総括所見:中国(第3~4回・2013年)


CRC/C/CHN/CO/3-4(2013年10月29日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2013年9月26日および27日に開かれた第1833回~1835回会合(CRC/C/SR.1833-1835参照)において、中国領香港(CRC/C/CHN-HKG/2)および中国領マカオ(CRC/C/CHN-MAC/2)を含む中国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CHN/3-4 and Corr.1)を検討し、2013年10月4日に開かれた第1845回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、中国領香港および中国領マカオを含む中国の第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/CHN/Q/3-4/Add.1, CRC/C/CHN-HKG/2/Add.1 and CRC/C/CHN-MAC/2/Add.1)の提出により、締約国における子どもの状況に関する理解を向上させられたことを歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話について評価の意を表明するものである。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、中国本土で以下の立法措置がとられたことを歓迎する。
  • (a) 中華人民共和国未成年者保護法の改正(2006年12月および2012年10月)。
  • (b) 罪を犯した少年を対象とする特別刑事手続についての章を付け加えた、2012年3月の刑事訴訟法改正。
  • (c) 社会保険法の採択(2010年10月)。
4.委員会は、以下の文書が批准されたことに評価の意とともに留意する。
  • (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2008年)。
  • (b) 障害のある人の権利に関する条約(2008年8月)。
5.委員会は、中国本土で以下の政策措置がとられたことを歓迎する。
  • (a) 人身取引対策行動計画(2013~2020年、2013年3月採択)。
  • (b) 中国児童発達綱要(2011~2020年、2011年7月採択)。
  • (c) 子どもにも焦点を当てた「国民経済と社会発展の第12次五か年計画綱要(2011~2015年)」。

III.主要な懸念領域および勧告

A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(第6項))

委員会の前回の勧告
6.委員会は、第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(2005年)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた勧告の一部が全面的に実施されてきたわけではないことに遺憾の意とともに留意する。
7.前回の勧告を想起しつつ、委員会は、締約国が、これらの勧告のうち実施されていないものまたは実施が不十分であるものに対応するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 生命に対するすべての子どもの固有の権利を促進しかつ保護する目的で、条約第6条に付した留保を直ちに撤回するとともに、条約第32条第2項(b)および第37条(c)に関する中国領香港の留保を撤回すること。
  • (b) 自国の管轄内にあるすべての地域で、条約の実施に関する現行のプログラム、政策及び活動を実施するために活動している諸機関および諸制度間の調整をさらに強化すること。
  • (c) 家庭、学校、施設および他のすべての環境(刑事施設を含む)における体罰を法律で明示的に禁止すること。
包括的な政策および戦略
8.委員会は、中国本土について2011年7月に中国児童発達綱要(2011~2020年、NPCD)が採択されたことには肯定的対応として留意しながらも、NPCDには具体的な指標、予定ならびに国、省および県のレベルで進展を監視するための制度が欠けており、一貫した実施が行なわれない可能性があることを懸念する。委員会はさらに、子どもに関する計画および政策(NPCDを含む)の評価に独立の専門家および非政府組織(NGO)が参加していないことを懸念するものである。
9.委員会は、締約国が、省、自治州および県の行政段階におけるNPCDの実施の支援を目的とした包括的な戦略および枠組みを、優先課題として採択するよう勧告する。このような戦略および枠組みにおいては、主要な優先課題、目標、目的および活動を掲げ、それらについての具体的責任を関連の省庁に割り当て、かつ、主要な指標による監視および評価のための制度を設けるべきである。委員会は、締約国に対し、中国本土のすべての省、自治州および県によるNPCDの実施に関する進展報告書の提出および検討を可能にする、調整機構の設置を奨励する。委員会はさらに、締約国が、NPCDならびに子どもに関連するその他の政策および計画の監視および評価において、子どもおよび市民社会(独立の専門家を含む)との恒常的、広範かつ透明な協議を確保するよう勧告するものである。
10.委員会は、条約の実施のための包括的な行動計画を策定するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/CHN/CO/2、パラ15)にもかかわらず、中国領香港および中国領マカオにおいて、それぞれの管轄地域で子どもに影響を与えるすべての法律、政策、計画およびプログラムの指針としてホリスティックかつ統合的に機能する、子どもについての包括的な政策および戦略がいまなお定められていないことを遺憾に思う。
11.委員会は、中国領香港および中国領マカオが、それぞれ子どもに関する包括的政策を採択するとともに、当該政策に基づき、条約を実施するための明確な目的を備えた戦略および調整のとれた行動計画を策定し、かつ、その実施、監視および評価のための十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告する。
資源配分
12.委員会は、中国本土における地域間および都市部・農村部間の深刻な不平等および格差を縮小するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに農村部および中国本土西部においてこのような格差が根強く残っていること、ならびに、子どもの権利の実施のために地方政府に配分される資源が不十分であることを、深刻に懸念するものである。
13.委員会は、さらに以下のことを懸念する。
  • (a) 子どもの権利に関する政策および計画(とくにNPCD)への中央政府からの予算配分および資金拠出が不十分であり(保健および教育への配分額が国内総生産に占める割合はそれぞれ1.4%および4%)、かつ省以下の資源に依存していることから、公的資源の配分における著しい不平等が生じていること。
  • (b) 義務教育、母子保健ケア、保健インフラおよびサービスの質の確保などのきわめて重要な分野、ならびに、貧困下および不利な立場に置かれた家族のもとで暮らしている子どものための福祉サービスその他のサービス(障害のある子どものためのサービスを含む)を拡大するための計画が、引き続き資金不足の状態にあること。
  • (c) 中国領香港において、教育および社会福祉への資源配分が依然として不十分であり、かつ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(とくに民族的または言語的マイノリティの子ども、子どもの庇護希望者、貧困下で暮らしている子どもおよび障害のある子ども)を効果的に対象とするものになっていないこと。
14.子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は以下のことを勧告する。
  • (a) 締約国が、中国本土における地域格差および都市部・農村部間の格差を縮小するための特別措置をとるとともに、子どもの権利ならびにニーズがある領域および懸念の対象である領域を十分に考慮するための、子どもの権利の視点を備えた予算策定手続を確立すること。
  • (b) 締約国が、子どもの権利の実施に関わる政策、計画および制度(とくにNPCDおよび保健、教育その他の主要な社会サービスの分野におけるもの)を実施するために中央政府から中国本土(とくに農村部および西部諸省)の省政府および地方政府に配分される予算を効果的に増額すること。締約国はまた、中国本土の省、自治州および県全域における資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構も設置するべきである。
  • (c) 積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえば民族的マイノリティの子ども、障害のある子どもおよび子どもの移住者)を対象とした戦略的予算科目を中国本土、中国領香港および中国領マカオで定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。
データ収集
15.委員会は、本土において、条約が対象とするあらゆる分野についての信頼できる包括的な統計データに公衆が限られた形でしかアクセスできないことについての懸念(CRC/C/CHN/CO/2、パラ22)をあらためて表明する。委員会は、国家機密の保護に関する中国本土の法令のために、条約の効果的な実施および監視にとって決定的な細分化されたデータおよび重要な統計が、締約国においてしばしば利用不可能であることをとりわけ懸念するものである。
16.委員会は、子どもに関する情報(とくに子どもに対する暴力、嬰児殺、児童労働、少年司法、障害のある子どもおよび移住の影響を受けている子どもに関するもの)が体系的に収集され、公に利用可能とされ、ならびに、子どもの権利に関する政策および計画を策定するために議論の対象とされおよび活用されることを確保するため、締約国が、中国本土における秘密保護法令を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、締約国が、中国本土で、国家機密の指定に関する独立の再審査機構を設置するよう勧告するものである。
17.中国領マカオで若干の進展があったことには留意しながらも、委員会は、包括的なかつ信頼できるデータ収集システムがマカオにおいても中国領香港においてもいまなお整備されていないこと、子どもに関するデータが種々の部局間で散逸していること、および、条約の一部領域について18歳未満の子どもに関する細分化されたデータが存在しない旨の懸念をあらためて表明する。
18.委員会は、独立の立場から検証可能な子どもに関するデータを収集し、かつ、収集されたデータを、子どもの権利の実現に関して達成された進展の評価ならびに条約を実施するための政策およびプログラムの立案を目的として分析するために、中国領マカオおよび中国領香港において中央集権化されたデータ収集システムを確立するよう、強く勧告する。データは、すべての子どもの状況の分析を容易にするため、民族マイノリティの子ども、在留資格を有しているまたは有していない子どもの移住者、子どもの庇護希望者および難民ならびに障害のある子どもにとくに注意を払いながら、年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。
独立の監視
19.委員会は、子どもの権利を監視する明確な任務を与えられた独立の国内人権機関が、締約国の管轄下にあるすべての地域で設置されていないことについての懸念を想起する。委員会はさらに、前回の勧告に反して、かつ独立の子ども委員会を設置するべきである旨の動議を立法会が2007年6月に提出したにもかかわらず、中国領香港がそのような委員会を設置するためのいかなる措置もとっていないことを懸念するものである。
20.委員会は、一般的意見2号への注意を促すとともに、締約国が、国および地方のレベルでの条約の実施における進展を体系的にかつ独立の立場から監視しおよび評価し、ならびに、子どもからの苦情に子どもに配慮した迅速なやり方で対応する目的で、パリ原則にしたがい、本土ならびに中国領香港および中国領マカオにおいて独立の国内人権機関を速やかに設置するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、子どもの権利を監視する明確な任務を与えられた子ども委員会または他の独立の人権機関を中国領香港に設置し、かつ当該機関に十分な財源、人的資源および技術的資源を提供するよう勧告するものである。
市民社会との協力
21.委員会は、人権擁護者に対して続けられている脅迫、警察のいやがらせ、強制的失踪および逮捕を理由として、NGOが障壁に直面しており、かつ、人権擁護者およびジャーナリストが、とくに中国本土における子どもの権利侵害について報告する余地が限られていることを、深く懸念する。委員会はさらに、2008年・四川地震の際の学校倒壊を理由とする子どもの死亡についての責任を追及していた親たちの場合のように、政府による家族(人権擁護者および反体制者の子どもを含む)の訴追ならびに子どもの権利を唱道する家族に対する報復およびいやがらせの報告があることに、深刻な懸念とともに留意するものである。
22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。
  • (a) ジャーナリスト、人権擁護者およびすべてのNGOが、いかなる種類の脅迫、いやがらせまたは反動も受けることなく、人権侵害の監視、調査および報告を行ない、かつ表現および意見の自由に対する権利を行使できるようにするための即時的措置をとること。
  • (b) 子どもの権利侵害についての責任を追及する家族および人権擁護者の子どもに対するあらゆる形態の脅迫および報復を緊急に終わらせること。
  • (c) 子どもの権利を追求する家族ならびに人権擁護者およびその家族に対する脅迫およびいやがらせの事案の報告が速やかにかつ独立の立場から調査され、かつ、当該人権侵害の責任者の責任が問われることを確保すること。
子どもの権利と企業セクター
23.委員会は、中国本土における鉛中毒の発生および蔓延により、とくに貧困地域および農村地域において、数十万人の子どもの間で恒久的な精神障害および身体障害が発生していることを深く懸念する。委員会は、影響を受けている子どもおよびその家族のための改善策がとられていないこと、治療および情報を求める者に対して脅迫が行なわれている旨の報告があること、および、影響を受けている子どもへの適切な治療の提供が拒否されている旨の報告があることを、とりわけ懸念するものである。
24.委員会は、委員会の一般的意見16号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、企業セクターが人権、労働、環境その他の問題に関わる国際的および国内的基準を(とくに子どもの権利との関連で)遵守することを確保する目的で、中国本土における規則の実施を強化するよう勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 鉛中毒が国全体でどの程度子どもおよびコミュニティに影響を与えているか判断するための、全国的かつ公にアクセス可能な評価を直ちに実施するとともに、慢性的な鉛への曝露およびその長期的影響に対処するための包括的な公衆衛生戦略を立案すること。
  • (b) 諸産業の活動が子どもの権利に影響を及ぼさないことおよび子どもに悪影響を与えないことを確保するため、締約国で操業している化学工場を含む諸産業の規制枠組みの実施を効果的に監視するとともに、違反が行なわれた場合に適切な制裁および救済が与えられることを確保すること。
  • (c) 自社の事業活動が環境面、健康関連および人権面で与えている影響ならびにこれらの影響に対処するための計画について評価、協議および全面的な公的開示を行なわなければならない旨の、すべての産業を対象とする監視要件を設けること。
  • (d) 環境規則を遵守しなかった疑いまたは情報もしくは医療ケアへのアクセスを妨げた疑いがある政府職員(地方職員を含む)を調査し、かつその責任を問うとともに、子どもおよびその家族が、効果的なかつ医学的に認められた治療および長期的救済措置(リハビリテーションサービスおよび補償を含む)に即時的かつ全面的にアクセスできることを確保すること。

