総括所見:シンガポール(OPAC・2014年)


CRC/C/OPAC/SGP/CO/1(2014年10月13日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2014年9月9日に開かれた第1914回会合(CRC/C/SR.1914参照)においてシンガポールの第1回報告書(CRC/C/OPAC/SGP/1)を検討し、2014年9月19日に開かれた第1929回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/SGP/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表明するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2011年2月4日に採択された、条約に基づく締約国の第2~3回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/SGP/CO/2-3)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.一般的所見

積極的側面
4.委員会は、締約国が以下の文書に加入しまたはこれを批准したことを歓迎する。
  • (a) 1949年8月12日のジュネーブ諸条約の第3追加議定書(2008年7月)。
  • (b) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)(2005年11月)。
  • (c) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(1999年)(2001年6月)。
  • (d) ジェノサイド犯罪の防止および処罰に関する条約(1995年8月)。

III.実施に関する一般的措置

立法
5.締約国が、選択議定書に基づく義務は国内法を通じて実施されていると述べたことには留意しながらも、委員会は、選択議定書のすべての規定が網羅されているかどうかについて締約国報告書に明確さが欠けていることを懸念する。
6.委員会は、締約国が、選択議定書が国内法体系に全面的に編入されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
独立の監視
7.軍の構成員を対象とする苦情申立て機構が存在することは歓迎しながらも、委員会は、当該機構が国防省によって運営されていることから、独立のかつ公正な苦情の取扱いが阻害されるおそれがあることを懸念する。
8.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野に関して国軍軍人(とくに18歳未満の国軍軍人)からの苦情を受理しかつこれを調査する明確な権限を有した苦情申立て機構を国防省の外に設置するとともに、その秘密保持およびアクセス可能性を確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。さらに、当該機構に対しては、十分に機能するために必要な人的資源、財源および技術的資源が提供されるべきである。
普及、意識啓発および研修
9.委員会は、締約国が、国際平和維持活動に参加する軍の要員を対象として人権および人道法に関する研修を実施していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書についてのいかなる具体的研修プログラムも存在しないことを遺憾に思うものである。さらに委員会は、選択議定書の規定に関する情報を普及するために限られた努力しか行なわれてこなかったことに懸念とともに留意し、かつ、子どもをとくに対象とする意識啓発措置がとられていないことをとりわけ遺憾に思う。
10.委員会は、選択議定書第6条第2項への注意を喚起するとともに、締約国に対し、一般公衆の間で選択議定書の原則および規定を周知させることを目的とした普及の努力を強化し、かつ、メディアのいっそうの関与等も通じて子どもの間で意識啓発を図るための具体的広報キャンペーンも発展させるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、選択議定書の実務上の適用に関する、軍の要員を対象とした体系的な教育モジュールを開発しかつ実施するよう、勧告するものである。

IV.防止

志願入隊
11.委員会は、選択議定書批准時の締約国の宣言によれば、16歳6か月に達した子どもはシンガポール軍に志願入隊できることに留意する。委員会はさらに、このような志願入隊において文書による年齢の証明、親または保護者の書面による同意および入隊者の完全なインフォームドコンセントが条件とされていることに留意するものである。しかしながら委員会は以下のことを遺憾に思う。
  • (a) 早期志願入隊制度に基づいてシンガポール軍に入隊した志願兵が、書面で3か月前に通告しなければ志願除隊を申請できないこと。
  • (b) 未成年の志願兵が軍法に服するものとされており、したがって付属軍事法廷による審理の対象とされること。
12.委員会は、締約国が、18歳未満の者の志願入隊の中止を検討するとともに、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 未成年の志願兵が除隊申請を行なうために必要とされる告知期間を相当に短縮すること。
  • (b) 未成年者であるいかなる志願兵も軍法または付属軍事法廷による審理の対象とされないこと、および、未成年者の志願兵が罪を問われたときは、審理が文民裁判所において、かつ条約に掲げられた少年司法に関する基準と一致する形で行なわれることを確保すること。
人権教育および平和教育
13.委員会は、人権教育および平和教育が学校カリキュラムに編入されていないことに、懸念とともに留意する。
14.委員会は、締約国が、学校カリキュラムに義務的な人権教育および平和教育を含め、かつ学校における平和および寛容の文化を奨励するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、教員およびソーシャルワーカーの養成教育および研修に人権教育および平和教育を含めるよう勧告するものである。

