総括所見:フランス(第5回・2016年)


CRC/C/FRA/CO/5(2016年2月23日)/第71会期
原文:英語(平野裕二仮訳)

I.序

1.委員会は、2016年1月13日および14日に開かれた第2063回および第2065回会合(CRC/C/SR.2063 and 2065参照)においてフランスの第5回定期報告書(CRC/C/FRA/5)を検討し、2016年1月19日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104参照)において以下の総括所見を採択した。
2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第5回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/FRA/Q/5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。
  • (a) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(2016年)。
  • (b) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書(2015年)。
  • (c) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2010年)。
  • (d) 人身取引に反対する行動に関する欧州評議会条約(2008年)。
4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。
  • (a) 保健制度の現代化に関する法律(2015年12月17日に国民議会で採決)。
  • (b) 真のジェンダー平等に関する2014年8月の法律第2014-873号。
  • (c) 公立学校改革の編成および計画に関する2013年7月の法律第2013-595号。
  • (d) 搾取のさまざまな形態(子どもを関与させるものを含む)をよりよい形で把握できるようにするために人身取引の再定義を行なった、2013年8月の法律第2013-711号。
  • (e) 危険な状態にある子どものモニタリングのための情報の転送に関する2012年3月の法律第2012-301号。
5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。
  • (a) 首相府内に家族・子ども・高齢者高等評議会が創設されたこと(2015年12月28日)。
  • (b) 教育制度における女子・男子および女性・男性の平等に関する省庁間合意(2013~2018年)。
  • (c) 子どもの保護に関する総合行動計画(2015~2017年)。
  • (d) 人身取引との闘いに関する国家行動計画(2015~2016年)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条第6項)

委員会の前回の勧告
6.委員会は、締約国が、前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1)のうち部分的もしくは不十分にしか実施されていないものまたはまったく実施されていないもの(体罰、刑事責任年齢、少年司法制度および保護者のいない移住者の子どもに関するものなど)に対応するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するとともに、とくに、締約国が、第30条に付した留保ならびに第6条および第40条に関連する2つの解釈宣言を撤回していないことを遺憾に思う。
立法
7.委員会は、条約の規定のごくわずかしか自動執行力を認められておらず、かつ、条約の原則および権利が国内法に適正に含められていないことを懸念する。
8.委員会は、締約国が、条約のすべての規定が締約国の領域全体で適用可能とされること、および、あらゆる段階の国内裁判所において個人が条約を援用できることを確保するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ11参照)をあらためて繰り返す。
包括的な政策および戦略
9.委員会は、条約上のすべての権利の実施に関する包括的かつ持続可能な政策の策定における進展が不十分であること、および、締約国ですでに定められているさまざまな子ども関連戦略において測定可能な達成目標が設けられていないことを懸念する。
10.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的政策を、子どもたちおよび市民社会組織と協議しながら、かつ増大しつつある格差への対応を重視して、策定しかつ実施するための努力を継続するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、実施のための諸要素(測定可能な達成目標、時間枠ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を含む)を立案しかつ実施することも勧告するものである。
調整
11.委員会は、家族・子ども・高齢者高等評議会の創設を歓迎するものの、海外県および海外領土における条約の実施に格差があることならびに調整能力に欠陥があることを依然として懸念する。
12.委員会は、締約国が、調整機構に対し、条約の実施に関連するすべての活動を、全部門を通じてならびに国、地域圏および地方のレベル(海外県および海外領土を含む)で調整するための明確な権限ならびに十分な権限および資源が与えられることを確保するよう、勧告する。
資源配分
13.子どもについて多額の公共投資が行なわれているにもかかわらず、委員会は、とくに周縁的状況に置かれている子どもならびに海外県および海外領土(とくにマヨット島)について、締約国における一部の資源の配分に不平等があることを懸念する。委員会は、一貫した予算分析の実施に関して進展がないことを依然として懸念するものである。
14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どものニーズを十分に考慮に入れ、かつ、関連の部門および省庁における子どもへの明確な予算配分、具体的な指標および追跡システムを備えた予算編成プロセスを確立すること。
  • (b) 社会部門、ならびに、ロマの子ども、子どもの庇護希望者および難民を含む子どもの移住者ならびにマヨットその他の海外県および海外領土の子どもなど不利な立場に置かれた子どもについて配分される予算を増額すること。
  • (c) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の効率性、十分性および公平性が効果的に監視されかつ評価されることを確保すること。
データ収集
15.締約国によって文書回答で提供された情報には留意しながらも、委員会は、条約の多くの分野について信頼のできる細分化されたデータが依然として利用できないこと、および、公的統計が依然として断片化されておりかつ不十分であることを懸念する。
16.委員会は、条約のあらゆる分野を網羅したデータ収集システムを向上させるよう求めた、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ21参照)をあらためて繰り返す。さらに委員会は、さまざまな行政機関によって収集されたデータおよび指標が、条約の効果的実施および子どもによる権利の享受を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のために用いられるべきことを勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、統計的情報の定義、収集および普及の際、国際連合人権高等弁務官事務所の報告書「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators: a guide to measurement and implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れるよう勧告する。
独立の監視
17.委員会は、権利擁護官のもとに設けられた子ども擁護官の資源および可視性が不十分であること、ならびに、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼす法案について子ども擁護官と組織的に協議しておらず、かつその報告および勧告を十分にフォローアップしていないことを懸念する。
18.委員会は、締約国が、子ども擁護官の可視性およびその任務遂行能力を高めるため、子どもに特化した十分な資源を確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子ども擁護官および国家人権諮問委員会と恒常的に協議することも奨励するものである。
普及、意識啓発および研修
19.条約の普及ならびに条約に関する意識啓発および研修のために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、子ども、一般層および公的機関が条約およびその内容についてほとんど知識を有していないことを依然として懸念する。委員会はまた、ほとんどの子どもは自己の権利について十全に教えられていないことも懸念するものである。
20.委員会は、締約国が、条約に関する意識啓発プログラムを学校で必修とし、教員がその点について十分な訓練を受けることを確保し、かつ、全国的な啓発キャンペーンを組織的に遂行するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもたちに対しておよび子どものためにまたは子どもとともに働くすべての者に対して条約を可能なかぎり広く普及することも勧告するものである。
子どもの権利と企業セクター
21.委員会は、フランスの多国籍企業のなかには、外国子会社を対象として、企業の社会的責任に関する実践を自発的に行なっている企業もあることに留意する。しかしながら委員会は、締約国の管轄または管理の下で行動する企業の活動を、締約国の領域の外で展開される活動において子どもの権利の尊重を確保する目的で規制するためにとられた措置および構想されている措置についての情報が不十分であることを懸念するものである。委員会は、とくに、フランス企業の子会社が子どもの権利侵害を直接助長してきた事案(カンボジアにおけるゴム会社が行なってきた活動を含む)について懸念する。
22.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 締約国の管轄または管理の下で行動する産業を対象として、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立すること。
  • (b) 企業が国際基準(人権、環境および健康に関するものを含む)を効果的に実施すること、相当の注意(デュー・ディリジェンス)を確保するためのプロセスが要件とされること、ならびに、実施状況を監視し、かつ、違反があった場合には常に適切な制裁を科しかつ救済措置を提供するための効果的な手段が存在することを確保すること。
  • (c) フランス企業または海外で操業するその子会社によるこれらの義務の履行について逸脱の可能性が認められる場合、徹底的な調査を行なうこと。

