欧州評議会 女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスの防止およびこれとの闘いに関する条約(イスタンブール条約)(2)


第4章-保護および支援

第18条-一般的義務

1.締約国は、すべての被害者をすべてのさらなる暴力行為から保護するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力の被害者および目撃者の保護および支援に際し、関連するすべての国の機関(司法機関、検察官、法執行機関、地方および広域行政圏の公的当局を含む)ならびに非政府組織その他の関連の組織および機関の効果的協力(この条約の第20条および第22条で詳しく定める一般的および専門的支援サービスへの付託によるものも含む)の体制を整える適当な機関が存在することを確保するため、国内法にしたがって、必要な立法上その他の措置をとる。
3.締約国は、この章にしたがってとられる措置が次のようなものであることを確保する。
  • 女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスに関するジェンダー化された理解を基盤とし、かつ被害者の人権および安全に焦点が当てられること。
  • 被害者、加害者、子どもおよびこれらの者が置かれたより幅広い社会環境の関係を考慮に入れた、統合的アプローチを基盤とすること。
  • 二次被害の防止を目的とすること。
  • 暴力の被害を受けた女性のエンパワーメントおよび経済的自立を目的とすること。
  • 適当なときは、保護および支援のための一連のサービスを同じ敷地内に設けられるようにすること。
  • 脆弱な立場に置かれた者(被害を受けた子どもを含む)の具体的ニーズに対応し、かつこれらの被害者に対して利用可能とされること。
4.サービスの提供において、いずれかの加害者を告発しまたはいずれかの加害者に不利な証言をする意思が被害者にあることは条件とされない。
5.締約国は、領事的その他の保護および支援を自国民および国際法上の自国の義務にしたがって当該保護を受ける資格のある他の被害者に提供するため、適当な措置をとる。

第19条-情報

 締約国は、利用可能な支援サービスおよび法的措置に関する十分なかつ時宜を得た情報を、被害者が自己の理解する言語で受け取ることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第20条-一般的支援サービス

1.締約国は、暴力からの回復を促進するサービスに被害者がアクセスできることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。これらの措置には、必要なときは、法律相談および心理カウンセリング、金銭的援助、住居、教育、訓練および就労援助が含まれるべきである。
2.締約国は、被害者が保健ケア・サービスおよび社会サービスにアクセスできること、ならびに、サービスに対して十分な資源が配分され、かつ専門家が被害者の援助および適当なサービスへの被害者の付託に関して訓練されていることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第21条-個人的/集団的苦情申立てに関する援助

 締約国は、被害者が、地域および国際社会の適用可能な個人的/集団的苦情申立て機構に関する情報を得られかつ当該機構にアクセスできることを確保する。締約国は、そのような苦情申立てに際し、配慮および見識のある援助が被害者に提供されることを促進する。

第22条-専門的支援サービス

1.締約国は、この条約の適用範囲にあるいずれかの暴力行為の対象とされたいかなる被害者に対しても、十分な地理的分布をもって即時的、短期的および長期的な支援サービスを提供しまたはそのための手配を行なうため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、暴力の被害を受けたすべての女性およびその子どもに専門的な女性支援サービスを提供し、またはそのための手配を行なう。

第23条-シェルター

 締約国は、寝泊まりのできる安全な場所を被害者、とくに女性および子どもに提供し、かつこれらの被害者に対して能動的に援助のための働きかけを行なう、適当な、容易にアクセスできるシェルターが十分な数だけ設置される体制を整えるため、必要な立法上その他の措置をとる。

第24条-電話ヘルプライン

 締約国は、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力との関連で、秘密裡にまたは相談者の匿名性を正当に顧慮しながら相談者に助言を提供する、24時間対応でありかつ無償の全国的電話ヘルプラインを設置するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第25条-性暴力被害者の支援

