国連・子どもの権利委員会 定期報告書ガイドライン(改訂第3版)付属文書


子どもの権利に関する条約第44条第1項(b)に基づいて締約国が提出する定期報告書への統計情報およびデータの記載に関する指針

I.序

1.締約国は、定期報告書の作成にあたり、形式および内容に関する条約別指針にしたがうとともに、この付属文書で説明されているとおり、年齢または年齢層、性別、所在地(農村部または都市部)、マイノリティ集団もしくは先住民族集団、民族、宗教、障害または適切と考えられる他のカテゴリーごとに細分化された統計的情報およびデータを適宜記載するよう求められる。
2.締約国が提供する統計的情報および細分化されたデータは、前回の報告書が検討されて以降の期間を対象としたものであるべきである。報告対象期間中の推移を示す表の掲載が推奨されるところであり、また報告対象期間に生じた重要な変化についても説明またはコメントを行うことが求められる。

II.報告書で提供されるべき統計的情報

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項)

3.締約国は、報告対象期間中の支出総額と関連させながら、社会サービスのための資源配分に関する情報を提供するよう求められる。
  • (a) 家族手当および/または子ども手当、条件付現金給付制度
  • (b) 保健サービス(とくにプライマリーヘルスサービス)
  • (c) 乳幼児期の発達(ケアおよび教育)
  • (d) 教育(初等・中等教育)、職業教育および職業訓練、特別教育
  • (e) 子どもの保護のための措置(暴力、児童労働および性的搾取の防止ならびにリハビリテーションのためのプログラムを含む)
4.締約国は、子どもとともにおよび子どものために活動する専門家を対象として実施された、条約に関する研修についての統計データを提供するよう求められる。これには次の専門家が含まれるが、これに限るものではない。
  • (a) 司法職員(裁判官を含む)
  • (b) 法執行官
  • (c) 教職員
  • (d) 保健従事者
  • (e) ソーシャルワーカー

B.子どもの定義(第1条)

5.締約国は、締約国に住んでいる18歳未満の子どもの人数および割合に関する、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータ、ならびに、婚姻している子どもの人数に関する、年齢その他の関連の基準(都市部/農村部、民族、マイノリティ集団または先住民族集団)によって細分化されたデータを提供するよう求められる。

C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)

1.生命、生存および発達に対する権利(第6条)

5.締約国は、次の原因による18歳未満の者の死亡について、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう勧告される。
  • (a) 非司法的処刑、略式処刑または恣意的処刑
  • (b) 死刑
  • (c) HIV/AIDS、マラリア、結核、ポリオ、肝炎および急性呼吸器感染症を含む疾病
  • (d) 交通事故その他の事故
  • (e) 犯罪その他の形態の暴力
  • (f) 自殺

2.子どもの意見の尊重(第12条)

7.締約国は、次の点に関するデータを提供するよう求められる。
  • (a) 子ども団体および若者団体の数ならびにこれらの団体が代表している構成員の人数
  • (b) 独立の生徒評議会を設けている学校数
  • (c) 司法上および行政上の手続で意見を聴取された子どもの人数(その年齢に関する情報を含む)

D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条)

1.出生登録(第7条)

8.締約国は、出生後に登録された子どもの人数および割合ならびに登録時期に関する情報を提供するよう求められる。

2.適切な情報へのアクセス(第17条)

9.締約国は、子どもがアクセスできる図書館(移動図書館を含む)の数および情報テクノロジー設備がある学校の数についての統計を提供するよう求められる。

E.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第24条、第34条および第37条(a))

1.虐待およびネグレクト(第19条)(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合(第39条)を含む)

10.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 親その他の親族/養育者による虐待および/またはネグレクトの被害者として報告された子どもの人数および割合
  • (b) 報告された事案のうち、加害者に対する制裁その他の形態のフォローアップが行なわれたものの件数および割合
  • (c) 回復および社会的再統合に関する特別なケアを受けた子どもの人数および割合

2.拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰を受けない権利(第37条(a)および第28条第2項)