B.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
23.委員会は、差別と闘うために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、性別、ジェンダーアイデンティティ、障害、国民的出身、社会的および経済的出自その他の事由を理由とする差別が根強く残っていることを懸念するものである。委員会はさらに、ロマの子どもに対する人種差別およびスティグマが根強く残っていることに懸念を表明する。委員会はまた、「平等のABCD」に代わって採択された平等のための行動計画が、子どもたちの関与を得ないまま策定され、子どもがとくに対象とされておらず、かつ測定可能な目標および時間枠を欠いていることも懸念するものである。
24.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返し、締約国に対し、平等、寛容および相互尊重の文化を醸成し、根強く残る差別を防止しかつこれと闘い、かつ、社会のあらゆる部門における、子どもに対するあらゆる差別事案について効果的な対応がとられることを確保するための努力を強化するよう、促す(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ31参照)。委員会はまた、締約国が、ジェンダーに基づくステレオタイプに異議を申し立てるための努力(測定可能な目標および時間枠を備え、かつ、あらゆる教育段階の子どもをとくに対象とした、平等のための行動計画の枠組みのなかで行なわれるものを含む)を強化するとともに、教育者を対象とする関連の研修を義務的なものとすることも、勧告するものである。
子どもの最善の利益
25.委員会は、子どもの最善の利益の原則が憲法的水準へと引き上げられ、かつ、破棄院(Cour de Cassation)および国務院(Conseil d'Etat)がこの点に関して共通の立場を採用したことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、この権利が実務に十分に統合されておらず、かつ、政府法案および公共投資の影響を評価するために事前の評価研究の実施を要求する等の手段により、政府が行なうすべての対応および決定において必ずしも適切な評価および判断が行なわれていないことを懸念するものである。
26.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利が、子どもの権利影響研究等も通じて、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を締約国が強化するよう、勧告する。
生命、生存および発達に対する権利
27.委員会は、公式な統計がないこと、および、締約国では1日あたり2人の子どもが家族間暴力の結果として死亡している可能性がある旨の報告が存在することを深く懸念する。委員会はまた、自己の子どものいずれかまたは複数に対する重大犯罪(殺人を含む)について有罪判決を受け、かつ生き残っている子どもにとって引き続き危険な存在となっている親が関わる事件において、締約国が、子どもの最善の利益よりも家族のつながりの維持を優先させて、そのような親が親としての権利を維持できるようにしていることにより、生命、生存および発達に対する他の〔殺害されなかった〕子どもの権利を危険にさらしていることも、深く懸念するものである。
28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 不当な取扱いによる子どもの死亡事件について理解しかつ対応するために締約国が行なってきた多数の取り組み(診断評価を含む)に照らし、この現象を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) すべての裁判官を対象として、自己の子どものいずれかまたは複数に対する何らかの重大犯罪について有罪判決を受けた親が関わる事件において親の責任の取消しの問題を系統立てて提起しなければならない旨の要件を定めるとともに、これらの決定においては子どもの最善の利益が他のいかなる考慮事項よりも優先されなければならないことを法律で明確にすること。
子どもの意見の尊重
29.子どもの意見が尊重されることを確保するために締約国が行なっている継続的努力は歓迎しながらも、委員会は、関連するあらゆる生活の文脈において組織的に子どもの意見の尊重を確保しかつ実施する点でほとんど進展が見られないことを依然として懸念する。委員会は、法的手続における子どもの聴聞について書面による申請が条件とされていること、および、申請書の書き方が十分ではないという理由で裁判官がそのような申請を却下していることを懸念するものである。委員会はさらに、被害を受けやすい状況または周縁化された状況に置かれている子ども(行政収容の対象とされている子どもおよび障害のある子どもなど)が、自己に関わる事柄についてしばしば協議の対象とされていないことを懸念するものである。
30.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、とくに司法上および行政上の手続および決定において、すべての子ども(被害を受けやすい状況または周縁化された状況に置かれている子どもを含む)が意見を聴かれる子どもの権利を全面的に享受することを確保するよう勧告する。委員会は、締約国が、子どもの参加、ソーシャルワーカーおよび行政機関または裁判所を対象とした研修ならびに専門家(弁護士、特別管理人またはソーシャルワーカー)による支援の提供のためのシステムおよび(または)手続を確立するよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの意見が聴かれるようにするための有効な回路を発展させ、かつ子どもたちに対してそのような回路についての十分な情報を提供すること。
  • (b) 被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれている子どもにとくに注意を払いながら、家庭、コミュニティおよび学校におけるすべての子どもの参加を促進するためのプログラムおよび意識啓発活動を実施すること。

C.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条)