 締約国は、被害者のために医学的および法医学的検査、トラウマ支援ならびにカウンセリングを準備する、適当な、容易にアクセスできるレイプ・クライシス・センターまたは性暴力被害者対応センターが十分な数だけ設置される体制を整えるため、必要な立法上その他の措置をとる。

第26条-暴力を目撃した子どもの保護および支援

1.締約国は、被害者に対する保護および支援のサービスの提供に際し、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力を目撃した子どもの権利およびニーズが正当に考慮されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.この条にしたがってとられる措置には、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力を目撃した子どもを対象とする年齢にふさわしい心理社会的カウンセリングを含み、かつ、措置に際しては子どもの最善の利益が正当に顧慮される。

第27条-通報

 締約国は、この条約の適用範囲にある暴力行為が行なわれるのを目撃し、またはそのような行為が行なわれる可能性があるもしくはさらなる暴力行為が予見されると考えるに足る合理的な理由を有するいかなる者に対しても、これを権限ある組織または公的機関に通報するよう奨励するため、必要な措置をとる。

第28条-専門家による通報

 締約国は、国内法によって一定の専門家に課されている守秘義務の規則により、当該専門家が、この条約の適用範囲にある重大な暴力行為が行なわれかつさらなる重大な暴力行為が予見されると考えるに足る合理的な理由を有する場合に、適当な条件のもと、権限ある組織または公的機関に通報する可能性が妨げられないことを確保するため、必要な措置をとる。

第5章-実体法

第29条-民事上の訴訟および救済措置

1.締約国は、加害者を相手どった十分な民事上の救済措置を被害者に提供するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、国際法の一般的原則にしたがい、その権限の範囲内にある必要な防止措置または保護措置をとる義務を怠った国の機関を相手どった十分な民事上の救済措置を被害者に提供するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第30条-賠償

1.締約国は、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪について被害者が加害者に対する賠償請求権を有することを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.身体的重傷を負いまたは健康を深刻に損なった者に対しては、当該損害が加害者、保険または国の資金による保健的もしくは社会的支給等の他の資金源によって保障されない限度で、十分な国家賠償が行なわれる。このことは、被害者の安全が正当に顧慮されるかぎりにおいて、締約国が、加害者によって支払われた賠償金からの償還請求を行なうことを妨げるものではない。
3.2にしたがってとられる措置においては、賠償が合理的期間内に行なわれることを確保する。

第31条-監護権、面会権および安全

1.締約国は、子どもの監護権および面会権に関する決定に際し、この条約の適用範囲にある暴力の発生が考慮されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、いかなる面会権または監護権の行使も被害者または子どもの権利および安全を危うくしないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第32条-強制婚の民事的効力

 締約国は、強制に基づく婚姻を、被害者に不当な金銭的または行政的負担を課すことなく無効にでき、取り消し、または解消できることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第33条-心理的暴力

 締約国は、威迫または脅迫を通じて人の心理的不可侵性を深刻に損なう故意の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第34条-ストーカー行為

 締約国は、他の者に向けられた脅迫的行為を繰り返し行ない、もってその者に自己の安全に関する恐怖を抱かせる故意の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第35条-身体的暴力

 締約国は、他の者に対して身体的暴力行為を故意に行なうことが犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第36条-性暴力(強姦を含む)

1.締約国は、故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
  • a. 同意に基づかず、他の者の身体に対し、いずれかの身体部位または物をもって膣、肛門または口への性的性質の挿入行為を行なうこと。
  • b. 人に対し、同意に基づかない他の性的性質の行為を行なうこと。
  • c. 他の者をして、同意に基づかない性的性質の行為を第三者と行なわせること。
2.同意は、自由意思の結果として、自発的に与えられなければならない。当該自由意思は、関連する状況の文脈において評価される。
3.締約国は、1の規定が、国内法で認められた従前のまたは現在の配偶者またはパートナーに対して行なわれた行為にも適用されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第37条-強制婚

