子どもの権利委員会:総括所見:日本(第4~5回)


CRC/C/JPN/CO/4-5
配布:一般
2019年3月5日
原文:英語
【日本語訳:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議】(PDF
(注:〔 〕およびリンクは訳者による補足である。また、原文では勧告部分が太字になっているが、ここではパラグラフ番号のみを太字とした)
※日本政府による仮訳(PDF)はこちらを参照。

子どもの権利委員会

日本の第4回・第5回統合定期報告書に関する総括所見
  • 委員会により、第80会期(2019年1月14日~2月1日)に採択。

I.はじめに


1.委員会は、2019年1月16日および17日に開かれた第2346回および第2347回会合(CRC/C/SR.2346 and 2347参照)において日本の第4回・第5回統合定期報告書(CRC/C/JPN/4-5)を検討し、2019年2月1日に開かれた第2370回会合においてこの総括所見を採択した。

2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第4回・第5回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/JPN/Q/4-5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成された締約国の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。

II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展


3.委員会は、締約国がさまざまな分野で達成した進展(女性および男性の双方について最低婚姻年齢を18歳と定めた2018年の民法改正、2017年の刑法改正、2016年の児童福祉法改正、および、児童ポルノの所持を犯罪化するに至った「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」の改正を含む)を歓迎する。委員会はまた、子供・若者育成支援推進大綱(2016年)、第4次「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」(2018年)および子供の貧困対策に関する大綱(2014年)など、前回の審査以降に子どもの権利に関連してとられた制度上および政策上の措置も歓迎する。

III.主要な懸念領域および勧告


4.委員会は、条約に掲げられたすべての権利の不可分性および相互依存性を締約国が想起するよう求めるとともに、この総括所見に掲げられたすべての勧告の重要性を強調する。委員会は、緊急の措置がとられなければならない以下の分野に関わる勧告に対し、締約国の注意を喚起したい。その分野とは、差別の禁止(パラ18)、子どもの意見の尊重(パラ22)、体罰(パラ26)、家庭環境を奪われた子ども(パラ29)、リプロダクティブヘルスおよび精神保健(パラ35)ならびに少年司法(パラ45)である。

5.委員会は、締約国が、持続可能な開発のための2030アジェンダの実施プロセス全体を通じ、条約、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書にしたがって子どもの権利の実現を確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、17の目標の達成を目的とする政策およびプログラムの立案および実施において、それが子どもに関わるかぎりにおいて子どもたちの意味のある参加を確保することも促すものである。

A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6))


留保
6.委員会は、前回の勧告(CRC/C/JPN/CO/3、パラ10)にのっとり、締約国が、条約の全面的適用の妨げとなっている第37条(c)への留保の撤回を検討するよう勧告する。

立法
7.さまざまな法律の改正に関して締約国から提供された情報には留意しながらも、委員会は、締約国が、子どもの権利に関する包括的な法律を採択し、かつ国内法を条約の原則および規定と完全に調和させるための措置をとるよう、強く勧告する。

包括的な政策および戦略
8.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野を包含し、かつ政府機関間の調整および相互補完性を確保する包括的な子ども保護政策を策定するとともに、十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられた、当該政策のための包括的な実施戦略も策定するよう、勧告する。

調整
9.委員会は、締約国が、部門横断的にならびに国、広域行政圏および地方のレベルで行なわれている条約の実施関連のすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限を有する適切な調整機関、ならびに、すべての子どもおよび条約のすべての分野を対象とする評価および監視のための機構を設置するべきである旨の、前回の勧告(前掲、パラ14)をあらためて繰り返す。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。

資源配分
10.子どもの相対的貧困率がこの数年高いままであることに鑑み、かつ子どもの権利実現のための公共予算編成についての一般的意見19号(2016年)を想起しながら、委員会は、締約国が、子どもの権利の視点を含み、子どもに対する明確な配分額を定め、かつ条約の実施のために割り当てられる資源配分の十分性、有効性および公平性の監視および評価を行なうための具体的指標および追跡システムを包含した予算策定手続を確立するよう、強く勧告する。そのための手段には以下のものが含まれる。
  • (a) 子どもに直接影響を与えるすべての支出の計画、確定、補正および実際の額について、詳細な予算科目および予算項目を定めること。
  • (b) 子どもの権利に関連する支出の報告、追跡および分析を可能にする予算分類システムを活用すること。
  • (c) サービス提供のための予算配分額の変動または削減によって、子どもの権利の享受に関する現在の水準が低下しないことを確保すること。
  • (d) 子供・若者育成支援推進大綱の実施のために十分な資源を配分すること。

データ収集
11.締約国によるデータ収集の取り組みには留意しながらも、委員会はまた、いまなお欠落が存在することに留意する。条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起しながら、委員会は、締約国が、条約のすべての分野(とくに子どもの貧困、子どもに対する暴力ならびに乳幼児期のケアおよび発達の分野)で、データが年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景別に細分化されたデータ収集システムを改善するとともに、当該データを政策立案およびプログラム策定のために活用するよう、勧告する。