11.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりにおよび侵害の態様別に細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 拷問被害者として報告された子どもの人数
  • (b) 他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いまたはその他の形態の処罰(強制婚および女性性器切除を含む)の被害者として報告された子どもの人数
  • (c) あらゆる場面(保育施設、学校、家庭、里親ホーム、施設および子どもにサービスを提供するその他の場所)における体罰の発生件数ならびに集団的いやがらせおよびいじめの発生件数
  • (d) 前掲(a)、(b)および(c)として報告された侵害のうち、裁判所による決定またはその他の態様のフォローアップのいずれかが行なわれたものの件数および割合
  • (e) 回復および社会的再統合に関する特別なケアを受けた子どもの人数および割合
  • (f) 施設内暴力の防止のために実施されているプログラムの数およびこの問題に関して施設職員を対象として実施された研修の量

F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9条~11条、第18条第1項および第2項、第20条、第21条、第25条ならびに第27条第4項)

1.家族の支援(第5条ならびに第18条第1項および第2項)

12.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を与えることを目的としたサービスおよびプログラムの数、ならびに、これらのサービスおよびプログラムから利益を得ている子どもおよび家族の数および割合
  • (b) 利用可能な保育サービスおよび保育施設の数ならびにこれらのサービスにアクセスできている子どもおよび家族の割合

2.親のケアを受けていない子ども(第9条第1~4項、第21条および第25条)

13.親から分離された子どもとの関連で、締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 原因別(たとえば武力紛争、貧困、差別の結果としての遺棄等)に細分化された、親のケアを受けていない子どもの人数
  • (b) 裁判所による決定(とくに親による虐待もしくはネグレクトの状況、拘禁、収監、労働目的の移住、国外追放または退去強制に関わるもの)の結果として親から分離された子どもの人数
  • (c) これらの子どものための施設の数(地域別)、これらの施設の定員、子ども対養育者の比率および里親ホームの数
  • (d) 親から分離された子どものうち施設または里親ホームで暮らしている者の人数および割合、ならびに、措置期間および措置の再審査の頻度
  • (e) 措置後に親と再統合した子どもの人数および割合
  • (f) 国内養子縁組、国際養子縁組またはカファラ的養子縁組のプログラムの対象とされた子どもの人数(年齢別)、ならびに、関連する場合には対象となった子どもの出身国および縁組先の国に関する情報

3.家族再統合(第10条)

14.締約国は、家族再統合の目的で入国しまたは出国した子どもの人数(難民および庇護希望者であって保護者のいない子どもの人数を含む)について、ジェンダー、年齢ならびに国民的および民族的出身ごとに細分化されたデータを提供するよう求められる。

4.不法移送および不返還(第11条)

15.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりにならびに国民的出身、居住地および家族の地位ごとに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 締約国から奪取された子どもおよび締約国に奪取されてきた子どもの人数
  • (b) 逮捕された加害者の人数およびそのうち(刑事)裁判所による制裁を受けた者の割合

5.親が収監された子ども

16.締約国は、親が収監された子どもおよび母親とともに刑務所で生活している子どもの人数ならびにこれらの子どもの平均年齢に関する情報を提供するよう求められる。

G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条)

1.障害のある子ども(第23条)

17.締約国は、次の状況にある障害児の人数および割合を、前掲パラ1で述べたとおりにおよび障害の性質ごとに細分化された形で明らかにするよう求められる。
  • (a) 親が特別な物質的、心理社会的その他の援助を受けている障害児
  • (b) 施設(精神障害のある子どものための施設を含む)において、または里親ケアなど家庭外で生活している障害児
  • (c) 普通学校に通っている障害児
  • (d) 特別学校に通っている障害児
  • (e) 学校またはこれに類する施設に通っていない障害児

2.健康および保健サービス(第24条)

