総括所見:スイス(第2~4回・2015年)


CRC/C/CHE/CO/2-4(2015年2月26日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

I.序

1.委員会は、2015年1月21日および22日に開かれた第1959回および第1961回会合(CRC/C/SR.1959 and 1961参照)においてスイスの第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/CHE/2-4)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。
2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/CHE/2-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/CHE/Q/2.4/Add.1)の提出を歓迎する。ただし委員会は、報告書の提出が相当に遅延したことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表する。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、とくに以下の条約について批准または加入が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。
  • 子供の売買、児童買春および児童ポルノに関する子供の権利条約の選択議定書(2006年9月)
  • 障害のある人の権利に関する条約(2014年4月)
  • 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2009年9月)
  • 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2008年9月)
  • 1952年の母性保護条約(改正)の改正に関する国際労働機関第183号条約(2000年)(2014年6月)
  • 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2014年3月)
4.委員会は、とくに以下の立法措置が施行されたことを歓迎する。
  • 民法改正(2014年7月1日(親の権威)および2013年1月1日(成人保護法、人事法および子ども法))
  • 庇護法改正(2014年7月1日)
  • 刑法改正(2014年7月1日)
  • 里子の措置に関するオルドナンス(2013年1月1日)
  • 連邦子ども・若者振興法(2013年1月1日)
  • スイス刑事訴訟法(2011年1月1日)
  • 少年刑事訴訟法(2011年1月1日)
  • 改正連邦外国人法(2011年1月1日)
  • 国際的な子の奪取と子どもおよび成人の保護に関する諸ハーグ条約に関する連邦法(2009年7月1日)
  • 改正連邦被害者支援法(2009年1月1日)
  • 子どもおよび若者のための保護措置ならびに子どもの権利の強化に関するオルドナンス(2010年8月1日)
  • 少年刑法(2007年1月1日)
  • 改正連邦職業専門教育訓練法(2004年1月1日)
  • 連邦障害者差別解消法(2004年1月1日)
5.委員会はまた、とくに以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。
  • 武力紛争において軍隊または武装集団と関係している子どもを保護するための連邦外務省行動計画(2014~2016年)
  • 人身取引と闘う国家行動計画(2012~2014年)
  • HIVおよびその他の性感染症に関する国家計画(2011~2017年)
  • 包括的スイス反貧困戦略(2010年採択)ならびに貧困防止および貧困との闘いに関する国家計画(2014~2018年、2013年採択)
  • スイス人権専門センター(2010年設置)
  • スイス子ども・若者政策戦略(2008年採択)
  • 連邦障害者平等局(2004年設置)

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項)