独立の監視
12.地方レベルで33の子どものためのオンブズパーソンが設置されていることには留意しながらも、これらの機関は財政面および人事面の独立性ならびに救済機構を欠いているとされる。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応することのできる、子どもの権利を監視するための具体的機構を含んだ、人権を監視するための独立した機構を迅速に設置するための措置。
  • (b) 人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)の全面的遵守が確保されるよう、資金、任務および免責との関連も含めてこのような監視機関の独立を確保するための措置。

普及、意識啓発および研修
13.意識啓発プログラムおよび子どもの権利キャンペーンを実施するために締約国が行なっている努力を認識しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに子どもおよび親の間で、しかし立法手続および司法手続における条約の適用を確保する目的で立法府議員および裁判官も対象として、条約に関する情報の普及を拡大すること。
  • (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(教員、裁判官、弁護士、家庭裁判所調査官、ソーシャルワーカー、法執行官、メディア従事者、公務員およびあらゆるレベルの政府職員を含む)を対象として、条約およびその議定書に関する具体的な研修セッションを定期的に実施すること。

市民社会との協力
14.締約国報告書の作成過程における市民社会との会合および意見交換は歓迎しながらも、委員会は、締約国が、市民社会との協力を強化し、かつ条約実施のあらゆる段階で市民社会組織の関与を組織的に得るよう勧告する。

子どもの権利とビジネスセクター
15.ビジネスセクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)および2011年に人権理事会が賛同した「ビジネスと人権に関する原則」を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ビジネスと人権に関する国別行動計画を策定するにあたり、子どもの権利が統合され、かつ、企業に対し、定期的な子どもの権利影響評価および協議を実施すること、ならびに、自社の事業活動が及ぼす環境面の影響、健康関連の影響および人権面の影響ならびにこれらの影響に対処するための計画を全面的かつ公的に開示することが要求されることを確保すること。
  • (b) 子どもの権利に関連する国際基準(労働および環境に関するものを含む)の遵守についてビジネスセクターに説明責任を果たさせるための規則を採択しかつ実施すること。
  • (c) 旅行および観光の文脈における子どもの性的搾取の防止について、観光業界、メディア企業および広告企業、エンターテインメント業界ならびに公衆一般と連携して意識啓発キャンペーンを実施すること。
  • (d) 旅行代理店および観光業界の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。

B.子どもの定義(第1条)


16.女性および男性の双方について最低婚姻年齢を18歳と定めた民法改正には留意しながらも、委員会は、2022年にならなければ同改正が施行されないことを遺憾に思い、締約国が、それまでの間、条約に基づく締約国の義務にのっとって児童婚を完全に解消するために必要な移行措置をとるよう勧告する。

C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)


差別の禁止
17.委員会は、非婚の両親から生まれた子どもに同一の相続分を認めた「民法の一部を改正する法律」の修正〔原文ママ〕(2013年)、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律の採択(2016年)、および、対話の際に挙げられた意識啓発活動に留意する。委員会はまた、強姦罪の構成要件を見直し、男子にも保護を与えた刑法の修正(2017年)も歓迎するものである。しかしながら、委員会は以下のことを依然として懸念する。
  • (a) 包括的な反差別法が存在しないこと。
  • (b) 非婚の両親から生まれた子どもの非嫡出性に関する戸籍法の差別的規定(とくに出生届に関するもの)が部分的に維持されていること。
  • (c) 周縁化されたさまざまな集団の子どもに対する社会的差別が根強く残っていること。
18.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 包括的な反差別法を制定すること。
  • (b) 非婚の両親から生まれた子どもの地位に関連する規定を含め、理由の如何を問わず子どもを差別しているすべての規定を廃止すること。
  • (c) とくに民族的マイノリティ(アイヌ民族を含む)、被差別部落出身者の子ども、日本人以外の出自の子ども(コリアンなど)、移住労働者の子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども、婚外子ならびに障害のある子どもに対して現実に行なわれている差別を減少させかつ防止するための措置(意識啓発プログラム、キャンペーンおよび人権教育を含む)を強化すること。

子どもの最善の利益
19.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、とくに教育、代替的養護、家族紛争および少年司法において適切に統合されかつ一貫して解釈されているわけではなく、かつ、司法機関、行政機関および立法機関が、子どもに関連するすべての決定において子どもの最善の利益を考慮しているわけではないことに留意する。自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国が、子どもに関連するすべての法律および政策の影響評価を事前および事後に実施するための義務的手続を確立するよう勧告するものである。委員会はまた、子どもに関わる個別の事案で、子どもの最善の利益評価が、多職種チームによって、子ども本人の義務的参加を得て必ず行なわれるべきであることも勧告する。

