを発展させるため、民族的コミュニティの指導者と連携しながら研究を実施すること。
24.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を次回の定期報告書に記載すること、および、その際、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号を考慮することを、要請する。
子どもの最善の利益
25.委員会は、子どもの最善の利益のために行動することが政府の優先課題とされているとはいえ、最善の利益の原則が子どもに関わるすべての法律に明示的に掲げられているわけではないことを懸念する。
26.委員会は、締約国が、条約第3条にしたがい、「子どもにかかわるすべての活動において、その活動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかにかかわらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される」ことを確保するために法律を見直し、かつ適当なときは改正するよう勧告する。
生命に対する権利
27.委員会は、交通事故のような事故または自然災害によって負傷し、障害を負いまたは死亡する子どもの人数が多いことを懸念する。
28.締約国の努力、とくに事故抑制のための国家行動計画(2000年)には留意しながらも、委員会は、締約国が、事故による死亡の規模および原因に関する調査を実施するとともに、とくに親、子どもおよび公衆一般を対象とした意識啓発キャンペーンおよび教育プログラムを通じ、事故関連の死亡を減らすための努力を強化するよう勧告する。
子どもの意見の尊重
29.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重がいまなお制限されていることを懸念する。加えて、行政上および司法上の手続においても、たとえば離婚に関する審判の場合に、子どもの意見を考慮に入れることが常に求められているわけではない。
30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに親、教員、政府行政職員、司法機関および社会一般を対象として、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を考慮されかつ参加する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを実施すること。
  • (b) 子どもが、自己に影響を与えるすべての裁判手続および行政手続において意見を表明し、かつ子どもに関わるこれらの意見を考慮される権利を認められることを保障するための立法措置をとること。
  • (c) 条約第12条にしたがい、裁判所およびすべての行政機関で、自己に影響をあたえるすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子ども参加を促進しかつそのための便宜を図ること。

3.市民的権利および自由

名前および国籍
31.この点に関わって締約国が行なっている多くの努力は歓迎しながらも、委員会は、いまなおすべての子どもが出生時に登録されているわけではなく、かつ、とりわけ、親が必ずしも出生登録の必要性を認識していない遠隔地および山間部で暮らす子どもの出生登録に問題が生じていることを、懸念する。
32.委員会は、締約国が、農村部および山間部で暮らす子どもに特段の注意を払いながら、すべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。
不当な取扱いおよび暴力
33.委員会は、締約国の子どもがさまざまな形態の暴力および不当な取扱い(児童虐待およびネグレクトを含む)ならびに体罰を受けていることを懸念する。
34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 児童虐待およびネグレクトの苦情を受理し、監視しおよび調査しならびに必要なときは子どもに配慮したやり方で事件を訴追するための全国的システムを設置するため、法改正を含むあらゆる適当な措置をとること。
  • (b) 法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象として、児童虐待に関する苦情に子どもに配慮したやり方で対応する方法についての研修を実施すること。
  • (c) 暴力の被害を受けた子どもおよび犯罪の目撃者である子どもにカウンセリングおよび援助を提供するための、適切な人的資源および財源を備えたアクセスしやすい全国的システムを設置すること。
  • (d) 問題の規模を適正に評価し、かつそれに対応するための政策およびプログラムを立案する目的で、虐待およびネグレクトの加害者および被害者に関する、ジェンダーおよび年齢によって細分化されたデータを収集するための機構を確立すること。
  • (e) 家庭、学校およびその他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すること。
  • (f) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施し、かつ、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。

4.家庭環境および代替的養護

35.委員会は、締約国報告書で認められているように、離婚を含む家族の解体が増加しており、法律に触れる子どもならびに路上で暮らす子どもおよび薬物を濫用する子どもの人数の増加を助長していることに、深い懸念とともに留意する。委員会はさらに、富裕家庭と貧困家庭の格差が拡大しつつあること、および、貧困により子どもが搾取および虐待を受けるおそれが高まっていることを懸念するものである。
36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 包括的な家族政策を策定するための努力を強化すること。
  • (b) カウンセリングおよび援助を提供するための専門職化されたソーシャルワーカー制度をコミュニティにおいて確立することにより、脆弱な立場に置かれた家族への社会的援助および支援を向上させること。
  • (c) とくに農村部および遠隔地を対象とする開発計画および貧困削減計画の枠内で、経済的に不利な立場に置かれた家族への金銭的支援の増額を検討すること。
養子縁組
37.委員会は、国際養子縁組の件数が多いことを懸念する。これは、この形態の養子縁組が必ずしも最後の手段とされていないことを示唆するものである。委員会はまた、一部の国際養子縁組において国際基準が遵守されていないという報告があることにも、懸念とともに留意する。
38.委員会は、締約国が、養子縁組に関する国内法令を執行するための努力を継続しおよび強化するとともに、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年、第33号)を批准するよう勧告する。