留保
6.締約国が条約第5条、第7条および第40条(b)(v)(vi)に付した留保を撤回したことは歓迎しながらも、委員会は、締約国が、第10条第1項、第37条(c)および第40条第2項(b)(ii)~(iii)に付した留保をいまなお維持していることを遺憾に思う。
7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ7)をあらためて繰り返すとともに、1993年6月25日にウィーンの世界人権会議で採択されたウィーン宣言および行動計画に照らして、締約国に対し、条約に付した留保でいまなお残っているものの撤回を検討するよう促す。
立法
8.条約と国内法とのさらなる一致を確保するために連邦およびカントンのレベルで子どもに関連するさまざまな立法措置がとられたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの努力が条約のすべての分野を網羅しているわけではないことを懸念する。
9.委員会は、締約国が、連邦法およびカントン法を条約と包括的に調和させるための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。
包括的な政策および戦略
10.委員会は、締約国が2008年に「スイス子ども・若者政策戦略」を発表し、それが連邦子ども・若者振興法の採択(2011年)につながったこと、および、締約国が最近、子ども・若者政策の状況に関する報告書をまとめたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、同戦略が条約のすべての分野を網羅しているわけではないことを依然として懸念する。
11.委員会は、締約国が、条約の原則および規定の全般的実現のための国家的政策および戦略を、子どもおよび市民社会と協議しながら策定しかつ実施し、もってカントンの計画および戦略の枠組みを示すよう勧告する。委員会はまた、締約国が、その包括的な政策および戦略ならびにカントンのレベルにおける関連の計画または戦略の実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分することも勧告するものである。
調整
12.委員会は、締約国の連邦制度によって生じる課題に留意するとともに、全般的な調整が行なわれていないことにより、締約国の諸カントン全体を通じて条約の実施に相当の格差が生じていることを懸念する。
13.委員会は、締約国が、自国の領域全体で平等な保護水準が達成されるようにする目的で、諸部門全体でならびに連邦、カントンおよびコミューンの各レベルで子どものための行動を効果的に調整する全面的な能力および権限ならびに人的資源、技術的資源および財源を与えられた、条約ならびに包括的な政策および戦略を実施するための調整機関を設置するよう勧告する。委員会はまた、市民社会および子どもに対して当該調整機関の一翼を担うよう呼びかけることも勧告するものである。
資源配分
14.締約国が世界でもっとも経済的に豊かな国のひとつであり、かつ相当多くの資源を子ども関連プログラムに投資していることを念頭に置きつつ、委員会は、締約国が、連邦予算およびカントン予算における予算の計画および配分について子どもに特化したアプローチを活用していないことから、子どもに対する投資の効果および条約の全般的適用状況を予算の観点から明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが事実上できなくなっていることに留意する。
15.委員会は、締約国が、連邦およびカントンのレベルにおける子どものニーズを十分に考慮に入れ、かつ、関連の部門および機関に対する子ども向けの明確な配分額、具体的指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、条約の実施に配分される資源の分配の有効性、十分性および公平性が効果的に監視および評価されることを確保するよう勧告するものである。
データ収集
16.さまざまなデータ収集システムが存在することには留意しながらも、委員会は、締約国に包括的なデータ収集システムが存在せず、かつ、条約の十分な分野、とくに被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子どもの集団に関する分野に関して信頼できる細分化されたデータが入手できないことを、遺憾に思う。
17.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ18)にしたがい、委員会は、締約国が、自国のデータ収集システムを迅速に改善するよう強く勧告する。データは、条約のすべての分野を対象とするべきであり、かつ、すべての子ども、とりわけ被害を受けやすい状況に置かれた子どもの状況の分析を容易にするため、とくに年齢、性別、障害、地理的所在、民族的および国民的出身ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきである。さらに委員会は、当該データおよび指標が、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきことを勧告する。
独立の監視
18.スイス人権専門センターが設置されたことには留意しながらも、委員会は、あらゆるレベルで条約の実施を監視する、子どもの権利侵害の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた中央独立機関が引き続き存在していないことを依然として懸念する。
19.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ16)にしたがい、委員会は、締約国に対し、人権一般を監視するための独立の機構および子どもの権利を監視するための具体的機構(子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応すること、被害者のプライバシーおよび保護を確保することならびに被害者のためのモニタリングおよびフォローアップ活動を行なうことのできるもの)を迅速に設置するための措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、パリ原則との全面的一致を確保すべく、そのような監視機構の独立性(財政、権限および免責特権に関するものを含む)を確保するよう勧告するものである。
普及、意識啓発および研修
20.ロマンシュ語への条約の翻訳および「財団21:持続可能な開発のための教育」の設置など、情報の普及および研修の実施のために締約国が行なっているさまざまな努力には留意しながらも、委員会は、子ども、親および公衆一般の間で条約があまり周知されていないことを懸念する。委員会はまた、子どもとともにまたは子どものために働く専門家を対象とした子どもの権利に関する研修活動が体系的でも包括的でもないことも懸念するものである。
21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもにやさしい方法による条約についての意識啓発にメディアがいっそう関与するよう奨励すること、公衆向けの積極的広報活動への子どもの積極的関与を促進することおよび親をとくに対象とした措置を確保すること等の手段により、意識啓発プログラムを引き続き強化すること。
  • (b) 裁判官、弁護士、法執行官、公務員、教員、保健要員(心理学者を含む)およびソーシャルワーカーなど、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象とした、子どもの権利に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。
子どもの権利と企業セクター
22.委員会は、多国籍企業の活動を規制するためにとられた措置および構想されている措置(スイス・ラギー戦略の策定を含む)について締約国から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、締約国が、任意の自主規制に頼るばかりであり、締約国の管轄または管理の下で行動する企業の、締約国の領域の外で展開される活動において子どもの権利を尊重する義務を明示的に定めた規制の枠組みを用意していないことを懸念するものである。
23.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) スイス・ラギー戦略を速やかに採択すること等を通じ、締約国で操業する産業を対象とした、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準、労働基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立するとともに、その効果的実施を確保すること。
  • (b) 締約国の領域で操業しまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社が、子どもの権利および人権一般のいかなる侵害についても法的に責任を問われることを確保すること。