生命、生存および発達に対する権利
20.委員会は、前回の勧告(CRC/C/JPN/CO/3、パラ42)を想起し、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもが、社会の競争的性質によって子ども時代および発達を害されることなく子ども時代を享受できることを確保するための措置をとること。
  • (b) 子どもの自殺の根本的原因に関する調査研究を行ない、防止措置を実施し、かつ、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置すること。
  • (c) 子ども施設が適切な最低安全基準を遵守することを確保するとともに、子どもに関わる不慮の死亡または重傷の事案が自動的に、独立した立場から、かつ公的に検証される制度を導入すること。
  • (d) 交通事故、学校事故および家庭内の事故を防止するための的を絞った措置を強化するとともに、道路の安全、安全および応急手当の提供ならびに小児緊急ケアの拡大を確保するための措置を含む適切な対応を確保すること。

子どもの意見の尊重
21.2016年の児童福祉法改正規定が子どもの意見の尊重に言及していること、および、家事事件手続法が諸手続における子どもの参加に関わる規定を統合していることには留意しながらも、委員会は、自己に関わるあらゆる事柄について自由に意見を表明する子どもの権利が尊重されていないことを依然として深刻に懸念する。
22.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)を想起しながら、委員会は、締約国に対し、子どもの脅迫および処罰を防止するための保護措置をとりつつ、意見を形成することのできるいかなる子どもに対しても、年齢制限を設けることなく、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する権利を保障し、かつ、子どもの意見が正当に重視されることを確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、意見を聴かれる権利を子どもが行使できるようにする環境を提供するとともに、家庭、学校、代替的養護および保健医療の現場、子どもに関わる司法手続および行政手続ならびに地域コミュニティにおいて、かつ環境問題を含むあらゆる関連の問題に関して、すべての子どもが意味のある形でかつエンパワーされながら参加することを積極的に促進するよう、勧告するものである。

D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条)


出生登録および国籍
23.持続可能な開発目標のターゲット16.9に留意しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 両親の国籍を取得できない子どもに対しても出生時に自動的に国籍を付与する目的で国籍法第2条(3)の適用範囲を拡大することを検討するとともに、締約国に暮らしているすべての子ども(非正規移住者の子どもを含む)が適正に登録され、かつ法律上の無国籍から保護されることを確保する目的で国籍および市民権に関わるその他の法律を見直すこと。
  • (b) 登録されていないすべての子ども(庇護希望者である子どもなど)が教育、保健サービスその他の社会サービスを受けられることを確保するために必要な積極的措置をとること。
  • (c) 無国籍の子どもを適正に特定しかつ保護するための無国籍認定手続を定めること。
  • (d) 無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約の批准を検討すること。

E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条)


虐待、ネグレクトおよび性的搾取
24.委員会は、性的虐待の被害者のためのワンストップセンターが各都道府県に設置されたこと、および、自己の監護下にある18歳未満の者と性交しまたはこのような者をわいせつ行為の対象とした者に関わる罪名を新設する目的で刑法第179条が改正された〔原文ママ〕ことを歓迎する。しかしながら委員会は、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)を想起し、かつ持続可能な開発目標のターゲット16.2に留意しながら、子どもの暴力、性的な虐待および搾取が高い水準で発生していることを懸念し、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組み、かつ以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 虐待(学校におけるものも含む)および性的搾取の被害を受けた子どもを対象とし、被害を受けた子どもの特有のニーズに関する訓練を受けたスタッフによって支えられる、通報、苦情申立ておよび付託のための子どもにやさしい機構の設置を速やかに進めること。
  • (b) このような事件を捜査し、かつ加害者を裁判にかけるための努力を強化すること。
  • (c) 性的な搾取および虐待の被害を受けた子どもにスティグマが付与されることと闘うための意識啓発活動を実施すること。
  • (d) 子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための包括的な戦略ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のための政策を策定する目的で、子どもたちの関与を得て教育プログラムを強化すること。

体罰
25.委員会は、学校における体罰が法律で禁じられていることに留意する。しかしながら、委員会は以下のことを深刻に懸念するものである。
  • (a) 学校における禁止が効果的に実施されていないこと。
  • (b) 家庭および代替的養育の現場における体罰が法律で全面的に禁じられていないこと。
  • (c) とくに民法および児童虐待防止法が適切な懲戒の使用を認めており、かつ体罰の許容性について明確でないこと。
26.委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)に留意しながら、委員会の前回の総括的勧告(CRC/C/JPN/CO/3、パラ48)を想起するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 家庭、代替的養護および保育の現場ならびに刑事施設を含むあらゆる場面におけるあらゆる体罰を、いかに軽いものであっても、法律(とくに児童虐待防止法および民法)において明示的かつ全面的に禁止すること。
  • (b) 意識啓発キャンペーンを強化し、かつ積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律を推進する等の手段により、あらゆる現場で実際に体罰を解消するための措置を強化すること。

F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条ならびに第27条(4))


