子どもの権利委員会・一般的意見13号:あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利(3)


V.より幅広い条約上の文脈における第19条の解釈

59.子どもの権利アプローチの定義。権利を有する者としての子どもの尊厳、生命、生存、ウェルビーイング、健康、発達、参加および非差別を尊重することを、子どもに関わる締約国の政策の際立った目標として確立および擁護することが求められる。これを実現する最善の方法は、条約(およびその選択議定書)に掲げられたすべての権利を尊重、保護および履行することである。そのためには、子どもが、保護に対する不可譲の権利を有する権利の保有者としてではなく、援助を必要とする「客体」として見なされかつ扱われる子どもの保護アプローチからの、パラダイム転換が必要となる。子どもの権利アプローチは、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益の考慮(第3条第1項)、生命、生存および発達(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)を常に指針としながら、義務の保有者が権利を尊重、保護および履行する義務を果たす能力および権利の保有者が自己の権利を請求する能力を発展させることにより、条約に掲げられた子どもの権利の実現を前進させるアプローチである。子どもはまた、自己の権利を行使するにあたり、子どもの発達しつつある能力にしたがって、養育者、親およびコミュニティの構成員による指示および指導を受ける権利も有する(第5条)。この子どもの権利アプローチはホリスティックであり、子ども自身の、そして子どもがその一員であるすべての社会システム(家族、学校、コミュニティ、諸制度、宗教的システムおよび文化的システム)の強さおよび資源を支えることを重視するものである。
60.第2条(差別の禁止)。委員会は、あらゆる形態の暴力からの保護に対する権利を、すべての子どもに対して、「子どもまたは親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位にかかわらず、いかなる種類の差別もなしに」保障するために、締約国が十分な措置をとらなければならないことを強調する。これには、商業的性的搾取を受けた子ども、路上の状況にある子どももしくは法に抵触した子どもへの偏見に基づく差別、または子どもの衣服および行動に基づく差別も含まれる。締約国は、この一般的意見のパラ72(g)に掲げた子どものような、被害を受けやすい状況に置かれたまたは周縁化された集団の子どもに対する差別に対応するとともに、このような子どもが他のすべての子どもとの平等を基礎として保護に対する権利を保障されることを確保するために積極的努力を行なわなければならない。
61.第3条(子どもの最善の利益)。委員会は、子どもの最善の利益の解釈が、条約全体(あらゆる形態の暴力から子どもを保護する義務も含む)に一致するものでなければならないことを強調する。子どもの最善の利益の解釈を、子どもの人間の尊厳および身体的不可侵性に対する権利と衝突する慣行(体罰および他の形態の残酷なまたは品位を傷つける罰を含む)を正当化するために用いることはできない。子どもの最善の利益に関するおとなの判断により、条約に基づく子どものすべての権利を尊重する義務が無効化されることはありえない。委員会はとくに、子どもの最善の利益は以下の方法を通じてもっともよい形でかなえられることを主張するものである。
  • (a) 国家的な調整枠組みのなかで第一次予防に焦点を当てる必要性を重視しながら、あらゆる形態の暴力を防止し、かつ前向きな子育てを促進すること。
  • (b) 子どもの権利を基盤とする統合的な子ども保護・支援システムの実施に振り向けられる人的、財政的および技術的資源に対し、十分な投資を行なうこと。
62.第6条(生命、生存および発達)。あらゆる形態の暴力からの保護は、「生命」および「生存」に対する子どもの権利のみならず「発達」に対する権利の観点からも考慮されなければならず、かつ「発達」は子どもの保護という全般的目標に沿って解釈されなければならない。したがって、締約国の義務には、生命、生存および発達に対する子どもの権利を損なう暴力および搾取からの包括的保護も含まれる。委員会は、各国が、ホリスティックな概念としての「発達」をもっとも広く、すなわち子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものとして解釈するよう期待する。実施措置においては、すべての子どもの最適な発達を達成することが目的とされるべきである。