B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
25.委員会は、中国本土でチベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもの権利侵害および差別(宗教の自由、言語および文化に対する権利を含む)が継続していることを深く懸念する。委員会はさらに、障害のある子ども、移住労働者の子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびにHIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもに対する差別が、とくに教育、住居、保健ケアおよびその他の社会サービスとの関連で根強く残っていることを懸念するものである。
26.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、チベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもに不相応な影響を与えまたはこれらの子どもを差別している政策、慣行および保安措置を撤廃するため、中国本土において即時的措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国が、障害のある子ども、移住労働者の子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびにHIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもに対するあらゆる形態の差別(教育、保健サービスおよび社会サービスにおけるものを含む)を特定しかつ撤廃するよう、勧告するものである。
27.委員会は、中国本土において女子および女性に対する差別が蔓延していること、ならびに、家長制的態度が根強く残っており、かつ女子差別を固定化するステレオタイプおよび慣行が深く根ざしていることを懸念する。委員会はさらに、息子偏重および女子の不平等な地位、性別選択的中絶、女子の嬰児殺ならびに女子の遺棄を固定化する長年の伝統および文化的影響が広範に残っており、そのためとくに女性に対する男性の数の比率が高くなっていることを懸念するものである。
28.委員会は、締約国に対し、女子および女性に対する社会的、文化的および経済的差別(条約の規定に一致せず、かつ女子に対する差別を固定化する社会的および制度的規範および慣行を含む)と闘うための効果的かつ組織的措置をとる目的で、包括的アプローチを採用するよう促す。委員会はさらに、締約国が、女子差別である文化的規範および慣行を強化する諸要因に対処する等の手段によって性別選択的中絶、女子の嬰児殺および女子の遺棄を防止するため、即時的な法的措置、政策措置および意識啓発措置をとるよう勧告するものである。
29.委員会は、中国領香港において、障害のある子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに移住労働者の子どもであって在留資格を有していない者に対する差別が根強く残っていることについての懸念をあらためて表明する。委員会は、第2条の実際の実施に関する情報の提供を求めた委員会の要請に応えて中国領マカオが行なった正当化のための説明(とくに、差別に関連する苦情が管轄地域内で記録されたことはない旨の説明)について懸念を覚える。
30.委員会は、中国領香港が、障害のある子ども、移住労働者の子どもであって在留資格を有していない者ならびに子どもの難民および庇護希望者に対する差別と闘うための措置(意識啓発、差別的政策の特定および関連プログラムの時宜を得た実施を含む)、および、これらの子どもが保健、教育その他の社会サービスを含む基礎的サービスに平等にアクセスできることを確保するための措置を強化するよう、勧告する。委員会は、中国領マカオに対し、正式な苦情申立てが行なわれていないことはその管轄地域で子どもが差別されていないことを意味するわけではないことを想起するよう促すとともに、差別に関する情報(とくに差別を受けやすい状況に置かれた子どもに関するもの)を積極的に求め、かつ、子どもに対するあらゆる形態の差別を撤廃するためにあらゆる立法上および政策上の措置を追求するよう、勧告する。
最善の利益
31.委員会は、中国本土、中国領香港および中国領マカオにおいて、子どもの最善の利益が、子どもに関連する主要な法律および政策に必ずしも全面的に反映されかつ編入されているわけではないことを懸念する。中国領香港では、子どもの最善の利益が、関連するすべての意思決定において最高の位置づけを有する必要的考慮事項となっている旨の説明(CRC/C/CHN-HKG/2、パラ105)は歓迎しながらも、委員会は、子どもの最善の利益について定めた一般的法律がないことを懸念するものである。
32.委員会は、中国領香港が、子どもの最善の利益を適用する旨の誓約を遵守すべきこと、および、締約国が、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて子どもの最善の利益が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化すべきことを、勧告する。
生命、生存および発達に対する権利
〈嬰児殺〉
33.委員会は、伝統的な男子偏重を変革し、かつ女子の価値に関する認識の高まりを促進するために中国本土で行なわれている「女子への配慮」キャンペーンに、肯定的措置として留意する。しかしながら委員会は、このようなプログラムにもかかわらず、とくに女子および障害のある子どもの嬰児殺が依然として蔓延していることを深刻に懸念するものである。この問題は、中国本土における1人っ子政策によって悪化している。
34.条約第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、とくに女子および障害のある子どもの嬰児殺と闘うための努力の一環として厳格な家族計画政策を改めることを検討し、かつ、生命に対するすべての子どもの譲りえない権利が保護されることを確保するよう、促す。委員会は、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 嬰児殺の根底にある諸要因(1人っ子政策を含む)に対応するため、包括的な法律上および政策上の措置をとること。
  • (b) 嬰児殺を禁ずる法律の、いっそう効果的なかつ一貫した適用および執行をすべての省および自治州で確保すること。
  • (c) すべての出生を数え上げ、確認しかつ登録する方法を向上させること。
〈チベット人の子どもの焼身自殺〉
35.委員会は、チベット人の子どもの焼身自殺がただならぬ水準で増加していること、および、締約国が、その奥底にある原因および長年にわたるチベット人の不満に対応することによってこのような生命の喪失を防止できていないことを、深く憂慮する。委員会はさらに、焼身自殺を「扇動」した罪に問われたチベット人の子どもの拘禁および収監ならびに被害者の家族に対するいやがらせおよび脅迫の報告があることを懸念するものである。このような対応は、事態を悪化させ、さらなる焼身自殺につながる可能性がある。
36.委員会は、締約国に対し、焼身自殺をやめさせ、かつ生命、生存および発達に対するチベット人のすべての子どもの固有の権利を保護するための努力の一環として、チベット自治区の子ども、宗教的指導者およびコミュニティの指導者と真摯な対話を行なうよう促す。委員会は、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) チベット自治区の子どもによる焼身自殺および抗議につながってきた政策およびプログラムの再評価および改革等の手段により、チベット人の子どもおよびその家族が有する、深く根ざした不満を解決するための緊急措置をとること。
  • (b) 焼身自殺を図って負傷したチベット人の子どもが無償の治療に全面的にアクセスできること、および、その容態が独立の立場から確認されかつ公に報告されることを確保すること。
  • (c) チベット人の子どもの逮捕および拘禁、ならびに、事態を悪化させる可能性がある保安措置の実施を差し控えるとともに、焼身自殺の「教唆」または「扇動」を理由として逮捕されまたは刑を言い渡された子どもが、法律扶助および公正な裁判に対する権利に全面的にアクセスできることを確保すること。
子どもの意見の尊重
37.子ども参加の場が複数設けられたことには留意しながらも、委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄についてのすべての子どもの意見の尊重および子ども参加を促進しかつその便宜を図るための効果的かつ広範な機構が、締約国の管轄内のすべての地域に存在するわけではないことを懸念する。
38.委員会は、締約国が、自己に影響を与えるすべての事柄(政策立案、裁判所の決定およびプログラムの実施を含む)についての子どもの意見の尊重および子ども参加を確保するための効果的な協議の機構を、中国本土、中国領香港および中国領マカオにおいて設置するよう勧告する。