出生登録/国籍
31.委員会は、代理母のもとに生まれた子どもの法的承認および登録に関する2015年7月3日の破棄院決定、および、このような子どもに国籍を付与する旨の2015年12月12日の国務院決定を歓迎する。しかしながら委員会は、国籍証明書の発給に関して登録所の対応が一貫していないことを懸念するものである。委員会はまた、海外県および海外領土のアメリンディアン系住民およびブシナンゲ系住民に属する子どもの登録が不十分であることも懸念する。
32.委員会は、締約国が、登録所間の対応の不一致に対処するとともに、1997年の欧州国籍条約および国家承継に関連する無国籍の防止に関する2009年の欧州評議会条約を批准するよう勧告する。委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返し、締約国に対し、新生児の登録期間の延長を検討すること等も通じて、海外県および海外領土、とくに仏領ギアナにおけるすべての子どもの出生登録を確保するための努力を強化するよう促すものである(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ42参照)。
親を知る権利および親によって養育される権利
33.委員会は、自己の生物学的親およびきょうだいを知る子どもの権利を全面的に執行するためにあらゆる適切な措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもが可能なかぎりおよび適切な時期に自己の親について知ることができるよう、親に関するすべての情報の登録および整理保存のために必要な措置をとるよう促す(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ44参照)。委員会はまた、締約国が、身元の開示について生物学的母親の同意が必要である旨の要件の削除を検討するとともに、親が秘密出産を選択することにつながる根本的原因に対処するための努力を強化することも、勧告するものである。
表現、結社および平和的集会の自由
34.委員会は、16歳未満の子どもについて、表現、結社および平和的集会の自由に対する権利が法律で制限され続けていることを懸念する。
35.委員会は、前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ49参照)をあらためて繰り返し、締約国が、条約で定められているとおり、すべての年齢の子どもに対して表現、結社および平和的集会の自由に対する権利を保障するための措置(法的措置を含む)をとるよう勧告する。
プライバシーに対する権利
36.委員会は、子どもの個人データが長期間にわたって収集、保存および使用されるデータベースが多数存在しており、かつ、教育当局が、子どもおよびその親に対し、個人データの登録に反対し、または当該データにアクセスし、これを修正しもしくは抹消する権利について十分な告知が行なわれていないことを、依然として懸念する。
37.委員会は、締約国がデータベースに入力する個人情報は当該個人が特定されないものに限るべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ21〔51の誤り〕参照)。委員会はまた、個人データの登録に反対し、または当該データにアクセスし、これを修正しもしくは抹消する権利について子どもおよびその親が適正に告知されるように必要な措置をとることも勧告するものである。
適切な情報へのアクセス
38.メディアおよびデジタルネットワーク上の有害な情報から子供を保護するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、にもかかわらず、子ども(とくに女子)を過剰に性的対象化したイメージがメディアにおいて根強く用いられていることを懸念する。委員会は、不適切なメディアおよびデジタルコンテンツから子どもを保護するための規制の枠組みがいまのところ設けられていないこと、ならびに、テレビ、インターネットおよびスマートフォン上の不適切な情報に対する子どものアクセスを規制するための多くの機能(親による管理機能など)が実際には有効ではないことを、懸念するものである。
39.デジタルメディアと子どもの権利に関する2014年の一般的討議の結論に照らし、かつ適切な情報にアクセスする子どもの権利を全面的に踏まえながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) メディアもしくは製品の販売促進における、またはその他の目的による、子どもを性的対象化したイメージの使用を禁止する規制を実施するとともに、子どもによる不適切なデジタル情報へのアクセスを管理するために効果的な措置をとること。
  • (b) デジタルメディアおよび情報通信技術の活用に関わる機会およびリスクについて子ども、親および一般公衆の感度を高めるための意識啓発プログラム、広報プログラムおよび教育プログラムを強化すること。

D.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条)

拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰
40.委員会は、施設において障害のある子どもの不当な取扱いの事案が起きていること、および、そのような施設の独立した監視が不十分であることを懸念する。委員会はとくに、不当な取扱いを通告した職員が名誉毀損で告発されて有罪判決を受けた例もある旨の報告がある一方、加害者が裁判にかけられることは、ビデオで録画された証拠があるにもかかわらず稀であることを懸念するものである。委員会はさらに、不当な取扱いに相当する「パッキング」法(子どもを濡れた冷たいシーツでくるむこと)が法的に禁じられておらず、かつ、自閉症スペクトラム障害の子どもに対していまなお用いられているという報告があることを懸念する。
41.委員会は、締約国に対し、施設の子どもに対する不当な取扱いの根本的原因を理解し、かつその防止および対策を図るための取り組みを強化するとともに、締約国が以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 独立の立場からの施設の査察を定期的かつ効果的に行なうことのできる監督機構を設置すること。
  • (b) 不当な取扱いのいかなる訴えについても徹底的かつ迅速に調査し、加害者を裁判にかけ、かつ、被害を受けた子どもに対してケア、回復、再統合および補償のための支援を行なうこと。
  • (c) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報のためのシステムおよびサービス(不当な取扱いの事案を告発するための秘密が守られる回路、および、とくに子ども、その家族および職員を対象とした、報復からの保護を含む)を創設すること。
  • (d) 子どもの「パッキング」および不当な取扱いに相当する他のすべての刊行を法的に禁止すること。
あらゆる形態の暴力からの子どもの自由
42.委員会は、あらゆる形態の暴力を受けるおそれのある子どもの特定およびモニタリングを向上させるために行なわれている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国において、子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応する包括的戦略が定められていないこと、ならびに、家族間暴力およびジェンダーを理由とする暴力が多数生じており、かつその数が増えていることを懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。
  • (a) 暴力の被害者または証人である子どもについての標準化された指針、対応要綱および付託機構が存在していないこと、ならびに、子どもとともに働く公的職員を対象とした、とくに子どもに対する暴力が疑われる事案を発見し、通報し、かつ対応しまたは付託するための調整および研修が不十分であること。
  • (b) 家族間暴力の被害を受けた子どもをシェルターで保護する体制および被害を受けた子どもに医療心理学的援助を提供する体制が不十分であり、かつ、この点について領域全体で大きな格差が存在すること。
  • (c) 子どもの権利、とくに暴力(いやがらせおよびいじめを含む)から保護される権利に関して学校で行なわれる意識啓発の取組みが不十分であること。
  • (d) テレビおよび一部の興行(闘牛など)において暴力にさらされる子どもの身体的および精神的ウェルビーイングおよび発達。
43.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)および「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を想起しながら、委員会は、締約国が、子どもの保護に関する全般的政策の枠内で、子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対抗していくための包括的戦略を速やかに採択するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 子どもに対する暴力(不当な取扱い、性的虐待およびネグレクト、家族間暴力、いやがらせならびにいじめを含む)のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置すること。
  • (b) 暴力の被害者または証人である子どもについての適切な指針、対応要綱および付託機構を発展させるとともに、これらが締約国全域で一貫して適用されることを確保すること。
  • (c) 子どもの権利に関する啓発および社会的スキルの発達ならびに年齢にふさわしい戦略を通じ、自分自身および仲間を暴力から守れるようにするための子どものエンパワーメントを図ること。
  • (d) 子どもたちの関与を得ながら、意識啓発プログラムおよび教育プログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。
  • (e) 暴力の被害を受けたすべての子どもが保護シェルターならびに回復および社会的再統合のためのサービスにアクセスできることを確保すること。
  • (f) 闘牛および関連の興行に子どもがアクセスすることを禁止する等の手段により、子どものウェルビーイングに悪影響を与える暴力的な伝統および慣行を変革するための努力を強化すること。
体罰
44.委員会は、あらゆる場面(家庭、学校、子どもの養育現場および代替的養護を含む)における体罰を明示的に禁止するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ58参照)をあらためて繰り返す。体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、子どもに対するいかなる暴力も正当化しえないこと、および、体罰は暴力のひとつの形態であり、常に品位を傷つけるものであって防止可能であることを想起するよう求めるとともに、締約国に対し、公衆啓発キャンペーン等も通じて、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進するよう促すものである。
中央アフリカ共和国における性的虐待
45.委員会は、中央アフリカ共和国においてフランス兵が子どもに対する性的虐待を行なったという訴えがあることを深刻に懸念するとともに、予備的捜査がいまなお進行中であることに留意する。委員会は、これらの犯罪の被害者および証人である子どもを保護するための措置は不必要と考えられる旨の締約国の回答(CRC/C/FRA/Q/5/Add.1、パラ173)を遺憾に思うものである。
46.委員会は、締約国が、中央アフリカ共和国においてフランス兵が行なったとされる子どもの性的虐待および性的搾取の訴えについて迅速かつ効果的が捜査が実施され、かつ加害者が訴追されることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、被害を受けた子どものケアおよび支援に関連する措置(心理社会的支援、金銭的補償またはその他の賠償を含む)に関与するよう促すものである。委員会は、締約国が、子どもの権利が尊重されかつ保護されることを確保するための防止措置を強化するよう勧告する。
有害慣行
47.女性性器切除の根絶に関して締約国で見られた進展には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、年若い多くの女子がいまなお危険な状況に置かれていること、および、この現象が復活する可能性もあることを懸念する。委員会はまた、インターセックスの子どもに対する、医学的に不必要かつ不可逆的な手術その他の治療が常態化していることも懸念するものである。
48.有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号を想起しながら、委員会は、締約国が、危険な状況に置かれている子どもをより容易に特定し、かつその人権侵害を防止できるよう、これらの有害慣行がどの程度実践されているか理解する目的でデータを収集するよう勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 締約国における女性性器切除に関して、危険な状況に置かれている女子、医療専門家、ソーシャルワーカー、警察官、憲兵および判事の意識を高めること。
  • (b) インターセックスの子どもに関する権利基盤型の保健ケア対応要綱を策定しかつ実施することにより、子どもおよびその親がすべての選択肢について適切に告知されること、自己の治療およびケアに関する意思決定に子どもが最大限可能な範囲で関与すること、および、いかなる子どもも不必要な手術または治療の対象とされないことを確保すること。