63.第12条(意見を聴かれる権利)。委員会の見解では、子ども参加は保護を促進するのであり、かつ子どもの保護は参加の鍵である。意見を聴かれる子どもの権利は、暴力の被害をとくに受けやすい乳幼児からすでに始まっている。子ども保護プロセスのあらゆる段階で、義務的措置として子どもの意見が促され、かつ正当に重視されなければならない。意見を聴かれる子どもの権利は、暴力の状況においてとりわけ関連性を有する(委員会の一般的意見12号(2009年)、パラ118以下参照)。家族および子育てに関して、委員会は、この権利が、家庭および家族におけるあらゆる形態の暴力に対する予防的役割を果たすと表明した。委員会はさらに、防止戦略一般および学校における防止戦略の策定、とくに学校におけるいじめその他の形態の暴力の解消および防止への子ども参加の重要性を強調する。子どもたち自身の暴力解消能力の強化を目的とした取り組みおよびプログラムが支援されるべきである。暴力を経験することは本質的にディスエンパワーメントにつながるので、子どもの保護のための介入が子どものさらなるディスエンパワーメントをもたらすのではなく、むしろ慎重なファシリテーションに基づく参加を通じてその回復および再統合に寄与することを確保するため、配慮のある措置が必要である。委員会は、とくに周縁化されたおよび(または)差別された集団が参加の障壁に直面していることに留意する。子どもは暴力の影響をもっとも受ける集団のひとつであることが多いため、これらの障壁に対応することは、子どもの保護にとってとりわけ関連性がある。
64.条約の以下の2つの条項も総括的な関連性を有しており、第19条の実施にとってとりわけ重要である。
65.第4条(適当な措置)。第4条は、締約国に対し、条約上のすべての権利(第19条を含む)を実施するためにあらゆる適当な措置をとる義務を課している。条約第4条の適用に際しては、第19条に掲げられたあらゆる形態の暴力から保護される権利は市民的権利および自由のひとつであることが留意されなければならない。したがって、第19条の実施は、締約国が有する即時的かつ無条件の義務である。第4条に照らし、国は、自国の経済的事情がいかなるものであろうと、子どもの権利の実現に向けてあらゆる可能な措置をとることを要求される。その際、もっとも不利な立場にある集団に特別な注意を払うことが必要である(委員会の一般的意見5号、パラ8参照)。同条は、利用可能な資源が最大限活用されなければならないことを強調している。
66.第5条(発達しつつある能力に一致した指示および指導)。第19条を実施するためには、子どもの養育および保護ならびに暴力の防止における親、拡大家族、法定保護者およびコミュニティの構成員の第一義的重要性を認めかつ支えることが必要である。このアプローチは、条約で認められた権利(第19条を含む)を子どもが行使するにあたって、子どもの能力の発達と一致する方法で適当な指示および指導を行なう養育者の責任、権利および義務の尊重を促進する、第5条と一致している。(国家的な調整枠組みおよび家族に関わるその他の条項の文脈における家族の第一義的重要性について、パラ72(d)も参照。)
67.その他の関連条項。条約には、暴力および子どもの保護に明示的または黙示的に関連する条項が多数含まれている。第19条はこれらの条項とあわせて理解されるべきである。このような包括的言及は、あらゆる形態の暴力が子どもの権利の実施に与えている広範な脅威を考慮に入れ、かつ生活および発達のあらゆる状況において子どもの保護を確保することの必要性を実証している。

VI.子どもに対する暴力についての国家的調整枠組み

68.国家的行動計画を超えて。委員会は、子どもの権利を実施するために締約国が採択した多くの国家的行動計画に、子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止、防止および解消するための措置が含まれていることを認める。とはいえ、このような行動計画は、子どもによる自己の権利の享受の増進に貢献する一方で、その実施、監視、評価およびフォローアップの面で多くの課題に直面してきた。たとえば、このような行動計画は、開発に関わる全般的な政策、プログラム、予算および調整機構との結びつきを欠いていることが多い。より実行可能かつ柔軟な手段を確立するため、委員会は、子どもをあらゆる形態の暴力から保護しかつ保護的な環境を支えるための、子どもの権利を基盤とするあらゆる措置を対象とする、「子どもに対する暴力についての調整枠組み」を提案する [24]。このような調整枠組みは、国家的行動計画がまだ存在しない場合または非実際的であることが明らかになりつつある場合、それに代えて活用することが可能である。国家的行動計画がすでに効果的に実施されている場合でも、調整枠組みは、これらの努力を補完し、議論を喚起し、かつその機能を向上させるための新しいアイデアおよび資源を創出することにつながりうる。