C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録、名前および国籍
39.委員会は、中国本土の貧困地域および遠隔地における出生登録率、ならびに、女子、移住者である子ども、養子とされた子ども、および、その出生によって家族が地域で「認可」された家族規模の制限を上回ることとなった子どもの出生登録率が低いことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) 出生登録に関する現行の家族計画政策(出生証明書の発給、ならびに、金銭的その他の形態の罰則および慣行の悪影響を含む)により、親または保護者による子どもの登録が著しく抑制されていること。
  • (b) 出生登録が登記される世帯登録簿(戸口)により、移住労働者の子どもの出生登録が阻害されていること。
  • (c) 出生証明書を取得するための行政上の要件の多さおよび登録手続の複雑さにより、出生登録を妨げる多くの障壁が生み出されていること。
40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 親または保護者による子どもの出生の登録を抑制しているあらゆる形態の罰則および慣行を取り除くため、家族計画政策を改革すること。
  • (b) すべての子ども、とくに移住労働者の子どもの出生登録を確保するため、戸口制度を廃止すること。
  • (c) 手続に関連するすべての金銭的および行政的障壁を取り除き、かつ役務の向上を図ること(親または保護者による出生登録役務の利用可能性および当該役務へのアクセスを含む)によって、出生登録手続の簡素化、合理化および円滑化を図ること。
  • (d) 出生登録の重要性に関するコミュニティの感受性増進および公衆の意識啓発(政府省庁間および農村部におけるものを含む)を強化すること。
  • (e) これらの勧告を実施するため、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めること。
思想、良心および宗教の自由
41.委員会は、民族的および宗教的マイノリティに対して宗教的信条の自由が憲法で保障されているにもかかわらず、締約国が、さまざまな集団の子ども(チベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもを含む)の文化的および宗教的自由に対して厳しい制限を課す規則および政策を導入し続けていることを、深く懸念する。とりわけ、委員会は以下のことを深く憂慮するものである。
  • (a) 宗教および良心の自由に対する権利を行使しようとするチベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもが、逮捕、拘禁ならびに不当な取扱いおよび拷問の対象とされていることを示す報告が頻繁に行なわれていること。
  • (b) 自己の宗教を学習しかつ実践するチベット人の子どもの能力および自由を制約する制限が行なわれていること(チベットの僧院に対して課される、これらの僧院を厳重な管理および監視のもとに置く措置など)。
  • (c) 1995年に6歳で失踪したゲンドゥン・チューキ・ニマの状況、および、締約国が、若干の情報は提供したものの、いかなる独立の専門家に対しても、訪問調査によりその所在、権利の充足状況および安寧を確認することを認めていない事実。
42.条約第14条および締約国の憲法第36条に照らし、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/CHN/CO/2、パラ45)を想起し、委員会は、締約国が、民族区域自治法の全面的実施を確保すること、18歳未満の者に対して特定の公認宗教に限定されない思想、良心および宗教の自由に対する権利を効果的に保障すること、および、子どもがこの点に関わる権利を行使するにあたって、子どもの発達しつつある能力と一致する方法で指導を行なう親の権利および義務を尊重することを目的として、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 特定の集団の子ども(とくにチベット仏教徒およびウイグル人の子どもならびに法輪功を学習する家族の子ども)を対象とした刑罰および行政罰(労働を通じた再教育を含む)を廃止すること。
  • (b) いかなる年齢のチベット人の子どもに対しても宗教的活動に参加しまたは宗教教育を受けることを禁じるすべての措置および制限(僧院に課される措置を含む)を撤廃すること。
  • (c) 宗教的自由に対するウイグル人の子どもの権利を深刻に制限するすべての政策および立法規定(未成年者保護法実施細則第14条を含む)を改正すること。
  • (d) 独立の専門家がゲンドゥン・チューキ・ニマを訪問してその健康状態および生活状態を確認することを直ちに認めること。