E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項)

家庭環境
49.委員会は、締約国が依然として、子どもの権利には概念的にそぐわない「親の権威」の文言を用いていることを懸念する。委員会はまた、子どもの保護の改革に関する2007年3月5日の法律第2007-293号の実施が遅れていることもあって、子どもの身体的虐待が2008年以降増えていること、ならびに、子どもの保護に関わる一連の制度の結びつきが弱いために、子どもが家族間暴力を受けるおそれおよび家庭で保護されない状態となるおそれのあるままに置かれる事案が生じていることも、懸念するものである。
50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの権利に即する形で、「親の権威」の文言を「親の責任」または同様の文言に代えることを検討すること。
  • (b) 関係者間の意思疎通、分野横断的アプローチおよび調整を促進することにより、子どもの保護に関わる政策の国および地方レベルにおける運用を改善するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (c) 防止、危険な状況に置かれている子どもの特定およびケアのための介入の質との関連も含めて、あらゆる段階の公的機関による、2007年3月5日の法律第2007-293号の全面的実施を確保すること。
家族再統合
51.委員会は、2014年7月10日に欧州人権裁判所が言い渡した、家族生活の尊重に対する権利を遵守しなかったことを理由として締約国を敗訴させた3つの判決について懸念する。これらの判決は、査証の発給に関する意思決定手続において、要件とされている柔軟性、迅速性および有効性の保障が満たされたことが実証されなかったと認定したものである。
52.委員会は、締約国が、家族再統合の分野において、条約の原則および規定にしたがった、かつ上述の保障を充足させる実務を確立するために必要な法的その他の措置をとるよう勧告する。
家庭環境を奪われた子ども
53.委員会は、1人ひとりの子どもに合った措置を行なうために設けられている養護の選択肢が実務で稀にしか用いられていないことを懸念するとともに、司法命令によって家族から分離される子どもの人数が増えており、貧困下で暮らしている家族の子どもにとくに影響が生じていることも懸念する。委員会はさらに、児童養護および代替的養護に措置された子どもが家族と接触しかつ面会する機会をほとんど持てていないこと、家族の住居と施設養護の場所が離れていること、ならびに、代替的養護に関する決定が児童福祉機関(ASE)によって行なわれる際、子どもの意見および子どもの最善の利益が十分に考慮されていないことを懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。
  • (a) 児童福祉機関の施設に障害のある子どもが過剰に措置されていること。
  • (b) 法律上の遺棄ではなく事実上の遺棄によりそのような施設に措置されている子どもの状況および地位。
  • (c) 措置に関する決定が、自己の身の回りの状況、里親養育者および環境に対して子どもが慣れ親しんでいる状況の継続性を確保するという視点のないまま行なわれていること。
  • (d) 16歳以上の子どもに対して提供される、大人としての生活に入るための準備を整えられるようにするための機会および援助が不十分であること。
54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 可能な場合には常に家庭を基盤とする子どもの養護を支援しかつ促進するとともに、家族とともに暮らせない子どもを対象とした里親養育制度を確立し、とくに、脱施設措置のプロセスを加速するために障害のある子どものための里親養育を奨励すること。
  • (b) 子どもを代替的養護に措置すべきか否かの判断に関して、子どものニーズ、意見および最善の利益を基盤とする十分な保障措置および明確な基準を確保すること。
  • (c) 地理的近接性ならびに子どもが慣れ親しんだ身の回りの状況、里親養育者および環境を正当に考慮しながら、代替的養護に措置された子どもが可能なかぎり親との接触を維持できることを確保すること。
  • (d) 遺棄により児童福祉機関に付託された子どもの法的状況および地位を明確にすること。
  • (e) 施設に入所した子ども(成人年齢に近づきつつある子どもを含む)のリハビリテーションおよび社会的再統合を最大限可能な範囲で促進する目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護機関に対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。
養子縁組
55.委員会は、締約国におけるカファラ制度の法的効果について定めた通達が2014年10月22日に採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 仏領ポリネシアおよびニューカレドニアにおいて、承認を受けた斡旋機関もなく、かつ当事者である家族または子どものためにの真の保障もまったくないままに行なわれ続けている、「子どもの持ち回り」(child circulation)として知られる伝統的養子縁組についての情報がないこと。
  • (b) 年齢、きょうだい、障害または疾病のために特有のニーズを有する子どもの養子縁組にあたり、養親およびその他の家族構成員に対して提供される支援が不十分であること。
  • (c) 国際養子縁組についての子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の加盟国ではない出身国または当該条約の保障措置を遵守しない出身国が関わる国際養子縁組の数が多いこと。
56.委員会は、締約国が、養子縁組については子どもの最善の利益の至高性の原則が厳格に遵守されることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) この現象に関する理解および対応を向上させる目的で、国内養子縁組および国際養子縁組に関する細分化された統計データおよび関連情報を体系的かつ継続的に収集すること。
  • (b) 仏領ポリネシアおよびニューカレドニアにおける「子どもの持ち回り」の慣行に関する情報を次回の定期報告書で提供するとともに、新たな事案が生じないようにするための措置をとること。
  • (c) 1993年ハーグ条約に定められたすべての保障措置が、たとえ当該相手国が同条約の加盟国ではない場合でも満たされることを確保するとともに、同条約を批准していない国との間で、子どもの権利条約および1993年ハーグ条約の基準を確認する二国間協定を締結すること。
  • (d) 養親およびその家族に対し、養子縁組に関わる十分な専門的支援が提供されることを確保すること。