1.締約国は、成人または子どもを強要して婚姻させる故意の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、成人または子どもを、強要して婚姻させる目的をもってその居住国以外の締約国または国の領域に連れ出す故意の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第38条-女性性器切除

 締約国は、故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
  • a. 女性の大陰唇、小陰唇または陰核の全体または一部を切除し、封鎖しまたはその他の損傷を加えること。
  • b. 女性を威迫しまたは誘導してaに掲げられたいずれかの行為を行なわせること。
  • c. 女子を扇動し、威迫しまたは誘導してaに掲げられたいずれかの行為を行なわせること。

第39条-強制的妊娠中絶および強制的不妊手術

 締約国は、故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
  • a. 事前のかつ十分な情報に基づく本人の同意を得ることなく、女性に対して妊娠中絶を行なうこと。
  • b. 女性の自然な生殖能力を喪失させる目的または効果を有する手術を、事前のかつ十分な情報に基づく本人の同意を得ることなくまたは本人が手続について理解しないまま行なうこと。

第40条-セクシュアル・ハラスメント

 締約国は、人の尊厳を侵害する目的または効果を有する、性的性質の望まれない言語的、非言語的または身体的行為(とくに当該行為が脅迫的な、敵対的な、品位を傷つける、屈辱的なまたは侮辱的な環境をつくり出すとき)が、その形態を問わず、刑事上の又はその他の法的制裁の対象とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第41条-幇助または教唆および未遂

1.締約国は、この条約の第33条、第34条、第35条、第36条、第37条、第38条aおよび第39条にしたがって定められた犯罪の遂行を幇助しまたは教唆することを、当該幇助または教唆が故意に行なわれたときは犯罪とするため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、この条約の第35条、第36条、第37条、第38条aおよび第39条にしたがって定められた犯罪の未遂が故意に行なわれたときはこれを犯罪とするため、必要な立法上その他の措置をとる。

第42条-犯罪(いわゆる「名誉」の名のもとに行なわれる犯罪を含む)の正当化の拒否

1.締約国は、この条約の適用範囲にあるいずれかの暴力行為の遂行後に開始された刑事手続において、文化、慣習、宗教、伝統またはいわゆる「名誉」が当該行為の正当化事由と見なされないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。これには、とくに、適切な行動に関する文化的、宗教的、社会的もしくは伝統的規範または慣習に被害者が違反した旨の主張が含まれる。
2.締約国は、いずれかの者が子どもに対して1に掲げられたいずれかの行為を行なうよう扇動したことにより、行なわれた行為に関する当該扇動者の刑事責任が軽減されないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第43条-罪名の適用

 この条約にしたがって定められた罪名は、被害者と加害者間の関係の性質に関わらず、適用される。

第44条-裁判権

1. 締約国は、次のいずれかの場合において、この条約にしたがって定められたいかなる犯罪についても裁判権を設定するため、必要な立法上その他の措置をとる。
  • a. 当該犯罪が自国の領域内で行なわれるとき。
  • b. 当該犯罪が自国を旗国とする船舶内で行なわれるとき。
  • c. 当該犯罪が自国の法令に基づいて登録された航空機内で行なわれるとき。
  • d. 当該犯罪が自国の国民のいずれかによって行なわれるとき。
  • e. 当該犯罪が自国の領域内に常居所を有する者によって行なわれるとき。
2.締約国は、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪が自国の国民のいずれかまたは自国の領域内に常居所を有する者に対して行なわれる場合に当該犯罪について裁判権を設定するため、必要な立法上その他の措置をとるよう努める。
3.この条約の第36条、第37条、第38条および第39条にしたがって定められた犯罪の訴追のため、締約国は、自国の裁判権が、当該行為がその遂行地において犯罪とされていなければならないという条件に服させられないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
4.この条約の第36条、第37条、第38条および第39条にしたがって定められた犯罪の訴追のため、締約国は、1dおよびeに関わる自国の裁判権が、被害者からの申告または犯罪実行地である国からの情報の提出がなければ訴追を開始することができないという条件に服させられないことを確保するために、必要な立法上その他の措置をとる。
5.締約国は、容疑者が自国の領域内に所在し、かつ容疑者の国籍のみを理由として他の締約国に当該容疑者の引渡しを行なわない場合においてこの条約にしたがって定められた犯罪についての裁判権を設定するため、必要な立法上その他の措置をとる。
6.この条約にしたがって定められた犯罪が行なわれたとされる場合において、二以上の締約国が当該犯罪についての裁判権を主張するときは、関係締約国は、適当な場合には、訴追のためにもっとも適した裁判管轄国を決定するため協議を行なう。
7.この条約は、国際法の一般規則を損なわないかぎりにおいて、締約国がその国内法にしたがって行使するいかなる刑事裁判権も排除するものではない。

