総括所見:韓国(第1回・1996年)


CRC/C/15/Add.51(1996年2月13日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1996年1月18日および19日に開かれた第266回、第267回および第268回会合において大韓民国の第1回報告書を検討し、以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、同国に対し、ハイレベルかつ学際的な代表団を通じて委員会とのオープンかつ実りのある対話に携わってくれたことへの謝意を表する。委員会は、諸問題一覧表に記載された質問への回答として代表団が提出した文書による情報、および、委員会との対話の後に同国が提供した追加的情報を歓迎する。

B.積極的な側面

3.委員会は、条約が同国の国内法体系において直接適用可能であること、および、裁判所における援用も可能であることに、満足感とともに留意する。
4.委員会は、同国が子どものための国内行動計画を作成したこと、同行動計画を第7次社会経済開発5か年計画(1992年~1996年)に編入したこと、および、国内子どもの権利委員会を最近設置したことを歓迎する。
5.委員会は、政府が教育を「社会的および経済的発展の原動力」と考え、重要視していることに、満足感とともに留意する。
6.委員会は、また、文書回答に表れ、かつ、対話の過程で代表団によっても確認されたように、同国が条約に付した留保の撤回の可能性を検討することに関する開かれた態度も歓迎する。委員会は、民法の改正が、親の一方または双方から分離された子どもが定期的に親双方との個人的な関係および直接の接触を保つ権利を盛りこむ目的で進められていることに、心強い思いを感ずるものである。委員会は、また、代表団が述べたように、そのような措置によって同国が条約第9条3項に関する留保を撤回することができるようになることにも、心強い思いを感ずるものである。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

7.委員会は、現在の政治的および経済的移行期において韓国が直面している困難に留意する。急速な経済成長を確保しようという努力には、必ずしも、経済的、社会的および文化的権利を適切なレベルで実現することが伴ってこなかった。このことは、とくに、悪化する貧困によって影響を受ける、最も不利な立場にあるグループに属する子どもたちについて言える。同国が最近になってようやく軍事支配から脱したことも、子どもの基本的権利および自由の享受に否定的影響を与えてきた。

