欧州評議会・子どもの養子縁組に関する欧州条約(改正)(2008年)


前文

 欧州評議会の加盟国およびこの条約の他の署名国は、
 欧州評議会の目的が、加盟国の共通の遺産である理想および原則を保護しかつ実現するために加盟国間におけるさらなる統一を達成することであることを考慮し、
 子どもの養子縁組制度が欧州評議会の全加盟国の法に存在するとはいえ、養子縁組を規律すべき原則に関する異なる見解ならびに養子縁組手続および養子縁組の法的効力に関する違いがこれらの国々に依然として残っていることを考慮し、
 子どもの権利に関する1989年11月20日の国際連合条約およびとくにその第21条を考慮に入れ、
 国際養子縁組に関する子の保護および国際協力に関する1993年5月29日のハーグ条約を考慮に入れ、
「国際養子縁組:子どもの権利の尊重」に関する欧州評議会議員会議の勧告1443(2000)、および、親子関係の確認および法的効力に関わる原則についての欧州評議会白書の内容に留意し、
 1967年の子どもの養子縁組に関する欧州条約(ETS No. 58)の規定の中には、時代に適合せず、かつ欧州人権裁判所の判例に反するものもあることを認め、
 自己に影響を及ぼす家事手続への子どもの参加が、子どもの権利の行使に関する1996年1月25日の欧州条約(ETS No. 160)および欧州人権裁判所の判例によって改善されてきたことを認め、
 この数十年の間にこの分野で生じてきた関連の発展を考慮に入れながら、子どもの養子縁組に関わる新たな共通の原則および実践を受け入れることが、国内法の違いによって引き起こされている困難を軽減し、かつ、同時に、養子とされる子どもの利益を促進するうえで役に立つであろうことを考慮し、
 とくに1993年のハーグ条約を効果的に補完する、子どもの養子縁組に関する欧州評議会の新たな国際文書を定める必要があることを確信し、
 子どもの最善の利益が至高の考慮事項であることを認め、
 次のとおり協定した。

第1章-条約の適用範囲およびその原則の適用

第1条-条約の適用範囲

1.この条約は、養親となろうとする者が養子縁組の申請を行なったときに18歳に達しておらず、現に婚姻しておらずかつ婚姻したことがなく、現に登録パートナーシップ関係になくかつ過去にそのような関係を結んだことがなく、ならびに成年に達していない子どもの養子縁組に適用される。
2.この条約は、子どもと親との恒久的関係を創設する、法律上の養子縁組制度のみを対象とする。

第2条-原則の適用

 各締約国は、この条約と自国の法律との一致を確保するために必要と考えられる立法上その他の措置をとり、かつ、欧州評議会事務総長に対し、当該目的のためにとった措置について通告する。

第2章-一般的原則

第3条-養子縁組の有効性

 養子縁組は、裁判所または行政機関(以下「権限ある公的機関」)によって認可された場合のみ、有効となる。

第4条-養子縁組の認可

1.権限ある公的機関は、養子縁組が子どもの最善の利益にかなうことを確信する場合にのみ、養子縁組を認可する。
2.権限ある公的機関は、各事案において、安定したおよび調和のとれた家庭を子どもに提供する養子縁組の重要性に特別な注意を払う。

第5条-養子縁組への同意

1.この条の2から5までにしたがうことを条件として、養子縁組は、少なくとも養子縁組に対する次の同意が与えられ、かつ撤回されない場合でなければ、これを認可しない。
  • a. 母および父の同意、または、同意を与えるべき父および母のいずれも存在しないときは、父母に代わって同意を与える資格を有するいずれかの者もしくは機関の同意。
  • b. 法律によって十分な理解力を有すると見なされる子どもの同意。子どもは、法律で定められた年齢であって14歳を上回らない年齢に達した時点で、十分な理解力を有すると見なされる。
  • c. 養親となろうとする者の配偶者または登録パートナーの同意。
2.養子縁組に関する同意が必要とされる者は、必要と考えられるカウンセリングを受け、かつ、その同意の効力、とくに養子縁組の結果として子どもとその出身家族との法的関係が終了するか否かについて、適正に情報を提供されていなければならない。同意は、法律で定められた必要な書式で与えられなければならず、かつ書面により表明または証明されていなければならない。
3.権限ある公的機関は、法律に定められた例外的事由に基づく場合を除き、1に掲げられたいずれかの者または機関の同意を免除し、またはその同意の拒否を退けてはならない。ただし、有効な同意の表明を妨げる障害を有する子どもの同意は、これを免除することができる。
4.父または母が子どもに関して親責任を有しておらず、または少なくとも養子縁組に同意する権利を有していないときは、法律により、当該父または母の同意を得る必要はない旨、定めることができる。
5.子どもの養子縁組に対する母の同意は、子どもの出生後6週間を下回らない範囲で法律が定める期間の経過後、または、当該期間が定められていないときは、母が子どもの出産の影響から十分に回復することを可能にすると権限ある公的機関が考える期間の経過後に与えられた場合にのみ、有効となる。
6.この条約の適用上、「父」および「母」とは、法律にしたがって子どもの親であるものをいう。