B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
24.締約国がとった差別禁止措置、とくに移住者の統合の促進を目的とした措置は歓迎しながらも、委員会は、周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子ども(子どもの移住者、難民および庇護希望者、障害のある子どもならびに在留資格のない子どもを含む)に対する差別が引き続き蔓延していることを依然として懸念する。さらに委員会は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの人々に対するヘイトスピーチの発生およびそれがこれらの集団に属する子どもに及ぼす影響、ならびに、これらの人々が人種差別に関する刑法第261条bisの保護を享受していない事実について、懸念を覚えるものである。
25.委員会は、締約国が、周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子ども(とくに子どもの移住者、難民および庇護希望者、障害のある子どもならびに在留資格のない子ども)に対する差別を解消するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、寛容および相互尊重の文化を醸成するための努力を強化するとともに、性的指向およびジェンダーアイデンティティを理由とする差別を禁止する包括的な法律を採択し、かつ刑法第261条bisにこれらの自由を含めることも、勧告するものである。
子どもの最善の利益
26.子どもの「ウェルビーイング」が締約国の法体系における指導原理のひとつであることには留意しながらも、委員会は、子どもの「ウェルビーイング」という語はその意味および適用において条約に掲げられた子どもの最善の利益とは異なるという見解に立つ。したがって委員会は、子どもの最善の利益(l'interet superieur de l'enfant)が連邦およびカントンのすべての関連法に明示的に編入されておらず、かつ、子どもに関連するすべての行政手続および司法手続または政策プログラムにおいて体系的に適用されているわけでもないことを懸念するものである。
27.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての委員会の一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを締約国が確保するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するよう、奨励されるところである。このような手続および指針は、裁判所に対して、かつ行政機関、立法機関、公立および私立の社会福祉施設ならびに公衆一般に対して、普及されるべきである。
子どもの意見の尊重
28.委員会は、家事手続、保護事件、少年司法その他の分野で子どもの意見の尊重を確保し、かつ、自治体レベルの政治的計画策定および意思決定手続に子どもの関与を得るために締約国が行なっている継続的努力に留意する。しかしながら委員会は、実際には子どもに影響を与えるすべての事柄について子どもの意見の尊重が制度的に確保されかつ実施されているわけではないこと、および、実施についてカントン間の格差が存在することを懸念するものである。委員会はまた、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象としたこの点に関する研修が不十分であることも懸念する。
29.意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがってこの権利を強化するための措置をとるよう勧告する。この目的のため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 意見を聴かれる子どもの権利が、子どもに影響を与えるすべての司法手続および行政手続において適用され、かつその意見が正当に重視されることを確保するための努力を強化すること。
  • (b) 周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子どもに特段の注意を払いながら、子どもが、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつ、学校その他の教育施設および家庭ならびに政治的計画策定および意思決定手続においてこれらの意見を正当に重視される権利を有することを確保するための努力を強化すること。
  • (c) 司法、福祉その他の部門において子どもに対応する専門家が、子どもの意味のある参加を確保する方法についての適切な研修を体系的に受けることを確保すること。

C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条)

出生登録/名前および国籍
30.すべての子どもが登録されることを確保するために締約国がとったさまざまな法律上および政策上の措置は歓迎しながらも、委員会は、外国籍の子どもの登録に遅延があるという報告について懸念を覚える。さらに委員会は、締約国で出生した子どもであって国籍が付与されなければ無国籍となる者がスイス国籍を取得する権利を保障されていないことを懸念するものである。
31.委員会は、締約国が、子どもの親の法的地位および(または)出身にかかわらず、すべての子どもが可能なかぎり早期に出生登録を利用できることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、自国の領域で出生したすべての子どもについて、国籍が付与されなければ無国籍となる場合にその親の法的地位にかかわらずスイス国籍を取得することを確保するとともに、無国籍の削減に関する1961年の条約、国籍に関する1997年の欧州条約および国家承継に関連する無国籍の回避に関する2009年の欧州評議会条約を批准するよう、勧告する。
親を知り、かつ親によって養育される権利
32.委員会は、養子縁組に関するスイス民法第268条(c)および連邦生殖補助医療法第27条によれば、子どもに対してその生物学的親の身元について告知を行なえるのは当該子どもが「正当な利益」を有している場合に限られていることに留意する。委員会は、「正当な利益」の概念が子どもの最善の利益と常に一致するかどうか、依然として懸念するものである。
33.委員会は、締約国が、養子または生殖補助医療によって生まれた子どもが自己の出自を知る権利の尊重を可能なかぎり確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はとくに、締約国が、自己の生物学的出自に関する情報を求める子どもの権利の前提条件としての正当な利益への言及の削除を検討するよう勧告するものである。
アイデンティティに対する権利
34.委員会は、締約国において、匿名による子どもの遺棄を認める赤ちゃんボックスが規制されておらず、かつその数が増えていること(これはとくに条約第6~9条および第19条の違反である)を深く懸念する。
35.委員会は、締約国に対し、赤ちゃんボックスの使用を禁止し、すでに存在する代替手段を強化しかつ促進し、かつ、最後の手段として病院における秘密出産の可能性を導入することを検討するよう、促す。
適切な情報へのアクセス
36.委員会は、デジタルメディアおよび情報通信技術(ICT)が子どもの安全に及ぼすリスクに対応するために締約国が行なっている努力(若者のエンパワーメントおよび電子メディア関連のリスクからの若者の保護を目的とする5か年プログラムを含む)に留意する。しかしながら委員会は、これらのリスクからの子どもの保護にいまなお空白があることを懸念するものである。
37.委員会は、締約国が、「若者と暴力:家庭、学校、社会空間およびメディアにおける効果的防止」に関する連邦審議会報告書で勧告されている措置をフォローアップするとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) すべての子どもがデジタルメディアおよびICTにアクセスでき、かつオンライン環境において条約およびその選択議定書の全面的保護を享受することを確保するため、人権を基盤とする法律および政策を採択しかつ実施すること。
  • (b) ICTその他の関連産業との協力を引き続き奨励するとともに、任意の、自主規制に基づく、専門家としての倫理的な行動指針および行動基準ならびにその他の取り組み(オンラインの安全を促進する、子どもがアクセスできる技術的解決策など)の発展を促進すること。
  • (c) デジタルメディアおよびICTの利用に関わる機会およびリスクについての公衆一般ならびにとくに親および子どもの感受性を強化するための意識啓発、広報および教育プログラムを引き続き強化すること。