第45条-制裁および措置

1.締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪が、その重大さを考慮に入れた効果的な、均衡のとれたかつ抑止効果のある制裁によって処罰されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。当該制裁には、適当なときは、犯罪人引渡しにつながる可能性もある、自由の剥奪をともなう刑を含む。
2.締約国は、加害者について次のようなその他の措置をとることができる。
  • 有罪判決を受けた者の監視または監督。
  • 子どもの最善の利益(被害者の安全を含むことがある)が他のいかなる方法によっても保障できないときは、親としての権利の喪失宣告。

第46条-加重事由

 締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪に関わる刑の決定において、次の事由を、当該事由がすでに犯罪の構成要件の一部となっている場合を除き、国内法の関連規定に一致する形で加重事由として考慮できることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
  • a. 当該犯罪が、家族構成員、被害者と同居している者または自己の権威を濫用した者によって、国内法で認められた従前のまたは現在の配偶者またはパートナーに対して行なわれたこと。
  • b. 当該犯罪または関連の犯罪が繰り返し行なわれたこと。
  • c. 当該犯罪が、特別な状況によって脆弱な立場に置かれた被害者に対して行なわれたこと。
  • d. 当該犯罪が子どものいる前で行なわれたこと。
  • e. 当該犯罪が、ともに行動する2名以上の者によって行なわれたこと。
  • f. 当該犯罪に先行しまたは並行して極度の水準の暴力が用いられたこと。
  • g. 当該犯罪が、武器を使用してまたは武器による威嚇をともなって行なわれたこと。
  • h. 当該犯罪の結果、被害者が重大な身体的または精神的危害を受けたこと。
  • i. 加害者が過去に同様の性質の犯罪を理由として有罪判決を受けていること。

第47条-他の締約国が言い渡した刑

 締約国は、刑の決定において、この条約にしたがって定められた犯罪に関わって他の締約国が言い渡した終局判決を考慮できるようにするため、必要な立法上その他の措置をとる。

第48条-義務的な代替的紛争解決手続または量刑の禁止

1.締約国は、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力との関連で義務的な代替的紛争解決手続(斡旋および調停を含む)を禁ずるため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、金銭的制裁が命じられる場合において被害者に対する金銭的義務を引き受ける加害者の能力が正当に考慮されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第6章-捜査、訴追、手続法および保護措置

第49条-一般的義務

1.締約国は、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力に関わる捜査および司法手続が、刑事手続のすべての段階において被害者の権利を考慮しつつ、不当な遅滞なく進められることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪の効果的捜査および訴追を確保するため、人権の基本的原則に一致する形で、かつ暴力に関するジェンダー化された理解を顧慮しながら、必要な立法上その他の措置をとる。

第50条-即時的対応、防止および保護

1.締約国は、法執行機関が、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力に対し、被害者に対して十分かつ即時的な保護を提供することによって迅速かつ適切に対応することを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、責任のある法執行機関が、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力の防止および当該暴力からの保護に迅速かつ適切に関与すること(防止のための運用上の措置を採用することおよび証拠を収集することも含む)を確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第51条-リスク評価およびリスク管理