5.基礎保健および福祉

39.委員会は、締約国における予防接種実施率がきわめて高いことに評価の意とともに留意する。妊産婦死亡率は減少しつつあるものの、委員会は、妊産婦死亡率、乳児死亡率および5歳児未満児死亡率が高いままであること、ならびに、子どもの栄養不良率が高いこと、妊婦の貧血が頻繁に生じていること、および、子どもを生後6か月間は母乳のみで育てる女性の割合が低いことを懸念するものである。全体的に、主として産前ケアのためのサービスおよびクリニックにアクセスできないことを理由として、産前ケアが不十分であるように思われる。加えて、委員会は、締約国でチフスおよびコレラが再出現していることに、懸念とともに留意する。
40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに農村部において全国栄養戦略の実施を強化すること。
  • (b) 母親ならびに村のヘルスワーカーおよび伝統的助産師を対象として、生後6カ月間は乳児に母乳のみを与えることを奨励し、かつその利点について教育するための措置をとるとともに、たとえば国家的販売促進規則を策定することを通じ、乳児用調製粉乳の配布を制限するための措置をとること。
  • (c) 地区保健センターおよびコミューン保健ステーションが利用可能な資源を増やすとともに、これらの施設がとくに妊産婦保健および新生児ケアのための十分な人的および物的資源を有することを確保すること。
  • (d) 感染症、具体的にはチフスおよびコレラの蔓延を予防するためにあらゆる適当な措置をとること。
環境衛生
41.委員会は、環境衛生上の条件が劣悪であること、とくに、とりわけ農村部および山間部において安全な飲料水および衛生設備にアクセスできる住民の割合が低いこと、および、オレンジ剤その他の枯葉剤の影響が残っていることを懸念する。
42.委員会は、締約国が、農村地域および山間地域で上水設備および衛生設備を建設しかつ拡大することに優先的に取り組むとともに、脆弱な立場に置かれたすべての集団が安全な飲料水および衛生設備に平等にアクセスできることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、国際協力も活用しながら、枯葉剤等の環境汚染が子どもに与える有害な影響を予防しかつこれと闘うための努力を継続するようにも勧告するものである。
障害のある子ども
43.委員会は、障害のある子どものうち学校に通っていない子ども、職業訓練または就労準備にアクセスできない子どもおよびリハビリテーション・サービスへのアクセスが限られている子どもの割合がとくに農村部において高いことを、非常に懸念する。
44.委員会は、締約国が、障害のある子どもに関する委員会の一般的討議(1997年)の勧告および障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもの教育上および職業訓練上のニーズならびにリハビリテーションその他の社会サービスへのアクセスについて評価する目的で、障害のある子ども(現在通学していない子どもも含む)の人数についての包括的調査を実施すること。
  • (b) 経済的に不利な立場に置かれた障害のある子どもに対し、リハビリテーションのためのサービスおよび装備へのアクセスを確保するために金銭的援助を提供すること。
  • (c) 公共の建物および場所(学校およびレクリエーション施設を含む)に対する障害のある子どもの物理的アクセスを改善するための現行プログラムを拡大し、かつ初等前、初等、中等および高等教育段階における統合教育プログラムの数を増やすこと。
HIV/AIDS
45.委員会は、HIV/AIDSが蔓延しつつあり、かつ、子どもが自ら感染したことまたはこの疾病のために親を失った可能性があることのいずれかを理由として子どもにますます影響を与えていることを懸念する。
46.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと人権に関する指針(E/CN.4/1997/37添付文書I)を考慮に入れ、かつ以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命に対する権利(第6条)および子どもの意見の尊重(第12条)という条約の4つの一般原則をとくに重視しながら、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重を統合すること。
  • (b) HIV/AIDSに感染した子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもの施設措置を回避するため、あらゆる効果的な措置をとること。
  • (c) とくに公衆教育キャンペーンを通じて、HIV/AIDSとともに生きる子どもに対するスティグマおよび差別を防止するための効果的な措置をとること。