D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条)

体罰
38.暴行からの子どもの保護を強化する刑法および民法の改正があったことには留意しながらも、委員会は、体罰が、社会によって一般的に受け入れられている水準を超えない場合にはいまなお身体的暴力とみなされず、かつあらゆる場面で明示的に禁止されているわけではないことを遺憾に思う。
39.委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、あらゆる場面におけるあらゆる体罰の実行を明示的に禁止し、かつ、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進するための努力を強化するよう、促す。
あらゆる形態の暴力からの子どもの自由
40.委員会は、子どもに対する暴力に対応するために締約国が進めているさまざまな取り組み(子どもおよび若者のための保護措置ならびに子どもの権利の強化に関するオルドナンスの採択、ならびに、成人保護法、人事法および子ども法に関連する民法改正を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、不当な取扱い、虐待およびネグレクト、性暴力ならびに家族間暴力に関する包括的なデータおよび研究が存在せず、国家的な子ども保護戦略が策定されておらず、かつ、カントンで実施されているさまざまなプログラム間の調整が存在しないことを依然として懸念するものである。
41.委員会は、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに対する暴力のあらゆる事案(不当な取扱い、子ども虐待およびネグレクトならびに家族間暴力を含む)に関する全国的データベースを設置すること。
  • (b) 子どもに対する暴力の蔓延度および性質を評価するための研究をさらに実施するとともに、子どもの不当な取扱い、虐待およびネグレクトならびに子どもに対する家族間暴力の事案を防止しかつこれに介入するための包括的戦略(被害者の回復および社会的再統合のためのサービスの提供を含む)を策定すること。
  • (c) 子どもに対する暴力に対処するために現在設けられている制度の活動を評価するとともに、その結果およびとられた措置について次回の定期報告書で報告すること。
  • (d) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための全国的調整を強化すること。
  • (e) 子どもに対する暴力のジェンダーの側面に特段の注意を払い、かつこれに対処すること。
有害慣行
42.性器切除を禁止する新たな刑法規定が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、以下のことを深く懸念する。
  • (a) 性器切除の影響または脅威を受けている女子が締約国に相当数住んでいること。
  • (b) インターセックスの子どもに対し、十分な情報に基づく本人の同意を得ることなく、医学的に不必要な外科的その他の処置(これにはしばしば不可逆的な結果がともない、かつ深刻な身体的および心理的苦痛が引き起こされる可能性もある)が行なわれており、かつ、このような事案について救済および賠償が行なわれていないこと。
43.委員会は、有害慣行に関する合同勧告/一般的意見(女性差別撤廃委員会31号および子どもの権利員会18号)に対して締約国の注意を喚起するともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 女性性器切除の問題に対応するための防止措置および保護措置(関連の専門家の研修、意識啓発プログラムおよびこれらの行為の加害者の訴追を含む)を継続しかつ強化すること。
  • (b) インターセックスに関する倫理的問題について国家生体医療倫理諮問委員会が行なった勧告にしたがって、いかなる者も乳幼児期に不必要な医療処置または外科的処置の対象とされないことを確保し、当該の子どもに身体的不可侵性、自律性および自己決定を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。