1.締約国は、リスクを管理し、かつ必要なときは調整のとれた安全対策および支援を行なう目的で、死亡リスク、状況の深刻性および暴力が繰り返されるおそれに関する評価がすべての関連の公的機関によって実施されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、1の評価にあたり、捜査および保護措置の適用のすべての段階において、この条約の適用範囲にある暴力行為の加害者が火器を所持しておりまたは火器にアクセスできることが正当に考慮されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第52条-緊急の接近禁止命令

 締約国は、権限ある公的機関が、差し迫った危険が存する状況において、ドメスティック・バイオレンスの加害者に対して被害者または危険な状況にある者の住居から十分な期間退去することを命じ、かつ、当該加害者が被害者または危険な状況にある者の住居に立ち入ることまたはこれらの者に接触することを禁ずる権限を与えられることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。この条にしたがってとられる措置においては、被害者または危険な状況にある者の安全が優先される。

第53条-差止命令または保護命令

1.締約国は、この条約の適用範囲にあるあらゆる形態の暴力の被害者に対し、適当な差止命令または保護命令が利用可能とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、1の差止命令または保護命令が次のようなものであることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
  • 即時的保護の目的で、かつ被害者に不当な金銭的または行政的負担を課すことなく利用可能であること。
  • 定められた期間または修正されもしくは解除されるまで有効な命令として発令されること。
  • 必要なときは、一方の当事者の申立てのみに基づき、即時的効力を有するものとして発令されること。
  • 他の法的手続に関わりなく、または他の法的手続に加えて利用可能であること。
  • その後の法的手続で提出することが可能であること。
3.締約国は、1にしたがって発令された差止命令または保護命令の違反が、効果的な、均衡のとれたかつ抑止効果のある刑事上その他の法的制裁の対象とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第54条-捜査および証拠

 締約国は、民事上または刑事上のいかなる手続においても、被害者の性的過去および性的行為に関する証拠が、当該証拠が関連性および必要性を有していないかぎり認容されないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第55条-一方当事者手続および職権手続

1.締約国は、この条約の第35条、第36条、第37条、第38条および第39条にしたがって定められた犯罪の捜査または訴追について、当該犯罪の全部または一部が自国の領域内で行なわれたときは被害者による申告または告発が必須の要件とされないこと、および、たとえ被害者がその陳述を撤回しても手続の継続が可能であることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、国内法で定められた条件にしたがって、政府機関および非政府組織ならびにドメスティック・バイオレンス・カウンセラーが、この条約にしたがって定められた犯罪に関わる捜査および司法手続の間、被害者の要請により当該被害者を援助しかつ(または)支援できることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第56条-保護措置

1.締約国は、とくに次の対応をとることにより、捜査および司法手続のあらゆる段階で被害者の権利および利益(証人としての特別なニーズも含む)を保護するため、必要な立法上その他の措置をとる。
  • a. 脅迫、報復および被害の再発からの、被害者の安全ならびにその家族および被害者側証人の安全を確保できるようにすること。
  • b. 少なくとも被害者および家族が危険な状況に置かれる可能性がある事件において、当該被害者等に対し、加害者が逃亡したときまたは一時的にもしくは最終的に釈放されるときにその旨の情報が提供されることを確保すること。
  • c. 被害者に対し、国内法で定められた条件にしたがって、被害者の権利および被害者が利用可能なサービスについて、ならびに、被害者の申立てに対するフォローアップの状況、告訴の罪状、捜査または手続の一般的進展状況および当該捜査または手続における被害者の役割ならびに事件の結果について、情報を提供すること。
  • d. 被害者が、国内法の手続規則に一致する方法で、意見を聴かれ、証拠を提出し、かつ、その意見、ニーズおよび関心事が直接または仲介者を通じて表明および考慮されることを求められるようにすること。
  • e. 被害者の権利および利益が適正に提示および考慮されるようにするため、被害者に適切な支援サービスを提供すること。
  • f. 被害者のプライバシーおよび肖像を保護するための措置をとれることを確保すること。
  • g. 可能なときは、裁判所および法執行機関の施設内で被害者および加害者が接触しないことを確保すること。
  • h. 被害者が手続の当事者であるときまたは被害者が証拠を提出するときは、被害者に対して独立のかつ能力がある通訳者を提供すること。
  • i. 被害者が、国内法で定められた規則にしたがい、とくに、利用可能なときは適当な通信技術を活用して、自らが出廷することなく、または少なくとも容疑者が出廷していない状態で、証言できるようにすること。
2.女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスの被害者および目撃者である子どもは、適当なときは、子どもの最善の利益を考慮した特別な保護措置を提供される。