家庭環境
27.委員会は、締約国が、以下のことを目的として、十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられたあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 仕事と家庭生活との適切なバランスを促進すること等の手段によって家族の支援および強化を図るとともに、とくに子どもの遺棄および施設措置を防止する目的で、困窮している家族に対して十分な社会的援助、心理社会的支援および指導を提供すること。
  • (b) 子どもの最善の利益に合致する場合には(外国籍の親も含めて)子どもの共同親権を認める目的で、離婚後の親子関係について定めた法律を改正するとともに、非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できることを確保すること。
  • (c) 家事紛争(たとえば子どもの扶養料に関するもの)における裁判所の命令の法執行を強化すること。
  • (d) 子およびその他の親族の扶養料の国際的回収に関するハーグ条約、扶養義務の準拠法に関するハーグ議定書、および、親責任および子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約の批准を検討すること。

家庭環境を奪われた子ども
28.委員会は、家庭を基盤とする養育の原則を導入した2016年の児童福祉法改正、および、6歳未満の子どもは施設に措置されるべきではないとする「新しい社会的養育ビジョン」(2017年)の承認に留意する。しかしながら、委員会は以下のことを深刻に懸念するものである。
  • (a) 家族から分離される子どもが多数にのぼるとの報告があること、および、子どもは裁判所の命令なくして家族から分離される可能性があり、かつ最高2か月、児童相談所に措置されうること。
  • (b) いまなお多数の子どもが、水準が不十分であり、子どもの虐待の事件が報告されており、かつ外部者による監視および評価の機構も設けられていない施設に措置されていること。
  • (c) 児童相談所がより多くの子どもを受け入れることに対する強力な金銭的インセンティブが存在すると主張されていること。
  • (d) 里親が包括的支援、十分な研修および監視を受けていないこと。
  • (e) 施設に措置された子どもが、生物学的親との接触を維持する権利を剥奪されていること。
  • (f) 児童相談所に対し、生物学的親が子どもの分離に反対する場合または子どもの措置に関する生物学的親の決定が子どもの最善の利益に反する場合には家庭裁判所に申立てを行なうべきである旨の明確な指示が与えられていないこと。
29.子どもの代替的養護に関する指針に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもを家族から分離するべきか否かの決定に関して義務的司法審査を導入し、子どもの分離に関する明確な基準を定め、かつ、親からの子どもの分離が、最後の手段としてのみ、それが子どもの保護のために必要でありかつ子どもの最善の利益に合致する場合に、子どもおよびその親の意見を聴取した後に行なわれることを確保すること。
  • (b) 明確なスケジュールに沿った「新しい社会的養育ビジョン」の迅速かつ効果的な執行、6歳未満の子どもを手始めとする子どもの速やかな脱施設化およびフォスタリング機関の設置を確保すること。
  • (c) 児童相談所における子どもの一時保護の実務慣行を廃止すること。
  • (d) 代替的養護の現場における子どもの虐待を防止し、これらの虐待について捜査を行ない、かつ虐待を行なった者を訴追すること、里親養育および施設的環境(児童相談所など)への子どもの措置が独立した外部者により定期的に再審査されることを確保すること、ならびに、子どもの不当な取扱いの通報、監視および是正のためのアクセスしやすく安全な回路を用意する等の手段により、これらの環境におけるケアの質を監視すること。
  • (e) 財源を施設から家族的環境(里親家族など)に振り向け直すとともに、すべての里親が包括的な支援、十分な研修および監視を受けることを確保しながら、脱施設化を実行に移す自治体の能力を強化し、かつ同時に家庭を基盤とする養育体制を強化すること。
  • (f) 子どもの措置に関する生物学的親の決定が子どもの最善の利益に反する場合には家庭裁判所に申立てを行なうよう児童相談所に明確な指示を与える目的で、里親委託ガイドラインを改正すること。

養子縁組
30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) すべての養子縁組(養子となる子どもまたは保護者の直系親族によるものを含む)が裁判所による許可の対象とされ、かつ子どもの最善の利益にしたがって行なわれることを確保すること。
  • (b) 養子とされたすべての子どもの登録情報を維持し、かつ国際養子縁組に関する中央当局を設置すること。
  • (c) 国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討すること。

不法な移送および不返還
31.委員会は、締約国が、子どもの不法な移送および不返還を防止しかつこれと闘い、国内法を国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約と調和させ、かつ、子どもの返還および面会交流権に関する司法決定の適正かつ迅速な実施を確保するために、あらゆる必要な努力を行なうよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、関連諸国、とくに締約国が監護または面会権に関する協定を締結している国々との対話および協議を強化するよう、勧告するものである。

G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条)