E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項)

家庭環境
44.連邦家庭外保育財政援助法の採択など、親としての義務の履行に関して親を支援するために締約国がとった措置は歓迎しながらも、委員会は、さまざまな形態の家族支援(保育サービスを含む)が不十分な形でしか利用できないことを依然として懸念する。
45.委員会は、締約国が、領域全体で子どものための質の高いケアが十分に利用できることを確保する等の手段により、家族を支援するための措置を強化するよう勧告する。
46.委員会は、締約国の法律において代理母が禁止されており、かつ国外における代理母出産の手配を抑制することが目指されていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、養子縁組の可能性を評価するための1年間の期間中の子どもの法的地位が不安定であることを懸念するものである。
47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 評価手続を迅速化するとともに、子どもが、締約国への到着時から正式な養子縁組までの待機期間中に無国籍とならないことまたは差別されないことを確保すること。
  • (b) 養子縁組に関する決定において子どもの最善の利益が思考の考慮事項とされることを確保すること。
家庭環境を奪われた子ども
48.里子の措置に関するオルドナンスの改正は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 里親養護または施設養護に措置された子どもの状況に関する信頼できるデータおよび情報が存在しないこと。
  • (b) 子どもの措置の選択、期間および再審査に関する基準ならびに種々の形態の代替的養護の質(里親家族の支援、研修および監視ならびに養護基準の実施を含む)について、カントン間で大きな格差が存在すること。
  • (c) カントンによっては里親家族の数が不十分であること。
  • (d) 3歳未満の子どもについては施設養護しか利用可能とされていないこと。
  • (e) 里親家族または施設に措置された子どもが家庭に復帰する際、生物学上の親に対する支援が限られていること。
49.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) あらゆる代替的養護環境にある子どもについての情報および細分化されたデータを収集しかつ体系的に分析するための機構を設置すること。
  • (b) 生物学上の家族と接触する子どもの権利を引き続き尊重しつつ、必要であれば他のカントンの里親家族に子どもを措置することを可能とするため、カントン間の協力を確保すること。
  • (c) 子どもが代替的養護に措置されるべきか否か判断するための、子どもの最善の利益に基づいた十分な保障措置および明確な基準が自国の領域全体で適用されることを確保すること。
  • (d) 代替的養護施設および関連の子ども保護サービスに十分な人的資源、技術的資源および財源が配分され、かつ、里親家族に対して子育てについての体系的な研修および支援が実施されることを確保する等の手段により、締約国全域で代替的養護環境における質の高い基準を定め、かつ効果的に執行すること。
  • (e) 里親養護および施設への子どもの措置が定期的に再審査されることを確保するとともに、子どもの不当な取扱いについての通報、監視および救済のためのアクセスしやすい回路を設ける等の手段により、措置先における養護の質を監視すること。
  • (f) 里親家族の奨励および募集を強化すること。
  • (g) 幼い子ども(とくに3歳未満の子ども)の代替的養護が家族を基盤とする環境で行なわれることを確保すること。
  • (h) 代替的養護環境に措置された子どもが家庭に復帰する際の親に対する支援を強化すること。
養子縁組
50.養子縁組法の改正は歓迎しながらも、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の締約国ではない出身国が関与する国際養子縁組が相当数にのぼること、および、これらの国からの養子縁組に関するデータがないことを懸念する。委員会はまた、ハーグ条約の締約国ではない国出身の子どもに関わる養子縁組手続(養親となろうとする者の評価および養子縁組についての決定を含む)において子どもの最善の利益の至高性が常に確保されているわけではないことも、懸念するものである。委員会はさらに、養子縁組手続が終結するまでの1年間、スイス人の両親によって国外から養子とされた子どもの法的地位が不確実であることを懸念する。
51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国内養子縁組および国際養子縁組に関する統計データ(年齢、性別および国民的出身ごとに細分化されたもの)および関連の情報を体系的かつ継続的に収集すること。
  • (b) 国際養子縁組において子どもの最善の利益の至高性が厳格に遵守されること、および、たとえ相手国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の締約国ではない場合であっても同条約に定められたすべての保障が満たされることを確保すること。
  • (c) 評価手続を迅速化するとともに、国外から養子とされる子どもが、締約国への到着時から正式な養子縁組までの待機期間中に無国籍とならないことまたは差別されないことを確保すること。
親が収監されている子ども
52.収監された母親とその子どもが一緒に収容される棟がチューリッヒ州に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、親が収監されている子どもの人数および状況に関するデータ、または、子どもと収監されている親との継続的関係が十分に支援されているか否かについての情報がないことを懸念する。
53.親が収監されている子どもの権利に関する一般的討議(2011年)の際の委員会の勧告を参照しつつ、委員会は、締約国が、条約第9条にしたがい、定期的な面会ならびに十分なサービスおよび適切な支援の提供等を通じて子どもと親が個人的関係を保てることを確保する目的で、締約国において親が刑務所にいる子どもの状況に関するデータ収集および研究を行なうとともに、行なわれるすべての決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきことを、勧告する。