第57条-法律扶助

 締約国は、国内法で定められた条件に基づき、弁護士による援助および無償の法律扶助に対する被害者の権利を保障する。

第58条-時効

 締約国は、被害者が成年に達した後に有効に手続を開始することを可能にする目的で、この条約の第36条、第37条、第38条および第39条にしたがって定められた犯罪に関わるいずれかの法的手続の開始に関する時効が、十分な、かつ当該犯罪の重大さに相応する期間消滅しないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第7章-移住および庇護

第59条-在留資格

1.締約国は、被害者の在留資格が国内法で認められた配偶者またはパートナーの在留資格に依存している場合であって当該婚姻または関係が解消した際、当該被害者が、とくに困難な状況にある場合に、当該婚姻または関係の継続期間に関わらず申請によって独立の在留許可を付与されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。独立の在留許可の付与および期間に関する条件は、国内法でこれを定める。
2.締約国は、被害者の在留資格が国内法で認められた配偶者またはパートナーの在留資格に依存している場合であって当該在留資格に関わる国外追放手続が開始された際、当該被害者が、独立の在留許可を申請できるようにする目的で当該手続を停止させられることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
3.締約国は、次の2つの状況のいずれかまたは双方にある被害者に対し、更新可能な在留許可を与える。
  • a. 権限ある公的機関が、当該被害者の個人的状況を理由としてその滞在が必要であると考えるとき。
  • b. 権限ある公的機関が、当該被害者が捜査または刑事手続において権限ある公的機関と協力するためその滞在が必要であると考えるとき。
4.締約国は、婚姻のため他国に連れてこられた強制婚の被害者がその結果その常居所国における在留資格を喪失した場合に、当該被害者が資格を回復できることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

第60条-ジェンダーに基づく庇護申請

1.締約国は、女性に対して行なわれるジェンダーに基づく暴力を、難民の地位に関する1951年条約第1条A(2)にいう迫害の一形態としておよび補完的/副次的保護を生じさせる重大な危害の一形態として認めることができることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、〔難民〕条約に掲げられた事由のそれぞれについてジェンダーに配慮した解釈が行なわれ、かつ、これらの事由の一以上を理由として迫害の恐怖が生じていることが立証されたときは、適用可能な関連の文書にしたがって申請者に難民資格が与えられることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
3.締約国は、庇護希望者を対象とするジェンダーに配慮した受入れ手続および支援サービスならびにジェンダー指針およびジェンダーに配慮した庇護手続(難民認定および国際的保護申請を含む)を発展させるため、必要な立法上その他の措置をとる。

第61条-ノン・ルフールマン

1.締約国は、国際法上の既存の義務にしたがってノン・ルフールマンの原則を尊重するため、必要な立法上その他の措置をとる。
2.締約国は、その地位または在留場所に関わらず、女性に対する暴力の被害者であって保護を必要とする者が、いかなる状況においても、その生命が危険にさらされ、または当該被害者が拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰を受けるおそれのあるいかなる国に対しても送還されないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。



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