D.主要な懸念事項

8.委員会は、同国が第9条3項、第21条(a)および第40条2項(b)(v)に付した留保は、子どもの最善の利益の原則および子どもの意見の尊重の原則を始めとする条約の原則および規定と両立するかどうかという点について、疑念を生ぜしめるものだという見解をとるものである。
9.委員会は、恒久的かつ効果的な調整および監視のための仕組みを確保するために充分な措置がとられていないことに、懸念を表明する。委員会は、また、達成された進歩を評価し、かつ、政策が子どもたちに与える影響、とりわけ最も傷つきやすいグループの子どもたちに関する影響を評価するために、条約が対象とするすべての領域について、信頼できる量的かつ質的なデータを集めるために充分な措置がとられていないことにも留意する。
10.委員会は、条約の原則および規定が子どもおよび大人の間で広く知られるようにするために充分な措置がとられていないことに、懸念を表明する。教師、ソーシャルワーカー、裁判官、法執行官、心理学者および保健従事者を始めとする、子どもとともにおよび子どものために働くさまざまな専門職グループに対して、条約の内容に関する研修が行なわれていないことも、遺憾の意とともに留意されるところである。
11.条約第4条の実施に関して、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利が、利用可能な資源を最大限に用いることによって実施されるようにするために充分な措置がとられていないことに、懸念とともに留意する。これとの関連で、子どもの社会的および人間的発達の領域、および、最も傷つきやすいグループの子どもたちのニーズに対して、充分な関心が払われてこなかった。
12.委員会は、また、条約の基本的原則、とりわけ第2条、第3条および第12条の規定が、立法、政策および事業計画に充分に反映されてこなかったことも懸念する。報告が認めている通り、子どもを単に「小さな大人または未成熟な大人」とする考え方および取扱い方が同国では支配的であるが、そのような状態を変える目的でとられた、条約の基本的価値観に関する意識を創り出すための措置は、充分なものではない。委員会は、少女(最低婚姻年齢に関する態度を含む)、障害児および婚外子に影響を与える差別的な態度がいまだに存続していることに、懸念とともに留意する。
13.委員会は、家族が子どもの権利の保護に関する責任を引き受ける上で、充分な援助が提供されていないことに、懸念とともに留意する。
14.委員会は、国籍、表現、思想、良心および宗教への自由ならびに結社および平和的な集会の自由への権利など、子どもの市民的権利および基本的自由の効果的な実施を確保するために、法的措置を始めとする措置が充分にとられていないことに懸念を表明する。
15.委員会は、養子縁組の領域および養子縁組の解消の際に一般的にとられている方式に関する同国のアプローチは、子どもの最善の利益が最高の考慮事項となるべきであるという原則および21条の法的保護との関連を始めとして、条約との整合性に関して疑念を生ぜしめるものであるという見解をとるものである。これとの関連で、委員会は、養子縁組が、信頼のおけるあらゆる関連情報に基づき、かつ、子どもを含むあらゆる関係者が情報を得た上での同意を与えた上で、権限ある機関によって認可されるようにするための措置が不充分であることを、とりわけ懸念する。国際養子縁組が高い割合で行なわれていることも、委員会の懸念するところである。子ども虐待および家庭内暴力に関しては、委員会は、防止のための政策および充分な通報の仕組みがないことを懸念する。このほか、子どもが遺棄されていること、子どもが筆頭者である家族が高い割合で発生していること、および、親および教員によって広く教育的措置と見なされている体罰がいまだに存続していることも、委員会にとっての主要な懸念事項である。
16.委員会は、教育制度において、条約第29条に反映されている教育の目的が充分考慮されていないことを懸念する。教育制度が高度に競争主義的な性格を有していることは、子どもの能力および才能を最大限可能なまで発達させること、および、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすることを阻害する危険がある。
17.子ども労働の状況を防止するために、法改正領域における措置も含めて充分な措置がとられていないことにも、懸念が表明されるところである。これとの関連で、義務教育修了年齢および最低雇用年齢との間に乖離があることが、とくに懸念されかつ留意されるところである。
18.委員会は、また、現行の少年司法制度に関して、かつ、その制度が第37条、39条および40条を始めとする条約との整合性を欠いていることについて、懸念する。