障害のある子ども
32.委員会は、合理的配慮の概念を導入した2011年の障害者基本法改正および障害者差別解消法の採択(2013年)を歓迎する。障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、前回の勧告(CRC/C/JPN/CO/3、パラ59)を想起するとともに、締約国が、障害について人権を基盤とするアプローチをとり、障害のある子どものインクルージョンのための包括的戦略を確立し、かつ以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 障害のある子どもに関するデータを恒常的に収集し、かつ効率的な障害診断システムを発展させること(このことは、障害のある子どものための適切な政策およびプログラムを整備するために必要である)。
  • (b) 統合された学級におけるインクルーシブ教育を発展させかつ実施すること、ならびに、専門教員および専門家を養成し、かつ学習障害のある子どもに個別支援およびあらゆる適正な配慮を提供する統合された学級に配置すること。
  • (c) 学童保育サービスの施設および人員に関する基準を厳格に適用し、かつその実施を監視するとともに、これらのサービスがインクルーシブであることを確保すること。
  • (d) 障害のある子どもが保健ケア(早期発見介入プログラムを含む)にアクセスできることを確保するための即時的措置をとること。
  • (e) 障害のある子どもとともに働く専門スタッフ(教員、ソーシャルワーカーならびに保健、医療、治療およびケアに従事する人材など)を養成しかつ増員すること。
  • (f) 障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘い、かつこのような子どもの積極的イメージを促進する目的で、政府職員、公衆および家族を対象とする意識啓発キャンペーンを実施すること。

健康および保健サービス
33.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)および持続可能な開発目標のターゲット2.2を想起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 高い低体重出生率の根本的原因を分析するとともに、「健やか親子21(第2次」キャンペーン等を通じ、乳児の出生体重ならびに乳児、子どもおよび母親の栄養状態を効果的に向上させるためのエビデンスに基づいた措置を導入すること。
  • (b) 柔軟な勤務形態および産後休暇期間の延長を奨励する等の手段によって少なくとも産後6か月間の完全母乳育児を促進し、母性保護に関する国際労働機関条約(2000年、第183号)の批准を検討し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施し、病院、診療所およびコミュニティにおける相談体制を通じて母親に適切な支援を提供し、かつ全国で「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブを実施することを目的とする包括的キャンペーンを実施するため、あらゆる必要な措置をとること。

リプロダクティブヘルスおよび精神保健
34.委員会は以下のことを深刻に懸念する。
  • (a) 思春期の子どもの間でHIV/AIDSその他の性感染症の感染率が高まっており、かつ、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスならびに家族計画についての学校におけるサービスおよび教育が限られていること。
  • (b) 10代女子の妊娠中絶率が高く、かつ刑法で堕胎が違法とされていること。
  • (c) 思春期の子どもの精神保健に対する関心が不十分であること、精神保健上の問題に対する社会の態度が否定的であること、および、児童心理学者その他の専門的人材が不足していること。
  • (d) 子どもが注意欠陥・多動性障害をともなう行動上の問題を有している旨の診断および精神刺激薬によるその治療が増加している一方で、社会的決定要因および非医学的形態の処遇が等閑視されていること。
35.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)および思春期における子どもの権利の実施についての一般的意見20号(2016年)を参照し、かつ持続可能な開発目標のターゲット5.6に留意しながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 思春期の子どものセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する包括的政策を採択するとともに、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育が、早期妊娠および性感染症の防止にとくに注意を払いながら、学校の必須カリキュラムの一部として一貫して実施され、かつ思春期の女子および男子がその明確な対象とされることを確保すること。
  • (b) 良質な、年齢にふさわしいHIV/AIDS関連サービスおよび学校における教育へのアクセスを向上させ、妊娠しているHIV陽性の女子を対象とする抗レトロウィルス治療および予防治療へのアクセスおよびその受療率を向上させ、かつ、エイズ治療・研究開発センターおよび14か所に設置されたそのブロック拠点病院に十分な支援を提供すること。
  • (c) あらゆる状況における中絶の非犯罪化を検討するとともに、思春期の女子を対象とする、安全な中絶および中絶後のケアのためのサービスへのアクセスを高めること。
  • (d) 根本的原因の分析、意識啓発および専門家の増員を含む学際的アプローチを通じ、子どもおよび思春期の青少年の情緒的および心理的ウェルビーイングへの対処を進めること。
  • (e) 注意欠陥・多動性障害を有する子どもの診断が徹底的に吟味されること、薬物の処方が最後の手段として、かつ個別アセスメントを経た後に初めて行なわれること、および、子どもおよびその親に対して薬物の副作用の可能性および非医療的な代替的手段について適正な情報提供が行なわれることを確保するとともに、注意欠陥・多動性障害の診断および精神刺激薬の処方が増加している根本的原因についての研究を実施すること。