18.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 乳児死亡率および5歳未満児死亡率
  • (b) 低体重出生児の割合
  • (c) 中度および重度の低体重、消耗および発育不全の状態にある子どもの割合
  • (d) 自殺を原因とする子どもの死亡率
  • (e) 衛生設備にアクセスできない世帯および安全な飲料水にアクセスできない世帯の割合
  • (f) 結核、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオおよびはしかの予防接種を完全に受けた1歳児の割合
  • (g) 妊産婦死亡率(主要な死因を含む)
  • (h) 産前産後の保健ケアにアクセスし、かつその利益を享受している妊産婦の割合
  • (i) 病院で出生した子どもの割合
  • (j) 病院におけるケアおよび分娩の訓練を受けた要因の割合
  • (k) 完全母乳育児を実践している母親の割合およびその母乳育児期間
19.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) HIV/AIDSに感染した子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもの人数/割合
  • (b) これらの子どものうち治療、カウンセリング、ケアおよび支援を含む援助を受けている者の人数/割合
  • (c) これらの子どものうち親族とともに暮らしている者、里親ケアを受けている者、施設で生活している者または路上で暮らしている者の人数/割合
  • (d) HIV/AIDSのため子どもが筆頭者となっている世帯の数
20.締約国は、思春期の健康に関連して次の点に関するデータを提供するよう求められる。
  • (a) 若年妊娠、性感染症、精神保健上の問題、薬物濫用およびアルコール濫用の影響を受けている思春期の子どもの、前掲パラ1で述べたとおりに細分化された人数
  • (b) 思春期の健康上の問題の予防および治療を目的としたプログラムおよびサービスの数

3.薬物および有害物質の濫用(第33条)

21.締約国は、薬物および有害物質の濫用の被害者である子どもの人数ならびに利用可能な援助プログラムの数に関する情報を提供するよう求められる。

H.教育、余暇および文化的活動(第28条~31条)

22.締約国は、次の点との関連で、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 子どもおよび成人の識字率
  • (b) 初等学校および中等学校ならびに職業訓練センターへの総・純就学率および総・純出席率
  • (c) 初等学校および中等学校ならびに職業訓練センターにおける在籍継続率、修了率および移行率ならびに中退者の割合
  • (d) 教員1人あたり児童生徒数の平均(相当の地域格差または農村部/都市部の格差がある場合にはそれも明らかにすること)および訓練を受けた教員の割合
  • (e) 国が資金を拠出している、自分自身の言語による教育を受けている先住民族およびマイノリティの子どもの人数
  • (f) ノンフォーマル教育制度で教育を受けている子どもの割合
  • (g) 就学前教育施設およびその他の乳幼児期発達教育施設に通っている子どもの割合
  • (h) 放課後プログラムに参加している子どもの人数/割合
  • (i) コミュニティにある公共の遊び場の数(農村部か都市部かを明示すること)
  • (j) 組織化された余暇、スポーツ、文化および芸術の活動に参加する子どもの人数/割合(当該活動が農村部または都市部のどちらで行なわれているかを明示すること)

I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38条~40条)

1.出身国外にあって難民としての保護を求めている子ども(第22条)および国内避難民である子ども

23.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりにならびに出身国別、国籍別および保護者の有無別に細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 国内避難民である子ども、庇護希望者である子どもおよび難民である子どもの人数
  • (b) それらの子どものうち初等学校および中等学校ならびに職業訓練センターに通っている者ならびに保健サービスその他のサービスにアクセスできている者の人数および割合
  • (c) 資格認定手続の最中または終了後に失踪した子どもの人数

2.児童労働を含む経済的搾取(第32条)

24.特別な保護措置について、締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化された統計データを提供するよう求められる。
  • (a) 法律で定められた最低就労年齢に達しない子どものうち、国際労働機関の最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)が定める児童労働に従事する者の、就労態様ごとに細分化された人数および割合
  • (b) それらの子どものうち回復および再統合のための援助(無償の基礎教育および/または職業訓練を含む)にアクセスできている者の人数および割合
  • (c) 路上の状況にある子どもの人数

3.性的搾取、性的虐待および人身取引(第34条および第35条)