V.禁止および関連の事項

採用の禁止
15.委員会は、締約国が、子どもおよび若者の福祉、ケアおよび保護について定める主要な法律として子ども・若者法(Cap.38)を挙げていることに留意する。しかしながら委員会は、同法がいまなお16~18歳の子どもを対象としておらず、かつ、子どもの徴募または紛争状況下における使用を明示的に禁止するいかなる規定も欠いていることを遺憾に思うものである。
16.委員会は、締約国が、子どもの徴募または紛争状況下における使用の禁止規定を子ども・若者法(Cap.38)に明示的に含めるよう勧告する。その際、締約国は、徴募されもしくは紛争状況下で使用された子どもまたは他のいずれかの形で武力紛争の被害を受けた子どもの保護に関する明示的な法規定も含めるべきである。さらに、条約に基づく委員会の所見(CRC/C/SGP/CO/2-3、パラ28)を参照しつつ、委員会は、締約国が、国内法における子どもの定義を条約にしたがって調和させ、かつ、子ども・若者法の適用を拡大して18歳未満のすべての者を対象とするよう勧告するものである。
現行刑事法令
17.委員会は、16歳6か月に満たない者を通常軍務のために採用すること、および、18歳未満の入隊者による敵対行為への直接参加を認めることは入隊規則(Cap.93, Reg.1)第40条に基づいて犯罪となる旨の締約国の説明に留意する。しかしながら委員会は、このような犯罪に対する刑罰――2000シンガポールドルを超えない罰金もしくは12月を超えない収監またはその併科――が低すぎることを懸念するものである。委員会はまた、15歳未満の子どもの徴募が締約国の法律において戦争犯罪として定義されていないことも懸念する。
18.委員会は、締約国が法律を改正し、このような犯罪に対する罰金額および収監期間の双方を合理的水準まで引き上げるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、15歳未満の子どもの徴募を戦争犯罪として定義しかつ処罰するとともに、国際刑事裁判所を設置するローマ規程(2000年)の批准を検討するよう勧告するものである。
域外裁判権および犯罪人引渡し
19.委員会は、締約国が域外裁判権を行使していることに留意する。しかしながら委員会は、域外裁判権の適用が、1949年の4つのジュネーブ諸条約(これには選択議定書上のすべての犯罪が含まれているわけではない)に基づく国際人道法の重大な違反に限られていることを懸念するものである。さらに、犯罪人引渡しが可能であることには留意しながらも、委員会は、これが犯罪人引渡法(Cap.103)の別表1に列挙された犯罪に限られており、すなわち選択議定書上の犯罪の多くは対象とされていないことを懸念する。
20.委員会は、締約国が、以下のことを確保するために法律を改正するよう勧告する。
  • (a) 域外裁判権が選択議定書上のすべての犯罪について行使されること。
  • (b) 犯罪人引渡しに関する国内制度で引渡しが認められる犯罪のリストに、選択議定書上のすべての犯罪が含まれること。

VI.保護、回復および再統合

拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いまたは処罰
21.委員会は、シンガポール軍隊法に基づくさまざまな犯罪について、未成年の志願兵を含む軍の構成員に対して鞭打ちが科されていることを遺憾に思う。
22.条約に基づく委員会の総括所見(CRC/C/SGP/CO/2-3、パラ40)を参照し、かつ体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)に照らして、委員会は、締約国に対し、あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰(鞭打ちを含む)を法律で明確に禁止する目的で法改正を行なうために迅速な措置をとるよう促す。
被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置
23.委員会は、子どもの難民および庇護希望者のなかに選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもはいない旨の、締約国から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 国外において徴募されまたは武力紛争で使用された可能性のある子どもを特定するために設けられている機構についての情報が締約国報告書に記載されていないこと。
  • (b) 締約国が難民の処遇に関するいかなる条約の加盟国にもなっていないこと、難民の処遇に関する法律が存在しないこと、および、個別事案ごとのアプローチが不平等な処遇につながる可能性があること。
24.委員会は、選択議定書第7条に基づく義務に対して締約国の注意を喚起し、かつ条約に基づく委員会の前回の勧告(CRC/C/SGP/CO/2-3、パラ61)を参照しつつ、締約国に対し、国際基準にしたがって子どもの庇護希望者および難民(とくに保護者のいない子ども)の全面的保護を確保し、かつ、子どもの庇護希望者、難民または移住者であって国外で武力紛争に関与させられた可能性のある子どもを早期の段階で特定するための機構を整備するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、その際に以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 子どもに特化した難民の定義および子どもに配慮した庇護申請手続を適用するとともに、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民の特有のニーズに対応する手続的保障措置を定めること。
  • (b) あらゆる状況においてノンルフールマンの原則を維持すること。
  • (c) このような特定の担当者が子どもの権利、子どもの保護および子どもにやさしい面接スキルについての訓練を確実に受けているようにすること。
  • (d) いかなる子どもも、その出身国で選択議定書上のいずれかの犯罪の被害を受けていた場合または被害を受けるおそれがある場合には、当該出身国に強制的に送還されないことを確保すること。
  • (e) 武力紛争に関与させられた子どもまたはその可能性がある子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助が提供されることを確保するための、専門的サービスを発展させること。
25.委員会は、締約国が、難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書、無国籍者の地位に関する1954年の条約ならびに無国籍の削減に関する1961年の条約の批准を検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)を考慮することも勧告するものである。

VII.国際的な援助および協力

武器輸出および軍事援助
26.輸出入規制規則(Cap.272A, Reg.1)で国際連合安全保障理事会決議との一致を確保するための禁止が認められている旨の締約国の説明には留意しながらも、委員会は、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への小型武器および軽兵器の販売および輸出または軍事援助を禁止するいかなる法律も存在しないことを、遺憾に思う。委員会はさらに、クラスター弾に関する2008年の条約を締約国がまだ批准していないことに、懸念とともに留意するものである。
27.委員会は、締約国に対し、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への火器(小型武器および軽兵器を含む)の輸出およびあらゆる種類の軍事援助をとくに禁止する法律を採択し、かつ徹底的に実施するよう、促す。さらに委員会は、締約国に対し、クラスター弾に関する条約ならびに対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約を批准するよう奨励するものである。

VIII.通報手続に関する選択議定書の批准

28.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書ならびに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。

IX.フォローアップおよび普及

29.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見を議会、関連省庁(国防省を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、この総括所見が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
30.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.次回報告書

31.選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2015年2月23日)。