6.教育

47.初等学校段階での完全就学を達成しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、都市部と農村部または山間部との間で教育へのアクセスおよび教育の質に相当の乖離があること、および、学校制度がいまなお十分な訓練を受けた教員および教材の不足に苦しんでいることを懸念する。加えて、委員会は、初等前教育における就学率が低いこと、第1学年で留年する児童が多いこと、および、男女間で幼稚園就園率に相当の格差があることを懸念するものである。
48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに女子についておよび農村部において初等前教育への就学率を高め、かつすべての子どもに対して良質かつ無償の初等教育に対する権利を確保するため、あらゆる適当な措置をとること。
  • (b) とくに農村部において、経済的に不利な立場におかれた家庭の生徒に提供される金銭的援助をあらゆる段階(初等前段階を含む)で増やすこと。
  • (c) あらゆる民族的マイノリティ集団出身の教員の採用人数および養成人数を増やすとともに、遠隔地および山間部で働く教員に対して引き続きインセンティブを与えること。
  • (d) 授業およびカリキュラムの質を向上させるための現行プログラムならびに学校インフラの建設および発展において、農村部ならびに遠隔地および山間部に優先順位を付与すること。

7.特別な保護措置

性的搾取および人身取引
49.委員会は、セックスワーカーの相当の割合が18歳未満であることに懸念とともに留意する。さらに委員会は、子どもの人身取引が相当の問題であることを締約国が認めていながらも、公式に報告される事件数がきわめて少ないことを懸念するものである。
50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 性的搾取および人身取引の防止に関する国内的および準地域的な戦略およびプログラムを引き続き強化するとともに、これらの戦略およびプログラムにおいて、それぞれ1996年および2001年に開催された第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で表明されたコミットメントが考慮されることを確保すること。
  • (b) 子どもに配慮したやり方で効果的に苦情申立てを受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を研修すること。
  • (c) 人身取引、性的虐待および搾取の被害を受けたすべての者が、スティグマの付与につながらない、回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。
  • (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。
経済的搾取
51.委員会は、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を批准したことを歓迎する。しかしながら委員会は、農業部門ならびに金鉱山、伐採作業、サービス部門その他の民間部門企業において子どもの経済的搾取が依然として広範に行なわれていることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、路上で生活しかつ働く子どもの人数が多いことも懸念する。
52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約を批准しかつ実施すること。
  • (b) NGO、コミュニティ団体、法執行官、労働監察官およびILO児童労働撤廃国際計画と連携しながら、農村部および都市部の双方を対象とする包括的な児童労働監視システムを発展させかつ実施すること。
  • (c) 「困難な状況にある子どものための国家行動計画」(1999~2002年)を引き続き強化するとともに、前回勧告したとおり、子どもが路上で生活しかつ働く理由について、この現象の根本的原因に効果的に対処するための戦略を策定する目的で研究を行なうこと。
少年司法
53.委員会は、少年司法の分野で行なわれた1999年の刑法改正に留意する。しかしながら委員会は、増加している青少年犯罪に少年司法制度が効果的に対応できておらず、かつ、罪を犯した青少年の更生および再統合のためのサービスが不十分であることを懸念するものである。
54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。
  • (b) 少年司法に関する個別の法典の採択および少年裁判所制度の設置を検討すること。
  • (c) 少年拘禁センターの環境を改善するとともに、自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。
  • (d) 更生および再統合のための適切なサービスを提供するシステムを迅速に発展させるとともに、罪を犯した青少年にこのようなサービスを提供するソーシャルワーク専門職の人数を増やすこと。
  • (e) 法律に違反したとして申し立てられたすべての子どもが弁護士による援助その他の適当な援助を受けることを確保すること。
  • (f) とくに国連人権高等弁務官事務所および「少年司法に関する技術的助言および援助についての国連調整パネル」の他の構成機関に対し、この分野における技術的援助を要請すること。

8.文書の普及

55.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。

9.次回報告書

56.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月1日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう促す。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


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