F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条)

障害のある子ども
54.委員会は、連邦障害者差別解消法が施行されたことおよび特別学校分野におけるカントン間協力協定が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 障害のある子ども(自閉症スペクトラム障害のある子どもを含む)についての包括的データが存在しないこと。
  • (b) すべての州において、普通教育へのこれらの子どものインクルージョンが不十分であり、かつ、インクルーシブ教育制度が実際に十分機能することを確保するために配分される人的資源および財源が不十分であること。
  • (c) 障害のある子どもにとって乳幼児期の十分な教育およびケアならびにインクルーシブな職業訓練の機会が存在しないこと。
  • (d) とくにジュネーブ州において、自閉症スペクトラム障害のある子どもについて、その社会生活の多くの側面で差別および分離が行なわれていること。これには、乳幼児期における自閉症スペクトラムの発見が不十分であること、集中的早期発達プログラムが存在しないこと、とくに普通学校でこれらの子どもに専門的支援を提供する有資格の専門家が存在しないために普通教育にアクセスできないこと、および、自閉症スペクトラム障害のある子どもに対応する専門家の訓練が不十分であることが含まれる。
  • (e) とくにジュネーブ州において、自閉症スペクトラム障害のある子どもが、不当な取扱いに相当する「パッキング」法(子どもを濡れた冷たいシーツでくるむもの)のような不適切な取扱いの対象にされているという報告があること。
  • (f) 障害のある子どもが精神病棟に措置されることを防止し、かつ、これらの子どもが親の面会を受ける権利を恣意的に奪われないことを確保するための措置に関する情報がないこと。
55.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるとともに、具体的には以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 障害のあるすべての子どもの状況について、とくに年齢、性別、障害の態様、民族的および国民的出身、地理的所在ならびに社会経済的背景ごとに細分化されたデータの収集および分析を行なうこと。
  • (b) 必要な資源を配分すること、専門家の十分な訓練を行なうこと、および、いまなお分離アプローチをとっているカントンに明確な指針を示すこと等の手段により、全国規模のインクルーシブ教育を差別なく確保するための努力を強化すること。
  • (c) 統合ではなくインクルージョンを促進すること。
  • (d) 障害のある子どもが、すべてのカントンで乳幼児期の教育およびケア、早期発達プログラムならびにインクルーシブな職業訓練の機会にアクセスできることを確保すること。
  • (e) すべてのカントンにおいて自閉症スペクトラム障害のある子どもの特有のニーズに対応するとともに、これらの子どもが社会生活のすべての分野(レクリエーション活動および文化的活動を含む)に全面的に統合されることを確保し、これらの子どものニーズに合わせたインクルーシブ教育が特別な学校教育および保育よりも優先されることを確保し、早期発見のための機構を設置し、専門家を対象として十分な研修を実施し、かつ、これらの子どもが、科学的知識に基づいた早期発達プログラムから利益を得られることを確保すること。
  • (f) 子どもの「パッキング」を法律で禁止するとともに、自閉症スペクトラム障害のある子どもが尊厳および敬意をもって扱われ、かつ効果的な保護から利益を得られることを確保するために必要な措置をとること。
  • (g) 障害のある子どもが精神病棟に措置されることを防止し、かつ、これらの子どもが親の面会を受ける権利を恣意的に奪われないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。
健康および保健サービス
56.低所得または中所得の家庭について子どもの健康保険料が少なくとも50%減額されたことは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 小児ケアの集中化が進んでいること、および、小児科医の人数が、増えているとはいえ、十分ではないこと。
  • (b) 太り過ぎの子どもおよび子どもの肥満の問題が増大しており、かつ、脂肪分、糖分および塩分の多い食品のテレビ広告が過度に流されていること。
57.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての委員会の一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもが領域全体で質の高い小児科病棟治療および家庭小児科医にアクセスできることを確保すること。