25.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりにおよび侵害の態様別に細分化された統計データを提供するよう求められる。
  • (a) 性的搾取(買春、ポルノおよび人身取引を含む)に関与した子どもの人数
  • (b) それらの子どものうちリハビリテーション・プログラムにアクセスできるようにされた子どもの人数
  • (c) 報告対象期間中に報告された、子どもの性的搾取、性的虐待および売買、子どもの誘拐ならびに子どもに対する暴力の件数
  • (d) それらの事件のうち制裁が科されるに至ったものの件数および割合(加害者の出身国および科された処罰の性質に関する情報を添えること)
  • (e) その他の目的(労働を含む)による人身取引の対象とされた子どもの人数
  • (f) 子どもの人身取引を防止し、かつその尊厳の尊重を確保するための研修を受けた国境管理官および法執行官の人数

4.法に抵触した子どもおよび少年司法の運営(第40条)

26.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータ(犯罪態様別の細分化を含む)を提供するよう求められる。
  • (a) 法に抵触した疑いがあることを理由に警察に逮捕された18歳未満の者の人数
  • (b) 法的その他の援助が提供された事案の割合
  • (c) 次の対応をとられた18歳未満の者の人数および割合
    • (i) ダイバージョン・プログラムに移送された者
    • (ii) 裁判所により有罪と認定され、かつ刑の執行猶予または自由の剥奪以外の刑罰を言い渡された者
    • (iii) 修復的アプローチに基づく代替的制裁を受けた者
    • (iv) 保護観察(プロベーション)プログラムに参加した者
  • (d) 再犯率

5.自由を奪われた子ども(いずれかの形態の拘禁、収監または収容場所への措置を含む)(第37条(b)~(d))

27.締約国は、次の点との関連で、法に抵触した子どもに関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータ(社会的地位、出身および犯罪態様別の細分化を含む)を提供するよう求められる。
  • (a) 罪を犯したとして警察に通報された後、警察署での留置または未決拘禁の対象とされた18歳未満の者の人数およびその平均拘禁期間
  • (b) 刑法に違反したとして申立てられ、罪を問われ、または認定された18歳未満の者をとくに対象とする施設の数
  • (c) それらの施設に収容されている18歳未満の者の人数および平均収容期間
  • (d) 成人から分離されない施設に拘禁されている18歳未満の者の人数
  • (e) 裁判所によって有罪と認定され、かつ拘禁刑を言い渡された18歳未満の者の人数および割合ならびにその平均拘禁期間
  • (f) 逮捕および拘禁/収監中に生じた18歳未満の者の虐待および不当な取扱いの報告件数

6.武力紛争下の子ども(第38条)(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合(第39条)を含む)

28.締約国は、次の点に関して、前掲パラ1で述べたとおりに細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 軍隊に徴募されまたは自発的に入隊した18歳未満の者の人数および割合、ならびに、そのうち敵対行為に参加している者の割合
  • (b) 武装集団または軍隊から動員解除され、かつコミュニティに再統合された子どもの人数および割合(これらの子どものうち学校に復帰した者および家族と再統合した者の割合を含む)
  • (c) 武力紛争による子どもの死傷者の人数および割合
  • (d) 人道援助を受けている子どもの人数
  • (e) 武力紛争への関与後に身体的および心理的回復のための援助を受けている子どもの人数

7.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書

29.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の締約国は、次の点に関して、性別、年齢、民族的集団および居住地(都市部または農村部)別に細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックスツーリズムの報告件数
  • (b) それらの事案のうち捜査が行なわれ、起訴されかつ制裁が科されたものの件数
  • (c) 被害を受けた子どものうち選択議定書第9条第3項および第4項にしたがって回復のための援助または被害賠償を提供された者の人数

8.武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書

30.武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の締約国は、次の点に関して、性別、年齢および民族的集団別に細分化されたデータを提供するよう求められる。
  • (a) 軍の学校に通っている生徒の人数および入学が認められる最低年齢
  • (b) 子どもが徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある地域から締約国に入国した、子どもの庇護希望者および難民の人数
  • (c) 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置から利益を得ている子どもの人数


  • 更新履歴:ページ作成(2015年4月25日)。
最終更新:2015年04月25日 22:47