第6条-子どもとの協議

 第5条第1項および第3項にしたがって子どもの同意が必要とされないときは、子どもと可能なかぎり協議を行ない、かつ、その意見および希望を、その成熟度を顧慮しながら考慮に入れる。当該協議は、明らかに子どもの最善の利益に反するときは、免除することができる。

第7条-養子縁組の条件

1.法律は、次の者による子どもの養子縁組を認める。
  • a. 性別を異にする2名の者であって、次のいずれかの条件を満たす者。
    • i. 婚姻関係にあること。
    • ii. 登録パートナーシップの制度が存在するときは、ともに当該関係にあること。
  • b. 単身者。
2.国は、婚姻関係にありまたはともに登録パートナーシップ関係にある同性カップルを、この条約の適用範囲に自由に含めることができる。国はまた、安定した関係のもとで生活をともにしている異性カップルおよび同性カップルも、この条約の適用範囲に自由に含めることができる。

第8条-その後の養子縁組の可能性

 法律は、次の事情の一または複数に該当する場合を除き、いったん養子とされた子どもがその後の機会にふたたび養子縁組の対象とされることを認めてはならない。
  • a. 子どもが養親の配偶者または登録パートナーによって養子とされるとき。
  • b. 元の養親が死亡したとき。
  • c. 養子縁組が無効とされたとき。
  • d. 元の養子縁組が終了しており、または新たな養子縁組によって終了するとき。
  • e. その後の養子縁組が重大な根拠によって正当と認められ、かつ法律上元の養子縁組を終了させることができないとき。

第9条-養親の最低年齢

1.子どもの養子縁組は、養親が、この目的のために法律で定められた最低年齢に達していなければ、行なうことができない。当該最低年齢は、18歳以上30歳未満とする。子どもの最善の利益を顧慮し、養親と子どもとの間には適当な年齢差が存しなければならない。当該年齢差は、少なくとも16歳であることが望ましい。
2.ただし、最低年齢または年齢差に関する要件は、次のいずれかの場合には、法律により、子どもの最善の利益のために免除することを認めることができる。
  • a. 養親が子どもの父または母の配偶者または登録パートナーであるとき。
  • b. 例外的事情によるとき。

第10条-予備調査

1.権限ある公的機関は、養親、子どもおよび子どもの家族に関して適切な調査が行なわれるまでは、養子縁組を認めてはならない。当該調査の期間中および終了後において、データは、専門家の守秘義務および個人データ保護に関する規則にしたがう場合でなければ、収集し、処理しおよび伝達することができない。
2.当該調査は、各事案で適切な限度において、可能なかぎりかつとくに次の事項に関して行なう。
  • a. 養親の人格、健康および社会環境、その居宅および世帯の詳細ならびに子ども養育する養親の能力。
  • b. 養親が当該子どもの養子縁組を希望する理由。
  • c. 配偶者または登録パートナーの一方のみが子どもの養子縁組の申請を行なうときは、他方が当該申請に参加しない理由。
  • d. 子どもと養親の相性および子どもが当該養親のケアを受けていた期間。
  • e. 子どもの人格、健康および社会環境、ならびに、法律によって課されたいかなる制限にもしたがうことを条件として、その背景および民事上の身分。
  • f. 養親および子どもの民族的、宗教的および文化的背景。
3.当該調査は、法律または権限ある公的機関によってこの目的のために承認された者または機関に委託する。当該調査は、実際上可能なかぎり、訓練または経験の結果としてこの分野における適格性を認められたソーシャルワーカーが行なう。
4.この条の規定は、当該調査の及ぶ範囲にあるか否かに関わらず、有益となる可能性があると考えるいずれかの情報または証拠を入手する、権限ある公的機関の権能または義務に影響を及ぼすものではない。
5.養子縁組の適否、養親の適格性、関係者の状況および動機ならびに子どもの措置の適切性に関する調査は、子どもが養子縁組を目的として養親となろうとする者に託置される前に行なう。