69.子どもに対する暴力についての国家的調整枠組み。調整枠組みを設けることにより、政府省庁間で、またあらゆるレベルにおける国および市民社会の行為主体にとっても、第19条で特定されている一連の措置の全般を通じ、かつそこで明らかにされている介入の段階ごとに、必要とされている措置に関わる共通の参照枠組みおよび伝達機構を用意することができる。また、柔軟性および創造性を促進するとともに、政府およびコミュニティが同時並行的に主導しながらも、凝集性を備えかつ調整のとれた全般的枠組みに収まる取り組みの発展および実施を可能にすることにもつながりうる。委員会はすでに、これまでの勧告および一般的意見(実施に関する一般的実施措置についての一般的意見5号を含む)において、締約国に対し、条約の特定の側面(たとえば少年司法または乳幼児期)に関する計画および戦略を策定するよう促してきた。委員会はこのような流れのなかで、あらゆる形態の暴力からの保護(包括的な防止措置を含む)に関する国家的調整枠組みの策定を勧告しているのである。
70.異なる出発点。委員会は、あらゆる形態の暴力から子どもを保護することはほとんどの国において大きな課題であり、かつ、締約国は、既存の法律上、制度上およびサービス上の基盤、文化的習慣および専門家の力量ならびに資源水準の面で非常に異なる状況を出発点として措置を立案および実施しようとしていることを認知する。
71.国家的調整枠組みの策定プロセス。あらゆる形態の暴力からの自由に関するこのような調整枠組みについて、単一のモデルは存在しない。別個の子ども保護システムに投資してきた国もあれば、子どもの権利の実施に関わる主流のシステムに保護に関わる問題を統合するほうが望ましいと考える国もある。システムの実施の成功にとってその発展プロセスがきわめて重要であるのは、経験が示すところである。あらゆる関係集団の上級代表による参加およびオーナーシップを確保するため、熟練したファシリテーションが必要となる。このようなプロセスは、適当な意思決定権限を有し、定期的に会合し、かつ野心的であろうとする覚悟を備えた分野横断型の作業部会を通じて進めることが望ましい。あらゆる形態の暴力を防止しかつこのような暴力からの保護を提供するシステムは、すでに公式・非公式に存在する態勢、サービスおよび組織の長所を発展させる形で構築されるべきである。第19条およびより幅広く条約全体ならびにその他の国際的・地域的人権文書に掲げられた義務に基づいて、かつ、子どもに対する暴力に関する国際連合研究、この一般的意見および追加的実施支援策に掲げられた指針を裏づけとしながら、欠陥を特定および是正することが求められる。国家的な計画策定は、一般公衆に対して全面的に開かれ、かつ政府、NGO、研究者および職業実務の専門家、親ならびに子どもの参加が保障された、透明かつ包摂的なプロセスであるべきである。このようなプロセスは、子どもおよびおとなの双方にとってアクセスしやすくかつわかりやすいものであることが求められる。国家的調整枠組みの費用見積もりおよび財源手当ては、人的資源および技術的資源も含めて全面的に行なわれるべきであり、かつ可能であれば国の子ども予算で提示されるべきである。
72.国家的調整枠組みの主流に位置づけられるべき要素。以下の要素が、(立法上、行政上、社会上および教育上の)種々の措置および(防止から回復および再統合に至る)介入の諸段階全般を通じて主流に位置づけられなければならない。
  • (a) 子どもの権利アプローチ。このアプローチは、子どもは権利の保有者であり、おとなによる善意の活動の受益者ではないという宣言に基づくものである。これには、調整枠組みおよびそこでとられる具体的措置の立案、実施、監視および評価に際して、子どもまたは子どもたちの年齢および発達しつつある能力を考慮しながら、子どもとの協議および協力ならびに子どもの主体性を尊重しかつ奨励することが含まれる。