F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条)

障害のある子ども
57.委員会は、障害のある子どものインクルージョンを強化するために締約国が行なっている努力を認識する。しかしながら委員会は、すべての子どもを対象としたインクルーシブ教育に関する2005年2月11日の法律第2005-102号及び2013年7月8日の法律第2013-595号の実施が速やかに進められておらずかつ不平等であること、および、障害のある子どもが病院または医療社会施設ではなく普通学校に出席することを確保するうえでの進展が遅々としていること、ならびに、海外県および海外領土はこの点に関していっそう悪い状況にあることを懸念するものである。委員会はまた、3歳という低年齢の子どもについても普通学校内の特別編成制度が法律で定められていること、障害のある一部の子どもが施設に措置されていること、障害のある一部の子どもがいまなお隔離学校に在籍していること、ならびに、配慮および支援がないために学校を中退する障害のある子どもがいることも懸念する。委員会はさらに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 教育へのアクセスにおいて、レクリエーション活動および課外活動等の際の他者との平等に関して、学校施設においてならびに職業訓練の際に、障害のある子ども、とくに複合障害のある子どもに対する差別が根強く行なわれていること。
  • (b) 受ける資格のある必要な支援(学校における十分な時間数の援助を含む)の受給および維持に関して家族が重大な障壁に直面していること。
  • (c) 学校職員を対象とした研修および支援が不十分であること、資格を有する専門援助者の人数が不十分であること、ならびに、アクセシブルでありかつ適合性を備えた学校カリキュラム、教材、評価資料および教室の数が乏しいこと。
58.障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年)を想起しながら、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤型アプローチを有効な形でかつ遅滞なく採用し、インクルーシブ教育に対するすべての子どもの権利を承認し、かつ、特別施設およびあらゆる段階の隔離学級への子どもの措置よりもインクルーシブ教育が優先されることを確保するよう、促す。委員会は、具体的には締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 障害のある子どものための適切な戦略およびプログラムの立案を促進するため、障害のある子どもに関するデータ収集体制を整備し、かつ効率的な早期発見システムを発展させること。
  • (b) 適切な支援を促進し、かつ当該支援へのアクセスを確保するための措置をとること。
  • (c) すべての教員および教育専門家を対象として、インクルーシブ教育および個別支援の提供、インクルーシブかつアクセシブルな環境の創設ならびに1人ひとりの子どもの具体的状況に対する正当な注意の払い方についての研修を実施すること。
  • (d) 障害のある子どもを含むすべての子どもがそのニーズおよび事情に対応するためのもっとも適切な計画によって支援されるようにするための十分な資源配分を確保すること。
  • (e) 障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘うための意識啓発キャンペーンを実施すること。
自閉症の子ども
59.委員会は、3次にわたる自閉症対応計画にもかかわらず、自閉症の子どもが広範な権利侵害を受け続けていることを懸念する。委員会は、自閉症の子どもの大多数が普通学校における教育にアクセスできておらず、または、インクルージョンを支援する特別な訓練を受けた職員もいないまま、正規の教育よりも短い限られた教育しか受けていないことを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。
  • (a) 高等保健機関が2012年に行なった勧告の実施が義務的ではなく、自閉症の子どもに対していまなお有効性を欠く精神分析学的療法、過剰投薬ならびに精神病院および精神医学施設(隣国にあるものを含む)への措置が行なわれていること。
  • (b) 国際的に認められた療法の訓練を受けた専門家ならびに発達および教育のためのプログラムの数が少なく、かつ健康保険制度の対象とされていないこと。
  • (c) 自分の子どもの施設措置に反対する親が威圧および脅迫の対象とされることがあり、かつ一部の事案では子どもの監護権を喪失して、子どもが強制的に施設措置または行政収容の対象とされていること。
60.委員会は、締約国に対し、自閉症の子どもの権利(とくにインクルーシブ教育に対する権利)が尊重されること、高等保健機関が2012年の行なった勧告が自閉症の子どもとともに働く専門家に対して法的拘束力を有するものとされること、ならびに、高等保健機関の勧告に一致する療法および教育プログラムのみが認可および費用弁済の対象とされることを確保するよう、勧告する。締約国はまた、自閉症の子どもが強制的な施設措置または行政収容の対象とされないこと、および、親が自分の子どもの施設措置を拒否した際にこれ以上報復を受けないことも確保するべきである。
健康および保健サービス
61.子どもの健康が2013年に定められた国家保健ケア戦略の優先課題のひとつに位置づけられていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、学校および母子福祉保護センター等において、とくに海外県および海外領土、スラム街ならびに難民キャンプにおいて、資源が十分ではないこと、専門の児童保健要員が存在しないことならびにサービスおよび体制が全般的に悪化していることを懸念する。委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 子どもの夜間入院の際、親の付き添いが自動的に認められるわけではないこと。
  • (b) 完全母乳育児率が低く、かつ、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の実施が不完全であること。
  • (c) 海外県および海外領土(とくにマヨット島)において、新生児死亡率および若年妊娠率が依然として過度に高い水準にあること。
  • (d) 海外県、とくに仏領ギアナおよびマヨット島において、HIV/AIDSおよび結核を含む予防可能な感染症の発生率が高いこと。
  • (e) 有効な在留許可を得ていない子どもの移住者が、保健サービスに対する権利の行使に際して依然として困難を経験していること。
62.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、とくに学校および母子福祉保護センターにおける資源ならびに医療スタッフ、サービスおよび体制の欠陥に緊急に対処し、かつ、子ども、とくに海外県および海外領土、スラム街ならびに難民キャンプの子どもの特有のニーズを考慮するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 入院について定めた条件を子どもの権利の視点から再検討し、子どもが入院中に親によって付き添われかつケアされることを認めること。
  • (b) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施し、かつ完全母乳育児の慣行をさらに促進すること(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ75参照)。
  • (c) 海外県および海外領土(とくにマヨット島)における、子どもおよび母親のための保健ケアサービスへのアクセスに関して存在する格差を縮小するための努力を強化すること。
  • (d) とくに仏領ギアナおよびマヨット島において、HIV/AIDSを含む予防可能な疾病に対処するための、目的を明確化したプログラムを実施すること。
  • (e) 保護者のいない外国出身の子どもおよび有効な在留許可を持たない子どもの移住者を含むすべての子どもが基礎的保健ケアにアクセスできることを確保するため、必要な資源を増やすこと。
精神保健
63.国家自殺対策行動計画(2011~2014年)の評価結果に掲げられた一部の勧告(青少年センターの開設など)を実施している県があることは歓迎しながらも、委員会は、子ども専門の精神科医、心理学者および精神科看護師の人数が不十分であり、かつその配置も不平等であること、外来サービスに関わる予算削減および外来サービスの閉鎖が生じており、これがしばしば入院につながっていること、子どもがそのニーズに適合しない成人用施設でケアされていること、ならびに、精神病院で子どもに対する過剰投薬が行なわれていることを懸念する。委員会はさらに、子どもの精神保健障害および心理社会的障害の発生率が高く、かつ年齢とともに上昇していて、主として15歳以上の子どもに影響が生じていることを懸念するものである。
64.委員会は、国家自殺対策行動計画(2011~2014年)の勧告を全面的かつ持続的に実施することを奨励する。委員会は、締約国が、児童精神科ケアへのアクセスにおける不平等を全国的に縮小する目的で、専門の精神保健サービスのために利用可能とされる人的資源および財源を増やすよう勧告するものである。委員会は、締約国が、児童精神医学に関連する問題についての医療関係者の研修を増やすとともに、子どもの治療が資格のある専門家によって、かつ子どものために設けられて施設で行なわれることを保障するよう、勧告する。
思春期の健康
65.15歳以上の子どもが避妊手段を無償でかつ秘密裡に入手できるようにした2013年のデクレの採択には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、人工妊娠中絶件数が多いことを懸念する。
66.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、思春期の子どものセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する包括的な政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する教育が学校カリキュラムの必修科目とされ、かつ、若年妊娠の予防に特段の注意を払いながら、思春期の女子および男子をとくに対象として実施されることを確保するよう、勧告する。
薬物および有害物質の濫用
67.薬物および依存行動と闘うための計画など、依存に対処するために締約国が行なっている取り組みは歓迎しながらも、委員会は、前期中等教育の期間全体を通じ、タバコおよびアルコールの使用ならびに大麻の実験的使用の発生率が高まっていることを懸念する。
68.委員会は、締約国が、とくに子どもおよび青少年に対して有害物質濫用(タバコおよびアルコールの濫用を含む)の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供することにより、子どもおよび青少年による薬物の使用の発生に対処するとともに、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく若者にやさしい薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させるよう、勧告する。
生活水準
69.委員会は、複数年度にまたがる貧困削減・社会的包摂計画が採択されたことを歓迎するものの、貧困下で暮らしている20%の子どもたちの状況およびホームレスの子どもの多さについて懸念する。委員会は、貧困下で暮らしていて経済危機の影響を受けている子どもおよび家族(とくに、ひとり親が世帯主である家庭の子どもおよびスラム街または「要配慮都市域」(sensitive urban areas)で暮らしている子ども、ならびに、何年にもわたって「緊急宿泊所」で生活している子ども)の状況が悪化していることを、とりわけ懸念するものである。海外県および海外領土における格差に対処するために締約国が最近行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、にもかかわらず、締約国の領域全体における社会的不平等の持続および拡大、海外県および海外領土(とくに仏領ギアナおよびマヨット島)における子どもによる権利の享受の空白を少なくしていく際の進展の遅さ、ならびに、子どもの移住者(とくに保護者のいない子どもの移住者)が置かれている状況に、特段の懸念をもって留意する。委員会はまた、ロマの子どもおよびその家族が、代替的な移住先を用意されることおよび通告を受けることもなく、強制立退きの対象とされる事案があることも懸念するものである。
70.委員会は、締約国が、子どもの貧困の根絶を国家的優先課題のひとつに位置づけ、かつ、支援をもっとも必要としている子どもおよび家族(とくに、貧困下で暮らしていて経済危機の影響を受けている子どもおよび家族、ひとり親が世帯主である家庭の子どもおよびスラム街または「要配慮都市域」で暮らしている子ども、海外県および海外領土の子どもならびに保護者のいない子どもの移住者)を支援するプログラムに対して必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、強制立退きに関わる自国の国際法上の義務を尊重することも促し、かつ、ロマの子どもおよびその家族の包摂に向けた努力を奨励するものである。