D.子どもに対する暴力(条約第19条、第37条(a)および第39条)

拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰
43.委員会は、宗教、結社および表現の自由に対する基本的権利を行使したことを理由として中国本土の特定の宗教的および民族的集団の子ども(とくにチベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子ども)に対して、かつ拘禁されている子どもに対して、拷問および不当な取扱いが行なわれている旨の報告がしばしばあることを深く懸念する。
44.条約第37条(a)にしたがい、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く促す。
  • (a) 子どもの拷問および不当な取扱いが行なわれたとされるすべての事件について直ちに独立の立場からの調査を実施し、かつこれらの事件について公に報告すること。
  • (b) 意思決定のすべての段階でこれらの慣行を命令し、黙認しまたは容易にしたすべての者が、裁判にかけられ、かつその犯罪の重大性にふさわしい刑罰をもって処罰されることを確保すること。
  • (c) 拷問および不当な取扱いの被害者となった子どもが救済および十分な賠償(身体的および心理的回復ならびに同じことが繰り返されないことの保証を含む)を得られることを確保すること。
性的搾取および性的虐待
45.委員会は、締約国の管轄内のあらゆる地域で、子どもに対する性的搾取および性的虐待(強姦を含む)が広く蔓延していることを深刻に懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 移住労働者の子ども(とくに、親から後に残されて中国本土で親戚等のケアに委ねられた子ども)が、性的搾取および性的虐待の被害をとくに受けやすい状況に置かれていること。
  • (b) 子どもに対するこのような犯罪の訴追率が低いこと、ならびに、非司法的解決(中国本土)および告発の取り下げ(中国領マカオ)が蔓延していることから、加害者が処罰されない結果が生じていること。
  • (c) 締約国の管轄内のあらゆる地域において、性的虐待についてならびにこのような事件への対応およびその通報の方法について子どもが知らないこと。
  • (d) 中国領香港において、性的搾取および人身取引の被害を受けた子どもを特定しかつ支援するための手続が定められていないこと。
  • (e) 中国本土、中国領香港および中国領マカオの国内法上、性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもによる、司法、シェルター、医療サービス、心理カウンセリングおよび補償へのアクセスが限られていること。
46.委員会は以下のことを促す。
  • (a) 締約国に対して、本土において、移住労働者の子どもを性的搾取および性的虐待から保護するための努力、ならびに、性的虐待および性的搾取に関する法律が効果的に執行され、かつそのような犯罪の加害者が裁判にかけられてその犯罪にふさわしい制裁の対象とされることを確保するための努力を強化すること。
  • (b) 締約国に対して、女子および男子の性的搾取および性的虐待に関するデータ、加害者の捜査および処罰の件数に関するデータ、ならびに、被害者に対して与えられた救済および補償に関するデータを体系的に収集すること。
  • (c) 中国本土、中国領香港および中国領マカオに対して、苦情申立てを受理し、監視しかつ調査するための効果的なかつ子どもにやさしい手続および機構(子どもにとってアクセスしやすい無償のヘルプラインを含む)を設置するとともに、学校およびコミュニティにおける性暴力および性的虐待の通報を奨励する目的で、子ども(男子を含む)の間で意識啓発活動を行なうこと。
  • (d) 中国領香港に対して、刑事罪行条例で対象とされている性犯罪の包括的再検討を実施するとともに、インターネット上のあらゆる形態の児童ポルノおよび子どもの性的搾取を犯罪化する目的で法改正を行なうこと。中国領香港はまた、人身取引および性的搾取の被害を受けた子どもを特定しかつ支援するための効果的な政策および手続も確立するべきである。
  • (e) 中国領香港および中国領マカオに対して、それぞれ、性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもが有するシェルター関連のニーズ、健康上のニーズ、法的ニーズおよび心理社会的ニーズに、専門家を対象とする十分な研修等も通じて対応するための戦略を策定すること。
あらゆる形態の暴力からの子どもの自由
47.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)を想起しつつ、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対応するための、包括的な国家的戦略を策定すること。
  • (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するために必要な全事件の義務的通報およびフォローアップ措置を含む、国家的な調整枠組みを採択すること。
  • (c) 暴力のジェンダーに関わる側面にとくに注意を払って対応すること。
  • (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国際連合機関と協力すること。

E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条)