  • (b) 子どもに対する暴力にともなうジェンダーの側面。締約国は、政策および措置において、さまざまな場面で生じているさまざまな形態の暴力との関連で女子および男子が直面している異なるリスクが考慮されることを確保するべきである。国は、包括的な暴力防止戦略の一環としてあらゆる形態のジェンダー差別に対応することが求められる。これには、家庭、学校および教育現場、コミュニティ、労働現場、施設ならびにより幅広い社会における暴力および威迫の使用を支えかつ永続させている、ジェンダーに基づくステレオタイプ、力の不均衡、不平等ならびに差別への対応が含まれる。男性および男子は、戦略的パートナーおよび同盟者として積極的な励ましの対象とされなければならず、かつ、女性および女子とともに、相互の尊重と、ジェンダー差別およびその暴力的表出に終止符を打つ方法についての理解を高める機会を提供されなければならない。
  • (c) 第一次(一般)予防。詳しくはこの一般的意見のパラ42参照。
  • (d) 子どもの養育および保護のための戦略における家族の第一次的立場 [25]。家族(拡大家族およびその他の形態の家族型養護体制を含む)は、子どもの保護および暴力の防止に関して最大の潜在的可能性を有している。家族はまた、子どもが自分自身を守るのを支援し、かつそのためのエンパワーメントを図ることもできる。したがって、家族生活を強化し、家族を支え、かつ課題を有する家族とともに活動することが、介入のすべての段階、とくに(望ましい子どもの養育の確立を通じた)防止および早期介入における優先的な子ども保護活動に位置づけられなければならない。ただし委員会は、子どもが経験する暴力(性的虐待を含む)の多くが家族的文脈のもとで生じていることも認め、子どもが家族構成員による暴力にさらされているときは家族に介入する必要があることを強調するものである。
  • (e) 回復力および保護的要因。回復力および保護的要因、すなわち人身の安全を促進し、かつ虐待およびネグレクトならびにその否定的影響を少なくする内外の長所および支援を理解することは、このうえなく重要である。保護的要因には、安定した家族、子どもの身体的および心理的ニーズを満たすおとなによる愛情に満ちた子育て、前向きかつ非暴力的なしつけ、少なくともひとりのおとなに対する子どもの確固たる愛着、仲間およびその他の者(教員を含む)との支援的関係、向社会的、非暴力的かつ非差別的な態度および行動を醸成する社会環境、コミュニティにおける高水準の社会的結合、ならびに、豊かな社会的ネットワークおよび隣近所のつながりが含まれる。
  • (f) リスク要因。子ども個人または子どもたちの集団が一般的にまたは特定の文脈においてさらされている可能性があるリスク要因を少なくするため、積極的な、目的志向型の措置がとられなければならない。これには、親のリスク要因(有害物質濫用、精神保健上の問題および社会的孤立など)ならびに家族のリスク要因(貧困、失業、差別および周縁化など)が含まれる。世界的に、0~18歳の子どもはすべて、その神経的、心理的、社会的および身体的発育および発達が完了するまでは被害を受けやすいと見なされている。赤ん坊および乳幼児は、発達途上の脳が未成熟であることおよびおとなに完全に依存していることから、よりリスクが高い。女子と男子の双方がリスクにさらわれているが、暴力はしばしばジェンダーの要素をともなう。
  • (g) 潜在的に被害を受けやすい状況にある子ども。暴力にさらされる可能性が高い子ども集団には以下のような子どもが含まれるが、これにはかぎられない。すなわち、生物学的親と暮らしておらずさまざまな形態の代替的養護のもとにある子ども、出生登録されていない子ども、路上の状況にある子ども、実際に法に抵触した子どももしくはそのように見なされている子ども、身体障害、感覚器障害、学習障害、心理社会的障害ならびに先天性、後天性および(もしくは)慢性の疾病または重度の行動上の問題がある子ども、先住民族 [26] その他の民族的マイノリティの子ども、マイノリティである宗教的もしくは言語的集団に属する子ども、レズビアン、ゲイ、トランスジェンダーもしくはトランスセクシュアルである子ども、有害な伝統的慣行を受けるおそれがある子ども、早期婚をした子ども(とくに女子およびとくに強制婚の場合。