総括所見:カンボジア(OPSC・2015年)


CRC/C/OPSC/KHM/CO/1(2015年2月26日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2015年1月12日に開かれた第1931回会合(CRC/C/SR.1931参照)においてカンボジアの第1回報告書(CRC/C/OPSC/KHM/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合(CRC/C/SR.1983参照)において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/KHM/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2011年8月3日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~3回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3)、および、2015年1月30日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/KHM/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.一般的所見

積極的側面
4.委員会は、締約国が以下の文書に加入しまたはこれを批准したことに評価の意とともに留意する。
  • (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2007年7月)
  • (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2007年4月)
  • (c) 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号条約(1999年)(2006年3月)
  • (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2005年12月)
5.委員会はまた、以下のものを含む、選択議定書の実施の分野で締約国がとったさまざまな措置および地域的取り組みも歓迎する。
  • (a) 国家子どもの発達計画(2014~2018年)
  • (b) 人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の禁圧に関する国家行動計画(2011~2013年)の採択(2011年)、および、女性および子どもの人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の禁圧を主導する国家委員会の設置(2009年創設)
  • (c) 国際養子縁組法(2009年採択)
  • (d) 人身取引および性的搾取禁圧法(2008年採択)
  • (e) 最悪の形態の児童労働の撤廃に関する2008~2012年の国家行動計画
  • (f) 人身取引対策メコン流域諸国閣僚調整イニシアチブおよびその第2次準地域3か年行動計画(2007年採択)。

III.データ

データ収集
6.委員会は、既存のデータベースが主として人身取引に焦点を当てており、かつ、相互のリンクが不十分なうえに州および自治体レベルでアクセス可能とされていないことから、データ収集に関する締約国の努力が断片的なままに留まっていることを懸念する。委員会は、児童買春およびインターネット上の児童ポルノに関する調査研究、情報、および、とくに性別、年齢、国籍および民族的出身、地理的所在ならびに社会経済的地位によって細分化されたデータが存在しないために、選択議定書上のこれらの犯罪を監視し、評価しかつ防止する締約国の能力が著しく制限されていることを、とりわけ懸念するものである。
7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野(児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムを含む)に関するデータ収集、分析、監視および影響評価を行なう、包括的な、調整のとれたかつ効果的なシステムを発展させかつ実施するための努力を強化するよう勧告する。データは、選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国籍および民族的出身、地域ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきである。