G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
71.委員会は、6万人分の教員の空席を2017年までに埋めることに優先的に取り組む旨の締約国の決定を歓迎する。しかしながら委員会は、近年、8万人分の教員の席が空白になったこと、訓練を受けていない代替要員が採用されていること、および、一部の学校で生徒・教員比がきわめて高いことを懸念するものである。委員会はまた、締約国では子どもの社会経済的出自が学業成績に関して相当に決定的な役割を果たしていること、および、学校に対する資源の配分が自治体によってさまざまで格差が生じていることも懸念する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 特定のカテゴリーに属する子ども、とくに障害のある子ども、スラム街で暮らしている子ども、(とくにマヨット島の)保護者のいない子どもの移住者および法律に抵触した子どもが、教育、学校関連の活動および施設の利用の開始、継続または再開に関して困難に直面していること。
  • (b) ロマの子ども、保護者のいない子どもの移住者および不安定な居住環境下で暮らしている子どもを含む一部の子どもが、通常学校への就学または給食へのアクセスに関して多くの困難に直面しており、かつ、自治体によってそれを認められない事案も生じていること。
  • (c) 早期に、かつ資格を取得しないまま学校を中退する子どもの多さを減少させることに関する進展が遅いこと。
  • (d) 教育専門家を対象として実施されている研修が質量ともに不十分であること。
  • (e) 学校における特別援助ネットワークが徐々になくなりつつあり、とくに学習障害のある子どもに影響が生じていること。
  • (f) 生徒間の暴力および広範ないじめが常態化しており、かつ、教育専門家がこれを防止しかつこれに対処する能力を欠いていること。
72.委員会は、締約国が、子どもの社会的背景が学校における成績に及ぼす影響を少なくする目的で教育改革を強化するとともに、教育に対する権利をすべての子どもに確保する目的で資格のある教員が十分に用意されることを保障するための追加的措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 退学率および留年率を削減するための措置、ならびに、修了証を取得せずに学校を離れた子どもを対象として、教育を再開しかつ能力およびライフスキルを獲得できるようにする職業教育および職業訓練を拡大するための措置を、引き続き強化すること。
  • (b) すべての子どもに対し、教育に対する権利を差別なく確保すること。
  • (c) 継続研修プログラム等を通じて、教員の資格を高めるための措置をとること。
  • (d) 学校における特別援助ネットワークを再確立し、かつ適切な形で資金を拠出すること。
  • (e) いじめの事案の防止および取扱いに関する方針および手段を学校で採択すること、ならびに、暴力およびいじめの発見、防止およびこれへの対応に関して学校職員を対象とした適切な研修を実施すること等の方法を通じ、学校におけるいじめおよび暴力に対応するための努力を強化すること。

H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条)