環境保健
36.委員会は、子ども被災者支援法、 福島県民健康管理基金および「被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業」の存在に留意する。しかしながら委員会は、持続可能な開発目標のターゲット3.9を想起しつつ、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 避難対象区域における放射線への曝露〔の基準〕が、子どもにとってのリスク要因に関する国際的に受け入れられた知見と合致することを再確認すること。
  • (b) 帰還先に指定されていない地域出身の避難者(とくに子ども)に対し、金銭的支援、住居支援、医療支援その他の支援を引き続き提供すること。
  • (c) 放射線の影響を受けている福島県在住の子どもへの、医療サービスその他のサービスの提供を強化すること。
  • (d) 放射線量が年間1mSvを超える地域の子どもを対象として、包括的かつ長期的な健康診断を実施すること。
  • (e) すべての避難者および住民(とくに子どものような脆弱な立場に置かれた集団)が精神保健に関わる施設、物資およびサービスを利用できることを確保すること。
  • (f) 教科書および教材において、放射線への曝露のリスクについておよび子どもは放射線への曝露に対していっそう脆弱であることについての正確な情報を提供すること。
  • (g) 到達可能な最高水準の身体的および精神的健康を享受するすべての人の権利に関する特別報告者が行なった勧告(A/HRC/23/41/Add.3参照)を実施すること。

気候変動が子どもの権利に及ぼす影響
37.委員会は、持続可能な開発目標の目標13およびそのターゲットに対する注意を喚起する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 気候変動および災害リスク管理の問題を扱う政策またはプログラムの策定にあたり、子どもの特別な脆弱性およびニーズならびに子どもたちの意見が考慮されることを確保すること。
  • (b) 気候変動および自然災害に関する子どもの意識および備えを、学校カリキュラムおよび教員養成・研修プログラムにこの問題を編入することによって高めること。
  • (c) 国際的、地域的および国内的な政策、枠組みおよび協定をしかるべく策定する目的で、さまざまな災害の発生に対して子どもが直面するリスクの諸態様の特定につながる細分化されたデータを収集すること。
  • (d) 子どもの権利、とくに健康、食料および十分な生活水準に対する権利の享受を脅かすレベルの気候変動を回避するための国際的誓約にのっとって温室ガスの放出量を削減すること等により、気候〔変動〕緩和政策が条約と両立することを確保すること。
  • (e) 他国の石炭火力発電所に対する締約国の資金拠出を再検討するとともに、これらの発電所が持続可能なエネルギーを用いた発電所によって徐々にとって代わられることを確保すること。
  • (f) これらの勧告の実施にあたり、二国間協力、多国間協力、地域的協力および国際協力を求めること。

生活水準
38.社会的移転および児童扶養手当のようなさまざまな措置には留意しながらも、委員会は、持続可能な開発目標のターゲット1.3に対する注意を喚起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家族給付および子ども手当の制度を強化する等の手段により、親に対して適切な社会的援助を与えるための努力を強化すること。
  • (b) 子どもの貧困および社会的排除を低減させるための戦略および措置を強化する目的で、家族および子どもとの的を絞った協議を実施すること。
  • (c) 子供の貧困対策に関する大綱(2014年)を実施するために必要なあらゆる措置をとること。

H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条)


教育(職業訓練および職業指導を含む)
39.持続可能な開発目標のターゲット4.a、とくにいじめを経験する生徒の割合に関する指標4.a.2に留意しつつ、委員会は、前回の勧告(CRC/C/JPN/CO/3、パラ71、75および76)を想起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) いじめ防止対策推進法に基づく効果的ないじめ対策、ならびに、学校におけるいじめを防止するための反いじめプログラムおよびキャンペーンを実施すること。
  • (b) ストレスの多い学校環境(過度に競争的なシステムを含む)から子どもを解放するための措置を強化すること。
  • (c) 「〔高校〕授業料無償化制度」の朝鮮学校への適用を促進するために基準を見直すとともに、大学・短期大学入試へのアクセスに関して差別が行なわれないことを確保すること。

乳幼児期の発達
40.委員会は、保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会の設置(2018年)および「子育て安心プラン」(2017年)を歓迎する。持続可能な開発目標のターゲット4.2に留意しつつ、委員会は、前回の勧告(パラ71、73、75および76)を想起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 3~5歳の子どもを対象とする幼稚園、保育所および認定こども園の無償化計画を効果的に実施すること。
  • (b) 質の向上を図りつつ、2020年末までに不足を減らし、かつ新たな受入れの余地を設けて、大都市部における保育施設受入れ可能人数を拡大するための努力を継続すること。
  • (c) 保育を、負担可能で、アクセスしやすく、かつ保育施設の設備および運営に関する最低基準に合致したものにすること。
  • (d) 保育の質を確保しかつ向上させるための具体的措置をとること。
  • (e) 前掲(a)~(d)に掲げられた措置のために十分な予算を配分すること。

休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動
41.休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、十分かつ持続可能な資源をともなった遊び・余暇政策の採択および実施を図り、かつ余暇および自由な遊びのために十分な時間を配分する等の手段により、休息および余暇に対する子どもの権利ならびに子どもの年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に従事する子どもの権利を保障するための努力を強化するよう、勧告する。

