総括所見:イギリス(OPAC・2008年)



CRC/C/OPAC/GBR/CO/1(2010年10月17日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2008年9月24日に開かれた第1357回会合(CRC/C/SR.1357参照)において大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第1回報告書(CRC/C/OPAC/GBR/1)を検討し、2008年10月3日に以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関して締約国で適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する実質的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、高級官僚から構成された部門横断型代表団との率直かつ建設的な対話も歓迎するものである。
3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回・第4回定期報告書に関して同日に採択された、CRC/C/GBR/CO/4に掲載された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

4.委員会は、英国軍への義務的徴募が1963年に廃止されたことを歓迎する。
5.委員会は、締約国が、子どもと武力紛争に関する国連作業部会のメンバーとして積極的に活動し、かつ、国際社会が懸念するもっとも重大な犯罪(子どもに対するものを含む)を審理する諸国際刑事法廷の活動を強力に支援していることを歓迎する。
6.委員会はさらに、締約国が以下の文書を批准したことを歓迎する。
  • (a) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(2000年3月22日)。
  • (b) 国際刑事裁判所ローマ規程(2001年10月4日)。

1.実施に関する一般的措置

普及および研修
7.委員会は、選択議定書に掲げられた規定が十分に普及されておらず、かつ軍事学校のカリキュラムまたは軍の研修コースに統合されていないことを懸念する。委員会はまた、一部要員は選択議定書が対象とする分野についての研修を受けているものの、軍人および子どもとともに働く他の関連の専門家を対象とする、選択議定書に関する具体的研修は行なわれていないことも懸念するものである。
8.委員会は、締約国が、軍隊のすべての構成員(国際的作戦に従事する者を含む)に対して選択議定書に関する研修を行なうよう勧告する。委員会は、子どもの庇護希望者および難民とともに働く専門家、移民担当機関、警察、弁護士、軍事裁判官を含む裁判官、医療専門家、ソーシャルワーカーおよびジャーナリストを含むあらゆる関連の専門家を対象として、選択議定書の規定に関するさらなる研修が行なわれるべきであることを勧告するものである。
9.委員会はさらに、第6条2項に照らし、締約国が、選択議定書の規定が適当な手段によって子どもに対してもおとなに対しても広く周知されかつ促進されるようにすることを勧告する。

2.防止

敵対行為への直接参加
10.委員会は、議定書第1条に関する締約国の解釈宣言の適用範囲が幅広いことを懸念する。この解釈宣言によれば、18歳未満の者を配置して敵対行為に直接参加させる行為は、とくに配置前に子どもを除外することが実際的でない場合または作戦の作戦効果を損ねるおそれがある場合、排除されない。これとの関連で、委員会は、新たな指針および手続(作戦行動地記録(OPLOC)システムを含む)の導入によって敵対行為にさらされる可能性がある地域に配置される子どもの人数が減少し、かつ2005年7月以降は子どもは配置されていない旨の情報を歓迎しながらも、子どもが敵対行為地に配備され、かつ敵対行為に関与する潜在的可能性が残っていることを懸念する。
11.委員会は、締約国の政策および実務が議定書第1条に一致すること、および、子どもが敵対行為に直接参加する危険性にさらされないことを確保するため、締約国がこの解釈宣言を見直すよう勧告する。
志願入隊
12.委員会は、批准時に第3条について行なわれた締約国の宣言によれば志願入隊に関する最低年齢は16歳であることに留意するとともに、締約国がこれを変更する予定はない旨を明らかにしていることを遺憾に思う。
13.委員会は、締約国に対し、全般的により厳格な法的規準を通じて子どもの保護を促進する目的で、自国の立場を再検討することを考慮し、かつ軍への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げるよう奨励する。 委員会は、この間、18歳に満たない者のなかから兵士を採用する場合には最年長の者を優先するよう勧告するものである。
14.委員会は、「ますます競争が激しくなる雇用市場で争うためには、英国軍は16歳以上の若者を惹きつけて軍隊でキャリアを追求するよう仕向ける必要がある」(締約国報告書、パラ18)という締約国の立場に留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 締約国から提供された数字によれば、18歳未満の新兵が英国正規軍の受入れ総数のおよそ32%を占めていること。
  • (b) 積極的新兵募集政策により、脆弱な立場に置かれた集団出身の子どもが標的とされる可能性が生じるおそれがあること。
  • (c) 親および(または)保護者は、新兵募集プロセスの最終段階で関わって同意を与えるにすぎないこと。
15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 軍隊に子どもを積極的に採用する政策を再検討するとともに、このような採用が民族的マイノリティおよび低所得家庭の子どもをとくに標的とするようなやり方で行なわれないことを確保すること。
  • (b) 新兵募集および兵士としての採用のプロセスの最初からおよびプロセス全体を通じて親が関与することを確保すること。
16.委員会は、子どもの新規採用兵の除隊権が入隊後6か月までに制限されており、かつ、18歳3か月未満の英国軍人であって18歳に達する前に自己の進路選択について明確な不満を表明していた者が求めることができるのは裁量除隊許可であることを、懸念する。
17.委員会は、締約国が、子どもの新規採用兵の「権利としての除隊」の要件を見直し、かつその行使を拡大するよう勧告する。
18.委員会は、18歳未満の新規採用兵が、成人の新規採用兵についての最低期間よりも2年間長い最低軍務期間を満たさなければならないと定めた規則がすでに失効したことを歓迎する。しかしながら委員会は、この新規則が2008年1月1日現在の新規採用兵にしか適用されないことを懸念するものである。
19.委員会は、2008年1月1日現在まだ18歳に達していなかったすべての者に対しても、最低軍務期間を着任初日から4年間に切り替える権利を認めるよう勧告する。
平和教育
20.委員会は、締約国が、市民社会組織と連携しながら、平和の価値および人権の尊重を促進する研修プログラムおよびキャンペーンを開発しかつ実施するとともに、平和教育および人権の科目を基本科目として教育制度に含めるよう、勧告する。