第11条-養子縁組の効力

1.子どもは、養子縁組と同時に、養親の家族の完全な構成員となり、かつ、養親およびその家族との関係で、親子関係が法的に確立された養親の子として同一の権利および義務を有する。養親は、子どもに対して親責任を有する。養子縁組により、子どもとその父、母および出身家族との間の法律上の関係は終了する。
2.1の規定に関わらず、養親の配偶者またはパートナー(登録の有無を問わない)は、養子が自己の子であるときは、当該養子との関係でその権利および義務を引き続き有する。ただし、法律に別段の定めがあるときは、このかぎりでない。
3.子どもとその出身家族との法律上の関係の終了について、締約国は、子どもの姓および婚姻または登録パートナーシップの締結の障害事由に関する例外を定めることができる。
4.締約国は、この条の1から3までに定められたものよりも限定された効力を有する、他の形態の養子縁組について定めることができる。

第12条-養子の国籍

1.締約国は、自国の国民が養子とした子どもによる国籍の取得の便宜を図る。
2.養子縁組の結果生じうる国籍の喪失は、他の国籍の保持または取得を条件とする。

第13条-制限の禁止

1.同一の養親が養子とすることができる子どもの人数は、法律によって制限してはならない。
2.子を有する者または有することができる者が、これを理由として法律により養子縁組を禁じられてはならない。

第14条-養子縁組の取消しおよび無効

1.養子縁組は、権限ある公的機関の決定によらなければ、取り消しまたは無効とすることができない。子どもの最善の利益が常に至高の考慮事項となる。
2.養子縁組は、法律により認められた重大な事由がある場合にのみ、子どもが成年に達する前に取り消すことができる。
3.養子縁組を無効とすることの申請は、法律が定める期間内に行なわなければならない。

第15条-他の締約国からの情報の要請

 この条約の第4条および第10条にしたがって行なわれる調査が他の締約国の領域に現に居住しておりまたは居住していた者に関するものである場合、締約国は、情報の要請が行なわれたときは、要請された情報が提供されることを確保するため迅速な努力を行なう。各国は、情報の要請先となる一の国内当局を指定する。

第16条-親子関係確認手続

 推定上の生物学的父または母によって提起された父子関係確認手続または存在する場合には母子関係手続が係属中であるときは、養子縁組手続は、適当なときは当該親子関係確認手続の結果が出るまで停止する。権限ある公的機関は、当該親子関係確認手続において迅速に行動する。

第17条-不当な利得の禁止

 何人も、子どもの養子縁組に関する活動から不当な金銭的その他の利得を得てはならない。

第18条-より好ましい条件

 締約国は、養子にとってより好ましい規定を採用する選択の自由を維持する。

第19条-試験観察期間

 締約国は、養子縁組を認める前に、養子縁組が認められた場合の将来の養親子関係について権限ある公的機関が合理的評価を行なうことが十分な期間、子どもが養親に託置されることを要件とすることができる。その際には、子どもの最善の利益が至高の考慮事項となる。

第20条-カウンセリングおよび養子縁組後のサービス

 公的機関は、養親になろうとする者、養親および養子に対して援助および助言を提供する養子縁組カウンセリング・サービスおよび養子縁組後のサービスの促進および適正な運用を確保する。

第21条-訓練

 締約国は、養子縁組に対応するソーシャルワーカーが、養子縁組の社会的および法的側面について適切な訓練を受けることを確保する。

第22条-情報へのアクセスおよび情報の開示

1.養親の身元を子どもの出身家族に開示することなく養子縁組を行なえるようにするための措置がとられる。
2.養子縁組手続が非公開で行なわれることを要件としまたは認めるための措置がとられる。
3.養子は、自己の出自に関して権限ある公的機関が有する情報にアクセスすることができる。養子の実親がその身元を開示されない権利を有しているときは、権限ある公的機関は、状況ならびに子どもおよびその実親それぞれの権利を顧慮し、法律の認める限度において、実親の当該権利を無効とし、かつ身元の特定につながる情報を開示するか否かを決定する。成年に達していない養子に対しては、適切な指導が与えられる。
4.養親および養子は、養子の生年月日および出生地を証明する公的記録の抜粋を掲載し、ただし養子縁組の事実またはその実親の身元は明示的に明らかにしない書類を取得することができる。締約国は、この規定を、この条約の第11条第4項に掲げられた他の形態の養子縁組に適用しないことを選択することができる。
5.自己の身元および出自を知る権利を顧慮し、養子縁組に関する関連の情報は、養子縁組の成立後少なくとも50年間収集しおよび保存する。
6.公的記録を保存しかついずれかの場合にその内容を複製する際には、正当な利益を有しない者が、ある者が養子であるか否かの事実、およびその実親の身元が開示されるときは当該情報を知ることのできないような方法で行なう。