  • (b) 太り過ぎの子どもおよび肥満に対応するための措置を強化し、青少年の間で健康的なライフスタイル(運動を含む)を促進し、かつ、脂肪分、糖分および塩分の多い食品との関連で子どもに対する食品広告の圧力を低減させるために必要な措置をとること。
母乳育児
58.委員会は、締約国の赤ちゃんの大多数が生後数か月間は母乳で育てられていること、および、授乳休憩時の報酬に関する新たな規定が採択されたことに、積極的措置として留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 生後6か月までの赤ちゃんの完全母乳育児率が低いこと。
  • (b) 完全母乳育児に関する保健専門家を対象とした研修が不十分であること。
  • (c) 締約国の病院の55%しか赤ちゃんにやさしい病院ではないこと。
  • (d) 乳幼児への栄養補給または母乳育児に関する国家的戦略が定められていないこと。
  • (e) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の規定にうち国内法で全面的に実施されているものがわずかに過ぎず、かつ、母乳代替品の販売促進がもっぱら自主的行動規範に基づいて行なわれていること。
  • (f) 母乳育児に関する国の勧告が世界保健機関(WHO)による関連の勧告を反映していないこと。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 母乳育児の重要性および人工栄養のリスクに関する資料にアクセスできるようにすることおよび意識啓発を行なうことにより、完全かつ継続的な母乳育児を促進するための努力を強化すること。
  • (b) 完全母乳育児の重要性に関する保健専門家を対象とした研修を再検討し、かつ強化すること。
  • (c) 赤ちゃんにやさしいと認証された病院の数をさらに増やすこと。
  • (d) 乳幼児への栄養補給慣行に関する包括的な国家的戦略を策定すること。
  • (e) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が厳格に執行されることを確保すること。
  • (f) 母乳育児に関する国の勧告がWHOによる勧告に一致することを確保すること。
  • (g) 出産休暇を少なくとも6か月まで延長することを検討すること。
精神保健
60.委員会は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)または注意欠陥障害(ADD)という診断が過度に行なわれており、かつ、それにともなって、子どもへの精神刺激薬(とくにメチルフェニデート)の処方が、これらの薬の有害な作用に関する証拠が増えているにもかかわらず増加していること、および、親が精神刺激薬による子どもの治療を受け入れない場合には子どもを退学させるという脅かしが行なわれている旨の報告があることを、懸念する。
61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ADHDおよびADDの診断および治療に対する非薬物療法アプローチについての調査研究を実施すること。
  • (b) 関連の保健機関が、教室における注意欠如の根本的原因について判断し、かつ子どもの精神保健問題の診断を改善することを確保すること。
  • (c) 家族への支援(心理カウンセリングおよび情緒面での支援にアクセスできるようにすることを含む)を強化するとともに、子ども、親ならびに教員ならびに子どもとともにおよび子どものために働くその他の専門家に対し、ADHDおよびADDに関する十分な情報が提供されることを確保すること。
  • (d) 精神刺激薬による治療を受け入れるべきであるといういかなる圧力も子どもおよび親に対してかけられないようにするために必要な措置をとること。
自殺
62.委員会は、青少年の自殺が多いことを依然として懸念する。
63.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、自殺の防止に関する国家的行動計画(そこでは子どもおよび青少年の特有のニーズが考慮されるべきである)の採択を速やかに進め、かつその効果的実施を確保するよう勧告する。
生活水準
64.連邦家族手当法が2009年に施行されたことおよび貧困に対応するためのその他の措置(包括的スイス反貧困戦略ならびに貧困防止および貧困との闘いに関する国家計画(2014~2018年)を含む)がとられていることは歓迎しながらも、委員会は、家族を対象とする補足給付(社会扶助を含む)が一部のカントンで低額のままであることを懸念する。
65.委員会は、すべての子ども(親が難民、庇護希望者および移住者である子どもを含む)が自国の領域全体で十分な生活水準を享受できるようにする目的で、締約国が、家族手当給付制度をさらに強化するよう勧告する。