3.禁止

立法
21.委員会は、締約国の国際刑事裁判所(ICC)法に基づき、15歳未満の子どもを国の軍隊に徴兵しもしくは採用しまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用する戦争犯罪を行なったいかなる者も、その者が英国民、連合王国の在留者または同国の軍事裁判権に服する者である場合には訴追できることを、歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、選択議定書に反して子どもの徴募または敵対行為における使用を犯罪化する法規定を設けておらず、かつ、そのために18歳未満の子どもの徴募または使用の場合には裁判権を設定していないことになる可能性があることを、懸念するものである。
22.軍隊による子どもの義務的徴募および敵対行為における使用または武装集団による子どもの徴募および敵対行為における使用を防止するための措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 選択議定書に反して子どもを徴募しおよび敵対行為に関与させる行為を法律により犯罪化し、かつその法律を実施すること。
  • (b) これらの犯罪が締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を確保しかつ執行すること。
  • (c) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定にしたがうことを確保すること。

4.保護、回復および再統合

23.委員会は、国外で徴募されまたは敵対行為で使用された子どもの庇護申請の処理に関して締約国が行なっている努力、および、連合王国国境局に課されている「子どもを危害から安全に保つための実務規範」の策定要件に留意する。しかしながら委員会は、個々の地方当局では連合王国に入国する移民の子どもを援助する支援サービスが整えられているものの、国外で徴募されまたは敵対行為で使用された子どもを援助するための具体的措置はとられていないことを懸念するものである。
24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民のうち徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある者を特定し、かつこのような子どもに関するデータを体系的に収集するための措置を強化すること。
  • (b) このような子どもが、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための分野横断的な援助を含む適切なケアおよび処遇を受けることを確保すること。
  • (c) このような子どもからまたはこのような子どものために行なわれた庇護申請を処理するにあたり、とくにその帰還に関わる決定において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保すること。
25.委員会はさらに、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(CRC/GC/2005/6)、とくにパラ54~60に留意するよう勧告する。
火器の使用
26.委員会は、連合王国の軍事施設の武装警備が17歳以降の軍人によって行なわれる場合があること、および、この活動には最低限、武器の取扱いの訓練および評価ならびに実力行使および交戦規定に関する指導がともなうことを遺憾に思う。
27.委員会は、選択議定書の精神にしたがい、すべての子どもについて火器の取扱いおよび使用を廃止するよう奨励する。
捕虜とされた子ども兵士
28.委員会は、締約国の軍隊がイランおよびアフガニスタンに駐留しており、かつ、紛争に関与した子どもが締約国の軍事当局によって拘禁される事例があることに留意する。これとの関連で、委員会は、捕虜とされかつ拘禁された子どもの取扱いに関する軍隊向けの指針が存在しており、そこでは、とくに、このような子どもは実際的に可能なかぎり迅速に赤十字国際委員会に移送される旨、定められていることに留意する。
29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの拘禁が最後の手段としてのみ、かつその年齢および脆弱性にしたがった適切な条件のもとで行なわれることを確保すること。
  • (b) 子どもの拘禁の定期的かつ公平な再審査を保障し、かつ、子どもについては当該再審査を成人よりも多い頻度で実施すること。
  • (c) 子どもが拘禁されているすべての施設に監視機関が妨げられることなくアクセスできること、および、子どもが独立した苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。
  • (d) 親または近親者に子どもの拘禁場所を通知すること。
軍事裁判
30.委員会は、18歳未満の軍隊構成員が成人と同一の軍事裁判制度の対象とされる場合があることを懸念する。
31.委員会は、締約国が、法律に触れた子どもがその行為の軍事的または民事的性質に関わらず常に少年司法制度において対応され、かつ、条約(第37条および第40条)に掲げられおよび「少年司法における子どもの権利」に関する委員会の一般的意見10号で説明されている基準にしたがって取り扱われることを確保するよう、勧告する。
武器輸出
32.委員会は、英国からのすべての輸出認可申請が、遵守すべき8つの基準からなる「輸出認可に関する欧州連合・国内統合基準(行動規範)」に照らして判断されることに留意する。しかしながら委員会は、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への武器の販売が当該基準の一または複数に該当しうることを認めながらも、このような禁止規定が拘束力のある文書に明示的に含まれていないことを懸念する。
33.委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への武器の販売を、自国の法律で明示的に禁止するよう勧告する。

5.国際的な援助および協力

34.委員会は、締約国が、選択議定書の実施のための技術的協力および財政援助(国連児童基金(UNICEF)および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等の国連機関との提携によるものも含む)を提供し続けていることに留意する。委員会は、締約国に対し、選択議定書に反するあらゆる活動の防止ならびに選択議定書に反する行為の被害を受けた者のリハビリテーションおよび社会的再統合に関するものも含め、選択議定書に実施に関する二国間および多国間の協力を継続するよう奨励するものである。

6.フォローアップおよび普及

35.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国防省、議会および地方分権政府の関連当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
36.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。

7.次回報告書

37.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年8月29日)。