ただし強制婚だけが問題なのではない)、最悪の形態のものを含む有害な児童労働に従事している子ども、移民もしくは難民として移動中の子どもまたは避難民化した子どもおよび(もしくは)人身取引の対象とされた子ども、すでに暴力を経験したことがある子ども、家庭およびコミュニティで暴力を経験および目撃している子ども、銃、武器、薬物およびアルコールの入手が容易な可能性がある、社会経済的指標が低い都市環境で暮らしている子ども、事故もしくは災害の被害を受けやすい地域または有毒な環境下で暮らしている子ども、HIV/AIDSの影響を受けているもしくは自身もHIVに感染している子ども、栄養不良の子ども、他の子どもから世話されている子ども、自身が養育者および世帯筆頭者である子ども、親自身も18歳未満である子ども、望まれずに、未熟児としてもしくは多子出産の一環で生まれた子ども、監督もしくは養育者との接触が不十分なまま入院している子ども、または身を守るための十分な保護措置、監督もしくはエンパワーメントがないままICTにさらされている子どもなどである。緊急事態下にある子どもは、社会的紛争、武力紛争、自然災害その他の複雑かつ長期的な緊急事態の結果として社会制度が崩壊し、子どもが親と離ればなれになり、かつ養育および安全な環境が損なわれまたは破壊さえされた場合、暴力の被害を極度に受けやすくなる。
  • (h) 資源配分。さまざまな部門を超えて必要とされる人的、財政的および技術的資源が、利用可能な資源を最大限に用いることにより配分されなければならない。予算配分およびその効率的活用に関わる説明責任を確保するため、確固たる監視機構が整備されなければならない。
  • (i) 調整機構。中央、広域行政圏および地方のレベルにおける調整、諸部門間の調整および市民社会(経験的調査研究を行なっている層も含む)との調整を効果的に確保するための機構の概要が明示されなければならない。このような機構は前述した行政上の措置による支援を受けなければならない。
  • (j) 説明責任。締約国、国および地方の機関ならびに関連する市民社会の関係者が、暴力から子どもを保護する義務およびコミットメントを履行するための基準、指標、手段ならびに監視、測定および事後評価のためのシステムを、積極的にかつ協力しあいながら確立および適用することが確保されなければならない。委員会は、説明責任を(とくにデータの収集および分析、指標の構築、監視ならびに事後評価等を通じて)確保するためのシステムに対する支持および独立の人権機関に対する支持を一貫して表明してきた。委員会は、締約国が、暴力の禁止、防止および解消に関わって達成された進展についての年次報告書を公表し、検討および議論のためにこれを議会に提出し、かつそこに掲げられた情報について反応するようすべての関係者に促すことを、勧告する。
[25] 「子どもの代替的養護に関する指針」〔PDF〕も参照。
[26] 一部の社会では、先住民族以外の家族とは対象的に、「虐待」とは区別される「ネグレクト」が、先住民族の子どもをその家族から分離する主たる理由となっている。懲罰的ではない家族支援サービス、および、原因(貧困、居住および歴史的事情など)に直接対応する介入策のほうが適当であることは多い。サービスの供給、および、先住民族その他のマイノリティ・コミュニティが利用可能な介入の選択肢の範囲に関わる差別に対応するための、具体的努力が必要である。

VII.実施のための資源および国際協力の必要性

73.締約国の義務。とくに第4条および第19条に基づく締約国の義務に照らし、委員会は、資源の制約は、締約国が子どもの保護のために必要とされる措置をまったくまたは十分にとらないことの正当化事由にはならないと考える。したがって締約国は、子どもの養育および保護に関する包括的な、戦略的な、かつ期限の定められた調整枠組みを採択するよう促される。委員会はとくに、これらの戦略、枠組みおよび措置の策定にあたって子どもたちと協議する必要性を強調するものである。
74.支援源。パラ70で強調した出発点の違いを背景として、かつ、子どもの養育および保護に関わる戦略のための第一義的資金源は国レベルおよび地方分権化されたレベルの予算であるべきであるという理解に立ちつつ、委員会は、条約第4条および第45条に示されている、国際的協力および援助の諸経路に対して締約国の注意を喚起する。委員会は、以下のパートナーに対し、第19条およびより幅広く条約全体で定められている要件を全面的に考慮した子ども保護プログラム(研修を含む)を財政的にも技術的にも支援するよう求めるものである [27]。開発協力を行なっている締約国、ドナー機関(世界銀行、民間資金提供者および財団を含む)、国際連合諸機関ならびにその他の国際的および地域的機関がこの呼びかけの対象となる。このような財政的および技術的支援は、国内的および国際的レベルの強力かつ公平なパートナーシップを通じ、系統的に提供されるべきである。子どもの権利を基盤とする保護プログラムを、国際援助受領国における持続可能な開発を援助する際の主要な要素のひとつに位置づけることが求められる。委員会はまた、これらの機関に対し、この目標を前進させるため、委員会、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表ならびに他の国際的および地域的人権機構と引き続き協働するよう奨励するものである。