IV.一般的実施措置

国家的行動計画
8.委員会は、子どもの人身取引および性的搾取対策国家行動計画(2011~2013年)が2011年12月7日に採択され、かつ、2014~2018年の期間を対象とする新たな行動計画が採択される予定であることを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされている分野で締約国がとった措置について、新たな行動計画に基づくさらなる戦略の参考とするための十分な評価が行なわれておらず、かつ同行動計画の採択および実施が遅れていることを懸念するものである。
9.条約に基づく総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3、パラ13)を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの人身取引および性的搾取に対抗する新たな行動計画の採択を速やかに進めること。当該行動計画には、選択議定書で対象とされているすべての問題が含まれ、かつ、防止、被害を受けた子どもの保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合、ならびに、選択議定書で対象とされている犯罪の捜査および訴追を目的とした措置が掲げられるべきである。
  • (b) 新たな行動計画を、計画の実施状況を評価するための明確な指標および予定ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた包括的な政策および戦略に編入することを検討すること。
  • (c) さらなる戦略および政策の策定の参考とするため、とられたすべての措置について定期的な監視および評価を実施すること。
調整
10.委員会は、選択議定書に関連する政策およびプログラムの全般的な調整、監視および実施のためにカンボジア国家子ども評議会が設置されたことに、肯定的措置として留意する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされている分野においてカンボジア国家子ども評議会と「女性および子どもの人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の禁圧を主導する国家委員会」の調整機能が重複しているために、選択議定書を効果的に実施する締約国の能力が阻害されかねないことを懸念するものである。
11.条約に基づく総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3)のパラ11を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている分野における子どもの権利政策の策定および実施に携わる既存の機関間の調整機構を整理することにより、カンボジア国家子ども評議会の権限および調整役割をさらに強化するよう勧告する。
普及および意識啓発
12.人身取引に関する意識啓発を図るための締約国の取り組みには留意しながらも、委員会は、選択議定書の促進および普及が、とくに実施機関、親、教員、法執行要員、子どもおよび公衆一般の間で十分ではないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書に関連する問題が子どもを対象とする学校カリキュラムにまだ含まれていないことにも、懸念とともに留意するものである。
13.委員会は、締約国に対し、選択議定書の規定を広く知らせるためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。この目的のため、締約国はとくに以下の措置をとるべきである。
  • (a) 選択議定書で対象とされているすべての犯罪の防止措置および有害な影響に関する長期的な教育プログラムおよび意識啓発プログラム(援助に関するものおよび子どもが選択議定書上の犯罪の被害者となることを防止するために設置されている通報機構に関するものを含む)を、コミュニティ、市民社会組織および子どもたちと協議しながら発展させかつ実施すること。
  • (b) 国、州および地区の政府職員の間でならびにあらゆる関連の専門家集団(とくに警察官、裁判官および検察官)に対して、選択議定書を体系的に普及すること。
  • (c) 選択議定書に関連する問題を初等中等学校のカリキュラムに編入することを検討すること。
研修
14.政府間機関および非政府組織と連携しながら人身取引に関する研修活動が実施されてきたことには留意しながらも、委員会は、選択議定書上のすべての犯罪が研修活動によって十分に取り上げられているわけではなく、とくに遠隔地および農村部において、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が対象とされているわけではなく、かつ、関連の専門家(とくに警察および少年司法の運営に従事する専門家)が選択議定書の規定について十分な研修を受けていないことを懸念する。委員会はさらに、選択議定書で求められている防止活動および保護活動を実行するための、訓練を受けたソーシャルワーカーの人数がコミューンおよび地方のレベルで限られていることを懸念するものである。
15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団ならびに裁判官、警察官および公務員(州および自治体レベルの専門家を含む)を対象として、選択議定書の規定およびその実施についてとくに取り上げる体系的なかつ焦点の明確な研修を確保するため、十分な資源を配分すること。
  • (b) そのような研修に、コミュニティ、市民社会組織および被害を受けた子どもと協議しながら開発された学際的研修プログラムが含まれることを確保すること。
  • (c) 被害者の特定および選択議定書で対象とされている犯罪からの子どもの保護を効果的に進める目的で、習得された知識およびスキルが実践で活かされることを確保するため、研修活動の定期的評価を実施すること。
  • (d) コミューンのレベルでソーシャルワーカーの募集および訓練を進め、かつこれらのソーシャルワーカーがその役割を履行するための十分な資金を配分するための努力を強化すること。

V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項および第2項)