子どもの庇護希望者および難民ならびに保護者のいない子ども
73.委員会は、特別な保護および援助のための措置にアクセスすることのできない、締約国における保護者のいない子どもの移住者の状況について懸念を覚える。委員会は、締約国が、すべての初期評価手続およびその後の対応において、子どもの最善の利益を指導的原則として十分に考慮していないことを懸念するものである。委員会は、とくに17歳の子どもにとって、子どもの保護のための体制ならびに弁護士による代理、心理的支援、社会的援助および教育へのアクセスに関して困難が生じていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、保護者のいない子どもの移住者に提供されるサービスの公平な配分に関する2013年5月31日の通達に定められた手続が、2015年1月の国務院(Conseil d'Etat)決定によって部分的に無効とされた結果、子どものケアおよび保護の質が不十分なものとなり、かつ、一部の自治体がそのような保護の提供を拒否する事態が生じていることも懸念するものである。委員会は、2014年に、品位を傷つける環境下で、かつ裁判官にアクセスできないまま、ほとんどはマヨット島において行政収容の対象とされた子どもの人数が多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、以下のことについても懸念するものである。
  • (a) 空港の待機区画またはホテルおよびその他の行政収容施設(locaux de retention administrative)に自動的に収容されている、保護者のいない子どもの移住者の状況。これらの子どもは時として成人とともに収容されており、かつ、特別管理人と話すらできないまま退去強制の対象にされているという報告もある。
  • (b) 子どもの年齢鑑別のための骨検査への過度な依存が見られ、かつ、子どもの同意が実際には求められない場合もあること。
74.委員会は、締約国が、保護者のいない子どもの移住者への専門的かつ子どもに特化した支援、保護、弁護士による代理、社会的援助ならびに教育および職業訓練に対して、自国の管轄地域全体を通じて十分な人的資源、技術的資源および財源を保障するとともに、この点に関して法執行官の能力構築を図るよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 自由の剥奪に代わる適切な選択肢を見出し、かつ子どもを適切な宿泊施設に措置するための努力を強化することを通じ、待機区域における子どもの収容を回避するために必要な措置(法的措置を含む)をとるとともに、ノンルフールマン(追放・送還禁止)の義務を全面的に尊重すること。
  • (b) 子どもの年齢鑑別の主たる手法として骨検査を用いることをやめ、これに代えて、より正確であることが証明されている他の手法を活用すること。
75.委員会は、今後2年にわたって子どもを含むシリア難民を多数受け入れるという締約国の公約を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国北部(カレーおよびグランドシントなど)の難民キャンプで子どもおよびその家族が不安定な状況に置かれていること、当局が子どもの登録を拒否していること、ならびに、これらの子どもおよび家族に適切なかつ事情に応じた保護を提供するための場所およびサービスに対して十分な資源が配分されていないことを懸念するものである。
76.委員会は、締約国に対し、国際法上の義務にしたがって子どもの保護について第一義的責任を負っていることを想起するよう求めるとともに、登録、人間的な生活水準および十分な保健ケアサービスに対するすべての子ども(難民キャンプで暮らしている子どもを含む)の権利を確保するよう、促す。
武力紛争における子ども
77.委員会は、国以外の武装集団ならびに過激な宗教的および思想的運動による子どもの徴募を防止するために締約国が行なっている努力(暴力的過激主義化およびジハーディストのネットワークと闘うための国家計画を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の子どもおよび若者が、とくにインターネットを通じて洗脳されてそのような運動およびネットワークに合流し続けていることを懸念するものである。
78.委員会は、締約国が、国以外の武装集団ならびに過激な宗教的および思想的運動による子どもの徴募を防止し、かつ、とくに、締約国の子どもおよび若者の間で生じているこの現象およびその根本的原因について理解するための措置を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもおよび若者ならびにより幅広いコミュニティーの関与を確保しながら、アウトリーチおよびエンパワーメントのためのプログラムに投入する資源配分を増加させるよう、勧告するものである。
売買、取引および誘拐
79.人身取引との闘いに関する国家行動計画(2014~2016年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、同計画が期限のある測定可能な基準を有しておらず、かつまだ運用されていないことを懸念する。とくに委員会は、援助を求めようとする子どもにとって管轄地域全体で縦割り的な対応および不平等が生じていることに加え、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 有罪判決に至る事案がきわめて少数であること。
  • (b) 子どもの最善の利益に基づいて人身取引の被害を受けた子どもを正しく特定するための措置が不十分であること、および、未成年であることの推定が、子どもが非行行為を余儀なくされた事案も含めて、常に尊重されているわけではないこと。
  • (c) 手続全体を通じて通訳者または特別管理人にアクセスできるようにする義務が履行されていないこと。
  • (d) 人身売買および人身取引の被害を受けた子どものケアが不十分であること。
80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 人身取引との闘いに関する国家行動計画を効果的に実施するために必要な資源を用意すること。
  • (b) 人身取引に反対する行動に関する欧州評議会条約に一致する形で、人身取引の被害を受けた子どもに関する子どもの保護のための基準が国際基準を満たすことを確保すること。
  • (c) 人身取引の事案が法律当局によって高い優先順位を与えられ、かつ迅速な捜査が行なわれることを確保すること。
  • (d) 人身売買および人身取引の被害を受けた子ども(非行行為を余儀なくされた子どもを含む)に対し、適切な援助および保護が与えられることを確保すること。
少年司法の運営
81.委員会は、法律第2014-896号において、予定されていた子どもについての最低刑が撤廃されたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を定め、かつ16歳以上の子どもを(暴力的な過激主義的活動に関与した場合を含めて)成人として扱わないようにするべきである旨の前回の勧告の実施が進展していないこと。
  • (b) 成人拘禁施設の一部区画に子どもを拘禁する実務および女子を成人女性とともに拘禁する実務が廃止されていないこと。〔訳者注/この項の訳はフランス語版による〕