I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条)


子どもの庇護希望者、移住者および難民
42.国際移住の文脈にある子どもの人権についての合同一般的意見――すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号および4号(2017年)/子どもの権利委員会の一般的意見22号および23号(2017年)を想起しつつ、委員会は、前回の総括所見(CRC/C/JPN/CO/3、パラ78)を想起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに関連するすべての決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮され、かつノンルフールマンの原則が維持されることを確保すること。
  • (b) 庇護希望者である親が収容されて子どもから分離されることを防止するための法的枠組みを確立すること。
  • (c) 庇護希望者または移住者であって保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもの収容を防止し、このようなすべての子どもが入管収容施設から直ちに放免されることを確保し、かつこれらの子どもに居住場所、適切なケアおよび教育へのアクセスを提供するために、公式な機構の設置等も通じた即時的措置をとること。
  • (d) 庇護希望者および難民(とくに子ども)に対するヘイトスピーチに対抗するためのキャンペーンを発展させること。

売買、取引および誘拐
43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの人身取引の加害者を裁判にかけるための努力を増強するとともに、子どもの人身取引の犯罪に対する処罰を強化し、かつこのような犯罪について罰金をもって刑に代えることを認めないこと。
  • (b) 人身取引の被害を受けた子どもが適正に特定され、かつサービスに付託されることを確保するため、被害者スクリーニングを増強すること。
  • (c) 人身取引の被害を受けた子どもに対する専門的ケアおよび援助(居住場所ならびに身体的および心理的回復およびリハビリテーションのための子どもにやさしい包括的な援助を含む)のための資源を増加させること。

少年司法の運営
44.委員会は、再犯防止推進計画(2017年)に留意する。しかしながら、委員会は以下のことを深刻に懸念するものである。
  • (a) 「刑事処罰に関する最低年齢」が16歳から14歳に引き下げられたこと。
  • (b) 弁護人選任権が組織的に実施されていないこと。
  • (c) 重罪を犯した16歳の子どもが成人刑事裁判所に送致されうること。
  • (d) 14~16歳の子どもが矯正施設に拘禁されうること。
  • (e) 「罪を犯すおそれがある」とされた子どもが自由を剥奪される場合があること。
  • (f) 子どもが終身刑〔無期刑〕を科されており、かつ、仮釈放までに必要な最低期間よりも相当長く拘禁されるのが一般的であること。
45.委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約その他の関連基準に全面的にのっとったものとするよう促す。とくに委員会は、前回の総括所見(CRC/C/JPN/CO/3、パラ85)を想起し、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 子どもの犯罪の根本的原因を研究し、かつ防止措置を緊急に実施すること。
  • (b) 「刑事処罰に関する最低年齢」をふたたび16歳とすることの再検討の参考とするため、2000年以降の子どもの犯罪の傾向を研究すること。
  • (c) 法律に抵触した子どもに対し、手続の早い段階で、かつ法的手続全体を通じて、有資格者による独立の立場からの法的援助が提供されることを確保すること。
  • (d) いかなる子どもも成人刑事裁判所による審理の対象とされないことを確保するとともに、刑法上の罪に問われた子どもの事件における非司法的措置(ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕活動など)の利用を増やし、かつ可能な場合には常に拘禁をともなわない刑を用いること。
  • (e) 審判前および審判後の自由の剥奪が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられ、かつ、当該自由の剥奪がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保するとともに、とくに以下の措置をとること。
    • (i) 子どもが「罪を犯すおそれがある」旨の認定について再検討し、かつこのような子どもの拘禁を終了させること。
    • (ii) 子どもが行なった犯罪について終身刑〔無期刑〕および不定期刑を用いることを再検討し、かつ、拘禁がもっとも短い適切な期間で用いられることを確保するために特別な仮釈放制度を適用すること。

子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の実施についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ
46.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国報告書についての2010年の委員会の勧告(CRC/C/OPSC/JPN/CO/1)を実施するために締約国が行なった努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) あからさまな性的活動に従事する子ども(または主として子どもとして描かれている者)の画像および表現または性的目的で子どもの性的部位を描いたあらゆる表現の製造、流通、配布、提供、販売、これらの表現へのアクセス、その閲覧および所持を犯罪化すること。
  • (b) 「女子高生サービス」〔JKビジネス〕および児童エロチカなど、児童買春および子どもの性的搾取を促進しまたはこれにつながる商業的活動を禁止すること。
  • (c) 加害者の責任および被害を受けた子どもの救済を確保するため、オンラインおよびオフラインにおける子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連する犯罪を捜査し、訴追しかつ処罰するための努力を増進すること。
  • (d) 性的な虐待および搾取の被害を受けた子どもに焦点を当てた質の高い統合的なケアおよび援助を提供するため、ワンストップ・クライシスセンターへの資金拠出および支援を引き続き増進すること。
  • (e) 生徒、親、教員およびケアに従事する者を対象とした、新たな技術に関連するリスクおよび安全なインターネットの利用に関する意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を強化すること。
  • (f) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者が行なった勧告(A/HRC/31/58/Add.1、パラ74)を実施すること。