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
16.選択議定書で対象とされている犯罪を防止するために若干の措置がとられてきたこと(村およびコミューンにおける安全方針の確立ならびに子どもの保護に関する閣僚会議令および行動規範の策定、ならびに、子どもの保護に関する国家委員会の設置を含む)には留意しながらも、委員会は、
選択議定書で禁じられている犯罪についての防止措置が依然として不十分かつ断片的であることを深く遺憾に思う。委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 子どもが選択議定書上の犯罪の被害を受けやすくなることにつながる基本的な根本的原因および助長要因(貧困および失業など)に対し、十分な対応がとられていないこと。
  • (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがとくに高い子ども(とくに路上の状況にある子ども、移住者である子どもおよび保護者のいない子どもならびに親が就労のために移住する際、後に残された子ども)を発見し、特定しかつモニターするための機構が不十分であること。
  • (c) 締約国における出生登録率が低く、選択議定書上の犯罪の遂行を容易にする要因のひとつとなっていること。
  • (d) とくに興行施設において子どもの性的搾取が大規模に行なわれており、かつ蔓延していること。
  • (e) 強制労働、とくに家事労働および危険な労働(製造業、採鉱業、農業およびサービス業にかかるインフォーマルセクターにおける労働など)における子どもの搾取を防止するために締約国がとった措置が限定的であること。
  • (f) 不法な養子縁組から子どもを保護するためにとられた措置について締約国から情報が提供されなかったこと、および、国際養子縁組法に基づく閣僚会議令の制定が遅れていること。
  • (g) 情報通信技術を通じてネット上で広く入手可能なポルノグラフィ―に子どもが出演しており、かつ多数の子どもが売春に従事している問題に取り組むための措置が不十分であること。
17.前回の総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3)のうち児童労働(パラ68)あらびに性的搾取および虐待(パラ72)に関する所見を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 選択議定書上の犯罪に関連する根本的原因およびリスク要因(貧困、失業および季節就労を含む)に対応し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれた、選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれのある子どもを対象とする、包括的なかつ焦点の明確なアプローチを採用すること。
  • (b) 委員会の他の総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3、パラ37およびCRC/C/OPAC/KHM/CO/1、パラ14)で勧告されているように、すべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続すること。
  • (c) インフォーマルセクター、危険な労働場所および興行施設で働く子どもを保護する目的で、防止を目的とする現行の法律ならびに行政措置、社会政策および社会プログラムの執行を強化し、かつ労働監察官を増員すること。
  • (d) 未決案件となっている国際養子縁組法施行令を採択し、不法な養子縁組を防止するためのプログラムを策定しかつ実施し、かつ、斡旋機関の認可および監視ならびに斡旋機関がさまざまなサービスについて請求する料金を規制することにより、養子縁組のすべての事案が選択議定書とならびに国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の原則および規定と全面的に一致する形で行なわれることを確保すること。
  • (e) 児童ポルノおよび児童買春と闘い、インターネット上の安全に関する教育を子どもに対して提供することによってインターネット関連のリスクに対処し、かつ、性的搾取を目的とする子どもへの需要の問題に取り組むための、焦点の明確なキャンペーンおよび専門教育プログラムを実施すること。
児童セックスツーリズム
18.委員会は、観光業法の採択、子どもにとって安全な観光委員会の設置ならびに子どもにとって安全な観光に関するキャンペーンおよびさまざまな観光業関係者を対象とする研修活動など、児童セックスツーリズムを防止するために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 締約国のさまざまな地域、とくに農村部において、旅行および観光を背景とする子どもの性的搾取が継続的に行なわれている旨の報告があること。
  • (b) いわゆる孤児院観光という現象が増えているように思われること。そこでは、施設および孤児院の子どもが、観光客およびボランティアワーカーのような外国人による性的搾取にさらされている。
19.委員会は、締約国に対し、児童セックスツーリズムおよび孤児院観光を防止し、かつ、規制の枠組みおよび意識啓発措置を強化することによって子どもが被害者とならないようにするための努力を継続するとともに、児童セックスツーリズムおよび孤児院観光のすべての事件が捜査の対象とされることならびに加害者とされる者が訴追されかつしかるべき制裁の対象とされることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 児童セックスツーリズムの有害な影響について観光業界およびメディアへの働きかけを実施し、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励すること。
  • (b) 代替的養護に関する最低基準を維持する目的ですべての代替的養護施設に対する、かつ興行施設に対する、訪問監視および査察の実行を強化すること。
  • (c) 未決案件となっている代替的養護施設の運営についての閣僚会議令を速やかに採択することによって立法上および規制上の枠組みを強化するとともに、すべての代替的養護施設の義務的登録が引き続き執行されることを確保すること。
  • (d) 子どもに直接接して働くすべてのスタッフおよび(または)ボランティアの背景確認が組織的に行なわれることを確保すること。
  • (e) 居住型養護を受けている子どもを対象とする、秘密が守られかつ安全な通報手続を設けること。

VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条第2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条)