家庭環境
48.委員会は、制約の多い戸口政策により、移住する親の多くが子どもを後に残していくという困難な選択に直面しており、その結果、中国本土の農村部において一方または双方の親がいないまま成長する子どもが5500万人にのぼっていることに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国が、子どもの遺棄の根本的原因に対処するのではなく、後に残された子どもの施設措置(寄宿学校を含む)をしばしば促進する政策を引き続きとっていることに、懸念を表明するものである。
49.条約第9条にしたがい、委員会は、締約国に対し、家庭環境から子どもが分離されることを回避するために即時的措置をとるよう促す。そのための手段には、戸口制度を廃止すること、ならびに、親および法定保護者(働いている親を含む)が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助および支援サービスを提供することも含まれる。委員会はさらに、締約国が、中国本土における学校統合プログラムを改革し、かつ、子どもの施設措置ではなく家庭環境およびコミュニティを基盤とするケアを優先させるよう、勧告するものである。
50.委員会は、中国領香港の住民と婚姻し、かつ中国領香港の住民である子どもも有している中国本土出身の女性が、中国領香港の在留許可を取得できないことから定期的に中国本土に赴いて片道入境許可証を更新しなければならないこと、および、このような女性が中国領香港における就労資格または家族支援受給資格を有していないために、その子どもにとって不安定かつ脆弱な家族状況が生じていることを、懸念する。
51.第9条にしたがい、委員会は、中国領香港が、これらの母親に中国領香港の在留許可を付与する等の手段を通じて家族の再統合を促進するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。
家庭環境を奪われた子ども
52.委員会は、中国本土において、主として締約国の家族計画政策ならびに障害のある子どもおよび女子に向けられた差別およびスティグマを理由として、子ども(とくに障害のある子どもおよび女子)の遺棄が広く行なわれていることを深刻に懸念する。さらに、資格のある児童福祉専門家を2020年までに増員することがNPCDで求められていることには留意しながらも、委員会は、NPCDその他の新たな政策が児童ホームの設置を唱道し、かつ、これらの施設に対し、親族による養育およびコミュニティを基盤とする養育よりも多くの資金を提供しようとしていることを懸念するものである。このことは、政府機関にとって、コミュニティを基盤とする代替的養護の選択肢を追求するのではなく、子どもを施設に措置することを選ぶよう促す、意図せざる誘引策になってしまう可能性がある。
53.委員会は、ケアへの子どもの措置を定期的に再審査するための手続が中国領香港で設けられておらず、かつ、必要な場合の親権停止に関する法律が制定されていないことを懸念する。委員会はまた、中国領香港において家族および子どもに提供されている専門家の支援およびケアが不十分であること、ならびに、家族の危機の状況において子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利が十分に考慮されていないことも、懸念するものである。委員会は、中国領香港および中国領マカオにおいて、家族によるケアを奪われた子どもが家庭を基盤とするケアではなく入所施設に措置されていることを懸念する。
54.委員会は、締約国に対し、女子および障害のある子どもの遺棄の根本的原因に対処するための努力の一環として、中国本土において、女子および障害のある子どもに関連して広がっているスティグマを解消し、かつ家族計画政策を改革するための即時的措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国の管轄内のあらゆる地域で、子どもの代替的養護に関するすべての決定において子どもの最善の利益が優先されるべきこと、および、コミュニティを基盤とする家庭的ケアが施設措置よりも好ましいとされるべきことを勧告するものである。委員会はさらに、締約国が引き続き、政府の追加的資源の配分等も通じて、子どもとともに働く専門家を増員し、かつすべての専門家を対象として研修を実施するよう勧告する。
55.委員会は、中国領香港が、この分野における法改正および手続的改革についての法改正委員会の勧告を実施すべきこと、ならびに、中国領マカオが、資源およびサービス(家族カウンセリング、心理社会カウンセリングおよび親教育を含む)を増加させ、かつ子どもとともに働くすべての専門家の研修を実施すべきことを、勧告する。委員会はさらに、監護、居所、交流ならびに子どもの生命および発達に重要な影響を与えるその他の問題に関わるすべての決定において、最善の利益を第一次的に考慮され、かつ意見を聴かれる子どもの権利が全面的に考慮されるべきことを勧告するものである。
養子縁組
56.委員会は、同国が中国本土において不法な養子縁組と闘う努力を行なってきたことには留意しながらも、毎年数千人の子どもが誘拐、取引および売買(違法な養子縁組を目的とするものを含む)の対象とされていると推定されていることを、深く懸念する。委員会は、一部の家族計画担当官が、親の出産割当枠を超えて生まれた子どもを手放すよう親に強要し、かつ、国内養子縁組もしくは国際養子縁組または強制労働を目的としてその子どもを売りまたは地元の孤児院に措置しているという報告があることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、情報および公的統計(とくに、国内養子縁組および国際養子縁組を目的として養子縁組のために売られたとされる中国本土の子どもの人数ならびに捜査および訴追の対象とされた事件の件数に関するもの)が存在しないことも懸念する。
57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 締約国の管轄内のあらゆる地域で、国内養子縁組および国際養子縁組のために設けられている現行の機構および手続を緊急に見直すとともに、養子縁組事案を担当する専門家が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に照らし、時宜を得たやり方で事案の評価、審査および処理を行なうために必要な専門性を十分に身につけていることを確保すること。
  • (b) 締約国の管轄内のあらゆる地域で、養子縁組手続の評価および審査のための透明かつ効果的な制度を創設すること。
  • (c) 中国本土における子どもの誘拐および不法な養子縁組(病院および「孤児院」からのものを含む)のあらゆる事案を捜査し、かつ、このような犯罪の加害者(関与した政府職員を含む)の責任が問われることを確保すること。
  • (d) 誘拐された子ども(養子縁組を目的とする誘拐を含む)の人数、および、救済され、かつ中国本土で家族およびコミュニティに再統合された子どもの人数を明らかにするために、中央データ収集システムを設置すること。

F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(第1~3項))