武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の実施についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ
47.武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国報告書についての2010年の委員会の勧告(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1参照)を実施するために締約国が行なった努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、締約国が、日本の自衛隊を対象とする選択議定書の規定に関する研修を、とくに自衛隊が国連平和維持活動に参加する際に、引き続き強化するための具体的措置をとるよう勧告する。

J.通報手続に関する選択議定書の批准


48.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。

K.国際人権文書の批准


49.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、締約国がまだ加盟していない以下の中核的人権文書の批准を検討するよう勧告する。
  • (a) 市民的および政治的権利に関する国際規約の第1選択議定書。
  • (b) 死刑の廃止を目指す、市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書。
  • (c) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書。
  • (d) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書。
  • (e) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書。
  • (f) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約。
  • (g) 障害のある人の権利に関する条約の選択議定書。

L.地域機関との協力


50.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。

IV.実施および報告

A.フォローアップおよび普及


51.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第4回・第5回統合定期報告書、事前質問事項に対する文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。

B.報告およびフォローアップのための国内機構


52.委員会は、締約国が、国際的および地域的人権機構への報告書の調整および作成ならびにこれらの機構への関与、ならびに、条約上の義務ならびにこれらの機構から出された勧告および決定の国内におけるフォローアップおよび実施の調整および追跡を任務とする常設の政府機関として、報告およびフォローアップのための国内機構を設置するよう、勧告する。委員会は、このような機関は専任のスタッフによる十分かつ継続的な支援を受けるべきであり、かつ市民社会と組織的に協議する能力を持つべきであることを強調するものである。

C.次回報告書


53.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2024年11月21日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。

54.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2019年2月8日)。/パラ27(b)の shared custody を「共同監護権」から「共同親権」に修正(2月18日)。/3月5日付で公表された正式な国連文書(先行未編集版に編集を加えたもの)を踏まえて日本語訳を修正し、子どもの権利条約NGOレポート連絡会議訳として公開(3月9日)。※3月13日追記:主な実質的修正箇所は次のとおり(訳語の修正とあるものは原文にとくに変更がなかった箇所)。
    • パラ8:「当該政策に基づいて、その適用のために必要な諸要素を掲げ、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられた戦略を策定する」→「十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられた、当該政策のための包括的な実施戦略も策定する」
    • パラ15(c):「観光業界、メディア企業および広告企業、エンターテインメント業界ならびに公衆一般を対象とする」→「観光業界、メディア企業および広告企業、エンターテインメント業界ならびに公衆一般と連携して」
    • パラ24:「刑法が改正されたこと(18歳未満の者の監護者による性交およびわいせつ行為に関わる犯罪を新設した第179条)」→「自己の監護下にある18歳未満の者と性交しまたはこのような者をわいせつ行為の対象とした者に関わる罪名を新設する目的で刑法第179条が改正された〔原文ママ〕こと」
    • パラ27(a):「困窮している家族に対して十分な社会的援助、心理社会的支援および指導を提供し、かつ子どもの遺棄および施設措置を防止すること」→「とくに子どもの遺棄および施設措置を防止する目的で、困窮している家族に対して十分な社会的援助、心理社会的支援および指導を提供すること」
    • パラ30(a):「直系卑属」→「直系親族」(訳語の修正)
    • パラ32(b):「学習障害のある子どもに個別支援およびあらゆる適正な配慮を提供する専門教員および専門家を養成し、かつ統合された学級に配置すること」→「専門教員および専門家を養成し、かつ学習障害のある子どもに個別支援およびあらゆる適正な配慮を提供する統合された学級に配置すること」
    • パラ33(a):「新生児」→「乳児」(訳語の修正)
    • パラ36(b): 「避難指示区域以外の地域出身の避難者」(evacuees ... from the non-designated areas)→「帰還先に指定されていない地域出身の避難者」(evacuees ,,, from areas not designated for return)
    • パラ39:「いじめを経験する生徒の割合に関する4.a.2」→「いじめを経験する生徒の割合に関する指標4.a.2」(この箇所のみ3月13日に修正)
    • パラ44(f):「終身刑」→ 「終身刑〔無期刑〕」(訳語の修正)
    • パラ45(e)(ii):「終身刑」→ 「終身刑〔無期刑〕」/「無期刑」→「不定期刑」(訳語の修正)
    • パラ45がパラ44(f)とされ、それ以降パラグラフ番号の繰上げが行なわれたことに対応(全体のパラグラフ数は55から54へ)
  • パラ29(c)の「慣行」(practice)を「実務慣行」に修正(6月3日)。
  • 日本政府による仮訳へのリンクを追加(6月28日)。
最終更新:2019年06月28日 13:25