現行刑事法令
20.委員会は、法律が選択議定書の規定に一致することを確保するために締約国が行なっている努力に評価の意とともに留意し、かつ、人身取引および性的搾取禁圧法に児童ポルノの包括的定義が編入されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、同法に欠陥が残っており、選択議定書第2条および第3条に定められた諸犯罪の定義が全面的に反映されているわけではないことに、懸念を表明するものである。とくに、委員会は以下のことに留意する。
  • (a) 子どもの売買罪の諸要素が法律において包括的に定義されておらず、かつ、実力またはその他の形態の威迫の要素(欺罔の使用、権限の濫用、監禁または脅迫など)が必要とされていること。
  • (b) 児童ポルノ罪の定義が制限的に過ぎること(選択議定書第2条(c)で規定されたすべての要素を十分に包含しておらず、かつ、配布を意図せずに移動ポルノを所持することが犯罪とされていないため)。
21.委員会は、締約国に対し、人身取引および性的搾取禁圧法を改正するとともに、あらゆる形態の子どもの売買および児童ポルノを適正に定義しかつ犯罪化することによって同法を選択議定書第2条および第3条と全面的に一致させるよう、促す。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。
  • (a) 選択議定書第3条(a)にしたがった子どもの売買の包括的定義(これには、性的搾取または不法な養子縁組、子どもを強制労働に従事させることおよび利得を目的とした子どもの臓器移植を目的として子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ることが含まれる)の編入によって同法を改正するとともに、同法第12条に掲げられた、あらゆる形態の子どもの売買における実力またはその他の形態の威迫の要素の要件を廃止すること。
  • (b) 選択議定書第2条(c)および第3条(c)に掲げられた児童ポルノの定義を拡大することにより、あからさまな性的活動に従事している子どもを描いたものではない子どもの思わせぶりな描写も明示的に含め、かつ、児童ポルノを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供しまたは販売する行為とともに、児童ポルノを所持し、または情を知ってこれにアクセスしもしくはこれを閲覧する行為を包含すること。
不処罰
22.委員会は、訴追率および有罪判決率の低さに表れているように、締約国の立法上の枠組みの執行が限られていることにより、選択議定書上の犯罪が処罰されない状況が依然として蔓延していることを深く懸念する。とくに委員会は、法執行官によって促進される、被害者と加害者の和解の形態をとった裁判外の解決が広く行なわれていること、および、警察を含む公的職員の間で汚職が高い水準で行なわれていることにより、加害者を捜査しかつ訴追するための締約国の努力が深刻に阻害されていることを懸念するものである。
23.委員会は、締約国に対し、加害者が享受している不処罰と闘い、かつ、選択議定書上の犯罪が捜査されることおよび加害者とされる者が訴追されかつしかるべき制裁の対象とされることを確保するための努力を強化するよう、促す。この目的のため、締約国は以下の措置をとるべきである。
  • (a) すべての検察官を対象として、事件を積極的に訴追するよう明確な訓令を発するとともに、選択議定書上の犯罪の加害者に対して刑事手続が組織的にとられることを確保すること。
  • (b) 政府職員による共犯の告発について厳格な捜査を行なうことにより、汚職の問題に優先的課題として対応するとともに、選択議定書で対象とされている犯罪への対応に際して何らの措置もとらずかつ(または)汚職に関与した法執行官および警察官に制裁が科されることを確保すること。
域外裁判権および犯罪人引渡し
24.委員会は、締約国の法律により、人身取引および性的搾取禁圧法に定められた犯罪であって国外で自国の市民が行なったものまたは自国の市民に対して行なわれたものについて域外裁判権を設定しかつ行使することが可能とされていることに、肯定的措置として留意する。犯罪人引渡しの条件として締約国と申請国との間に条約が締結されていなければならないことに留意しつつ、委員会は、そのような取決めが存在しない場合、すべての犯罪人引渡し事案において双方可罰性要件が適用されることを懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪が国外で行なわれた場合に、当該犯罪についての犯罪人引渡しに関して双方可罰性要件を廃止し、かつ、選択議定書第5条にしたがい、二国間または多国間の犯罪人引渡し条約が締結されていないときは選択議定書を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることを検討するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。

VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および第4項)