障害のある子ども
58.中国本土との関連で、委員会は、障害のある子どもの権利を促進するさまざまな政策が採択されたことに肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国が引き続き障害に対する医学的アプローチを採用していること、および、障害児のためのサービスがほとんど身体的「リハビリテーション」のための施設に集中していることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、以下のことを具体的に懸念する。
  • (a) 1人っ子政策の例外として、障害児がいる家族は第2子を持つことを認められる旨の、障害児に対するスティグマを助長する政策が継続されていること。
  • (b) 障害児に対するスティグマが広く蔓延しており、かつ、このような子どもが複合的形態の差別(教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセスの制限を含む)を経験していること。
  • (c) 障害児の人数に関する都市部・農村部間の格差が深刻であること、および、施設で生活している障害児の数がとくに農村部において多いこと。
  • (d) 締約国が、普通学校における障害児の教育にはほとんど資源を割かない一方で、分離された特別学校を積極的に発展させる政策をとっていること。委員会はさらに、障害児が普通学校への受入れを拒否され、学校を去るよう圧力をかけられ、または時として障害を理由に退学させられているという報告があることを懸念する。
59.委員会は、締約国のあらゆる地域で、障害を早期に発見するためのスクリーニング・プログラムが設けられていないことを懸念する。
60.中国領マカオとの関連で、委員会は、障害のある子どもが事実上の差別を経験しており、かつ、インクルーシブな教育および十分な訓練を受けたやる気のある教員に限られた形でしかアクセスできていないことを懸念する。委員会はさらに、中国領香港において障害児に関する細分化されたデータが存在せず、かつ、報告によれば、障害児が常態的に排除および差別(教員によるものを含む)ならびに他の子どもによるいじめの対象とされていることを懸念するものである。
61.一般的意見9号(2006年)を想起し、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるよう促すとともに、具体的には締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) あらゆる関連の法律および政策(提案されている障害児教育規則を含む)において、障害児に対する事実上の差別となっているすべての規定を廃止し、かつ障害を理由とする差別をとくに禁止する規定を含めること。また、中国本土の障害児が、自己に影響を与えるあらゆるレベルの政策および計画の立案および実施に関与することを確保すること。
  • (b) 中国本土ならびに中国領香港および中国領マカオにおいて、障害に基づく差別のあらゆる事案を独立の立場から監視し、かつ、障害児の権利が侵害された事案において効果的救済を提供すること。
  • (c) 中国本土において施設を基盤とする障害児のケアを防止しかつ解消し、合理的な期間内に脱施設化を図るための即時的措置をとり、かつ、施設ケアに代わる手段として家族およびコミュニティを基盤とするケアおよびサービスを発展させること。
  • (d) 中国本土、中国領香港および中国領マカオにおいて障害の予防および早期発見のためのスクリーニング・サービスをさらに発展させ、かつ、適切なフォローアップおよび早期発達支援のためのプログラムを提供すること。
  • (e) 締約国のあらゆる地域で、障害のある生徒が普通〔教育〕制度に参入しかつ留まることを妨げるすべての障壁(物理的障壁を含む)を速やかに特定しかつ取り除くとともに、特別教育制度から得られた資源を普通学校におけるインクルーシブ教育の促進のために再配分すること。
  • (f) 人権、平和および寛容についての教育を行ない、教員を対象とする職業教育を実施し、かつ子どものための教室特別援助者を雇用する等の手段により、中国領香港の学校における障害児のいじめに取り組むための努力を強化すること。さらに、中国領香港は、障害児に関する細分化されたデータを体系的に収集し、かつ、障害児のための政策およびプログラムの立案において収集されたデータを活用するべきである。
  • (g) 締約国のあらゆる地域で障害児に対する事実上の差別を防止しかつ解消する目的で、障害児、公衆一般および特定の専門家集団を対象とする意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを実施すること。
健康および保健サービス
62.委員会は、予防接種率が向上したこと、ならびに、中国本土における妊産婦死亡率および乳幼児死亡率が顕著に減少し、かつとくに農村部において病院内出産が増加したことを歓迎する。しかしながら委員会は、都市部と農村部の間で、移住者である子どもの間でならびに地域間および地域内で(とくに中国西部において)健康格差が根強く残っていることを深く懸念するものである。委員会はさらに、都市部と農村部の間で保健資源の配分が異なっており、かつ、遠隔地および貧困地域に住んでいる子どもならびに移住労働者の子どもを対象とする保健ケアの質に隔たりがあることを懸念する。
63.委員会は、締約国が、脆弱な状況にある子ども(とくに貧困下および農村部で暮らしている子どもならびに移住労働者の子ども)にとくに注意を払いながら、中国本土のすべての子どもが保健サービスへの同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受することを確保する目的で、健康面での成果および資源配分に関して存在する格差に緊急に対応するための努力を強化するよう勧告する。とくに委員会は、締約国が、保健インフラを改善し、かつ、農村部および貧困地域でプライマリーヘルスケア施設における緊急の産科ケアおよび新生児ケアならびに専門的技能を有する出産介助者の利用可能性およびアクセス可能性を向上させる等の手段により、中国本土における乳幼児および妊産婦の死亡を解消するためにあらゆる措置をとるよう、勧告するものである。
64.委員会は、安全を欠いた予防接種および輸血が中国本土全域の数千人の子どもに影響を与えており、HIV感染、重病または障害および死亡の原因となっていることを深く懸念する。委員会はさらに、死亡しまたは重大な影響を受けた子どもの家族がいかなる救済も受けていないこと、HIV/AIDSの母子感染が増加していること、および、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもが無償の治療および保健ケアを受けられないことを懸念するものである。委員会はまた、これらの事象に影響を受けている子どもの人数または中国本土におけるこれらの子どもの現状に関する公式統計が存在しないことにも留意する。
65.委員会はさらに、中国本土において完全母乳育児が減少していることおよび乳児用調製乳の汚染事件が発生していることを懸念する。
66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。
  • (a) 食品および健康に関する安全基準(企業セクターを対象とするものも含む)について法律を改正しかつ規則の実施を強化するための努力を倍加するとともに、環境および健康に関する国際的および国内的基準に違反したいかなる官吏または企業に対しても適切な制裁が課され、かつ違反が行なわれた場合に救済が提供されることを確保すること。
  • (b) 影響を受けている子どもに関する体系的データを収集するとともに、すべての子どもおよびその家族が効果的な救済(無償の治療および十分な補償を含む)にアクセスできることを確保するためにあらゆる措置をとること。
  • (c) HIVに感染した子どもおよび孤児に対して無償の抗HIV薬、無償の学校教育および月額600元(95米ドル)の最低補助金を提供するという、委員会への文書回答で報告されている中央政府の政策を効果的に実施すること。
  • (d) 完全母乳育児および赤ちゃんにやさしい病院の設置を促進するとともに、人工乳児用調製乳の販売を適切に統制しながら「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を効果的に執行すること。
思春期の健康
67.委員会は、中国本土において、1人っ子政策の実施を背景として、地元の家族計画担当官により、とくに10代の女子を対象として強制的な不妊手術および妊娠中絶が行なわれている旨の報告があることを憂慮する。このような慣行は条約の基本的原則および規定に違反するものである。
68.委員会は、締約国が、中国本土の地方当局が10代の女子に対して行なった強制妊娠中絶および強制不妊手術のすべての事案を速やかにかつ独立の立場から調査して公に報告し、かつ、当該犯罪に責任を負うすべての官吏を訴追するよう勧告する。
69.委員会は、締約国において、思春期の健康の分野における意識が低く、かつサービスが不十分であることを懸念する。
70.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、思春期の健康に関する包括的サービスおよび心理社会的支援が広く提供されることを確保し、学校におけるセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスについての教育ならびに有害物質濫用の防止に関するライフスキル教育を提供する等の手段によって意識および知識を向上させ、かつ、学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアを含む)を導入するよう、勧告する。
精神保健
71.委員会は、中国本土および中国領香港において子どもが利用可能な精神保健サービスへのアクセスが限られていることおよび当該サービスを利用するための待機期間が長いことを、依然として懸念する。
72.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、思春期の子どものための予防的および治療的精神保健サービスを拡大するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/CHN/CO/2、パラ65〔パラ67〕)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、包括的な児童精神保健政策を採択し、かつ、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健の促進、カウンセリングおよび精神保健障害の予防が各政策の不可欠な特徴とされることを確保する〔よう勧告する〕。
生活水準
73.公共住宅の供給を増やすための中国領香港の計画は歓迎しながらも、委員会は、一部貧困地域の居住環境について懸念を覚える。さらに委員会は、中国本土および中国領香港において子どもの貧困が増加していること、ならびに、移住者の子ども、民族的マイノリティの子どもおよび庇護希望者である子どもが貧困層の間で不相応に代表されており、かつ貧困線以下の生活を送っていることを、懸念するものである。
74.委員会は、中国領香港に対し、公共住宅プログラムの実施をいっそう速やかに進めるよう促す。委員会はさらに、中国本土および中国領香港が、子どもの貧困を評価しかつこれに対応するための多元的な基準を採択するとともに、とくに、とりわけ貧困に陥りやすい状況に置かれた子どもおよび家族(移住者の子ども、民族的マイノリティの子どもおよび庇護希望者である子ども等)のための社会的保護および対象の明確なプログラムを通じ、子どもの生活水準の地域格差、民族格差および都市部・農村部間の格差を解消するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告するものである。