  • (c) 厳重監督センターのような、拘禁場所に代わる施設の収容能力が不足していること。
  • (d) 厳重監督センターにおいて、良質な教育、保健ケアおよび精神医学的ケアの提供に関して、訓練を受けた職員および設備が不十分であること。
  • (e) 特別管理人の役割の理解およびその配置状況が管轄地域全体で著しく異なっており、とくに海外県および海外領土で困難が生じていること。
82.委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約その他の関連の基準に全面的に一致させるよう促すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 13歳を下回らず、かつ子どもの分別能力を要件とする、刑事責任に関する最低年齢を定めること(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ99参照)。
  • (b) 16歳以上の子どもを成人として扱わないようにすること。
  • (c) 拘禁が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられることを実務上確保し、これに代えて可能な場合には常に代替的措置を促進するとともに、拘禁が避けられない場合には、子ども(とくに女子)が成人とともに収容されず、かつ教育および保健サービスにアクセスできるよう、法律および国際基準に一致する形で行なわれることを確保すること。
  • (d) 十分な人的資源、技術的資源および財源、ならびに、適切な訓練を受けた、必要に応じて対応が可能な特別管理人を備えた、特別な少年法廷施設および手続を確立すること。
  • (e) 子どもとともにおよび子どものために働く職員(厳重監督センターの職員を含む)の、良質な教育、保健ケアおよび精神医学的ケアを提供する能力の構築を図るとともに、刑事司法制度に従事するすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する研修プログラムを継続すること。
犯罪の被害者および証人である子ども
83.犯罪の被害を受けた子どもをシェルターで保護しかつ支援するために行なわれている努力は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 司法手続のさまざまな段階における、被害を受けた子どもの保護が一貫していないこと。
  • (b) 犯罪の目撃者である子どもに対し、被害者である子どもと同一の手続的保障が与えられていないこと。
  • (c) 実際上、被害を受けた子どもに対する被告人の接近または接触が禁じられていないこと。
  • (d) 被害を受けた子どもを特定し、かつ、子どもに対して即時的な保護措置ならびに手続の最中および手続後の心理社会的ケアを提供するための機構が不十分であること。
  • (e) 事情聴取のビデオ録画が有効に活用されておらず、不十分な施設において専門的訓練を受けていない職員によって使用されるのが通例であること。
84.委員会は、締約国が、管轄地域全体を通じて専門的体制および保護措置の一貫性を強め、かつ、犯罪の目撃者である子どもに対し、被害者である子どもと同一の手続的保障が与えられることを確保するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 被告人による被害者への接近または接触を禁止する規定が実施されることを保障するとともに、被害者を二次被害、報復または脅迫から保護するための資源を配分すること。
  • (b) 子どもが、適切な訓練を受けた職員により、即時的な保護ならびに医学的および心理的ケアを受けることを確保すること。
  • (c) 被害を受けた子どもの事情聴取が、ビデオ録画および熟練の職員の活用等を通じ、当該目的のために設計されかつ適合させられた施設で行なわれるようにするために、法的措置を含む必要な措置をとること。
子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ
85.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書について委員会が2007年に行なった勧告の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。
  • (a) 客として児童買春に関与することは犯罪とされているが、客が常に訴追されるわけではないこと。
  • (b) 性的虐待および性的搾取の被害を受けた子どもが、証拠不十分により事件が棄却されるために、裁判官による聴聞を受けず、または買春の被害者として承認されないこと。
  • (c) 子どもの強姦が、刑法ではひとつの罪名とされているものの、性的攻撃として再分類されることが多いこと。
86.委員会は、締約国に対し、前回の勧告、とくに、国内法が選択議定書第2条および第3条にしたがうことの確保(CRC/C/OPSC/FRA/CO/1、パラ19参照)、選択議定書に掲げられたすべての犯罪についての裁判権の確立(パラ21)、回復のための援助および被害賠償を提供された被害者の人数に関する細分化されたデータの体系的収集(パラ23(a))、被害を受けた子どものための十分なサービス(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)の確保およびこの点に関する市民社会組織との連携(パラ23(b))、被害を受けた子どもの保護に対応するすべての関係者を対象とする体系的かつ継続的な研修の確立(パラ23(c))、ならびに、被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることの確保(パラ23(d))に関連するものを実施するよう求める。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 児童買春に関与した客について捜査、訴追および有罪の宣告を行なうこと。
  • (b) 被害を受けたすべての子どもが適切なかつ安定した法的、社会的、教育的および医学的援助を受けることを確保するために、十分な社会教育的支援体制を確立する措置を含む措置をとること。
  • (c) 子どもに対して行なわれた強姦事件を犯罪として訴追すること。

I.国際人権文書の批准

87.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。

J.地域機関との協力

88.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。

IV.実施および報告

A.フォローアップおよび普及

89.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。

B.次回報告書

90.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回定期報告書を2021年3月5日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。
91.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2017年1月4日)。
最終更新:2017年01月04日 11:03