[27] 国際的な協力および技術的援助の主流に子どもの権利を位置づける必要があること、そのような協力および援助が条約を指針とし、かつ条約の実施の全面的促進につながらなければならないこと、国際援助の相当部分をとくに子どもに配分するべきこと、および、子どもの権利に強く焦点が当てられるようにするために貧困削減戦略ペーパーおよび開発に対するセクターワイド・アプローチが必要であることについて、一般的意見5号(パラ61、62および64)参照。
75.国際的レベルで必要とされる資源。締約国が第19条に関わる自国の義務を履行することを援助するため、以下の分野で国際的レベルの投資を行なうことも必要である。
  • (a) 人的資源:職能団体(たとえば医療、精神保健、ソーシャルワーク、法律、教育、子どもの不当な取扱い、学術/調査研究、子どもの権利および育成訓練に関わる組織/機関)の内部および団体間の意思疎通、協力および個人的交流を向上させること。市民社会グループ(たとえば調査研究団体、NGO、子ども主導の団体、信仰を基盤とする団体、障害のある人の団体、コミュニティ・グループ、若者グループ、および、知識・実践の発展および交流に携わっている個人専門家)の内部およびグループ間の意思疎通および協力を向上させること。
  • (b) 財源:ドナーによる援助の調整、監視および事後評価を向上させること。経済学者、研究者および締約国が、ホリスティックな子どもの保護システムを(第一次予防を重視しながら)実施することのコストを、個人、コミュニティ、国およびひいては国際社会のレベルで生じる暴力の直接的および間接的影響(世代間の影響を含む)に対応することのコストとの対比で十全に測定できるよう、金融資本・人的資本分析をさらに発展させること。国際金融機関が「自らの政策および活動が子どもに与える可能性がある影響を考慮するために」[28] その検討を行なうこと。
  • (c) 技術的資源:さまざまな文脈に応じた修正について指針を示されながらコミュニティおよび専門家が活用するための、科学的根拠に基づいた指標、システム、モデル(モデル立法を含む)、ツール、指針、行動手順および実践基準。情報(知識および実践)の体系的共有およびアクセスを図るためのプラットフォーム。子どもの権利および子どもの保護のための予算を策定する際、ならびに、経済の上昇下降サイクルおよび課題の多い状況の最中に子どもの保護に関わる成果モニタリングを進めていく際の明確性および透明性を世界的に確立すること(情報、モデルおよび関連の訓練を通じた技術的援助は経時的に行なわれるべきである)。
[28] A/61/299, para.117.
76.地域的および国際的な、国境を越えた協力。開発援助に加え、子どもの保護に関わる問題のうち国境を越えて生じるものに対応するための協力も必要とされている。保護者をともなわないか家族とともにいるかに関わらず、また自発的かやむを得ない事情(たとえば紛争、飢饉、自然災害または病気の流行)によるかに関わらず、子どもが危害を受けるおそれが高まりうる子どもの越境移動、労働、性的搾取、養子縁組、身体の部位の切除その他の目的による子どもの人身取引、国境を越えて行なわれ、かつたとえ子どもが出身国内に留まっている場合でも子どもの安全および子どもの保護システムへのアクセスを損なう可能性がある紛争、および複数の国に同時に影響を及ぼす災害などである。子どもの保護に関わる国境を越えた問題に影響を受けている子どもを保護するため、これらの子どもが伝統的な養育状況のもとにあるか、または保護者をともなわずに入国した子どものように国が事実上の養育者であるかに関わらず、特別な立法、政策、プログラムおよびパートナーシップが必要となる可能性もある(たとえばサイバー犯罪、ならびに、旅行・観光を通じて子どもに性的虐待を行なった者および家族・子どもの人身取引を行なった者の域外訴追の場合など)。


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