G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
75.委員会は、中国本土において教育との関連で締約国が達成した相当の成果(乳幼児期のケアおよび教育の拡大を含む)には留意しながらも、農村部に住んでいる子ども、ならびに、とくに民族的マイノリティ出身の子ども、庇護希望者および難民である子ども、母親が朝鮮民主主義人民共和国出身である子どもならびに移住労働者の子どもにとって、教育へのアクセスおよび教育の利用可能性の面での格差が増大していることを懸念する。これとの関連で、委員会は、国の学校制度にほとんどまたはまったくアクセスできない地域で移住者の子ども向けに運営されている私立学校に対し、官吏によるいやがらせおよび強制的閉鎖が行なわれている旨の報告があることを深刻に懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。
  • (a) 生徒の留年および在学継続に影響を与えている、中国本土全域における教育の質〔の低さ〕、および、とくに一部の南部諸省における後期中等学校中退率の高さ。
  • (b) 衛生面の不十分さ、学校インフラの劣悪さおよび学校における子どもの身体的安全。
  • (c) 二言語教育政策の文脈で母語およびマイノリティ言語の使用および学習を促進するための措置がとられていないこと、ならびに、中国の教育制度においてチベット人およびウイグル人の子どもならびに移住労働者の子どもに対する差別が行なわれていること。
  • (d) 中国領チベットの学校においてチベット語の使用および促進に関する複合的障壁が存在していること、ならびに、学校の閉鎖および教員の身柄拘束の報告があること。
  • (e) 総合大学その他の大学の入学要件に関する2013年の規則の第10条で規定されているように、教育機関への「邪教」の子どもの受入れが禁じられていることから、とくに法輪功学習者の子どもが大学教育を受けられないこと。
  • (f) 国全域における教育上のデータの質および使用可能性。
76.委員会は、締約国が、中国本土のすべての子ども(とくに移住労働者の子ども、民族的マイノリティ出身の子どもならびに難民および庇護希望者である子ども)を対象として良質な教育のアクセス可能性を確保するためのプログラムおよび政策を引き続き強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) あらゆる段階およびあらゆる地域で教育に対する十分な資金を確保するとともに、学校インフラ、教員の人数ならびに学校教材および教科書への子どものアクセスを改善すること。
  • (b) 移住労働者の子ども向けに運営されている私立学校に対するいやがらせおよび閉鎖を終わらせるとともに、難民および庇護希望者であるすべての子どもに対し、中国本土への到着および登録の後、教育が自動的に利用可能とされることを確保すること。
  • (c) 民族的マイノリティ言語の使用および促進を確保する目的で二言語政策を効果的に実施するとともに、地方および広域行政圏のレベルで、教育制度の意思決定プロセスへの民族的マイノリティ(チベット人およびウイグル人の子どもを含む)の参加を確保すること。
  • (d) チベット人の子どもが学校でチベット語を学習しかつ使用できることを深刻に制約するすべての制限(チベット学校の閉鎖を含む)を撤廃すること。締約国はまた、中国憲法で保障されているとおり、初等中等段階のすべての教育教材および学習教材が、民族的マイノリティ言語でも、かつ文化的に配慮した内容をもって利用可能とされることも確保するべきである。
  • (e) 総合大学その他の大学の入学要件に関する2013年の規則の第10条を直ちに廃止するとともに、すべての子どもが、その宗教、信条または良心にかかわらず、いかなる制約もなしに教育にアクセスできることを確保すること。
  • (f) 学校建設、安全および衛生ならびにすべての学校における十分な衛生設備へのアクセスを向上させるための努力を加速させること。
  • (g) データの質、細分化および分析を向上させる目的でいっそうの技術的資源、財源および人的資源の割当ならびに国際基準の導入を行なうとともに、データの質を高めるためにデータの利用可能性、透明性および教育の公的憲章を確保すること。
77.中国領香港について、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 学校におけるいじめおよび学校制度の競争的な性質により、子どもの間で不安または抑うつが生じており、かつ遊びおよび休息に対する子どもの権利が侵害されていること。
  • (b) 授業が中国語のみで利用可能とされており、かつ民族的マイノリティの子どもを対象として政府補助による「指定学校」制度が設けられていることから、公立学校制度において民族的マイノリティの子どもに対する事実上の差別および人種隔離が行なわれていること。
  • (c) 「越境児童」が地元の学校にアクセスできず、中国本土に毎日行き来して通学していること。
78.委員会は、中国領香港が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 学校におけるいじめに生徒自身の参加も得ながら対処するための措置、および、教育制度の競争性を低減させ、かつ主体的な学習能力の促進ならびに遊びおよび余暇に対する子どもの権利の促進を図るための措置(教員の研修、学校におけるソーシャルワーカーおよび心理学者の増員ならびに親および保護者の感受性強化等の手段によるものを含む)をとること。
  • (b) 民族的マイノリティの子どもを対象とする「指定学校」を緊急に廃止するとともに、奨学金の提供または入学資格の緩和等も通じ、これらの子どもが普通学校における教育にアクセスできることを促進するための資源を再配分すること。
  • (c) 第二言語としての中国語による質の高い教育を確保しつつ、あらゆる教育段階で二言語教育に関する法律および政策を実施するための努力を強化すること。
  • (d) 中国領香港に住んでいるすべての子どもを対象として、地元の学校へのアクセスを確保すること。
79.中国領マカオについて、委員会は、子ども(とくに妊娠した青少年)の中等学校からの中退について懸念を覚える。
80.委員会は、中国領マカオが、とくに妊娠した青少年を対象とする学校出席・在学継続プログラムを改善し、かつ、生徒のやる気および在学継続を増進させる目的で良質な教育を促進するための努力を強化するよう、勧告する。

H.その他の特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条)