G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条)

人権教育
66.委員会は、学校における子どもを対象とした人権教育がすべてのカントンで制度的に実施されているわけではないことを懸念する。
67.委員会は、締約国が、諸言語地域を対象とする統一学校カリキュラムに、条約および人権一般に関する義務的単位が含まれることを確保するよう勧告する。

H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)、第38~40条)

庇護希望者および難民である子どもならびに在留資格のない子ども
68.保護者のいない子どもによる庇護申請の優先的取扱いを求めた庇護法改正が2014年に施行されたことは歓迎しながらも、委員会は、保護者のいない子どもを対象とする庇護手続において当該子どもの最善の利益が常に指針とされているわけではないこと、および、条約第10条に付された留保との関係で、仮入国許可を与えられた者の家族再統合に対する権利があまりにも制限されていることを懸念する。さらに委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 子どもの庇護希望者および難民を対象とする受入れ環境、統合支援および福祉についてカントン観に相当の格差が存在し、たとえば子どもが掩蔽壕または核兵器防護施設に収容されていること。
  • (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者のための「被信託人」が、子どものケアまたは子どもの権利に関する問題についての経験を要求されていないこと。
  • (c) 子どもの庇護希望者が中等教育へのアクセスについて困難に直面していること、および、これらの子どもが職業訓練を受けることの認可について調和のとれた実務が行なわれていないこと。
  • (d) 空港でも行なわれる迅速庇護手続が子どもにも適用できるとされていること。
  • (e) 法的な在留資格のない(サンパピエ)子どもが締約国に相当数暮らしており、かつこのような子どもがとくに保健ケア、教育(とりわけ中等教育)および職業訓練へのアクセスについて多くの困難に直面していること、および、これらの問題に対応する方法についての戦略が定められていないこと。
69.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 庇護手続において、子どもの特別なニーズおよび要求が全面的に尊重され、かつ当該子どもの最善の利益が常に指針とされることを確保すること。
  • (b) とくに仮入国許可を与えられた者について家族再統合制度を再検討すること。
  • (c) 庇護希望者および難民、とくに子どもを対象とする受入れ環境、統合支援および福祉についての最低基準を領域全体で適用するとともに、子どもの庇護希望者および難民を受け入れかつケアするすべての施設が子どもにやさしいものであり、かつ適用される国際連合の基準に一致することを確保すること。
  • (d) 「被信託人」が、保護者のいない子どもの庇護希望者を支援するための適正な訓練を受けていることを確保すること。
  • (e) 子どもの庇護希望者が教育および職業訓練に効果的にかつ差別されることなくアクセスできることを確保すること。
  • (f) 保護者のいない子どもの庇護希望者を迅速庇護手続の適用対象から除外するとともに、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が常に尊重されることを確保するための保障措置を確立すること。
  • (g) 在留資格のない子どもの社会的排除およびこれらの子どもに対する差別を防止するための政策およびプログラムを発展させるとともに、教育、保健ケアおよび福祉サービスへのアクセスを実際に確保する等の手段により、これらの子どもがその権利を全面的に享受できるようにすること。
武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の所見および勧告のフォローアップ
70.軍刑法の改正によって戦争犯罪の訴追に関する限定的普遍主義が確立されたことおよび「武力紛争において軍隊または武装集団と関係している子どもを保護するための連邦外務省行動計画(2014~2016年)」が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、国以外の武装集団による子どもの徴募が明示的に犯罪化されておらず、かつ、国外で武力紛争に関与させられた可能性がある子どもの庇護希望者、難民および移住者についての統計データが存在しないことを、依然として懸念する。
71.委員会は、締約国が、国以外の武装集団による子どもの徴募を明示的に犯罪化し、かつ、この点に関わるデータ収集システムを改善するよう勧告する。
少年司法の運営
72.委員会は、新たな少年刑法(2007年)および少年刑事訴訟法(2011年)が施行されたことにより、とくに、刑事責任に関する最低年齢が7歳から10歳に引き上げられ、かつ審判前拘禁および週間の際に子どもを成人から分離する旨の定めが置かれたことに留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢がいまなお国際的に受け入れられている水準よりも低いままであること。
  • (b) 子どもを対象とする無償の法的援助が常に確保されているわけではないこと。
  • (c) 少年刑法および少年刑事手続を専門とする被告人弁護士がいまなお数人しか存在しないこと。
  • (d) 子どもが拘禁施設においていまなお成人から分離されていないこと。
73.少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられている水準まで引き上げること。
  • (b) 子どもが無償の法的援助その他の適切な援助にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 少年司法の運営に関与するすべての者(被告人弁護士を含む)が適切な研修を受けることを確保すること。
  • (d) 子どもが成人と一緒に拘禁されないことを確保するため、十分な拘禁施設を設置するプロセスを加速すること。

I.通報手続に関する選択議定書の批准

74.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。

J.国際人権文書の批准

75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。

K.地域機関との協力

76.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。

IV.実施および報告

A.フォローアップおよび普及

77.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第2~4回統合定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。

B.次回報告書

78.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年9月25日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。
79.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。総会が決議68/268のパラ16で定めた共通コアドキュメントの語数制限は42,400語である。


  • 更新履歴:ページ作成(2016年1月24日)。