第3章-最終条項

第23条-この条約の効果

1.この条約は、1967年4月24日に署名のために開放された子どもの養子縁組に関する欧州条約の締約国について、当該条約に代わる。
2.この条約の締約国と、1967年条約の締約国であってこの条約を批准していない国との間では、1967年条約第14条が引き続き適用される。

第24条-署名、批准および発効

1.この条約は、欧州評議会加盟国およびその作成に参加した非加盟国による署名のために開放しておく。
2.この条約は、批准、加入または承認されなければならない。批准書、加入書または承認書は、欧州評議会事務総長に寄託する。
3.この条約は、3か国の署名国がこの条の2の規定にしたがって条約に拘束されることへの同意を表明した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。
4.1に掲げられたいずれかの国が、その後、条約に拘束されることへの同意を表明したときは、条約は、当該国について、その批准書、加入書または承認書が寄託された日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。

第25条-加入

1.この条約の発効後、欧州評議会閣僚委員会は、締約国との協議を行なった後、欧州評議会の非加盟国であって条約の作成に参加しなかったいかなる国に対しても、欧州評議会規程第20条dに定められた過半数による決定をもって、かつ閣僚評議会に出席する資格を有する締約国の代表の全会一致の投票をもって、この条約に加入するよう慫慂することができる。
2.条約は、加入したいかなる国についても、欧州評議会事務総長に加入書が寄託された日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。

第26条-領域的適用

1.いずれの国も、署名時または批准書、受託書、承認書もしくは加入書の寄託時に、この条約が適用される単一のまたは複数の領域を特定することができる。
2.いずれの国も、その後のいかなる時点においても、欧州評議会事務総長に宛てた宣言によって、当該宣言で特定され、かつ国際的関係について自国が責任を負っているまたは自国が代わって保証を行なうことが認められている他のいずれの領域に対しても、この条約を新たに適用することができる。当該領域については、条約は、事務総長が当該宣言を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。
3.1および2の規定に基づいて行なわれたいずれの宣言も、当該宣言で特定されたいずれの領域についても、欧州評議会事務総長に宛てた通告によって撤回することができる。撤回は、事務総長が当該通告を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。

第27条-留保

1.この条約のいかなる規定についても、第5条第1項b、第7条第1項aのiiならびにbおよび第22条第3項の規定に関する例外を除き、いかなる留保も付すことができない。
2.1にしたがっていずれかの国が付す留保は、署名時または批准書、受託書、承認書もしくは加入書の寄託時にその内容を明らかにするものとする。
3.いずれの国も、欧州評議会事務総長に宛てた宣言によって、1にしたがって付した留保の全部または一部を撤回することができる。当該宣言は、その受領の日から効力を生ずる。

第28条-権限ある機関の通告

 各締約国は、欧州評議会事務総長に対し、第15条に基づく要請の送付先である公的機関の名称および住所を通告する。

第29条-廃棄

1.いかなる締約国も、欧州評議会事務総長に宛てた通告を行なうことによって、いつでもこの条約を廃棄することができる。
2.当該廃棄は、事務総長が通告を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。

第30条-通告

 欧州評議会事務総長は、欧州評議会加盟国、この条約の作成に参加した非加盟国、すべての締約国およびこの条約への加入を慫慂されたすべての国に対し、次の事項を通告する。
  • a. すべての署名。
  • b. すべての批准書、受託書、承認書または加入書の寄託。
  • c. 第24条にしたがってこの条約が効力を生ずるすべての日付。
  • d. 第2条の規定にしたがって受領したすべての通告。
  • e. 第7条第2項ならびに第26条第2項および第3項の規定にしたがって受領したすべての宣言。
  • f. 第27条の規定にしたがって付されたすべての留保および行なわれた留保の撤回。
  • g. 第28条の規定にしたがって受領したすべての通告。
  • h. 第29条の規定にしたがって受領したすべての通告および廃棄が効力を生ずる日付。
  • i. この条約に関わる他のいずれかの行為、通告または連絡。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

2008年11月27日、ストラスブールにおいて、ひとしく正文である英語およびフランス語により本書1通を作成した。本書は、欧州評議会に寄託する。欧州評議会事務総長は、欧州評議会の各加盟国、この条約の作成に参加した非加盟国およびこの条約に加入するよう慫慂されたすべての国に対し、その認証謄本を送付する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年8月12日)。