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
26.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもの権利および利益の保護に向けた措置をとってきたこと(「子どもの代替的養護に関する国家政策および最低基準」、「被害を受けた子どもの権利の保護に関する原則」および人身取引・性的搾取被害者の特定および付託に関する指針案の採択など)に留意する。しかしながら委員会は、選択議定書上の犯罪についての理解および意識の水準が低いことにより、売買、買春およびポルノの被害を受けた子どもが自己の権利を主張できなくなっていることを、依然として懸念するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。
  • (a) 法執行機関および司法機関への信頼感の欠如が広がっているため、選択議定書上の犯罪が過少にしか通報されていないこと。
  • (b) 苦情申立ておよび通報のための機構へのアクセスが限られていること。
  • (c) 選択議定書で保護されている子どもの権利の侵害に対応する法執行官の能力が弱いこと。
  • (d) 選択議定書で禁じられたすべての犯罪について、その被害を受けた子どもを特定するためにとられた措置が不十分であること。
  • (e) 被害を受けた子どもを十分に保護するための、警察、裁判所職員および政府機関間の調整機構が不十分であること。
  • (f) 選択議定書第9条第4項にしたがい、法的に責任を負う者から被害賠償を受けられるかどうかについての情報がないこと。
27.選択議定書第9条第3項に照らし、委員会は、締約国が、既存の枠組みの抑止効果を強化する目的で、あらゆる形態の子どもの性的搾取との闘いに対して公的アジェンダにおいて高い優先順位を与えるよう勧告する。その際、締約国は以下の措置をとるべきである。
  • (a) コミュニティレベルの苦情申立て機構が、選択議定書上の自己の権利を侵害された可能性のある子どもにとって容易にアクセス可能でありかつ利用可能であることを確保すること。
  • (b) 専門的研修を通じ、地方機関および司法機関を含むあらゆる法執行機関の能力を強化すること。
  • (c) 法執行機関、関連省庁および社会サービス機関間で情報の共有および協力を図るための機構を増やすこと等を通じ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの早期発見および特定のための機構および手続を確立すること。
  • (d) 選択議定書第9条第4項にしたがい、被害を受けたすべての子どもが法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを保障するとともに、加害者から賠償を得られない場合に、被害を受けた子どもに対して補償を行なうための基金を設置すること。
刑事司法制度における保護措置
28.委員会は、すべての州で法廷遮蔽措置がとられていることおよび子どもの証言を記録するビデオリンク試験プロジェクトが進められていることを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪の被害者および証人である子どもを保護するための公式プログラムを設けておらず、かつ、その結果、これらの子どもが司法制度において適切な保護を提供されていないこと。
  • (b) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに対し、刑事司法手続の間、無償の法的援助ならびに児童心理学者およびソーシャルワーカーの支援が十分に提供されていないこと。
  • (c) 2008年に採択された人身取引および性的搾取禁圧法第24条の規定にもかかわらず、買春および人身取引の被害を受けた子どもが法執行官によって時として犯罪者として扱われていること。
29.選択議定書第8条第1項および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害者および(または)証人であるすべての子どもが、捜査および公判の手続全体を通じて刑事司法制度によって子どもに配慮したやり方で扱われ、かつ十分な援助を提供されることを、十分な法律上の規定および規則を通じて確保するよう促す。とくに、締約国は以下の措置をとるよう要請されるところである。
  • (a) 刑事手続および司法手続のすべての段階でそのような援助を提供することに関する、子どもに配慮した明確な手続および基準を確立すること。
  • (b) 子どもが法廷遮蔽措置を利用できることを確保し、かつ、ビデオリンク・プロジェクトを締約国のすべての州に拡大すること。
  • (c) 被害を受けた子どもに対し、無償の法的援助または法的援助のための補助ならびに児童心理学者およびソーシャルワーカーの支援を提供すること。
  • (d) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが実務において犯罪者として扱われないこと、および、法執行官がこの点に関する締約国の法律を知らされることを確保すること。
被害者の回復および再統合
30.委員会は、回復および再統合に関する締約国の措置が人身取引被害者に限定されており、かつ、資源が欠乏していることならびに十分な訓練を受けたスタッフおよび官吏の人数が不十分であることを理由として、とくにコミューンのレベルで、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものニーズを十分に考慮していないことを、懸念する。委員会はまた、国が運営するリハビリテーションおよび再統合のプログラムが存在しないこと、ならびに、社会的再統合および援助が主として非政府組織および国際連合諸機関によって行なわれる業務となっており、警察および社会問題・復員兵・青年省の関与および支援が不十分であることも、遺憾に思うものである。
31.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもに対し、とくにコミューンのレベルで適切な援助(その身体的および心理的回復ならびに全面的な社会的再統合のための援助を含む)が提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国が運営する社会サービスの利用可能性を高め、かつ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもへの援助を支援しかつ調整する政府機関の能力を強化することにより、このような努力について全面的責任を負うよう求めるものである。締約国はまた、子どもの回復および再統合のための政策およびプログラムの策定において子どもの参加を確保することも求められる。

VIII.国際的な援助および協力(第10条)

多国間、二国間および地域間の取り決め
32.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪について防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。
国際協力
33.これとの関連で、委員会はまた、締約国が、締約国が、とくに国際連合人権高等弁務官事務所および国際連合児童基金と協力し、かつ両機関の技術的援助を求めることも勧告する。

IX.通報手続に関する選択議定書の批准

34.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。

X.フォローアップおよび普及

フォローアップ
35.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会、最高裁判所ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
総括所見の普及
36.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

XI.次回報告書

37.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


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