庇護希望者および難民である子ども
81.委員会は、「インドシナ難民問題の最終的解決のために努力する」旨の、締約国が2011年に行なった誓約を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) 朝鮮民主主義人民共和国から中国本土に入国する子どもが、いまなお分類上は経済移民とみなされ、送還時に子どもに回復不可能な危害が生ずるおそれの有無について検討されないまま朝鮮民主主義人民共和国に送還されていること。
  • (b) 母親が朝鮮民主主義人民共和国出身である子どもが、母親が特定されて朝鮮民主主義人民共和国に強制送還されるという恐怖から戸口制度上の登録をされていないために、法律上のアイデンティティおよび基本的権利(とくに教育)へのアクセスを欠いていること。
  • (c) 締約国が、カチン人の庇護希望者(子どもを含む)を、その置かれた状況にもかかわらず難民として認定せず、2012年8月にミャンマーに強制送還したこと。
  • (d) 難民および庇護希望者であって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どものための特別な受入れ手続または受け入れ施設が存在せず、かつ、これらの子どもが保健ケア、特別なケアおよび保護にアクセスできていないこと。
82.委員会は、庇護希望者および難民である子どもに国の公立学校制度へのアクセスを認めるという中国領香港の決定に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、庇護希望者である子どもに対してその到着と同時に特別なケアおよび保護が与えられておらず、かつ、このような子どもならびに中国領香港に空路で到着した保護者のいない子どもおよび入国を拒否された子どもを少年拘禁施設に収容する行政実務が行なわれていることを、懸念するものである。
83.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ノン・ルフールマンの原則を尊重するとともに、保護者のいる子ども、保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子ども(朝鮮民主主義人民共和国出身の子どもを含む)が、いかなる場合にも、回復不可能な危害を受けると信じるに足る相当の理由がある国へ送還されないこと、および、この原則が、区別なく、かつ国籍にかかわらず、すべての子どもおよびその家族に適用されることを確保しなければならないという、条約上の義務を想起すること。
  • (b) ミャンマー北部で続いている紛争に鑑み、カチン人である子どもの難民およびその家族に対して一時的保護が提供されることを確保すること。締約国はまた、国際連合難民高等弁務官事務所に対し、難民認定の実施を目的とする、雲南省への自由なかつ妨害のないアクセスも認めるべきである。
  • (c) 朝鮮民主主義人民共和国の公民(とくに子どもおよび中国人男性との間に子どもをもうけた女性)の逮捕および送還を停止するとともに、母親が朝鮮民主主義人民共和国出身である子どもが基本的権利(アイデンティティおよび教育に対する権利を含む)にアクセスできることを確保すること。
  • (d) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもである庇護希望者の特別なニーズおよび脆弱性に対応するための即時的取り組みを行なうとともに、これらの保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの特別なニーズについて適切な配慮を行ない、かつこれを充足させること。
84.委員会は、中国領香港が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 庇護希望者および難民である子どもを収容する行政実務を停止すること。
  • (b) 庇護希望者および難民である子どもに対し、アクセス可能かつ十分な支援(特別なケア、保護ならびに十分な後見および法的代理を含む)が提供されることを確保すること。
  • (c) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同条約の議定書に加入すること。
経済的搾取(児童労働を含む)
85.委員会は、児童労働および子どもの搾取(犯罪集団による子どもの誘拐および売買を通じたものを含む)が広く存在することを示す報告が複数ある一方で、中国本土における児童労働についての具体的データが存在しないことを懸念する。委員会はさらに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 労働を通じた再教育(RTL)プログラムおよび「労働学習学校」(工読学校)が一般的に行なわれており、かつ、これらのプログラムのもとで強制的かつ搾取的な児童労働が用いられていること。
  • (b) 子どもが危険な業務および最悪の形態の児童労働(とくに採鉱業、製造業およびレンガ産業)に広く関与していること、ならびに、危険な業務からの16~18歳の子どもの保護が不十分であること。
86.委員会は、締約国に対し、優先的課題としてRTLプログラムおよび「労働学習学校」プログラムの使用に終止符を打ち、かつ以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 児童労働に関するデータ、危険な児童労働の件数に関するデータおよび労働条件に関するデータ(年齢別、男女別、地理的所在別および社会経済的背景別に細分化されたもの)を収集するとともに、このようなデータを公に利用可能とし、かつ、あらゆる形態の児童労働を防止しかつ撤廃するための効果的な措置を発展させる目的で当該データを活用すること。
  • (b) 子どもが行なっている危険な業務および最悪の形態の労働を特定し、かつ、負担の大きな業務における16~18歳の子どもの雇用を禁止すること。
  • (c) 労働に従事している16歳以上の子どもについて、そのような子どもの労働への従事が真正かつ自由な選択に基づくものであり、かつ条約および国際基準に基づく十分な保護措置に服することを、強制的労務調達に関与した者に制裁を適用すること等も通じて確保すること。
  • (d) 家事労働者の適切な仕事に関する国際労働機関第189号条約(2011年)の批准を検討すること。
売買、取引および誘拐(子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書のフォローアップを含む)
87.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく委員会の2005年の勧告(CRC/C/OPSC/CHN/CO/1)を十分に実施していないことを遺憾に思う。委員会はさらに、中国本土および中国領マカオにおいて、とくに労働および性的搾取を目的とする子どもの人身取引および搾取がますます蔓延していることを懸念するものである。委員会はまた、児童セックス・ツーリズムが中国領マカオにおいて依然として深刻な問題となっており、かつ、政府職員が人身取引および性的搾取関連の犯罪の共犯者となっている疑いがあることからこのような犯罪が処罰されない事態が生じていることも、懸念する。
88.委員会は、前回の勧告を想起するとともに、締約国に対し、1997年刑法を子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の規定と調和させるために必要な措置をとり、かつ、とくに以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 養子縁組を目的とする子どもの売買および取引にとくに注意を払いながら、選択議定書第3条第1項に掲げられているすべての犯罪が、当該犯罪が国内でもしくは国境を越えてまたは個人的にもしくは組織的に行なわれるかにかかわらず、全面的に刑法の対象とされることを確保すること。
  • (b) 選択議定書第4条第2項にしたがい、第3条第1項に掲げられている犯罪について域外裁判権を設定するとともに、国外で行なわれた犯罪を本土で訴追するための双方可罰性要件を廃止すること。
  • (c) 選択議定書第4条第2項にしたがい、選択議定書を、これらの犯罪に関する犯罪人引渡しの法的根拠と認めること。
89.委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 中国本土および中国領マカオにおいて危険な状況に置かれた子どもを特定し、問題の規模を評価し、かつ対象および目標が明確な政策およびプログラムを発展させる目的で、子どもの商業的性的搾取、児童セックス・ツーリズムならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因および規模についての調査を行なうこと。
  • (b) 政府職員が共犯者である旨の告発を厳格に捜査し、かつこれらの犯罪について当該政府職員を訴追することを通じて、中国領マカオにおける腐敗および不処罰の問題に、優先的課題として直ちに対処すること。
  • (c) 締約国のあらゆる管轄地域、とくに中国領マカオにおいて外国人ペドファイルの特定、捜査および訴追を強化するため、法律上および制度上のあらゆる必要な措置をとること。
90.委員会は、選択議定書の適用が中国領香港に拡張されていないことを遺憾に思う。
91.委員会は、中国領香港に対し、これ以上遅滞することなく選択議定書の適用拡張を可能にできるよう、必要なあらゆる準備作業を終了させるよう促す。
少年司法の運営
92.委員会は、中国本土の刑事訴訟法の改正、および、RTLプログラムの改革について現在行なわれている議論を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの行政拘禁(RTLおよび労働学習学校を含む)が引き続き適用されており、かつ、締約国が、条約機関および国際連合特別手続受任者により繰り返し表明されてきた懸念にもかかわらずこれらの実務に終止符を打っていないことを、深く懸念するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。
  • (a) 締約国によれば、16歳以上の子どもが、法的保障措置または法的代理にいかなる形でもアクセスできないままRTL施設に収容される場合があり、かつ当該収容が最長18か月間継続しうること。
  • (b) 複数の報告が示すところによれば、子どもが誘拐され、かつ、その親とともにまたは親もしくは保護者が不在のまま、秘密拘禁施設(「裏監獄」を含む)に隔離収容されていること。
  • (c) 裏監獄の存在、ならびに、当該場所およびRTL施設における子どもの拷問および不当な取扱い(食事および睡眠を与えないことを含む)についての訴えを調査するために何らの措置もとられていないこと。
  • (d) 中国本土の刑事司法制度において、移住労働者の子どもが相当な過剰代表の状況にあること。
  • (e) 子ども(とくに、貧困下にある子どものように脆弱な状況に置かれている子ども)が、司法へのアクセスを妨げるいくつかの障壁(法律扶助へのアクセスが不十分であることおよび独立の法律扶助が存在しないことを含む)に直面していること。
93.委員会は、締約国が、すべての管轄地域において、条約(とくに第37条、第39条および第40条)、委員会の一般的意見10号(2007年)およびその他の関連の基準に全面的に一致する、修復および更生を旨とする少年司法制度を構築するための努力を強化するよう勧告する。中国本土について、委員会は、締約国に対し、いかなる子どもも不法にまたは恣意的にその自由を奪われないこと、および、いかなる措置においても子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう、促すものである。委員会はさらに、中国本土について、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの行政拘禁の広範な適用を認めている、制度化されたRTLおよび労働学習学校の制度を廃止すること。また、裏監獄等のすべての秘密拘禁施設を直ちに閉鎖する等の手段により、子どもの隔離拘禁の使用に終止符を打つこと。
  • (b) 逮捕された子どもおよび自由を奪われた子どもが、その逮捕および拘禁の合法性についての審理を受ける目的で逮捕から24時間以内に独立の司法機関に引致され、十分な、無償のかつ独立した法的援助を直ちに提供され、かつ、その親または近親者に連絡できることを確保すること。
  • (c) 裏監獄等の秘密拘禁施設の存在について、当該施設がどの公的機関のもとに設置されたかも含めて独立の立場から調査しかつ公に報告するとともに、裏監獄を含む秘密拘禁施設の運営責任者ならびに当該施設における子どもの拷問および不当な取扱いに関与した者を訴追すること。
  • (d) 刑事司法制度において移住労働者の子どもが不相応に代表されている問題に対処するため、緊急のかつ具体的な措置をとること。
  • (e) 子どもが法律扶助に対する権利を直接行使できることを確保するとともに、すべての子ども(移住労働者および民族的マイノリティの子どもならびに宗教的コミュニティ出身の子どものような、脆弱な状況に置かれた子どもを含む)にとっての法律扶助の質およびアクセス可能性を増進させることにより、司法へのアクセスにおける格差に対処すること。
94.委員会は、中国領香港が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に容認可能な水準まで引き上げること。
  • (b) 拘禁(未決拘禁を含む)が、たとえきわめて重大な犯罪の事件であっても、最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、当該拘禁が取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。
  • (c) 可能な場合には常に拘禁に代わる措置(ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、社会奉仕活動または刑の執行猶予等)を促進するとともに、法律に抵触した子どものための社会的再統合プログラムを発展させること。
  • (d) 子どもが成人拘禁施設から直ちに退所させられることを確保するとともに、これらの子どもを、これらの子どもが人道的にかつ固有の尊厳を尊重して取り扱われ、家族と定期的接触を維持することができ、かつ教育および職業訓練を提供される、安全な、子どもに配慮した環境に措置すること。
95.委員会は、中国領マカオに対し、子どもの処罰を目的とする独居拘禁の使用を禁止しかつ廃止するとともに、独居拘禁の対象とされているすべての子どもを直ちにその対象から外すよう、促す。
犯罪の証人および被害者の保護
96.委員会は、子どもの被害者および証人を保護する措置を確保するための努力が不十分であり、かつ締約国の法律に適正に反映されていないことを遺憾に思う。
97.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針を全面的に考慮するよう、勧告する。

I.国際人権文書の批准

98.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。

J.地域機関および国際機関との協力

99.委員会は、締約国が、とくにASEAN・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。

K.フォローアップおよび普及

100.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
101.委員会はさらに、条約およびその選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

L.次回報告書

102.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回定期報告書をひとつの統合報告書として2019年3月31日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。2012年12月20日の総会決議67/167にしたがい、ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。
103.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された調和化報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2014年9月10日)。