E.提案および勧告

19.委員会は、政府に対し、第9条3項、第21条(a)および第40条(b)(v)への留保を、撤回の方向で見直すことを検討するよう奨励する。
20.委員会は、政府が、第42条に照らし、条約の原則および規定に対する支持を促進し、かつ、それらに関する意識および理解を創り出すことを目的とした取組みを強化するよう、勧告する。委員会は、政府が、とくに少女、障害児および婚外子に対していまだに差別的な態度が存続しているという問題に効果的に取り組むために公的なキャンペーンを進展させること、および、こうしたグループに属する子どもたちの地位および保護を向上させるために積極的な措置をとることを提案する。
21.委員会は、また、同国が、教員、ソーシャルワーカー、裁判官、法執行官、保健関係者および条約によって対象とされている領域におけるデータ収集の確保を担当している職員を始めとして、子どもとともにおよび子どものために働いている専門家グループに対し、条約に関する研修活動を確保するよう奨励する。国連人権教育の10年の精神を踏まえ、委員会は、さらに、同国に対し、子どもの権利を学校のカリキュラムに盛りこむことを考慮するよう奨励する。
22.委員会は、政府に対し、国内法と、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)を始めとする条約の規定および原則が全面的に一致するようにするため、取組みを継続するよう奨励する。委員会は、とりわけ、以下のことを目的とする法的措置がとられるよう勧告する──第2条に照らし、女子と男子の最低婚姻年齢を同一にすること、第23条に照らし、すべての障害児の基本的権利、とくに教育への権利を確保すること、婚外子に対するいかなる差別も廃絶すること、韓国人の母親に生まれた子どもが無国籍になる危険性を、いかなる場合にも防止すること、いかなる形態の体罰をもはっきりと禁止すること、および、最低雇用年齢を、義務教育年齢に合わせる方向で引き上げること。国内外の養子縁組の分野については、委員会は、同国に対し、条約の原則および規定との全面的な整合性を確保するため包括的な法改正を行なうこと、および、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討することを、奨励する。
23.委員会は、全国レベルおよび地方レベルの双方において、かつ、都市部においても非都市部においても、条約の実施の調整および監視を行なうための恒久的かつ学際的な仕組みを発展させるよう勧告する。委員会は、同国に対し、子どものためのオンブズパーソンまたはそれに相当する苦情申立ておよび監視のための仕組みを設立することを、さらに検討するよう奨励する。委員会は、さらに、非政府組織とのより密接な協力を促進するよう奨励する。
24.委員会は、また、条約が対象としているすべての領域に取組み、かつ、達成された進歩を評価することを目的として、最も傷つきやすいグループに属する子どもたちの状況を正当に考慮しながら、データ収集システムを改善し、かつ、諸要素によって分解された適切な指標を特定するようにも勧告する。
25.委員会は、大韓民国政府が、条約第4条の全面的な実施に特別な関心を払い、かつ、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のために、利用可能な資源を最大限に用いてあらゆる適切な措置をとるよう強く勧告する。差別の禁止および子どもの最善の利益の原則に照らし、最も不利な立場に置かれたグループの子どもたちの状況に、特別な関心が払われるべきである。
26.委員会は、家族、学校および社会生活に対する子どもたちの参加、ならびに、意見、表現および結社の自由を始めとする基本的自由の効果的な享受を促進するため、さらなる努力が行なわれるべきだと考えるものである。基本的自由については、法律に規定されたものであって、民主的社会において必要な制限のみを課すことができる。
27.委員会は、同国に対し、とくに条約第18条および27条に照らし、家族が子どもの養育および発達に関する責任を果たせるようにするための援助を確保するため、さらなる措置をとるよう奨励する。子どもの遺棄の防止、ならびに、子どもを筆頭者とする家庭の発生の防止およびそのような家庭への適切な援助に、特別な関心が払われるべきである。
28.子ども虐待および家庭内暴力の領域について、委員会は、同国が、そのような状況を防止し、かつ、そのような暴力によって影響を受けた子どもを保護しかつ適切な身体的回復および社会復帰を確保するため、さらなる措置をとるよう勧告する。発見、実情の把握および照会が早期に行なわれるようにするための制度の設置が考慮されるべきである。
29.委員会は、同国に対し、条約第29条に掲げられた教育の目的を全面的に反映させることを目的として、教育政策を再検討するよう奨励する。
30.児童労働の領域について、委員会は、同国に対し、関連の立法および運用に条約、とくに第32条を全面的に反映させることを目的として、適切な措置をとるよう奨励する。委員会は、最低雇用年齢に関するILO第138号条約の批准を考慮するよう勧告し、かつ、同国が、ILOとの協議のもとでそのような活動の継続を考慮するよう奨励する。
31.委員会は、同国が、条約、とくに第37条、39条および40条、ならびに、「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のようなこの分野の他の国連基準の精神を踏まえて、少年司法制度の包括的な改革の実施を構想するよう勧告する。その際、自由の剥奪が最後の手段として、かつ、最も短い期間のみ用いられるべきものとして見なされること、自由を奪われた子どもの権利の保護、法の適正手続、および、司法の全面的独立および公正に、とくに関心が払われるべきである。関連の国際基準に関する研修プログラムが、少年司法制度に携わるすべての専門職向けに組織されるべきである。委員会は、大韓民国政府が、〔国連〕人権センターおよび犯罪防止刑事司法局に対し、少年司法の運用の領域に関して国際的援助を求めることを考慮するよう提案したい。
32.委員会は、同国が提出した報告、その審査の議事要録および委員会の総括所見を、同国内でできるだけ広く普及するよう勧告する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年8月14日)。